特許第6369916号(P6369916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369916
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】補強コンクリートの補強材
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/03 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   E04C5/03
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-555325(P2016-555325)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-515998(P2017-515998A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】US2016014402
(87)【国際公開番号】WO2016118790
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】14/601,438
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516260855
【氏名又は名称】ティーエス リバー ホールディング リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TS Rebar Holding LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ボグスラフッシ,ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ライト,チェスター
(72)【発明者】
【氏名】ザラン,アルカディー
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08915046(US,B1)
【文献】 実公昭16−005583(JP,Y1)
【文献】 特公昭26−004775(JP,B1)
【文献】 実公昭39−001543(JP,Y1)
【文献】 実公第007277(大正12年)(JP,Y1T)
【文献】 特開昭47−040925(JP,A)
【文献】 実開昭51−061719(JP,U)
【文献】 実公昭29−10741(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強コンクリートのための補強材であって、
螺旋ロッドを含み、前記螺旋ロッドのピッチが、前記螺旋ロッドを内接する円筒の直径の1倍と10倍の間であり、
前記ロッドの平断面が、前記ロッドの中心軸周囲の中心部分と、前記中心部分に連結される少なくとも2つの花弁部であって、ギャップを介して互いに分離される少なくとも2つの花弁部とを有し、
前記ロッドの中心軸周囲の少なくとも2つの異なる同心円において、小さい円に対する花弁部の断面の角度の合計が、大きい円に対する花弁部の断面の角度の合計と同じか、またはそれ未満であり、
前記中心部分の断面積は、前記花弁部のうち少なくとも1つの断面積より小さく、
前記ロッドの少なくとも1つのギャップのうち、少なくとも1つのギャップを向く花弁部表面が、少なくとも1つのギャップを向くリブを有し、
前記少なくとも1つのギャップの半径方向の最大深さは、前記少なくとも1つのギャップを向くリブの、前記ギャップを向く花弁部表面からの最大高さより大きく、
前記ロッドの少なくとも1つの花弁部により形成された全体の外表面が、滑らかな螺旋状の連続的なリボンの形状であり、前記花弁部のエッジは丸まっていることを特徴とする補強材。
【請求項2】
請求項1に記載の補強材において、前記花弁部の断面が実質的に三角形であることを特徴とする補強材。
【請求項3】
請求項2に記載の補強材において、前記花弁部がその頂点において前記中心部分に連結されていることを特徴とする補強材。
【請求項4】
請求項1に記載の補強材において、前記花弁部の中心部分から離れている端部が円形であることを特徴とする補強材。
【請求項5】
請求項1に記載の補強材において、前記ピッチが一定であることを特徴とする補強材。
【請求項6】
請求項1に記載の補強材において、前記ピッチが可変であることを特徴とする補強材。
【請求項7】
請求項1に記載の補強材において、前記リブの高さは0.5mmと1.0mmの間であり、前記リブの間隔は5mmと15mmの間であることを特徴とする補強材。
【請求項8】
請求項1に記載の補強材において、前記バーが金属製であることを特徴とする補強材。
【請求項9】
請求項1に記載の補強材において、前記バーが溶接可能であることを特徴とする補強材。
【請求項10】
請求項1に記載の補強材において、前記中心部分がリブを有することを特徴とする補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して建築材料の分野に関し、特に、プレキャストおよびモノリシック補強コンクリート構造を含むコンクリート用の補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
補強コンクリートは一般的な建築材料である。典型的にはコンクリートを補強するために、高い引張強さと延性を持つ埋め込まれた補強構造を利用する。
【0003】
一般的な補強材の一種が鋼補強バー(つまり、鉄筋)である。鉄筋には、熱間圧延または冷間引抜された、円形断面とリブ付きの表面をもつ金属ロッドがある。様々な形のリブが、引張、屈曲または曲げに対する接合性能のために、鉄筋とコンクリートの間における結合を強化する。しかしながら、リブの高さが低いのに起因して、リブとコンクリートとの間の結合が応力下で壊れて、コンクリート内部の鉄筋の滑りを引き起こし、それがコンクリートを脆弱化する可能性がある。補強材の必要な引張強さを得るためには、鉄筋量を増やさなければならず、すると補強材の重量および補強コンクリートの建設費用が増えてしまう。
【0004】
別のタイプの一般的な補強材は、熱間圧延された波形リブを有する管状ブランクから製造される。この製造方法は補強材の重量を低減する。しかし、このような管状の補強構造は、一般に、20mmより小さい直径では製造できない。さらに、複雑性と、このような補強材の製造にかかるエネルギー消費量が増加するため、経済的利益は僅かとなる。
【0005】
別のタイプの補強材は、複数の金属ワイヤを撚り合わせたストランドを含む、ケーブル補強材である。このタイプの補強構造は鉄筋よりも効果的な補強力を提供するが、製造コストがより高くなる。
【0006】
これら全ての補強材の主な欠点は、材料が効果的に使われていないことである。つまり、例えば曲げと引張の組合せなど、補強コンクリート構造に複数の負荷が組み合わさってかかっているとき、補強材の表面層のみしか実際に機能していない。構造物の強度特性は、完全には利用されていないのである。
【0007】
過去一世紀において、現在使われているリブ付きの鉄筋よりも構造品質係数(重量あたりの耐荷重性能)が高い、螺旋状の補強材を開発するために多くの努力がなされた。
【0008】
一つの知られた鉄筋のデザインは、長方形断面を有する鋼帯を螺旋状に曲げ、曲げられた後にリブは変形パターンにかけられる。この技術的な解決法も、補強構造中の材料の利用を最適化していない。
【0009】
したがって、より軽量で、その材料の強度特性を最大限に利用する、補強コンクリートのための改良された補強材が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には、補強コンクリートのための補強構造が開示されている。
【0011】
一実施例の形態において、補強コンクリートのための補強構造は、螺旋ロッドを有し、前記螺旋ロッドのピッチは前記螺旋ロッドが内接する円柱の直径の1倍と10倍の間であり、前記ロッドの平断面が、前記ロッドの中心軸周囲の中心部分と、前記中心部分に連結され、ギャップにより互いに分離されている少なくとも2つの花弁部とを有し、前記ロッドの中心軸周囲の少なくとも2つの異なる同心円において、小さい円を有する花弁部の断面の角度の合計が、大きい円を有する花弁部の断面の角度の合計と等しいか、またはそれよりも少ない。
【0012】
ある形態では、前記花弁部の断面は実質的に三角形である。
【0013】
ある形態では、前記花弁部はその頂点において中心部分と接続している。
【0014】
ある形態では、前記花弁部の中心部分から離れている端部は円形である。
【0015】
ある形態では、前記ピッチは一定である。
【0016】
ある形態では、前記ピッチは可変である。
【0017】
ある形態では、前記ロッドの少なくとも1の表面はリブを有する。
【0018】
ある形態では、前記リブの高さは0.5mmと1.0mmの間であり、前記リブの間隔は5mmと15mmの間である。
【0019】
ある形態では、前記バーは金属製である。
【0020】
ある形態では、前記バーは溶接可能である。
【0021】
上記本発明の一実施例の形態の単純化された要約は、本発明の基礎的な理解を提供するのに役立つ。この要約は、想定される全ての形態の広範囲な概要ではなく、全ての形態の要素や重大要素を特定したり、本発明の範囲の何れかまたは全てを規定したりすることを想定していない。この要約の目的は、以降の本発明のより詳細な説明の前に、1または複数の形態を単純化した形式で提示することである。前述の事項を達成するため、記載された1または複数の本発明の形態は、特許請求の範囲において説明され、明記されている特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に組み込まれ、一部を構成する添付された図面は、本発明の1または1以上の実施例を示しており、詳細の説明と共に、本発明の原理と捕捉を説明するのに役立つ。
図1図1は、表面にリブを有する一例としての2ブレード鉄筋の断面を示している。
図2図2は、表面にリブを有する一例としての2ブレード鉄筋の全体図を示している。
図3図3は、表面にリブを有していない一例として3ブレード鉄筋の断面を示している。
図4図4は、表面にリブを有していない一例として3ブレード鉄筋の全体図を示している。
図5図5は、表面にリブを有していない一例として4ブレード鉄筋の断面を示している。
図6図6は、表面にリブを有していない一例として4ブレード鉄筋の全体図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書には、補強コンクリートのための補強構造の実施例の態様が開示されている。この分野における通常の知識を有するものであれば、以下の説明が例示的なものに過ぎず、限定を意図しているものではないことを理解するであろう。他の態様は、本明細書を参照することにより、当業者にとって自明となる。次に、添付された図面に示された実施例の態様の説明について言及する。図面と以下の説明を通じて、同様または類似する部品を指すのに同じ参照番号が用いられる。
【0024】
図1−6に示された実施例の鉄筋は、仮想円筒の直径(φB)の1乃至10倍と等しいピッチを有する複数ブレードの螺旋であり、上記円筒に螺旋が内接する。ブレードはロッドの長さ方向に沿って螺旋状に延びている。ピッチTは可変でも一定でもよい。螺旋の各ブレードの断面は、おおよそ三角形の花弁部であり、その頂点は補強ロッドの軸の周りの中心部分を向いている。各三角花弁部の外側はおおよそアーチ状に形成される。
【0025】
実施例の鉄筋は、鋼などの金属から作られてもよく、溶接可能であり、これにより様々な応用に役立つ。
【0026】
螺旋の実施例のブレードの表面は、例えば、図1−2に示されているように、おおよそ直線状のリブや、直線状の突出部を有していてもよい。リブの断面の寸法は、螺旋が内接する仮想円筒の直径に応じて、0.5×0.5から1.0×1.0mmの範囲にあり、リブの間隔は5から15mmの範囲にある。リブは半円柱状に形成されてもよい。より一般的には、リブは任意の形状を有する。様々な態様では、リブは、直線状、網状または先の尖ったものとすることができる。様々な態様では、ロッドの軸に対してリブは横断方向または長さ方向であってもよい。
【0027】
実施例のロッドの1つの特徴は、(中実の円柱状のロッドと比較して)重さを低減しながら、断面の外周に多くの補強材料を移すことにより、コンクリートと補強材の両方の強度特性を適切に利用することで、このようなロッドで作られた鉄筋コンクリート構造が実質的に強度を保っていることである。断面の外周に材料を再分配することにより増加した補強材の働く能力は、次の考察により説明される。
【0028】
複合荷重とは、複数の内部力因子が構造体の断面に同時に作用するときの荷重である。複合荷重は、構造要素の断面において、例えば、引っ張りの場合は、法線力N、純曲げについては曲げモーメントM、ねじれについてはトルクMτでのように、単一の内部力因子のみが生じる、単純な種類のもの(軸方向張力、曲げおよびねじれ)の組合せとみなすことができる。それらの種類の荷重(軸方向張力、曲げおよびねじれ)は単純荷重である。それらの基本的な関係は、以下の表に提示されている。

ここで、
σ―軸方向引張強度
F―断面積
τ―剪断強度
―軸方向の抵抗モーメントであり、軸に対する慣性モーメントJと断面の最遠位点までの距離rmaxの比である。
―固定軸に対する軸方向の慣性モーメントであって、系のnすべての物質点の質量と、それらの軸までの距離の2乗との積の総和:

であり、ここで、i=1,...,n、mはi番目の点の質量であり、rはi番目の点から軸までの距離である。
【0029】
上の式からわかるように、実施例のロッドのすべての断面は、純引張下においてのみ均一に荷重がかかる。複合荷重下において、荷重のほとんどは鉄筋の断面の外周部位に、軸からの距離の2乗に比例してかかる。この理由から、ブレードの断面はその特性を完全に利用するために、おおよそ三角形の花弁形状をしている。
【0030】
本発明に係る補強材の利用は、鉄筋の重さを実質的に低減しながら、補強コンクリート構造の強度を保つことを可能にする。実施例の鉄筋の一つの利点は、コンクリートと補強材の両方の強固さをさらに活かすことにより補強コンクリートの強固さを維持しながら、補強材全体の重さを低減することである。例えば、実施例の鉄筋構造は、曲げに対して同じ耐性を示す鉄筋タイプの補強材よりも遥かに軽い。
【0031】
実施例の鉄筋構造の別の利点は、補強構造と周りのコンクリート材料との接触面積を実質的に増加させ、したがって、補強構造により補強コンクリートが耐えられる荷重が確実に増加することである。
【0032】
実施例の補強ロッド構造表面にリブを設けることの利点は、これにより荷重がかけられたときに補強構造がコンクリートから「ねじれてはずれる」ことを防ぐことである。実施例の鉄筋構造のエッジを丸める利点は、補強材と接する位置でのコンクリート内の応力集中を防ぐことである。
【0033】
実施例の鉄筋構造を組み込んだ補強コンクリートは、同じ断面直径を有する鉄筋タイプの補強材を組み込んだ補強コンクリートと同じ強さを有する点、理解すべきである。
【0034】
特に、そのような設計の実施例の鉄筋は、鉄筋タイプの補強材と比較して、同じ強度を提供しながら、利用する金属または鋼が大幅に少ない。
【0035】
例えば地震が起きたときに、建築材料が破損した場合、実施例の鉄筋の使用は、落下するコンクリートの破片による人の死亡や負傷のリスクを低減する。
【0036】
様々な態様において、本明細書に示された実施例の鉄筋構造を製造する方法は、特定のプログラム命令によりプログラムされたコンピューターの制御の下、既知の電気機械的圧延およびねじり装置を使用して実行できる。実施例の鉄筋は、例えば加熱された円筒ロッドを、凹凸のつけられた加工表面をもつ2以上の被駆動成形ローラを有する1以上のスタンドに通し、その後、得られた鉄筋をねじることで作成することができる。
【0037】
明確にするために述べると、明細書にはすべての形態によるルーチン的な特徴は開示されていない。本発明の実際の開発における実施において、開発者の特定の目的を達成するために数々の実施条件の決定をしなければならず、これらの特定の目的は異なる実施と異なる開発者によって様々であることが理解される。このような開発努力は複雑で時間がかかると思われるが、本発明を利用する当業者にとっては容易に想到しうる。
【0038】
さらに、ここで用いられた表現法と用語法は、制限ではなく説明を目的としており、当業者の関連する分野の知識と、ここに開示された教示と誘導により、当業者は本明細書の用語法と表現法を理解する。さらに、本明細書または特許請求の範囲のいずれの用語も、明記されている場合を除き、通常とは違うまたは特別な意味として用いられていない。
【0039】
ここに開示された様々な形態は、図面により示された既知の構成品と同様の現在および将来において既知の構成品を包含する。さらに、形態と実施例が示され、説明されているが、本開示を利用する当業者にとって、ここに開示された発明のコンセプトから外れることのない、既述の改変よりさらなる改変が可能であることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6