(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の場所にいる人が発する身体の振動を振動信号センサー手段で検出し、該振動による振動信号に所定の信号処理を施して振動信号を得、得られたこの振動信号に基づいて人の健康状態を検出する人の健康状態検出装置において、
前記振動信号センサー手段により人体からの信号を検出する検出手段と、検出した信号の前処理を行なう前処理手段と、該前処理手段により前処理を行った信号をフィルタリング処理して複数の信号に分離するフィルタリング手段と、該フィルタリング手段の出力から呼吸音、心拍振動、音声、いびき、及び体動信号のうち少なくとも2つの信号を得る信号出力手段とを有し、
前記振動信号センサー手段は、加圧される圧力の時間に関しての微分成分に比例して出力する手段であり、振動センサー本体又は振動センサー本体とその上下に積層して形成される底板、クッション部材、振動収集板の1つ以上から構成され、
前記振動センサー本体は、振動センサー素材を正電極層及び負電極層で挟んだ振動センサーと、前記正電極層の上に形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に形成された上部遮蔽層とを有し、
前記上部遮蔽層と前記絶縁層と前記振動センサーの前記正電極層とで構成されるコンデンサの静電容量が1μF以下であることを特徴とする人の健康状態検出装置。
前記前処理手段は、入力振動信号の振幅を制限する制限回路と、該制限回路の出力を受けて検波動作を行なう検波回路又は積分回路と、該検波回路又は積分回路の出力を増幅する増幅回路と、検出した信号の直流成分を除去する直流除去回路、とにより構成されてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の人の健康状態検出装置。
前記振動信号センサー手段と、該振動信号センサー手段で検出した信号の処理を行なう信号処理部と、該信号処理部で得られた信号を出力する前記信号出力手段とを一体化したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の人の健康状態検出装置。
前記振動収集板の材料としては、PET板、PEN板、カーボン板、発砲スチロール板、PP板、アクリル板、硬化塩化ビニール板、発泡塩化ビニール板、アルミ板、ジュラルミン板、銅板、鉄板を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の健康状態検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1〜特許文献4までに記載の圧電センサーは、それぞれ人が発生する各種の振動信号を容易に検出することができる。また延伸に起因する収縮を抑制し、外来ノイズの影響を受けずに感度よく検出することができる。また製造が容易な電極一体型シールド端子を提供することができるように構成されており、人の発生する各種の振動信号を電気信号に変換することができる。しかしながら、この種のセンサーは人が動くことでセンサーの取り付け位置がずれた時の対策については言及されていない。また、人が動くことにより、寝具等との摩擦による静電気パルスによる雑音についても言及されていない。
【0015】
特許文献5記載の発明は、人が発生する脈拍や呼吸信号等をPVDFで検出し、周波数帯域と信号強度の違いを検出して振動信号を複数の信号に分離して統計処理をすることができる発明であるが、特に呼吸異常の睡眠時無呼吸症候群を検出することを目的としたものであり、本願発明のように信号検出用の検出センサーの具体的な構成が記載されていない。
【0016】
特許文献6記載の発明は、身体に発生した振動信号を検出する技術は記載されているが、具体的に振動信号をどのようにして分離するかについては、記載されていない。多分、それぞれの信号の種類毎にセンサーを具備しているのではないかと思われる。
【0017】
特許文献7記載の発明は、人から得られる振動信号をベッドのフレームを介して検出するものであり、本願発明のように身体からの振動を振動センサーから分離して検出して抽出するものではない。
【0018】
特許文献8記載の発明は、便座に圧電センサーを配置し、該便座で検出した振動から、精度よく動作情報と生体情報とを得るようにしたものであり、本発明のように身体からの振動を振動センサーから分離して検出するものではない。振動信号検出の構成には、本発明とは明らかな違いがある。
【0019】
特許文献9記載の発明は、小動物を検出装置上に載せ、この小動物からの生体信号を高感度に検出することができるようにしたものであって、本発明のように人の生体信号を精度よく検出できるようにしたものではない。
【0020】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、人からの振動信号をフィルタリング分離回路を用いて複数の検出信号に分離し、これら信号を24時間精度よく検出することで、人の健康状態を非拘束で判定することができる人の健康状態判定方法及び人の健康状態判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記した課題を解決するために、本発明は、所定の場所にいる人が発する身体の振動を振動信号センサー部で検出し、該振動による振動信号に所定の信号処理を施して振動信号を得、得られた振動信号に基づいて患者の健康状態を判定する人の健康状態判定方法において、前記振動信号センサー部において、人体からの信号を検出し、検出した信号の前処理を行なう工程と、該前処理を行った信号をフィルタリング処理して複数の信号に分離し、呼吸振動,心拍振動,いびき,及び体動信号のうち少なくとも2つの信号を得る工程とを有することを特徴とする。ここで、いびきとは、歯ぎしり,くしゃみ,寝言等の音を発生するものを含む。
【0022】
また、前記振動信号センサー部は、下から底板,クッション部材,振動センサー本体,振動収集板の順に層をなしていることを特徴とする。また、前記センサー本体は、振動センサー又は振動センサーと絶縁層と上及び/又は下の遮蔽層からなることを特徴とする。
【0023】
また、前記絶縁層は厚さが1μm以上、又は上部遮蔽層と前記絶縁層と正電極層とで構成されるコンデンサの静電容量が1μF以下であることを特徴とする。また、前記振動収集板は人の身体部で発生した振動を、減衰させることなく前記振動信号センサー部に伝えることを特徴とする。
【0024】
また、前記振動収集板の硬度は前記振動信号センサー部の硬度よりも高いことを特徴とする。また、前記前処理は、入力振動信号の振幅を制限し、該制限した出力を受けて検波動作を行い、該検波出力を増幅し、検波した信号の直流成分を除去することを特徴とする。
【0025】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動を振動信号センサー手段で検出し、該振動による振動信号に所定の信号処理を施して振動信号を得、得られたこの振動信号に基づいて
人の健康状態を
検出する人の健康状態
検出装置において、前記振動信号センサー手段により人体からの信号を検出する検出手段と、検出した信号の前処理を行なう前処理手段と、該前処理手段により前処理を行った信号をフィルタリング処理
して複数の信号に分離するフィルタリング手段と、該フィルタリング手段の出
力から呼吸音、心拍振動、音声、いびき、及び体動信号のうち少なくとも2つの信号を得る信号出力手段とを有することを特徴とする。
【0026】
また、前記振動信号センサー手段は、振動センサー本体又は振動センサー本体とその上下に積層して構成される底板,クッション部材,振動収集板の1つ以上から構成されることを特徴とする。また、前記振動センサー本体は、振動センサー又は振動センサーと絶縁層と上及び/又は下の遮蔽層からなることを特徴とする。
【0027】
また、前記絶縁層は厚さが1μm以上、又は上部遮蔽層と前記絶縁層と正電極層とで構成されるコンデンサの静電容量が1μF以下であることを特徴とする。また、前記振動収集板は人の身体部で発生した振動を、減衰させることなく前記振動信号センサー部に伝えることを特徴とする。
【0028】
また、前記前処理回路は、入力振動信号の振幅を制限する制限回路と、該制限回路の出力を受けて検波動作を行なう検波回路又は積分回路と、該検波回路又は積分回路の出力を増幅する増幅回路と、検出した信号の直流成分を除去する直流除去回路、とにより構成されてなることを特徴とする。
【0029】
また、前記検波回路は、ダイオードと抵抗とコンデンサよりなり、入力振動信号を受けて人の心拍信号のみを抽出することを特徴とする。なお、検波回路はこのような受動素子よりなるものだけではなく、オペアンプやIC等を用いた能動回路で実現することもできる。
【0030】
また、前記振動センサーは電極端子埋め込み型とすることを特徴とする。また、前記振動信号センサー部と、該振動信号センサー部で検出した信号の処理を行なう信号処理部と、該信号処理部で得られた信号を出力する信号出力手段とを一体化したことを特徴とする。
【0031】
ここで、信号出力手段は、振動センサーで人の振動に基づく信号を検出して、所定の信号を処理して外部に出力する手段をいう。また、前記振動信号センサー部の厚さは10mm以下であることを特徴とする。
【0032】
また、前記振動収集板の材料としては、PET板,発砲スチロール板,PP板,アクリル板,硬化塩化ビニール板,発泡塩化ビニール板やアルミ板,ジュラルミン板,銅板,鉄板等を用いることを特徴とする。
【0033】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動を振動信号センサー部で検出し、該振動信号センサー部からの振動信号に所定の信号処理を施して振動信号を得、得られた振動信号に基づいて患者の健康状態を判定する人の健康状態判定方法において、前記振動信号センサー部で検出した信号を積分して、心電図に類似した振動波形を得ることを特徴とする。
【0034】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動を振動信号センサー部で検出し、該振動による振動信号に所定の信号処理を施して振動信号を得、得られた振動信号に基づいて患者の健康状態を判定する人の健康状態判定装置において、前記振動信号センサー部で検出した信号を積分する積分手段を設け、心電図に類似した振動波形を得ることを特徴とする。
【0035】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から振動センサーにより人の体動に起因する体動信号のパルス群をカウントしてその人の存在不在を判断する健康状態判定装置において、前記体動信号のパルス群のみを検出するため、振動センサーを微少振動吸収用の中間材料で覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によって、生体である心臓の拍動及び肺呼吸等による振動に起因する身体振動の検出を行なうことにより、生体である人の健康状態を24時間、非拘束で検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここでは、先ず振動センサーを患者に非接触で配置し、振動センサーから患者の存在不存在を検出する装置に適用したものについて説明する。
図1は、実施例における装置の設置例を示す図である。人の存在不在の検出を必要とするところのベッド11にあって、ベッドパッド13又はマットレス12の上部や下部に振動信号センサー手段10を設置する。床に敷いた寝具にあっては、敷き布団14の上部や下部に振動信号センサー手段10を設置する。ベッド11又は敷き布団14上に存在している人15の発する身体の振動を振動信号センサー手段10で検出し、身体振動の有無で人の存在及び不在を判定する。
【0039】
身体振動から心臓の拍動に起因する拍動振動を抽出して拍動振動が所定の存在継続時間以上を超えることで人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断する。身体振動から肺呼吸に起因する肺呼吸振動を抽出して肺呼吸振動が所定の存在継続時間以上を超えることで、人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び肺呼吸拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断するようになっている。
【0040】
身体振動から心臓の拍動に起因する拍動振動と肺呼吸に起因する肺呼吸振動が共に有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び拍動振動と肺呼吸振動が共に無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで人15が不在であること、身体振動から鼾に起因する鼾振動を抽出して鼾振動が所定の存在継続時間以上を超えることで、人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び鼾振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判定する。
【0041】
身体振動から心臓の拍動に起因する拍動振動を抽出して拍動振動が所定の存在継続時間以上を超えることで人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断する。身体振動から肺呼吸に起因する肺呼吸振動を抽出して肺呼吸振動が所定の存在継続時間以上を超えることで、人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び肺呼吸拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断するようになっている。
【0042】
図2は実施例における装置構成の概要を示すブロック図である。このブロックは、振動センサー手段100である振動センサー101で人の身体振動を身体振動性電気信号102として検出する。ここで、振動センサー101は、後述する振動センサー30と同じものである。身体振動性電気信号102は差動信号増幅アンプ110で増幅される。拍動フィルタ手段120では、身体振動性電気信号102をもとに、人の心臓の拍動に起因する拍動振動の拍動振動性電気信号123を抽出する。
【0043】
また、肺呼吸振動フィルタ手段121では、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、1Hzに設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えている。この場合において、肺呼吸振動フィルタ手段121は人の肺呼吸に起因する肺呼吸振動の肺呼吸振動性電気信号124を抽出する。
【0044】
また、鼾振動フィルタ手段122では、人の鼾に起因する鼾振動の鼾振動性電気信号125を抽出する。更に体動振動フィルタ手段152は、人の体動に起因する体動振動性電気信号151を抽出する。以上の説明で分かるように、本発明では人の振動性電気信号を振動の種類に応じたフィルタで分離し、分離したそれぞれの信号を所定の閾値と比較して、その比較結果に基づいて人の存在不存在を判定するようにしている点に特徴がある。
【0045】
図2において、260は体動振動のリファレンス値を出力するリファレンス用センサー手段、261はCPU142で演算された各種のデータを記憶する記憶装置である。該記憶装置261としては、例えば半導体記憶装置やハードディスク装置(HDD)が用いられる。
【0046】
この種のフィルタ手段において、拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121,鼾振動フィルタ手段122及び体動振動フィルタ手段152は、コンデンサや抵抗及びオペアンプ等で構成されたローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)のアナログフィルタ、又は身体振動性電気信号102であるアナログ信号をA/Dコンバータでデジタル信号に変換し数値化されたデータをもとにCPU(中央処理装置)の演算処理にてフィルタリングを行なうデジタルフィルタの何れか一方又は双方で構成することができる。
【0047】
なお、デジタルフィルタにあっては、フィルタ処理部専用のA/Dコンバータ及びCPUで構成することも可能であるが、存在不在判定手段140のA/Dコンバータ141及びCPU142で処理することができる。存在不在判定手段(離床入床判定手段ともいう)140では、抽出された拍動振動性電気信号123がアナログ信号の場合には、A/Dコンバータ141を用いて数値化されたデータと、CPU142で存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧を比較する。
【0048】
そして、この比較結果をもとに拍動振動性電気信号123の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が、拍動や肺呼吸や鼾や体動等の振動信号センサー手段の付近に存在していることを判定する。また、拍動振動性電気信号123の検出有りの状態を継続している時間を所定の存在継続時間と比較する。そして、拍動振動性電気信号が検出無しの状態を継続している時間が所定の不存在継続時間以上を超えた時点で、存在不在判定手段140中のCPU142は、人が振動信号センサー手段100(
図1の振動信号センサー手段10に同じ)の付近に不在であることを判断する。
【0049】
ここで、体動振動性電気信号だけ、人の存在不在の判断が異なるのは以下のような理由による。体動振動は人がベッドから起き上がったり、ベッドに寝たりする行動を検出するものであり、その行動は拍動や呼吸のように頻繁に起きるものではないからである。所定の時間内に体動振動群が少なくとも2回以上あれば、その人はベッドから起きたり、寝たりしていると判断できる。逆に、所定の時間内に体動振動群が1回以下の場合には、起き上がった人がそのまま外出したと判断できる。
【0050】
なお、体動振動は拍動等の信号を検出する場合に比較して、検出信号の振幅が非常に大きい。例えば、拍動振動信号が数10mVであるのに対して、10Vの大きさになる。つまり、他の身体振動に比較して1000倍くらい大きい。
【0051】
前述したように、本発明は1個の振動センサー101を用いて4種類の振動を検出しているため、一つのアンプの出力にこれら4個の振動の信号が混ざっている。そこで、体動振動検出手段150は、体動信号のみを得るために、リファレンスの振動センサー260において、拍動、呼吸等の微弱な信号を吸収でき、信号伝達を防止するような吸収体を用いて構成した振動センサーを用い、拍動、呼吸等の微弱な信号を取り入れないセンサーを用いることにより、体動振動のみを得ることができる。
【0052】
体動信号の大きさは、他の生体信号に比べて100倍、1000倍以上大きい。拍動等の生体信号は、クッション等の中間材料を人と振動センサーの間に挿入することにより、中間材料は機械的にこれらの微弱な生体信号を吸収することができる。しかしながら、体動信号はその信号値が大きいので、体動信号だけは吸収できない。
【0053】
この結果、これらの中間材料を挿入した振動センサーにより、体動信号のみを抽出することができた。中間材料としては、柔らかい有機材料及び無機材料繊維、空気層を使用することができる。
【0054】
一方、振動センサー1個で、体動信号とその他の生体信号を同時に抽出する場合は、体動信号は広範な周波数帯域に分散しているので、この広範な周波数帯域で、拍動、呼吸信号などの生体信号が得られる周波数帯域以外の周波数帯域を近似的に体動信号とみなすこともできる。
【0055】
体動信号検出手段150はリファレンス用センサー手段260の出力を用いて体動振動性電気信号を出力する。そして、身体振動性電気信号102から体動振動のみを検出する。検出された体動振動信号は、差動信号増幅アンプ110の負入力に入力される。一方、差動信号増幅アンプ110の正入力には身体振動性電気信号102がそのまま入力される。従って、差動信号増幅アンプ110からは、体動振動信号が除去された身体振動性電気信号102’が出力される。
【0056】
身体振動性電気信号102’は、拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121及び鼾振動フィルタ手段122に入力され、それぞれの振動信号が選択される。この結果、拍動フィルタ手段120は拍動振動性電気信号123のみを出力し、肺呼吸振動フィルタ手段121は肺呼吸振動性電気信号124のみを出力し、鼾振動フィルタ手段122は鼾振動性電気信号125のみを出力する。
【0057】
一方、体動振動検出手段150の出力は、体動振動フィルタ手段152に入り、該体動振動フィルタ手段152は体動振動性電気信号151のみを出力する。
【0058】
図3は体動振動波形を示す図である。縦軸は電圧(V)、横軸は時間で振動群で構成されている。横軸は1秒間隔で示されている。図に示すように、体動振動の波形の振幅は±4〜±4.5Vと大きく、パルス状であることが分かる。体動振動は、他の振動である拍動振動,肺呼吸振動,鼾振動(何れも出力が10mVと小さい)と比較して大きい。
【0059】
体動振動フィルタ手段152は、アナログ又はデジタルフィルタで構成され、入力された体動振動信号を最適な振幅の信号に変換して出力し、存在不在判定手段140に入力する。前述したように、体動振動信号はパルス状であるため、体動振動フィルタ手段152がその出力を微分すると、パルス信号を得ることができる。このパルス信号は、体動振動性電気信号151として、存在不在判定手段140に入る。
【0060】
存在不在判定手段140は、前記パルス信号151を、CPU142に与える。CPU142は、入力パルス群の所定時間内の個数をカウントする。そして、カウントの結果、パルス群数が2個以上であれば人は存在し、パルス群数が1個以下であれば人は存在しないと判定する。
【0061】
次に、拍動振動信号,肺呼吸振動信号及び鼾振動信号の検出方法について説明する。差動振動増幅アンプ110は、差分信号の出力がVオーダとなるまで増幅する。このようにして抽出された各振動性電気信号は、フィルタ手段によりそれぞれの振動信号に分離することができる。
【0062】
さて、通報手段270では、存在不在判定手段140からの存在不在判定信号143をもとにLEDの点灯やブザーを鳴らして通報を行なう。又はナースコール装置への通報や通信回線を通して外部に通報する。
【0063】
記憶装置261は、CPU142で作成された各種のデータを記憶しておく。例えば、時系列で拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121,鼾振動フィルタ手段122及び体動振動フィルタ手段152の出力を記憶する。
【0064】
次に、本発明で用いる振動信号センサー手段(10又は100)の動作について説明する。
図4は本発明の振動信号センサー手段の構成例を示している。該振動信号センサー手段10(又は100)は、下から底板26,クッション部材25,振動センサー本体21,振動収集板27の順に層を構成している。振動センサー本体21としては、ピエゾ素子が好適に用いられるが、その他のセンサーを用いてもよい。
【0065】
振動センサー本体21は、外部からの各種雑音特に電磁雑音を排除するため、上部遮蔽層(電磁シールド用フィルム)及び下部遮蔽層(電磁シールド用フィルム)でセンサー本体21全体を覆うことが必要であった。具体的には
図5に示すように、下から下部遮蔽層(下部電磁シールド用フィルム)32,振動センサー30(負電極層51,振動センサー素材(PDF)53,正電極層52で構成される構造物),絶縁層(絶縁シート)33,上部遮蔽層(上部電磁シールド用フィルム)34の順に層をなしている。振動センサー本体21は、
図5に示すように上部遮蔽層34,絶縁シート33、振動センサー30と下部遮蔽層32よりなるもので、以降「振動センサー本体」と言う時は、この上部遮蔽層(電磁シールド用フィルム)及び下部遮蔽層(電磁シールド用フィルム)で振動センサー30を覆った構成のものを言うことにする。但し、負電極線38が下部遮蔽層32を兼ねることができるような構成の場合等は、下部遮蔽層は必要としない。
【0066】
図5において、37は正電極層に接続されている正(プラス)電極線、38は負電極層に接続されている負(マイナス)電極線である。下部遮蔽層32と上部遮蔽層34は同電位にされ、振動センサー30を外来からの電磁ノイズ、水分、空気、光、ベッド周辺からの機械的振動などから遮断している。ここで、振動センサー本体21は
図5に示すように振動センサー30、下部遮蔽層32、上部遮蔽層34及び絶縁シート(絶縁層)33よりなるものである。
【0067】
絶縁層33は正電極層52と上部遮蔽層34との絶縁を確保するもので、心肺振動などの1Hz以下の振動を読み取る場合には、絶縁層の厚さに無関係に、十分な出力値が得られるが、周波数の増加に対応して、出力値が小さくなり、鼾とか寝言の信号といった100乃至500Hz付近の周波数の振動の場合は出力されなくなった。外部からの外来雑音が正電極層52に影響するのを保護するとともに、鼾とか寝言の信号といった100乃至500Hz付近の周波数の信号が、静電容量を介して上部遮蔽層34に漏れたものと推定された。このことを防止するために絶縁層33の厚みを10乃至100μmとしたところ、鼾や寝言等の音声に起因する振動信号を受けることができた。即ち、振動センサー30の静電容量に比べて上部遮蔽層34と絶縁層33と正電極層52とで作る静電容量は10分の1以下にする必要が分かった。また、振動センサー素材(PVDF)53の抵抗、及び正電極層52と振動センサー素材53との間の抵抗などの合計された抵抗値Rと、上部遮蔽層34と絶縁層33と正電極層52との間にできるコンデンサーの静電容量Cとの積C×Rより決まる時定数(1/(C×R))が低くなると、100Hz乃至500Hz付近の振動である鼾や寝言などの音声成分を出力できなくなる。
【0068】
このため、この音声信号を出力するためには、絶縁層の厚みは、センサー本体の面積、絶縁層の比誘電率を換算しても最低1μm以上が必要であるが、10μm乃至100μm以上であることが好ましい。更に、上部遮蔽層34と絶縁層33と正電極層52とで構成されるコンデンサの静電容量は少なくとも1μF以下であることが必要であり、0.1μF以下にすることが好ましいことが分かった。正電極線37、負電極線38はシールド線を用い、そのシールド電極部は上部遮蔽層34及び下部遮蔽層32と同一の電位としている。
【0069】
振動収集板27は、身体振動を減衰させることなく、振動センサー本体21に伝達するものである。本発明者は、振動センサー本体21の上にベニア板を用いたところ、振動センサー本体21と震動源としての心臓との距離が離れていても、十分大きな振動信号が得られることを確認した。ベニア板は木製であり、耐久性と再現性に問題があるため、ベニアに代わる材質としては、ヤング率が高く、振動を伝達しやすいものがよく、プラスチックの板(例えばPET板、発砲スチロール板、PP板、アクリル板、硬化塩化ビニール板、発泡塩化ビニール板等)や、金属板(例えばアルミ板、ジュラルミン板、銅板、鉄板等)を用いることができる。以下に各々の材質の測定波形を示す。
【0070】
図6は振動収集板27が無いときの振動センサー本体21の振動波形を示す図である。横軸は時間(秒)、縦軸は振幅(V)である。振動収集板27が無い時の振動センサー本体21の振動振幅は±1V程度である。
図7は振動収集板としてベニア板−4mmを用いた時の振動振幅を示す。この図で分かるように、正方向が3V以上、負方向が−1V程度と振動収集板が無い時よりも振幅が3倍程度に増幅していることが分かる。
図8はベニア板−2mmの時の振幅を示している。その振動振幅はベニア板が
図7に示す場合とほとんど変わらないことが分かる。
【0071】
図9はPET板−1mmの場合の振動センサー本体21の振動波形を示す図である。振幅は正方向に3Vあり、十分な振幅の波形が得られていることが分かる。
図10はPET板−0.5mmの場合の振動波形を示している。振幅が+2Vであり、
図9の1mm厚の場合よりも振幅が減っている。
図11は硬質塩化ビニール板−0.7mmの場合の振動振幅波形を示す図である。振幅は2V程度である。
【0072】
図12は低発泡塩ビ板−1mm板の場合を、
図13は低発泡塩ビ板−2mmの場合の振幅を示している。2mm板の方が振幅が2.2Vで、1mm板の振幅2Vを上回っている。
図14はアルミ板−1mmの場合の振幅を示している。その振幅は1.5V強程度である。
【0073】
前記した正電極引き出しリード線37、負電極引き出しリード線38の構造に関して実施例を説明する。
図15は取り出し口の構造を示す図である。図に示すように、負電極層51と正電極層52と電極端子の接続をセンサー本体(PVDF)53の面内に形成する電極端子埋め込み型とすることを特徴としている。
図15の実施例では、電極端子が112〜114までの3組が設けられている様子を示す。図では、断層面Aと断層面Bと断層面Cの様子を併せて示している。断層面Aにおいて、34は上部遮蔽層、33は絶縁層、53は振動センサ素材(PVDC)、51は負電極層、52は正電極層である。
【0074】
図5Aは従来の信号接続部の構成を示している。振動センサー素材(PVDF)53を正電極層52と負電極層51で挟んでいる。振動センサー30の両面には導電性皮膜があり、この両皮膜の間に振動によって発生した電圧が生じる。この電圧を引き出すため、2つの耳59,59‘を設け、それに図示しない正電極線37と負電極線38を図示されていないハトメ端子49でかしめ接続していた。しかしながら、耳を出す方法では耳の付け根の機械的強度が低く、使用中に耳が切断され、信号が絶たれてしまう問題があった。
【0075】
そこで、耳に引き出し用リード線をつけるのではなく、振動センサー30の本体部で接合をとることとし、
図5Bに示すように、押さえ部材46で振動センサー30を押さえ、取り出し電極45との導通をとる。そのために、振動センサー30の両面の導電性被膜に平編み銅線を導電性接着剤で接着し、振動センサー30の枠外に引き出し、それにシールド線からなる図示されていない正電極線37と負電極線38を半田付けした。更に、上部押さえ部材46で導電性被膜と平編み銅線との接着面の強度の保持を助けることとした。
【0076】
図5Cは押さえ付け部位の拡大図、断面図と上面図を示す。押さえ部材46を押さえると、振動センサー30が押さえ部材46との間で押さえられ、振動センサー30の両側が押さえ部材46に圧接することにより、取り出し電極45から振動センサー出力が取り出される。
【0077】
次に、正電極線37と負電極線38の構造について実施例を示す。
図15に示すように、負電極層51と正電極層52と電極端子の接続を振動センサー素材53の面内に形成する電極端子埋め込み型とすることを特徴としている。
図15では、112〜114と電極端子が3組記載されている。振動信号センサー部10と信号処理部との配置位置の関係から電極引き出し方向を自由に選ぶ必要から、3方向に取り出し電極を設けてある。もちろん、振動信号センサー部10と信号処理部との配置位置の関係が一定であるなら、1方向のみに限定してもよいし、2方向でもよいことは明らかである。
【0078】
次に取り出し電極について説明する。
図15に示すように、取り出し電極のない部分の断層面Aと、取り出し電極の真上の断層面Bと振動センサーのエッジ部の断層面Cとを示した。図において、51は負電極層、52は正電極層、53は振動センサー素材(PVDF)、33は絶縁層、34は上部遮蔽層である。なお、この図で示す負電極層51、正電極層52、振動センサー素材53は、
図5に示す振動センサー30を示している。
【0079】
更に詳しく、正の取り出し電極並びに負の取り出し電極との接続部の詳細を
図16に示す。正の取り出し電極58では、上部遮蔽層55、絶縁層54、負電極層51、下部遮蔽層56に切りかけを作り、正の取り出し電極58をハトメ端子49などを用いて正電極層52とかしめて、接続電極を振動センサー本体(振動センサー素材53)内に埋め込み接続した。正電極層52、振動センサー素材53はもともと大面積であり、かしめ部に外力がかかっても、全体としてストレスを受けるので、正電極層52の切断に対しては十分な強度を保つことができた。
【0080】
負の取り出し電極57では、正電極層52のみに切りかけを作り、負の取り出し電極57をハトメ端子49などを用いて負電極層51とかしめて、接続電極を振動センサー素材53内に埋め込んで接続した。負電極層51、振動センサー素材(PVDF)53、更に上下の遮蔽層55,56、絶縁層54はもともと面積が大きいので、かしめ部に外力がかかっても、全体としてストレスを受けるので、負電極層51の切断に対して十分な強度を保つことができた。
【0081】
図17はセンサー部と装置本体との接続関係を示す図である。
図4と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、30は振動センサーである。41は装置本体との接続を行なう接続部である。該接続部41は、振動センサー30と装置本体130を接続する部分であり、接続部41は、前述したように電極端子埋め込み型となっており、その周囲はシリコンゴムで覆われている。装置本体130は、振動センサー30の出力を入力して所定の振幅まで増幅し、該振動センサー30の出力から所定の拍動,呼吸,鼾,体動等の振動を得て、人の健康状態を判定する部分であり、図に示すように一体化することで、本発明を実現するに当たり、製造が容易になるという特徴を持つ。
【0082】
接続部は電極端子埋め込み型となっているので、接続部が
図5Aに示すリード線型のものに比較して経年疲労により接続断となることがない。具体的には、振動センサー30と引き出し線とを電極端子埋め込み型とすることで、信頼性の高い接続とすることができる。この場合において、接続部41を電極端子埋め込み型とすることが好ましい。この場合において、埋め込み型電極端子と細径同軸ケーブル40を接続するものとして、ハトメ端子49を用いることで、電極接続部を確実に接続することができる。振動センサー30の出力は、装置本体130に入る。
【0083】
次に振動センサー30(
図5参照)の形状についての第1の実施例について説明する。人体からの心拍並びに呼吸,寝言などの音を受信するためには、それら信号の発生源近くにセンサーを配置する必要がある。第1の実施例では、心臓と肺臓との全体をカバーするように患者の背骨に沿った方向に40〜5cm、それと直角の方向に80〜10cm(ベッドの幅に近い値)の範囲をカバーする必要がある。これを一枚の振動センサー30で実現するために、4cm×9cmのシートを用いた。これにより、患者の寝返り等による体位の変化にも十分に追従できる生体センサーを実現することができた。
【0084】
図18は振動センサー30の配置例を示す図である。(A)は患者の心臓の近くに幅の狭い振動センサー30を配置した例を示している。この配置では、振動センサー30の幅が狭すぎて、患者が寝返りをうった時等に振動センサー30が心臓位置からはみ出してしまい、心拍振動を得ることが不可能になってしまう。そこで、(B)に示すように振動センサー30が患者の身体に応じて面積に余裕のある振動センサー30’とすることで、非拘束状態でも患者の体位変動に十分に追従することができた。
【0085】
前述したように、電極接続部41をハトメ端子を用いることで、振動センサー30と装置本体130を確実に接続することができる。更に、本発明によれば、振動センサー30を並列型接続方式にしたり、直列型接続方式にしたりすることができる。電極接続部41は耐震性と経年変化による劣化を予防するため、シリコンゴム、レジン等の材料で覆い固める。
【0086】
図19は振動センサー30を4個接続する状態を示す図である。(A)は1個の振動センサーを(B)は4個の振動センサーを示している。30は振動センサー、45は取り出し電極、46は押さえ付け部材を示している。このような構成から、接続を行なうことができる。
【0087】
図20は振動センサー30を4個並列接続した例を示している。患者の体位や、寝ている位置によらずに常に心拍の信号をとるため、振動センサー30−1から振動センサー30−4までの4個の振動センサー30の正電極層52を互いに結び、また負電極層51を互いに結び、振動センサー30を4個並列に接続する。そして、正電極取り出し端子43と負電極取り出し端子44から信号が取り出される。取り出し端子のこの状態は、1枚の振動センサーと見なすことができ、振動センサーで検出する信号が弱い時に使用される。即ち、この方法によれば安定した振幅の信号を取り出すことができる。
【0088】
図21は振動センサー30を4個直列接続した例を示している。この例では、振動センサー30−1の負電極層51とマイナス電極と振動センサー30−2の正電極層52と結び、振動センサー30−2の負電極層51は隣の振動センサー30−3の正電極層52と結び、振動センサー30−3の負電極層51と隣の振動センサー30−4の正電極層52と結び、各振動センサー30を直列に結合したものである。42と42’は振動信号の取り出し電極である。
【0089】
この例では、振動センサー30−1の正電極層52と最後の振動センサー30−4の負電極層51との間の信号を利用する方法で、いわゆる各振動センサー30を直列に結合した方法である。この場合、各振動センサーの出力を直列に接続するので、各振動センサーの出力が加算され、心拍の信号を例えば4Vと大きくとることができる。この場合、直列接続の順序は特に問わない。例えば3番,4番,1番,2番という具合に接続しても構わない。また、
図20に示す状態で、各振動センサー30の信号をチェックし、一番心拍信号の大きい振動センサーを選ぶ方法もある。
【0090】
振動収集板27(
図4参照)を用いない場合、心臓の真下に振動センサーをもってくる必要がある。この実験を行っている時に、厚さ2mmのベニア板を振動センサーの上に置いたところ、このベニア板の上に心臓がある限り、強い信号を受信することができた。詳しい理由は不明であるが、このベニア板は振動拍動の一番大きい振幅の心臓拍動を収集することが分かった。
【0091】
そこで、ベニア板の代わりに各種の材料の板を試験したところ、これらの材料も信号収集能力があった。具体的には、プラスチックの板(例えばPET板,発泡プラスチック板,アクリル板,硬化塩化ビニール板,発泡塩化ビニール板等)、金属板(例えばアルミ板,ジュラルミン板,銅板,鉄板など)である。
【0092】
振動収集板の形状については、患者や介護者が取り扱う際に負傷するのを防止するため、エッジは磨いてあることが不可欠である。単なる板材の切り落としたままであることは望ましくない。また、同様の理由から、各辺は面取り作業がされていることが必要である。また、4隅は丸めておくことが望ましい。例えば2〜50mmRが望ましい。
【0093】
振動信号センサー手段の振動収集板27の厚みは、人が乗った時に塑性変形を起こさないことが必要である。ヤング率との関係で決まるが、厚さの最小値を決める。一般的には0.2mm以上が必要である。更に、患者が振動信号センサー手段をマットレスの上から感知することがあると、寝心地が損なわれるので最大10mm以下、好ましくは5mm以下が望ましい。なお、これらの場合において、振動収集板の堅さは振動センサー本体のそれよりも若干堅いことが好ましいことが分かった。また、クッション部材25は、看護者が患者のベッドの近くを歩行した時の振動を除去するもので、センサー本体21の下部に配置される。
【0094】
次に振動センサーの出力を受けて、心拍,呼吸,鼾等の信号を信号処理する入力回路の構成について説明する。ここでは、心電波形の場合を例にとる。先ず、心電図と本発明の振動センサーで得られる心拍振動波形の類似性について述べる。心電図は人体の中で起こる電気パルスであり、心拍振動は心臓への血液の出入りに伴う、重さの変化とか心臓の収縮拡張の際の振動であり、完全に一致することはないが、電気パルスによる心臓の収縮拡張による振動であるので、模式的には類似性が得られる。
【0095】
図22は心電図波形の正常状態を示す図である。図に示すように、P波,T波,U波,QRS波とから構成されている。図中に各部の名称を示している。次に、心拍数の数え方について述べる。
図23に示す波形の場合、心電図のR波が記録紙のマス目の太い線(5mm毎の線)に重なって記録されている波形に着目する。そこから次のR波が現れるまでに、太めのマス目が何本あるかを調べる。
【0096】
心拍数の計算方法は
300÷太いマス目の数
で計算できる。
図23の例では、大きいマス目が4で心拍数は300/4=75となる。より正確に心拍数を数えるにはR−R間隔の実測値(mm)を求め、1500をその距離で除する方法もある。
1500÷実測のR−Rの間隔
で求まる。例えばR−R間隔の実測値(mm)を求めると、25mm間隔の場合、
1500/25=60となる。
【0097】
図24は本発明の振動センサーで抽出した心拍振動出力波形を示す図である。この出力は、圧電センサーで出力された信号を前述した心拍振動用フィルタで処理した波形である。従って、心拍振動のみの波形である。
【0098】
圧電センサーからの出力信号は、加圧される圧力の時間に関しての微分成分に比例して出力される。従って、時間に関して積分すると加圧圧力の波形が得られる。本発明者は、加圧圧力が0になった時刻を推定し、その時点から積分計算をする方法を見いだし、
図25に示すような安定した心拍振動をうることができ、一般的な心電図でのモニター波形に似た波形(
図25参照)を得ることが可能になった。
図24は拍動振動性電気信号123の波形である。
図25において、実線は積分処理後の抽出結果、破線は本振動信号センサーから得られる拍動振動性電気信号123の波形である。横軸は時間(秒)、縦軸は信号量である。
【0099】
また、加圧圧力がない時の時刻から、次に加圧圧力がない時の時刻の間が心拍の間隔になるので、加圧圧力が無くなった時刻を利用して心拍の拍動から(60秒/心拍の間隔(秒)より心拍数)を求めることが容易にできる。
図26に心拍数を示す。横軸は心拍の順序、縦軸は心拍数(回/分)である。心拍振動の変動は、興奮状態の検知、終末期の検知、ストレス強度の検知に利用でるので、患者の状態をより細かく知ることができ、介護や看護を適切に行なうことが可能となる。
【0100】
図27は心拍とピークの説明図であり、
図24に示す拍動振動性電気信号123の波形の初めの2拍を拡大して示している。横軸は時間(秒)、縦軸は信号量である。心臓の活動を模式的に表現すると、血液が大動脈を通して流れ込む前に、大動脈を通して心臓内の血液が放出する。この際心臓が軽くなり、加圧圧力がなくなる。その時、圧力が徐々に減少しているので、フィルタ処理されて得られた心拍振動の振幅がプラス側から零に大きく変動し、血液が全部流れ出た状態になると、心拍振動の振幅が零(C点)になる。
【0101】
次に大静脈から心臓に血液が流れ込むと、心臓に血液が溜まり、重くなるので、心拍振動の振幅が平衡位置(C点)からプラス側に振れ、最大振幅(A点)になる。積分処理は、振幅が0となる点(C点)から行なうことが重要である。
【0102】
積分処理を始める点(C点)は、振幅で最大値を示すA点を基準にして求めるとよい。最大値(A点)は、ある閾値(B値)より大きい振幅をもつ箇所として取り出す。その点から時間をさかのぼって信号が初めてマイナスになる点(C点)を求め、そのC点の振幅を0として、以降の振幅を加算していく。その結果が
図25の積分処理後の抽出波形である。この閾値(B値)は予め設定してもよいし、患者に合わせて、また環境に合わせて信号レベルから求めてもいい。閾値の求め方は
図24の信号の振幅−出現回数の関係グラフから出現回数がほぼ一定になる振幅域の中から選ぶとよい。
【0103】
図28は、閾値の設定方法の説明図である。横軸は閾値電圧(V)、縦軸はピークの数(個)である。C1からC2までの積分の値(sum)が0にならない時は、肺呼吸振動が完全に分離されていないことなどで、平衡状態がずれていることであり、通常は毎回C点の値を零として再設定し直して加算するので大きな問題はないが、ずれが大きい時は、
offset=sum/((C2−C1)のデータ数)
が平衡状態からのずれであり、その値を次の積分の際に直流成分の値を補正して加算すると、心電図との類似性は高くすることができる。
【0104】
ピーク(A点)の正確な時刻を求めるには、この部分を時間に関しての2次式で近似し、その対称軸が求める時刻(ピーク時刻)になる。この時刻の表より心拍の間隔をリアルタイムに正確に計算し、表示することができる。また、この表を記憶媒体に記録させておくことにより、心拍の間隔を後からでも正確に計算できる。この心拍の間隔時間で1分間の心拍数を計算することができ、各時刻の心拍数を示したのが
図26である。
【0105】
ピーク時刻(An)でLEDなどの発光体を点灯すると、患者の心拍を目で見ることができる。この信号を介護者とか看護士が監視できるところに配置すると、一度に多くの患者を監視でき、点滅が激しい時とか、ゆっくりである時は何らかの異常を示していると判断することができ、適切な処理を迅速に行なうことが可能となる。この場合、LEDなどの発光体の色を心拍を表示するものと変え、心拍用表示と並べて表示することができる。
【0106】
また、新生児のベッドに本装置を設置した場合は、発光体を窓から見ることで、新生児の状態を家族が確認することもできる。
【0107】
図29は本発明の信号処理系の実施例を示す回路図である。振動センサー30(
図5参照)からの信号は、入力端子61からプリアンプ62に入力され、該プリアンプ62では、外来雑音を低減する。そして、プリアンプ62の出力はフィルタ63に入力される。
図30はプリアンプ62の出力波形を示す図である。横軸は時間で1秒間隔で示してある。縦軸は電圧(V)である。この波形には、心拍音と呼吸音とが重なっており、この繰り返し波形の他に、不定期に現れる音(例えば体動に伴う振動,寝言,鼾,歯ぎしり,介護者の動き等)がある。
【0108】
フィルタ63は入力された振動信号を心拍,呼吸,鼾,体動信号に分離させる。分離された振動信号は、
図31に示すように、入力端子61から入力された信号を呼吸音,心拍振動,音声,その他の信号に分離して出力する。分離された振動信号は、検波回路64に入力され、該検波回路64でそれぞれの振動毎にきれいな信号に変換される。検波回路の動作については後述する。
【0109】
検波回路64の出力にDC成分が重畳されていると、アンプの出力が飽和してしまい、正確な信号を取り出すことができないので、続くDC成分除去回路65によりDC成分が除去される。DC成分が除去された振動信号は、波形整形回路66に入って、波形整形が行なわれた後、出力端子67から取り出される。取り出された信号は、図示しない表示装置に表示される。観察者は、表示された信号を観ることができ、画像診断に利用することができる。
【0110】
図31に示すように、本発明によれば、心拍,呼吸,鼾,体動等の信号を分離して抽出することができる。本発明では、これら信号の内、少なくとも2種類の波形を元に比較して健康状態を比較判定することができる。2種類の信号があれば、互いに比較することができるからである。勿論、3種類かそれ以上の信号を用いて健康状態を比較判定することができる。
【0111】
図32は本発明の回路の一例を示す図である。振動センサー30で検出された振動信号は、増幅アンプ70でA倍に増幅される。増幅された信号は、続くアンチエイリアスフィルタ回路71に入力され、低域成分のみが抽出される。アンチエイリアスフィルタ回路71は、図より明らかなようにRCフィルタである。
【0112】
アンチエイリアスフィルタ回路71を通過された信号は、バッファアンプ72でインピーダンス変換された後、ADコンバータ73に入力される。該ADコンバータ73は、入力振動をデジタルデータに変換する。変換されたデジタル信号はMPU74に入り、該MPU74は、デジタルデータを取り込み、所定の信号処理を行なう。信号処理の内容としては、入力信号の大きさを特定し、周波数との関係から当該信号成分が正常に出力されているかどうかを判定する。判定結果は、例えばナースセンターに送られ、該ナースセンターでは、患者の拍動信号を観察し、正常であるかどうかを確認する。拍動信号が正常であった場合には、そのまま放置する。拍動信号が異常であった場合には、患者のもとへ行き患者の様子を調べる。
【0113】
図33は本発明の回路の他の例を示す図である。振動センサー30からの信号は振幅制限回路81に入る。該振幅制限回路81は入力信号に重畳するノイズの振幅を制限する。図ではダイオードが2個、極性を逆にして接続されている。ダイオードの順方向電圧は約0.6Vであるので、図に示す回路の場合、入力に重畳されるノイズは±0.6V以下に制限される。
【0114】
振幅制限回路81の出力は、バッファアンプ82を介して直流電圧阻止回路83に入り、直流電圧を除去する。具体的には、図に示すようにバッファアンプ82の出力を、直流電圧阻止回路83のコンデンサでカットする。直流電圧阻止回路83で直流成分が除去された振動信号は、バッファアンプ84を介して増幅アンプ85から出力される。
【0115】
図34は本発明の回路の他の例を示す図である。振動センサー30の振動信号は、増幅アンプ91に入り、A倍に増幅される。A倍に増幅された信号は、呼吸信号帯域除去用HPF回路部92に入り、呼吸信号帯域が除去され、心拍振動成分が通過する。心拍振動成分はバッファアンプ93を経て続く検波回路94に入り、該検波回路94で心拍振動成分のみが取り出される。
【0116】
検波回路94は、図に示すようにダイオードDと抵抗RとコンデンサCから構成されている。本発明者の実験によれば、検波回路94は図に示すようにダイオードDを1個用いた半波整流回路が心拍信号をもっともよく取り出すことができた。
図35は振動信号を積分した波形、両波検波した波形、半波検波した波形の比較を示している。図において、f1が積分波形、f2が両波検波波形、f3が半波検波波形である。横軸が時間、縦軸が振幅である。
【0117】
積分波形は、振動センサーの出力が微分波形であるので、それを積分した波形は圧力波形となる。両波波形f2は、矢印で示すように本来マイナスの信号であったのが、両波整流したので、折り返されて正側に現れている。この点、半端整流波形f3は所定の間隔で山が見え、この山を処理することで、心拍を正確に検出することができる。従って、
図34の検波回路部94では、心拍を正確に取り出すことができる。
【0118】
半波整流回路94の動作の概要は、以下のとおりである。先ず、ダイオードDを介して電圧が印加されると、その電圧からコンデンサCに電流がチャージされる。電圧が印加されなくなると、RとCの時定数でコンデンサCにチャージされた電荷は放電するので、その出力はほぼ0になる。次の周期にはまた電圧が印加されるので、コンデンサCには電荷がチャージされる。このような動作を繰り返して、半端整流回路の場合に波形f3は、
図35に示すように一定周期でピーク波形が出力されるので、心拍信号を正確に捉えることができる。
【0119】
検波回路94の出力は、バッファアンプ95でインピーダンス変換された後、DC成分除去用HPF回路部96に入って、DC成分が除去される。DC成分が除去された拍動信号はバッファアンプ97を介して続く波形整形用LPF回路部98に入り波形整形が行われる。この波形整形用LPF回路部98はバッファアンプ99に入り、端子から外部に出力される。具体的には、
図32に示すようなADコンバータ73に入り、デジタルデータに変換された後、MPU74に入って、読み込んだデータを用いて判定処理が行われる。
【0120】
以上、説明したように、本発明によれば、振動センサーの出力から目的の測定対象毎に分離され、それぞれの対象毎に判定処理が行なわれ、患者の身体状況を判定することができる。
【0121】
以上説明した本発明装置は、振動センサー本体を含む振動信号センサー手段100と信号処理部と信号出力部を1つの構成体に一体化することにより、装置が軽量コンパクトになり、設計が容易となる。例えば、
図2において、振動信号センサー手段100,リファレンス用センサー手段260、体動振動検出手段150,差動信号増幅アンプ110,拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121,鼾振動フィルタ手段122,体動振動フィルタ手段152,存在不在判定手段140,記憶装置261,通報手段270をまとめて一体化することができ、自由な組み合わせを作ることができる。