【実施例】
【0010】
以下、
図1から
図9を用いて本実施例に係るロータリースクリーン印刷機の詳細を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施例において左右の機械フレーム101,101間には、圧胴100が回動自在に支持されているとともに、この圧胴100に対向してスクリーン胴201が配設されている。
【0011】
圧胴100の外周面には軸心を挟んで対向する位置に切欠き部100aが形成されており、この切欠き部100a内に、シートを保持及び解放することができるように構成されたくわえ装置102が配設されている。なお、本実施例において圧胴100は、スクリーン胴201の二倍の胴径を有しているものとする。
【0012】
スクリーン胴201は絵柄に応じた小孔をエッチングした薄い版材を円筒状にしてなるスクリーン版201Aと、スクリーン版201Aを補強するためにスクリーン版201Aの両端(
図2では左右)にそれぞれ固定された二つのエンドリング201B,201Bとから構成されている。このスクリーン胴201は、支承部材202,202、スクリーン用ブラケット203,203、及びサブフレーム204を介してフレーム101,101に支持されている。
【0013】
支承部材202は、それぞれエンドリング201Bを着脱可能に支持する一方、スクリーン用ブラケット203に回動自在に支持されている。
【0014】
スクリーン用ブラケット203は、それぞれ支承部材202を回動自在に支持するスクリーン支持部203aと、該スクリーン支持部203aに対してスクリーン胴201の径方向外側に配設された回転軸支持部203bとから構成されている。
【0015】
ここで、本実施例では、一方(
図2では左側)のスクリーン支持部203aに、センサ支持部材229を介して超音波センサ230が取り付けられている。
図3及び
図4に示すように、センサ支持部材229の基端側はスクリーン支持部203aの軸方向外側の端面にボルト231によって固定され、センサ支持部材229の先端側はスクリーン胴201とは離間した状態でスクリーン胴201の内部であって、軸方向における有効印刷範囲内(後述するブレード221Aの胴軸方向両端よりも内側の範囲内)に挿入されている。そしてこのセンサ支持部材229の先端に超音波センサ230が取り付けられている。超音波センサ230は、対向するスクリーン版201Aの内周面に形成されるインキ膜までの距離を測定するようにその向きを設定されている。
なお、
図3,4中に示すLは、後述するブレード221aの胴軸方向両端に対応する位置を示す軌跡線である。
【0016】
また、回転軸支持部203bには、スクリーン胴201の軸方向と平行に延びる回転軸205の両端がそれぞれ回動自在に支持されている。
回転軸205の両端にはギア205aが設けられており、このギア205aが中間ギア206を介して支承部材202の外周面に形成されたギア202aと噛み合っている。また、回転軸205の一端側(
図2では右端側)のギア205aは、スクリーン胴駆動モータ207のギア207aと噛み合っている(
図1参照)。
【0017】
したがって、スクリーン胴駆動モータ207を駆動するとスクリーン胴駆動モータ207のギア207a、回転軸205の一端側のギア205a、一方(
図2では右側)の中間ギア206、一方(
図2では右側)の支承部材202のギア202a、一方の支承部材202を介してスクリーン胴201の一端側(
図2では右端側)にスクリーン胴駆動モータ207の駆動力が伝わるとともに、スクリーン胴駆動モータ207のギア207a、回転軸205の一端側のギア205a、回転軸205、回転軸205の他端側(
図2では左端側)のギア205a、他方(
図2では左側)の中間ギア206、他方(
図2では左側)の支承部材202のギア202a、他方の支承部材202を介してスクリーン胴201の他端側(
図2では左端側)にもスクリーン胴駆動モータ207の駆動力が伝わり、スクリーン胴201の両端がスクリーン胴駆動モータ207により回転駆動される。
【0018】
サブフレーム204は、スクリーン胴201の軸方向に沿って配設され、スクリーン用ブラケット203,203の回転軸支持部203bを支持している。
【0019】
さらに、このサブフレーム204は
図5(a)に示すように、軸方向両側に形成された第一の連結用ブラケット204aが機械フレーム101に固定されたピン208を介して当該機械フレーム101に揺動自在に支持されている。
【0020】
また、
図5(b)に示すように、サブフレーム204の軸方向両側に形成された第二の連結用ブラケット204bには、それぞれスクリーン胴着脱モータ209Aのモータ軸に連結されたねじ軸209Bが揺動自在に連結されている。より詳しく説明すると、ねじ軸209Bは、当該ねじ軸209Bに螺着されたナット部材209Cに設けられているピン210を介して第二の連結用ブラケット204bに揺動自在に連結されている。ナット部材209Cは、スクリーン胴着脱モータ209Aの回転によってねじ軸209Bが回転すると送りねじの機構によりねじ軸209Bの軸方向に進退する。
なお、スクリーン胴着脱モータ209Aは、スクリーン胴201(より具体的にはスクリーン版201A)を圧胴100に対して接触又は離反させるために設けられたものであり、このスクリーン胴着脱モータ209Aの本体部はそれぞれ左右の機械フレーム101にスクリーン胴着脱モータ支持部材211を介して揺動自在に固定されている。
【0021】
さらに、
図1及び
図2に示すように、上述したスクリーン胴201には、スクリーン版201Aの内側にあるインキをスクリーン版201Aの小孔から圧胴100側に供給するブレード(スキージ本体)221Aと、ブレード221Aを支持する支持体であるスキージバー221Bとを備えたスキージ221が保持されている。
【0022】
スキージ221の両端はそれぞれスキージ支持部材222,222、支持板223,223を介してサブフレーム204に揺動自在に支持されている。
【0023】
スキージ支持部材222は、スキージバー221Bを揺動自在に支持する部材である。
また、支持板223は、板体であり、その一角にスキージ支持部材222を保持している。この支持板223の他の一角にはスキージ着脱モータ224Aのモータ軸に連結されたねじ軸224Bが揺動自在に連結され、さらに他の一角はピン226に揺動自在に軸支されるとともに、ピン227に当接する当接面223aを備えている。ねじ軸224Bは、当該ねじ軸224Bに螺着されたナット部材224Cに設けられているピン225を介して支持板223に揺動自在に連結されている。ナット部材224Cは、スキージ着脱モータ224Aの回転によってねじ軸224Bが回転すると送りねじの機構によりねじ軸224Bの軸方向に進退する。
【0024】
なお、スキージ着脱モータ224Aは、スキージ221(より具体的には、ブレード221A)をスクリーン版201Aの内周面に対して接触又は離反させるために設けられたものであり、サブフレーム204の軸方向両端に形成された第三の連結用ブラケット204cにピン228を介して揺動自在に支持されている。
また、ピン226はサブフレーム204の軸方向両端に形成された第四の連結用ブラケット204dに固定され、ピン227はサブフレーム204の軸方向両端に形成された第五の連結用ブラケット204eに固定されている。
【0025】
次に、本実施例に係るロータリースクリーン印刷機の制御装置について説明する。
図6に示すように、本実施例に係るロータリースクリーン印刷機の制御装置300は、圧胴100に設けられた本機エンコーダー232が出力する信号、図示しないシート供給装置のフィーダボード上に設けられて当該フィーダボード上に一枚ずつ送り出されるシートを検知するシート搬送検知器233が出力する信号、超音波センサ230が出力する信号、及びスキージ着脱モータ224Aに設けられたスキージ着脱モータ・エンコーダー234が出力する信号を入力し、スクリーン胴駆動モータ207、スクリーン胴着脱モータ209A、及びスキージ着脱モータ224Aを駆動制御するものである。
【0026】
以下、
図7から
図9を用いて本実施例の制御装置300によるスキージ221の制御について説明する。
まず、
図9に示すように、本実施例のロータリースクリーン印刷機において印刷運転が開始されるとき、スクリーン胴201は圧胴100から離反したスクリーン胴脱位置に位置付けられ、スキージ221はブレード221Aの先端をスクリーン版201Aの内周面から離反させたスキージ脱位置に位置付けられている(
図8(a)参照)。
【0027】
図7に示すように、制御装置300は、印刷運転が開始されるとスクリーン胴駆動モータ207を駆動してスクリーン胴201を回転させ(ステップS1)、続いてスクリーン胴201が予め設定する規定回数N
1(例えば、N
1=1)回以上回転したか否かを判定する(ステップS2)。ここで、規定回数N
1は、インキの粘度やスクリーン胴201の回転速度等の印刷条件に応じて、少なくともインキがスクリーン版201Aの内周面に均等に行きわたる回転回数以上、且つインキがスクリーン版201Aの小孔から遠心力によってにじみ出る回転回数未満に設定されるものとする。
【0028】
そして、ステップS2でスクリーン胴201が規定回数N
1以上回転していれば(YES)インキ膜厚tの測定を開始し(ステップS3)、ステップS2でスクリーン胴201が規定回数N
1以上回転していなければ(NO)ステップS2の処理を繰り返す。
ステップS3に続いては、スクリーン胴201が規定回数N
2(例えば、N
2=1)回回転したか否かを判定し(ステップS4)、スクリーン胴201が規定回数N
2回回転していれば(YES)インキ膜厚tの測定を終了する(ステップS5)。一方、ステップS4でスクリーン胴201が規定回数N
2回回転していなければ(NO)ステップS4の処理を繰り返す。ここで、規定回数N
2は、少なくとも1以上、且つインキがスクリーン版201Aの小孔から遠心力によってにじみ出る回転回数未満に設定されるものとする。
すなわち、本実施例では、印刷運転が開始されスクリーン胴201が規定回数N
1以上回転したら、少なくともスクリーン胴201が一回転する間、超音波センサ230によって当該超音波センサ230からインキ表面までの距離を連続的に計測して、計測結果を制御装置300に入力するのである。
【0029】
その後、超音波センサ230から入力された計測結果に基づいてインキ膜厚tの最大値t
MAXを算出し(ステップS6)、続いてステップS6で算出したインキ膜厚tの最大値t
MAXに基づいてスキージ待機位置を決定する(ステップS7)。
なお、スキージ待機位置は、
図8(b)に示すようにインキ膜厚tの最大値t
MAXから微小間隔α離れた位置、換言すると、スクリーン版201Aの表面からt
MAX+α離間した位置とする。なお、微小間隔αは、インキの粘度やスクリーン胴201の回転速度等の印刷条件に応じて設定されるものとし、スキージ221がインキ膜に触れない距離であって且つスキージ221が可能な限りスクリーン版201Aに近い距離となるように設定するものとする。
【0030】
ステップS7に続いては、スキージ221をステップS6で求めた待機位置へ位置付ける(ステップS8)。すなわち、スキージ着脱モータ224Aによりねじ軸224Bを回転させてナット部材224Cを移動させることでピン226を中心にして支持板223を揺動させ、スキージ着脱モータ・エンコーダー234から入力される信号に基づきブレード221aの先端がスクリーン版201Aの内周面からt
MAX+αの位置に位置付けられるまでスキージ221を移動させる。
【0031】
続いて、本機エンコーダー232から入力される信号(ここでは、圧胴100の速度を含む位相)と、シート搬送検知器233から入力される信号から得られるシートの搬送状況とに基づいて印刷が開始されているか否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9で印刷が開始されていれば(YES)、一枚目のシートを保持するくわえ装置102が設けられた切欠き部101aがスクリーン胴201に対向している間(
図9にaで示す切欠範囲の間)に、スキージ221をブレード221Aの先端がスクリーン版201Aの内周面に接触する印刷位置(着位置。
図8(c)参照)に位置付けるべく、スキージ着脱モータ224Aによりねじ軸224Bを回転させてナット部材224Cを移動させ、支持板223を介してスキージ221を移動させる(ステップS10)。
【0032】
なお、このとき制御装置300は、一枚目のシートを保持するくわえ装置102が設けられた切欠き部101aがスクリーン胴201に対向している間であって、ブレード221aの先端がスクリーン版201Aの内周面に接触するより前又はブレード221aの先端がスクリーン版201Aの内周面に接触すると同時に、スクリーン胴201が圧胴100に接触するように、スクリーン胴着脱モータ209Aによりねじ軸209Bを回転させてナット部材209Cを移動させ、サブフレーム204を介してスクリーン胴201を移動させるものとする。
【0033】
これにより、スキージ221が印刷位置に移動したタイミング(
図9では、位相角度θn)で、一枚目のシートが圧胴100とスクリーン版201Aとの間に搬送され、当該一枚目のシートにスクリーン版201Aの版面に形成された小孔からスキージ221によって押し出されたインキが転写される。
ステップS9で印刷が開始されていなければ(NO)、ステップS9の処理を繰り返す。
以上により、印刷開始時におけるスキージ221の制御を実施する。
【0034】
なお、本実施例においては支承部材202、スクリーン用ブラケット203及びサブフレーム204がスクリーン胴装置を構成し、スクリーン胴着脱モータ209Aがスクリーン胴着脱手段を構成し、スキージ着脱モータ224Aがスキージ着脱手段を構成し、超音波センサ230が膜厚検知手段を構成する。
【0035】
以上に示した本実施例に係るロータリースクリーン印刷機によれば、一枚目のシートの印刷開始前にスクリーン版201Aに形成されたインキ膜の膜厚を測定し、測定したインキ膜の膜厚に応じてスキージ221がインキ膜に接触せず且つスキージ221がインキ膜に可能な限り近い位置を待機位置として求め、求めた待機位置にスキージ221を移動させて、一枚目のシートを印刷するときにスキージ221を待機位置から印刷位置に移動させるようにしたため、
図9に示すように切欠範囲a内でのスキージ221の移動速度を可能な限り低速としてスキージ221を決められた単位時間当たりでゆっくりとスクリーン版201Aに接触させることができ、スキージ221がスクリーン版201Aの内周面に接触するときの衝撃荷重が低減され、スキージ221がスクリーン版201Aの内周面に接触したときのインキの飛び散りが抑制されて印刷不良の発生を防止することができるとともに、スクリーン版201Aに与える負荷を低減してスクリーン版201Aの長寿命化を図ることができる。
【0036】
なお、本実施例では膜厚検知手段として超音波センサ230を用いる例を示したが、スクリーン版201Aに形成されたインキ膜の膜厚を測定することができれば光電式のセンサ等を用いてもよい。
また、微小間隔αとしては、スキージ221がインキ膜に触れない距離であって、且つスキージ221がスクリーン版201Aに接触したときに、インキの飛び散りが発生せずスクリーン版201Aに負荷を与えない距離であればよい。ただし、本実施例のように、微小間隔αを、スキージ221がインキ膜に触れない距離であって且つ可能な限りスクリーン版201Aに近い距離とすれば最適である。
また、本実施例ではスキージ221を、スクリーン胴201を支持するサブフレーム204に揺動自在に支持された支持板223を介して支持する例を示したが、スクリーン胴201とスキージ221とはそれぞれ独立してフレーム101に支持される構造であってもよい。この場合、制御装置300は、
図7に示し上述したステップS8でスキージ221をスキージ待機位置に位置付ける際に、スキージ221がスクリーン版201Aに接触しないように、スクリーン胴201を圧胴100に近接した位置まで近づけるようにすればよい。