特許第6369966号(P6369966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369966揺動形アクチュエータのための中央バルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369966
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】揺動形アクチュエータのための中央バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   F16K11/07 M
   F16K11/07 D
   F16K11/07 C
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-85057(P2014-85057)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-214871(P2014-214871A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2017年4月8日
(31)【優先権主張番号】10 2013 104 051.9
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2013 104 031.4
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506031085
【氏名又は名称】ハイライト・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー フッツェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン クレーペリン
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー シュルツェ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ゴル
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−132449(JP,A)
【文献】 特開2011−226474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の作動接続部(A)、供給接続部(P)、第2の作動接続部(B)およびタンクドレイン接続部(T)を有する、ケーシングチューブ(101)と、
当該ケーシングチューブ(101)に包囲されるとともに当該ケーシングチューブ(101)に対して移動可能である、ピストン(102)と、
を備える、揺動形アクチュエータ用の中央バルブであって、
前記ピストン(102)の第1の位置において、前記第1の作動接続部(A)は前記供給接続部(P)に接続されており、前記第2の作動接続部(B)は前記タンクドレイン接続部(T)に接続されており、
前記ピストンの第2の位置において、前記ピストン(102)は中央に位置しており、
前記ピストン(102)の第3の位置において、前記第2の作動接続部(B)は前記供給接続部(P)に接続されており、前記第1の作動接続部(A)は前記タンクドレイン接続部(T)に接続されており、
前記ピストン(102)を包囲し、前記ピストン(102)に固定された、スリーブ(94)、少なくとも1つの第1の逆止弁(104)を備え、
前記少なくとも1つの逆止弁は、前記ピストン(102)が第3の位置にあり、前記第1の作動接続部(A)に第1の閾値を超える圧力が供給される場合、前記第1の作動接続部(A)から前記第2の作動接続部(B)へ流路を開放することとなる
ように構成された揺動形アクチュエータ用の中央バルブ。
【請求項2】
前記ピストン(102)は、外側に少なくとも1つの第2の逆止弁(105)を有し、当該第2の逆止弁は、前記ピストン(102)が第1の位置にあり、前記第2の作動接続部(B)に第2の閾値を超える圧力が供給される場合、前記第2の作動接続部(B)から前記第1の作動接続部(A)への流路を開放する
ことを特徴とする請求項1に記載の中央バルブ。
【請求項3】
前記第1の作動接続部(A)および前記第2の作動接続部(B)は、前記ピストン(102)の前記第2の位置においてブロックされる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の中央バルブ。
【請求項4】
前記第1の作動接続部(A)および前記第2の作動接続部(B)は、前記ピストン(102)の第2の位置において圧力負荷を受ける、ことを特徴とする請求項1または2に記載の中央バルブ。
【請求項5】
前記スリーブは、前記ピストン(102)に圧入されるか、前記ピストンに溶接される、ことを特徴とする請求項に記載の中央バルブ。
【請求項6】
前記ピストン(102)は、前記スリーブ(94)に支持されているリセットスプリング(103)の力に抗って前記ケーシングチューブ(101)内で移動可能である、ことを特徴とする請求項1または5のいずれか1項に記載の中央バルブ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2の逆止弁(105)は、前記ピストン(102)を包囲する別のスリーブ(93)に設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の中央バルブ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の逆止弁(104)および前記少なくとも1つの第2の逆止弁(105)は、共通の圧縮ばね(106)を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の中央バルブ。
【請求項9】
前記ピストン(102)が、複数の第1の逆止弁(104)および複数の第2の逆止弁(105)を含む、ことを特徴とする請求項2、またはのいずれか1項に記載の中央バルブ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の逆止弁(104)または前記少なくとも1つの第2の逆止弁(105)は、前記ピストン(102)の長手方向に移動する閉止要素(90)を有している、ことを特徴とする請求項に記載の中央バルブ。
【請求項11】
前記閉止要素(90)が、弁座(70)と停止部(80または81)との間の限定された範囲内で自由に移動可能である、ことを特徴とする請求項10に記載の中央バルブ。
【請求項12】
前記ケーシングチューブ(101)は、前記第1の作動接続部(A)、前記供給接続部(P)そして前記第2の作動接続部(B)の3つの接続部(A、P、B)のみを有し、これら前記の作動接続部はそれぞれ分割して設けられていない、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の中央バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動形アクチュエータのための中央バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の中央バルブは揺動形アクチュエータシステムの一部であって、この揺動形アクチュエータは2つの作動接続部のうちの1つに対して、2つの回転方向のうちの1つの方向に油圧を加えることで調整され得るロータを備える。
【0003】
揺動形アクチュエータシステムの開発において目下の目標は、一つには可能な限り油圧ポンプの負荷を低減させることである。なぜなら、油圧ポンプは通常、車両のすべての油圧消費機器に供給しなければならないからである。もう一つの目標は、アクチュエータによるカムシャフトの調整が迅速にできるようにすることである。互いに相反するこの2つの要求をより良好に満たすために、逆止弁を介してカムシャフト調整の際に圧力ピークを使用することが公知となっている。
【0004】
特許文献1から公知である揺動形アクチュエータシステムにおいては、ロータの圧力チャンバは逆止弁を備えているので、迅速な調整の際に生じる圧力ピークを利用することができる。すなわち、1つの回転方向に対応する圧力チャンバからの油圧流体の一部がオイルポンプからの流れに供給されるので、他方の圧力チャンバに提供される体積流量がより大きくなる。
【0005】
特許文献2からは、バンド逆止弁をケーシングチューブの内側に設けることによって、カムシャフト調整トルクを使用するために逆止弁を中央バルブと一体化することが公知となっている。ケーシングチューブの2つの作動接続部と供給接続部において、各バンド逆止弁が内側からケーシングチューブを押圧する。充分な圧力が各接続部に供給されると、バンド逆止弁が開放され、その結果、一方の作動接続部から中央バルブ内に流入する油圧流体を、供給接続部から油圧流体と一緒に他方の作動接続部に供給することができる。中央バルブの中央位置から始まり、まず切り替え位置を比例的に制御可能である。この切り替え位置では、解放すべき作動接続部の圧力ピークが、負荷をかけるべき他方の作動接続部に対してブロックされる。その後、他方の切り替え位置が、カムシャフト調整トルクを使用するために制御可能となる。
【0006】
特許文献3からは、揺動形アクチュエータ用のバルブが公知となっている。このバルブでは、各作動接続部AまたはBが、カムシャフト調整トルクを使用するための作動接続部AまたはBと、揺動形アクチュエータの圧力チャンバに油圧流体を直接通過させるための作動接続部AまたはBとに分割される。カムシャフト調整トルクを使用するための作動接続部AおよびBは、逆止弁を含む。ピストンの中央位置で、両作動接続部AおよびBが、共通の環状バーによってブロックされている。中央位置における環状バーのブロックは、中央位置における制御品質を改善する。
【0007】
特許文献4は、カムシャフト調整トルクを使用するバルブに関する。ここで、逆止弁は、中空ピストンの環状バーの中に設けられている。調整はもっぱらカムシャフト調整トルクを介して行われる。タンクドレイン接続部は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006012775号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2375014号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102010061337号明細書
【特許文献4】欧州特許第1596039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、簡単なやり方で迅速なカムシャフト調整と油圧ポンプの低負荷とを両立させた、経済的な中央バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1に記載の特徴を有する中央バルブによって達成される。本発明の有利な形態は、従属請求項に提示されている。
【0011】
本発明に係る中央バルブにおいて、ピストンの第1の位置においては、第1の作動接続部が供給接続部に接続されており、第2の作動接続部がタンクドレイン接続部に接続されている。第2の位置において、つまりピストンの中央位置においては、第1の作動接続部および第2の作動接続部は、漏れ流量を除いては遮断されている。ピストンの第3の位置においては、第2の作動接続部は供給接続部に接続され、第1の作動接続部はタンクドレイン接続部に接続される。したがって、各作動接続部は、タンクドレイン接続部に接続され得る。タンクドレイン接続部は1つで充分である。タンクドレイン接続部は、中央バルブの両側に設けることもできる。エンジンケーシング出口の部分に設けられたタンクドレイン接続部は、揺動形アクチュエータが潤滑しなければならないチェーンを有するチェーンアクチュエータである場合特に都合が良い。しかしながら、その場合はタイミングベルト調整装置を、油圧流体、特にオイルから離しておかなければならない。
【0012】
本発明に係る中央バルブでは、ピストンは、少なくとも1つの逆止弁をピストンの外側に有する。この逆止弁により、第1の作動接続部と第2の作動接続部との間が導通するが、それは第1の作動接続部に圧力が印加されその圧力が閾値を超えるとともにピストンが第3の位置にある場合である。
【0013】
本発明の有利な形態では、少なくとも1つの追加の逆止弁により、閾値を超える圧力が第2の作動接続部に印加されピストンが第1の位置にある場合、第2の作動接続部と第1の作動接続部との間が導通する。
【0014】
逆止弁は、カムシャフト調整トルクの利用を容易にする。作動接続部からタンクドレインTの方向に流れる油圧流体は、油圧流体を供給すべき他方の作動接続部に供給される。したがって、揺動形アクチュエータの迅速な調整が、システムの油圧ポンプの低負荷とともに実現できる。逆止弁がピストンの外側に設けられているので、流れ経路は2つの作動接続部のうちの1つからタンクドレイン接続部Tに向かってそれぞれ延在し得る。作動接続部A、Bの分割は必要ない。つまり、特許文献1とは異なり、各作動接続部が、チャンバを直接通過するための貫通孔と、カムシャフト調整トルクを使用するための逆止弁管通孔とに分割されている必要はない。本発明に係る中央バルブの逆止弁の1つが開放されている場合、2つの作動接続部のうちの1つから供給接続部Pに向かってピストンの外側とケーシングチューブの内側との間を油圧流体が流れる。
【0015】
本発明の有利な形態によると、複数の第1の逆止弁がピストンの外側に設けられており、これら逆止弁は、ピストンが第3の位置にあり第1の作動接続部に圧力が供給される場合、第1の作動接続部と第2の作動接続部との間を導通させ、また、複数の第2の逆止弁がピストンの外側に設けられており、これら逆止弁は、ピストンが第1の位置にあり閾値を超える圧力が第2の作動接続部に供給される場合、第2の作動接続部と第1の作動接続部との間を導通させる。充分な高圧が作動接続部に供給されると、複数の逆止弁は、より多くの油圧流体流を流すようになり、そのため圧力ピークがより良好に利用できるようになるので好都合である。複数の第1の逆止弁と複数の第2の逆止弁とは、たとえば、ピストンの外周に設けることができる。
【0016】
本発明の別の有利な形態によると、第1の逆止弁は、ピストンに設けられたスリーブに設けられている。第2の逆止弁は、ピストンが挿入されている同一のスリーブまたは別のスリーブに設けられ得る。このようにして、中央バルブを簡単なやり方で組み立てることができる。つまり、1つまたは複数のスリーブをピストンの上で摺動させ、逆止弁がピストンの外側に装着されるようにする。第1および第2の逆止弁を異なるスリーブに設けることは、第1および第2の逆止弁をピストンに装着するために、同一の部材をピストン上で異なる配向で摺動させることができるという利点を有する。
【0017】
特に有利な形態では、ピストンは中空ピストンとして構成することができる。この場合、2つの作動接続部の各作動接続部からそれぞれタンクドレイン接続部Tまでの流れ経路を設けることなしに、ピストンの内側を使用することができる。加えて、作動接続部を形成するケーシングチューブの開口部は、両方向に油圧流体が流過することができる。特許文献2とは異なり、必ずしも各作動接続部を、チャンバの直接通過のための貫通孔とカムシャフト調整トルクを使用するための逆止弁貫通孔とに分割しなくてもよい。
【0018】
本発明に係る更なる特徴および利点は、同一のおよび同等の部材は同一の参照符号を付与されている図面を参照しながら、以下実施例に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】中央バルブが付随しない揺動形アクチュエータの断面図である。
図2図1の揺動形アクチュエータを外側から見た斜視図で示す図である。
図3図1および図2にかかる揺動形アクチュエータ用の中央バルブの第1の実施例の長手方向断面図である。
図4】中央バルブの別の実施例の長手方向断面図である。
図5】1つのピストンが中央位置にある第1の実施例に係る中央バルブの長手方向断面図である。
図6図5の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
揺動形アクチュエータは、内燃機関の運転中にカムシャフトの角位置を変更するために使用される。カムシャフトを回転させることで、吸排気バルブの開閉時期を変動させ、それにより、内燃機関が各速度に応じて最適な出力を出せるようにする。すなわち、揺動形アクチュエータは、カムシャフトの連続調整を容易にする。揺動形アクチュエータは、図2に明示されているギヤに固定して接続された円筒形ステータ1を有する。この実施例において、ギヤ2はスプロケットであり、詳細には図示されていないチェーンがそこにわたされている。このギヤ2は、駆動要素として駆動ベルトがわたされたタイミングベルトギヤであってもよい。ステータ1は、公知のやり方により駆動要素に、およびギヤ2によってクランクシャフトに、駆動接続状態になっている。
【0021】
これとは別に、ステータ1およびギヤ2は、ステータ1の他方の側が開放されている場合は、一体的にワンピースに構成され得る。したがって、ステータ1およびギヤ2は、同一の金属材料および/または硬質プラスチック材料から製造され得る。金属材料に関しては、中でも特に焼結金属、スチールプレートおよびアルミニウムを使用することができる。ステータ1は、円筒形ステータベース要素3を有する。この円筒形ステータベース要素の内部には、径方向内方に突出するバー4が互いに均等な間隔をおいて延在している。図3および図4に示された中央バルブ100を介して、圧力媒体制御された状態で導入される圧力チャンバ5が、隣接するバー4の間に形成されている。隣接するバー4の間に、ロータ8の円筒形ロータベース要素7から径方向外側に突出するウィング6が延在している。このウィング6は、バー4の間の圧力チャンバ5をそれぞれ2つの圧力チャンバ9および10に分割している。
【0022】
バー4は、端面においてロータベース部材7の外側被覆面に接触する。ウィング6の方は、端面においてステータベース要素3の円筒内壁に封止状態で接触する。
【0023】
ロータ8は、詳細には図示されていないカムシャフトに固定して接続されている。カムシャフトの角位置を変更するために、ロータ8はステータ1に対して回転する。このために、圧力チャンバ9または10内の圧力媒体には、所望の回転方向に従った圧力がかかる。一方、それぞれ他方の圧力チャンバ10または9は、タンクに通じてその圧力が解除される。
【0024】
図2によると、揺動形アクチュエータは、螺旋ばね12を含む。クランクシャフトの摩擦トルクを補償するために、この螺旋ばねを介して、ロータ8がステータ1に対して回転方向に予め付勢される。螺旋ばね12は、複数の巻線27を含む。螺旋ばね12は、内側端部14において、ロータ8のハブ23の1つの凹部24に回転不能に受容されている。螺旋ばね12は、螺旋ばねの外側端部15において、ステータ1に固定して接続されている。中央貫通孔25が、ハブ23の内部に設けられている。この貫通孔内に、中央バルブ100が挿入され、カムシャフトとともに装着されている。
【0025】
図3には、揺動形アクチュエータ用の中央バルブ100が長手方向断面図で示されている。中央バルブ100は、一定の間隔で互いに離間した径方向の通路97、98、99を有するケーシングチューブ101を有する。これらは、第1の作動接続部A、供給接続部Pおよび第2の作動接続部Bを形成する。供給接続部Pは、2つの作動接続部A、Bの間に配置されていることが好ましい。図示の実施例では、ケーシングチューブ101は、端面側においてタンクドレイン接続部Tを有する。しかし、タンクドレイン接続部Tは、径方向の接続部としても構成され得る。図示の実施例では、ケーシングチューブ101は、3つの径方向接続部のみ、つまり、2つの作動接続部AおよびB、ならびに供給接続部Pを有する。したがって、ケーシングチューブ101のすべての径方向通路97、98、99は、ケーシング101の第1の端部からの3つの距離のうちの1つを有する。カムシャフト調整トルクを使用するための別の作動接続部は設けられていない。
【0026】
ケーシングチューブ101内に、中空ピストン102が設けられている。この中空ピストンは、リセットスプリング103のリセット力に抗ってケーシングチューブ101に対して長手方向に移動可能になっており、径方向開口部95、96を有する。図示されていない中空ピストン102の第1の位置において、第1の作動接続部Aは、供給接続部Pに接続されており、同時に第2の作動接続部Bは、タンクドレイン接続部Tに接続されている。一方、中空ピストン102の第2の位置において、第1の作動接続部Aおよび第2の作動接続部Bはブロックされる。このブロックは、しかしながら、少量の漏れ損失を伴う。この第2の位置は、図5の中央位置である。図3に示されている中空ピストンの第3の位置では、第2の作動接続部Bは、供給接続部Pに接続されており、同時に第1の作動接続部Aはタンクドレイン接続部Tに接続されている。
【0027】
供給接続部Pの下流側で、ポンプ逆止弁51が設けられている。ポンプ逆止弁51の下流側には、内側キャビティ53が続く。内側キャビティ53は、2つの作動接続部A、Bの間の流路に設けられている。
【0028】
中空ピストン102は、外側に複数の逆止弁104、105を有する。第1の逆止弁104に連続して構成されている逆止弁の片方は、第1の作動接続部Aと供給接続部Pまたはオイルポンプ52から油圧流体が供給される内側キャビティ53との間の接続を開放する。したがって、油圧流体は、中空ピストン102が第3の位置にあり、閾値を超える圧力が作動接続部Aに供給される場合、2つの作動接続部A、Bの間でも内側キャビティ53を流過することができる。第2の逆止弁105として構成されている、もう片方の逆止弁の105は、第2の作動接続部Bおよび供給接続部Pの間の接続を開放する。したがって、油圧流体は、中空ピストン102が第1の位置にあり、閾値を超える圧力が第2の作動接続部Bに供給される場合、2つの作動接続部A、Bの間でも供給接続部Pを流過することができる。このように、ピストン102が第1の位置または第3の位置にあるとき、逆止弁104、105は、中空ピストン102の外側とケーシングチューブ101の内側との間で、油圧流体が2つの作動接続部A、Bの一方から内側キャビティ53に向かって流過する流路を開放することができる。したがって、必要な体積流量を増やす必要がある場合に、油圧流体が他方の作動接続部BまたはAに供給されることとなる。
【0029】
ロータ8を調整するための揺動形アクチュエータシステムにおいて、圧力チャンバ9が、2つの作動接続部AまたはBの一方によって供給接続部Pに接続されている。一方で、ロータ8の第2の圧力チャンバは、他方の作動接続部BまたはAによってタンクドレイン接続部Tに同時に接続されている。ロータ調整の間、油圧は、タンクドレイン接続部Tに接続されている作動接続部に供給される。この油圧が大きくなればなるほど、調整がより迅速に実行される。図示の中央バルブ100の逆止弁104、105は、圧力が閾値を超えると開放され、したがって圧力ピークの使用が促される。したがって、中央バルブ100は、揺動形アクチュエータシステムの油圧ポンプの負荷がより少ない状態で、より迅速な調整を可能にする。
【0030】
第1の逆止弁104は、中空ピストン102に装着されているスリーブ94内に設けることができる。リセットスプリング103は、スリーブ94の一方の端部で支持される。リセットスプリング103の他方の端部は、ケーシングチューブ101の内側表面で支持される。スリーブ94は、中空ピストン102の第2の位置において径方向通路99を閉止することができ、それにより、作動接続部Aに入出する油圧流が、漏れ流量を除いてブロックされる。
【0031】
スリーブ94は、たとえば中空ピストン102に圧入することができる。スリーブ94と中空ピストン102との間の堅固な接続のための別の方法は、溶接接続である。第2の逆止弁105は、同一のスリーブ94内に、または、同様に中空ピストン102上を摺動する第2のスリーブ93内に設けることができる。
【0032】
第2の逆止弁104を有するスリーブ93は、中空ピストン102の第2の位置において径方向通路97を閉止することができ、それにより、第2の作動接続部Bに入出する油圧流が、漏れ流量を除いてブロックされる。
【0033】
逆止弁104、105は、たとえば、ボールバルブでもよいので、ボールとして形成された閉止要素90を備え得る。第1および第2の逆止弁104、105の閉止要素90はそれぞれ、中空ピストン102に対して中空ピストン102の長手方向に移動可能である。したがって、第1の逆止弁104および第2の逆止弁105は、互いに対向して設けられている。
【0034】
中空ピストン102の端部に、中空ピストン102の径方向開口部95、96がそれぞれ設けられ、油圧流体が流過することができる。第1の逆止弁104および第2の逆止弁105は、径方向開口部のない中空ピストン102の中央区間の外側に装着されている。
【0035】
閉止要素90は、本実施例ではスプリングを必要としない。したがって、各閉止要素90は、弁座70と停止部80または81との間の限定された範囲内で移動可能である。すなわち、逆止弁104、105は供給接続部Pからの内圧によって閉止される。これらの逆止弁104、105は、軸方向の供給接続部Pに対向する場所に、停止部80、81を有する。停止部80、81は、閉止要素90が供給接続部Pに向かって軸方向に長い距離を流れ、そのために逆止弁104、105の閉止に時間がかかりすぎることを防止する逆止弁。停止部80、81は、中空ピストン102から径方向外方に延在する。停止部80、81は、両逆止弁104、105間の中央で、中空ピストン102にはめ込まれた停止スリーブ79に設けられている。
【0036】
図4は、揺動形アクチュエータ用の中央バルブ100の他の実施例を示している。この実施例は、特に逆止弁がボールバルブではないという点が図3の実施例と異なる。第1の逆止弁104は、本実施例では共通の環状閉止要素を有している。この閉止要素は、中空ピストン102の長手方向において、閉止要素をその一端において押圧する圧縮ばね106の力に抗って移動可能である。圧縮ばね106の他方の端部は、同一の構成の閉止要素である第2の逆止弁105に押圧される。
【0037】
図5および図6の詳細には、第1の実施例、つまり図3に関して、第2の位置にある中空ピストン102が示されている。中空ピストン102のこの第2の位置は、中央位置である。この中央位置において、第1の作動接続部Aおよび第2の作動接続部Bはブロックされている。したがって、2つの環状バー60、61が、重畳部分59、58、57、56によって径方向経路97、99をカバーする。タンクドレイン接続部Tに向かう重畳部分59、56は、供給接続部Pに向かう重畳部分58、57よりも大きい。この実施例では、タンクドレイン接続部Tに向かう重畳部分59、56は、供給接続部Pに向かう重畳部分58、57よりも2倍の大きさになっている。ここで、タンクドレイン接続部Tに向かう重畳部分59、56は、概ね2/10mmである。他方、供給接続部Pに向かう重畳部分58、57は、1/10mmである。中空ピストン102がケーシングチューブ101に対して径方向に移動可能であるため、結果として径方向空隙がこの箇所に生じる。したがって、重畳部分59、58、57、56にも間隙が生じ、これら間隙は、油圧流体が間隙の大きさに応じて極めて絞られた状態で流れることを許容する。タンクドレイン接続部Tに向かう重畳部分59、56は充分に大きいので、したがって、この箇所での絞りは極めて強力である。圧力ピーク時に重複部分59、56のところで長い間隙を通過して圧力チャンバを流れる少量の油圧流体は、タンクドレイン接続部Tに向かって流れるが、逆止弁104または105を背後から開放することはできない。つまり、このような少量の体積流量の場合、タンクドレインに対する流れ抵抗は極めて小さいのである。したがって、中央位置においてカムシャフト調整トルクに起因して繰り返される圧力ピークが変わっても、制御に関する問題は生じない。
【0038】
供給接続部Pに向かう間隙長さが比較的短いので、供給接続部Pによって、2つの作動接続部A、Bにも絞られた油圧が供給される。したがって、ロータ8は、ステータ1に対して予め油圧負荷されている。中央位置において予め油圧負荷を提供するために、流れ条件に関して独国公開特許公報19823619号明細書に従って中央バルブが設けられる。
【0039】
図5は、点線により別の実施例を示している。ここでは、油圧流200、201が示されている。この実施例は、径方向開口部95、96を省略する場合に特に意味がある。その場合、中空ピストン102の内側チャンバを、別のオイル導出機能のために使用することができる。中空ピストン102の代わりに、ムクの材料から製造されたピストンが代替的に設けられる。作動接続部Aから第1のタンクドレイン接続部T1まで、油圧流201が中空ピストン102の外側に、すなわち中空ピストンに沿って流れる。第2の作動接続部Bから第2のタンクドレイン接続部T2まで、油圧流200が中空ピストン102の外側に、すなわち中空ピストン102に沿って流れる。したがって、ディスク203に孔202が設けられるか、またはディスク203自体が省略され得る。外側に向かう第2のタンクドレイン接続部T2は、特に揺動形アクチュエータを駆動するために油圧流体またはオイルで潤滑されるチェーンが使用される場合に有益である。
【0040】
更なる実施例では、第1の径方向開口部95のみが省略されるか、または第2の径方向開口部のみが省略される。
【0041】
中央位置において、第1の作動接続部Aおよび第2の作動接続部Bはブロックしなくてもよい。本発明の別の実施例において、オイルポンプからの充分な圧力が存在している場合、互いに近傍に存在する2つの重畳部分58、57を省略することができる。すなわち、2つの作動接続部A、Bには、供給接続部Pによって油圧が供給される。このように、ロータ8には、ステータ1に対して予め油圧負荷が付与される。
【0042】
別の代替的な実施例において、作動接続部AまたはBのみが、それぞれ他方の作動接続部BまたはAからタンクドレイン接続部に流れる油圧媒体を逆止弁逆止弁104または105を介して吸引することができる。これは、所望の回転方向のために採用される適合するらせんスプリング12と特に組み合わせて提供され得る。
【0043】
すべての実施例において、図3および図6に基づいて説明される絞り位置300、301が存在しており、これらは、まだ公開前の独国特許出願第10201211033.6号明細書にも開示されている。この種の絞り位置300または301は、揺動形アクチュエータについて高いレベルの制御品質を提供する。
【0044】
中空ピストン102を作動させるために電磁アクチュエータ303が設けられているが、図3には示されていない。ここで、電磁アクチュエータ303での流量の減少の間、圧力チャンバから出てタンクドレイン接続部Tに向かう油圧流体の導出がかなり早くに開始される。さらに、流量体積を上回るこの排出体積流量を示す特性曲線は、比較的線状である。
【0045】
図6から明らかなように、環状バー60は、電磁アクチュエータ303に向かった方向に制御エッジ304を有する。すなわちケーシングチューブ101内部にスペース305を形成する。このスペースは、一方が中空ピストン102のスリーブ93によって画定されるとともに他方はディスク203によって画定される。油圧流体は、このスペース305から径方向開口部95または代替的に孔202を通過してタンクドレインTに向かって流れることができる。
【0046】
絞り位置300がないと、しかしながら、揺動形カムシャフトアクチュエータは、たとえばカムシャフト調整トルクに起因して、径方向開口部95または孔202を通過してスペース305から押出できる分よりも多い量の油圧流体をスペース305に押入する傾向を持つおそれがある。その場合、電磁石に流れる電流の強度を急速に低下させた場合、第1の作動接続部Aによって比較的高圧が付与されているスペース305に向かってピストン102を移動させることは、早期には不可能であり得る。つまり、中空ピストン102は電磁アクチュエータ303に追従できず、その箇所に間隙が生まれるのである。中空ピストン102が移動しないため、作動接続部A、Bの流れ断面も変化しない。そのために絞り位置300が第1の作動接続部Aとスペース305との間に設けられる。作動接続部から少量補充される油圧流体により、スペース305は、迅速に開口部95または孔202を介して圧力解除することができ、タンクドレイン接続部Tに向かう導出もより早期に行われる。したがって、電流に対するこの導出の流量を示す特性曲線は、絞り位置300がない場合よりも直線状になる。これによって正確な制御が容易になる。
【0047】
したがって、他のスリーブ94とは反対側のスリーブ93に制御エッジ304を設ける。スペース305は、一方がケーシングチューブ101内で画定されており、また他方はケーシングチューブに対して固定されたディスク202によって画定されている。径方向開口部95または孔202は、スペース305から延在する。この開口部95または孔202は、タンクドレイン接続部Tに向かって延在する出口経路310にスペース305を油圧接続する。絞り位置300は、制御エッジ304とスペース305との間に設けられている。
【0048】
同様の状況が絞り位置301に関しても存在するが、作用はより小さい。



図1
図2
図3
図4
図5
図6