特許第6369974号(P6369974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369974データマイニングによる、ルール生成装置、方法、及び、プログラム、並びに、介護支援システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369974
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】データマイニングによる、ルール生成装置、方法、及び、プログラム、並びに、介護支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 5/02 20060101AFI20180730BHJP
   G06N 5/04 20060101ALI20180730BHJP
   G06N 99/00 20100101ALI20180730BHJP
【FI】
   G06N5/02 150
   G06N5/04
   G06N99/00 180
【請求項の数】9
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-84943(P2014-84943)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-204084(P2015-204084A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年4月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(個人型研究(さきがけ)) 研究領域「情報環境と人」 研究題目「学習進化機能に基づくスパイラル・ケアサポートシステム」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼玉 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 雅也
【審査官】 大塚 俊範
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−306216(JP,A)
【文献】 中田 雅也、他4名,予測報酬に基づく個別化による学習分類子システムの学習性能の向上,計測自動制御学会論文集 ,日本,公益社団法人計測自動制御学会,2012年11月30日,第48巻、第11号,第713−722頁
【文献】 井上 寛康、他2名,行動価値に着目した学習分類子システムの改善:マルチエージェント強化学習への接近,情報処理学会論文誌,日本,社団法人情報処理学会,2006年 5月15日,第47巻、第5号,第1483−1492頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す連続値からなる結果値の1つをとりうる結論用データ要素とを少なくとも含むデータを複数記憶するデータ記憶部と、
前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を連続値で表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールの集合を記憶するルール集合記憶部と、
前記データ記憶部から前記データを読み出し、読み出されたデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを前記ルール集合記憶部から抽出するルール抽出部と、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するルール強化部と、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の連続値が、複数の値が該当し得る所定の条件を満たすルールを分類するルール分類部と、
前記ルール分類部で分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルを記憶する特徴抽出モデル記憶部と、
前記ルール抽出部で読み出されたデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記ルール分類部で分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新する特徴抽出モデル更新部と、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するルール選択部と、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するルール交叉部と、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるルール追加部と
を備え、
前記ルール抽出部、前記ルール強化部、前記ルール分類部、前記特徴抽出モデル更新部、前記ルール選択部、前記ルール交叉部、及び、前記ルール追加部による一連の処理を、前記データ記憶部に記憶されている複数のデータについて、繰り返し行うことを特徴とするルール生成装置。
【請求項2】
前記特性評価用ルール要素は、前記ルールの汎用性を表す特性評価値を含み、
前記繰り返し処理が行われる処理部として、前記ルールの汎用性を表す評価値を変更する処理を所定の確率で行う汎用性評価値更新部を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のルール生成装置。
【請求項3】
前記ルール分類部は、前記所定の条件を満たす第1のルール集合と前記所定の条件を満たさない第2のルール集合とに分類するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のルール生成装置。
【請求項4】
前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、前記生成された子ルールの前記条件用ルール要素の値を前記データの条件用データ要素の値に変更し、前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たさない程度に低い場合、前記生成された子ルールの前記条件用ルール要素の値を前記ワイルドカード値に変更する処理を所与の確率で行うルール突然変異部を、前記繰り返し処理が行われる処理部として、更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずか一項に記載のルール生成装置。
【請求項5】
ータセットを取得するデータ取得手段と、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のルール生成装置と、
を含み、
前記データ取得手段は、前記データセットとして、介護支援する対象者の一日単位のデータを取得し、
前記データ記憶部は、前記データセットとして、複数の日の前記データを記憶する、
ことを特徴とする介護支援システム。
【請求項6】
前記一日単位のデータは、条件用データ要素として、介護支援する対象者の行動パターン、健康状態、及び/又は、介護支援内容に関する情報を含む、ことを特徴とする、請求項5に記載の介護支援システム。
【請求項7】
前記結果値は、睡眠の深さに関する値である、ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の介護支援システム。
【請求項8】
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す連続値からなる結果値の1つをとりうる結論用データ要素とを少なくとも含む、複数件のデータから、前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を連続値で表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールを生成するルール生成方法であって、
前記ルールの集合を記憶するルール集合記憶部から、前記複数件のデータのうちの1件のデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを抽出するステップと、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記複数件のデータへの適合性がより高くなるように更新するステップと、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の連続値が、複数の値が該当し得る所定の条件を満たすルールを分類するステップと、
前記分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルのうち、前記1件のデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新するステップと、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するステップと、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するステップと、
(1)前記ルールを抽出するステップで読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルールを抽出するステップで読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるステップと
を備え、
前記各ステップによる一連の処理を、前記複数件のデータのうちの複数のデータについて、繰り返し行うことを特徴とするルール生成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す連続値からなる結果値の1つをとりうる結論用データ要素とを少なくとも含む、複数件のデータから、前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を連続値で表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールを生成させるルール生成プログラムであって、
前記ルールの集合を記憶するルール集合記憶部から、前記複数件のデータのうちの1件のデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを抽出するステップと、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記複数件のデータへの適合性がより高くなるように更新するステップと、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の連続値が、複数の値が該当し得る所定の条件を満たすルールを分類するステップと、
前記分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルのうち、前記1件のデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新するステップと、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するステップと、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するステップと、
(1)前記ルールを抽出するステップで読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルールを抽出するステップで読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるステップと
を実行させ、
前記各ステップによる一連の処理を、前記複数件のデータのうちの複数のデータについて、繰り返し実行させることを特徴とするルール生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデータを解析して、ルールを生成する又は知識を獲得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
統計的手法等を用いたデータ解析によって、複数のデータから、これらのデータの内容に適合するルールを生成するデータマイニング技術が知られている。
【0003】
また、社会の情報化に伴って、様々な場面で発生するデータが蓄積されており、蓄積された膨大なデータから知識(ルール)を獲得する方法が求められている。例えば、介護ホームなどでの介護支援方法として、介護対象者の日々の行動又は状態を表す複数のデータに基づいて、介護支援のケアプラン(知識)を作成するニーズがある。
【0004】
このようなルール獲得手法として、学習分類子システム(Learning Classifier System: LCS)が提案されている。このLCSは、生物の環境への適応戦略である学習と進化の双方の概念を取り入れた適応システムである。具体的には、LCSは、条件部と結論部(行動部)とからなるルール(分類子)について、強化学習の手法により学習を行うとともに、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm: GA)を用いてルール(分類子)を進化させることによって、複数のデータ(環境状態)に適応可能なルール(分類子)を生成するシステムである。このLCSのうち、正確性の高いルール(分類子)を進化対象とするようにしたシステムはXCS(Accuracy-based Learning System)と呼ばれている。(例えば、非特許文献1,2)。
【0005】
また、LCSにAttribute Treacking/Feedbackという技術を導入したものも提案されている(非特許文献2)。従来のLCSでは、1件のデータには、ルールの条件部に対応する条件用データ要素と、ルールの結論部に対応する結論用データ要素とが含まれているが、この文献に記載の技術では、個々のデータ内の条件用データ要素毎の重要性、すなわち、その条件用データ要素が、そのデータと照合するルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す評価値を算出し(Attribute Tracking)、算出された評価値を用いて、GAにおける交叉や突然変異において、適合性がより高いルールを生成させる(Attribute Feedback)ようになっている。
【0006】
一方、獲得されるルールの内容の観点では、例外ルール(特殊ルール)を獲得するために、汎用ルール(一般化ルール)の条件部を用いて例外ルールの対象となる事例データ(データセット)を分離し、分離した事例データに基づいて例外ルールを獲得する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−338701号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中田外4名、「個別化による学習分類子システムの一般化促進」、計測自動制御学会、計測自動制御学会論文集、47(11)、 581-590、 2011年11月30日
【非特許文献2】Urbanowicz外2名、「Instance-Linked Attribute Tracking and Feedback for Michigan-Style Supervised Learning Classifier Systems」、Association for Computing Machinery、GECCO '12 Proceedings of the fourteenth international conference on Genetic and evolutionary computation conference、Pages 927-934、2012年7月7日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献に開示されている技術では、結論用データ要素が二値的(例えば、ある病気になったかどうか)ではなく、何らかの度合いや得点のような連続的な程度を示すデータ(例えば、睡眠の深さの度合いを示すデータ)からルールを生成することは想定されていない。
【0010】
また、非特許文献1、2に開示されている技術では、矛盾するデータや誕生日などの特別な日のデータが含まれるときに、知識を獲得(ルールを生成)することができない場合がある。
【0011】
さらに、特許文献1に開示されている技術では、一般化ルールと特殊ルールとを同時に生成(獲得)することができない場合がある。特許文献1に開示されている技術では、例えば一般化ルールを構成する複数のデータセットを用いて、特殊ルールを生成することができない場合がある。
【0012】
本発明は、このような事情の下に為されたものであり、結論用データ要素が連続的な程度を示すデータであっても適切にルールを生成する技術を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本発明は、汎用的なルールと特殊なルールを同時に生成することを可能にする技術を提供することを第2の目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、結論部の値の範囲が異なる複数のルールを同時に生成することを可能にする技術を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によるルール生成装置は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す連続値からなる結果値の1つをとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含むデータを複数記憶するデータ記憶部と、
前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を連続値で表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールの集合を記憶するルール集合記憶部と、
前記データ記憶部から前記データを読み出し、読み出されたデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを前記ルール集合記憶部から抽出するルール抽出部と、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するルール強化部と、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の連続値が、複数の値が該当し得る所定の条件を満たすルールを分類するルール分類部と、
前記ルール分類部で分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルを記憶する特徴抽出モデル記憶部と、
前記ルール抽出部で読み出されたデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記ルール分類部で分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新する特徴抽出モデル更新部と、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するルール選択部と、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するルール交叉部と、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるルール追加部と
を備え、
前記ルール抽出部、前記ルール強化部、前記ルール分類部、前記特徴抽出モデル更新部、前記ルール選択部、前記ルール交叉部、及び、前記ルール追加部による一連の処理を、前記データ記憶部に記憶されている複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0016】
また、本発明の第1の態様によるルール生成方法は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す連続値からなる結果値の1つをとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含む、複数件のデータから、前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を連続値で表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールを生成するルール生成方法であって、
前記ルールの集合を記憶するルール集合記憶部から、前記複数件のデータのうちの1件のデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを抽出するステップと、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するステップと、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の連続値が、複数の値が該当し得る所定の条件を満たすルールを分類するステップと、
前記分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルのうち、前記1件のデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新するステップと、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するステップと、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するステップと、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるステップと
を備え、
前記各ステップによる一連の処理を、前記複数件のデータのうちの複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0017】
本発明の第1の態様によるルール生成プログラムは、上記ルール生成方法をコンピュータに実行させるものである。
【0018】
本発明の第2の態様によるルール生成装置は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す結果値をとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含むデータを複数記憶するデータ記憶部と、
前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さ及び汎用性を含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールの集合を記憶するルール集合記憶部と、
前記データ記憶部から前記データを読み出し、読み出されたデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを前記ルール集合記憶部から抽出するルール抽出部と、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するルール強化部と、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の値が所定の条件を満たすルールを分類するルール分類部と、
前記ルール分類部で分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルを記憶する特徴抽出モデル記憶部と、
前記ルール抽出部で読み出されたデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記ルール分類部で分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新する特徴抽出モデル更新部と、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するルール選択部と、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するルール交叉部と、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記ルールの汎用性を表す評価値を変更する処理を所定の確率で行う汎用性評価値更新部と、
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるルール追加部と
を備え、
前記ルール抽出部、前記ルール強化部、前記ルール分類部、前記特徴抽出モデル更新部、前記ルール選択部、前記ルール交叉部、前記汎用性評価値更新部、及び、前記ルール追加部による一連の処理を、前記データ記憶部に記憶されている複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0019】
本発明の第2の態様によるルール生成方法は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す結果値をとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含む、複数件のデータから、前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールを生成するルール生成方法であって、
前記ルールの集合を記憶するルール集合記憶部から、前記複数件のデータのうちの1件のデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを抽出するステップと、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するステップと、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の値が所定の条件を満たすルールを分類するステップと、
前記分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルのうち、前記1件のデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新するステップと、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するステップと、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するステップと、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記ルールの汎用性を表す評価値を変更する処理を所定の確率で行うステップと、
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるステップと
を備え、
前記各ステップによる一連の処理を、前記複数件のデータのうちの複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0020】
本発明の第2の態様によるルール生成プログラムは、上記ルール生成方法をコンピュータに実行させるものである。
【0021】
本発明の第3の態様によるルール生成装置は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す結果値をとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含むデータを複数記憶するデータ記憶部と、
前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さ及び汎用性を含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールの集合を記憶するルール集合記憶部と、
前記データ記憶部から前記データを読み出し、読み出されたデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを前記ルール集合記憶部から抽出するルール抽出部と、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するルール強化部と、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の値が所定の条件を満たす第12のルール集合と前記所定の条件を満たさない第2のルール集合とに分類するルール分類部と、
前記第1及び第2のルール集合の各々について、前記各ルール集合中にルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルを記憶する特徴抽出モデル記憶部と、
前記ルール抽出部で読み出されたデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記ルール分類部で分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新する特徴抽出モデル更新部と、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するルール選択部と、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するルール交叉部と、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるルール追加部と
を備え、
前記ルール抽出部、前記ルール強化部、前記ルール分類部、前記特徴抽出モデル更新部、前記ルール選択部、前記ルール交叉部、及び、前記ルール追加部による一連の処理を、前記データ記憶部に記憶されている複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0022】
本発明の第3の態様によるルール生成方法は、
対象の状態を表す1以上の条件用データ要素であって、前記条件用データ要素の各々は、2種類以上の特定の状態を表す状態値の1つをとりうるものと、前記状態値によって表される状態下での所定の結果を表す結果値をとりうる結論用データデータ要素とを少なくとも含む、複数件のデータから、前記条件用データ要素に対応する、ルール適用の条件を表す1以上の条件用ルール要素であって、前記条件用ルール要素の各々は前記2種類以上の状態値と前記状態値の条件のいずれでもよいことを表すワイルドカード値のうちのいずれかをとりうるものと、前記条件を満たすときの結論を表す結論用ルール要素と、前記ルールの正確さを含むルールの特性評価値を表す特性評価用ルール要素とを少なくとも含むルールを生成するルール生成方法であって、
前記ルールの集合を記憶するルール集合記憶部から、前記複数件のデータのうちの1件のデータの前記条件用データ要素の状態値と照合する前記条件用ルール要素の値を有する前記ルールを抽出するステップと、
抽出された前記ルールの前記結論用ルール要素の値及び前記特性評価用ルール要素の特性評価値を、前記読み出されたデータへの適合性がより高くなるように更新するステップと、
前記抽出されたルールのうち、前記結論用ルール要素の値が所定の条件を満たす第12のルール集合と前記所定の条件を満たさない第2のルール集合とに分類するステップと、
前記第1及び第2のルール集合の各々について、前記分類されたルールが存在するような前記データ毎に生成される特徴抽出モデルであって、前記データの前記条件用データ要素に対応するモデル要素を含み、前記モデル要素の各々は、対応する前記条件用データ要素が前記ルールの正確性に対してどの程度寄与しているかを表す特徴評価値を有するモデルのうち、前記1件のデータと対応する前記特徴抽出モデルについて、前記分類されたルールの前記条件用ルール要素のうち、前記状態値を有するものについては、前記特性評価用ルール要素に含まれる前記ルールの正確さを表す評価値が大きいほど、対応するモデル要素の特徴評価値が高くなるように前記モデル要素を更新し、前記ワイルドカード値のものについては、対応するモデル要素の特徴評価値が低くなるように前記モデル要素を更新するステップと、
所与の方法で前記分類されたルールから親ルールとなる2つのルールを選択するステップと、
次の(1)及び(2)に示すように、前記選択された2つの親ルールの対応する前記条件用ルール要素の値の入替えを行うことによって、2つの子ルールを生成するステップと、
(1)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が所定の条件を満たす程度に高い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、そのモデル要素と対応する前記データの条件用データ要素の状態値と一致していれば、その値が、一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
(2)前記ルール抽出部で読み出されたデータに対応する前記特徴抽出モデルの前記モデル要素の特徴評価値が前記所定の条件を満たさない程度に低い場合、そのモデル要素と対応する前記親ルールの前記条件用ルール要素のいずれかが、前記ワイルドカード値を有していれば、前記一方の子ルールの対応する条件用ルール要素の値が前記ワイルドカード値となるように、必要に応じて前記入替えを行う
前記ルールの汎用性を表す評価値を変更する処理を所定の確率で行うステップと、
前記子ルールを前記ルール集合記憶部に追加して記憶させるステップと
を備え、
前記各ステップによる一連の処理を、前記複数件のデータのうちの複数のデータについて、繰り返し行うものである。
【0023】
本発明の第3の態様によるルール生成プログラムは、上記ルール生成方法をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、結論用データ要素が連続的な程度を示すデータであっても、その値が所望の複数の値のいずれかをとりうるルールを分類することにより、適切に生成することが可能になる。
【0025】
また、本発明の第2の態様によれば、汎用性評価値を確率的に更新することにより、生成される汎用的なルールと特殊なルールが同時生成され、遺伝的アルゴリズムによる最適化により、適切な汎用的なルールと特殊なルールを同時に生成することが可能になる。
【0026】
さらに、本発明の第3の態様によれば、結論用ルール要素の値の範囲が異なる2つのルール集合に分類し、ルール集合ごとに最適化を行うので、ルールの結論部の値の範囲が異なる複数のルールを同時に生成することが可能にになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置で用いられるデータ、ルール、特徴抽出モデル(AT)の一例を説明する説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置の一例を説明する概略機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置で解析するデータセット及び生成するルールの一例を説明する説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置で生成されるルールの一例を説明する説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置におけるAT値の更新処理の一例を説明する説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置における遺伝的アルゴリズムを用いた処理(交叉)の一例を説明する説明図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置における遺伝的アルゴリズムを用いた処理(突然変異)の一例を説明する説明図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の一例(連続値報酬の拡張)を説明するフローチャート図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の一例(遺伝的アルゴリズム)を説明するフローチャート図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の他の例(一般化ルール及び特殊ルール)を説明するフローチャート図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の他の例(遺伝的アルゴリズム)を説明するフローチャート図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の他の例(矛盾データの取扱い)を説明するフローチャート図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係るルール生成方法の他の例(遺伝的アルゴリズム)を説明するフローチャート図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムの一例を説明する概略システム図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムのデータ取得手段の取得結果(データセット)の一例を説明する説明図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムで用いる睡眠段階(評価値)の一例を説明する説明図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムで解析した解析結果(快眠及び不眠の汎用知識、特殊知識)の一例を説明する説明図である。
図18】cGAにおける、確率モデルの更新方法を説明する説明図である。
図19】DcGAにおける、確率モデルの更新方法を説明する説明図である。
図20】DcGAにおける、準最適解と確率モデルによる表現を説明する説明図である。
図21】DcGAにおける、確率モデルのフィルタ化を説明する説明図である。
図22】各被験者の心拍数の傾きとグループ分けの例を説明する説明図である。
図23】DcGA(1日分)のフィルタによる睡眠段階推定を説明する説明図である。
図24】睡眠段階推定装置の一例を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照しながら、限定的でない例示の実施形態に係るルール生成装置を用いて、本発明を説明する。本発明は、以下に説明するルール生成装置以外でも、複数のデータに基づいてルール(知識、知見など)を生成するものであって、ルールの結論部に相当するデータ要素の取り得る値が連続的であるデータの集合からルールを生成するもの(装置、機器、ユニット、システムなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。なお、「ルールの結論部に相当するデータ要素の取り得る値が連続的である」とは、そのデータ要素の取り得る値が、例えば「正常」か「異常」かのように二値的ではなく、例えば睡眠の深さの度合いや何らかの得点のように連続的な程度を示すものであることを意味する。
【0029】
なお、以後の説明において、添付の全図面の記載の同一又は対応する装置、部品又は部材には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、特に説明しない限り、装置、部品若しくは部材間の限定的な関係を示すことを目的としない。したがって、具体的な相関関係は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。

本発明の一実施形態に係るルール生成装置を用いて、下記に示す順序で本発明を説明する。
【0030】
1.ルール生成装置(第1の実施形態)
2.ルール生成方法(第1の実施形態)
3.介護支援システム(第2の実施形態)
3−1 介護支援システムの構成及び動作
3−2 睡眠段階推定方法の例
4.プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体


[1.ルール生成装置(第1の実施形態)]
第1の実施形態に係るルール生成装置を用いて、本発明を説明する。以後の説明において、ルール生成装置とは、ルールの集合に対して、Attribute Trackingによる特徴抽出モデル(以下、「AT」という)を用いた遺伝的アルゴリズムを適用することによって、複数のデータに適合するルールを生成する(知識を獲得する)、装置である。
【0031】
図1(a)に示すように、データ(DT)とは、1番目のデータ要素(又はデータ項目、属性など)d1からn番目のデータ要素dnで構成されるデータ要素の集合である。データは、本実施形態では、データを取得する対象の状態(活動、行動など)の特徴を示す値(以下、「状態値」という)で構成される、ルールの条件を導く条件用データ要素(例えば図1(a)のd1からd4)と、生成するルールの結論を導く結論用データ要素(例えば図1(a)のd5)と、で構成される。
【0032】
条件用データ要素は、1番目からn−1番目のデータ要素からなる。すなわち、n−1個の観点からの対象の状態を情報として有している。本実施形態はn=5の場合であり、図1(a)に示すように、条件用データ要素はデータ要素d1からデータ要素d4の4ビットのビット列である。ここで、各条件用データ要素の「状態値」は、本実施形態では、2値(0,1)を取りうる。なお、本発明に用いることができる「状態値」は、3以上の状態を表す多値を取りうるものであってもよい。
【0033】
結論用データ要素は、n番目のデータ要素である。本実施形態では、図1(a)に示すように、データ要素d5である。この結論用データ要素d5の値は連続値を取りうる。ここで、結論用データ要素d5は、本実施形態では、データ取得時の状態を示す実測値P(結果値)である。
【0034】
例えば、図1(a)のデータは、条件d1が「0」、d2が「1」、d3が「0」、d4が「1」のとき、実測値P(d5)が「0.15」であったことを意味している。
【0035】
なお、ルール生成装置が用いることができるデータ(データ要素)は、図1(a)に示すデータDTに限定されるものではない。すなわち、本発明のデータは、結論用データ要素が連続値を取りうるものであれば、条件用あるいは結論用のデータ要素の数や各条件用データ要素のとりうる値等は、任意の構成とすることができる。
【0036】
図1(b)に示すように、ルール(RL)とは、1番目のルール要素(又はルール項目、属性など)r1からn+3番目のルール要素rn+3で構成されるルール要素の集合である。ルールは、本実施形態では、ルールにおける条件に相当する条件用ルール要素(例えば図1(b)のr1からr4)と、ルールにおける結論に相当する結論用ルール要素(例えば図1(b)のr5)と、ルールの正確さや汎用性(特殊性)等のルールの特性を表す特性評価用ルール要素(例えば図1(b)のr6からr8)と、で構成される。
【0037】
条件用ルール要素は1番目からn−1番目のルール要素からなり、各ルール要素はデータ(DT)の1番目からn−1番目の条件用データ要素と対応している。本実施形態はn=5の場合であり、図1(b)に示すように、条件用ルール要素はルール要素r1からデータ要素r4から構成される。ここで、各条件用ルール要素は、条件用データ要素と同じ値すなわち本実施形態では2値(0,1)の状態値のいずれか、あるいは、これら2つの状態値のいずれでもよいことを示す「#」(ワイルドカード値)の3つの値を取りうる。すなわち、条件用ルール要素に用いる「#」は、ルールを構成する性質若しくはルールの支配的な特徴に寄与しないことを示す。なお、条件用データ要素の「状態値」が3以上の状態を表す多値を取る場合には、条件用ルール要素は、それらの多値あるいは「#」をとりうる。
【0038】
結論用ルール要素は、n番目のルール要素であり、データ(DT)のn番目のデータ要素である結論用データ要素と対応している。本実施形態では、図1(b)に示すように、ルール要素r5であり、結論用データ要素d5と同様に連続値を取りうる。結論用ルール要素は、本実施形態では、評価値p(r5)が用いられる。
【0039】
ここで、評価値p(r5)とは、データDTの実測値P(データ要素d5)に対応する値であり、条件用ルール要素に設定された各値を満たす条件下での実測値Pの予測値である。
【0040】
特性評価用ルール要素は、n+1番目からn+3番目のルール要素からなる。本実施形態では、誤差値ε(r6)、適合度F(r7)及び許容誤差(汎用性評価値)ε0(r8)の3つのルール要素からなる。
【0041】
ここで、誤差値ε(r6)とは、適合度F(r7)を更新(強化)するために用いられる、データDTの実測値Pと評価値p(r5)の差を表す評価値である。許容誤差ε0(r8)とは、そのルールにおいて許容される結論用ルール要素の値の「幅」を意味する。すなわち、許容誤差ε0(r8)の値が大きいほど汎用性の高い(特殊性の低い)ルールであり、許容誤差ε0(r8)の値が小さいほど特殊性の高い(汎用性の低い)ルールである。適合度F(r7)とは、ルールの適合性あるいは信頼性(正確性)の度合いを示すものである。適合度F(r7)は、誤差値ε(r8)と許容誤差ε0(r6)とに基づいて決定される。具体的には、誤差値ε(r8)が許容誤差ε0(r6)を超えるほど大きければ適合度F(r7)の値は小さくなるように決定される。
【0042】
なお、ルール生成装置が生成するルール(ルール要素)は、図1(b)に示すルールRLに限定されるものではない。すなわち、本発明のルールは、条件用データ要素や結論用データ要素と対応するルール要素と、特性評価用ルール要素とから構成されていれば、任意の構成とすることができる。
【0043】
図1(c)に示すように、ATとは、1番目のAT要素(又は項目、属性など)a1からn−1番目のAT要素an-1で構成されるAT要素の集合である。1つのAT中の各AT要素は、データDTの条件用データ要素の各々、さらに、各条件用データ要素に対応するルールRLの条件用ルール要素の各々に対応する。また、ATは、データDTの件数と同じ件数だけ存在する。各AT要素の値は、対応するデータDTの条件用データ要素が、そのデータと照合するルールRLの適合度Fに対してどの程度寄与しているかを表す。ATは、本実施形態では、「0」(寄与が小さい)から「1」(寄与が大きい)の範囲内の変数である。ATは、後述する照合集合(本実施形態では図2のブロックB04)を構成するルールに基づいて算出される。図1の例では、AT要素a1の値「0.9」は、対応するルールRLの条件用ルール要素r1(図1(b))の値を、対応するデータDTの条件用データ要素d1(図1(a))の値である「0」にする方向に作用する。一方、AT要素a3(図1(c))の値「0.0」は、対応するルールRLの条件用ルール要素r3(図1(b))の値を、対応するデータDTの条件用データ要素d3(図1(a))の値である「0」にする方向には作用するのではなく、ルールの決定に寄与しないことを示す任意の値「#」とする方向に作用する。
【0044】
なお、ルール生成装置が用いるAT(AT要素)は、図1(c)に示すATに限定されるものではない。すなわち、本発明のATは、条件用データ要素、条件用ルール要素と対応するAT要素から構成されていれば、任意の構成とすることができる。
【0045】
図2図3及び図4を用いて、ルール生成装置の各構成を説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置の概略機能ブロック図である。図3は、ルール生成装置に用いるデータセットの一例及び生成するルールの一例を説明する説明図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置で生成されたルールの一例を説明する説明図である。
【0046】
なお、図2に示すルール生成装置の機能は一例であり、本発明を用いることができるルール生成装置の機能は図2に示すものに限定されない。図3に示すデータセット及びルールは一例であり、本発明に係るデータセット及びルールは図3に示すものに限定されない。図4に示すルール生成装置の解析結果は一例であり、本発明を用いて解析することができる解析結果は図4に示すものに限定されない。
【0047】
図2に示すように、本発明に係るルール生成装置は、データ(例えば図1(a))、ルール(例えば図1(b))及びAT(例えば図1(c))を記憶する記憶手段10と、複数のルールの集合(以下、「ルール集合」という)から、データと照合するルールの集合(以下、「照合集合」という)を抽出し、抽出されたルールの結論用ルール要素と特性評価用ルール要素とを更新し、さらに、更新後のルールを分類する照合集合生成手段20と、遺伝的アルゴリズムを用いてルール集合を構成するルールを更新するGA適用手段30と、を有する。なお、ルール生成装置は、データセット(データ、データ要素など)を取得する取得手段、及び、ルール生成装置の外部と情報などの入出力を行うインターフェース手段を更に有してもよい。
【0048】
図3に示すように、本発明に係るルール生成装置は、図中の横軸に示すk個のデータDTで構成されるデータセットDSを解析する。ここで、データDTは、実測値P(図中の縦軸)でそれぞれ評価されている。また、ルール生成装置は、複数のデータDTからルール(図中のRLg1、RLs1、RLg2、RLs2)を生成する。すなわち、ルール生成装置は、図4に示すように、図4(a)から図4(d)で示すルールRLg1、RLs1、RLg2、RLs2の例のように、1番目のルール要素r1から8番目のルール要素r8で構成されるルールを生成する。また、ルール生成装置は、図4(a)から図4(d)で示すルールRLg1、RLs1、RLg2、RLs2の例のように、共通する性質又は支配的な特徴に寄与しないデータを「#」として規定する。
【0049】
以下に、図2を用いて、本発明に係るルール生成装置の各構成を具体的に説明する。
【0050】
記憶手段10は、データ(Rawデータ、実測値など)、ルールの集合(ルール集合、並びに、照合集合、後述するPositiveルール集合)を記憶する手段である。図2に示すように、記憶手段10は、複数のデータで構成されるデータセットを記憶するデータ記憶部11と、ルール集合(不図示)を記憶するルール集合記憶部12と、AT値を記憶するAT記憶部13と、を含む。また、ルール集合記憶部12は、照合集合を記憶する照合集合記憶部12rを備える。なお、記憶手段10の各構成は、電子データ等を記憶することができるフラッシュメモリ、RAM、ROM等の半導体メモリ、メモリカード、HDD( Hard Disc Drive )及びその他公知の技術を用いることができる。
【0051】
データ記憶部11は、複数のデータ要素で構成されるデータ(図1(a))について、複数のデータで構成されるデータセットを記憶するものである。
【0052】
ルール集合記憶部12は、複数のルール要素で構成されるルール(図1(b))について、複数のルールで構成されるルール集合を記憶するものである。ルール集合記憶部12は、本実施形態では、各ルール要素について予めランダムな値が設定された複数のルールをルール集合の初期値として記憶している。
【0053】
照合集合記憶部12rは、照合集合を記憶するものである。照合集合記憶部12rは、本実施形態では、照合集合生成手段20(後述するルール抽出部21)が抽出したルールにフラグMを付与することによって、ルール集合記憶部12で一元的にルールを記憶する。なお、照合集合記憶部12rは、フラグMを用いずに、照合集合生成手段20(ルール抽出部21)が抽出したルールを、元のルール集合とは別の記憶領域に記憶するようにしてもよい。
【0054】
また、照合集合記憶部12rは、照合集合生成手段20(後述するルール分類部23)が分類したPositiveルール集合を特定するために、ルール集合記憶部12に記憶されているルールにフラグPを付与する。なお、照合集合記憶部12rは、フラグPを用いずに、照合集合生成手段20(ルール分類部23)が分類したPositiveルール集合を、元のルール集合や照合集合とは別の記憶領域に記憶するようにしてもよい。
【0055】
AT記憶部13は、複数のAT要素で構成されるAT(図1(c))について、複数のATで構成されるATの集合を記憶するものである。AT記憶部13は、本実施形態では、データ記憶部11の複数のデータに対応する複数のATを記憶する。また、AT記憶部13は、本実施形態では、照合集合生成手段20(ルール分類部23)が分類したPositiveルール集合に対応するATを記憶する。
【0056】
照合集合生成手段20は、ルール集合から照合集合を生成する手段である。図2に示すように、照合集合生成手段20は、ルール集合からルールを抽出する(照合集合を生成する)ルール抽出部21と、抽出したルール(照合集合)のルール要素を更新(又は強化)するルール強化部22と、抽出したルール(照合集合)を分類するルール分類部23と、を含む。なお、照合集合生成手段20は、ルール生成装置に予め搭載されている制御手段(コントローラなど)の情報処理資源を利用する構成であってもよい。
【0057】
ルール抽出部21は、ルール集合からルールを抽出するものである。ルール抽出部21は、データ記憶部11(記憶手段10)に記憶されている複数のデータのうちの一のデータを選択して読み込み、選択した一のデータと照合するルールをルール集合記憶部12(記憶手段10)に記憶されているルール集合から抽出し、照合集合を生成する。すなわち、ルール抽出部21は、選択したデータの条件用データ要素と照合する条件用ルール要素を有するルールをルール集合から抽出する。具体的には、図1(a)のデータが選択された場合、条件用データ要素d1からd4の値は「0101」であるから、条件用ルール要素r1からr4として、「0101」を有するルールの他、前述の「#」を用いた「#101」「01##」などを有するルールがこのデータと照合する。
【0058】
ルール強化部22は、選択したデータの結論用データ要素(図1(a)のd5)、すなわち実測値Pを用いて、抽出したルール(照合集合のルール)の結論用ルール要素である評価値p(図1(b)のr5)と特性評価用ルール要素である誤差値ε(図1(b)のr6)、適合度F(図1(b)のr7)を更新するものである。具体的には、ルール強化部22は次式を用いて更新する。

p(j+1)=p(j)+β×(P−p(j)) ・・・(1)

ε(j+1)=ε(j)+β×(|P−p(j)|−ε(j)) ・・・(2)

F(j+1)=F(j)+β×(κ−F(j)) ・・・(3)

ここで、上記の式は、p(j)、ε(j)及びF(j)をp(j+1)、ε(j+1)及びF(j+1)に更新することを示す。βは予め定められた係数である。また、κは、例えば次式で計算する。

κ=1 (ε(j+1)<ε0のとき) ・・・(4.1)
κ=α(ε(j+1)/ε0) (ε(j+1)≧ε0のとき) ・・・(4.2)

すなわち、ルール強化部22は、本実施形態では、(1)を用いて評価値pを更新する。次に、(2)を用いてεを更新し、更新後のεを(4.1)または(4.2)に代入することによってκを算出し、算出したκを(3)に代入することによって適合度Fを更新する。
【0059】
ルール分類部23は、ルール強化部22が更新(強化)したルール(照合集合)を分類するものである。本実施形態では、ルール分類部23は、照合集合から、結論用ルール要素の値に応じてPositiveルール集合を抽出する。ここで、Positiveルール集合とは、Positiveな結論を導くルールの集合である。すなわち、Positiveルール集合は、評価値pの値が所定の閾値より大きいルールで構成される。具体的には、ルール分類部23は、本実施形態では、先ず、データ記憶部11(記憶手段10)に記憶されている複数のデータの実測値P(データ要素d5)の平均値を算出する。次に、ルール分類部23は、算出した平均値を閾値として用いて、照合集合に含まれるルールの評価値p(ルール要素r5)とを比較する。このとき、ルール分類部23は、評価値pが平均値より大きいルールをPositiveルール集合に分類する。
【0060】
GA適用手段30は、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm、以下、「GA」という)を用いて、照合集合生成手段20が生成した照合集合に基づいて、ルール集合を構成するルールを更新する手段である。ここで、GA(遺伝的アルゴリズム)とは、複数のデータ(本実施形態ではルールが相当する)の各々を遺伝子を有する個体として捉え、選択、交叉や突然変異の操作を通して遺伝子の形(データ(ルール)の内容)を変えることで、環境(問題)に対する適応度が高い個体を発見する計算手法である。
【0061】
図2に示すように、GA適用手段30は、ATを更新するAT更新部31と、ルール分類部23(照合集合生成手段20)が分類したルールから2つの親ルールを選択するルール選択部32と、交叉操作によって2つの親ルールから2つの子ルールを作成するルール交叉部33cと、作成した子ルールをルール集合に追加するルール追加部34aと、を含む。また、GA適用手段30は、ルール交叉部33cが作成した子ルールに対して突然変異操作を行うルール突然変異部33v、ルール集合からルールを削除(淘汰)するルール淘汰部34d、及び/又は、許容誤差ε0を更新する許容誤差更新部34rを更に含んでもよい。なお、GA適用手段30は、ルール生成装置に予め搭載されている制御手段(コントローラなど)の情報処理資源を利用する構成であってもよい。
【0062】
AT更新部31は、AT記憶部13(記憶手段10)に記憶されているATを更新するものである。AT更新部31は、Positiveルール集合内のルールに基づいてATを更新する。前述のとおり、各AT要素の値は、対応するデータDTの条件用データ要素が、そのデータと照合するルールRLの適合度Fに対してどの程度寄与しているかを表す。そこで、AT更新部31は、ある条件用データ要素の値が、対応する条件用ルール要素の「#」の値と照合する場合、その条件用データ要素は、照合したルールの適合度Fの決定に寄与していないと判断する。一方、対応するルール要素の具体的な値(ここでは「0」または「1」)と照合する場合には、その条件用データ要素は、照合したルールの適合度Fの値に応じた寄与をしていると判断する。すなわち、適合度Fの高いルールと照合するほど、その条件用データ要素は正確なルールの決定に寄与していると判断される。
【0063】
図1(c)と図5を用いて、ATの更新の動作の一例を説明する。なお、図5は、照合集合に2件のルールがある場合の例である。本発明に係るAT更新部31は、照合集合に1件のルールがある場合、又は、3件以上のルールがある場合でも、以下に示す手順と同様にAT値の更新することができる。
【0064】
AT更新部31は、先ず、図5(a)に示す照合集合中にある2件のルールのルール要素r7(適合度F)を用いて、ルール要素(r1からr4)の各値を図5(b)のように変換する。具体的には、AT更新部31は、条件用ルール要素が「1」又は「0」の場合に、ルール要素に対応するAT要素を適合度Fの値とする。また、AT更新部31は、ルール要素が「#」の場合に、ルール要素に対応するAT要素を「0」とする。
【0065】
次に、AT更新部31は、図5(b)に示す2件について、ルール要素毎に加算を行う。図5(c)はその加算結果を示している。
【0066】
次いで、AT更新部31は、加算結果(図5(c)のAT(C))を正規化する。図5(d)はその正規化結果を示している。具体的には、AT更新部31は、各要素の絶対値を「1」以下に補正するために、最大値のAT要素の値を「1」に変換し、且つ、それ以外の要素の値を同様の変換率で変換する(ここでは、各値を1.2で除算している)。
【0067】
その後、AT更新部31は、正規化後の各値(図5(d)のAT(R))を用いて、AT(例えば図1(c))を更新する。具体的には、AT更新部31は、要素毎に、正規化後の各値(図5(d)のAT(R))と更新前のAT(例えば図1(c))との平均値を算出し、算出した平均値を新しいAT値(図5(e)のAT(A))とする。なお、AT更新部31は、更新前のATがない場合(例えば、そのATに対応するデータが初めて処理されるとき)には、正規後の各値(図5(d)のAT(R))を新しいATとして記憶させる。
【0068】
ルール選択部32は、ルール分類部23(照合集合生成手段20)が分類したルールから2つの親ルールを選択するものである。ルール選択部32は、本実施形態では、評価値p(図1(b)のr5)に基づいて、分類したルール(Positiveルール集合)から2つの親ルールを夫々選択する。具体的な選択方式としては、ルーレット選択、ランキング選択、トーナメント選択等、遺伝的アルゴリズムにおける公知の方式を用いることができる。なお、このとき、選択された親ルールは、ルール集合からは削除されない。
【0069】
ルール交叉部33cは、ATを用いて、所与の確率に従って、2つの親ルールから2つの子ルールを作成するものである。具体的には、ルール選択部32によって選択された2つの親ルールのコピー(図6(c)のOffspring1、図6(d)のOffspring2)から2つの子ルール(図6(e)のBest、図6(f)のWorst)を作成する。ここで、ルール交叉部33cは、Bestの子ルール(図6(e))に重要な特徴が集約されるように、2つのコピーのルール要素を入れ替える。
【0070】
具体的には、ルール交叉部33cは、AT要素の値が所定の閾値より大きい場合には対応する条件用データ要素の値が条件用ルール要素の値となるように、AT値が所定の閾値以下の場合には対応する条件用データ要素の値が「#」となるように、2つのコピーのデータ要素の入れ替えを試みる。ここで、2つのコピーがこのような入れ替えを可能にするデータ要素を持たない場合には入れ替えは行われない。図6の例では、a1、a2のAT要素の値が所定の閾値(例えば「0.5」)より大きいから、各Offspringの条件用ルール要素の1番目ではデータ要素d1の値「0」を有するOffspring1が重要な特徴となり、条件用ルール要素の2番目ではデータ要素d2の値「1」を有するOffspring2が重要な特徴となる。一方、a3、a4のAT値は所定の閾値以下であるから、条件用ルール要素の3、4番目は「#」が重要な特徴となる。しかし、各Offspringの3番目のルール要素はともに「0」であるから、(たとえ入れ替えたとしても)「0」のままとなる。また、4番目のルール要素は、Offspring2が「#」の値を有している。したがって、この例では、Offspring(図6(c)(d))の2番目及び4番目のルール要素の交叉が行われ、図6(e)の重要な特徴が集約された子ルールと図6(f)の重要でないルールが集約された子ルールとが作成される。さらに、ルール交叉部33cは、2つのコピーの許容誤差ε0の平均値を、2つの子ルールの許容誤差ε0に設定する。
【0071】
ルール突然変異部33vは、ルール交叉部33cが作成した子ルールを突然変異するものである。ルール突然変異部33vは、子ルールOffspringA(図7(c))を、所定の確率μで例えば子ルールVariationAv(図7(d))に突然変異させる。具体的には、例えば、ルール突然変異部33vは、突然変異を行う場合、子ルールの条件用ルール要素の各々について、対応するAT(図7(b))のAT要素の値を確率μとして用いて値を変更するかどうかを決定する。ここで、条件用ルール要素の値を変更することになった場合、ルール突然変異部33vは、そのAT要素の値が所定の閾値より大きければ、その条件用ルール要素の値を、対応するデータ(図7(a))のデータ要素の値に変更する(図7(d)の2番目のルール要素)。一方、そのAT要素の値が所定の閾値以下であれば、その条件用ルール要素の値を、「#」に変更する(図7(d)の4番目のルール要素)。図7(e)(f)は、別の子ルールの突然変異の例である。図に示したとおり、3番目と4番目のルール要素において、先の例と同様に値の変更が行われている。
【0072】
ルール追加部34aは、ルール交叉部33cが作成した2つの子ルールをルール集合記憶部12(記憶手段10)に記憶されているルール集合に追加するものである。ルール追加部34aは、作成した2つの子ルールのいずれか一方をルール集合に追加するものであってもよい。また、ルール追加部34aは、ルール突然変異部33vが突然変異した子ルールをルール集合に追加するものであってもよい。
【0073】
ルール淘汰部34dは、ルール追加部34aが子ルールをルール集合に追加するときに、ルール集合からルールを削除(淘汰)するものである。ルール淘汰部34dは、例えば解析に使用しないルール、評価値pの値が小さいルール、適合度Fの小さいルール、又は、その他予め決められた条件に対応するルールを削除する。
【0074】
許容誤差更新部34rは、所与の確率で許容誤差ε0を突然変異(更新)させるものである。許容誤差更新部34rは、例えばルール交叉部33cで子ルールを生成する前若しくは後に、又は、ルール突然変異部33vで子ルールを突然変異する前若しくは後に、許容誤差ε0を更新することができる。また、許容誤差更新部34rの処理対象となるルールは、ルール分類部23によって選択されたルールの全てとしてもよいし(この場合であっても、許容誤差ε0は上記所与の確率で選択的に更新される)、ルール選択部32によって選択されたルールのみであってもよい。
【0075】
許容誤差更新部34rは、本実施形態では、次式を用いて、許容誤差ε0を更新する。
【0076】
(数6)
ε0(g+1)=ε0(g)×α
ここで、上記の式は、ε0(g)をε0(g+1)及びF(g+1)に更新することを示す。また、αは更新度合いを表す係数である。許容誤差更新部34rは、αに「1」より大きい値又は「1」より小さい値を用いることができる。あるいは、αは、例えば0<α<1.5、又は、0<α<1.0)であってもよい。
【0077】
なお、許容誤差ε0は、本実施形態では、生成するルール(例えば図3に示すRLg1、RLs1、RLg2、RLs2)の領域の範囲を示す。また、許容誤差ε0は、一般化ルールに用いる第1の所定値以下の値として、例えば図4(a)に示すRLg1の範囲(ε0=0.08)、又は、図4(c)に示すRLg2の範囲(ε0=0.06)としてもよい。許容誤差ε0は、特殊ルール(後述)に用いる第1の所定値より小さい第2の所定値以下の値として、例えば図4(b)に示すRLs1の範囲(ε0=0.01)、又は、図4(d)に示すRLs2の範囲(ε0=0.01)としてもよい。
【0078】
ここで、一般化ルールとは、相対的に多数のデータ(例えば複数の日)に適用可能なルールである。特殊ルールとは、相対的に少数のデータ(例えば特定の日)に適用可能なルールである。ルール生成装置は、例えば後述の介護支援システムにおけるデータ解析時に、日常的な状態を特徴付けるルールとして、一般化ルールを生成する。また、ルール生成装置は、非日常的な状態(誕生日、外出日、イベント日など)を特徴付けるルールとして、特殊ルールを生成する。
【0079】
本発明に係るルール生成装置は、概略としては以下のように動作する。すなわち、記憶手段10(データ記憶部11)に記憶されているデータセットDSから一のデータを選択し、照合集合生成手段20(ルール抽出部21)を用いて、記憶手段10(ルール集合記憶部12)に予め記憶されているルール集合から、一のデータと照合するルールの集合である照合集合を抽出する。また、ルール生成装置は、照合集合生成手段20(ルール強化部22)を用いて、抽出した照合集合を構成するルールの結論用ルール要素(評価値p)と特性評価用ルール要素の一部(誤差値ε、適合度F)とを更新(強化)する。更に、ルール生成装置は、照合集合生成手段20(ルール分類部23)を用いて、更新した照合集合のうちのPositiveルール集合を抽出する。
【0080】
その後、ルール生成装置は、GA適用手段30(AT更新部31)を用いて、Positiveルール集合のルール要素に基づいて、記憶手段10(AT記憶部13)に記憶されているAT値を更新する。また、ルール生成装置は、GA適用手段30(ルール選択部32)を用いて、Positiveルール集合から2つの親ルールを選択する。次に、ルール生成装置は、GA適用手段30(ルール交叉部33c)を用いて、選択した2つの親ルールに基づいて、2つの子ルールを生成する。ここで、GA適用手段30(ルール交叉部33c)は、AT値を用いて、2つの子ルールを生成する。このとき2つの子ルールのうちの一方は、重要な特徴を表す条件用ルール要素の値が集約されるように生成される。次いで、ルール生成装置は、GA適用手段30(ルール追加部34a)を用いて、生成した2つの子ルールを記憶手段10(ルール集合記憶部12)に記憶されているルール集合に追加する。
【0081】
更に、ルール生成装置は、GA適用手段30(ルール突然変異部33v)を用いて、生成した2つの子ルールを突然変異させてもよい。また、ルール生成装置は、GA適用手段30(ルール淘汰部34d)を用いて、生成した2つの子ルールをルール集合に追加するときに、ルール集合から所望のルールを削除(淘汰)してもよい。また、ルール生成装置は、GA適用手段30(許容誤差更新部34r)を用いて、許容誤差ε0を更新してもよい。
【0082】
[2.ルール生成方法(第1の実施形態)]
図8及び図9を用いて、本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)の一例を説明する。ここで、図8は、本実施形態に係るルール生成方法の一例(連続値報酬の拡張)を説明するフローチャート図である。図9は、本実施形態に係るルール生成方法の一例(GA)を説明するフローチャート図である。なお、図8及び図9に示すルール生成装置の動作は一例であり、本発明に係るルール生成装置の動作は図8及び図9に示すものに限定されるものではない。
【0083】
図8に示すように、ルール生成装置は、ステップS800において、解析動作を開始するために、先ず、ルール集合[P]を初期化する。具体的には、ルール生成装置は、各ルール要素のとりうる値の範囲内でランダムに設定されたルール(例えば図1(b))をルール集合記憶部12(図2のブロックB03)に複数記憶する(ルール集合記憶ステップ)。その後、ルール生成装置は、ステップS801に進む。
【0084】
ステップS801において、ルール生成装置は、ルール抽出部21(図2のブロックB02)を用いて、データ記憶部11(図2のブロックB01)に記憶されている複数のデータから一つのデータを選択する。その後、ルール生成装置は、ステップS802に進む。なお、ルール生成装置は、例えば複数のデータのうちで記録日時が新しいデータ若しくは古いデータから順に選択してもよい。ルール生成装置は、例えば複数のデータのうちで所望の日時のデータから選択してもよい。
【0085】
ステップS802において、ルール生成装置は、ルール抽出部21を用いて、照合集合[M]を抽出する(ルール抽出ステップ)。具体的には、ルール生成装置は、ステップS801で選択した一つのデータに基づいて、記憶したステップS800で記憶したルール集合[P]から、そのデータと照合するルールを抽出する。その後、ルール生成装置は、ステップS803に進む。
【0086】
ステップS803において、ルール生成装置は、ルール強化部22(図2のブロックB05)を用いて、評価値p、誤差値ε及び適合度Fを更新(強化)する(ルール強化ステップ)。具体的には、ルール生成装置は、前述の(1)乃至(4.2)を用いて、評価値p、誤差値ε及び適合度Fを強化する。その後、ルール生成装置は、ステップS804に進む。
【0087】
ステップS804において、ルール生成装置は、ルール分類部23(図2のブロックB06)を用いて、照合集合[M]を分類する(ルール分類ステップ)。具体的には、ルール生成装置は、ステップS803で強化した評価値pと、データ記憶部11に記憶されている複数のデータの実測値Pの平均値とを比較することによって、評価値pが平均値より大きいルールをPositiveルール集合[Mp]に分類する。その後、ルール生成装置は、ステップS805に進む。
【0088】
ステップS805において、ルール生成装置は、AT更新部31(図2のブロックB07)を用いて、前述の手順により、AT記憶部13(図2のブロックB08)に記憶されているAT値を更新する。その後、ルール生成装置は、ステップS806に進む。
【0089】
ステップS806において、ルール生成装置は、GA適用手段30を用いて、Positiveルール集合[Mp]に対してGAを適用する(GA適用ステップ)。
【0090】
具体的には、ルール選択部32(ルール生成装置)は、図9のステップS901において、分類したPositiveルール集合[Mp]から2つの親ルールを選択する。次に、ルール交叉部33c(図2のブロックB10a)は、ステップS902において、前述の手順により、AT値に基づいて2つの親ルールから2つの子ルールを作成する(ルール交叉ステップ)。次いで、ルール突然変異部33v(図2のブロックB10b)は、ステップS903において、前述の手順により、生成した子ルールを突然変異させる。その後、ルール追加部34a(図2のブロックB11a)は、ステップS904において、2つの子ルール(ステップS902)又は突然変異した子ルール(ステップS903)をルール集合[P]に追加する(ルール追加ステップ)。このとき、ルール淘汰部34d(ルール生成装置)は、適合度Fが小さい2つのルールを集合[P]から削除する。なお、ルール生成装置は、ステップS903(突然変異)を実施しないで、ステップS904に進んでもよい。
【0091】
その後、ルール生成装置は、図8のステップS807に戻る。
【0092】
ステップS807において、ルール生成装置は、解析動作を終了するか否かを判断する。具体的には、ルール生成装置は、例えばk個のデータから一般化ルールを生成する場合に、繰り返し計算をカウントし、k個のデータのすべてについて解析したときや、所定の回数繰り返し計算を行ったときに、解析動作を終了すると判断してもよい。
【0093】
解析動作を終了すると判断した場合には、ルール生成装置は、図中のENDに進み、解析する動作を終了する。解析動作を終了しないと判断した場合には、ルール生成装置は、ステップS801に戻り、上記のステップS801乃至ステップS807の動作を繰り返す。
【0094】
この繰り返し処理の結果、ルール集合に含まれるルールが最適化される。すなわち、適切なルールである場合には、結論用ルール要素は、データ記憶部11に記憶されている生データの値に従った値に更新されていくとともに、特性評価用ルール要素の適合度Fが高くなっていく。また、条件用ルール要素は、ルール交叉部33cと、必要に応じてルール突然変異部33vによって、高い適合度が反映されたATに基づいて、重要性の高い状態値またはワイルドカード値に適切に更新される。そして、最適化の結果、例えば、最終的なルール集合中の、適合度Fが高く、かつ、結論用ルール要素が所望の値を有するルールを、適切なルールとして獲得することができる。
【0095】
以上のとおり、第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)は、結論用ルール要素が連続値を有するものであっても、その値が所定の条件を満たすPositiveルール集合を分類し、このPositiveルール集合を対象にしてATを用いたGAによる最適化が行われるので、適切なルールが生成される。
【0096】
(ルール生成方法の変形例1)
図10及び図11を用いて、本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)の変形例1を説明する。ここで、図10は、本実施形態に係るルール生成方法の変形例1(特殊ルールと一般化ルールの同時獲得)を説明するフローチャート図である。図11は、本変形例(GA)を説明するフローチャート図である。
【0097】
図10に示すように、本変形例に係るルール生成装置によって行われるステップS1001乃至ステップS1006は、上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様である。
【0098】
ここで、本変形例に係るルール生成装置は、図10のステップS1006において、図11のステップS1101乃至ステップS1103は上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図9のステップS901乃至ステップS903)と同様である。そして、図11のステップS1104において、許容誤差(ε0)更新部34r(図2のブロックB11c)を用いて、許容誤差ε0を更新する。なお、本変形例に係るルール生成装置において、許容誤差(ε0)を更新する以外は、上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0099】
以上のとおり、変形例1に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)は、第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様の効果を得ることができる。また、変形例1に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)では、許容誤差ε0を更新することによって、許容誤差の小さい特殊ルールと許容誤差の大きい一般化ルールの両方を生成可能となる。
【0100】
例えば、ε0の値を小さくなる方向に更新される場合、後続の繰り返し処理により、適合度Fの値は上がりにくくなる(式(3)(4.1)(4.2)参照)。その結果、ATの値も大きくはなりにくくなるため、交叉や突然変異により、条件用ルール要素は「#」が多くなる。そうすると、多くのデータと照合するため、結論用ルール要素の評価値pと結論用データ要素の結果値との間の誤差εが大きくなり、適合度Fが低下する。このようなことが生じると、ルールとしては不適切となり淘汰されやすくなる。一方、ε0の値が小さくなっても、結論用データ要素の結果値が評価値p±ε0の範囲内にあるデータがある程度存在すれば、上記のような流れには陥らず、適合度Fが高く保たれ、適切な特殊ルールが生成される。
【0101】
逆に、ε0の値が大きくなる方向に更新される場合、後続の繰り返し処理により、適合度Fの値は上がりやすくなる(式(3)(4.1)(4.2)参照)。その結果、ATの値も大きくなりやすくなるため、交叉や突然変異により、条件用ルール要素は「0」「1」等の状態値が多くなる。そうすると、特定のデータとのみ照合される傾向になり、結論用ルール要素の評価値pと結論用データ要素の結果値との間の誤差εが小さくなり、適合度Fが高くなる。これにより、適切な一般化ルールが生成される。
【0102】
なお、図3の例では、縦軸方向の「幅」が広いルールRLg1、RLg2が一般化ルール、「幅」が狭いルールRLs1、RLs2が特殊ルールである。
【0103】
(ルール生成方法の変形例2)
本発明の第1の実施形態に係るルール生成装置(ルール生成方法)の変形例2(矛盾データの取扱い)を説明する。
【0104】
本変形例では、記憶手段10は、Positiveルール集合とともにNegativeルール集合を記憶する。
【0105】
具体的には、照合集合記憶部12rは、照合集合生成手段20(後述するルール分類部23)が分類したPositiveルール集合及びNegativeルール集合を特定するために、ルール集合記憶部12に記憶されているルールにフラグP又はNを付与する。なお、照合集合記憶部12rは、フラグPやNを用いずに、照合集合生成手段20(ルール分類部23)が分類したPositiveルール集合及びNegativeルール集合を、元のルール集合や照合集合とは別の記憶領域に記憶するようにしてもよい。
【0106】
また、AT記憶部13は、本変形例では、照合集合生成手段20(ルール分類部23)が分類したPositiveルール集合及びNegativeルール集合にそれぞれ対応するATを記憶する。
【0107】
そして、ルール分類部23は、照合集合を、結論用ルール要素の値に応じてPositiveルール集合及びNegativeルール集合に分類する。ここで、Positiveルール集合とは、Positiveな結論を導くルールの集合である。すなわち、Positiveルール集合は、評価値pの値が所定の閾値より大きいルールで構成される。Negativeルール集合とは、Negativeな結論を導くルールの集合である。すなわち、Negativeルール集合は、評価値pの値が所定の閾値以下のルールで構成される。具体的には、ルール分類部23は、本変形例では、先ず、データ記憶部11(記憶手段10)に記憶されている複数のデータの実測値P(データ要素d5)の平均値を算出する。次に、ルール分類部23は、算出した平均値を閾値として用いて、照合集合に含まれるルールの評価値p(ルール要素r5)とを比較する。このとき、ルール分類部23は、評価値pが平均値より大きいルールをPositiveルール集合に分類し、評価値pが平均値以下のルールをNegativeルール集合に分類する。
【0108】
図12は、本変形例2のルール生成方法を説明するフローチャート図である。図13は、本変形例2(GA)を説明するフローチャート図である。
【0109】
図12に示すように、本変形例に係るルール生成装置で行われるステップS1201乃至ステップS1203は、上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8のステップS801乃至ステップS803と同様である。
【0110】
そして、ステップS1204において、ルール生成装置は、評価値pに基づいて、ルール分類部23を用いて、照合集合[M]を分類する(ルール分類ステップ)。具体的には、ルール生成装置は、本変形例では、ステップS1203で強化した評価値Pと、データ記憶部11に記憶されている複数のデータの実測値Pの平均値とを比較することによって、評価値pが平均値より大きいルールをPositiveルール集合[Mp]に分類し、評価値pが平均値より小さいルールをNegativeルール集合[Mn]に分類する。その後、ルール生成装置は、ステップS1205A及びステップS1205Bに進む。
【0111】
ステップS1205A及びステップS1206Aにおいて、ルール生成装置は、上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様に(ステップS805及びステップS806)、GA(図9)を用いて、生成した子ルールをルール集合に追加する。また、ステップS1205B及びステップS1206Bにおいて、ルール生成装置は、GA(図13)を用いて、分類したNegativeルール集合[Mn]から親ルールを選択し、親ルールにGAを適用する。その後、ルール生成装置は、ステップS1207に進む。すなわち、本変形例に係るルール生成装置は、A側のステップ(ステップS1205A及びステップS1206A)とB側のステップ(ステップS1205B及びステップS1206B)で、ルールの結論部のカテゴリが異なる(例えば、浅い眠りと深い眠り)2種類のルールを同時に生成することができる。なお、図13は、Negativeルール集合[Mn]から2つの親ルールを選択すること以外はステップS1205A及びステップS1206Aと同様のため、説明を省略する。
【0112】
次に、ステップS1207において、ルール生成装置は、上記の第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様に(ステップS807)、解析動作を終了するか否かを判断する。解析動作を終了すると判断した場合には、ルール生成装置は、図中のENDに進み、解析する動作を終了する。解析動作を終了しないと判断した場合には、ルール生成装置は、ステップS1201に戻り、上記のステップS1201乃至ステップS1207の動作を繰り返す。
【0113】
以上のとおり、変形例2に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)は、第1の実施形態に係るルール生成装置の動作(図8)と同様の効果を得ることができる。また、変形例2に係るルール生成装置の動作(ルール生成方法)は、ルール集合(複数のルール)からルールの結論部のカテゴリが異なる(例えば、浅い眠りと深い眠り)2種類のルールを同時に生成することができる。
【0114】
なお、図3の例では、例えば、縦軸方向の値が高い値の範囲にあるルールRLg1(またはRLs1)と、低い値の範囲にあるルールRLg2(またはRLs2)が同時生成されることになる。
【0115】
また、変形例1と2との組合せ、すなわち、許容誤差更新部34rを備えつつ、Positiveルール集合とNegativeルール集合の両方を分類する形態とすれば、ルールRLg1、RLs1、RLg2、RLs2を同時に生成することができる。
【0116】
さらに、結論用ルール要素が連続値をとらず、2値を取る場合であっても、変形例1の態様とすれば、一般化ルールと特殊ルールを同時生成することができる。また、変形例2の態様とすれば、ルールの結論部のカテゴリが異なる2種類のルールを同時に生成することができる。

[3.介護支援システム(第2の実施形態)]
図14乃至図16を用いて、本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムを説明する。ここで、図14は、本実施形態に係る介護支援システムの一例を説明する概略システム図である。図15は、介護支援システムのデータ取得手段の取得結果(データセット)の一例を説明する説明図である。図16は、介護支援システムで用いる睡眠段階(評価値)の一例を説明する説明図である。
【0117】
なお、図14等に示す介護支援システムは一例であり、本発明に係る介護支援システムは図14等に示すものに限定されるものではない。また、以後の説明において、介護支援システム(第2の実施形態)は、前述のルール生成装置(第1の実施形態)の構成等を含むため、異なる部分を主に説明する。

[3−1 介護支援システムの構成及び動作]
本実施形態に係る介護支援システムは、データセットを取得するデータ取得手段と、前述の[1.ルール生成装置(第1の実施形態)]のルール生成装置と、を含む。すなわち、本実施形態に係る介護支援システムは、データ取得手段を用いて介護を受ける対象者の一日単位のデータを取得し、取得したデータセット(例えば一ヶ月のデータ)に基づいて介護を受ける対象者の状況及び介護支援の内容などを解析して、介護支援に関する知識を獲得する。これにより、本実施形態に係る介護支援システムで獲得した知識(第1の実施形態に係るルール生成装置で解析したルール)を用いて、例えば介護ホームなどの介護支援方法において、介護を受ける対象者の過去の行動又は状態(複数のデータ)に基づいて介護支援のケアプランを作成することができる。
【0118】
具体的には、介護支援システムは、図14に示すように、介護福祉施設における介護対象者(例えば高齢者)の介護支援に用いられる。また、介護支援システムは、例えば介護士、ケアマネージャ、ケアプランナー、介護士支援エージェントなどによって使用されてもよい。

介護支援システムは、例えば図14及び図15に示すように、複数(例えば1ヶ月間)のデータ(データセット)に基づいて、(i)睡眠の深さを示す快眠度を評価値として用いて、介護支援に関する知識を獲得する。また、介護支援システムは、データセットに基づいて、(ii)深い(又は浅い)睡眠に導く汎用ルール(一般化ルール)と特殊ルールとを同時に獲得する。
【0119】
図15に示すように、介護支援システムにおいて、データ取得手段が取得するデータは、(i)介護対象者がある日に行った介護活動要素(朝食、運動、入浴、睡眠の有無、健康状態等)の組と、(ii)その日の睡眠の深さ(快眠度)を意味する睡眠段階から構成される。睡眠段階は、例えば図16に示すような度合いLVで評価してもよい。図16に示す睡眠段階は、度合いLV(快眠度)が高いほど深い睡眠であることを意味する。ここで、介護活動要素の組は第1の実施形態における条件用データ要素に相当し、睡眠段階は結論用データ要素に対応する。

[3−1−1 介護支援システムで得られるルール]
本実施形態に係る介護支援システムを用いて得られるルール(知識)の例を下記に示す。
【0120】
(a)深い睡眠に導き、複数日に使用可能なルール(深い睡眠−汎用ルール、例えば図3のRLg1)
(b)深い睡眠に導き、特定日にのみ使用可能なルール(深い睡眠−特殊ルール、例えば図3のRLs1)
(c)浅い睡眠に導き、複数日に使用可能なルール(浅い睡眠−汎用ルール、例えば図3のRLg2)
(d)浅い睡眠に導き、特定日にのみ使用可能なルール(浅い睡眠-特殊ルール、例えば図3のRLs2)

具体的には、介護支援システムで用いるルールは、条件用ルール要素である介護活動要素の組と、結論用ルール要素である予測快眠度p(第1の実施形態の評価値pに相当)と、特性評価用ルール要素であるルールの適合度f(第1の実施形態の適合度Fに相当)、予測快眠度の許容誤差εo(第1の実施形態の許容誤差ε0に相当)とから構成される。また、介護支援システムで用いるルールは、入力されたデータ(介護活動の組)に対し、任意の値を示す「#」を組み込むことで汎用的な条件を構成することができる。
【0121】
予測快眠度pは、ルール使用時に、入力データの快眠度を予測した値である。すなわち、本実施形態に係る介護支援システムの使用者は、獲得した知識(ルール)を用いて、快眠度を予測する。また、本実施形態に係る介護支援システムの使用者は、例えば予測快眠度pが高い値である場合に深い睡眠に導くルール(介護支援の内容)であること認識し、予測快眠度pが低い値である場合に浅い睡眠に導くルール(介護支援の内容)であることを認識することができる。
【0122】
適合度fは、予測快眠度の信頼性(正しさ)を意味する。予測快眠度と実測値との誤差が大きい場合には適合度が低下し、不正確なルールであることを意味する。
【0123】
予測快眠度の許容誤差ε0は、適合度算出時における誤差の許容範囲を意味する。許容誤差が大きい場合には、大きな誤差をもつが複数のデータに使用可能な汎用ルール(一般化ルール)となる。また、許容誤差が小さい場合には、極めて正確であるが少数のデータのみが使用可能な特殊ルールとなる。
【0124】
介護支援システムは、例えばルールの条件部が「00##」で推定予測値がp、許容誤差がε0というルールの場合、ある日の介護活動要素の組が「0001」、「0010」、「0000」、または「0011」のときは、その日の夜の快眠度がp±ε0であると予測される。
【0125】
なお、介護支援システムは、本実施形態では、ルール集合[P]の平均快眠度p以上である照合集合[M]内のルール[A]を「Positive Rule Set」とし、平均快眠度p未満であるルール[nA]を「Negative Rule Set」とする。

[3−1−2 介護支援システムで獲得した知識(ルール)の例]
図17に、介護支援システムで獲得した知識(快眠及び不眠の汎用知識、特殊知識)の例を示す。
【0126】
図17に示すように、介護支援システムでは、例えば下記の4つの知識(「(a)快眠(汎用知識)」、「(b)快眠(特殊知識)」、「(c)不眠(汎用知識)」、及び、「(d)不眠(特殊知識)」)が得られた。なお、以下にルール解釈例を示す。
【0127】
(a1)「午後に入浴」を実施する場合、その夜は深い睡眠が予測される。
【0128】
(a2)「リハビリ」を実施しない場合、その夜は深い睡眠が予測される。
【0129】
(b)「午前の入浴」と「午前のリハビリ」を実施する場合、その夜は深い睡眠が予測される。
【0130】
(c)「午前のリハビリ」を実施し、「入浴」を実施しない場合、その夜は浅い睡眠が予測される。
【0131】
(d)「お茶」「入浴」「リハビリ」を実施しない場合、その夜は浅い眠りが予測される。
【0132】
介護支援をする者は、上記(a1)(a2)及び(b)から(d)の知識(ルール)を用いて、介護支援のメニューを作成することによって、満足度の高い介護支援を実現する。


[3−2 睡眠段階推定方法の例]
本発明の第2の実施形態に係る介護支援システムのデータ取得手段の睡眠段階(予測快眠度p)の推定方法の例として、本出願人が特願2013-123257にて提案している方法を説明する。なお、本発明に用いることができる睡眠段階(予測快眠度p)の推定方法は以後に説明する睡眠段階の推定方法に限定されるものではない。
【0133】
本例に係る睡眠段階推定方法は、生体データ取得部によって取得された生体データから、所望の周波数帯域を透過させるフィルタを用いて周波数帯域のデータを抽出するステップと、抽出されたデータに基づいて生体データの取得時点における睡眠段階を判定するステップとを含む。
【0134】
ここで、フィルタとは、本例では、複数のフィルタ個体の集合体であるデータセットを用いてDatabase-based Compact Genetic Algorithm(以下、「DcGA」という)によって生成されたフィルタである。フィルタは、例えば様々な周波数帯域を透過させる複数のフィルタと、フィルタを用いて過去の生体データから抽出したデータに基づいて睡眠段階を判定した結果に対する評価値と、を含む。
【0135】
本例に係る睡眠段階推定方法を、以下で具体的に説明する。

[3−2−1 睡眠段階の推定のためのバンドパスフィルタの生成手法]
本例の睡眠段階推定手法では、遺伝的アルゴリズムによる学習手法を改良したDcGAを用いて、推定に適した心拍数の周波数成分を抽出するバンドパスフィルタを生成する。ここで、バンドパスフィルタとは、本例では、例えば14ビットのビット列で表現される。各ビットは周波数(順に、1/16200秒・1/8100秒・1/4050秒・・・1/16秒・1/8秒・1/4秒・1/2秒)を表す。また、各ビットは、値が"1"の場合にそのビットで表される周波数を推定に使用することを意味し、値が"0"の場合にそのビットで表される周波数を推定に使用しないことを意味する。
【0136】
(a) cGA(Compact Genetic Algorithm)
cGAは確率モデルを用いた遺伝的アルゴリズム(GA)である。対象となるデータは2値(0,1)のバイナリデータである。確率モデルが示す確率はビットが「1」となりうる確率である。各データは遺伝子座に対応している。なお、本例で用いるDcGAは、cGAを拡張した手法である。
【0137】
(メカニズム)
(i)cGAは、個体生成において、確率モデルの確率に従って、個体を生成する。個体は、問題に応じたデータ領域や配列を持つ遺伝子で構成される。また、情報を保有する遺伝子の位置(遺伝子座)は決まっている。cGAは、遺伝子を生物的に捉え、選択、交叉や突然変異の操作を通して遺伝子の形を変えることで、環境(問題)に適用させる個体を発見する。cGAの確率モデルの確率はビットが「1」になる確率を表しており、例えば、確率モデルの要素が1.0であれば対応する遺伝子座の要素は「1」になる。なお、cGAは、同操作を全遺伝子座に対してすることで、確率モデルから個体を生成する。
【0138】
(ii)cGAは、更新方法(例えば図18)において、確率モデル(図中の母集団確率B01)から個体a、bが生成される(B03)。また、cGAは、生成された2個体に対して、評価関数を用いて評価値を求める。ここで、cGAは、評価値の高い個体を「winner」とし、低い個体を「loser」とする(B04)。また、cGAは、「winner」となった個体を基に、「loser」である個体の遺伝子を比較する。cGAは、遺伝子比較として、各遺伝子座の要素(0,1)を比べ、異なる場合か同じ場合かを調べる。cGAは、要素が異なる場合に、1)「winner」の要素が「1」のときに、確率モデルの対応する要素に対し更新率分加える。cGAは、2)「winner」の要素が「0」のときに、確率モデルの対応する要素に対し更新率分引く(B02)。なお、cGAは、要素が同じ場合には何もしない。更新率は、予め決定されている定数である。更新率は、「1」から母集団上限数を割ることで求められる。cGAは、更新後、再び確率モデルから個体を生成し、比較をすることで確率モデルの更新を繰り返す。
【0139】
(アルゴリズム)
cGAでは、先ず、1)確率モデル(P Vector:P[i])の各遺伝子座の確率要素を0.5に初期化する。次に、2)確率モデルの各確率要素の値に従って個体を2個体分生成する。次いで、3)生成された2個体を評価関数により評価を行い、評価値の比較を行う。ここで、4)評価値の高い個体を「winner」、低い個体を「loser」とし、各遺伝子座の比較を行う。その後、Pの各要素がすべて収束するまで同様の処理を繰り返し、収束したPが求められた解である。
【0140】
(b) DcGA(Database-based Compact Genetic Algorithm)
一般的に、cGAは正しい評価関数(評価値)が正しく設計可能な問題で適用可能である。しかし、睡眠段階推定では体調変化等により生体データの傾向が頻繁に変化するため、評価関数が設計不可能な場合がある。したがって、本例では、cGAを拡張した学習手法であるDcGAを用いる。
【0141】
図19にDcGAのアルゴリズムの概要を示す。
【0142】
DcGAは、与えられるデータを子個体として扱う(図中のB01)。すなわち、DcGAでは、与えられたデータ(解空間から抽出した解)を子個体として扱うことで、解構造の偏った解による評価を避け、複数の評価値(B02)の高い解(準最適解(図20(a)))の探索が可能となる(B03)。さらに、DcGAは、確率モデルを用いることで、準最適解に共通する特徴を表現したモデルが獲得可能となる(B04)。
【0143】
(メカニズム)
(i)DcGAにおける確率モデルにおいて、cGAと同様に確率モデルを用いる。ここで、DcGAは、最適解のみならず、準最適解の特徴を表現する点でcGAと異なる。例えば図20(a)に示すように、個体群a、b、c、dは準最適解であるとき、各個体の遺伝子構造は異なる。DcGAは、確率モデルを用いることで、共通する遺伝子を実数値により表現することができる。また、2ビット目が「1」であり、4ビット目が「0」であり、1ビット目と3ビット目は「0」でも「1」でもある。このとき、確率モデルは、図20(b)に示すように、それぞれ「1」、「0」、「0.5」の値を示し、遺伝子の特徴を表現する。更に、DcGAは、cGAと同様に、確率モデルで扱う確率は「1」になる確率を示す。
【0144】
(ii)DcGAは、cGAで扱う環境の代わりにデータセットを用いる。すなわち、DcGAは、不確定評価関数により評価値が変動する場合でも、誤った局所解の収束を防ぎ、準最適解を獲得する。具体的には、DcGAは、先ず、事前に評価されたデータから構成されるデータセットを用いる。次に、DcGAは、データセットからランダムにデータ選択を行うことで、誤った局所解への収束を避ける。このように、DcGAは、データセットを用いることで、最適解のみならず、準最適解の特徴を確率モデルに反映することができる。
【0145】
(アルゴリズム)
DcGAは、先ず、1)事前に、各データ(個体)を評価し、データセットを生成する。ここで、データセット中の各データには評価値が関連づけられている。次に、DcGAは、2)確率モデル(P Vector:P[i])の各遺伝子座の確率要素を0.5(初期値)に設定する。また、DcGAは、3)データセットからランダムに2個体選択する。更に、DcGAは、4)選択された2個体の評価値の比較を行う。次いで、DcGAは、5)評価値の高い個体を「winner」、低い個体を「loser」とし、各遺伝子座の比較を行う。その後、DcGAは、6)Pの各要素がすべて収束するまで同様の処理を繰り返す。これにより、DcGAは、解として、収束したPを求めることができる。
【0146】
(c) 睡眠段階推定手法へのDcGAの適用
(確率モデルのフィルタ化と選択)
本例を睡眠段階推定問題に適用するための実数値を持つ確率モデルのフィルタ化(バイナリデータ化)の方法と、フィルタ化された確率モデルを基にした確率モデルの選択(解の抽出)方法と、を説明する。確率モデルのフィルタ化において、確率モデル(P Vector)を睡眠段階推定問題に適用するために、数値のフィルタ化(バイナリデータ化)を以下の条件に従って行う。
【0147】
条件1:確率モデルの値が0.25以下の時は「0」
条件2:確率モデルの値が0.75以上の時は「1」
条件3:確率モデルの値が条件1と条件2以外の時は「#」
条件3における「#」は、「0」又は「1」を任意に選択できることを示す。なお、図21(a)は確率モデルの例であり、図21(b)はフィルタ化の例である。
【0148】
(睡眠段階推定への適用)
DcGAを睡眠段階の推定のためのバンドパスフィルタの生成に適用した場合に、先ず、1)無拘束エアマットレス型生体センサによって被験者の生体データを取得し、高速フーリエ変換を適用して、マルチバンドパスフィルタの生成をする。次に、2)生成されたマルチバンドパスフィルタから逆高速フーリエ変換を適用して、ある周波数帯域中周波帯域の成分の組を抽出する。このとき、3)抽出された周波帯域の成分の組に離散フーリエ変換を適用し、睡眠段階を変換することで推測評価値を求め、マルチバンドパスフィルタとその評価値を合わせたデータセットを生成する。次いで、4)DcGAを用いて、データセットからデータを選択することにより確率モデルを更新する。また、5)更新された確率モデルに対しバイナリデータ化を施し、確率モデルをマルチバンドパスフィルタ化する。
【0149】
ここで、上記1)で生成されるフィルタは、データセットにおける各個体に相当するものである。すなわち、上記1)から3)までが、事前に各データを評価し、データセットを生成する処理に相当する。また、上記3)における推測評価値の算出は、(i)上記2)の出力データが睡眠段階の時間的推移を表すものとみなして、各時点(例えば1秒ごと)における睡眠段階(覚醒・REM睡眠・Non−REM睡眠)を求める。
【0150】
次に(ii)心拍と体動データを用いて、各時点での睡眠段階を別途推定する。具体的には、寝始めからある時間iまでに得られた心拍と体動データから、心拍平均、体動標準偏差を求め、時間iから1分間の体動標準偏差を求める。次に、時間iから10分前までの心拍平均を求め、発生している体動が、a)睡眠段階の変化時に発生した体動か、b)REM睡眠期に発生した体動かについて区別する。
【0151】
具体的な区別方法は、「条件1:一晩における体動の標準偏差 < 1分間の体動の標準偏差」及び「条件2:一晩における心拍の平均 < 10分間の心拍の平均」を用いて、判定する。
【0152】
その後、4)以下の判定法に従い、睡眠段階を推定する。
【0153】
判定1: 条件1と条件2を満たしたとき、REM睡眠期と判定する。
【0154】
判定2: 条件1のみ満たした時、REM睡眠期以外で発生した体動と判定する。
【0155】
判定3: 条件1と条件2を満たさなかったとき、Non−REM睡眠と判定する。
【0156】
例えば各時点において得られた睡眠段階を比較し、両方の睡眠段階が一致していれば+1、一致していなければ−1とするなどしてスコア化し、各時点でのスコアの和を推測評価値として算出してもよい。
【0157】
(心拍数推移の傾きによるグループ分け)
DcGAにおいて、睡眠特有のグループ分けを考慮してもよい。心拍数推移の傾きを考慮したグループ分けをすることで、睡眠段階推定の精度を向上することができる。図22に各被験者の心拍数の傾きとグループ分けの例を示す。ここで、グループ分けは、例えば傾きの値が正である「I」(Increase)と、傾きの値が負である「D」(Decrease)の2グループである。
【0158】
(睡眠段階推定のためのフィルタの生成例)
DcGAを例えば4つの手法において睡眠段階推定に適用できる。4つの手法として、(a)DcGA(1日分)によるフィルタ(例えば図23)を1日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。(b)DcGA(複数日分)によるフィルタを複数日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。(c)DcGA(1日分のグループ分け)によるフィルタをグループ分けした1日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。ここで、「I」グループと「D」グループに対し、それぞれ確率モデルの更新をする。(d)DcGA(複数日分のグループ分け)によるフィルタをグループ分けした複数日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。ここで、「I」グループと「D」グループに対し、それぞれ確率モデルの更新をする。

[3−2−2 睡眠段階推定装置]
図24は、本例に係る睡眠段階推定装置100Eの一例を示すブロック図である。
【0159】
図24に示すように、睡眠段階推定装置100Eは、生体データ取得部102、生体データ記録部103、生体データ記憶部104、フィルタ生成部105、過去分個体記憶部106、フィルタ記憶部107、特定周波帯域抽出部108及び睡眠段階判定部109を含む。
【0160】
生体データ取得部102は、圧力センサ等で被験者から心拍と体動を表すデータを取得する。被験者を拘束することなくこれらのデータが取得できるものが好ましい。睡眠段階推定装置100Eは、生体データ取得部102として、例えばエアマットレス型圧力センサ(マットレスの下に敷かれ無侵襲非拘束状態で心拍・呼吸数・体動を感知するセンサ)を用いることができる。
【0161】
生体データ記録部103は、生体データ取得部102で取得されたデータを、例えばネットワーク経由で受信し、生体データ記憶部104に書き込む。生体データ記憶部104は、生体データ取得部102で取得されたデータを記憶するメモリである。
【0162】
フィルタ生成部105は、生体データ記憶部104の生体データと、過去分個体記憶部106の過去分の個体のデータセットとから、前述の(睡眠段階推定手法へのDcGAの適用)の手法により、睡眠段階の推定に用いるフィルタを生成し、フィルタ記憶部107に書き込む。
【0163】
過去分個体記憶部106は、フィルタ生成部105によって過去に生成された個体のデータセットを記憶するメモリである。フィルタ記憶部107は、フィルタ生成部105によって生成されたフィルタを記憶するメモリである。
【0164】
特定周波帯域抽出部108は、生体データ取得部1から例えばネットワーク経由でリアルタイムに生体データを受信し、フィルタ記憶部7に記憶されているフィルタを用いて、高速フーリエ変換により生体データから特定周波帯域の組のデータを抽出する。ここで、用いられる生体データは、例えば直近1時間というように、所定の時間ウィンドウに属するデータである。
【0165】
睡眠段階判定部109は、特定周波帯域抽出部8で抽出されたデータに対して逆高速フーリエ変換を適用し、その時点での睡眠段階を判定する。
【0166】
なお、生体データ記録部103、生体データ記憶部104、フィルタ生成部105、過去分個体記憶部106、フィルタ記憶部107、特定周波帯域抽出部108及び睡眠段階判定部109は、コンピュータに実装してもよい。また、生体データ記録部103、フィルタ生成部105、特定周波帯域抽出部108及び睡眠段階判定部109は、コンピュータプログラムを実行することにより、各処理部として機能するようにしてもよい。
【0167】
睡眠段階推定装置100Eを介護施設入居者の毎晩の睡眠段階のリアルタイム・モニタリングに利用する場合に、ある日(第n日)の朝の時点では、第n−1日の夜から第n日の朝までの生体データが生体データ記憶部104に記憶されていることになる。また、この時点では、過去分個体記憶部106には、例えば第n−7日から第n−1日の昼間にフィルタ生成部105によって生成された個体のデータセットが記憶されている。フィルタ記憶部107には、第n−1日の昼間にフィルタ生成部105によって生成されたフィルタが記憶されている。すなわち、第n−1日の夜から第n日の朝にかけての睡眠段階のモニタリングでは、第n−1日の昼間に生成されたフィルタが特定周波帯域抽出部108で用いられる。
【0168】
第n日の昼間には、フィルタ生成部105が、第n−1日の夜から第n日の朝までの生体データを生体データ記憶部104から読み出し、新たな個体のデータセットを生成し、過去分個体記憶部106に書き込む。このとき、フィルタ生成部105は、最も古い第n−7日の昼間に生成された個体のデータセットは削除する。フィルタ生成部105は、さらに、第n−6日から第n−1日の昼間に生成された個体のデータセットと、当日(第n日)の昼間に生成された個体のデータセットを用いてDcGAによりフィルタを生成し、フィルタ記憶部107に書き込む(前日のフィルタは新しいフィルタに置き換えられる)。
【0169】
そして、第n日の夜から第n+1日の朝にかけては、フィルタ記憶部107に記憶された第n日の昼間に生成されたフィルタを用いて、特定周波帯域抽出部108による処理が行われ、睡眠段階判定部109によって睡眠段階の判定がリアルタイムに行われる。

[3−2−3 睡眠段階推定方法の他の例]
本発明に係る介護支援システムは、睡眠段階を推定する手法として、下記の方法を用いてもよい。
【0170】
(1)Rechtschaffen&Kalesによる睡眠段階分類の国際基準に基づく睡眠ポリグラフ検査(Rechtscha_en, A. and Kales, A. (Eds): A Manual of Standardized Terminology, Techniques and Scaring System for Sleep Stage of Human Subjects, Pulbic Health Service U.S.Government Printing O_ce (1968))
ベッドに寝ている被験者に特殊な器具を装着させ、EEG(脳波)、EMG(筋電図)、EOG(眼球運動)のデータを取得し、医師の専門知識と経験に基づいて睡眠段階を判定する。

(2)直接器具をつけずに身体のデータ(心拍、呼吸、体動)を計測し、計測されたデータから、睡眠ポリグラフ検査で得られる睡眠段階の時間的推移データと近似しうるデータを取得する手法(特開2003−079587号公報)
例えば、身体のデータ(心拍、呼吸、体動)を計測できる無拘束エアマットレス型センサを用いて、得られたデータから睡眠段階を判定する。

(3)無拘束エアマットレス型生体センサを用いた睡眠段階推定法(Matsushima, H., Hirose, K., Hattori, K., Sato, H., and Takadama, K.: Sleep Stage Estimation By Evolutionary Computation Using Heartbeat Data and Body-Movement, Proceeding of The 15th Asia Pacific Symposium on Intelligent and Evolutionary Systems, pp. 103-110, 2011)
生体センサから得られた1日分の心拍数データから特徴的な周波数成分を抽出することで、睡眠段階を推定する。具体的には、先ず、圧力センサを用いて被験者から心拍と体動データを取得する。次に、これらのデータにFFTを適用し、得られた心拍数を決定する。ここでは、心拍と体動データを用いて睡眠段階を詳細に推定する。一般的に、観測した心拍数が増加し不規則である場合にはREM睡眠期であり、心拍数が減少した場合にはNon−REM睡眠期となる。また、体動が集中的に生じる場合にはREM睡眠期であり、体動の大きさと発生頻度が減少する場合にはNon−REM睡眠期となる。更に、睡眠時において、睡眠段階が変化する場合についても、体動データの変動が見られる。例えば、眠りの深いNon−REM睡眠から眠りの浅いNon−REM睡眠に移行する場合や、REM睡眠期からNon−REM1に移行する際に、大きな体動が発生する。このような心拍と体動の傾向を基に睡眠段階を推定する。


[4.プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体]
本発明の実施形態に係るプログラムは、コンピュータを上記ルール生成装置として機能させるものである。すなわち、コンピュータに上記ルール生成方法のいずれかを実行させるものである。言い換えると、上記ルール生成装置は、CPUやメモリ、外部記憶装置、入出力装置等を備えたコンピュータとすることができ、このプログラムは、外部記憶装置に記憶され、実行される。
【0171】
なお、本発明は、上記プログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体としてもよい。上記プログラムを記録した記録媒体には、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM(Compact Disk−ROM)、CD−R(CD Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)及びその他コンピュータ読み取り可能な媒体、並びに、フラッシュメモリ、RAM、ROM等の半導体メモリ、メモリカード、HDD(Hard Disc Drive)及びその他コンピュータ読み取り可能なものを用いることができる。また、上記プログラムを記録した記録媒体には、ネットワークなどを介して既存の装置にインストールされるプログラム(所謂差分ファイル)であってもよい。

【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、前述したデータ要素、データ及びデータセット、並びに、介護支援システムに係る情報及び睡眠段階推定装置に係る情報以外でも、例えば情報通信、エレクトロニクス、工業、医療、バイオ、農業、セキュリティ又はその他の分野において、複数のデータを解析(分析、識別など)するものに用いることができる。

【符号の説明】
【0173】
10 : 記憶手段
11 : データ記憶部
12 : ルール集合記憶部
12r: 照合集合記憶部
13 : AT記憶部
20 : 照合集合生成手段
21 : ルール抽出部
22 : ルール強化部
23 : ルール分類部
30 : GA適用手段
31 : AT更新部
32 : ルール選択部
33c: ルール交叉部
33v: ルール突然変異部
34a: ルール追加部
34d: ルール淘汰部
34r: 許容誤差更新部
100 : ルール生成装置
100E: 睡眠段階推定装置
102 : 生体データ取得部(データ取得手段)
103 : 生体データ記録部
104 : 生体データ記憶部
105 : フィルタ生成部
106 : 過去分個体記憶部
107 : フィルタ記憶部
108 : 特定周波帯域抽出部
109 : 睡眠段階判定部
an: AT要素(nは自然数)
dn: データ要素(nは自然数)
rn: ルール要素(nは自然数)
AT : AT値
DT : データ
DS : データセット
RL : ルール(知識など)
RLg1,RLg2: 一般化ルール(汎用知識など)
RLs1,RLs1: 特殊ルール(特殊知識など)
RLgc1,RLgc2: 親ルール(現世代のルール)
RLgn1,RLgn2: 子ルール(次世代のルール)
P : 実測値
p : 評価値
F : 適合度
ε : 誤差値
ε0 : 許容誤差
μ : 所定の確率
[P]: ルール集合
[M]: 照合集合
[Mp]:照合集合のPositiveルール集合
[Mn]:照合集合のNegativeルール集合
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