(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の耐震補強方法においては、2つの支持部材(30)の間にわたされている変位抑制用補強材(40,50)であるワイヤ部材に適切な張力を導入することが施工上重要となってくる。しかしながら、施工上緩んだ状態でワイヤ部材を設置しないように、ワイヤ部材に適切な張力を導入するために適切な支持具については、これまで提案されておらず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明に係るワイヤ部材支持具は、長手方向を有し、電化柱に複数取り付けられると共に、ワイヤ部材が架けわたされるワイヤ部材支持具であって、前記ワイヤ部材が架けられるループ部を先端に有し、前記長手方向に延出する延出棹が設けられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記長手方向における前記ループ部の他端側には、底面部が設けられており、前記底面部に塗布される接着材又は粘着材により、前記電化柱に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記底面部に立設される外筒部を有し、前記外筒部には、第1の内径を有する第1内径部と、前記第1の内径より小さい第2の内径を有する第2内径部と、が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記延出棹の前記ループ部が設けられていな
い端部には拡径部を有しており、前記第1内径部に、前記拡径部が内嵌されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記延出棹と前記第2内径部とには貫通孔が設けられ、それぞれの貫通孔に共通のピン部材が挿通されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記第1内径部に、バネ部材が配されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記外筒部の内部に流体を導入する導入孔が、前記第1内径部に配されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記第1内径部に、バネ部材が配されると共に、前記外筒部の内部に流体を導入する導入孔が、前記第1内径部に配されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記外筒部の内部に導入する流体の流量制御を行うバルブ部が設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記流体が、グラウトであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記流体が、ガスであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記流体が、オイルであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具は、円柱状の電化柱に複数取り付けられると共に、ワイヤ部材が架けわたされるワイヤ部材支持具であって、前記ワイヤ部材が架けられるループ部と、前記ループ部を、前記電化柱に対して、ネジの回転を利用した伸縮機構と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る耐震補強方法は、前記のいずれかに記載のワイヤ部材支持具を用いて、前記ワイヤ部材に張力をかけ、電化柱の耐震補強を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記ワイヤ部材が架けられるループ部を先端に有し、前記長手方向に延出する延出棹が設けられており、このような本発明に係るワイヤ部材支持具によれば、施工時において、施工上緩んだ状態でワイヤ部材を設置しないように、ワイヤ部材に簡便に適切な張力を導入することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具を用いた耐震補強方法によれば、電化柱の耐震補強工事の施工を簡便かつ短時間で行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書においては、特許文献1(特開2013−117088号公報)に開示されている全ての技術的事項を参照して援用するものである。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係るワイヤ部材支持具100を用いて耐震補強が行われた電化柱50の正面図であり、
図2は本発明の実施形態に係るワイヤ部材支持具100を用いて耐震補強が行われた電化柱50の斜視図である。
【0025】
なお、
図1及び
図2には、図面が煩雑となることを避けるために、図示している耐震補強構造に対して、電化柱50の仮想的な中心軸を中心として対称関係にある耐震補強構造については図示していない。
【0026】
電化柱50は地震により揺れて変形したとき、限界変形量に達した瞬間に折損する。そこで、地震による電化柱50の折損を防止するためには、高架橋等の基礎部30が振動しても電化柱50自身の揺れを可能な限り止めて限界変位に達しないようにすればよい。そのために本実施形態では、基礎部30の地震時変形量を拘束するための耐震補強構造を配置する。
【0027】
図1において、基礎部30に建植した電化柱50には上端部から下部に渡って適宜間隔で複数箇所にワイヤ部材支持具100を取り付ける。ワイヤ部材支持具100の設置間隔は、作用する加速度や変位の大きい下端部や上端部では狭く、中間部は広くするなど適宜設定する。
【0028】
ワイヤ部材支持具100は、例えば、向かい合った一対の半円弧状バンドの一端同士が蝶番結合され、各半円弧状バンド自由端をボルト締めできる部材(不図示)を電化柱50
に固定して支持金具を取り付けるなどして構成する。或いは、ワイヤ部材支持具100の底面部に接着材又は粘着材を塗布して、これにより、電化柱50に取り付けられるようにしてもよい。
【0029】
電化柱50の上端部のワイヤ部材支持具100の支持金具に、変位抑制用としての鋼材、鋼線、合成繊維などからなるワイヤ部材500の一端を相互に対称な位置に取り付け、電化柱50を相互に対称的に螺旋状に巻回してワイヤ部材支持具100の支持金具に取り付けて電化柱50の下端まで巻回し、端部を基礎部30に設けられたアンカー部70に固定する。なお、
図1、
図2には、図示されている耐震補強構造と、電化柱50の仮想的な中心軸を中心として対称関係にある耐震補強構造については図示していない。
【0030】
このように螺旋状にワイヤ部材500を巻き付けることで、どのような方向から電化柱50に大きな加速度が作用しても、各ワイヤ部材支持具100間に張られたワイヤ部材500により電化柱50各部の変位が拘束されるため折損を生ずる限界変位以内に抑えることができる。
【0031】
なお、ワイヤ部材500は必ずしも2本でなくて1本でもよい。また、さらに本数を増やして螺旋状に巻回してもよく、また、必ずしも螺旋状に巻回しなくても、例えば3本のワイヤ部材を120°間隔、或いは4本のワイヤ部材を90°間隔というように所定の角度間隔で複数本のワイヤ部材を電化柱50の上端から下端まで直線状に各ワイヤ部材支持具100に取り付けて基礎部30に固定することで、どのような方向から電化柱50に加速度が作用しても変位を拘束することが可能である。電化柱50の変位を拘束することで、電化柱50基礎への影響も軽減するので、電化柱50基礎の損傷防止にも有効となる。
【0032】
以上のような耐震補強方法においては、2つのワイヤ部材支持具100の間にわたされている変位抑制用補強材であるワイヤ部材500に適切な張力を導入することが施工上重要となってくる。そこで、ワイヤ部材500に適切な張力を導入するために好適な、本発明に係るワイヤ部材支持具100について、以下説明する。
【0033】
図3は本発明の実施形態に係るワイヤ部材支持具100を構成する主要部品を説明する図であり、
図3(A)は外筒部材200を示す図であり、
図3(B)は延出部材300を示す図である。また、
図4は、外筒部材200と延出部材300と組み合わせた、本発明の実施形態に係るワイヤ部材支持具100の基本構成を説明する図である。
【0034】
外筒部材200は、略円筒状の部材であり、例えば、ステンレス鋼材などにより構成することができる。略円筒状の外筒部材200の仮想の中心軸方向を、ワイヤ部材支持具100の長手方向として定義する。このようなワイヤ部材支持具100は、円柱状の電化柱50の中心軸に対して、垂直方向に前記長手方向が延在するようにして、電化柱50に取り付けられることとなる。
【0035】
底面部205からは、円筒状の外筒部210が立設するようになっている。底面部205は、ワイヤ部材支持具100を電化柱50に取り付ける際の接着剤、粘着材の塗布部として利用することができる。なお、底面部205に塗布する接着剤としては、エポキシ樹脂系やアクリル樹脂系のものを用いることができるし、また、粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ホットメルト系、シリコーン系のものを用いることができる。
【0036】
外筒部210には、第1の内径(φ
1)を有する第1内径部211と、前記第1の内径
(φ
1)より小さい第2の内径(φ
2)を有する第2内径部212と、が設けられている。ワイヤ部材支持具100の完成時においては、
図4に示すように、外筒部210の第1内径部211には、延出部材300の拡径部320が内嵌され、第2内径部212には、延
出部材300の延出棹310が挿通された状態とされる。
【0037】
また、外筒部210の第2内径部212には、ピン部材400が挿通可能な貫通孔213が設けられている。
【0038】
延出部材300は、延出棹310と、延出棹310の一方の端部に設けられているループ部330と、延出棹310の他方の端部に設けられている拡径部320とから構成されている。拡径部320は、第1の内径(φ
1)より若干小さい外径を有しており、外筒部
210の第1内径部211を、紙面左右方向に動作可能とされている。これにより、延出棹310が、外筒部210が外筒部210に収納されたり、突出されたりすることが可能となる。
【0039】
延出棹310の外径と第2内径部212の第2の内径(φ
2)との関係は、延出棹31
0が摺動可能であり、かつ、延出棹310と第2内径部212との間が高いシール性を有するように設定する。なお、延出棹310と第2内径部212との間には、必要に応じてOリングなどを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、延出棹310には、ピン部材400が挿通可能な貫通孔313が設けられている。
【0041】
延出部材300におけるループ部330には、ワイヤ部材500が巻きかけられたり、ワイヤ部材500が固着、取り付けされたりすることが想定されている。
【0042】
次に、以上のような基本構成を有する本発明に係るワイヤ部材支持具100によって、ワイヤ部材500に張力を導入するための構成を説明する。
【0043】
図5及び
図6は本発明の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によってワイヤ部材500に張力を導入する過程を説明する図である。
【0044】
本実施形態に係るワイヤ部材支持具100の初期状態においては、バネ部材250が圧縮された状態で、外筒部210の第1内径部211に収容されている。また、延出棹310の貫通孔313と、第2内径部212の貫通孔213とには、共通のピン部材400が挿通された状態とされている。
【0045】
このような初期状態のワイヤ部材支持具100を、底面部205に接着剤、又は粘着剤を塗布して、
図5に示すように電化柱50に取り付ける。
【0046】
続いて、不図示の他のワイヤ部材支持具100との間に、ワイヤ部材500をわたすようにする。このとき、ワイヤ部材500を、ループ部330に取り付けたり、巻きかけたりして、弛ませないようにする。
【0047】
次に、
図6に示すように、第2内径部212の貫通孔213、及び、延出棹310の貫通孔313に挿通されているピン部材400を引き抜く。これにより、バネ部材250が、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し、延出棹310が外筒部材200から延出して、ワイヤ部材500が取り付けたり、巻きかけたりしているループ部330を、同じく紙面右方に変位させる。これにより、ワイヤ部材500に張力を導入することが可能となる。
【0048】
以上のように、本発明に係るワイヤ部材支持具100は、前記ワイヤ部材500が架けられるループ部330を先端に有し、前記長手方向に延出する延出棹310が設けられて
おり、このような本発明に係るワイヤ部材支持具100によれば、施工時において、施工上緩んだ状態でワイヤ部材500を設置しないように、ワイヤ部材500に簡便に適切な張力を導入することが可能となる。
【0049】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具100を用いた耐震補強方法によれば、電化柱50の耐震補強工事の施工を簡便かつ短時間で行うことが可能となる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図7乃至
図9は、本発明の他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によってワイヤ部材500に張力を導入する過程を説明する図である。
【0051】
先の実施形態においては、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し出すためにバネ部材250が用いられていたのに対して、本実施形態においては、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し出すために流体を用いるようにする。
【0052】
このために、本実施形態においては、外筒部210の内部に流体を導入する導入孔220が、第1内径部211に設けられるようになっている。さらに、導入孔220の流体導入前段部には、外筒部210の内部に導入する流体の流量制御を行うバルブ部230が設けられている。
【0053】
バルブ部230には、流体の流路として、入口側流路231と出口側流路232と、入口側流路231と出口側流路232との間における弁口233とが設けられている。バルブ部230の出口側流路232と導入孔220とが連設されるようになっている。出口側流路232からの流体が、外筒部210の内部に導入されるようになっている。
【0054】
弁口233を通過する流体量は、弁体235によって制御される。また、この弁体235は操作部237によって変位するようになっている。
【0055】
次に、以上のように構成される他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によって、ワイヤ部材500に張力を導入する手順について説明する。
【0056】
本実施形態に係るワイヤ部材支持具100の初期状態においては、延出棹310の貫通孔313と、第2内径部212の貫通孔213とには、共通のピン部材400が挿通された状態とされている。
【0057】
このような初期状態のワイヤ部材支持具100を、底面部205に接着剤、又は粘着剤を塗布して、
図7に示すように電化柱50に取り付ける。
【0058】
続いて、不図示の他のワイヤ部材支持具100との間に、ワイヤ部材500をわたすようにする。このとき、ワイヤ部材500を、ループ部330に取り付けたり、巻きかけたりして、弛ませないようにする。
【0059】
次に、
図8に示すように、第2内径部212の貫通孔213、及び、延出棹310の貫通孔313に挿通されているピン部材400を引き抜く。続いて、不図示の流体導入手段によって、バルブ部230の入口側流路231に流体を導入すると共に、操作部237を操作して、外筒部210の内部に流体を導入させる。
【0060】
これにより、
図8に示すように、流体が延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し、延出棹310が外筒部材200から延出して、ワイヤ部材500が取り付けたり、巻きかけたりしているループ部330を、同じく紙面右方に変位させる。これにより、ワイ
ヤ部材500に張力を導入することが可能となる。
【0061】
ワイヤ部材500に適切に張力が導入された後には、
図9に示すように、バルブ部230の操作部237を操作し、流体の流入を遮断する。これにより、ワイヤ部材500の張力が適切に維持されることとなる。
【0062】
ここで、前記の流体としては、例えば、建築材料のグラウトを用いることができる。この場合、グラウトは固化して、安定的にワイヤ部材500の張力を維持することができる。なお、グラウトとしては、セメントミルクなどの無機系充填材やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機系充填材のいずれも用いることができる。
【0063】
また、流体として、ガスや、作動油などのオイルなども用いることができる。この場合、ワイヤ部材支持具100はダンパーの役割を果たすこともできるし、また、ワイヤ部材500の張力が低減したような場合、バルブ部230を操作し、外筒部210の内部にガスやオイルなどを再充填することでメンテナンスを行うことも可能となる。
【0064】
なお、本実施形態においては、外筒部210の内部に導入させる流体として、グラウト、ガス、オイルなどを例に挙げたが、その他の流体も適宜使用可能である。
【0065】
また、本実施形態においては、外筒部210にバルブ部230を設ける構成としたが、流体を外筒部210の内部に導入した後に、導入孔220を塞ぐ構成を設けるようにすれば、バルブ部230は必ずしも必要ではない。
【0066】
以上のような、他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100や、他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100を用いた耐震補強方法によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0067】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図10乃至
図12は、本発明の他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によってワイヤ部材500に張力を導入する過程を説明する図である。
【0068】
第1の実施形態においては、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し出すためにバネ部材250が用いられ、第2の実施形態においては、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し出すために流体が用いられていたが、第3の実施形態においては、バネ部材250と流体の双方を用いるようにする。
【0069】
第3の実施形態に係るワイヤ部材支持具100の初期状態においては、バネ部材250が圧縮された状態で、外筒部210の第1内径部211に収容されている。また、延出棹310の貫通孔313と、第2内径部212の貫通孔213とには、共通のピン部材400が挿通された状態とされている。
【0070】
上記のようなバネ部材250に係る構成に加え、本実施形態においては、外筒部210の内部に流体を導入する導入孔220が、第1内径部211に設けられるようになっている。さらに、導入孔220の流体導入前段部には、外筒部210の内部に導入する流体の流量制御を行うバルブ部230が設けられている。
【0071】
バルブ部230には、流体の流路として、入口側流路231と出口側流路232と、入口側流路231と出口側流路232との間における弁口233とが設けられている。バルブ部230の出口側流路232と導入孔220とが連設されるようになっている。出口側流路232からの流体が、外筒部210の内部に導入されるようになっている。
【0072】
弁口233を通過する流体量は、弁体235によって制御される。また、この弁体235は操作部237によって変位するようになっている。
【0073】
次に、以上のように構成される他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によって、ワイヤ部材500に張力を導入する手順について説明する。
【0074】
先に説明したように、本実施形態に係るワイヤ部材支持具100の初期状態においては、バネ部材250が圧縮された状態で、外筒部210の第1内径部211に収容されている。また、延出棹310の貫通孔313と、第2内径部212の貫通孔213とには、共通のピン部材400が挿通された状態とされている。
【0075】
このような初期状態のワイヤ部材支持具100を、底面部205に接着剤、又は粘着剤を塗布して、
図10に示すように電化柱50に取り付ける。
【0076】
続いて、不図示の他のワイヤ部材支持具100との間に、ワイヤ部材500をわたすようにする。このとき、ワイヤ部材500を、ループ部330に取り付けたり、巻きかけたりして、弛ませないようにする。
【0077】
次に、
図11に示すように、第2内径部212の貫通孔213、及び、延出棹310の貫通孔313に挿通されているピン部材400を引き抜く。これにより、バネ部材250が、延出部材300の拡径部320を紙面右方に押し、延出棹310が外筒部材200から延出して、ワイヤ部材500が取り付けたり、巻きかけたりしているループ部330を、同じく紙面右方に変位させる。これにより、ワイヤ部材500にある程度の張力を導入することが可能となる。
【0078】
続いて、不図示の流体導入手段によって、バルブ部230の入口側流路231に流体を導入すると共に、操作部237を操作して、外筒部210の内部に流体を導入させる。
【0079】
これにより、バネ部材250の付勢力に加えて、流体が延出部材300の拡径部320を紙面右方にさらに押すことで、延出棹310を外筒部材200から延出させて、ワイヤ部材500が取り付けたり、巻きかけたりしているループ部330を、さらに紙面右方に変位させる。これにより、ワイヤ部材500により大きな張力を導入することが可能となる。
【0080】
ワイヤ部材500に適切に張力が導入された後には、
図12に示すように、バルブ部230の操作部237を操作し、流体の流入を遮断する。これにより、ワイヤ部材500の張力が適切に維持されることとなる。
【0081】
ここで、前記の流体としては、例えば、建築材料のグラウトを用いることができる。この場合、グラウトは固化して、安定的にワイヤ部材500の張力を維持することができる。なお、グラウトとしては、セメントミルクなどの無機系充填材やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機系充填材のいずれも用いることができる。
【0082】
また、流体として、ガスや、作動油などのオイルなども用いることができる。この場合、ワイヤ部材支持具100はダンパーの役割を果たすこともできるし、また、ワイヤ部材500の張力が低減したような場合、バルブ部230を操作し、外筒部210の内部にガスやオイルなどを再充填することでメンテナンスを行うことも可能となる。
【0083】
なお、本実施形態においては、外筒部210の内部に導入させる流体として、グラウト
、ガス、オイルなどを例に挙げたが、その他の流体も適宜使用可能である。
【0084】
また、本実施形態においては、外筒部210にバルブ部230を設ける構成としたが、流体を外筒部210の内部に導入した後に、導入孔220を塞ぐ構成を設けるようにすれば、バルブ部230は必ずしも必要ではない。
【0085】
以上のような、他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100や、他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100を用いた耐震補強方法によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0086】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図13及び
図14は、本発明の他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によってワイヤ部材500に張力を導入する過程を説明する図である。
【0087】
本実施形態においては、ループ部330を紙面右方に変位させるための構成として、ジャッキ構造部600を用いるようにしている。ここで、ジャッキ構造部600としては、従来周知の、ネジの回転を利用した伸縮機構を用いることができる。
【0088】
本実施形態のジャッキ構造部600は、ループ部330を支持するループ部支持部610と、右端部611a、612aそれぞれに形成された軸受孔にそれぞれ連結ピン619、620が通されループ部支持部610に右端部611a、612aが回動自在に支持された一対の第1アーム611、612と、第1アーム611、612の左端部611b、612bそれぞれに右端部613b、614bが2つの連結軸616、617を介し回動自在に連結された一対の第2アーム613、614と、第2アーム613、614の左端部613a、614aそれぞれに形成された軸受孔にそれぞれ連結ピン621、622が通され、第2アーム613、614それぞれを回動自在に支持する台座部615と、第1アーム611、612と第2アーム613、614とを回動自在に連結する2つの連結軸616、617間に挿通されるネジ部材618とを有する。なお、ネジ部材618には、ハンドル部618aが設けられている。
【0089】
次に、以上のように構成される他の実施形態に係るワイヤ部材支持具100によって、ワイヤ部材500に張力を導入する手順について説明する。
【0090】
まず、ワイヤ部材支持具100を、台座部615に接着剤、又は粘着剤を塗布して、
図13に示すように電化柱50に取り付ける。
【0091】
続いて、不図示の他のワイヤ部材支持具100との間に、ワイヤ部材500をわたすようにする。このとき、ワイヤ部材500を、ループ部330に取り付けたり、巻きかけたりして、弛ませないようにする。
【0092】
次に、本実施形態のジャッキ構造部600のネジ部材618を回転させて、第1アーム611、612と第2アーム613、614とを伸長させた状態とする。すると、ループ部330も紙面右方に変位し、
図14に示すように、ジャッキ構造部600によって、ワイヤ部材500に適切な張力を導入することが可能となる。また、ネジ部材618の回転を調整することで、任意の張力をワイヤ部材500に導入することが可能となる。また、ネジ部材618をロックする機構(不図示)を設けることで、ワイヤ部材500の張力を安定的に維持することが可能となる。
【0093】
以上のような、ジャッキ構造部600を有するワイヤ部材支持具100や、ジャッキ構造部600を有するワイヤ部材支持具100を用いた耐震補強方法によっても、先の実施
形態と同様の効果を享受することができる。
【0094】
以上、本発明に係るワイヤ部材支持具は、前記ワイヤ部材が架けられるループ部を先端に有し、前記長手方向に延出する延出棹が設けられており、このような本発明に係るワイヤ部材支持具によれば、施工時において、施工上緩んだ状態でワイヤ部材を設置しないように、ワイヤ部材に簡便に適切な張力を導入することが可能となる。
【0095】
また、本発明に係るワイヤ部材支持具を用いた耐震補強方法によれば、電化柱50の耐震補強工事の施工を簡便かつ短時間で行うことが可能となる。