(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁性シートは、前記ループアンテナの前記中心部から前記一方側部及び前記他方側部の幅方向における端部に至るまでそれぞれ延在する第1の磁性シートと、前記ループアンテナの前記中心部から前記外縁部の何れかに至るまで延在する第2の磁性シートとを備え、
前記第1の磁性シートが、前記第1領域の前記第2部分を含み、
前記第2の磁性シートが、前記第1領域の前記第1部分と、前記第2領域とを含む請求項1に記載のアンテナ装置。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機、スマートフォン、タブレットPC等の電子機器において、近距離非接触通信(NFC: Near Field Communication )の機能を搭載するため、RFID(Radio Frequency Identification)用のアンテナモジュールが用いられている。このアンテナモジュールは、リーダライタ等の発信器に搭載されたアンテナコイルと誘導結合を利用して通信を行っている。すなわち、このアンテナ装置は、リーダライタからの磁界をアンテナコイルが受けることによって、それを電力に変換して通信処理部として機能するICを駆動させることができる。
【0003】
アンテナモジュールは、確実に通信を行うため、リーダライタからのある値以上の磁束をアンテナコイルで受ける必要がある。そのために、従来例に係るアンテナ装置では、携帯電話機の筐体にループコイルを設け、このコイルでリーダライタからの磁束を受けている。携帯電話機等の電子機器に組み込まれたアンテナモジュールは、機器内部の基板やバッテリパック等の金属がリーダライタからの磁界を受けることによって発生する渦電流のために、リーダライタからの磁束が跳ね返されてしまう。例えば、携帯電話機の筐体表面で考えると、リーダライタから来る磁界は、筐体表面の外周部分が強くなり、筐体表面の真ん中付近が弱くなる傾向にある。
【0004】
通常のループコイルを用いるアンテナの場合では、ループコイルは、その開口部が上述した筐体表面の外周部分を通過する磁界をあまり受けられない携帯電話機の中央部分に位置している。このため、通常のループコイルを用いるアンテナでは、磁界を受ける効率が悪くなっている。そこで、リーダライタからくる磁界が強い筐体表面の外周部分にループアンテナを配置するようにしたアンテナ装置や、磁性シートを用いて磁束を増やして性能を高めるようにしたアンテナ装置が提案されている。これらのアンテナ装置では、ループアンテナの形状を長方形にして、その長辺が筐体表面の外周端に沿うように設置されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンテナ装置を備える電子機器の主要な金属板による磁気シールド効果によって、通信特性を高めたNFCアンテナモジュールは、その性能を十分に発揮するためには、実装位置が金属板の外縁部に近いことが重要である。しかしながら、携帯端末等の電子機器の多機能化に伴い、電子機器内にカメラ等の各種電子部品が搭載されるようになり、それに伴って電子機器の内部構造上、NFCアンテナモジュールを金属板の外縁部近くに実装出来ない場合がある。この場合において、金属板による磁気シールド効果によって高めた通信特性等の必要な性能を十分に発揮されないことが問題となる。特許文献1乃至3のアンテナ装置では、基板等の金属板を利用して特性を高めているものの、アンテナモジュールを金属板の外縁部近くに実装できない場合における課題解決に関しては、言及していない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アンテナモジュールの実装位置に関わらず電子機器の主要な金属板による磁気シールド効果を利用して、NFCの通信特性を高めることの可能な、新規かつ改良されたアンテナ装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電子機器に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置であって、前記外部機器に対向する第1の導電体と、前記第1の導電体の外縁部から所定の間隔を介して、その内側に設けられ、前記外部機器と誘導結合されるアンテナコイルが周回するループアンテナと、磁性体から形成され、少なくとも前記ループアンテナの中心部から前記第1の導電体の前記外縁部の何れかまで拡張して設けられる磁性シートと、を備える。
【0009】
本発明の一態様によれば、拡張して設けられた磁性シートによって、外部機器からの磁束を集めて、ループアンテナの中心部に誘導できる。このため、ループアンテナを備えるアンテナモジュールの実装位置に関わらず、電子機器の主要な金属板による磁気シールド効果を利用して、そのNFCの通信特性を高められる。
【0010】
このとき、本発明の一態様では、前記ループアンテナは、その長手方向の中心線を介して一方側部と他方側部に二分され、前記磁性シートは、前記ループアンテナの前記中心部から前記一方側部及び前記他方側部の幅方向における端部に至るまでそれぞれ延在する第1の磁性シートと、前記ループアンテナの前記中心部から前記外縁部の何れかに至るまで延在する第2の磁性シートとを備え、前記第1の磁性シートは、その一端が前記外部機器から見て前記一方側部の下側に配置され、前記一端を除く部分が前記外部機器から見て前記他方側部の上側に配置されるように設けられることとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、第2の磁性シートで集めた外部機器からの磁束を第1の磁性シートを経由して、ループアンテナの中心部に送ることができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記第2の磁性シートは、前記外縁部のうち前記中心部から最近接部分に向けて拡張するように設けられることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、より効率よく外部機器から受けた磁束をループアンテナの中心部に送ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記第1の磁性シートと前記第2の磁性シートは、一体成型された構成となっていることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、外部機器から受ける磁束をより確実に集められる磁性シートを簡素な構成として容易に製造することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記第1の磁性シートと前記第2の磁性シートは、それぞれ別個に成型されて連結した構成となっていることとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、外部機器から受ける磁束をより確実に集められる磁性シートの設計自由度が向上する。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記第2の磁性シートは、孔部又は切欠きの少なくとも何れかが形成された構成となっていることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、アンテナ装置を搭載する電子機器の仕様により適用可能なものとすることができる。
【0020】
また、本発明の他の態様は、前述した何れかのアンテナ装置が組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信可能な電子機器である。
【0021】
本発明の他の態様によれば、ループアンテナを備えるアンテナモジュールの実装位置に関わらず、電子機器の主要な金属板による磁気シールド効果を利用して通信特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、拡張して設けられた磁性シートによって、外部機器からの磁束を集めて、アンテナモジュールのループアンテナの中心部に誘導できる。このため、アンテナモジュールの実装位置に関わらず電子機器の主要な金属板による磁気シールド効果を利用して、そのNFCの通信特性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置が適用される無線通信システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置のループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を備える電子機器の一例を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【
図10】(A)、(B)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の他の変形例におけるループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す側面図である。
【
図11】比較例となるアンテナ装置の一例を示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例と比較例に係る結合係数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0025】
まず、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置が適用される無線通信システムの概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置のループアンテナと磁性シートとの配置関係を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を備える電子機器の一例を示す説明図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【0026】
本実施形態に係るアンテナ装置1は、電子機器30に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信する装置であって、例えば、
図1に示すようなRFID用の無線通信システム100に組み込まれて使用される。
【0027】
無線通信システム100は、
図1に示すように、電子機器30に備わるアンテナ装置1と、アンテナ装置1に対するアクセスを行う外部機器となるリーダライタ120とを含む。ここで、アンテナ装置1とリーダライタ120とは、三次元直交座標系xyzのxy平面において互いに対向するように配置されているものとする。
【0028】
リーダライタ120は、xy平面において互いに対向するアンテナ装置1に対して、z軸方向に磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、アンテナ装置1に向けて磁界を発信するアンテナ121と、アンテナ121を介して誘導結合されたアンテナ装置1と通信を行う制御基板122とを備える。
【0029】
すなわち、リーダライタ120は、アンテナ121と電気的に接続された制御基板122が配設されている。この制御基板122には、一又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路が実装されている。この制御回路は、アンテナ装置1から受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。
【0030】
例えば、制御回路は、アンテナ装置1に対してデータを送信する場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ121を駆動する。また、制御回路は、アンテナ装置1からデータを読み出す場合、アンテナ121で受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。
【0031】
なお、制御回路では、一般的なリーダライタで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、例えば、マンチェスタ符号化方式やASK(Amplitude Shift Keying)変調方式が用いられている。また、以下では、非接触通信システムにおけるアンテナ装置等について説明をするが、Qi(チー)等の非接触充電システムについても同様に適用することができるものとする。
【0032】
アンテナ装置1は、通信時にリーダライタ120とxy平面において対向するように配置される携帯電話機等の電子機器30の筐体の内部に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信する。本実施形態のアンテナ装置1は、アンテナモジュール2と、金属板3と、磁性シート20(
図2参照)とを備える。
【0033】
アンテナモジュール2は、電子機器30の筐体32(
図3(A)参照)の内部に設けられ、誘導結合されたリーダライタ120との間で通信を行う。本実施形態では、
図1に示すように、アンテナモジュール2は、ループアンテナ11と、通信処理部13と、接続部14とを備える。
【0034】
ループアンテナ11は、電子機器30の筐体32の内部に設けられ、外部機器となるリーダライタ120と誘導結合されることにより当該リーダライタ120と通信可能となるアンテナコイル12(
図2参照)が周回する。本実施形態では、ループアンテナ11は、
図3(A)、(B)に示すように、リーダライタ120から見て、金属板3の外縁部3aから所定の間隔を介して、その内側に設けられる。すなわち、ループアンテナ11は、金属板3の外縁部3aの近傍に設けられていない。ループアンテナ11には、
図1に示すように、例えばフレキシブルフラットケーブルなどの可撓性の導線をパターンニング処理等することによって形成されるアンテナコイル12と、アンテナコイル12と通信処理部13とを電気的に接続する端子部14とが実装されている。
【0035】
ループアンテナ11は、
図2(A)に示すように略矩形状をなし、外形に沿ってアンテナコイル12の1本の導線が周回されており、その中心部12aが開口部となっている。なお、本実施形態では、ループアンテナ11は、略矩形状をなしているが、その形状は、楕円等の他の形状としてもよい。また、本明細書中でループアンテナ11の「長手方向」とは、その長さや外径が最大値を示す方向を示し、略矩形状の場合では長辺方向、略楕円形の場合では長軸方向を示すものとする。
【0036】
ループアンテナ11は、
図2(A)に示すように、アンテナコイル12が周回する主面が通信時にリーダライタ120とxy平面において対向するように配置される。また、ループアンテナ11は、その長手方向の中心線12bを境に、一方側部11aと他方側部11bとを有する。一方側部11aは、アンテナコイル12の導線を長手方向に沿う電流の向きが同一方向に流れる方向を周回の方向とする。他方側部11bは、アンテナコイル12の導線を長手方向に沿う電流の向きが逆方向に流れる周回の方向とする。そして、ループアンテナ11は、長手方向に沿う一側縁を金属板3側に向けて、すなわち、一方側部11a又は他方側部11bの何れか一方を金属板3側に向けて配置される。
【0037】
アンテナコイル12は、リーダライタ120から発信される磁界を受けると、リーダライタ120と誘導結合によって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、端子部14を介して受信信号を通信処理部13に供給する。
【0038】
通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電流により駆動し、リーダライタ120との間で通信を行う。具体的に、通信処理部13は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、当該通信処理部13が有する内部メモリに書き込む。また、通信処理部13は、リーダライタ120に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル12を介して変調された電波をリーダライタ120に送信する。なお、通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電力ではなく、電子機器内に組み込まれたバッテリパックや外部電源などの電力供給手段から供給された電力によって駆動してもよい。
【0039】
金属板3は、電子機器30の筐体32内に設けられ、外部機器となるリーダライタ120に対向する第1の導電体となる。金属板3は、例えば携帯電話やスマートフォン、あるいはタブレットPC等の電子機器の筐体内に設けられ、アンテナモジュール2の通信時にリーダライタ120に対向する第1の導電体を構成するものである。当該第1の導電体として、例えば、スマートフォンの筐体の内面に貼付されたメタルカバーや、スマートフォン内に収納されたバッテリパックの金属筐体、あるいは、タブレットPCの液晶モジュールの裏面に設けられた金属板等が相当する。
【0040】
磁性シート20は、アンテナモジュール2の通信特性を高めるために、当該アンテナモジュール2の通信時にリーダライタ120から送られる磁束をループアンテナ11の中心部12aに誘導する機能を有する。磁性シート20は、酸化鉄や酸化クロム、コバルト、フェライト等の磁性体から形成され、本実施形態では、
図3(A)、(B)に示すように、少なくともループアンテナ11の中心部12aから第1の導電体3の外縁部3aの何れかまで拡張して設けられることを特徴とする。
【0041】
本実施形態では、磁性シート20は、ループアンテナ11の中心部12aに長手方向に亘って形成される開口部に差し込まれる第1の磁性シート21と、ループアンテナ11の中心部12aから金属板3の外縁部3aの何れかに至るまで延在する第2の磁性シート22とを備える。すなわち、ループアンテナ11の中心部12aに差し込まれた第1の磁性シート21に対して、第2の磁性シート22が当該中心部12aから金属板3の外縁部3aの少なくとも一部に向けて拡張するように設けられている。本実施形態では、磁性シート20を簡素な構成として製造容易にするために、第1の磁性シート21と第2の磁性シート22は、一体成型された構成となっている。
【0042】
また、本実施形態では、第2の磁性シート22は、金属板3の外縁部3aのうち、ループアンテナ11の中心部12aから最近接部分に向けて拡張するように設けられる。具体的には、第2の磁性シート22は、
図3(B)に示すように、金属板3の外縁部3aのうち、中心部12aから最も近い一辺3a1に向けて拡張するように設けられる。そして、当該一辺3a1に向けて拡張するように設けられる際に、当該一辺3a1の両端で隣り合う他辺3a2、3a3の一部に至るまで延在するように設けられている。なお、本明細書中で「最近接部分」とは、金属板3の外縁部3aのうち、ループアンテナ11の中心部12aから最も近い部位や領域を示すものとし、本実施形態のように、金属板3が略矩形の場合では、中心部12aから最も近い一辺3a1を示すものとする。
【0043】
このように、本実施形態では、ループアンテナ11の中心部3aから金属板3の外縁部3aの最近接部位に向けて拡張するように、第2の磁性シート22を設けている。このため、電子機器30に備わるアンテナ装置1がリーダライタ120との近距離非接触通信の際に、当該第2の磁性シート22がリーダライタ120から受けた磁束を、第1の磁性シート21を介してループアンテナ11の中心部12aに確実に引き込むことができる。そして、第2の磁性シート22と第1の磁性シート21を介して、ループアンテナ11の中心部12aに導かれた磁束によって、アンテナコイル12には大きな起電力を生じるので、通信特性をより向上させることができる。
【0044】
すなわち、リーダライタ120から見て、金属板3の外縁部3aから所定の間隔を介して、その内側に設けられる場合でも、等価的に金属板3の外縁部3aがループアンテナ11の中心部12aに配置される構造が実現できる。このため、ループアンテナ11を備えるアンテナモジュール2が金属板3の外縁部3aの近傍に設けられていない場合でも、リーダライタ120から見て、等価的に金属板3の外縁部3aにアンテナモジュール2が配置しているように、そのNFCの良好な特性を実現させられる。換言すると、アンテナモジュール2の実装位置に関わらず、電子機器30の主要な金属板3による磁気シールド効果を利用して、そのNFCの通信特性を高めることができる。
【0045】
このように、等価的に金属板3の外縁部3aがループアンテナ11の中心部12aに配置される構造を実現するためには、第2の磁性シート22で集めたリーダライタ120からの磁束を第1の磁性シート21を経由して、ループアンテナ11の中心部12aに送る必要がある。このため、本実施形態では、
図2(B)に示すように、第1の磁性シート21は、その一端(本実施形態では、第1の磁性シート21と第2の磁性シート22が一体成型された構成なので、第2の磁性シート22)がリーダライタ120から見て一方側部11aの下側に配置される。そして、当該一端を除く部分(
図2(B)に示すY方向における第1の磁性シート21の先端側部分)がリーダライタ120から見て他方側部11bの上側に配置されるように設けられる。
【0046】
なお、ループアンテナ11は、アンテナ用金属箔4が重畳する一方側部11aにおけるアンテナコイル12の本数(例えば3本)よりも、アンテナ用金属箔4が重畳しない他方側部11bにおけるアンテナコイル12の本数(例えば4本)が多くなるように周回させるようにしてもよい。すなわち、1本のアンテナコイルの導線の始端と終端を他方側部11bにすることにより、アンテナコイル12の中心線12aを挟んで、ループアンテナ11の一方側部11aよりも他方側部11bの方に多くのコイル導線が周回するように形成することができる。これにより、リーダライタ120からの磁束と誘導結合するコイルの本数を増やし、良好な通信特性を実現することができる。
【0047】
前述した本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1では、ループアンテナ11から金属板3の外縁部3aまで拡張して設けられる磁性シート20を構成する第1の磁性シート21と第2の磁性シート22を一体成型した構成となっているが、アンテナ装置1を他の構成とすることも可能である。すなわち、本実施形態のアンテナ装置1は、搭載される電子機器30の仕様に応じて、下記の変形例の場合でも適用可能である。
【0048】
例えば、磁性シートの設計自由度を高めるために、
図4(A)、(B)に示すように、磁性シート20aを構成する第1の磁性シート21aと第2の磁性シート22aを別個に成型してから、連結した構成としてもよい。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1を搭載する電子機器30の仕様に応じて適用可能とするために、
図5に示すように、第2の磁性シート22bにカメラやマイク等の電子部品を使用するための孔部22b1や、
図6に示すような切欠き22c1を形成してもよい。
【0050】
さらに、
図7に示すように、第2の磁性シート22dがループアンテナ11や第1の磁性シート21dよりも幅が狭い構成としたり、
図8に示すように、第2の磁性シート22eに対する第1の磁性シート21eの位置がオフセンターとなっている構成としてもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1の
実装部位は、平面形状の金属板3に限定されない。例えば、アンテナ装置1は、
図9(A)に示すように、斜面3f1を有する曲がった金属カバー3fにも実装可能である。このとき、
図9(B)に示すように、第1の磁性シート21fと第2の磁性シート22fを一体成型しても、
図10(A)に示すように、第1の磁性シート21gと第2の磁性シート22gを別体で成型して貼り付けてもよい。また、このとき、
図10(B)に示すように、第1の磁性シート21hと第2の磁性シート22hの重なり位置がループアンテナ11の中心部12aを越える構成としてもよい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1と、第2の磁性シートで磁性シートを拡張しない従来のアンテナ装置と比較した実施例について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0053】
ここでは、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1(
図3参照)の実施例と、
図11に示す従来のアンテナ装置1iの比較例のそれぞれに対して、対向するリーダライタ120を所定の方向に移動させた場合の結合係数をシミュレーションで求めた。すなわち、実施例では、
図3に示す本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1を用いて、金属板3とリーダライタ120(
図1参照)とを対向させて、金属板3とループアンテナ11との相対的な位置関係を変化させたときの通信特性について評価した。比較例では、
図11に示すような拡張していない通常の磁性シート20iを備えるアンテナ装置1iを用いて、金属板3iとリーダライタ120(
図1参照)とを対向させて、金属板3iとループアンテナ11との相対的な位置関係を変化させたときの通信特性について評価した。なお、実施例では、
図3に示すY軸方向に、比較例では、
図11に示すX軸方向にそれぞれリーダライタ120を移動させた。
【0054】
具体的な評価条件としては、次のようにした。すなわち、リーダライタ120のアンテナ121は、xy軸方向で規定される外形直径が70mmの4巻コイルとした。また、金属板3は、xyz軸方向で規定される寸法が45mm×35mm×0.3mmのステンレスとした。また、ループアンテナ11のアンテナコイル12は、xy軸方向で規定される外形が22mm×8mmとした構造で4巻のコイルである。さらに、z軸方向で規定される金属板3の表面からアンテナコイル12の表面までの距離は1mmとした。また、リーダライタ120とアンテナコイル12との距離は55mmとした。
【0055】
図12は、前述した本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例と比較例に係る結合係数の変化を示すグラフである。
図12に示すように、従来例と比べると、実施例は、通信特性が約2.5倍に向上したことが分かる。このことから、ループアンテナ11の中心部12aに差し込まれる第1の磁性シート21に第2の磁性シート22を付け足して、磁性シート20をループアンテナ11の中心部12aから金属板3の外縁部3aに向けて拡張することによって、NFCの通信特性が向上することが分かる。
【0056】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0057】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、アンテナ装置、及び電子機器の構成、動作も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。