(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運転席側吹出口、及び/又は、前記助手席側吹出口は、着座空間の上部に前記調整空気を吹き出すフェイス吹出口、及び/又は、着座空間下部に前記調整空気を吹き出すフット吹出口である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空調装置。
前記後部座席のヘッドレスト後方に位置する前記上部送風手段に向けて開口する補助吹出口を有し、前記下部送風手段に吸い込まれた空気を当該補助吹出口から吹き出すダクト部材を備える請求項12又は請求項13に記載の車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された車両用空調装置では、前席空調ゾーンのみに乗員が乗車している前席乗車状態であると判定した場合に、デフロスタ吹出口、フェイス吹出口、フット吹出口のうちの1箇所あるいは2箇所から、所定温度に調整された空調空気の吹出を行うと共に、エアカーテンユニットを作動させて、前席空調ゾーンと後席空調ゾーンとの間にエアカーテンを形成している。しかしながら、通常、前席空調ゾーンに形成されるデフロスタ吹出口や、フェイス吹出口、フット吹出口は、運転席側と助手席側のそれぞれに設けられているため、運転席側と助手席側の両者に設けられた各吹出口から、空調空気が吹き出される。
【0006】
これに対し、乗車状況は、使用形態によって異なるものであり、前席空調ゾーンの運転席と助手席に乗車する場合もあれば、運転席のみに乗車される場合もある。しかし、運転席のみに乗車される場合には、上述したように前席空調ゾーンと後席空調ゾーンとの間にエアカーテンを形成したとしても、乗車していない助手席側にも空調空気が吹き出される。ゆえに、当該特許文献1の車両用空調装置は、乗車している運転席側の空調効率が悪いという問題がある。一方、運転席と助手席の両者に乗員が乗車している場合であっても、乗員によって、直接空調風が吹き出されることを好む場合と、これを嫌う場合とがある。
【0007】
そこで、本件発明の課題は、乗車状況や乗員の好みに応じ、より効率的な車室内部分空調を行うことを可能とする車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の構成を採用することにより、上述の課題を解決するに至った。
【0009】
すなわち、本件発明における車両用空調装置は、車両の車室内の空気の状態を調整する車両用空調ユニットと、当該車室内を、運転席及び助手席を含む前部領域と、後部座席を含む後部領域とに区画するエアカーテンを形成するエアカーテンユニットと、当該車両用空調ユニットと当該エアカーテンユニットの制御手段とを備えるものであって、
当該運転席と当該助手席と当該後部座席のそれぞれの着座を検出する着座検出手段を備え、当該車両用空調ユニットは、調整空気を当該運転席の着座空間に吹き出す運転席側吹出口と、当該調整空気を当該助手席の着座空間に吹き出す助手席側吹出口と、当該運転席の着座空間の空気を吸い込む運転席側吸込口と、当該助手席の着座空間の空気を吸い込む助手席側吸込口と、を
有し、当該制御手段は、当該エアカーテンユニットによるエアカーテン形成時に、
前記着座検出手段による前記助手席のみの単独着座検出に基づき、当該助手席側吹出口から当該調整空気を吹き出し、当該運転席側吸込口又は当該助手席側吸込口のいずれか一方から当該前部領域内の空気を吸い込み、当該助手席の着座空間、又は、当該助手席の着座空間及び当該運転席の着座空間を通る当該調整空気の循環経路を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本件発明における車両用空調装置は
、前記制御手段が、当該着座検出手段による当該運転席、及び/又は、当該助手席のみの着座検出に基づき、前記エアカーテンユニットによりエアカーテンを形成することが好ましい。
【0011】
さらに、本件発明における車両用空調装置は、前記運転席の着座空間へ優先的に前記調整空気を吹き出す運転席優先モードを設定する運転席優先空調入力手段とを備え、前記制御手段が、前記エアカーテンユニットによるエアカーテン形成時であって、当該運転席優先モードの設定時に、前記運転席側吹出口から前記調整空気を吹き出し、前記助手席側吸込口又は前記運転席側吸込口のいずれか一方から前記前部領域内の空気を吸い込むことが好ましい。
【0012】
また、本件発明における車両用空調装置は、前記助手席の着座空間へ優先的に前記調整空気を吹き出す助手席優先モードを設定する助手席優先空調入力手段とを備え、前記制御手段が、前記エアカーテンユニットによるエアカーテン形成時であって、当該助手席優先モードの設定時に、前記助手席側吹出口から前記調整空気を吹き出し、前記運転席側吸込口又は前記助手席側吸込口のいずれか一方から前記前部領域内の空気を吸い込むことが好ましい。
【0013】
さらに、本件発明における車両用空調装置は
、前記制御手段が、前記着座検出手段による前記運転席のみの単独着座検出に基づき、前記運転席側吹出口から前記調整空気を吹き出し、前記助手席側吸込口又は前記運転席側吸込口のいずれか一方から前記前部領域内の空気を吸い込むことが好ましい。
【0014】
さらに、本件発明における車両用空調装置は、前記運転席側吹出口、及び/又は、前記助手席側吹出口が、着座空間の上部に前記調整空気を吹き出すフェイス吹出口、及び/又は、着座空間下部に前記調整空気を吹き出すフット吹出口であることが好ましい。
【0015】
また、本件発明における車両用空調装置は、前記運転席側吸込口、及び/又は、前記助手席側吸込口は、着座空間の下部から吸い込むことが好ましい。
【0016】
上述した各本件発明における車両用空調装置は、さらに、前記エアカーテンユニットが、前記車室内の天井部に位置して当該車室内の床部に向けて開口するエアカーテン吹出口と、当該車室内の床部に位置して当該エアカーテン吹出口に向けて開口するエアカーテン吸込口とを備えるダクト部材を有し、当該ダクト部材が、当該車室の内壁に配置されると共に、内部にエアカーテン形成用送風機を備えることが好ましい。
【0017】
また、本件発明における車両用空調装置は、前記エアカーテンユニットが、前記車室内の天井部に配設され、前記前部領域内の空気を吸い込み、当該車室内の床部に向けて吹き出す上部送風手段と、前記車室内の床部に配設され、前記上部送風手段から吹き出された空気を吸い込み、当該前部領域内に空気を吹き出す下部送風手段とを備え、当該前部領域内の空気を循環させて、当該前部領域と前記後部領域とを区画するエアカーテンを形成することが好ましい。
【0018】
さらに、本件発明における車両用空調装置は、前記下部送風手段が、前記運転席、及び/又は、前記助手席の後下部に設けられることが好ましい。
【0019】
また、本件発明における車両用空調装置は、前記下部送風手段が、前記運転席、及び/又は、前記助手席のリクライニング角度の変更に応じて、前記吸込角度を変更可能とすることが好ましい。
【0020】
さらに、本件発明における車両用空調装置は、前記エアカーテンユニットが、前記車室内の天井部に配設され、前記後部領域内の空気を吸い込み、当該車室内の床部に向けて吹き出す上部送風手段と、前記車室内の床部に配設され、前記上部送風手段から吹き出された空気を吸い込み、当該後部領域内に空気を吹き出す下部送風手段とを備え、当該後部領域内の空気を循環させて、前記前部領域と当該後部領域とを区画するエアカーテンを形成することが好ましい。
【0021】
また、本件発明における車両用空調装置は、前記下部送風手段が、前記後部座席の下前方に位置することが好ましい。
【0022】
さらに、本件発明における車両用空調装置は、前記後部座席のヘッドレスト後方に位置する前記上部送風手段に向けて開口する補助吹出口を有し、前記下部送風手段に吸い込まれた空気を当該補助吹出口から吹き出すダクト部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本件発明の車両用空調装置によれば、制御手段は、エアカーテンユニットによるエアカーテン形成時に、
着座検出手段による助手席のみの単独着座検出に基づき、助手席側吹出口から調整空気を吹き出し、運転席側吸込口又は助手席側吸込口のいずれか一方から前部領域内の空気を吸い込み、助手席の着座空間、又は、助手席の着座空間及び運転席の着座空間を通る調整空気の循環経路を形成する。よって、本件発明によれば、エアカーテンにより区画された前部領域内に、運転席、及び/又は、助手席に着座した乗員の好みに応じた空調を実現することができる。従って、乗員が存在している前部領域内において、より効率的な車室内部分空調を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本件発明に係る車両用空調装置の実施の形態に関して説明する。
図1は本実施の形態の車両用空調装置の概略説明図、
図2は本実施の形態における車両用空調ユニット1の概略構成図、
図3は本実施の形態における車室Rに形成された吸込口及び吹出口を説明する図をそれぞれ示している。本実施の形態に係る車両用空調装置は、車両の車室R内の空気の状態を調整する車両用空調ユニット1と、車室R内の運転席3や助手席4などの前部座席を含む前部領域RFと、後部座席6を含む後部領域RRとを区画するエアカーテンを形成するエアカーテンユニット2と、これら車両用空調ユニット1とエアカーテンユニット2とを制御する制御装置(制御手段)35(
図4のみ示す)とを備える。以下に、本実施の形態における車両用空調ユニット1と、エアカーテンユニット2のそれぞれについて説明する。
【0026】
本実施の形態における車両用空調ユニット1は、自動車(車両)の車内に搭載されて、当該自動車の車室R内の冷房や暖房を行って所定の車室内環境を形成するものである。当該車両用空調装置1は、内部に通風路11が形成され、調整空気を形成するケーシング10により本体が構成されている。当該ケーシング10内には、当該通風路11に車室R内又は車室外の空気を吸い込み、当該ケーシング10内にて形成された調整空気を前部領域RFに吹き出す送風手段としての循環用送風機12と、当該通風路11内に吸い込まれた空気を冷却する冷却手段としての冷却用熱交換器13と、当該通風路11内に吸い込まれた空気を加熱する加熱手段としての加熱用熱交換器14とが収納されている。
【0027】
本実施の形態では、シロッコファンにより循環用送風機12を構成しているが、これに限定されない。当該冷却用熱交換器13は、例えば、冷凍サイクルを構成する蒸発器を用いることができる。蒸発器を通過する空気は、蒸発器における冷媒の吸熱作用によって冷却される。本実施の形態では、冷凍サイクルを構成する蒸発器により冷却用熱交換器13を構成しているが、これに限定されるものではなく、通風路11内を流通する空気を冷却することができるものであればよい。加熱用熱交換器14は、例えば、車両のエンジンを冷却するための冷却水回路に接続された放熱器を用いることができる。放熱器を通過する空気は、放熱器において冷却水を放熱させることで加熱される。本実施の形態では、エンジンの冷却水回路に接続された放熱器により加熱用熱交換器14を構成しているが、これに限定されるものではなく、通風路11内を流通する空気を加熱することができるものであればよい。なお、当該加熱用熱交換器14の空気上流側には、通風路11内を流通する空気の加熱用熱交換器14内への流通を制御する加熱用ダンパ19が設けられている。
【0028】
そして、当該ケーシング10は、当該通風路11の冷却用熱交換器13及び加熱用熱交換器14よりも少なくとも空気上流側に、車室R内、本実施の形態では、車室Rの前部領域RF内の空気をケーシング10内に導入する内気導入口15と、車室外空気をケーシング10内に導入する外気導入口16とが設けられている。当該ケーシング10には、内気導入口15から導入する車室内空気と、外気導入口16から導入する車室外空気の導入割合を調整する内外気切替手段としての内外気切替ダンパ17が設けられている。
【0029】
当該内外気切替ダンパ17は、ケーシング10に配設された支持軸17Aを中心に回動自在に設けられるダンパであることが好ましい。当該内外気切替ダンパ17は、当該回動角度を制御することにより、内気導入状態と外気導入状態とを切り替える。具体的に、内外気切替ダンパ17は、内気導入状態において、内気導入口15を全開とし外気導入口16を全閉とする。そして、外気導入状態において、内気導入口15を全閉とし外気導入口16を全開とする。また、当該内外気切替ダンパ17は、角度調整によって、内気導入口15からの内気導入量と、外気導入口16からの外気導入量と、を任意の混合割合で調整可能とする。
【0030】
また、上述のケーシング10には、当該通風路11の冷却用熱交換器13及び加熱用熱交換器14よりも少なくとも空気下流側に、車室R内の各所に温度調整された空気(調整空気)を供給する吹出ダクト18が形成されている。
【0031】
当該吹出ダクト18は、車室Rの前部領域RFに配置された車両のダッシュボード9、又は、当該ダッシュボード9の周辺部に配置された
図3に示す運転席側吹出口と、助手席側吹出口と、デフロスタ吹出口29と連通している。具体的には、運転席側吹出口は、運転席側フェイス吹出口20と、運転席側フット吹出口22があり、助手席側吹出口は、助手席側フェイス吹出口21と、助手席側フット吹出口23がある。
【0032】
運転席側フェイス吹出口20と、助手席側フェイス吹出口21は、いずれも運転席3又は助手席4の着座空間であって、各席に着座する人の上半身に対応する位置に設けられる。
図3では、ダッシュボード9のドア側と、ダッシュボード9の中央寄りに位置して設けられている。運転席側フット吹出口22と、助手席側フット吹出口23は、いずれも運転席3又は助手席4に着座する人の足元に対応する位置に設けられる。
図3では、ダッシュボード9の下方に位置して設けられている。これら運転席側フェイス吹出口20と、助手席側フェイス吹出口21と、運転席側フット吹出口22と、助手席側フット吹出口23には、それぞれに対応する吹出ダンパ20A〜23Aが設けられており、各吹出口20〜23からの調整空気の吹出が制御可能とされている。上述したデフロスタ吹出口29についても、対応する吹出ダンパ29Aが設けられており、当該デフロスタ吹出口29からの調整空気の吹出が制御可能とされている。
【0033】
上述したケーシング10の内気導入口15は、
図3に示す運転席側吸込口24と、助手席側吸込口25と連通している。運転席側吸込口24と助手席側吸込口25は、いずれも運転席3又は助手席4の着座空間であって、各席に着座する人の足元に対応する位置に設けられる。ただし、当該運転席側吸込口24と助手席側吸込口25は、いずれも上述した運転席側フット吹出口22や助手席側フット吹出口23とは、所定距離、離間した位置に設けられることが好ましい。そして、これら運転席側吸込口24と助手席側吸込口25には、それぞれに対応する吸込ダンパ24A及び25Aが設けられており、各吸込口24及び25からの各着座空間の空気の吸込が制御可能とされている。
【0034】
尚、本実施の形態の車両用空調ユニット1に設けられる吹出口は、上述に挙げた前部領域RFに対応して設けられる吹出口に限定されるものではなく、後部領域RRに設けられるものを備えていてもよいものとする。
【0035】
さらに、本実施の形態における車両用空調ユニット1は、
図2に示すように、エアカーテンで区画された前部領域RFの空気のみを車室外に排出する内気排気ユニット5を備えている。当該内気排気ユニット5は、前部領域RF内と車室外とを連通する内気排気用ダクト26と、当該内気排気用ダクト26内に配設される内気排気用送風機(内気排気用送風手段)27と、内気排気用ダクト26を全開又は全閉等して前部領域RF内と車室外との連通を制御する内気排気用ダンパ28とを備えている。なお、前部領域RFと車室外とを連通する内気排気用ダクト26は、上述した運転席側吸込口24や助手席側吸込口25と連通して設けられていてもよいものとする。
【0036】
当該内気排気ユニット5は、内気排気用ダンパ28を開閉制御し、内気排気用送風機27を運転制御することにより、任意に前部領域RF内の空気(内気)を車室外に排気制御することができる。なお、当該内気排気ユニット5は、ケーシング10に一体に構成されるものであって、別途車室Rの前部領域RF内に設けられるものであってもいずれであってもよいものとする。
【0037】
次に、本実施の形態におけるエアカーテンユニット2について上述した
図1を参照して説明する。エアカーテンユニット2は、上述したように、車室R内を運転席3や助手席4などの前部座席が設けられる前部領域RFと、後部座席6が設けられる後部領域RRとに区画するエアカーテンを形成するものである。
【0038】
エアカーテンユニット2は、車室R内の天井部7に位置して車室R内の床部8に向けて開口するエアカーテン吹出口32と、車室R内の床部8に位置してエアカーテン吹出口32に向けて開口するエアカーテン吸込口33と、これらエアカーテン吹出口32とエアカーテン吸込口33とを連通するダクト部材31とを有する。エアカーテン吹出口32は、車両Rの運転席3及び助手席4等の前部座席のヘッドレスト3C又は4Cの上後方であって、後部座席6の前方に位置して設けられる。エアカーテン吸込口33は、車両Rの運転席3及び助手席4等の前部座席の下後方であって、後部座席6の前方に位置して設けられる。当該ダクト部材31には、エアカーテン吸込口33から吸い込み、エアカーテン吹出口32から吹き出すエアカーテン形成用送風機34を備えている。当該ダクト部材31は、車室Rの内壁RWに配設されることが好ましい。当該車室Rの内壁RWは、例えば、前部ドアと後部ドアの間に設けられたピラー内部であることが好ましい。
【0039】
本実施の形態の車両用空調システムは、上述した如き車両用空調装置1とエアカーテンユニット2とを制御する制御装置(制御手段)35を備えている。ここで、当該制御装置35について、
図4の電気ブロック図を参照して説明する。当該制御装置35は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されている。当該制御装置35の入力側には、車室R内、少なくとも前部領域RF内の温度を検出する前部領域温度センサ(前部領域温度検出手段)36と、外気温度を検出する外気温度センサ(外気温度検出手段)37と、各種の設定を行う入力手段としてのコントロールパネル38とが接続されている。
【0040】
当該コントロールパネル38は、車室内温度の設定温度入力部40や、いずれの吹出口から調整空気を吹き出し、いずれの吸込口から車室R内の空気を吸い込むかを設定する吸込吹出モード入力部41、内気循環又は外気導入を行うかを設定する内外気入力部42、運転席3、助手席4、後部座席6などの車室R内に設けられたシートの乗員の着座状態を入力する着座入力部43、運転席3側の着座空間へ優先的に調整空気を吹き出す運転席優先モードを設定する運転席優先空調入力部(運転席優先空調入力手段)44、助手席4側の着座空間へ優先的に調整空気を吹き出す助手席運転モードを設定する助手席優先空調入力部(助手席優先空調入力手段)45などが設けられていることが好ましい。当該着座入力部43は、運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席のみに乗員が着座し、後部座席6に乗員が着座していない状態を入力することができるものであれば、どのようなものであってもよい。また、当該着座入力部43は、コントロールパネル38に設けられるものに限定されるものではなく、例えば、運転席3や、助手席4、後部座席6の着座面に設けられる着座センサや、各席のシートベルトの装着状態を検出するものなどにより構成してもよい。本件発明における着座検出手段は、当該着座入力部43と、当該着座入力部43が接続された制御装置35により構成される。
【0041】
そして、当該制御装置35の出力側には、少なくとも上述した車両用空調ユニット1の循環用送風機12、内外気切替ダンパ17、加熱用ダンパ19、運転席側フェイス吹出口20の吹出ダンパ20A、助手席側フェイス吹出口21の吹出ダンパ21A、運転席側フット吹出口22の吹出ダンパ22A、助手席側フット吹出口23の吹出ダンパ23A、デフロスタ吹出口29の吹出ダンパ29A、運転席側吸込口24の吸込ダンパ24A、助手席側吸込口25の吸込ダンパ25Aと、内気排気ユニット5の内気排気用送風機27、内気排気用ダンパ28と、エアカーテンユニット2のエアカーテン形成用送風機34がそれぞれ接続されている。
【0042】
以上の構成により、本実施の形態にかかる車両用空調装置の動作について説明する。制御装置35は、外気温度センサ37により検出された外気温度と、車室内温度の設定温度入力部40により設定された前部領域RF内温度とに基づき、冷房運転を行うか、暖房運転を行うかを判定する。そして、制御装置35は、冷房運転を行うと判定した場合、加熱用ダンパ19を閉塞して、冷凍サイクルを作動させる。これにより、冷却用熱交換器13は冷却作用を発揮させ、ケーシング10内において、冷気(調整空気)を形成する。他方、制御装置35は、暖房運転を行うと判定した場合、加熱用ダンパ19を開放する。これにより、加熱用熱交換器14は加熱作用を発揮させ、ケーシング10内において、暖気(調整空気)を形成する。なお、当該運転モードはこれに限定されるものではなく、冷却用熱交換器13及び加熱用熱交換器14の両者の冷却又は加熱作用を発揮させ、所定の湿度及び温度の調整空気を形成するものとしてもよい。
【0043】
また、制御装置35は、コントロールパネル38の着座入力部43の操作により、前部座席のみならず後部座席6にも乗員が着座していると判定した場合には、エアカーテンユニット2のエアカーテン形成用送風機34の運転を停止した状態とする。そして、制御装置35は、コントロールパネル38の着座入力部43の操作により、後部座席6に乗員が着座しておらず、運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席にのみ乗員が着座していると判定した場合には、エアカーテンユニット2のエアカーテン形成用送風機34の運転を行う。
【0044】
本実施の形態において、エアカーテン形成用送風機34が運転されると、ダクト部材31内を上昇した空気は、エアカーテン吹出口32から車両R内にエアカーテン形成用の空気が吹き出される。当該エアカーテン吹出口32から吹き出されたエアカーテン形成用の空気は、その後、当該エアカーテン吹出口32と対向して床部8に形成されたエアカーテン吸込口33からダクト部材31内に吸い込まれ、エアカーテン形成用送風機34に帰還する。これにより、運転席3及び助手席4用の前部座席を含む前部領域RFと、後部座席6を含む後部領域RRとの間に位置して、これら前部領域RFと、後部領域RRとに区画するエアカーテンが形成される。
【0045】
また、本実施の形態では、コントロールパネル38の着座入力部43と、吸込吹出モード入力部41と、運転席優先空調入力部44又は助手席優先空調入力部45の操作により、制御装置35は、選択されたモードに対応する吹出口からケーシング10内にて冷却又は加熱された調整空気を車室R内に吹き出し、選択された吸込吹出モードに対応する吸込口から車室R内の空気(内気)をケーシング10内に吸い込む空調制御を行う。以下に、運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席の着座判定時と、運転席3のみの運転席単独着座判定時と、助手席4のみの助手席単独着座判定時に分けて、選択可能な吸込吹出モードについて詳述する。
【0046】
1.運転席及び/又は助手席の前部座席の着座判定時
本実施の形態では、当該運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席の着座判定時において、コントロールパネル38の運転席優先空調入力部44の操作により、運転席優先モードが設定されている場合には、運転席側に対応して設けられるいずれかの吹出口から調整空気を前部領域RF内に吹き出し、助手席側吸込口25から前部領域RF内の空気の吸込を行う空気循環を行う。具体的には、運転席優先モードが設定されている場合には、制御装置35は、吸込吹出モード入力部41により、以下の「運転席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「運転席フット吹出−助手席吸込モード」とを選択可能とする。
【0047】
(1)運転席フェイス吹出−助手席吸込モード
「運転席フェイス吹出−助手席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、運転席側フェイス吹出口20からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、助手席側吸込口25から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0048】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ20Aと吸込ダンパ25Aを開放し、その他の吹出ダンパ21A、22A、23Aと吸込ダンパ24Aを閉鎖する。よって、
図5に示すように、ケーシング10内の調整空気は、運転席側フェイス吹出口20から、運転席3の着座空間上部に向けて吹き出された後、運転席3及び助手席4の着座空間を順次通る循環経路を流れて、助手席4の足元に形成された助手席側吸込口25からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0049】
(2)運転席フット吹出−助手席吸込モード
「運転席フット吹出−助手席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、運転席側フット吹出口22からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、助手席側吸込口25から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0050】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ22Aと吸込ダンパ25Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、21A、23Aと吸込ダンパ24Aを閉鎖する。よって、
図6に示すように、ケーシング10内の調整空気は、運転席側フット吹出口22から、運転席3の着座空間の足元に向けて吹き出された後、運転席3及び助手席4の着座空間を順次通る循環経路を流れて、反対側の助手席4の足元に形成された助手席側吸込口25からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0051】
上述した「運転席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「運転席フット吹出−助手席吸込モード」とが設定された場合には、前部領域RFに吹き出された調整空気は、助手席4側から吹き出されることなく、優先的に運転席3側から吹き出される。そして、当該各モードが選択される際には、前部領域RFと後部領域RRとを区画するエアカーテンが形成されているため、運転席3側から積極的に車室R内に吹き出された調整空気は、前部領域RF内の運転席3側の着座空間及び助手席4側の着座空間を順次通過する循環経路を流れて、助手席4側から吸い込まれる循環流が形成される。
【0052】
よって、助手席4側の着座空間と比べて、運転席3側の着座空間に優先的に調整空気を供給することができ、効率的な前部領域RF内の空調制御を実現することができる。この場合、助手席4側には、運転席3側の着座空間を通過した後の調整空気が通過するため、直接、調整空気が吹き付けられることを嫌う乗員が助手席4に着座している場合には、間接的な空調を行うことができる。ゆえに、助手席4の乗員にとって快適な空調を実現することができる。
【0053】
なお、上述した「運転席フェイス吹出−助手席吸込モード」は、特に調整空気が冷気である場合に特に有効であり、「運転席フット吹出−助手席吸込モード」は、特に調整空気が暖気である場合に特に有効である。
【0054】
一方、本実施の形態では、当該運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席の着座判定時において、コントロールパネル38の助手席優先空調入力部45の操作により、助手席優先モードが設定されている場合には、助手席側に対応して設けられるいずれかの吹出口から調整空気を前部領域RF内に吹き出し、運転席側吸込口24から前部領域RF内の空気の吸込を行う空気循環を行う。具体的には、制御装置35は、コントロールパネル38の助手席優先空調入力部45の操作により、助手席優先モードが設定されている場合には、吸込吹出モード入力部41により、以下の「助手席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「助手席フット吹出−運転席吸込モード」とを選択可能とする。
【0055】
(3)助手席フェイス吹出−運転席吸込モード
「助手席フェイス吹出−運転席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、助手席側フェイス吹出口21からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、運転席側吸込口24から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0056】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ21Aと吸込ダンパ24Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、22A、23Aと吸込ダンパ25Aを閉鎖する。よって、
図7に示すように、ケーシング10内の調整空気は、助手席側フェイス吹出口21から助手席4の着座空間の上部に向けて吹き出された後、助手席4及び運転席3の着座空間を順次通る循環経路を流れて、運転席3の足元に形成された運転席側吸込口24からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0057】
(4)助手席フット吹出−運転席吸込モード
「助手席フット吹出−運転席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、助手席側フット吹出口23からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、運転席側吸込口24から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0058】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ23Aと吸込ダンパ24Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、21A、22Aと吸込ダンパ25Aを閉鎖する。よって、
図8に示すように、ケーシング10内の調整空気は、助手席側フット吹出口23から助手席4の着座空間の足元に向けて吹き出された後、助手席4及び運転席3の着座空間を順次通る循環経路を流れて、反対側の運転席3の足元に形成された運転席側吸込口24からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0059】
上述した「助手席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「助手席フット吹出−運転席吸込モード」とが設定された場合には、前部領域RFに吹き出された調整空気は、運転席3側から吹き出されることなく、優先的に助手席4側から吹き出される。そして、当該各モードが選択される際には、前部領域RFと後部領域RRとを区画するエアカーテンが形成されているため、助手席4側から積極的に車室R内に吹き出された調整空気は、前部領域RF内の助手席4側の着座空間及び運転席3側の着座空間を順次通過する循環経路を流れて、運転席3側から吸い込まれる循環流が形成される。
【0060】
よって、運転席3側の着座空間と比べて、助手席4側の着座空間に優先的に調整空気を供給することができ、効率的な前部領域RF内の空調制御を実現することができる。この場合、運転席3側には、助手席4側の着座空間を通過した後の調整空気が通過するため、直接、調整空気が吹き付けられることを嫌う乗員が運転席3に着座している場合には、間接的な空調を行うことができ、運転席3の乗員にとって快適な空調を実現することができる。
【0061】
なお、上述した「助手席フェイス吹出−運転席吸込モード」は、特に調整空気が冷気である場合に特に有効であり、「助手席フット吹出−運転席吸込モード」は、特に調整空気が暖気である場合に特に有効である。
【0062】
2.運転席のみの運転席単独着座判定時
本実施の形態では、当該運転席3のみの運転席単独着座と判定されている場合には、吸込吹出モード入力部41により、以下の「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「運転席フット吹出−運転席吸込モード」とを選択可能とする。
【0063】
(1)運転席フェイス吹出−運転席吸込モード
「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、運転席側フェイス吹出口20からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、運転席側吸込口24から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0064】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ20Aと吸込ダンパ24Aを開放し、その他の吹出ダンパ21A、22A、23Aと吸込ダンパ25Aを閉鎖する。よって、
図9に示すように、ケーシング10内の調整空気は、運転席側フェイス吹出口20から運転席3の着座空間の上部に向けて吹き出された後、運転席3の着座空間を通る循環経路を流れて、当該運転席3の足元に形成された運転席側吸込口24からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0065】
(2)運転席フット吹出−運転席吸込モード
「運転席フット吹出−運転席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、運転席側フット吹出口22からケーシング10内の調整空気を車室R内の前部領域RF内に吹き出し、運転席側吸込口24から車室R内の前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0066】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ22Aと吸込ダンパ24Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、21A、23Aと吸込ダンパ25Aを閉鎖する。よって、
図10に示すように、ケーシング10内の調整空気は、運転席側フット吹出口22から運転席3の着座空間の足元に向けて吹き出された後、運転席3の着座空間を通る循環経路を流れて、同じく運転席3の足元に形成された運転席側吸込口24からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。この際、運転席側フット吹出口22と運転席側吸込口24とは、可能な限り離間した位置に設けられることによって、調整空気流のショートサイクルを回避し、運転席3の足元空間を積極的に空調することが可能となる。
【0067】
上述した「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「運転席フット吹出−運転席吸込モード」とが設定された場合には、前部領域RFに吹き出された調整空気は、助手席4側から吹き出されることなく、運転席3側からのみ吹き出される。そして、当該各モードが選択される際には、前部領域RFと後部領域RRとを区画するエアカーテンが形成されているため、運転席3側から積極的に車室R内に吹き出された調整空気は、前部領域RF内の運転席3側の着座空間のみを通過する循環経路を流れて、同じ運転席3側から吸い込まれる循環流が形成される。
【0068】
よって、エアカーテンによって後部領域RRとは区画された前部領域RF内は、運転席3側の着座空間を循環する調整空気によって、当該運転席3側のみを積極的に空調することができる。従って、運転席3側のみに乗員が着座している運転席単独着座時に、助手席4側の着座空間に調整空気が吹き出され循環することによる無駄な空調を回避し、運転席3側の着座空間のみの効率的な部分空調を実現することが可能となる。従って、効果的に、空調の消費エネルギーを節減することができる。
【0069】
なお、上述した「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」は、特に調整空気が冷気である場合に特に有効であり、「運転席フット吹出−運転席吸込モード」は、特に調整空気が暖気である場合に特に有効である。
【0070】
なお、本実施の形態では、運転席3の単独着座判定時に、上述した「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「運転席フット吹出−運転席吸込モード」とを選択可能とし、運転席3の着座空間の部分空調を行っているが、本件発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席の着座判定時において、運転席優先モードが設定されている場合においても、これら「運転席フェイス吹出−運転席吸込モード」と、「運転席フット吹出−運転席吸込モード」とを選択可能としてもよい。この場合、助手席4側には、運転席3側の着座空間を通過した後の調整空気、もしくは、運転席3側の着座空間から漏洩してきた調整空気が供給されるため、直接、調整空気が吹き付けられることを嫌う乗員が助手席4に着座している場合には、間接的な空調を行うことができ、助手席4の乗員にとって快適な空調を実現することができる。
【0071】
3.助手席のみの助手席単独着座判定時
本実施の形態では、当該助手席4のみの助手席単独着座と判定されている場合には、吸込吹出モード入力部41により、以下の「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「助手席フット吹出−助手席吸込モード」とを選択可能とする。
【0072】
(1)助手席フェイス吹出−助手席吸込モード
「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、助手席側フェイス吹出口21からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、助手席側吸込口25から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0073】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ21Aと吸込ダンパ25Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、22A、23Aと吸込ダンパ24Aを閉鎖する。よって、
図11に示すように、ケーシング10内の調整空気は、助手席側フェイス吹出口21から助手席4の着座空間の上部に向けて吹き出された後、助手席4の着座空間を通る循環経路を流れて、当該助手席4の足元に形成された助手席側吸込口25からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。
【0074】
(2)助手席フット吹出−助手席吸込モード
「助手席フット吹出−助手席吸込モード」が選択された場合、制御装置35は、助手席側フット吹出口23からケーシング10内の調整空気を前部領域RF内に吹き出し、助手席側吸込口25から前部領域RF内の空気をケーシング10内に吸い込む制御を実行する。
【0075】
具体的には、制御装置35は、吹出ダンパ23Aと吸込ダンパ25Aを開放し、その他の吹出ダンパ20A、21A、22Aと吸込ダンパ24Aを閉鎖する。よって、
図12に示すように、ケーシング10内の調整空気は、助手席側フット吹出口23から助手席4の着座空間の足元に向けて吹き出された後、助手席4の着座空間を通る循環経路を流れて、同じく助手席4の足元に形成された助手席側吸込口25からケーシング10内に帰還する空気循環が行われる。この際、助手席側フット吹出口23と助手席側吸込口25とは、可能な限り離間した位置に設けられることによって、調整空気流のショートサイクルを回避し、助手席4の足元空間を積極的に空調することが可能となる。
【0076】
上述した「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「助手席フット吹出−助手席吸込モード」とが設定された場合には、前部領域RFに吹き出された調整空気は、運転席3側から吹き出されることなく、助手席4側からのみ吹き出される。そして、当該各モードが選択される際には、前部領域RFと後部領域RRとを区画するエアカーテンが形成されているため、助手席4側から積極的に車室R内に吹き出された調整空気は、前部領域RF内の助手席4側の着座空間のみを通過する循環経路を流れて、同じ助手席4側から吸い込まれる循環流が形成される。
【0077】
よって、エアカーテンにより後部領域RRとは区画された前部領域RF内は、助手席4側の着座空間を循環する調整空気によって、当該助手席4側のみを積極的に空調することができる。従って、助手席4側のみに乗員が着座している助手席単独着座時に、運転席3側の着座空間に調整空気が吹き出され循環することによる無駄な空調を回避し、助手席4側の着座空間のみの効率的な部分空調を実現することが可能となる。よって、効果的に、空調の消費エネルギーを節減することができる。
【0078】
なお、上述した「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」は、特に調整空気が冷気である場合に特に有効であり、「助手席フット吹出−助手席吸込モード」は、特に調整空気が暖気である場合に特に有効である。
【0079】
なお、本実施の形態では、助手席4の単独着座判定時に、上述した「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「助手席フット吹出−助手席吸込モード」とを選択可能とし、助手席4の着座空間の部分空調を行っているが、本件発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席の着座判定時において、助手席優先モードが設定されている場合においても、これら「助手席フェイス吹出−助手席吸込モード」と、「助手席フット吹出−助手席吸込モード」とを選択可能としてもよい。この場合、運転席3側には、助手席4側の着座空間を通過した後の調整空気、もしくは、助手席4側の着座空間から漏洩してきた調整空気が供給されるため、直接、調整空気が吹き付けられることを嫌う乗員が運転席3に着座している場合には、間接的な空調を行うことができ、運転席3の乗員にとって快適な空調を実現することができる。
【0080】
本実施の形態における車両用空調装置では、上述したコントロールパネル38に設けられた内外気入力部42を操作することにより、車室R内の空気を循環させる内気循環モードと、車室R内に常時、外気を導入させる外気導入モードとを選択することができる。
【0081】
内気循環モードが選択された場合、エアカーテン形成の有無にかかわらず、制御装置35は、内外気切替ダンパ17を切り替えて、内気導入口15側を開放し、外気導入口16側を閉鎖する。そして、循環用送風機12を運転することにより、ケーシング10内において形成された調整空気は、モード設定に対応する吹出口から車室R内に吹き出され、車室R内の空気は、モード設定に対応する吸込口から内気導入口15を介してケーシング10内に帰還する内気循環を行う。これにより、車室R内は、所定の設定温度に調整される。
【0082】
一方、コントロールパネル38の着座入力部43の操作により、制御装置35が、後部座席6に乗員が着座していると判定した場合であって、外気導入モードが選択された場合には、制御装置35は、エアカーテンユニット2のエアカーテン形成用送風機34の運転を停止すると共に、内外気切替ダンパ17を切り替えて、内気導入口15側を閉鎖し、外気導入口16側を開放する。さらに、制御装置35は、内気排気用ダンパ28を切り替えて内気排気用ダクト26を開放し、内気排気用送風機27を運転する。
【0083】
この状態で、循環用送風機12を運転することにより、ケーシング10内には、順次外気導入口16から外気が導入され、当該ケーシング10内において、調整空気が形成されて、モード設定に対応する吹出口から車室R内に吹き出される。そして、車室R内を循環した空気は、内気排気用送風機27の運転により、モード設定に対応する吸込口から内気排気用ダクト26を介して車室外に排出される。これにより、車室R内は、随時、車室外の空気が取り入れられると共に、所定の設定温度に調整される。なお、本実施の形態では、当該エアカーテンを形成していない状態で、車室R内の空気吸込口24又は25から吸い込み、内気排気用ダクト26を介して車室外に排出しているが、これに限定されるものではなく、後部領域RRに車室R内の空気を車室外に排出する後部内気排気口を設け、当該後部内気排気口から車室外に内気を排出してもよい。この場合、当該後部内気排気口には、後部内気排気用ダンパが設けられており、エアカーテン形成時は必ず、後部内気排気用ダンパにより後部内気排気口を閉塞するものとする。
【0084】
他方、コントロールパネル38の着座入力部43の操作により、制御装置35が、後部座席6に乗員が着座しておらず、運転席3、及び/又は、助手席4の前部座席のみに乗員が着座していると判定した場合であって、外気導入モードが選択された場合には、制御装置35は、エアカーテンユニット2のエアカーテン形成用送風機34の運転を行うと共に、内外気切替ダンパ17を切り替えて、内気導入口15側を閉鎖し、外気導入口16側を開放する。そして、制御装置35は、内気排気用ダンパ28を切り替えて内気排気用ダクト26を開放し、内気排気用送風機27を運転する。
【0085】
ここで、当該エアカーテンが形成されている状態で、外気導入を行い、上述したような後部内気排出口を介して車室内の空気を車室外に排出すると、前部領域RF内の空気圧が後部領域RR内の空気圧と比べて高くなり、容易にエアカーテンが乱されて、前部領域RFの空気が後部領域RR内に抜け出てしまう。よって、前部領域RFのみの効率的な部分空調を実現することができない状態となる。
【0086】
ゆえに、本実施の形態では、制御装置35は、当該エアカーテンユニット2が作動している状態で、外気導入モードが選択された場合には、上述したような後部内気排気用ダンパにより後部内気排気口を必ず閉塞して、内気排気ユニット5の内気排気用ダンパ28を切り替えて内気排気用ダクト26を開放し、内気排気用送風機27を運転する。よって、ケーシング10内に車室外からの外気が導入するのに伴い、内気排気用ダクト26を介して、前部領域RF内の内気の一部が車室外に排気される。
【0087】
よって、本実施の形態では、前部領域RFと後部領域RRとの間で空気の圧力差が生じることによるエアカーテンの乱れを未然に回避することができ、好適にエアカーテンを形成して、効率的な前部領域RFのみの部分空調を実現することができる。従って、効率的に、空調の消費エネルギーを節減することができる。
【0088】
なお、上述した実施の形態では、内気排気用ダクト26を介して車室外に排出される内気は、前部領域RFから直接車室外に排出されているが、これに限定されるものではない。例えば、当該前部領域RFから内気排気用ダクト26内に流入した内気は、ケーシング10内に導入される車室外の外気と熱交換を行った後、車室外に排出させることが好ましい。
【0089】
具体的には、
図13に示すように、ケーシング10は、内部に外気を導入する外気導入ダクト47と前部領域RF内の空気の一部を車室外に排出する内気排気用ダクト26とを交熱的に配設した内外気熱交換器(内外気熱交換手段)48を備える。
【0090】
これにより、外気導入ダクト47を介してケーシング10内に導入される車室外空気は、内気排気用送風機27により内気排気用ダクト26を介して車室外に排出される前部領域RFの空気と熱交換することができる。
【0091】
よって、ケーシング10内に導入される外気は、車室外に排出される前部領域RFの空気と熱交換した後の空気であるため、冷房運転時には冷やされ、暖房運転時には暖められた状態となり、前部領域RF内の空気を排出することによるエネルギー損失を軽減することが可能となる。従って、より効率的な空調制御を実現することができる。
【0092】
次に、
図14を参照して、本件発明に係るエアカーテンユニット2の他の実施形態を説明する。本件発明の他の実施の形態としてのエアカーテンユニット50は、車室R内の天井部7に配設されて、前部領域RF内の空気を吸い込み、車室R内の床部8に向けて吹き出す上部送風機(上部送風手段)51と、車室R内の床部8に配設されて、上部送風機51から吹き出された空気を吸い込み、前部領域RF内に空気を吹き出す下部送風機(下部送風手段)54とを備えている。
【0093】
上部送風機51は、前部領域RFに向けて開口する吸込口52と、当該吸込口52から吸い込んだ前部領域RFの空気を車室Rの床部8に向けて吹き出す吹出口53とを有している。また、下部送風機54は、上部送風機51の吹出口53に向けて開口する吸込口55と、当該吸込口55から吸い込んだ空気を車室Rの前部領域RFに向けて吹き出す吹出口56とを有している。
【0094】
上述した運転席3及び助手席4は、それぞれ床部8に前後方向に延びて設けられる移動用レールに保持され、当該移動用レールによって、前後方向に移動自在に設けられる。また、これら運転席3及び助手席4は、背もたれ部3B、4Bが、座面3A又は4Aに対するリクライニング角度を変更可能とされている(4A、4Bは
図3のみに図示する)。
【0095】
本実施の形態では、上部送風機51は、運転席3、及び/又は、助手席4のヘッドレスト3C、及び/又は、4Cの上後方に位置して配置される(4Cは
図3のみに図示する)。そして、下部送風機54は、車室R内の運転席3、及び/又は、助手席4の後下部に固定されて、当該運転席3又は助手席4の前後方向への移動に伴って前後方向に移動可能に設けられることが好ましい。さらに、当該下部送風機54は、吸込口55の開口角度が、当該運転席3、及び/又は、助手席4のリクライニング角度の変更に応じて変更可能とされていることがより好ましい。
【0096】
当該実施の形態において、上部送風機51と下部送風機54とが運転されると、上部送風機51の吸込口52から吸い込まれた前部領域RF内の空気は、当該上部送風機51にの吹出口53から床部8に設けられた下部送風機54の吸込口55に向けて吹き出される。このとき、上部送風機51と下部送風機54とは、風量がほぼ同等となるように制御されることが好ましい。そして、下部送風機54に吸い込まれた空気は、前部領域RFに向けて吹き出される。当該上部送風機51と下部送風機54の運転により、前部領域RF内の空気を循環させることによって、前部領域RFと後部領域RRとの間には、これらの領域を区画するエアカーテンが形成される。
【0097】
このとき、上部送風機51は、運転席3、及び/又は、助手席4のヘッドレスト3C又は4Cの上後方に設けられており、下部送風機54は、運転席3、及び/又は、助手席4の後下部に当該座席の移動に伴って移動可能となるように設けられている。ゆえに、当該上部送風機51の吹出口53から吹き出された前部領域RFの空気は、運転席3、及び/又は、助手席3の背もたれ部3B、及び/又は、4B背面に沿って降下するエアカーテンが形成される。これら運転席3、及び/又は、助手席4の背もたれ部3B、及び/又は、4Bの背面に沿って形成されるエアカーテンは、乱されにくいため、上述した実施の形態のエアカーテンユニット2により形成されるエアカーテンと比べて、より安定したエアカーテンの形成が可能となる。
【0098】
特に、当該実施の形態におけるエアカーテンユニット50は、下部送風機54が運転席3、及び/又は、助手席4の後下部に配置されているため、効率的に運転席3、及び/又は、助手席4の後方に位置して前部領域RFと後部領域RRとの間にエアカーテンを形成することができる。
【0099】
さらに、当該実施の形態におけるエアカーテンユニット50は、下部送風機54の吸込口55の開口角度が、当該運転席3、及び/又は、助手席4のリクライニング角度の変更に応じて変更可能とされているので、運転席3や助手席4のリクライニング角度を変更した場合であっても、支障なく運転席3、及び/又は、助手席4の後方に位置して前部領域RFと後部領域RRとの間にエアカーテンを形成することが可能となる。
【0100】
次に、
図15を参照して、本件発明に係る他の実施例を説明する。本件発明の他の実施の形態としてのエアカーテンユニット60は、上部送風機(上部送風手段)61と、下部送風機(下部送風手段)64と、下部送風機64に吸い込まれた空気を後部座席6のヘッドレスト6C後方に位置する補助吹出口67から吹き出すダクト部材68とを有する。上部送風機61は、天井部7に配設され、後部領域RR内の空気を吸い込み、車室R内の床部8に向けて吹き出す。下部送風機64は、車室R内の床部8に配設され、上部送風機61から吹き出された空気を吸い込み、ダクト部材68内に吹き出す。
【0101】
上部送風機61は、車室R内の運転席3、及び/又は、助手席4のヘッドレスト3C、及び/又は、4Cの上後方に配置されると共に、後部領域RRに向けて開口する吸込口62と、当該吸込口62から吸い込んだ後部領域RRの空気を車室Rの床部8に向けて吹き出す吹出口63とを有している。また、下部送風機64は、後部座席6の座面6A下前方に位置する床部8に設けられると共に、上部送風機61の吹出口63に向けて開口する吸込口65を有している。また、ダクト部材68は、後部座席6の後部又は当該後部座席6の後方に配設される。
【0102】
当該実施の形態において、上部送風機61と下部送風機64とが運転されると、上部送風機61の吸込口62から吸い込まれた後部領域RR内の空気は、当該上部送風機61の吹出口63から床部8に設けられた下部送風機64の吸込口65に向けて吹き出される。この際、上部送風機61と下部送風機64とは、風量がほぼ同等となるように制御されることが好ましい。そして、下部送風機64に吸い込まれた空気は、後部座席6の後部又は当該後部座席6の後方に配設されたダクト部材68内を上昇し、後部座席6のヘッドレスト6C後方に位置する補助吹出口67から上部送風機61の吸込口62に向けて吹き出される。当該上部送風機61と下部送風機64の運転により、後部領域RR内の空気を循環させることによって、前部領域RFと後部領域RRとの間には、これらの領域を区画するエアカーテンが形成される。
【0103】
このとき、上部送風機61は、運転席3、及び/又は、助手席4のヘッドレスト3C又は4Cの上後方に設けられており、下部送風機64は、後部座席6の座面6A下前方に位置する床部8に設けられているため、当該上部送風機61の吹出口63から吹き出された後部領域RRの空気流は、後部座席6の前下部に向けて降下するエアカーテンを形成する。当該実施の形態において形成されるエアカーテンは、後部領域RR内の空気を用いて形成することができるため、外気導入時であっても、前部領域RF内の調整空気が後部領域RR内に進入する不都合を効果的に防止することができる。
【0104】
なお、上述した如き、各エアカーテンユニット2、50、60は、各送風機の吸込口側に車室R内の塵埃を捕獲するエアフィルタを備えていることがより好ましい。
【0105】
また、本実施の形態では、車室R内の前部領域RFに、運転席3や助手席4などの前部座席が設けられ、車室Rの後部領域RRに図示するような一列の後部座席6を備えた車両に適用されるものを例に挙げて説明している。しかし、本件発明は、当該前部座席一列と後部座席一列からなる二列シートの車両に限定されるものではなく、後部領域RRに二列等、複数列の後部座席を備えた車両においても適用することができる。効率的な車室内部分空調を実現しうる本件発明は、このような後部領域RRがより広く確保される車両において特に有利である。