特許第6370108号(P6370108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370108
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/02 20060101AFI20180730BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20180730BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20180730BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   F02D11/02 R
   F02D11/10 U
   B62K23/04
   G01B7/30 H
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-108889(P2014-108889)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-224571(P2015-224571A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
(72)【発明者】
【氏名】澤木 祐介
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−232842(JP,A)
【文献】 特開2013−203176(JP,A)
【文献】 特開2002−264876(JP,A)
【文献】 特開2008−265398(JP,A)
【文献】 特開2013−108430(JP,A)
【文献】 特開2006−112880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0216550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/00 〜 11/02
F02D 11/10
B62K 23/04
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルバーに取り付けられるケースと、
運転者が把持しつつ初期位置から回転操作可能とされたスロットルグリップと、
前記ケース内に配設されるとともに、当該スロットルグリップと連動して回転し得る連動部材と、
該連動部材を初期位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記連動部材に固定された磁石と、
前記磁石からの磁場の変化に応じた出力電圧を得ることにより、前記連動部材の回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された回転角度に応じて車両のエンジンを制御させるスロットルグリップ装置であって、
前記付勢手段は、前記連動部材の内部に取り付けられるとともに、前記連動部材の外周面と当接して少なくとも径方向の位置決めを行わせつつ当該連動部材の回転を案内し得る当接部材を具備し、且つ、前記連動部材は、前記スロットルグリップの基端側に形成された凸部を嵌合可能な嵌合部と、前記磁石を固定可能な固定部とを具備した筒状部材から成り、その内周部に前記付勢手段が取り付けられたことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、一端が前記連動部材に取り付けられるとともに他端が前記ケースに取り付けられた捩りバネから成ることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記固定部は、前記連動部材における端面の外周縁側で弧状に形成された凹部から成り、磁石が当該凹部に対応した形状とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記連動部材の外周面に当接した状態で配設され、当該連動部材の回転時に摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗手段を具備したことを特徴とする請求項1〜の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたものが普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スロットルグリップに磁石を固定させるとともに、当該磁石と対向した位置にホール素子から成る磁気センサを配設し、当該スロットルグリップの回転角度を磁気センサにて検出し得るスロットルグリップ装置が提案されている。この従来のスロットルグリップ装置に係る磁石は、スロットルグリップの回転方向に沿って円弧状に形成され、その側面に対向して磁気センサが配設されており、スロットルグリップの回転操作に伴って生じる磁束密度の変化を磁気センサにて検出することで、スロットルグリップの回転角度を電気的に検出し得るよう構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のスロットルグリップ装置においては、スロットルグリップの基端側の所定部位に磁石が固定されているため、当該スロットルグリップに対してその回転方向とは異なる方向の負荷がかかった場合であっても、その方向に磁石が移動してしまうことから、精度よくスロットルグリップの回転角度を検出するのが困難であった。そこで、本出願人は、スロットルグリップの回転に連動する連動部材を当該スロットルグリップとは別個に配設し、その連動部材に磁石を固定させることで上記不具合を解消することを検討するに至った。
【0006】
しかしながら、その場合、連動部材に加え、スロットルグリップを初期位置(スロットルの全閉位置)に付勢するためのリターンスプリング(付勢手段)が必要とされることから、これら連動部材及びリターンスプリングをそれぞれ配設するためのケースが大型化してしまい、装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スロットルグリップの回転角度を高精度に検出することができるとともに、装置の大型化を抑制することができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両のハンドルバーに取り付けられるケースと、運転者が把持しつつ初期位置から回転操作可能とされたスロットルグリップと、前記ケース内に配設されるとともに、当該スロットルグリップと連動して回転し得る連動部材と、該連動部材を初期位置に向かって付勢する付勢手段と、前記連動部材に固定された磁石と、前記磁石からの磁場の変化に応じた出力電圧を得ることにより、前記連動部材の回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記回転角度検出手段で検出された回転角度に応じて車両のエンジンを制御させるスロットルグリップ装置であって、前記付勢手段は、前記連動部材の内部に取り付けられるとともに、前記連動部材の外周面と当接して少なくとも径方向の位置決めを行わせつつ当該連動部材の回転を案内し得る当接部材を具備し、且つ、前記連動部材は、前記スロットルグリップの基端側に形成された凸部を嵌合可能な嵌合部と、前記磁石を固定可能な固定部とを具備した筒状部材から成り、その内周部に前記付勢手段が取り付けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記付勢手段は、一端が前記連動部材に取り付けられるとともに他端が前記ケースに取り付けられた捩りバネから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記固定部は、前記連動部材における端面の外周縁側で弧状に形成された凹部から成り、磁石が当該凹部に対応した形状とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1〜の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材の外周面に当接した状態で配設され、当該連動部材の回転時に摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、付勢手段は連動部材の内部に取り付けられたので、スロットルグリップの回転角度を高精度に検出することができるとともに、装置の大型化を抑制することができる。
また、連動部材は、スロットルグリップの基端側に形成された凸部を嵌合可能な嵌合部と、磁石を固定可能な固定部とを具備した筒状部材から成り、その内周部に付勢手段が取り付けられたので、スロットルグリップの回転操作に応じた連動と磁石の保持とを確実に行わせることができるとともに、装置の大型化を抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、付勢手段は、一端が連動部材に取り付けられるとともに他端がケースに取り付けられた捩りバネから成るので、より確実且つ円滑に連動部材を初期位置に向かって付勢させることができる。
【0016】
請求項の発明によれば、固定部は、連動部材における端面の外周縁側で弧状に形成された凹部から成り、磁石が当該凹部に対応した形状とされたので、外形寸法をほぼ変えないで連動部材の内周部の寸法を大きくすることができ、比較的大きな付勢手段を取り付けることができる。
【0017】
請求項の発明によれば、連動部材の外周面に当接した状態で配設され、当該連動部材の回転時に摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗手段を具備したので、連動部材の内周部に取り付けられた付勢手段との干渉を回避しつつ摩擦抵抗手段による摩擦抵抗の付与を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す側面図及び正面図
図2】同スロットルグリップ装置における第1ケースを取り外した状態を示す正面図
図3図2におけるIII−III線断面図
図4図2におけるIV−IV線断面図
図5図2におけるV−V線断面図
図6】同スロットルグリップ装置の内部構造を示すための分解斜視図
図7】同スロットルグリップ装置における連動部材を示す3面図
図8】同スロットルグリップ装置におけるリターンスプリング(付勢手段)を示す2面図
図9】同スロットルグリップ装置における磁石を示す3面図
図10】同スロットルグリップ装置における当接部材を示す2面図
図11】同スロットルグリップ装置における摩擦抵抗手段を示す4面図
図12】同スロットルグリップ装置における小ケースを示す正面図
図13図12におけるXIII−XIII線断面図
図14図12におけるXIV−XIV線断面図
図15】同スロットルグリップ装置におけるスロットル全閉状態のときの磁石と磁気センサ(回転角度検出手段)との位置関係を示す模式図
図16図15におけるA−A線断面図
図17】同スロットルグリップ装置におけるスロットル全開状態のときの磁石と磁気センサ(回転角度検出手段)との位置関係を示す模式図
図18図17におけるB−B線断面図
図19】同スロットルグリップ装置における磁気センサと検出手段との電気的接続を示すブロック図
図20】同スロットルグリップ装置におけるスロットルグリップの回転角度と磁気センサ及び検出手段の離間寸法との関係を示すグラフ
図21】同スロットルグリップ装置におけるスロットルグリップの回転角度と磁気センサの出力電圧との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、二輪車のハンドルバーに取り付けられたスロットルグリップの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送るためのもので、図1〜6に示すように、ケース1と、スロットルグリップGと、連動部材2と、リターンスプリング3(付勢手段)と、磁石4と、磁気センサ6及び検出手段11(図19参照)を有した回転角度検出手段と、当接部材7と、摩擦抵抗手段8とから主に構成されている。
【0020】
ケース1は、図1に示すように、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたもので、半割り状に成形された第1ケース1a及び第2ケース1bから構成されている。かかるケース1は、ハンドルバーHを挟んだ状態にて第1ケース1a及び第2ケース1bを合致させつつ取付ネジにて組付けられ、その内部に連動部材2が回転自在に配設されている。なお、本実施形態に係るケース1には、二輪車に搭載された種々電装品を操作するための操作ノブ及びスイッチが形成されている。
【0021】
スロットルグリップGは、運転者が把持しつつハンドルバーHに対して初期位置から軸回りに所定方向の回転が可能とされたもので、運転者が把持し得る把持グリップ部G1と、その内部に固定されて把持グリップ部G1と一体化されたグリップパイプ部G2とから構成されている。グリップパイプ部G2は、例えば硬質樹脂材を所定形状に成形して成るもので、その基端部(図3中左端部)には、他の部位より大径の基端部G3が一体的に形成されている。
【0022】
基端部G3は、図6に示すように、凸部G3a(図4〜7参照)が突出形成されており、スロットルグリップGが回転するとき、当該凸部G3aが連動部材2の所定部位(嵌合部2aの壁面)に当接してリターンスプリング3の付勢力に抗して回転させ得るよう構成されている。すなわち、連動部材2には、凹形状から成る嵌合部2aが形成されており、当該嵌合部2aに凸部G3aを嵌合させつつ組み付けることにより、スロットルグリップGが回転すると凸部G3aが嵌合部2aの壁面を押圧し、同方向に連動部材2を回転させることができるのである。
【0023】
連動部材2は、ケース1内に回転自在に配設されるとともに、スロットルグリップGと連動してリターンスプリング3の付勢力に抗して回転し得るもので、図7に示すように、スロットルグリップGの凸部G3aを嵌合可能な嵌合部2aと、磁石4を固定可能な固定部2bとを具備した筒状部材から成る。本実施形態に係る連動部材2は、その内周部にリターンスプリング3(付勢手段)が取り付けられるよう構成されている。
【0024】
リターンスプリング3は、連動部材2の内部(内周面2dの内側)に取り付けられ、連動部材2及びスロットルグリップGを初期位置に向かって付勢するもので、図8に示すように、一端3aが連動部材2(具体的には連動部材2に形成された取付孔2c(図4、5参照))に取り付けられるとともに他端3bがケース1(具体的にはケース1bに形成された取付部)に取り付けられた捩りバネ(所謂トーションバネ)から成る。
【0025】
すなわち、リターンスプリング3は、連動部材2の内周面2dの内側に配設されるとともに、当該連動部材2に対して初期位置に向かって付勢するよう構成されており、連動部材2を介してスロットルグリップGを初期位置に向かって常時付勢し得るようになっている。これにより、リターンスプリング3が連動部材2で保護されるとともに、ケース1内におけるリターンスプリング3の別個の設置スペースを不要とすることができる。
【0026】
磁石4は、連動部材2の固定部2bに固定された永久磁石から成るもので、図9に示すように、平面視で円弧状に形成されている。すなわち、連動部材2に形成された固定部2bは、連動部材2における端面の外周縁側で弧状に形成された凹部から成り(図7参照)、磁石4が当該凹部に対応した形状とされており、磁石4が当該固定部2bに接着材等にて固定されているのである。
【0027】
磁気センサ6及び検出手段11は、本発明の回転角度検出手段を構成するもので、磁石4からの磁場の変化に応じた出力電圧を得ることにより、連動部材2(すなわちスロットルグリップG)の回転角度を検出し得るものである。磁気センサ6は、磁石4の磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石4の磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。
【0028】
なお、本実施形態に係る磁気センサ6は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板5に形成されており、図19に示すように、磁気センサ6の出力電圧から連動部材2の回転角度を検出するための検出手段11と電気的に接続されている。しかして、スロットルグリップGを回転操作するのに伴って連動部材2がリターンスプリング3の付勢力に抗して回転すると、磁石4も同方向に同一角度だけ回転し、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(すなわち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。
【0029】
このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU12(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。すなわち、初期位置にあるスロットルグリップGをリターンスプリング3の付勢力に抗して回転操作すると、車両のスロットルの開度が次第に大きくなるよう制御されるとともに、把持グリップ部G1を握る手を緩めると、リターンスプリング3の付勢力によりスロットルグリップGが初期位置に向かって自然と戻り、スロットルの開度が次第に小さくなるよう構成されているのである。
【0030】
さらに、本実施形態に係る磁石4は、図9に示すように、その表面4a(磁気センサ6と対向する面)が傾斜してヘリカル状(円弧状に回転しながら回転面に対して垂直の方向にも変位する3次元的な面形状)(螺旋状)に延設されるとともに、裏面4bが平坦面とされている。そして、裏面4bを連結部材2の固定部2bに当接させることで当該固定部2bに磁石4を固定させることで、スロットルグリップGの回転角度に応じて磁気センサ6との間の離間寸法tが変化するよう構成されている。これにより、図21に示すように、磁気センサ6の出力電圧とスロットルグリップGの回転角度との関係が比例関係となるよう設定されている。
【0031】
例えば、図15、16に示すように、スロットルグリップGが初期状態のとき(スロットル全閉状態のとき)の磁石4と磁気センサ6との間の離間寸法t1は、図17、18に示すように、スロットルグリップGの最大回転角度(スロットル全開状態のとき)の磁石4と磁気センサ6との間の離間寸法t2よりも小さくなるよう設定されている。しかして、本実施形態に係る磁石4の表面4aは、スロットルグリップGの回転角度に応じて磁気センサ6との間の離間寸法tが図20で示す如き変化するものとされており、これにより、図21に示すように、磁気センサ6の出力電圧とスロットルグリップGの回転角度との関係が比例関係となる形状となるよう設定されているのである。
【0032】
さらに、磁気センサ6及びプリント基板5は、図12〜14に示すように、小ケースC内に収容されており、当該小ケースCがケース1における連動部材2と隣接した部位(図3参照)に固定されることにより、磁気センサ6を磁石4に対向させるよう構成されている。かかる小ケースCにより、例えば連動部材2が軸方向(図3中左方向)に移動しようとした場合、当該連動部材2の端面と干渉して当該移動を防止することができる。なお、磁気センサ6及びプリント基板5を収容した状態の小ケースC内に樹脂等を流し込んで封止するのが好ましい。
【0033】
当接部材7は、連動部材2を覆う如くケース1(第2ケース1b)に固定される板状部材から成るもので、連動部材2の外周面と当接して少なくとも径方向の位置決めを行わせつつ当該連動部材2の回転を案内し得るものである。具体的には、当接部材7は、図10に示すように、一端7aから他端7bまで弧状に屈曲形成された板状部材から成り、その屈曲部は、連動部材2の外周面に倣った形状とされている。そして、一端7aを第2ケース1bの取付孔1bbに差し込みつつ他端7bをネジ等で第2ケース1bの所定部位に固定させることで、一端7aと他端7bとの間の屈曲部が連動部材2の外周面に当接し、当該連動部材2の径方向の位置決め及び回転の案内が行われるようになっている。なお、同図中符号7baは、ネジ等を挿通するネジ孔を示している。
【0034】
摩擦抵抗手段8は、連動部材2の外周面に当接した状態で配設され、当該連動部材2の回転時に摩擦抵抗を付与するためのもので、図4〜6に示すように、連動部材2の外周面に当接する摩擦部材9と、摩擦部材9を連動部材2の外周面に向かって押圧する付勢部材10とを有して構成されている。摩擦部材9は、所望の摩擦材から成るもので、図11に示すように、連動部材2の外周面に倣った弧状の突端面9aと、付勢部材10を受けるための受け部9bとを有した駒状部材から成る。また、付勢部材10は、図5に示すように、第2ケース1bの収容部1baに収容されたバネから成るもので、当該バネに代えて他の付勢部材としてもよい。
【0035】
ここで、本実施形態に係る当接部材7は、摩擦抵抗手段8が当接する位置とは反対側の連動部材2の外周面に当接するよう構成されている。これにより、付勢部材10の付勢力で付勢された摩擦部材9が連動部材2を押圧するとともに、その押圧された連動部材2を当接部材7が受けることで径方向の位置決め及び回転の案内が行われることとなる。よって、摩擦抵抗手段8は、スロットルグリップGの回転に伴う連動部材2に対して摩擦抵抗を付与することで、当該スロットルグリップGの回転操作時の操作感を得るとともに、当接部材7による連動部材2の径方向の位置決め及び回転の案内を確実に行わせることができる。
【0036】
上記実施形態によれば、リターンスプリング3(付勢手段)は連動部材2の内部に取り付けられたので、スロットルグリップGの回転角度を高精度に検出することができるとともに、リターンスプリングを連動部材2とは別個の位置に取り付けるものに比べ、ケース1の寸法(特に図2、3中左右方向の幅寸法)を小さくでき、スロットルグリップ装置の大型化を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るリターンスプリング3(付勢手段)は、一端3aが連動部材2に取り付けられるとともに他端3bがケース1に取り付けられた捩りバネから成るので、より確実且つ円滑に連動部材2を初期位置に向かって付勢させることができる。さらに、本実施形態に係る連動部材2は、スロットルグリップGの基端側に形成された凸部G3aを嵌合可能な嵌合部2aと、磁石4を固定可能な固定部2bとを具備した筒状部材から成り、その内周部に付勢手段としてのリターンスプリング3が取り付けられたので、スロットルグリップGの回転操作に応じた連動と磁石4の保持とを確実に行わせることができるとともに、装置の大型化を抑制することができる。
【0038】
またさらに、本実施形態に係る固定部2bは、連動部材2における端面(磁気センサ6と対向させる面)の外周縁側で弧状に形成された凹部から成り、磁石4が当該凹部に対応した形状とされたので、外形寸法をほぼ変えないで連動部材2の内周部の寸法を大きくすることができ、比較的大きなリターンスプリング3(付勢手段)を取り付けることができる。また、本実施形態においては、連動部材2の外周面に当接した状態で配設され、当該連動部材2の回転時に摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗手段8を具備したので、連動部材2の内周部に取り付けられたリターンスプリング3(付勢手段)との干渉を回避しつつ摩擦抵抗手段8による摩擦抵抗の付与を行わせることができる。
【0039】
加えて、本実施形態によれば、連動部材2の外周面と当接して少なくとも径方向の位置決めを行わせつつ当該連動部材2の回転を案内し得る当接部材7を具備したので、スロットルグリップGの回転操作時の操作感を得ることができるとともに、連動部材2をより確実且つ円滑に連動させることができ、スロットルグリップの回転角度をより高精度に検出することができる。特に、本実施形態に係る当接部材7は、連動部材2を覆う如く取り付けられるので、連動部材2(内部のリターンスプリング3含む)をカバーして保護し得るよう構成されている。
【0040】
しかるに、本実施形態においては、当接部材7及び摩擦抵抗手段8にて連動部材2の径方向の位置決めを行っているが、当接部材7のみで径方向の位置決め及び回転の案内に加え、摩擦抵抗を付与させるものとしてもよい。また、例えば連動部材2の外周面に周方向に亘る凹溝又は凸条を形成するとともに、当接部材7又は摩擦部材9における連動部材2の外周面に対する当接面に当該凹溝又は凸条と嵌合し得る凸部又は凹部を設けることで、連動部材2の径方向に加え、軸方向にも位置決めするよう構成してもよい。
【0041】
また、連動部材2の外周面に当接した状態で配設され、連動部材2の回転時に摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗手段8を具備するとともに、当接部材7は、当該摩擦抵抗手段8が当接する位置とは反対側の外周面に当接するので、摩擦抵抗手段8と当接部材7とにより連動部材2の少なくとも径方向の位置決めをより安定して図ることができ、且つ、摩擦抵抗手段8が連動部材2に対する摩擦付与機能と位置決め機能との両方を兼ね備えることができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る摩擦抵抗手段8は、連動部材2の外周面に当接する摩擦部材9と、該摩擦部材9を当該連動部材2の外周面に向かって押圧する付勢部材10とを有したので、付勢部材10の付勢力にて摩擦部材9の連動部材2に対する当接を確実に行わせることができ、連動部材2が回転する際、その外周面に摩擦部材9を追従させて当接状態を確実に維持させることができる。
【0043】
なお、本実施形態に係るスロットルグリップ装置によれば、連動部材2に固定された磁石4と、該磁石4の磁場変化に応じた出力電圧を得ることができる磁気センサ6とを有することで、スロットルグリップGの回転操作角度を検出し得るので、スロットルグリップGの回転角度に応じて作動するワイヤ等を不要とすることができるとともに、スロットルグリップGの回転時の回転角度をより精度よく検出させることができる。
【0044】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば付勢手段としてのリターンスプリング3を捩りバネとは異なる他の汎用的な付勢手段に代えてもよい。また、当接部材7や摩擦抵抗手段8を他の形態のもの、或いはケース1内に具備しないものとしてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
動部材の内部に付勢手段が取り付けられるとともに、連動部材の外周面と当接して少なくとも径方向の位置決めを行わせつつ当該連動部材の回転を案内し得る当接部材を具備し、且つ、連動部材は、スロットルグリップの基端側に形成された凸部を嵌合可能な嵌合部と、磁石を固定可能な固定部とを具備した筒状部材から成り、その内周部に付勢手段が取り付けられたスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ケース
2 連動部材
3 リターンスプリング(付勢手段)
4 磁石
5 プリント基板
6 磁気センサ(回転角度検出手段)
7 当接部材
8 摩擦抵抗手段
9 摩擦部材
10 付勢部材
11 検出手段(回転角度検出手段)
12 ECU
H ハンドルバー
G スロットルグリップ
C 小ケース
図1
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