特許第6370180号(P6370180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6370180-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6370180-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許6370180-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許6370180-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許6370180-空気入りタイヤ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370180
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20180730BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B60C11/00 C
   B60C11/00 D
   B60C9/18 K
   B60C9/18 N
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-190058(P2014-190058)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-60375(P2016-60375A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−321237(JP,A)
【文献】 特開2003−326917(JP,A)
【文献】 特開2010−274853(JP,A)
【文献】 特表2012−512099(JP,A)
【文献】 特開平05−330312(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048600(US,A1)
【文献】 特開2013−154764(JP,A)
【文献】 特開2007−331529(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0308678(US,A1)
【文献】 特開2011−093386(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0094639(US,A1)
【文献】 特開2012−131459(JP,A)
【文献】 特開平04−133802(JP,A)
【文献】 特開2008−132810(JP,A)
【文献】 特開2008−296800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00,9/18,9/22,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に設けられた複数枚のベルトプライにより構成されるベルト層と、前記トレッド部において前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、タイヤ赤道に対して傾斜した傾斜界面によって区分された、装着内側に配される内側ゴムと、前記内側ゴムを構成するゴム硬度の異なるゴムで構成され、装着外側に配される外側ゴムとを有しており、
前記ベルト層と前記内側ゴム及び前記外側ゴムとの間であって前記傾斜界面のタイヤ径方向内側に、補強層が設けられており、
前記傾斜界面の接地面側の界面位置が、前記トレッドゴムに形成された主溝の一方の側壁面内に設定されており、
前記補強層のタイヤ幅方向端部は、前記主溝の他方の側壁面の溝底端のタイヤ径方向内側に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記補強層のタイヤ幅方向両端部は、前記傾斜界面の接地面側の界面位置及びベルト層側の界面位置よりもタイヤ幅方向外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記補強層は、タイヤ周方向に延びる有機繊維コードをトッピングゴムで被覆して構成されており、前記傾斜界面のタイヤ径方向内側に位置する領域以外でのエンド数(単位幅あたりのコード本数)タイヤ径方向内側に位置する領域でのエンド数(単位幅あたりのコード本数)よりも少ないことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着内側の内側ゴムと、この内側ゴムと剛性の異なる装着外側の外側ゴムとを有するトレッドゴムを備えた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーナリング時においては、タイヤ幅方向の車両外側に大きな負担がかかるので、タイヤ幅方向の車両外側のリブ又はブロックに対する負荷が大きくなり、タイヤ幅方向の車両外側の摩耗の進行が早くなるという問題があった。特に、車重が重く、かつ重心が高いミニバン、ワンボックス車にタイヤが装着された場合、大きな問題となっていた。
【0003】
かかる問題の解決手段として、トレッドゴムをタイヤの装着内側と外側とで剛性の異なるゴム材料の非対称配置とした空気入りタイヤが提案されている。例えば、下記特許文献1の空気入りタイヤは、トレッドゴムが、車両装着時のタイヤ外側に内側よりも高剛性のゴムが配されて構成されている。この空気入りタイヤによれば、コーナリング時に大きな負担がかかるタイヤ外側の剛性が高くなっているため、タイヤ外側の摩耗の進行が抑制される。
【0004】
しかしながら、このようにトレッドゴムが高剛性のゴムよりなる外側ゴムとこれより剛性の低い内側ゴムとを有する場合、外側ゴムと内側ゴムとの界面において、セパレーションが発生したり、剛性差による偏摩耗が生じたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−321237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、剛性の異なる内側ゴムと外側ゴムを有するトレッドゴムの耐久性及び耐偏摩耗性を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に設けられた複数枚のベルトプライにより構成されるベルト層と、前記トレッド部において前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、タイヤ赤道に対して傾斜した傾斜界面によって区分された、装着内側の内側ゴムと、前記内側ゴムと剛性の異なる装着外側の外側ゴムとを有しており、
前記ベルト層と前記内側ゴム及び前記外側ゴムとの間であって前記傾斜界面の内方域に、補強層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤのトレッドゴムは、傾斜界面によって区分された内側ゴムと外側ゴムとを有している。このとき、内側ゴムと外側ゴムは剛性が異なるため、傾斜界面においてセパレーションが発生したり、剛性差による偏摩耗が生じたりするおそれがある。本発明の空気入りタイヤは、ベルト層と内側ゴム及び外側ゴムとの間であって傾斜界面の内方域に補強層が設けられているため、傾斜界面の動きを抑制して、傾斜界面でのセパレーションを防止でき、かつ剛性差による偏摩耗を低減できる。その結果、剛性の異なる内側ゴムと外側ゴムを有するトレッドゴムの耐久性及び耐偏摩耗性を向上できる。
【0009】
本発明にかかる空気入りタイヤにおいて、前記補強層のタイヤ幅方向両端部は、前記傾斜界面の接地面側の界面位置及びベルト層側の界面位置よりもタイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、補強層が傾斜界面の内方域全体に設けられるため、傾斜界面の動きを効果的に抑制して、傾斜界面でのセパレーションを防止でき、かつ剛性差による偏摩耗を低減できる。
【0011】
さらに、本発明にかかる空気入りタイヤにおいて、前記接地面側の界面位置が、前記トレッドゴムに形成された主溝の一方の側壁面内に設定されており、前記補強層のタイヤ幅方向端部は、前記主溝の他方の側壁面の溝底端の内方に位置することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、傾斜界面の接地面側の界面位置が接地面に露出しないため、傾斜界面でのセパレーションを防止でき、かつ剛性差による偏摩耗を低減できる。また、補強層のタイヤ幅方向端部が、主溝の側壁面の溝底端の内方に位置しているため、この構成による溝底での故障を予防し、トレッド陸部での剛性差が小さくなることから偏摩耗を低減できる。
【0013】
また、本発明にかかる空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、前記傾斜界面の内方域以外での強度が内方域での強度よりも低いことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、補強層の配置される部分と配置されない部分との剛性差を小さくできるので、接地形状が不均一となるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
図2図1の空気入りタイヤの部分拡大図
図3】他の実施形態に係るトレッド部のタイヤ子午線断面図
図4】他の実施形態に係るトレッド部のタイヤ子午線断面図
図5】他の実施形態に係るトレッド部のタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向RD外側に延びるサイドウォール部2と、両サイドウォール部2のタイヤ径方向RD外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0018】
また、このタイヤTは、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、一対のビード部同士1の間に設けられ、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカスプライは、タイヤ赤道CLに対して略直角に延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層4の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム4aが配置されている。
【0019】
さらに、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外側には、サイドウォールゴム6が設けられている。また、ビード部1におけるカーカス層4の外側には、リム装着時にリム(図示しない)と接するリムストリップゴム7が設けられている。
【0020】
トレッド部3におけるカーカス層4の外側には、カーカス層4を補強するためのベルト層4bと、ベルト補強層4cと、トレッドゴム5とが内側から外側に向けて順に設けられている。ベルト層4bは、複数枚のベルトプライにより構成されている。ベルト補強層4cは、タイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆して構成されている。ベルト補強層4cは、必要に応じて省略しても構わない。
【0021】
トレッドゴム5は、接地面を構成するキャップ部50と、キャップ部50のタイヤ径方向内側に設けられるベース部51とを有する。上記において接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面であり、そのタイヤ幅方向WDの最外位置が接地端Eとなる。なお、正規荷重及び正規内圧とは、JISD4202等に規定されている最大荷重(乗用車用タイヤの場合は設計常用荷重)及びこれに見合った空気圧とし、正規リムとは、原則としてJISD4202等に定められている標準リムとする。
【0022】
図1及び図2に示すように、キャップ部50は、タイヤ赤道CLに対して傾斜した傾斜界面Bによって区分された内側ゴム52と、内側ゴム52と剛性の異なる外側ゴム53とを有している。内側ゴム52は、装着内側(車両装着時に車両内側)WD1に配置され、外側ゴム53は、装着外側(車両装着時に車両外側)WD2に配置される。外側ゴム53は、内側ゴム52よりも高剛性のゴムが配されるのが好ましい。これにより、コーナリング時に大きな負担がかかる装着外側WD2の剛性が高くなるため、装着外側WD2の摩耗の進行が抑制され、また操縦安定性も良好に保持される。
【0023】
内側ゴム52及び外側ゴム53は、23℃における硬度が50〜70に設定されている。内側ゴム52と外側ゴム53の硬度差は、5〜10が好ましい。ここでの硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度を意味する。
【0024】
トレッドゴム5は、剛性の異なる内側ゴム52と外側ゴム53とを有しており、タイヤ赤道CLを基準として左右非対称な構造となっている。このような左右非対称な構造を有するタイヤは、装着方向指定型のタイヤであり、車両に装着する際には、装着外側WD2を車両の外側に向けるように指定されている。車両に対する装着方向の指定は、例えばタイヤのサイドウォール部に装着内側或いは装着外側となる旨の表示を付すことにより行われる。
【0025】
傾斜界面Bは、タイヤ赤道CLに対して傾斜しており、言い換えると、タイヤ子午線断面においてタイヤ径方向RD及びタイヤ幅方向WDに対して傾斜している。傾斜界面Bは、接地面側からベルト層4b側へ向かって装着内側WD1へ傾斜して延びているのが好ましい。
【0026】
内側ゴム52と外側ゴム53の傾斜界面Bのうち接地面側の界面位置P1は、タイヤ赤道部に配置されている。ここで、タイヤ赤道部は、タイヤ赤道CLを中心として、接地面の最大幅Wの15%の範囲内を意味する。界面位置P1は、タイヤ赤道部に配置されていればよいが、タイヤ赤道CLには最も強い遠心力が作用するため、高速耐久性の観点から界面位置P1をタイヤ赤道CLに配置するのは避けた方が好ましい。すなわち、高速耐久性を向上させるためには、界面位置P1をタイヤ赤道CLからタイヤ幅方向WDのいずれか一方に若干オフセットした方が好ましい。
【0027】
ベルト層4bと内側ゴム52及び外側ゴム53との間であって傾斜界面Bの内方域には、補強層9が設けられている。補強層9を設けることで、傾斜界面Bの動きを抑制して、傾斜界面Bでのセパレーションを防止でき、かつ剛性差による偏摩耗を低減できる。
【0028】
補強層9は、傾斜界面Bの全体を補強するのが好ましく、具体的には、補強層9のタイヤ幅方向両端部91,92は、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1及びベルト層4b側の界面位置P2よりもタイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。補強層9は、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1からベルト層4b側の界面位置P2までのタイヤ幅方向長さよりも幅広となっている。
【0029】
本実施形態では、図1に示すように、トレッドゴム5にはタイヤ周方向に延びる4本の主溝8を有する。このとき、補強層9のタイヤ幅方向両端部91,92は、4本の主溝8のうち傾斜界面Bに最も近い2本の主溝8のタイヤ幅方向内側の側壁面81の溝底端81aの内方に位置する。これにより、トレッド陸部での剛性差が小さくなることから偏摩耗を低減できる。
【0030】
補強層9は、傾斜界面Bの動きを抑制する構造のものであれば特に限定されないが、例えば、タイヤ周方向に延びる有機繊維コードをトッピングゴムで被覆して構成されている。有機繊維コードの引張モジュラスは、300〜400MPaであることが好ましい。補強層9はタイヤをタイヤ周方向に拘束するため、接地形状に影響を与えるが、有機繊維コードの引張モジュラスを300〜400MPaとすることで、接地形状が不均一となるのを防ぐことができる。なお、ここでの引張モジュラスは、JISK1017に準拠して測定される。
【0031】
補強層9のエンド数(単位幅あたりのコード本数)は、10mmあたり7〜13本であることが好ましい。補強層9のエンド数を10mmあたり7〜13本とすることで、補強層9によって接地形状が不均一となるのを防ぐことができる。
【0032】
また、補強層9は、内側ゴム52及び外側ゴム53よりも100%引張モジュラスが高いゴムのみにより構成されてもよい。補強層9を構成するゴムの100%引張モジュラスは、5〜30MPaであることが好ましい。補強層9を構成するゴムの100%引張モジュラスを5〜30MPaとすることで、補強層9によって接地形状が不均一となるのを防ぐことができる。また、補強層9を構成するゴムの100%引張モジュラスは、内側ゴム52を構成するゴムと外側ゴム53を構成するゴムのうち100%引張モジュラスが高いほうのゴム(本実施形態では外側ゴム53を構成するゴム)に対し、1.2〜5倍であることが好ましい。なお、100%引張モジュラスは、JISK6251に準拠して25℃で測定される。
【0033】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、補強層9のタイヤ幅方向両端部91,92が、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1及びベルト層4b側の界面位置P2よりもタイヤ幅方向外側に位置する例を示したが、図3に示すように、補強層9のタイヤ幅方向両端部91,92は、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1及びベルト層4b側の界面位置P2よりもタイヤ幅方向内側に位置していてもよい。また、補強層9のタイヤ幅方向両端部91,92のうち一方の端部が、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1及びベルト層4b側の界面位置P2よりもタイヤ幅方向内側に位置し、他方の端部が、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1及びベルト層4b側の界面位置P2よりもタイヤ幅方向外側に位置するようにしてもよい。
【0034】
(2)本発明において、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1が、トレッドゴム5に形成された主溝8の一方の側壁面内に設定されているのが好ましい。特に、図4に示すように、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1が、トレッドゴム5に形成された主溝8のタイヤ幅方向内側の側壁面81内に設定されているのが好ましい。この構成によれば、傾斜界面Bの接地面側の界面位置P1が接地面に露出しないため、傾斜界面Bでのセパレーションを防止でき、かつ剛性差による偏摩耗を低減できる。このとき、補強層9のタイヤ幅方向端部91は、主溝8の他方の側壁面82の溝底端82aの内方に位置することが好ましい。
【0035】
(3)前述の実施形態では、ベース部51のタイヤ径方向内側に補強層9を配置しているが、ベース部51とキャップ部52の間に補強層9を配置してもよい。この構成によれば、補強層9が傾斜界面に近づくため、補強層9によって傾斜界面Bの動きを効果的に抑制できる。
【0036】
(4)また、本発明において、補強層9は、傾斜界面Bの内方域以外での強度が内方域での強度よりも低いことが好ましい。例えば、図5に示すように、補強層9のうち傾斜界面Bの内方域以外に位置する部分9bのエンド数e2を、傾斜界面Bの内方域に位置する部分9aのエンド数e1よりも少なくする。エンド数e2は、エンド数e1の0.7〜0.9倍とするのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0038】
耐偏摩耗性
実車に対象タイヤを装着させてテストコースを走行後、タイヤの摩耗量を計測した。各ブロックの摩耗量の差が少ないほど耐偏摩耗性が良好である。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど耐偏摩耗性が良好であることを示す。評価結果を表1に示す。
【0039】
セパレーション耐性
対象タイヤを定格の内圧、荷重で接地させ、転舵させたときの各ブロックの変位量を計測した。横軸に接地幅方向位置、縦軸に変位量としたとき、線形であるほど界面でのセパレーションが起こりにくい。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほどセパレーション耐性が良好であることを示す。評価結果を表1に示す。
【0040】
比較例1
傾斜界面の内方域に補強層を設けないものを比較例1とした。
【0041】
実施例1
比較例1のタイヤに図3に示す補強層を設けたものを実施例1とした。
【0042】
実施例2
比較例1のタイヤに図2に示す補強層を設けたものを実施例2とした。
【0043】
実施例3
傾斜界面を図4に示す位置に配置し、傾斜界面の内方域に補強層を設けたものを実施例3とした。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1〜3の空気入りタイヤは、比較例1と比べて、耐偏摩耗性及びセパレーション耐性を向上できた。
【符号の説明】
【0046】
T 空気入りタイヤ
3 トレッド部
4b ベルト層
5 トレッドゴム
52 内側ゴム
53 外側ゴム
B 傾斜界面
図1
図2
図3
図4
図5