特許 6370250 弁装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6370250

(24)【登録日】2018年7月20日

(45)【発行日】2018年8月8日

(54)【発明の名称】弁装置

(51)【国際特許分類】

   F02M 37/00 20060101AFI20180730BHJP

   B60K 15/035 20060101ALI20180730BHJP

   F16K 31/22 20060101ALI20180730BHJP

【ＦＩ】

   F02M37/00 J

   B60K15/035 Z

   F16K31/22

   F02M37/00 301E

【請求項の数】6

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2015-60481(P2015-60481)

(22)【出願日】2015年3月24日

(65)【公開番号】特開2016-180348(P2016-180348A)

(43)【公開日】2016年10月13日

【審査請求日】2017年1月12日

(73)【特許権者】

【識別番号】000135209

【氏名又は名称】株式会社ニフコ

(74)【代理人】

【識別番号】100098202

【弁理士】

【氏名又は名称】中村 信彦

(74)【代理人】

【識別番号】100077241

【弁理士】

【氏名又は名称】桑原 稔

(72)【発明者】

【氏名】和田 敏男

【審査官】 木村 麻乃

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００８−２４０７１１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００４−３００９５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−１４７９６０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−２１９６２１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１１−１７８３７９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ０２Ｍ ３７／００

Ｂ６０Ｋ １５／０３５

Ｆ１６Ｋ ３１／２２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

フロート弁と、
上部に前記フロート弁に対する弁口を有して前記フロート弁を収納する内側ケースと、
上部開放端から前記内側ケースを受容すると共に底部を備えた外側ケースと、
タンク側に対する取付部とを備え、燃料タンクの通気流路を構成する弁装置であって、
前記内側ケースの側部と前記外側ケースの側部との間には前記通気流路の一部となる流路が形成されると共に、
前記内側ケースの側部には貫通穴が設けられており、さらに、この貫通穴の直上にこの貫通穴の庇として機能し得る外側ケースに対する係合爪を備えてなる、弁装置。

【請求項2】

前記外側ケースの前記上部開放端を、前記内側ケースの前記貫通穴よりも上方に位置させてなる、請求項１に記載の弁装置。

【請求項3】

前記外側ケースに前記内側ケースの前記係合爪に対する係合穴を備えさせてなる、請求項１又は請求項２に記載の弁装置。

【請求項4】

前記内側ケースの側部に前記取付部の構成部材に設けた係合片を弾性変形により受容し受容終了位置での弾性復帰によりこれに係合する被係合部を備えさせてなる、請求項３に記載の弁装置。

【請求項5】

前記被係合部を、前記外側ケースの前記上部開放端よりも下方に位置させてなる、請求項４に記載の弁装置。

【請求項6】

前記貫通穴が複数備えられていると共に、前記内側ケースの周方向において隣り合う前記貫通穴間に前記被係合部が位置されるようにしてなる、請求項４又は請求項５に記載の弁装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられて、開弁状態において燃料タンク内外を連通させるように機能される弁装置の改良に関する。

【背景技術】

【0002】

燃料タンクの通気流路を構成する弁装置として、下部に液体流入口、側部に蒸気流入口を備えると共に、蒸気流入口の包囲部を備え、この包囲部によって燃料液の蒸気流入口への侵入を阻止するようにしてものがある（特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平７−２６９４３５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の燃料タンクの通気流路を構成する弁装置において、液体状態の燃料が弁装置を通じて燃料タンク外にリークする事態をより確実に抑止できるようにする点にある。

【課題を解決するための手段】

【0005】

前記課題を達成するために、この発明にあっては、弁装置を、フロート弁と、
上部に前記フロート弁に対する弁口を有して前記フロート弁を収納する内側ケースと、
上部開放端から前記内側ケースを受容すると共に底部を備えた外側ケースと、
タンク側に対する取付部とを備え、燃料タンクの通気流路を構成する弁装置であって、
前記内側ケースの側部と前記外側ケースの側部との間には前記通気流路の一部となる流路が形成されると共に、
前記内側ケースの側部には貫通穴が設けられており、さらに、この貫通穴の直上にこの貫通穴の庇として機能し得る外側ケースに対する係合爪を備えてなる、ものとした。

【0006】

かかる構成によれば、フロート弁が下降位置にあるとき、タンク内外は、前記外側ケースの上部開放端、前記流路、前記内側ケースの貫通穴、前記弁口を通じて連絡可能とされる。

【0007】

ここで、前記外側ケースの前記上部開放端を、前記内側ケースの前記貫通穴よりも上方に位置させるようにしておけば、かかる上部開放端から弁口に至る前記通気流路の一部は上下に蛇行したものとなり、前記フロート弁の着座前の状態におけるタンク外への液体状態の燃料の流出は可及的に防止される。

【0008】

また、前記貫通穴の直上に前記係合爪が形成されており、かかる係合爪は貫通穴の庇として機能し得ることから、前記フロート弁の着座前に前記上部開放端からの前記流路内への液体状態の燃料の侵入が生じてもかかる燃料の前記貫通穴への侵入を可及的に阻止することができる。

【0009】

前記外側ケースに前記内側ケースの前記係合爪に対する係合穴を備えさせおくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。また、前記内側ケースの側部に前記取付部の構成部材に設けた係合片を弾性変形により受容し受容終了位置での弾性復帰によりこれに係合する被係合部を備えさせておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。

【0010】

また、前記被係合部を、前記外側ケースの前記上部開放端よりも下方に位置させておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。このようにした場合、前記取付部の構成部材の係合片に係合される内側ケースの被係合部は外側ケースにより覆われることから、かかる係合を解く向きの被係合部の弾性変形は抑止され、前記構成部材と内側ケースとの係合状態は安定的に確保される。

【0011】

また、前記貫通穴を複数備えさせると共に、前記内側ケースの周方向において隣り合う前記貫通穴間に前記被係合部が位置されるようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。このようにした場合、前記貫通穴は弁装置の可及的上方に形成させることができ、燃料タンクの高喫水化に都合良く対応することが可能となる。

【発明の効果】

【0012】

この発明にかかる弁装置にあっては、液体状態の燃料が弁装置を通じて燃料タンク外にリークする事態をより確実に抑止することができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】図１は、この発明の一実施の形態にかかる弁装置（第一例）の斜視図である。

【図2】図２は、前記第一例の弁装置を構成する内側ケースの斜視図である。

【図3】図３は、前記第一例の弁装置の平面図である。

【図4】図４は、図３におけるＡ−Ａ線位置での断面図であり、フロート弁が下降位置にある開弁状態を示している。

【図5】図５は、図３におけるＢ−Ｂ線位置での断面図であり、フロート弁が下降位置にある開弁状態を示している。

【図6】図６は、この発明の一実施の形態にかかる弁装置（第二例）の側面図である。

【図7】図７は、前記第二例の弁装置の平面図である。

【図8】図８、図７におけるＣ−Ｃ線位置での断面図であり、フロート弁が下降位置にある開弁状態を示している。

【図9】図９は、前記第二例の弁装置の分解斜視図である。

【図10】図１０は、前記第二例の弁装置を構成する取付部の構成部材と内側ケースとを分離した状態で示した斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、図１〜図１０に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弁装置は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられて、かかる燃料タンクの通気流路１の一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンク内外を連通させるように機能されるものである。

【0015】

（第一例）
図１〜図５に示される弁装置（第一例）は、燃料タンク内に設けた図示しないブラケットを利用して、燃料タンクに備えられるようになっている。

【0016】

かかる弁装置は、フロート弁２と、これを収納する内側ケース３と、この内側ケース３を収納する外側ケース４と、タンク側に対する取付部５とを備えている。この例では、取付部５は内側ケース３に一体に備えられている。かかるフロート弁２、内側ケース３、外側ケース４は、典型的には、プラスチック製とされる。

【0017】

前記内側ケース３は、天部３ａを有すると共にこの天部３ａの中央に弁口３ｂとなる円形の貫通穴３ｃを有し、下端を開放させた実質的に円筒状を呈している。前記内側ケース３は、管一端３ｅを前記天部３ａの上面側においてこの天部３ａの中央に一体に連接させて横向きに延びると共に、管他端３ｆを前記通気流路１の一部をなす図示しない管体の一端への連結部とした管状をなす排気ポート３ｄを備えている。この排気ポート３ｄの管一端３ｅは前記弁口３ｂに連通しており、これにより内側ケース３は排気ポート３ｄを介して、タンク外に連通されるようになっている。天部３ａの上面は、周回壁部３ｇによって囲繞されている。排気ポート３ｄの管一端３ｅ側はこの周回壁部３ｇの内側に位置され、管他端３ｆ側はこの周回壁部３ｇの外側に位置されている。前記取付部５は、周回壁部３ｇの外面より横方向に突き出す耳板状を呈している。

【0018】

かかる内側ケース３の側部には貫通穴３ｈが設けられている。また、かかる貫通穴３ｈの直上には前記外側ケース４に対する係合爪３ｉが備えられている。

【0019】

図示の例では、前記貫通穴３ｈは、前記天部３ａと内側ケース３の下端との間に位置される前記側部の上下方向中程の位置よりも上方で、かつ、前記天部３ａよりも下方となる箇所に形成されている。図示の例では、かかる貫通穴３ｈは内側ケース３の筒軸を巡る向きにおいて９０度間隔で４箇所に前記側部に形成されている。各貫通穴３ｈはそれぞれ、上辺及び下辺を横向きに配し、左辺及び右辺を縦向きに配した四角形の窓状を呈している。

【0020】

また、図示の例では、前記係合爪３ｉは、４箇所の貫通穴３ｈの直上にそれぞれ形成されている。図示の例では、かかる係合爪３ｉは、内側ケース３の側部の外面から側方に突き出す台状突出部３ｍの突き出し端面からさらに側方に庇状に突き出した態様となっている。台状突出部３ｍは、横向きの上面及び下面、縦向きの左右側面、および、縦向きの突き出し端面を備えている。台状突出部３ｍの下面は前記天部３ａと略等しいレベルにある。係合爪３ｉは、前記台状突出部３ｍの左右方向に亘って形成されると共に、台状突出部３ｍの上面と同面上に位置される上面３ｊを有する。係合爪３ｉの下面３ｋと台状突出部３ｍの下面との間には間隔が形成され、この間隔内に位置される台状突出部３ｍの突き出し端面は内側ケース３と外側ケース４とを組み合わせた状態において（図５）外側ケース４の側部の内面に対する当接面３ｎとなっている。係合爪３ｉの下面３ｋは、係合爪３ｉの先端に向かうに連れて係合爪３ｉの上下方向の厚みを漸減させる傾斜面となっている。

【0021】

一方、前記外側ケース４は、底部４ａを有し、上端を開放させた実質的に円筒状を呈している。底部４ａの中央には、貫通穴４ｂが形成されている。外側ケース４の上端には、外側ケース４の筒軸を巡る向きにおいて９０度間隔で４箇所に上方に突き出す突片が４ｃ形成されており、各突片４ｃには前記係合爪３ｉに対する係合穴４ｄが形成されている。隣り合う突片４ｃ間は前記筒軸に直交する上部開放端４ｅとなっている。

【0022】

外側ケース４の内径は内側ケース３の外径よりも大きくなっている。外側ケース４と内側ケース３とは、内側ケース３内にフロート弁２を納めた状態から、外側ケース４の上部開放端４ｅより内側ケース３をその下端を先にしてこの下端が外側ケース４の底部に突き当たる位置まで入れ込むことで組み合わされるようになっている。

【0023】

具体的には、図示の例では、前記のように外側ケース４内に内側ケース３を入れ込みきる直前において、前記係合爪３ｉの傾斜面となっている下面３ｋに前記突片４ｃが突き当たり、この突片４ｃが外向きに弾性変形されて内側ケース３のさらなる入れ込みが許容されると共に、入れ込み終了位置においては各係合爪３ｉが対応する係合穴４ｄに整合して前記突片４ｃの弾性復帰がなされ、各係合爪３ｉの対応する係合穴４ｄへの係合がなされるようになっている。これにより、前記外側ケース４と前記内側ケース３との前記組み合わせ状態が維持されるようになっている。

【0024】

そして、このように組み合わされた外側ケース４の側部と内側ケース３の側部との間には全周に亘って前記通気流路１の一部となる流路１ａが形成されるようになっている。

【0025】

フロート弁２は、フロート主体２ａと、このフロート主体２ａの上部に取り付けられた弁体２ｃとを備えてなる。

【0026】

図示の例では、フロート主体２ａは、上端を実質的に閉塞し、下端を開放させた円筒状を呈している。弁体２ｃは、ゴム又はゴム状弾性を備えたプラスチックから構成されると共に、円板状を呈しており、その下面の中央から下方に突き出す短寸筒状部２ｄをフロート主体２ａの上端中央に形成された貫通穴２ｂにはめ込むことでフロート主体２ａに備え付けられている。フロート主体２ａ内には、バネ上端をフロート主体２ａの上端内面に当接させ、かつ、バネ下端を外側ケース４の底部４ａに当接させて、フロート弁２に対し上方への一定の付勢力を常時作用させる圧縮コイルバネ６が納められている。

【0027】

フロート弁２の上下寸法は内側ケース３の天部３ａと外側ケース４の底部４ａとの間の距離よりも小さく、また、フロート弁２の外径は内側ケース３の内径より小さくなっている。

【0028】

フロート弁２がその下端を前記外側ケース４の底部４ａに接しさせた下降位置にあるとき、タンク内外は、前記外側ケース４の上部開放端４ｅ、前記流路１ａ、内側ケース３の貫通穴３ｈ、弁口３ｂ、排気ポート３ｄを通じて連絡可能とされる。ここで、この実施の形態にあっては、前記外側ケース４の前記上部開放端４ｅが、前記内側ケース３の前記貫通穴３ｈよりも上方に位置されるようにしてある。これにより、前記上部開放端４ｅ、前記流路１ａ、内側ケース３の貫通穴３ｈ、前記弁口３ｂから構成される前記通気流路１の一部は上下に蛇行したものとなり、前記弁口３ｂへのフロート弁２の着座前の状態におけるタンク外への燃料の流出は可及的に防止される。

【0029】

特に、この実施の形態にあっては、前記貫通穴３ｈの直上に前記係合爪３ｉが形成されており、かかる係合爪３ｉは貫通穴３ｈの庇として機能し得ることから、前記弁口３ｂへのフロート弁２の着座前に前記上部開放端４ｅからの前記流路１ａ内への液体状態の燃料の侵入が生じてもかかる燃料の前記貫通穴３ｈへの侵入を可及的に阻止することができる。

【0030】

前記外側ケース４の底部４ａの貫通穴３ｈを通じて内側ケース３内に液体状態の燃料が流入されるとフロート弁２はその上部に備えられた弁体２ｃを前記弁口３ｂを巡る内側ケース３の天部３ａの内面を弁座としてこれに着座させる位置まで上昇される。これによりタンク内外の前記連絡が遮断される。燃料が内側ケース３内から流出されるとフロート弁２は再び下降しタンク内外は弁装置を介して再び連絡可能とされる。

【0031】

（第二例）
図６〜図１０に示される弁装置（第二例）は、燃料タンクＴの上部に取り付けられるようになっている。この弁装置は、燃料タンクＴの上部に形成された取付用穴Ｔａを塞ぐ大きさのタンク側に対する取付部の構成部材４０と、この取付用穴Ｔａを通じて燃料タンクＴ内に挿入可能な外側ケース３１及び内側ケース３２とを備えており、かかる外側ケース３１及び内側ケース３２を燃料タンクＴ内に挿入した状態で燃料タンクＴの上部の外面に取付部の構成部材４０の外周部を溶着などによって固着させて、燃料タンクＴに備えられるようになっている（図８）。

【0032】

かかる弁装置は、フロート弁２と、これを収納する内側ケース３２と、この内側ケース３２を収納する外側ケース３１と、タンク側に対する取付部の構成部材４０とを備えている。かかるフロート弁２、内側ケース３２、外側ケース３１、構成部材４０は、典型的には、プラスチック製とされる。

【0033】

前記外側ケース３１と、前記内側ケース３２とは、両者の間に前記通気流路１の一部となる流路１ａを形成を形成して組み合わされるようになっている。

【0034】

外側ケース３１は、底部３１ａを有すると共に、この底部３１ａの中央に円形の貫通穴３１ｂを備え、上端を開放させた実質的に円筒状を呈している。外側ケース３１の上端部には、この外側ケース３１の筒軸を巡る向きに間隔を開けて、複数の凹欠部３１ｃ、３１ｃ…が形成されており、外側ケース３１の上端部は王冠状となっている。外側ケース３１の隣り合う凹欠部３１ｃ、３１ｃ間に残された突片状部３１ｄには、係合穴３１ｅが形成されている。

【0035】

一方、内側ケース３２は、天部３２ａを有すると共に、この天部３２ａの中央に円形の第一貫通穴３２ｂを有し、下端を開放させた実質的に円筒状を呈している。内側ケース３２の側部には、前記構成部材４０の係合片４１ｄに対する被係合部３２ｃと、貫通穴３２ｆと、前記外側ケース３１の係合穴３１ｅに対する係合爪３２ｇとが形成されている。

【0036】

被係合部３２ｃは、図示の例では、内側ケース３２の筒軸を巡る向きにおいて９０度間隔で四箇所設けられている。各被係合部３２ｃはそれぞれ、下端を内側ケース３２の外面に一体に連接させると共に、この外面との間に隙間を開けて上方に延びる一対の腕部３２ｄ、３２ｄと、この一対の腕部３２ｄ、３２ｄの上端間に亘る架橋部３２ｅとを備えてなる。

【0037】

貫通穴３２ｆは、図示の例では、内側ケース３２の内外を貫通する方形の穴であって、隣り合う前記被係合部３２ｃ、３２ｃの間にそれぞれ形成されている。

【0038】

係合爪３２ｇは、図示の例では、内側ケース３２の外面から突出しており、前記貫通穴３２ｆの直上にそれぞれ設けられている。

【0039】

一方、前記構成部材４０は、図示の例では、上端を閉塞させると共に、下端を開放させた短寸筒状部４１と、この短寸筒状部４１の下端から外側に張り出すフランジ部４２とを備えている。

【0040】

短寸筒状部４１は前記上端、すなわち、天部４１ａを有すると共に、この天部４１ａの中央に円形の第二貫通穴４１ｂを有している。かかる第二貫通穴４１ｂは、管一端を外側ケース３１の天部４１ｂの上面側においてこの天部４１ｂの中央に一体に連接させて横向きに延びると共に、管他端を前記通気流路１の一部をなす管体Ｐの一端への連結部とした管状をなす排気ポート４１ｃを介して、タンク外に連通されるようになっている。

【0041】

構成部材４０の短寸筒状部４１の下端には、上端をこの下端に一体に連接させて下方に突き出す弾性片４１ｅと、この弾性片４１ｅの下端外側に形成された突起４１ｆとからなる係合片４１ｄが形成されている。図示の例では、係合片４１ｄは、前記被係合部３２ｃに対応して、構成部材４０の短寸筒状部４１の筒軸を巡る向きにおいて９０度間隔で四箇所に設けられている。

【0042】

前記外側ケース３１と内側ケース３２とは、外側ケース３１の底部３１ａに内側ケース３２の下端が突き当たる位置まで、内側ケース３２の下端を先にして外側ケース３１の上端側より外側ケース３１内に内側ケース３２を挿入することにより組み合わされるようになっている。かかる挿入の過程において各前記突片状部３１ｄはそれぞれ、隣り合う被係合部３２ｃ、３２ｃ間に位置される貫通穴３２ｆの直上に位置される対応する係合爪３２ｇに当たって外向きに弾性変形すると共に、内側ケース３２を挿入しきった位置で弾性復帰して前記係合爪３２ｇを窓穴３１ｅに受入しこれに係合するようになっている。

【0043】

外側ケース３１の上部開放端３１ｆ（前記突片状部３１ｄの基部のレベル）は、内側ケース３２の上端よりも下方で、かつ、前記貫通穴３２ｆより上方に位置される。

【0044】

また、前記内側ケース３２と構成部材４０とは、前記第一貫通穴３２ｂが形成された前記内側ケース３２を構成する内側ケース３２の天部３２ａと、前記第二貫通穴４１ｂが形成された前記構成部材４０の天部４１ａとの間で、前記第一貫通穴３２ｂにはめ込まれて内部を前記第二貫通穴４１ｂに連通させる筒状シール体７の一部を挟持させるようにして、組み合わされるようになっている。

【0045】

前記筒状シール体７は、ゴム又はゴム状弾性を備えたプラスチックから構成される。図示の例では、かかる筒状シール体７は、筒上端に周回状をなす外鍔部７ａを有している。この外鍔部７ａの上面には、周回突条７ｂが形成されている。外鍔部７ａの外径は前記第一貫通穴３２ｂの穴径よりも大きい。筒状シール体７の外周部であって、その上下方向略中程の位置には、周回隆起部７ｃが形成されている。この周回隆起部７ｃと前記外鍔部７ａとの間には前記内側ケース３２を構成する内側ケース３２の天部３２ａの厚さ相当分の間隔が形成されている。周回隆起部７ｃと筒状シール体７の筒下端との間には、この筒下端に近づくに連れて筒状シール体７の外径を小さくする周回傾斜面７ｄが形成されている。

【0046】

図示の例では、筒状シール体７は、その筒下端側を先にして上方から第一貫通穴３２ｂにはめ込まれる。はめ込みきられた位置で、筒状シール体７の外鍔部７ａは内側ケース３２の天部３２ａの外面に接し、前記周回隆起部７ｃはかかる内側ケース３２の天部３２ａの内面に接する。

【0047】

このように第一貫通穴３２ｂに筒状シール体７をはめ込んだ状態から、内側ケース３２の各被係合部３２ｃの内側にそれぞれ、構成部材４０の係合片４１ｄが入り込むように、構成部材４０の短寸筒状部４１内に下方から内側ケース３２の上端側を入れ込むと、筒状シール体７の上端の直上に第二貫通穴４１ｂが位置されると共に、内側ケース３２の天部３２ａの外面と構成部材４０の天部４１ａの内面であって前記第二貫通穴４１ｂを巡る箇所によって筒状シール体７の外鍔部７ａが挟持される。

【0048】

この実施の形態にあっては、かかる筒状シール体７の一部の挟持状態、つまり、前記内側ケース３２と構成部材４０との組み合わせ状態を、前記被係合部３２ｃに前記係合片４１ｄを係合させることで維持するようにしている。前記のように構成部材４０内に内側ケース３２を入れ込むと、前記突起４１ｆが被係合部３２ｃの架橋部３２ｅに当たって弾性片４１ｅ及び腕部３２ｄは弾性変形してこの入れ込みが許容され、そして、この入れ込みが終了すると架橋部３２ｅ下に突起４１ｆが入り込むと共に弾性片４１ｅ及び腕部３２ｄは弾性復帰して架橋部３２ｅに突起４１ｆが引っかかる。これにより、前記内側ケース３２と構成部材４０との組み合わせ状態が維持されるようになっている（図８）。

【0049】

フロート弁２は、フロート主体２０と、このフロート主体２０の上部に傾動可能に備えられた弁体２１とを備えてなる。

【0050】

図示の例では、フロート主体２０は、上端を実質的に閉塞し、内部に芯部２０ａを巡る環状空間２０ｂを有し、この環状空間２０ｂを下端側で開放させた円筒状を呈している。環状空間２０ｂには、バネ上端をこの環状空間２０ｂの内奥部に当接させ、かつ、バネ下端を前記外側ケース３１の底部３１ａに当接させて、フロート弁２に対し上方への一定の付勢力を常時作用させる圧縮コイルバネ６が納められるようになっている。

【0051】

弁体２１は、以下の（１）〜（４）の各部を有している。
（１）前記フロート弁２の上昇時に前記第一貫通穴３ｂを閉塞するシール部２１ａ
（２）前記フロート主体２０の一部に対して引っかかって前記傾動の中心となる引っかかり部２１ｂ
（３）前記シール部２１ａの裏側において突出する当接部２１ｃ
（４）前記傾動時に前記筒状シール体７の下端に当接する支点部２１ｄ

【0052】

前記当接部２１ｃは筒状をなしている。そして、この実施の形態にかかる弁装置にあっては、前記フロート主体２０の上部に形成された軸状をなす被当接部２０ｃを当接部２１ｃ内に納めて、弁体２１はシール部２１ａを水平に位置させた状態で被当接部２０ｃ上に支持されるようになっている。それと共に、前記被当接部２０ｃへの前記傾動による当接部２１ｃの当接によって、前記弁体２１の水平方向への移動を生じさせさせるようにしている。

【0053】

かかる弁装置にあっては、内側ケース３２の天部３２ａの内面から下方に突き出す前記筒状シール体７の下端が前記フロート弁２の弁座７ｅとして機能する内側ケース３２の弁口となっている。

【0054】

フロート弁２がその下端を前記内側ケース３２の底部に接しさせた下降位置にあるとき、タンク内外は、前記外側ケース３１の上部開放端３１ｆ、前記流路１ａ、内側ケース３２の貫通穴３２ｆ、筒状シール体７、第二貫通穴４１ｂ、排気ポート４１ｃを通じて連絡可能とされる。前記上部開放端３１ｆは内側ケース３２の貫通穴３２ｆより上方に位置され、内側ケース３２の貫通穴３２ｆは内側ケース３２の側部に形成されることから、かかる上部開放端３１ｆ、流路１ａ、貫通穴３２ｆにより構成される通気流路１の一部は上下に蛇行したものとなり、前記弁座７ｅへのフロート弁２の着座前の状態におけるタンク外への液体状態の燃料の流出は可及的に防止される。

【0055】

特に、この実施の形態にあっては、前記貫通穴３２ｆの直上に前記係合爪３２ｇが形成されており、かかる係合爪３２ｇは貫通穴３２ｆの庇として機能し得ることから、前記弁口へのフロート弁２の着座前に前記上部開放端３１ｆからの前記流路１ａ内への液体状態の燃料の侵入が生じてもかかる燃料の前記貫通穴３２ｆへの侵入を可及的に阻止することができる。

【0056】

内側ケース３２内に液体状態の燃料が前記外側ケース３１の底部３１ａの貫通穴３１ｂを通じて流入されるとこの内側ケース３２内に臨んだ前記筒状シール体７の筒下端を弁座７ｅとして、フロート弁２はその上部に備えられた弁体２１をこの弁座７ｅに着座させる位置まで上昇される。これによりタンク内外の前記連絡が遮断される。燃料が内側ケース３２内から流出されるとフロート弁２は再び下降しタンク内外は弁装置を介して再び連絡可能とされる。

【0057】

この実施の形態にかかる弁装置にあっては、前記筒状シール体７によって、構成部材４０の天部４１ａと筒状シール体７との間、及び、筒状シール体７と内側ケース３２を構成する内側ケース３２の天部３２ａとの間を、気密状態にシールすることが可能となる。図示の例では、前記挟持により、筒状シール体７の外鍔部７ａが弾性変形された状態で構成部材４０の天部４１ａの第二貫通穴４１ｂの穴縁部及び内側ケース３２を構成する内側ケース３２の天部３２ａの第一貫通穴３２ｂの穴縁部に圧接され、弁装置とタンク外との間の通気は筒状シール体７の内部を通じてのみなされるようになっている。また、この実施の形態にかかる弁装置にあっては、前記筒状シール体７は、前記フロート弁２の弁座７ｅを兼ねるものともなっている。これにより、この実施の形態にかかる弁装置は、シール機能を備えたパーツを一つの前記筒状シール体７によって構成することができ、この種の弁装置の構成部品点数の最小化、さらには低廉化に資するものとなっている。

【0058】

内側ケース３２内への燃料の流入時にはこれにより上昇されるフロート弁２の弁体２１のシール部２１ａによって筒状シール体７の下端、つまり、弁座７ｅは閉塞されタンク外への燃料の流入は阻止される。内側ケース３２内から燃料が流出されるとフロート弁２は下降可能となるところ、フロート主体２０と弁体２１とは前記引っかかり部２１ｂ側で連係され支点部２１ｄ側では連係されていないことから、弁体２１は支点部２１ｄを筒状シール体７の下端に当接させてこの当接箇所を支点として引っかかり部２１ｂ側を傾斜下とするように傾動する。それと共に、弁体２１は、前記傾動により当接部２１ｃを被当接部２０ｃに接しさせるところ、被当接部２０ｃの水平方向の位置は変わらないことから、前記傾動をしながら水平方向に移動される。これにより、タンク内が高圧である場合であっても、また、前記筒状シール体７とシール部２１ａとが密着し易い材料からなる場合であっても、前記筒状シール体７とシール部２１ａとの離弁、つまり、弁装置のスムースな開弁が実現される。

【0059】

また、この第二例にあっては、前記被係合部３２ｃは、前記外側ケース３１の前記上部開放端３１ｆよりも下方に位置されている。これにより、前記取付部の構成部材４０の係合片４１ｄに係合される内側ケース３２の被係合部３２ｃは外側ケース３１により覆われることから、かかる係合を解く向きの被係合部３２ｃの弾性変形は抑止され、前記構成部材４０と内側ケース３２との係合状態は安定的に確保される。

【0060】

また、この第二例にあっては、前記貫通穴３２ｆが複数備えられていると共に、前記内側ケース３２の周方向（その筒軸を巡る向き）において隣り合う前記貫通穴３２ｆ間に前記被係合部３２ｃが位置されるようにしてある。これにより、前記貫通穴３２ｆは弁装置の可及的上方に形成させることができ、燃料タンクの高喫水化に都合良く対応することが可能となる。

【0061】

なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。

【符号の説明】

【0062】

１ 通気流路
１ａ 流路
２ フロート弁
３ 内側ケース
３ｂ 弁口
３ｈ 貫通穴
３ｉ 係合爪
４ 外側ケース
４ａ 底部
５ 取付部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】