(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下面を有するヘッド本体と、前記下面に対向する上面を有しかつ所定ストローク内で前記ヘッド本体に上下動可能に支持されて、弾性部材によってストローク下端に付勢されるツールホルダと、を備えた部品実装用ヘッドに装着されるロック装置であって、
前記ヘッド本体の下面と前記ツールホルダの上面との間に介挿されて前記ツールホルダの上方への変位を規制するスペーサと、
前記部品実装用ヘッドに対して前記スペーサを着脱可能に固定する第1固定部材と、を備えることを特徴とする部品実装用ヘッドのバフィング機能ロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ヘッド本体にエアシリンダが組み込まれた特許文献1のような構成では、ヘッドの構造が複雑になり、また、エアシリンダの空気圧を制御するための制御系統を整備する必要もありコスト高になる。また、既存の部品実装装置については、ハードおよびソフトの双方において大幅な改造が必要となるため適用が容易ではない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、部品実装用ヘッドをバフィング機能有りの状態とバフィング機能無しの状態とに容易に切り替えることができる部品実装用ヘッドのバフィング機能ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、下面を有するヘッド本体と、前記下面に対向する上面を有しかつ所定ストローク内で前記ヘッド本体に上下動可能に支持されて、弾性部材によってストローク下端に付勢されるツールホルダと、を備えた部品実装用ヘッドに装着されるロック装置であって、前記ヘッド本体の下面と前記ツールホルダの上面との間に介挿されて前記ツールホルダの上方への変位を規制するスペーサと、前記部品実装用ヘッドに対して前記スペーサを着脱可能に固定する第1固定部材と、を備えるものである。
【0009】
このバフィング機能ロック装置によれば、第1固定部材によってスペーサを部品実装用ヘッドに固定すれば、当該スペーサによってツールホルダの上方への変位が規制(ロック)される。これにより、バフィング機能がロックされる。一方、ヘッド本体の下面とツールホルダの上面との間からスペーサを取り外せば、元通りツールホルダの上方への変位が許容され、これにより、バフィング機能が復活する。従って、部品実装用ヘッドに着脱することで、部品実装用ヘッドをバフィング機能有りの状態とバフィング機能無しの状態とに容易に切り替えることが可能となる。
【0010】
上記のバフィング機能ロック装置において、前記スペーサは、その上下方向長さを変更可能な長さ可変構造を有しているのが好適である。
【0011】
この構成によれば、スペーサをヘッド本体の下面とツールホルダの上面とにそれぞれ確実に当接させた状態で当該上面と下面との間にスペーサを介挿することが可能となる。そのため、ツールホルダの上方への変位をより確実に規制することが可能となる。
【0012】
上記長さ可変構造の具体例として、例えば、前記スペーサは、上下方向に並びかつ水平面に対して傾斜する当接面を介して互いにスライド可能に当接する第1スペーサ部材および第2スペーサ部材と、前記ヘッド本体の下面と前記ツールホルダの上面との間に当該スペーサを突っ張らせた状態で前記両スペーサ部材を互いに固定する第2固定部材とを含むものである。
【0013】
この構成によれば、第1スペーサ部材と第2スペーサ部材とを相対的に水平方向にずらして、これらスペーサ部材を第2固定部材により相互に固定するだけで、ヘッド本体の下面と前記ツールホルダの上面との間でスペーサの上下方向長さを変更することが可能となる。
【0014】
なお、上記のバフィング機能ロック装置において、前記ツールホルダが、前記ストローク下端で前記ヘッド本体と係合することにより、当該ツールホルダの下方への変位を規制するピン部材を有するものである場合には、当該バフィング機能ロック装置は、前記ストローク下端近傍であって当該ストローク下端よりも上方の位置で前記ツールホルダに下側から係合することにより、当該位置から下方への前記ツールホルダの変位を規制するストッパをさらに含むものであるのが好適である。
【0015】
この構成によれば、ヘッド本体の下面とツールホルダの上面との間に当該スペーサを突っ張らせた状態で介挿されることによってピン部材に外力が働き、これによりピン部材が破損するといったトラブルの発生を防止することが可能となる。
【0016】
なお、上記のバフィング機能ロック装置において、前記部品実装用ヘッドが、前記ヘッド本体の下面に着脱可能に固定されて部品撮像時に部品の背景を形成する背景形成部材を含むものである場合には、前記第1固定部材は、前記背景形成部材の代わりに、前記ヘッド本体の下面に前記スペーサを固定するものであるのが好適である。
【0017】
この構成によれば、背景形成部材が固定されるねじ孔等の取付部をそのまま用いてスペーサを部品実装用ヘッドに固定することが可能となる。そのため、既存の部品実装用ヘッドについても当該ロック装置の取り付けが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のロック機構によれば、バフィング機能付きの部品実装用ヘッドに着脱することで、当該部品実装用ヘッドをバフィング機能有りの状態とバフィング機能無しの状態とに容易に切り替えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0021】
本発明のロック装置について説明する前に、まず、このロック装置が適用される部品実装用ヘッドについて
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、部品実装用ヘッドを示す断面図であり、
図2は、部品実装用ヘッドの先端部分(下端部分)を示す分解斜視図である。
【0022】
部品実装用ヘッド1Aは、プリント配線板(PWB;Printed Wiring Board)などの基板に部品を自動実装する部品実装装置の構成要素の一つであり、部品を吸着して基板上に搬送するものである。部品実装用ヘッド1A(以下、ヘッド1Aと略す)は、上下方向に延びる軸状の部材であり、水平方向に移動するヘッドユニットHuに回転および昇降(上下動)可能に支持されており、例えばサーボモータなどを駆動源とする回転駆動機構および昇降駆動機構によって駆動される。
【0023】
図1および
図2に示すように、ヘッド1Aは、平坦な下面2aを有しかつヘッドユニットHuに回転および昇降可能に支持されたヘッド本体2と、このヘッド本体2の下端部に支持されたツールホルダ3と、このツールホルダ3に着脱可能に保持されたノズル5Aとを備えている。
【0024】
ツールホルダ3は、上下方向に延びる軸部31と、この軸部31の下端に設けられてヘッド本体2の前記下面2aに対向する平坦な上面32aを有するホルダ本体部32とを備えている。ホルダ本体部32は、前記上面32aを形成する水平方向に細長い略直方体形状のベース33と、このベース33に設けられたチャック34とを含む。
【0025】
ツールホルダ3は、ヘッド本体2の中心線上に形成された孔部21に前記軸部31が摺動自在に差し込まれることにより、ヘッド本体2に昇降可能に支持されている。
【0026】
ヘッド本体2は、その下面2aから下方に突出して軸部31を囲むスリーブ部22を有している。このスリーブ部22には、上下方向に延びるガイド孔22aが形成されており、前記軸部31に固定されたガイドピン31a(本発明のピン部材に相当する)がこのガイド孔22aに挿入されている(
図5参照)。軸部31の外周面上には圧縮コイルばね4が装着されており、この圧縮コイルばね4が、スリーブ部22の下端面とホルダ本体部32の上面32aとの間に適度に圧縮された状態で介設されている。つまり、ツールホルダ3は、上記ガイド孔22aにより規定される一定のストローク内でヘッド本体2に昇降可能に支持され、かつ圧縮コイルばね4の弾発力によりストローク下端に付勢されている。この構成により、ヘッド1Aによる部品の吸・装着時には、ノズル5Aがツールホルダ3と共に圧縮コイルばね4の弾発力を受けながら後退(上昇)することとなり、ヘッド1Aの下降に伴って部品がノズル5Aや基板から受ける衝撃力が緩和される。すなわち、いわゆるバフィング機能が発揮される。
【0027】
ノズル5Aは、ノズル本体部51と、このノズル本体部51に、水平軸回りに回動可能に支持される部品吸着部52とを備えている。
【0028】
ノズル本体部51の上面51aには、側面視略T字型の連結部53が設けられており、この連結部53が前記チャック34によって挟持されることで、ノズル5Aがツールホルダ3に保持されている。具体的には、
図2に示すように、チャック34は、開閉可能な一対の係止片35と、これら係止片35を閉方向に付勢する板ばね等のばね部材36とを有しており、両係止片35の間に連結部53が挿入され、当該連結部53が両係止片35により両側から挟持されることで、ノズル5Aがツールホルダ3の下端に着脱可能に保持されている。
【0029】
部品吸着部52は、部品の吸着面52aをその先端に備えている。部品吸着部52は、
図2の実線に示すように、吸着面52aが水平かつ下向きとなる第1回動位置と、
図2の一点鎖線に示すように、吸着面52aが垂直となる第2回動位置とに回動可能である。つまり、部品吸着部52は、吸着面52aに吸着された部品の姿勢を水平軸回りに90°回転させることが可能となっている。この部品吸着部52は、通常は、圧縮ばね等の図外の弾性部材の弾発力により第1回動位置に付勢されており、ノズル本体部51に対して姿勢変更用の負圧が供給された場合にのみ、前記弾発力に抗して第2回動位置に配置される。
【0030】
なお、ツールホルダ3の前記ベース33の下面には、
図1および
図2に示すように、ツールホルダ3内に形成された部品吸着用の負圧供給通路41とノズル本体部51に形成された図外の部品吸着用の負圧通路とを連通させるための第1連結軸部37が突設されるとともに、ツールホルダ3内に形成された姿勢変更用の負圧供給通路42とノズル本体部51に形成された図外の姿勢変更用の負圧通路とを連通させるための第2連結軸部38とが突設されている。そして、連結部53に部品吸着用の負圧通路に通じる孔部53aが形成されるとともに、上面51aに姿勢変更用の負圧通路に通じる孔部51bが形成され、ノズル5Aがツールホルダ3に保持された状態で、第1連結軸部37が孔部53aに挿入される一方、第2連結軸部38が前記孔部51bの位置でノズル本体部51の前記上面51aに密接している。この構成により、部品吸着用の負圧が、ヘッド本体2の孔部21、ツールホルダ3内の負圧供給通路41、第1連結軸部37およびノズル5内の負圧通路を通じて部品吸着部52の吸着面52aに供給されるとともに、姿勢変更用の負圧が、ヘッド本体2の内部に形成された通路23、ツールホルダ3内の通路42および第2連結軸部38を通じてノズル本体部51に供給される。
【0031】
なお、
図1および
図2中において、符号24は、ヘッド本体2の下面2aに固定された円盤状の背景板である。背景板24は、ノズル5Aに吸着された部品を部品認識用カメラで下方から撮像する際に、光の反射を抑制して部品の背景を形成するものである。
【0032】
背景板24は、径方向に分割される半円状の2つの分割片24a、24aから構成されており、ボルトB1によってヘッド本体2の下面2aに固定されている。具体的には、各分割片24a、24aはその厚み方向に貫通する複数のボルト孔を有しており、各分割片24aの下側からこれら貫通孔を通じてボルトB1が前記下面2aに形成されたねじ孔に螺合挿入されている。これにより、ヘッド本体2の下面2aに背景板24(分割片24a、24a)が固定されている。
【0033】
以上がヘッド1Aの構成であり、このヘッド1Aによれば、上述の通り、ノズル5A(部品吸着部52)による部品の吸・装着時には、ノズル5Aがツールホルダ3と共に圧縮コイルばね4の弾発力を受けながら上昇することによって、部品がノズル5Aや基板から受ける衝撃力が緩和される、という上記バフィング機能が発揮される。
【0034】
本発明のロック装置は、このようなヘッド1Aに着脱可能に構成されたものであって、ヘッド1Aに組付けられることにより、前記バフィング機能をロックする。
【0035】
図3は、本発明にかかるロック装置6Aが装着されたヘッド1Aの先端部分の斜視図であり、
図4は、ロック装置を一部分解した状態のヘッド1Aの先端部分の斜視図であり、
図5および
図6は、
図4の断面図である。何れの図も便宜上ノズル5Aは省略している。
【0036】
ロック装置6Aは、ヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3のホルダ本体部32の上面32aとの間に介挿されて、ツールホルダ3の上方への変位を規制するスペーサ7と、このスペーサ7に固定されて、ツールホルダ3の下方への変位を規制する一対のストッパ9とを含む。
【0037】
スペーサ7は、第1スペーサ部材71、第2スペーサ部材72、押さえ部材73および背景形成部材74の合計4つのパーツから構成されている。
【0038】
第1スペーサ部材71は、背景形成部材74と共に、前記背景板24(分割片24a、24a)の代わりにヘッド本体2の下面2aに固定されるものである。
【0039】
第1スペーサ部材71は、
図4および
図7(a)に示すように、前記背景板24の代わりにその一部を形成する板状の背景形成部76と、この背景形成部76の下面から互いに平行に垂下する断面矩形の一対の脚部77と、これら一対の脚部77の間にブリッジ状に設けられたガイド部78とを有し、背景形成部76、一対の脚部77およびガイド部78が同一の樹脂材料又は金属材料により一体に形成された構成を有する。
【0040】
なお、以下の説明では、
図4中に示すように、上記一対の脚部77の並び方向をスペーサ7の幅方向と称し、水平面上でこれと直交する方向をスペーサ7の前後方向と称し、後記溝部79の開口する側をスペーサ7の前、これと反対側をスペーサ7の後とする。
【0041】
ガイド部78には、側方(前側)に向かって開口する溝部79が形成されている。ガイド部78の下面は、後述する第2スペーサ部材72のガイド面(以下、ガイド面78aという)であり、当該ガイド面78aは、前側から後側(
図5では左側から右側)に向かって先下がりに傾斜した傾斜面である。
【0042】
第1スペーサ部材71は、ヘッド本体2のスリーブ部22が前記溝部79内に介在するように、ヘッド1Aの側方からヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3(ホルダ本体部32)の上面32aとの間に介挿され、この状態でヘッド本体2の下面2aに固定されている。具体的には、第1スペーサ部材71の背景形成部76には、固定用の複数のボルト孔(貫通孔)が形成されている。これらボルト孔は、ヘッド本体2の下面2aに形成された背景板取付け用のねじ孔(前記背景板24(分割片24a、24a)を取付けるためのねじ孔)に対応しており、これによって、第1スペーサ部材71は、前記背景板24と共通のねじ孔を用いてヘッド本体2の下面2aにボルトB1で固定されている。すなわち、当例では、第1スペーサ部材71が本発明の第1固定部材の機能を兼ねている。
【0043】
なお、背景形成部材74は、
図7(a)に示すような半月板状の部材であり、第1スペーサ部材71の背景形成部76と協働して円盤状の背景板を形成する。図示を省略しているが、この背景形成部材74にも、ヘッド本体2の下面2aに形成された背景板取付け用のねじ孔に対応した複数のボルト孔が形成されており、当該背景形成部材74も第1スペーサ部材71と同様に、前記背景板24と共通のねじ孔を用いてヘッド本体2の下面2aにボルトB1で固定されている。
【0044】
第2スペーサ部材72は、
図4〜
図6に示すように、第1スペーサ部材71のガイド部78と一対の脚部77とツールホルダ3のホルダ本体部32とで囲まれたスペースに、ヘッド1Aの側方から介挿されるものである。
【0045】
第2スペーサ部材72は、後側に向かって開口する溝部81が形成された略直方体形状の部材である。第2スペーサ部材72の上面82は、前側から後側(
図5及び
図7(b)では左側から右側)に向かって先下がりの傾斜面であり、第2スペーサ部材72は側面視で楔形の形状を有している。第2スペーサ部材72の上面82の傾斜角度は、第1スペーサ部材71の前記ガイド面78aの傾斜角度と同等である。
【0046】
第2スペーサ部材72は、ツールホルダ3の軸部31が前記溝部81に介在し、かつ当該第2スペーサ部材72の上面82と第1スペーサ部材71の前記ガイド面78aとが当接するように、第1スペーサ部材71とは反対側(第1スペーサ部材71の前側)から前記ガイド部78、一対の脚部77およびホルダ本体部32に囲まれたスペースに挿入され、この状態で第1スペーサ部材71に対して前記押さえ部材73(本発明の第2固定部材に相当する)で固定される。
【0047】
押さえ部材73は、樹脂製又は金属製の長方形の板部材であり、厚み方向に貫通する2つのボルト孔73aを備えている。第2スペーサ部材72は、
図3及び
図4に示すように、その前側面83に押さえ部材73が押し当てられ、この状態で、当該押さえ部材73の前側から前記ボルト孔73aを通じてボルトB2が各脚部77に形成されたねじ孔77aに螺合挿入されることにより、第1スペーサ部材71に固定されている。なお、ボルトB2の締結によって押さえ部材73が押圧されると、ガイド面78aに沿って第2スペーサ部材72が第1スペーサ部材71に対して相対的に押し下げられてスペーサ7の上下方向長さが拡大する。これにより、スペーサ7(スペーサ部材71、72)は、ヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3(ホルダ本体部32)の上面32aとの間に突っ張った状態で介挿されている。
【0048】
ストッパ9は、ツールホルダ3の下方への変位を規制するものであり、第1スペーサ部材71の各脚部77の外側面(幅方向における外側の側面)に各々固定されている。
【0049】
図4および
図7(c)に示すように、ストッパ9は、脚部77への当接面91aを有する矩形板状の当接部91と、この当接部91の下端部から前記当接面91aに直交する方向に延びる一対の第1係止部93と、当接部91の上端部に沿って前後方向に延びかつ前記第1係止部93と同方向に前記当接面91aから僅かに突出する第2係止部94とを備えた側面視L字型の部材であり、当接部91および両係止部93、94が同一の樹脂材料又は金属材料により一体に形成された構成を有する。
【0050】
前記一対の第1係止部93は、所定の間隔だけ前後方向に隔てて設けられている。また、当接部91には、その厚み方向に貫通するボルト孔92が形成されている。
【0051】
図3および
図4に示すように、ストッパ9は、一対の第1係止部93の間にツールホルダ3のホルダ本体部32が介在し、かつ、前記脚部77の外側面に形成された前後方向に延びる溝部77b内に第2係止部94が介在するように脚部77の外側面に重ね合わされている。そして、当接部91の外側からボルト孔92を通じてボルトB3が脚部77の外側面に形成されたねじ孔77bに螺合挿入されることで、ストッパ9が脚部77に固定されている。
図2に示すように、ツールホルダ3のホルダ本体部32の上端縁部には鍔部32bが形成されており、ストッパ9は、
図3に示すように、前記鍔部32bに対して各第1係止部93を下側から係合させた状態で脚部77に固定されている。これにより、ツールホルダ3の下方への変位が規制されている。
【0052】
なお、ストッパ9は、
図5に示すように、前記ガイド孔22aによって規定されるストロークの下端からツールホルダ3を僅かに持ち上げた位置、すなわちガイドピン31aがガイド孔22aの下端面から上方に僅かに離れた位置で前記鍔部32bに各第1係止部93が係合するように形成されている。
【0053】
上記ロック装置6Aのヘッド1Aへの取り付け手順は次の通りである。
【0054】
まず、
図2に示すようなヘッド1Aの状態から、ボルトB1を緩めて背景板24(分割片24a、24a)を取り外し、第1スペーサ部材71および背景形成部材74をボルトB1でヘッド本体2の下面2aに取り付ける。
【0055】
次に、第1スペーサ部材71の各脚部77にストッパ9を取り付ける。この場合、まず、ツールホルダ3をそのストローク下端から持ち上げ、ストッパ9の第1係止部93を、ツールホルダ3(ホルダ本体部32)の鍔部32bの下方に潜り込ませながら、第2係止部94を脚部77の溝部77b内に介在させ、この状態で、ボルトB3によってストッパ9を脚部77に固定する。これにより、ストッパ9によって、ツールホルダ3をそのストロークの下端よりも僅かに上の位置に係止される。
【0056】
そして、第1スペーサ部材71の一対の脚部77間に第2スペーサ部材72を挿入した後、その前側から押さえ部材73をボルトB2により第1スペーサ部材71に固定する。これにより、ヘッド1Aのロック装置6Aへの取り付けが完了する。
【0057】
このようにヘッド1Aにロック装置6Aが取り付けられた状態では、ヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3のホルダ本体部32との間に介挿されたスペーサ7によってツールホルダ3の上方への変位が規制される。すなわち、ヘッド1Aのバッフィング機能がロックされる。そして、上述した手順と逆の手順でヘッド1Aからロック装置6Aを取り外すと、ツールホルダ3の上方への変位が許容され、これにより、元の通りヘッド1Aのバッフィング機能が発揮されることとなる。
【0058】
以上説明した通り、上記ロック装置6Aによれば、ヘッド1Aに取り付けることでバッフィング機能をロックすることができ、また、ヘッド1Aからロック装置6Aを取り外すことでバフィング機能を復活させることができる。そのため、必要に応じて、ヘッド1Aをバフィング機能有りの状態とバフィング機能無しの状態とに切り替えることができる。しかも、ヘッド1Aのロック装置6Aの取り付けは、上記の通り、ボルトB1〜B3の締結作業だけのため、非常に簡単に上記の切り替えを行うことができる。
【0059】
また、上記ロック装置6Aによれば、ヘッド本体2の下面2aに固定された第1スペーサ部材71とツールホルダ3(ホルダ本体部32)の上面32aとの間に楔形の第2スペーサ部材72を配置することにより、前記下面2aと上面32aとの間にスペーサ7を突っ張らせた状態で介挿させる構成であるため、ツールホルダ3の上方への変位をより確実に規制することができる。すなわち、例えばヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3の上面32aとの間に単一かつ定形のスペーサを介挿する構成であってもよいが、この場合には、スペーサの寸法誤差やツールホルダ3の移動誤差などに起因して、ヘッド本体2やホルダ本体部32とスペーサ7との間に隙間が生じ、ツールホルダ3の上方への変位を完全に規制できないことが考えられる。しかし、ヘッド本体2の下面2aとホルダ本体部32の上面32aとの間にスペーサ7を突っ張らせた状態で介挿させる上記実施構成によれば、そのような隙間が生じる余地がない。そのため、ツールホルダ3の上方への変位をより確実に規制すること、すなわちバッフィング機能をより確実にロックすることができる。
【0060】
また、上記ロック装置6Aによれば、ストッパ9によってツールホルダ3がそのストローク下端から僅かに上昇した位置で拘束される、つまり、ガイドピン31aがガイド孔22aの下端面から上方に僅かに離れた位置でツールホルダ3が拘束されるので、ヘッド本体2の下面2aとホルダ本体部32の上面32aとの間にスペーサ7を突っ張らせた状態で介挿させる上記構成による弊害、具体的には、ガイドピン31aが損傷することを防止することができるという利点もある。すなわち、上記ロック装置6Aでは、ストッパ9を省略することにより、ストローク下端に配置したツールホルダ3のホルダ本体部32の上面32aとヘッド本体2の下面2aとの間にスペーサ7(スペーサ部材71、72)を介挿するようにしてもよい。しかし、この場合には、ボルトB2の締結に伴い押さえ部材73からスペーサ部材72が受ける外力(押圧力)のうち、ガイド部78を介して下向きに変換される成分がガイドピン31aで受けられることとなる。そのため、当該外力が大きいと、ガイドピン31aが変形する等、ガイドピン31aが破損することが考えられるが、上記のように、ガイドピン31aがガイド孔22aの下端面から上方に僅かに離れた位置にツールホルダ3をストッパ9によって係止する構成によれば、ガイドピン31aが上記のような外力を受けることがなく、従って、ガイドピン31aが破損することを有効に防止することができる。
【0061】
また、上記ロック装置6Aによれば、ヘッド本体2の下面2aに背景板24を固定するためのねじ孔をそのまま用いて第1スペーサ部材71および背景形成部材74をボルトB1で固定できるため、合理的な構造でロック装置6Aをヘッド1Aに組み込むことができるという利点がある。そして、このような構造によれば、既存の部品実装装置のヘッド1Aに対してもロック装置6Aを容易に取り付けることができるという利点もある。
【0062】
ところで、上記ロック装置6Aは、
図2に示すように、部品吸着部52の姿勢を変更可能なノズル5Aが使用されるヘッド1Aを対象とするものであるが、本発明のロック装置は、そのような姿勢変更機能を備えていない標準的なノズルが使用されるヘッドについても適用可能である。以下、その場合の例について
図8を用いて説明する。なお、以下の説明では、上述したヘッド1Aおよびロック装置6Aと共通の構成要素については同一符号を付して説明を省略し、主に、上述したヘッド1Aおよびロック装置6Aとの相違点について説明する。
【0063】
図8は、姿勢変更機能を備えていないノズル、すなわち常に吸着面52aが下向きの部品吸着部52を備えたノズル5Bが使用される部品実装用ヘッド1Bと、当該ヘッド1Bに取り付けられたロック装置6Bとを示している。ロック装置6Bは、
図4のロック装置6Aと同様に一部分解状態で示している。
【0064】
同図に示す部品実装用ヘッド1B(以下、ヘッド1Bと略す)は、上述したヘッド1Aと同様に、ヘッド本体2と、このヘッド本体2の下端部に支持されたツールホルダ3と、このツールホルダ3に着脱可能に保持されたノズル5Bとを備えている。このヘッド1Bは、ツールホルダ3を付勢する圧縮コイルばね4がヘッド本体2の内部に設けられている点、ツールホルダ3のホルダ本体部32がヘッド1Aのものより小さい点、軸部31の下端部がホルダ本体部32よりも若干外側に突出することによりツールホルダ3に段差部32cが形成されている点で上述したヘッド1Aと構成が相違している。
【0065】
ロック装置6Bは、上述したヘッド1Aのロック装置6Aと同様に、第1スペーサ部材71、第2スペーサ部材72、押さえ部材73および背景形成部材74を含むスペーサ7と、一対のストッパ9とを備えている。このロック装置6Bは、ストッパ9の第1係止部93が当接部91の前後方向に亘って連続する単一構造であり、当該第1係止部93を軸部31の上記段差部32cに下側から係合させることにより、ツールホルダ3の下方への変位をストッパ9により規制する点、背景形成部材74が厚みをもった矩形状のものである点で上述したヘッド1Aのロック装置6Aと構成が相違している。
【0066】
このように、上記ロック装置6Bは、姿勢変更機能を備えていないノズル5Bを使用するヘッド1Bについても適用可能であり、ヘッド1Bに取り付けることにより、上述したヘッド1Aのロック装置6Aと同様の作用効果を享受することができる。
【0067】
なお、以上説明したロック装置6A、6Bは、本発明にかかるロック装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
例えば、上記ロック装置6A、6Bは、ストッパ9を備えているが、ガイドピン31aの損傷のおそれが無いような場合には、当該ストッパ9を省略してもよい。すなわち、圧縮コイルばね4の弾発力によってツールホルダ3をそのストローク下端に配置した状態で、ヘッド本体2の下面2aとホルダ本体部32の上面32aとの間にスペーサ7を介挿する構成であってもよい。この構成によれば、ストッパ9が省略される分、ロック装置6A、6Bの構成がより簡単で、ヘッド1A、1Bへの取り付け作業もより簡単なものとなる。
【0069】
また、上記実施形態では、第1スペーサ部材71がヘッド本体2にボルトB1で固定されることにより、当該第1スペーサ部材71が本発明の第1固定部材を兼ねた構成となっているが、第1スペーサ部材71とは別に、スペーサ7をヘッド本体2に固定する専用の固定部材(第1固定部材)を備えていてもよい。また、スペーサ7は、上記実施形態のようにヘッド本体2に固定される以外に、ツールホルダ3(例えばホルダ本体部32)に固定される構成であってもよい。また、第1スペーサ部材71をヘッド本体2に固定する代わりに、例えば一対の前記ストッパ9を直接ヘッド本体2に固定することにより、ストッパ9が本発明の第1固定部材を兼ねる構成としてもよい。
【0070】
また、上記ロック装置6A、6Bでは、第1スペーサ部材71の傾斜したガイド面78aに沿って第2スペーサ部材72をスライドさせることにより、スペーサ7の上下方向長さを変更し、ヘッド本体2の下面2aとホルダ本体部32の上面32aとの間にスペーサ7を突っ張らせた状態として、両スペーサ部材71、72を相互に押さえ部材73で固定する構造であるが、スペーサ7の上下方向長さを変更するための具体的な構造や、上下方向長さを変更した後に両スペーサ部材71、72を相互に固定するための具体的な構造は、上記実施形態に限定されるものではく、その他の構造であってもよい。
【0071】
また、ヘッド本体2の下面2aとホルダ本体部32の上面32aとの間でスペーサ7を突っ張らせる構造の代わりに、例えばヘッド本体2の下面2aとツールホルダ3の上面32aとの間に単一かつ定形のスペーサを介挿したうえで、ストッパ9によりツールホルダ3をそのストローク下端から持ち上げてヘッド本体2に固定することで、スペーサをヘッド本体2に固定するようにしてもよい。このような構成によっても、上記実施形態のロック装置6A、6Bと同様に、ヘッド1A、1Bのバフィング機能を有効にロックすることが可能となる。なお、この場合も、ストッパ9は、本発明の第1固定部材を兼ねた構成となる。