(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、以下説明するフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
【0012】
本発明においては、このはんだ組成物のレオメーターにより測定した降伏値が、10Pa以上100Pa以下であることが必要である。前記降伏値が10Pa未満であると、ジェットディスペンサーにより塗布する場合における塗布性が低下し、はんだ飛び散りおよびフラックス分離が抑制できない。他方、前記降伏値が100Paを超えると、連続吐出性が低下する。なお、降伏値が高すぎる場合に連続吐出性が低下する理由は、以下のようなメカニズムにあると推察される。すなわち、はんだ組成物の降伏値が高すぎる場合に応力を加えた瞬間に材料が軟化せず、軟化するまでのタイムラグが発生してしまう。そして、このタイムラグが繰り返されることで、連続吐出において、ひずみとなり、結果として、吐出不良を引き起こすものと推察される。
また、連続吐出性の更なる向上の観点から、前記降伏値は、10Pa以上80Pa以下であることが好ましく、10Pa以上75Pa以下であることがより好ましい。
【0013】
前記降伏値は、次の方法により測定できる。すなわち、レオメーター(装置名「HAAKE MARS III」、Thermo Scientific社製)にはんだ組成物を投入し、一定周波数(1.0Hz)でプレートの回転を左右に振動させながら応力を増加させた場合のはんだ組成物のひずみを測定する。そして、測定結果に基づいて、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”(単位:Pa)を算出し、それぞれ応力(単位:Pa)に対してプロットして、
図1に示すように、貯蔵弾性率−応力曲線、および、損失弾性率−応力曲線を作成する。そして、貯蔵弾性率−応力曲線と、損失弾性率−応力曲線とが重なるとき(tanδ=G”/G’=1となるとき)における応力を、降伏値とする。
【0014】
本発明においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した35℃における粘度が、5Pa・s以上30Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上25Pa・s以下であることがより好ましい。粘度が前記範囲内であれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
また、本発明においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定したチクソ指数が、0.60以上0.90以下であることが好ましく、0.65以上0.85以下であることがより好ましい。チクソ指数が前記範囲内であれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
粘度およびチクソ指数は、JIS Z3284付属書6に準拠して、E型粘度計により測定できる。
【0015】
なお、はんだ組成物の降伏値、粘度およびチクソ指数を上述した範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
降伏値は、ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。例えば、チクソ剤として、グリセリンエステル系チクソ剤、またはベンジリデンソルビトール系チクソ剤を用いると、降伏値が高くなる傾向にある。
粘度およびチクソ指数は、いずれもロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。
【0016】
[フラックス組成物]
本発明に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物における前記(E)成分以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)チクソ剤を含有するものである。
【0017】
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、12質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上18質量%以下であることが特に好ましい。フラックスの配合量が10質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が90質量%を超える場合)には、ジェットディスペンサーでの塗布性が不十分となる傾向にあり、他方、フラックスの配合量が25質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が75質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0018】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る前記ロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸などの変性樹脂)およびアビエチン酸の変性樹脂、並びに、これらの変性物を主成分とするものなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
前記(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。
【0020】
[(B)成分]
本発明に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、アミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0021】
前記非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシルのように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシルとしては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル、2−クロロ安息香酸、3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0022】
前記アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0023】
前記(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。活性剤の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス組成物の絶縁性が低下する傾向にある。
【0024】
[(C)成分]
本発明に用いる(C)溶剤としては、以下説明する(C1)成分および(C2)成分を組み合わせて用いることが好ましい。
前記(C1)成分は、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルであり、適宜公知のものを用いることができる。
【0025】
前記(C2)成分は、炭素数8〜12のジカルボン酸と炭素数4〜12のアルコールとのエステル化合物、および、ガムテレピン油から誘導されたアルコール類からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記エステル化合物の中でも、炭素数8〜10のジカルボン酸と炭素数6〜10のアルコールとのエステル化合物がより好ましく、炭素数10のジカルボン酸と炭素数8のアルコールとのエステル化合物が特に好ましい。具体的には、セバシン酸ビス(2−エチルへキシル)(DOS)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
前記アルコール類としては、適宜公知のものを用いることができる。具体的には、α,β,γ−ターピネオールなどが挙げられる。
前記(C)溶剤は、本発明の目的に影響のない範囲であれば、前記(C1)成分および前記(C2)成分以外の他の溶剤を含有していてもよい。ただし、この他の溶剤を用いる場合、その配合量は、(C)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
前記(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ組成物の粘度およびチクソ性を適切な範囲に調整し難い傾向にあり、他方、前記上限を超えると、はんだ組成物の溶融時に残るフラックスの残さ中に溶剤が残存し、フラックスの残さが粘着性を有し、空気中を漂う埃や粉塵などが付着してしまうことで漏電の不具合を生じる恐れがある。
また、前記(C1)成分の配合量は、前記(C1)成分および前記(C2)成分の合計量100質量%に対して、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。前記(C1)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ組成物のチクソ性が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、はんだ飛び散りの抑制効果が不足する傾向にある。
【0027】
[(D)成分]
本発明に用いる(D)チクソ剤は、(D1)アマイド系チクソ剤を含有することが好ましい。この(D1)成分によれば、はんだ組成物の降伏値の上昇を抑えつつ、粘性やチクソ性を向上できる傾向にある。
前記(D1)成分としては、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスカプリン酸アミド、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスエルカ酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスヒドロキシスステアリン酸アミド、および、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ組成物の降伏値の観点から、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(D)チクソ剤は、本発明の目的に影響のない範囲であれば、前記(D1)成分以外の他のチクソ剤((D2)成分)を含有していてもよい。ただし、この(D2)他のチクソ剤を用いる場合、その配合量は、(D)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記(D2)成分としては、グリセリンエステル系チクソ剤(硬化ひまし油など)、無機系チクソ剤(カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなど)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、グリセリンエステル系チクソ剤またはベンジリデンソルビトール系チクソ剤については、はんだ組成物の降伏値が上昇しやすい傾向にあるので、使用しないことが好ましい。
【0028】
前記(D)成分の配合量は、前記フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、ダレが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎて、塗布不良となりやすい傾向にある。
【0029】
[他の成分]
本発明に用いるフラックス組成物には、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、消泡剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0030】
[(E)成分]
本発明に用いる(E)はんだ粉末は、無鉛のはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、アンチモン、アルミニウム、インジウムなどが挙げられる。
無鉛のはんだ粉末としては、具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sbや、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Agなどが挙げられる。
【0031】
前記はんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましく、15μm以上25μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、はんだ付けランドのピッチの狭くなってきている最近のプリント配線基板にも対応できる。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0032】
[はんだ組成物の製造方法]
本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0033】
[はんだ組成物を用いた接続方法]
次に、本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物を用いた、配線基板および電子部品などの電極同士の接続方法について説明する。ここでは、配線基板および電子部品の電極同士を接続する場合を例に挙げて説明する。
このように配線基板および電子部品の電極同士を接続する方法としては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する塗布工程と、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品を前記配線基板に実装するリフロー工程と、を備える方法を採用できる。
【0034】
塗布工程においては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する。
ここで用いる塗布装置は、
図2に示すようなジェットディスペンサー10である。ジェットディスペンサー10は、シリンジ1と、ノズル2と、ニードル3と、バルブ4とを備えている。ジェットディスペンサー10によりはんだ組成物が吐出される場合、先ず、シリンジ1からはんだ組成物が供給され、ノズル2にはんだ組成物が充填される。そして、バルブ4によりニードル3が
図2の下方向に押され、ノズル2中のはんだ組成物が吐出される。
前記本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、塗布性が優れており、このようなジェットディスペンサーで良好に塗布できる。
【0035】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Au−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度150〜180℃で60〜120秒行い、ピーク温度を240〜250℃に設定すればよい。
【0036】
また、本発明のはんだ組成物を用いた接続方法は、前記接続方法に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記接続方法では、リフロー工程により、配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO
2、エキシマーなど)が挙げられる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「KE−604」、荒川化学工業社製
((B)成分)
活性剤:グルタル酸
((C1)成分)
溶剤A:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、日本乳化剤社製
((C2)成分)
溶剤B:α,β,γ−ターピネオール、商品名「ターピネオールC」、日本テルペン化学社製
((D1)成分)
チクソ剤A:N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
チクソ剤B:N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、商品名「スリパックスE」、日本化成社製
チクソ剤C:高級脂肪酸ポリアマイド、商品名「ターレンATX−1146」、共栄社化学社製
((D2)成分)
チクソ剤D:水添ヒマシ油、商品名「ヒマ硬」、KFトレーディング社製
((E)成分)
はんだ粉末:平均粒子径18μm、はんだ融点216〜220℃、はんだ組成Sn/Ag/Cu
(その他の成分)
酸化防止剤:商品名「ナウガードXL−1」、白石カルシウム社製
【0038】
[実施例1]
ロジン系樹脂36.8質量部、チクソ剤8質量%、酸化防止剤2.7質量部、活性剤3.15質量部、溶剤A25質量部および溶剤B24.35質量部をそれぞれ容器に投入し、マントルヒーターにて160℃に加熱しつつ、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物16.2質量%およびはんだ粉末83.8質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合することで、下記表1に示す組成を有するはんだ組成物を調製した。
そして、得られたはんだ組成物の降伏値をレオメーターにより測定した。具体的には、レオメーター(装置名「HAAKE MARS III」、Thermo Scientific社製)にはんだ組成物を投入し、一定周波数(1.0Hz)でプレートの回転を左右に振動させながら応力を増加させた場合のはんだ組成物のひずみを測定する。そして、測定結果に基づいて、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”(単位:Pa)を算出し、それぞれ応力(単位:Pa)に対してプロットして、
図1に示すように、貯蔵弾性率−応力曲線、および、損失弾性率−応力曲線を作成する。そして、貯蔵弾性率−応力曲線と、損失弾性率−応力曲線とが重なるとき(tanδ=G”/G’=1となるとき)における応力を、降伏値とした。得られた結果を表1に示す。
また、得られたはんだ組成物について、JIS Z3284付属書6に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を35℃にして、粘度値η(単位:mPa・s)を読み取った。また、上記と同様にして、回転数を30rpmに調整した場合の粘度値(30rpm粘度)と、回転数を3rpmに調整した場合の粘度値(3rpm粘度)とを読み取った。そして、下記式に基づいて、チクソ指数を算出した。得られた結果を表1に示す。
チクソ指数=log[(3rpm粘度)/(30rpm粘度)]
【0039】
[実施例2〜4および比較例1〜4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にしてはんだ組成物を得た。
また、得られたはんだ組成物について、実施例1と同様にして、降伏値、粘度およびチクソ指数を測定した。
【0040】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の性能(連続吐出性、はんだ飛び散り、塗布精度、溶融性、フラックス分離)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1に示す。
また、フラックス中の溶剤の粘度および表面張力を以下のような方法で測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)連続吐出性
40gのはんだ組成物が充填された10mLシリンジ、および、直径0.26mmφのノズルを有するジェットディスペンサーを用い、ノズル先端から基板までの距離を1.5mmで、1点あたりの塗布時間を0.09秒間に設定して、基板(材質:アルミニウム、大きさ:150mm×150mm、厚み:0.5mm)上に等間隔で連続的に吐出を行った。
そして、充填されたはんだ組成物の90質量%以上(36g以上)が、吐出された際の吐出状態を観察し、以下の基準に従って、連続吐出性を評価した。
○:未塗布の箇所が発生しない。
×:未塗布の箇所が発生するか、或いは、吐出ができない。
(2)はんだ飛び散り(サテライト)および(3)塗布精度
40gのはんだ組成物が充填された10mLシリンジ、および、直径0.26mmφのノズルを有するジェットディスペンサーを用い、ノズル先端から基板までの距離を1.5mmで、1点あたりの塗布時間を0.09秒間に設定して、基板(材質:アルミニウム、大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)上の50mm×15mmの範囲内に等間隔で100点の吐出(25点×4列)を行って試験基板を得た。
上記の試験基板を10枚作製する(試験基板1枚につき、100点の吐出物があるので、合計1000点の吐出物がある)。そして、得られた試験基板20枚について、吐出物から離れて存在する直径70μm以上の凝集粉をはんだ飛び散りとし、その個数をカウントした。
また、得られた試験基板を目視にて観察し、以下の基準に従って、塗布精度を評価した。
○:未塗布の箇所がない。
×:未塗布の箇所がある。
(4)溶融性
40gのはんだ組成物が充填された10mLシリンジ、および、直径0.26mmφのノズルを有するジェットディスペンサーを用い、ノズル先端から基板までの距離を1.5mmで、1点あたりの塗布時間を0.09秒間に設定して、基板(材質:銅、大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)上の50mm×15mmの範囲内に等間隔で100点の吐出(25点×4列)を行って試験基板を得た。
得られた試験基板に対し、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度230℃で溶融時間を10秒間の条件でリフロー(窒素雰囲気)を行った。リフロー後の試験基板を観察し、以下の基準に従って、溶融性を評価した。
○:はんだ組成物を塗布した部分が濡れている。
×:はんだ組成物を塗布した部分に、不濡れの箇所がある。
(5)フラックス分離
はんだ組成物を充填した10mLシリンジを、温度30℃の恒温槽内に立てて保存する。そして、フラックスが分離しているか否かを目視で観察して、以下の基準に従って、フラックス分離を評価した。
○:3日を経てもフラックスが分離しなかった。
×:3日以内にフラックスが分離した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物を用いた場合(実施例1〜4)には、連続吐出性、はんだ飛び散り、塗布精度、溶融性およびフラックス分離の全てが良好であることが確認された。このことから、本発明のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性および連続吐出性を有し、かつ、はんだ飛び散りおよびフラックス分離を十分に抑制できることが確認された。
一方で、はんだ組成物の降伏値が100Paを超える場合(比較例1〜3)には、連続吐出性が悪いことが分かった。また、はんだ組成物の降伏値が10Pa未満の場合(比較例4)には、はんだ飛び散りおよびフラックス分離が抑制できないことが分かった。