(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(2)及び前記成分(3)はそれぞれ、シリコーン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、及びポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる一種類以上の微粒子である、請求項1に記載の液晶シール剤。
前記成分(1a)及び前記成分(1b)を合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、前記成分(4)の含有量が、0.01〜3.0質量部である、請求項1に記載の液晶シール剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.液晶シール剤について
本発明の液晶シール剤には、(1)樹脂と、(2)平均粒子径の異なる2種類の有機フィラーと、(3)ラジカル重合開始剤と、が含まれる。また、液晶シール剤には必要に応じて(4)エポキシ硬化剤や、(5)無機フィラー、(6)エポキシ樹脂、(7)遮光剤等が含まれてもよい。
【0018】
前述のように、一般的な液晶シール剤を用いて、細いシールパターンを形成しようとすると、線幅が均一になり難く、局所的に線幅の細い箇所が生じやすかった。そして、当該箇所に内圧がかかると、液晶がリークしたり、シール部材と基板とが剥離しやすかった。
【0019】
ここで、本発明の液晶シール剤には、平均粒子径の異なる2種類の有機フィラー;すなわち、比較的平均粒子径が大きい有機フィラーAと比較的平均粒子径が小さい有機フィラーBとが含まれる。そして、比較的平均粒子径が大きい有機フィラーAが、液晶表示パネルの2枚の基板の間で押しつぶされて、これらのギャップを隙間なく埋める。一方で、比較的平均粒子径の小さい有機フィラーBが、有機フィラーAどうしの隙間を埋める。したがって、シールパターンの線幅が均一になりやすく、局所的に強度の低い領域が生じ難くなる。また有機フィラーBは、応力緩和能力が高いため、液晶シール剤を硬化して得られるシール部材の接着強度が高まりやすい。つまり、本発明の液晶シール剤によれば、液晶のリークが少なく、さらに基板が剥離し難い、信頼度の高い液晶表示パネルが得られる。
【0020】
(1)樹脂成分について
液晶シール剤には、(1a)(メタ)アクリル樹脂、または(1b)1分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂が少なくとも含まれる。これらは1種のみ含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。液晶シール剤に、(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂が含まれると、液晶シール剤の硬化物(シール部材)の耐湿性が高まる。
【0021】
(1a)(メタ)アクリル樹脂には、1つ以上の(メタ)アクリル基が含まれる。(メタ)アクリルとは、メタアクリルまたはアクリルのいずれでもよいことを表す。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル基を有する化合物のモノマーであってもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。ただし、(1a)(メタ)アクリル樹脂にエポキシ基を有する化合物は含まない。
【0022】
(1a)(メタ)アクリル樹脂の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリアクリレートおよび/またはジまたはトリメタクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート;トリメチロールプロパンのトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ペンタエリスリトールのトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸のアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグ
リコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴアクリレートおよび/またはオリゴメタクリレート等が含まれる。
【0023】
また特に、(1a)(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば310〜1000程度でありうる。(1a)(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)できる。
【0024】
液晶シール剤に含まれる(1a)(メタ)アクリル樹脂の量は、求められる液晶シール剤の硬化性にもよるが、液晶シール剤100質量部に対して、0〜80質量部であることが好ましく、0〜60質量部であることがより好ましい。
【0025】
(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、好ましくはエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、例えば塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂である。
【0026】
一方、(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有するため、光硬化性と熱硬化性とを併せ持つことができる。さらに、(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂が、非結晶性のエポキシ樹脂由来であっても、当該樹脂には、(メタ)アクリル酸との反応によって生じる水酸基が含まれることから、液晶に対する溶解を十分に抑制できる。
【0027】
(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の原料となるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2つ以上有する2官能以上のエポキシ樹脂であればよく、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、および水添ビスフェノール型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、およびトリスフェノールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂等が含まれる。3官能や4官能等の多官能エポキシ樹脂を(メタ)アクリル変性して得られる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、架橋密度が高く、シール部材と基板との接着強度が低下し易い。したがって、2官能エポキシ樹脂を(メタ)アクリル変性して得られる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
2官能エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、およびビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、なかでもビスフェノールA型およびビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、液晶シール剤の塗布効率の観点からは好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビフェニルエーテル型等のエポキシ樹脂と比べて塗布性に優れる等の利点がある。
【0029】
原料となるエポキシ樹脂は、1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされたものであってもよい。また、原料となるエポキシ樹脂は、分子蒸留法、洗浄法等により高純度化されていることが好ましい。
【0030】
(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば310〜1000程度でありうる。(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)できる。
【0031】
液晶シール剤に含まれる(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の量は、液晶シール剤100質量部に対して、0〜80質量部であることが好ましく、0〜60質量部であることがより好ましい。
【0032】
上述の(1a)(メタ)アクリル樹脂及び(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、水酸基、ウレタン結合、アミド基、カルボキシル基等の水素結合性官能基を含むことが好ましい。水素結合性官能基の例には、エポキシ樹脂のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応することにより生成する水酸基も含まれる。また、(1a)(メタ)アクリル樹脂および(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の原料である(メタ)アクリル酸やエポキシ樹脂に含まれる水酸基、ウレタン結合、カルボキシル基、およびアミド基等も含まれる。
【0033】
(1a)(メタ)アクリル樹脂及び(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂に水素結合性官能基が含まれると、これらの樹脂と疎水性である液晶材料との相溶性が低くなる。その結果、液晶シール剤が液晶材料に溶解し難くなり、液晶滴下工法用に適した液晶シール剤が得られる。
【0034】
液晶シール剤に含まれる(1a)(メタ)アクリル樹脂および(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の水素結合性官能基当量は、いずれも1.0×10
−4〜5×10
−3mol/gであることが好ましく、2.0×10
−3〜4.5×10
−3mol/gであることがより好ましい。水素結合性官能基当量が1.0×10
−4mol/g未満であると、(1a)(メタ)アクリル樹脂1分子または(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂1分子に含まれる水素結合性官能基の数が少なく、液晶に対する溶解抑制効果が得られにくい。水素結合性官能基当量が5×10
−3mol/gを超えると、(1a)(メタ)アクリル樹脂や(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の硬化物の耐湿性が低下し易い。
【0035】
(1a)(メタ)アクリル樹脂および(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の水素結合性官能基当量(mol/g)は、「1分子の(1a)(メタ)アクリル樹脂もしくは(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂に含まれる水素結合性官能基の数」/「(1a)(メタ)アクリル樹脂もしくは(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)」として表される。たとえば、(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂に含まれる水素結合性官能基が、(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂との反応によって生じる水酸基のみである場合、反応させた(メタ)アクリル酸のモル数を、(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)で割ることにより求めることができる。
【0036】
ここで、(1a)(メタ)アクリル樹脂の水素結合性官能基当量は、(メタ)アクリル酸樹脂に含まれる水素結合性官能基の数で調整される。一方、(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の水素結合性官能基当量は、例えば、原料となるエポキシ樹脂に反応させる(メタ)アクリル酸のモル数を調整したり;原料となる(メタ)アクリル酸やエポキシ樹脂が有する水素結合性官能基の量を調整したりすること等によって制御できる。(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の水酸基価当量は特に、2.0×10
−3〜5×10
−3mol/gであることが好ましい。
【0037】
液晶シール剤100質量部に対する、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計含有量は、40〜80質量部であることが好ましく、50〜75質量部であることがより好ましい。
【0038】
(2)有機フィラーについて
液晶シール剤には、平均粒子径4〜13μmの有機フィラーAと、平均粒子径0.05〜1μmの有機フィラーBとが含まれる。有機フィラーAの平均粒子径は好ましくは4〜10μmであり、さらに好ましくは5〜8μmである。一方、有機フィラーBの平均粒子径は、好ましくは0.1〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0039】
フィラーの平均粒子径は、顕微鏡法、具体的には電子顕微鏡の画像解析により測定することができる。具体的には、液晶シール剤について画像解析し、粒子径が4μm以上の有機フィラーを50個選別して、粒子径を測定した場合の平均値を、有機フィラーAの平均粒子径とする。同様に、液晶シール剤について画像解析し、粒子径が1μm以下の有機フィラーを50個選別して、粒子径を測定した場合の平均値を、有機フィラーBの平均粒子径とする。
【0040】
本発明の液晶シール剤を硬化して得られるシール部材では、前述のように、有機フィラーAが可逆的または不可逆的に変形することで、液晶のリークが抑制される。一方、有機フィラーBによって、有機フィラーAどうしの隙間が埋まり、液晶シール剤のシールパターンの線幅方向の直線性が高まる。さらに、有機フィラーBによって、シール部材の応力緩和性が高まり、シール部材と基板との接着強度が高まる。
【0041】
ここで、液晶シール剤に含まれる有機フィラーAの質量をW1、有機フィラーBの質量をW2としたとき、W1/(W1+W2)は0.25〜0.75であり、好ましくは0.3〜0.7であり、さらに好ましくは0.4〜0.6である。有機フィラーAが上記範囲であると、液晶のリークが抑制されやすくなる。また有機フィラーAの量が過剰であると、シールパターンの線幅が不均一になりやすいが、有機フィラーA及び有機フィラーBが上記比率で含まれると、シールパターンの線幅が均一になりやすい。また、有機フィラーBの量が過剰であると、液晶シール剤の粘度が過剰に高まり、チクソ性が低下し、液晶シール剤の調製時に気泡が噛み込まれやすく、さらに気泡が抜けにくいが、上記範囲であれば、液晶シール剤の粘度が適度な範囲に収まりやすい。
【0042】
液晶シール剤に含まれる有機フィラーAの質量W1と、有機フィラーBの質量W2の比率を測定する方法の例としては、次の方法が挙げられる。液晶シール剤を用いて一定の膜厚の硬化フィルムを作製し、当該硬化膜をTEM(透過型電子顕微鏡)観察する。そして、一定の体積内に存在する有機フィラーの粒子径と個数を分析する。観察された有機フィラーを、粒子径が4μm以上である有機フィラーAと、粒子径が1μm以下である有機フィラーBとにわけ、それぞれの粒子径から計算される有機フィラーの体積と、有機フィラーの比重から、液晶シール剤に含まれる有機フィラーAの質量W1及び有機フィラーB
の質量W2を算出する。
【0043】
ここで、液晶シール剤に含まれる有機フィラーA及び有機フィラーBの合計量は、前述の(1a)(メタ)アクリル樹脂及び(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の合計(樹脂ユニット)100質量部に対して、20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量部であり、さらに好ましくは20〜60質量部である。有機フィラーA及び有機フィラーBの合計量が20質量部以上であれば、有機フィラーの添加効果が得られやすい。一方、有機フィラーA及び有機フィラーBの量が100質量部以下であると、前述の樹脂成分によって、フィラーA及びフィラーBが十分に結着されやすい。
【0044】
なお、液晶シール剤に含まれる有機フィラーAの量は、前述の(1a)(メタ)アクリル樹脂及び(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の合計(樹脂ユニット)100質量部に対して、5〜75質量部であることが好ましく、より好ましくは6〜70質量部であり、さらに好ましくは6〜60質量部であり、特に好ましくは6〜40質量部である。また、液晶シール剤に含まれる有機フィラーBの量も、前述の(1a)(メタ)アクリル樹脂及び(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の合計(樹脂ユニット)100質量部に対して、5〜75質量部であることが好ましく、より好ましくは6〜70質量部であり、さらに好ましくは6〜60質量部であり、特に好ましくは6〜40質量部である。
【0045】
上記有機フィラーA及び有機フィラーBは、液晶シール剤の熱硬化温度で融解し難いものであることが好ましい。また特に有機フィラーA及び有機フィラーBの軟化点は30〜120℃であることが好ましい。有機フィラーAの軟化点が、上記範囲であると、当該温度において、有機フィラーAが容易に変形しやすくなり、2枚の基板間で、有機フィラーAが容易に変形してこれらのギャップを埋めやすくなる。また、有機フィラーBの軟化点が上記範囲であると、有機フィラーBが有機フィラーAどうしの隙間に入り込みやすくなり、シールパターンの線幅が均一になりやすい。
【0046】
有機フィラーA及び有機フィラーBの例には、シリコーン微粒子、アクリル微粒子、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン微粒子、およびポリオレフィン微粒子からなる群より選ばれる微粒子等が含まれる。
【0047】
また、有機フィラーA及び有機フィラーBの形状は特に制限されないが、好ましくは球状であり、さらに好ましくは真球状である。球状であるとは、各粒子の直径の最大値(a)に対する最小値(b)の比b/a=0.9〜1.0であることをいう。フィラーの粒子径は、顕微鏡法、具体的には電子顕微鏡の画像解析により測定することができる。また、有機フィラーA及び有機フィラーBの表面は平滑であることが好ましい。表面が平滑であると比表面積が低下して、液晶シール剤に添加可能な有機フィラーA及び有機フィラーBの量が増加する。有機フィラーA及び有機フィラーBは、液晶シール剤においては球状であったり、平滑な表面を有していることが好ましいが、液晶表示パネルにおけるシール部材(液晶シール剤の硬化物)においては球状でなくても、平滑な表面を有していなくてもよい。液晶表示パネルの製造過程において、液晶シール剤中の有機フィラーが変形するためである。
【0048】
液晶シール剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、平均粒子径が1μm超5μm未満である有機粒子が含まれてもよい。
【0049】
(3)ラジカル重合開始剤について
液晶シール剤には、(1a)(メタ)アクリル樹脂や(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等を光硬化反応させるための光ラジカル重合開始剤や熱硬化反応させるための熱ラジカ
ル重合開始剤が含まれる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤としては公知のものが使用できる。光ラジカル重合開始剤の例には、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサ
ントン系化合物、α−アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、アントラキノン系化合物等が含まれる。
【0051】
アルキルフェノン系化合物の例には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651)等のベンジルジメチルケタール;2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(IRGACURE 907)等のα−アミノアルキルフェノン;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184)等のα−ヒドロキシアルキルフェノン等が含まれる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が含まれる。チタノセン系化合物には、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が含まれる。オキシムエステル化合物の例には、1
,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(0−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01)等が含まれる。
【0052】
熱ラジカル重合開始剤の例には、有機過酸化物系化合物やアゾ化合物等が含まれる。熱ラジカル重合開始剤としては、10時間半減期温度の下限が80℃、上限が150℃のものが好適に用いられる。
【0053】
有機過酸化物系化合物の具体例には、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系化合物;1,1−ジ(t−ブチルオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール系化合物;t−ブチルパーオキシ
ピバレート等のアルキルパーオキシエステル系化合物;ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系化合物;(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネイト等のパーオキシジカーボネイト系化合物;t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネイト等のパーオキシカーボネイト系化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系化合物;t−アミルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系化合物;等が含まれる。
【0054】
アゾ化合物の具体例には、1,1’−アゾビス(2,4−シクロヘキサン)−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス[(2−イミダゾリン−2−
イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレイト等の水溶性アゾ化合物;1−[(シアノ−1−メチル)アゾ]ホル
ムアミド等の油溶性アゾ化合物;高分子アゾ化合物;等が含まれる。
【0055】
液晶シール剤におけるラジカル重合開始剤の含有量は、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計である樹脂ユニット100質量部に対して、0.01〜3.0質量部であることが好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量を0.01質量部以上とすることにより液晶シール剤の硬化性が良好となる。一方、含有量を3.0質量部以下とすることにより、基板への塗布時の安定性が良好となる。
【0056】
(4)エポキシ硬化剤について
前述のように、液晶シール剤には、エポキシ硬化剤が含まれてもよい。本発明でいうエポキシ硬化剤とは、エポキシ樹脂に混合されていても、樹脂を通常保存する状態(室温、可視光線下等)ではエポキシ樹脂を硬化させないが、熱を与えられるとエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤である。エポキシ硬化剤を含有する液晶シール剤は、保存安定性に優れ、かつ熱硬化性に優れる。
【0057】
エポキシ硬化剤は、公知のものでありうるが、液晶シール剤の粘度安定性を高めるとともに、耐湿性を維持する観点から、熱硬化温度にもよるが、融点が50℃以上250℃以下であるエポキシ硬化剤が好ましく、融点が100℃以上200℃以下であるエポキシ硬化剤がより好ましく、融点が150℃以上200℃以下であるエポキシ硬化剤がさらに好ましい。
【0058】
そのようなエポキシ硬化剤の好ましい例には、有機酸ジヒドラジド系化合物、イミダゾール系化合物、ジシアンジアミド化合物、およびポリアミン系化合物等が含まれる。
【0059】
有機酸ジヒドラジド系化合物の例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、およびセバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等が含まれる。イミダゾール系化合物の例には、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチルイミダゾリル-(1')]-エチルトリアジン(融点215〜225℃)、および2-フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)等が含まれる。ジシアンジアミド系化合物の例には、ジシアンジアミド(融点209℃)等が含まれる。ポリアミン系化合物は、アミンとエポキシとを反応させて得られるポリマー構造を有する熱潜在
性硬化剤であり、その具体例には、(株)ADEKA製アデカハードナーEH4339S(軟化点120〜130℃)、および(株)ADEKA製アデカハードナーEH4357S(軟化点73〜83℃)等が含まれる。液晶シール剤には、これらが一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。
【0060】
液晶シール剤におけるエポキシ硬化剤の含有量は、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計である樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましい。エポキシ硬化剤を含む液晶シール剤は、いわゆる一液硬化性樹脂組成物となりうる。一液硬化性樹脂組成物は使用に際して主剤と硬化剤を混合する必要がないので作業性に優れる。
【0061】
(5)無機フィラー
本発明の液晶シール剤には、さらに無機フィラーが含まれてもよい。無機フィラーの添加により、液晶シール剤の粘度、硬化物の強度、および線膨張性の制御等を行うことができる。
【0062】
無機フィラーは、特に制限されないが、その例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト
、活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが含まれ、好ましくは二酸化ケイ素、タルクである。
【0063】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。無機フィラーは平均一次粒子径が1.5μm以下であることが好ましく、かつその比表面積が0.5m
2/g〜20m
2/gであることが好ましい。無機フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。また、比表面積測定は、JIS Z8830に記載のBET法により測定できる。
【0064】
液晶シール剤における無機フィラーの含有量は、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計である樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましい。
【0065】
(6)エポキシ樹脂
液晶シール剤には、エポキシ樹脂が含まれてもよい。エポキシ樹脂は、液晶に対する溶解性、拡散性が低く、得られる液晶パネルの表示特性が良好であるだけでなく、硬化物の耐湿性を高めうる。
【0066】
このようなエポキシ樹脂は、重量平均分子量が500〜10000、好ましくは1000〜5000の芳香族エポキシ樹脂でありうる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)できる。
【0067】
このような芳香族エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類や、これらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂や、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が含まれる。
【0068】
上記芳香族エポキシ樹脂は、中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。さらにこれらを混合して用いてもよい。
【0069】
エポキシ樹脂の含有量は、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計である樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、液晶シール剤の粘度が高くなり、塗布性が低下することがあり、エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、液晶シール剤の硬化物の耐湿性が不十分となることがある。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形であってもよい。固形エポキシ樹脂の場合、軟化点が40℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0070】
(7)遮光剤
液晶シール剤には、シール部材に遮光部としての機能を付与する目的で、遮光剤が含まれてもよい。液晶シール剤に遮光剤が含まれると、シール部材が液晶パネルの遮光部として機能する。遮光剤は、例えば黒色顔料や黒色染料等でありうる。これらの例には、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、有機系顔料等が含まれる。
【0071】
遮光剤の形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。遮光剤は平均一次粒子径が1.0μm以下であることが好ましい。無機フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。
【0072】
遮光剤の含有量は、(1a)(メタ)アクリル樹脂と(1b)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂との合計である樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましい。遮光剤の含有量が多すぎると、液晶シール剤の粘度が高くなり、塗布性が低下することがある。遮光剤の量が少なすぎると、シール部材の遮光性が不十分となることがある。
【0073】
(8)その他の成分について
液晶シール剤には、必要に応じて熱ラジカル重合開始剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤がさらに含まれてもよい。また、液晶パネルのギャップを調整するためにスペーサー等が配合されていてもよい。
【0074】
本発明の液晶シール剤のE型粘度計の25℃、2.5rpmにおける粘度は、200〜450Pa・sであることが好ましく、300〜400Pa・sであることがより好ましい。粘度が上記範囲にあると、液晶セルの基板と基板とを重ね合わせたときに、液晶シール剤が所定の形状に変形しやすい。そのため、液晶セルの基板と基板とのギャップ幅を適正に制御できる。
【0075】
また、本発明の液晶シール剤のチクソトロピーインデックス(TI値)は、液晶シール剤の塗布性の観点から、1.0〜1.5であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.3である。TI値は、E型粘度計を用い、室温(25℃)、0.5rpmにおける液晶シール剤の粘度η1、5rpmにおける液晶シール剤の粘度η2を測定し、これらの測定値を、下記式(1)に当てはめて得られる値である。
TI値=(0.5rpmにおける粘度η1(25℃))/(5rpmにおける粘度η2(25℃))・・・(1)
【0076】
本発明の液晶シール剤は、光硬化と熱硬化を併用することが多い液晶滴下工法用の液晶シール剤に好ましく用いられる。
【0077】
2.液晶表示パネルの製造方法
本発明の方法で作製する液晶表示パネルは、表示基板と、それと対になる対向基板と、表示基板と対向基板との間に介在している枠状のシール部材と、表示基板と対向基板との間のシール部材で囲まれた空間に充填された液晶層とを含む。本発明の方法では、前述の液晶シール剤の硬化物を、シール部材とする。
【0078】
表示基板および対向基板は、いずれも透明基板である。透明基板の材質は、ガラス、または、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォンおよびPMMA等のプラスチックでありうる。
【0079】
表示基板または対向基板の表面には、マトリックス状のTFT、カラーフィルタ、ブラックマトリクス等が配置されうる。表示基板または対向基板の表面には、さらに配向膜が形成される。配向膜には、公知の有機配向剤や無機配向剤等が含まれる。
【0080】
このような液晶表示パネルは、本発明の液晶シール剤を用いて製造される。液晶表示パネルの製造方法には、一般に、液晶滴下工法と、液晶注入工法とがあるが、本発明の液晶表示パネルの製造方法は、液晶滴下工法であることが好ましい。
【0081】
液晶滴下工法による液晶表示パネルの製造方法は、
a1)一方の基板に、本発明の液晶シール剤のシールパターンを形成する第1の工程と、
a2)シールパターンが未硬化の状態において、基板のシールパターンで囲まれた領域内、またはシールパターンで囲まれた領域に対向する他方の基板の領域に、液晶を滴下する第2の工程と、
a3)一方の基板と、他方の基板とを、シールパターンを介して重ね合わせる第3の工程と、
a4)シールパターンを硬化させる第4の工程と、を含む。
【0082】
工程a2)における、シールパターンが未硬化の状態とは、液晶シール剤の硬化反応がゲル化点までは進行していない状態を意味する。このため、工程a2)では、液晶シール剤の液晶への溶解を抑制するために、シールパターンを光照射または加熱して半硬化させてもよい。一方の基板および他方の基板は、それぞれ表示基板または対向基板である。
【0083】
工程a3)において基板を重ね合わせたときに、液晶シール剤に含まれる平均粒子径が比較的大きい有機フィラーAが、可逆的または不可逆的に変形する。変形とは、押しつぶされるか、またはひしゃげること等をいう。つまり、液晶シール剤における有機フィラーAは球状であることが好ましいが;一方で、液晶表示パネルの液晶シールにおける有機フィラーAは球状である必要はなく、押しつぶされている。
【0084】
前述のように、本発明の液晶シール剤には、比較的平均粒子径の小さな有機フィラーBが含まれているため、シールパターンの幅を細くしても、均一に液晶シール剤が塗布されやすい。シールパターンの線幅は、0.2〜1.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.7mmである。
【0085】
また、本発明の液晶シール剤は、シール部材としたときに、有機フィラーAが押しつぶされて、液晶のリークが効果的に抑制される。また、基板同士の接着強度が高まる。一方で、液晶シール剤には、平均粒子径が比較的小さい有機フィラーBが含まれるため、シール部材の幅が細くとも、線幅が均一になりやすく、局所的に強度が低い箇所が生じ難い。
【0086】
さらに、液晶シール剤に含まれる有機フィラーA及び有機フィラーBの比率が所定の範囲であるため、液晶シール剤の粘度が適度に低い。そのため、液晶セルの基板同士を重ねあわせるときに、基板間のギャップ幅を適正に制御しやすい。
【0087】
工程a4)では、加熱による硬化のみを行ってもよいが、光照射による硬化(仮硬化)を行った後、加熱による硬化(本硬化)を行ってもよい。光照射による仮硬化で液晶シール剤を瞬時に硬化させることで、液晶への溶解を抑制できる。
【0088】
光照射時間は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば10分程度である。光照射エネルギーは、(メタ)アクリル樹脂や(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等を硬化させることができる程度のエネルギーであればよい。光は、好ましくは紫外線である。熱硬化温度は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば120℃であり、熱硬化時間は2時間程度である。
【0089】
本発明の液晶表示パネルは、液晶リークが抑制されており、かつ基板とシール部材との接着強度が高いため、高品質の表示装置を提供する。
【実施例】
【0090】
以下の樹脂成分を用意した。
(1)樹脂
(1a)2官能アクリル樹脂:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂変性ジアクリレート(3002A、共栄社化学株式会社製、水素結合性官能基当量3.3×10
−3)
(1b)アクリル変性エポキシ樹脂:
以下の方法で調製されるアクリル変性エポキシ樹脂とした。(調製方法)
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコにビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−835LV DIC社製)160g、アクリル酸36g、トリエタノールアミン0.2gを仕込み、乾燥エア気流下、110℃、5時間加熱攪拌してアクリル変性エポキシ樹脂を得た。得られたアクリル変性エポキシ樹脂を超純水にて12回洗浄した。アクリル変性エポキシ樹脂の水素結合性官能基当量は2.1×10
−3であった。
【0091】
(2)有機フィラーA:
(2−1)GBM−55S(架橋ポリアクリル酸ブチル−メタクリル酸メチルグラフト共重合体、アイカ工業社製、平均粒子径6μm)
(2−2)P−800T(ウレタンパウダー、根上工業社製、平均粒子径7μm)
(2−3)KMP600(シリコーンゴムパウダー、信越化学工業(株)製、平均粒子径5μm)
(2−4)SE−006T(アクリルパウダー、根上工業社製、平均粒子径6μm)
【0092】
(3)有機フィラーB:
F351(メタクリル酸アルキル共重合体、アイカ工業社製、平均粒子径0.3μm)
【0093】
(4)ラジカル重合開始剤
(4−1)熱ラジカル重合開始剤:1,1’−アゾビス(2,4−シクロヘキサン
)−1−カルボニトリル(V−40:和光純薬工業株式会社製)
(4−2)光ラジカル重合開始剤:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651: BASF社製)
【0094】
・その他
無機フィラー:KE−S30(球状シリカ、日本触媒社製、平均粒子径0.24μm、最大粒子径0.9μm)
エポキシ樹脂:エピクロン850CRP(ビスフェノールA型エポキシ樹脂:DIC社製)
エポキシ硬化剤(熱潜在性硬化剤): 1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(アミキュアVHD 味の素社製)
添加剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)
【0095】
[実施例1]
2官能アクリル樹脂を70質量部、有機フィラーA(2−1)を15質量部、有機フィラーBを5質量部、熱ラジカル重合開始剤(4−1)を1質量部、エポキシ樹脂を5質量部、熱潜在性硬化剤を3質量部、添加剤を1質量部、を含む樹脂組成物を、三本ロールを用いて液組成が均一になるように十分に混合して、液晶シール剤を得た。
【0096】
[実施例2〜14、比較例1〜9]
表1及び表2に記載の組成(質量比)で、実施例1と同様に液晶シール剤を得た。
【0097】
[液晶シール剤の評価方法]
各実施例および比較例で得られた液晶シール剤について、以下の項目を評価した。
【0098】
1)粘度
得られた液晶シール剤の粘度を、E型粘度計により25℃で、1.0rpm及び2.5rpmにて測定した。
【0099】
2)チクソトロピーインデックス(TI値)
E型粘度計を用い、室温(25℃)、0.5rpmにおける液晶シール剤の粘度η1、5rpmにおける液晶シール剤の粘度η2を測定した。これらの測定値を、下記式(1)に当てはめてTI値を求めた。
TI値=(0.5rpmにおける粘度η1(25℃))/(5rpmにおける粘度η2(25℃))・・・(1)
【0100】
3)接着強度
スクリーン版を使用して液晶シール剤を25mm×45mm×厚さ5mmの無アルカリガラス上に印刷した。シールパターンは、直径1mmの円状とした。そして、対となる無アルカリガラスにシールパターン状に載置し、治具で固定した。
【0101】
そして実施例6、7、比較例4、5の液晶シール剤では、治具で固定した試験片に対して、紫外線照射装置(ウシオ電機社製)から、100mW/cm
2の紫外線を照射し、液晶シール剤を硬化させた。このとき、紫外線の照度エネルギーは2000mJ/cm
2とした。光によって液晶シール剤を硬化させた試験片を、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理し、接着強度測定用のサンプルとした。
【0102】
一方、実施例1〜5、8〜14、比較例1〜3、及び6〜9の液晶シール剤では、治具で固定した試験片を、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理することにより接着強度測定用のサンプルとした。
【0103】
そして、引張試験機(インテスコ社製)を用いて、引張速度を2mm/分とし、硬化した液晶シール剤をガラス底面に対して平行な方向に引き剥がすことにより、平面引張強度を測定した。ここで、接着強度は、平面引張強度の大きさに応じて4段階で以下のように評価した。
◎:引張強度が30MPa以上であり、接着強度が非常に良好である
〇:引張強度が25MPa以上30MPa未満であり、接着強度が良好である
△:引張強度が20MPa以上25MPa未満であり、接着強度が良好である
×:引張強度が20MPa未満であり、接着強度が低い
【0104】
4)パネルのギャップコントロールの評価方法
各実施例および比較例の液晶シール剤に、5μmの球状スペーサーを1質量部さらに添加した。得られた組成物をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)に充填し、40mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラスの基板の上に35mm×40mm、線幅0.7mmの四角形の枠状のシールパターンを断面積3500μm
2で描画した。当該基板のシールパターン内に、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社)をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にて精密に滴下した。そして真空貼り合せ装置(信越エンジニアリング社製)にて、10Pa・sの減圧下で前述のガラス基板と対向するガラス基板とを重ね合わせ、荷重をかけて固定した。
【0105】
そして、実施例6、7、比較例4、5については、固定後のサンプルに、紫外線照射装置(ウシオ電機社製)から100mW/cm
2の紫外線を照射し、液晶シール剤を硬化させた。このとき、紫外線の照度エネルギーは2000mJ/cm
2とした。光によって液晶シール剤を硬化させた後、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理することによって液晶表示パネルを作製した。
【0106】
一方、実施例1〜5、8〜14、比較例1〜3、6〜9については、固定後のサンプルを、オーブンにて120℃、60分加熱処理し、液晶表示パネルを作製した。
【0107】
そして、セルギャップ検査装置(大塚電子製)にて、サンプルのメインシール内のギャップの分布(面内分布)を測定し、以下の基準で評価した。
×:ギャップの最大値、最小値のいずれか一方もしくは両方が、5μm±0.2μmの範囲に無い場合
△:ギャップの最大値、最小値の両方が5μm±0.20μmの範囲内にあるものの、少なくとも一方、もしくは両方が5μm±0.15μmの範囲内に無い場合
〇:ギャップの最大値、最小値の両方が、5μm±0.15μmの範囲内にあるものの、少なくとも一方、もしくは両方が5μm±0.10μmの範囲内に無い場合
◎:ギャップの最大値、最小値の両方が5μm±0.10μmの範囲内に有る場合
【0108】
5)リーク耐性
各実施例および比較例の液晶シール剤に、5μmの球状スペーサーを1質量部さらに添加した。得られた組成物をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)に充填し、40mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラスの基板の上に35mm×40mm、線幅0.7mmの四角形の枠状のシールパターンを断面積3500μm
2で描画した。当該基板のシールパターン内に、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社)をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にて精密に滴下した。真空貼り合せ装置(信越エンジニアリング社製)にて、10Pa・sの減圧下で前述のガラス基板と対向するガラス基板とを重ね合わせ、荷重をかけ固定した。
【0109】
そして、大気圧へ解放後、室温下で放置し、パネル内の液晶が外へ漏出するまでの時間を測定した。また、シールパターンへの液晶の入り込みを光学顕微鏡で観察した。リーク耐性を以下の基準にて4段階で判定した。
◎:大気圧解放後、10分以上放置しても液晶は漏出せず、更にシール剤への液晶の入り込みが観察されなかった
○:大気圧解放後、10分以上放置しても液晶は漏出しないが、シール剤への液晶の入り込みが観察された
△:大気圧解放後の放置時間が5分以上、10分未満で液晶が漏出した
×:大気圧解放後の放置時間が5分未満で液晶が漏出した
【0110】
6)シール直線性
各実施例および比較例の液晶シール剤に、5μmの球状スペーサーを1質量部さらに添加して、スペーサーが添加された液晶シール剤を
調製した。得られた組成物をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)に充填し、40mm×50mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラスの基板の上に35mm×40mm、線幅0.7mmの四角形の枠状のシールパターンを断面積3500μm
2で描画した。当該基板のシールパターン内に、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社)をディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にて精密に滴下した。真空貼り合せ装置(信越エンジニアリング社製)にて、10Pa・sの減圧下で前述のガラス基板と対向するガラス基板とを重ね合わせ、荷重をかけ固定した。
【0111】
大気圧へ解放後、直ちに次の処理を行った。
実施例6、7、比較例4、5については、固定したサンプルを、紫外線照射装置(ウシオ電機社製)から、100mW/cm
2の紫外線を照射し、液晶シール剤を硬化させた。このとき、紫外線の照度エネルギーは2000mJ/cm
2とした。光によって液晶シール剤を硬化させた後、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理して、液晶表示パネルを作製した。
一方、実施例1〜5、8〜14、比較例1〜3、6〜9については、固定したサンプルを、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理して液晶表示パネルを作製した。
【0112】
完成した液晶表示パネルについて、光学顕微鏡でシール部材(シールパターン)の線幅を測定した。そして線幅の均一性について、以下のように評価した。
×:線幅の最大値、最小値の何れか一方、もしくは両方が、線幅の平均値の±20%の範囲に無い場合
〇:線幅の最大値、最小値の両方が、線幅の平均値の±20%以内にあるものの、いずれか一方、もしくは両方が、線幅の平均値の±10%以上である場合
◎:線幅の最大値、最小値の両方が、線幅の平均値の±10%未満の範囲内に有る場合
【0113】
各実施例および比較例の液晶シール剤の組成と、評価結果とを、表1及び表2にまとめた。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表1に示されるように、液晶シール剤に、比較的粒子径の大きなフィラーAと、比較的粒子径の小さなフィラーBとが所定の比率(0.25≦W1/(W1+W2)≦0.75)で含まれると、液晶シールの接着強度が高く、リーク耐性も優れた。さらに、パネルのギャップコントロールやシール直線性も良好な評価が得られた(実施例1〜14)。
【0117】
一方、表2に示されるように、液晶シール剤にフィラーAのみが含まれる場合、フィラーAの量が多い(35質量%である)と、シール直線性が低くなり、接着強度も25MPa未満であった(比較例1)。フィラーAによって、シールパターンの幅が不均一になり、局所的に接着強度が低くなったと推察される。一方で、液晶シール剤にフィラーAのみが含まれ、かつフィラーAの量が少ない(10質量%である)と、接着強度が20MPa未満であり、さらにリーク耐性も低かった(比較例2)。フィラーAが少なかったため、シールパターンの幅は均一になったものの、十分に液晶のリークを抑制できなかったと推察される。
【0118】
また、フィラーAと、フィラーBとを組み合わせたとしても、フィラーAの比率が多過ぎると、シールパターンの線幅が不均一になり、リーク耐性が低かった(比較例3〜5及び7)。局所的にシールパターンの強度が低くなったと推察される。一方、フィラーBの比率が多すぎると、シール直線性が低くなり、リーク耐性も低かった(比較例6、及び8)。フィラーAによって十分に基板間のギャップを埋めることができず、リーク耐性が低下したと推察される。また、フィラーBによって、TI値が高まり、均一に液晶シール剤が広がり難かったため、シール直線性が低下したと推察される。また、パネルのギャップコントロールも、同様の理由から低かったと推察される。さらに、有機フィラーBの代わりに、同様の
平均粒子径を有する無機フィラーを含む場合(比較例8)、接着強度が低く、かつリーク耐性が低かった。無機フィラーは、有機フィラーBと比較して硬いため、シールパターンが基板に密着し難く、十分に接着強度を高めることが難しかったと推察される。
【0119】
本出願は、2014年7月24日出願の特願2014−150615号に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。