特許第6370448号(P6370448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370448
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20180730BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B41J2/21
   B41J2/01 129
   B41J2/01 123
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-137698(P2017-137698)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2013-210575(P2013-210575)の分割
【原出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-185825(P2017-185825A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 章
(72)【発明者】
【氏名】古旗 朝隆
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−106473(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099557(WO,A1)
【文献】 特開2005−153384(JP,A)
【文献】 特開2011−218794(JP,A)
【文献】 特開2004−002668(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0127960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成された乾燥した第1インク層上に、第2インクを吐出した後乾燥させて第2インク層を形成する第2インク層形成工程と、
上記第2インク層上に、第3インクを吐出した後乾燥させて第3インク層を形成する第3インク層形成工程と
を包含し、
上記第1インク層を形成する第1インクは、当該第1インクを吐出した後乾燥させて形成された第1インク層が上記第2インクに可溶で、且つ第3インクにより滲むインクであり、
上記第2インク層形成工程における乾燥は、乾燥後の上記第1インク層が滲む前に行い、
上記第2インク層形成工程における乾燥時間は、上記第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短く、
上記第3インク層形成工程における乾燥は、上記第2インク層上に吐出された第3インクが濡れ広がってなる層の表面が平坦化するのに十分な時間が経過してから行うことを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項2】
上記第1インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項3】
上記第2インク層は、上記第3インクに溶解せず滲まない層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項4】
上記第2インクと上記第3インクとが同一であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項5】
上記第2インクは、クリアインクであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項6】
上記第3インクは、クリアインクであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項7】
上記第2インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項1〜6の何れか
1項に記載のインクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型インクを用いたインクジェット印刷においては、記録媒体上に紫外線硬化型インクを吐出して形成したインク層に紫外線を照射して、インク層を硬化させる。このような紫外線硬化型インクを用いたインクジェット印刷方法として、例えば、特許文献1に記載の印刷方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−358769号公報(2004年12月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線硬化型インクには、着色剤を含まない透明な紫外線硬化型インクがあり、クリアインクとして知られている。クリアインクは、カラープリント上のオーバーコート、記録媒体のコーティング等として用いられる。特許文献1に記載されたインクジェット印刷方法により紫外線硬化型インクを印刷媒体に吐出したとき、記録媒体に着弾した直後のインク層表面には凹凸がある。クリアインクをオーバーコート等として用いた場合、その凹凸による反射率の違いから印刷物に光沢ムラが発生する場合がある。
【0005】
これを防止するため、一定時間経過させてインク層表面の凹凸を平坦化した後、紫外線を照射する対策がなされている。特に、クリアインクをオーバーコートとして用いる場合には、高い光沢性が要求されることから、クリアインク層表面を十分時間をかけて平坦化させる必要がある。
【0006】
しかしながら、このようにクリアインク層を平坦化させる場合、その過程で、その下層のカラープリント層のインクがクリアインクにより滲み、画像が不鮮明になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができるインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインクジェット印刷方法は、記録媒体上に形成された第1インク層上に、第2インクを吐出した後乾燥させて第2インク層を形成する第2インク層形成工程と、上記第2インク層上に、第3インクを吐出した後乾燥させて第3インク層を形成する第3インク層形成工程とを包含し、上記第2インク層形成工程における乾燥時間は、上記第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短いことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、第1インク層に接する第2インク層を形成する第2インク層形成工程において、第2インクを短時間で乾燥させるため、第2インクにより第1インク層のインクが滲むことを素早く防ぐことができる。また、第2インク層上にさらに第3インク層を設け、第3インクを長時間かけて乾燥させるため、第3インク層の表面を十分に平坦化させることができる。これにより、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0010】
また、本発明に係るインクジェット印刷方法において、上記第1インク層を形成する第1インクは、溶剤に可溶なインクであることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、第1インク層を、より滲みやすい、溶剤に可溶な第1インクを用いて形成する場合でも、第1インク層に接する第2インク層の形成時に、第2インクを乾燥させる乾燥時間が短いため、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷方法において、上記第2インクと上記第3インクとが同一であることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、同一のインクを用いて第2インク層の乾燥時間を第3インク層の乾燥時間より短くするだけで、第2インク層により第1インク層の滲みを防ぎ、第3インク層により印刷物の光沢性が得られるので、滲みがなく高光沢な印刷物を容易に得ることができる。
【0014】
また、本発明に係るインクジェット印刷方法において、上記第3インクは、クリアインクであることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、第3インク層の表面を十分に平坦化させて高い光沢性を得ることができるので、第3インク層としてクリアインクを用いることによって、高光沢なオーバーコートが可能である。
【0016】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷方法において、上記第2インクは、紫外線硬化型インクであることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、第2のインク層を、速乾性に優れた紫外線硬化型インクにより形成するため、より滲みのない印刷物を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷方法は、第1インク層上に第2インク層を形成する第2インク層形成工程における乾燥時間が、第2インク層上に第3インク層を形成する第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短いため、第1インク層のインクが溶解して滲むことを防ぐと共に、第3インク層によりコーティングされた、光沢性に優れた印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法を説明する模式図である。
図2】実施例の印刷結果を表す顕微鏡写真を示す図である。
図3】比較例の印刷結果を表す顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法を説明する模式図である。本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法は、記録媒体10上に形成された第1インク層1上に、第2インクを吐出した後乾燥させる第2インク層形成工程と、上記第2インク層2上に、第3インクを吐出した後乾燥させる第3インク層形成工程とを包含している。そして、インクジェット印刷方法において、上記第2インク層形成工程における乾燥時間は、上記第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短い。つまり、第2インクを第3インク層形成工程における乾燥時間より短い時間をかけて乾燥させ、第3インクを第2インク層形成工程における乾燥時間より長い時間をかけて乾燥させる。換言すれば、第2インク層は第3インク層よりも、より短い時間で乾燥するものである。
【0021】
(第1インク層形成工程)
本発明に係るインクジェット印刷方法は、図1中(a)に示すように、記録媒体10上に第1インク層1を形成する第1インク層形成工程をさらに包含していてもよい。第1インク層形成工程においては、記録媒体10に対して、第1インク層1を形成する第1インクを吐出し、乾燥させる。記録媒体10に対する第1インクの吐出は、従来公知のインクジェット印刷装置を用いて好適に行うことができる。また、記録媒体10としては、従来公知の記録メディア等を好適に使用可能である。
【0022】
第1インク層1を形成する第1インクとしては、紫外線硬化型インク、溶剤インク、ラテックスインク等従来公知の種々のインクを用いることが可能であり、着色剤を含有するカラーインクであってもよい。第1インクは、速乾性に優れた紫外線硬化型インクであることが好ましい。
【0023】
第1インクが紫外線硬化型インクである場合、第1インク層形成工程においては、記録媒体10に対して第1インクを吐出した後、LED等から紫外線を照射することによって、第1インク層1を硬化させればよい。これにより、より短時間で第1インク層1を形成することができる。
【0024】
また、第1インクは、溶剤に可溶なインクであってもよい。溶剤に可溶なインクとしては、ミマキエンジニアリング社製のLUS−150、LF−140、LF−200、LUS−200等が挙げられる。第1インク層1を、より滲みやすい、溶剤に可溶な第1インクを用いて形成しても、後述するように、第1インク層に接する第2インク層2の形成時に第2インクを乾燥させる乾燥時間が短いため、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0025】
(第2インク層形成工程)
第2インク層形成工程においては、図1中(b)に示すように、記録媒体10上に形成された第1インク層1上に、第2インクを吐出した後乾燥させて第2インク層2を形成する。そして、第2インク層形成工程における乾燥時間は、後述する第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短い。第1インク層1に対する第2インクの吐出及び第2インク層2の乾燥は、従来公知のインクジェット印刷装置を用いて好適に行うことができる。
【0026】
第1インク層に接する第2インク層を形成する第2インク層形成工程において、第2インクを乾燥させて第2インク層を形成するまでの乾燥時間を短くすることによって、第2インクにより第1インク層のインクが滲むことを防ぐことができる。本発明においては、第2インク層2の上にさらに第3インク層を設けるため、第2インクが濡れ広がる時間を経過させずに第2インク層2を乾燥させてその表面に凹凸が形成されたとしても、最表面となる第3インク層の表面が平坦化されることにより高光沢な印刷物を得ることができる。これにより、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0027】
したがって、第2インク層形成工程においては、第2インクが第1インク層1上に着弾すると同時に乾燥させることが好ましい。すなわち、第2インク層形成工程においては、第2インクを吐出しながら第1インク層1上の第2インクを乾燥させることが好ましい。これにより、より確実に第1インク層の滲みを防ぐことができる。
【0028】
第2インク層2を形成する第2インクとしては、紫外線硬化型インク、ラテックスインク等の従来公知の種々のインクを用いることが可能であり、着色剤を含有するカラーインクであってもよいし、着色剤を含まないクリアインクであってもよい。第2インクは、速乾性に優れた紫外線硬化型インクであることが好ましい。また、第2インク層2を、インク以外の耐溶剤性を有する液体より形成してもよい。第2インク層2は、第3インク層3を形成する第3インクに溶解せず、滲まない層である。
【0029】
第2インクが紫外線硬化型インクである場合、第2インク層形成工程においては、第1インク層1に対して第2インクを吐出した後又は吐出しながら、LED等から紫外線を照射することによって、第2インク層2を硬化させればよい。これにより、より短時間で第2インク層2を形成することができる。また、第2インクが紫外線硬化型インクであれば、より短時間で第2インク層2を硬化させることができるので、より確実に第1インク層1の滲みを防ぐことができる。
【0030】
第2インク層2の乾燥に長時間を要すると、第1インク層1に滲みが生じてしまうため、第2インク層形成工程における第2インク層2の乾燥時間は、第1インク層1に滲みが生じない時間であることが好ましい。したがって、第2インクとして第1インクを溶解しやすいインクを用いる場合には、第2インクとして第1インクを溶解しにくいインクを用いる場合よりも乾燥時間を短くすればよい。
【0031】
第2インク層2の乾燥時間を第3インク層3の乾燥時間よりも短くする方法としては、第2インク層2は、第2インクを吐出した後すぐに乾燥させて形成する一方で、第3インク層3は、第3インクを吐出した後、一定時間経過してから乾燥させて形成するように、インクの吐出と乾燥とを制御する方法が挙げられる。また、第3インク層3よりも第2インク層2の層厚を薄くする方法、溶剤インクを用いる場合には、第3インクよりも速乾性に優れたインクを第2インクとして用いる方法等によっても、第2インク層2の乾燥時間を第3インク層3の乾燥時間よりも短くすることができる。
【0032】
(第3インク層形成工程)
第3インク層形成工程においては、図1中(c)及び(d)に示すように、第2インク層2上に、第3インクを吐出した後乾燥させて第3インク層3を形成する。そして、第3インク層形成工程における乾燥時間は、第2インク層形成工程における乾燥時間よりも長い。第2インク層2に対する第3インクの吐出及び第3インク層3の乾燥は、従来公知のインクジェット印刷装置を用いて好適に行うことができる。
【0033】
第3インク層形成工程においては、第3インクが第2インク層2上に着弾した後平坦化するために十分な時間が経過してから、乾燥させることが好ましい。これにより、第3インク層の表面が十分に平坦化し、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0034】
第3インク層3を形成する第3インクとしては、紫外線硬化型インク、溶剤インク、ラテックスインク等の従来公知の種々のインクを用いることが可能であり、着色剤を含有するカラーインクであってもよいし、着色剤を含まないクリアインクであってもよい。第3インク層の表面を十分に平坦化させて高い光沢性を得ることができるので、第3インク層としてクリアインクを用いることによって、高光沢なオーバーコートが可能である。
【0035】
第3インクが紫外線硬化型インクである場合、第3インク層形成工程においては、第2インク層2に対して第3インクを吐出した後、LED等から紫外線を照射することによって、第3インク層3を硬化させればよい。
【0036】
第3インクが第2インク層2上に着弾した後、第3インクが濡れ広がるために十分な時間が経過する前に乾燥してしまうと、第3インク層3表面に凹凸が生じ、光沢ムラが発生する場合がある。このため、第3インク層形成工程における第3インクが乾燥して第3インク層が形成するまでの乾燥時間は、第2インク層形成工程における乾燥時間よりも長く、第3インク層3の表面が平坦化するために十分な時間であることが好ましい。
【0037】
本発明においては、第2インク層2によって、第1インク層1と第3インク層3とが直接接触しないようになっているため、第3インク層3の表面が平坦化するために十分な時間第3インクを濡れ広がらせたとしても、第1インク層1が滲むことがない。したがって、滲みの問題を考慮することなく、第3インクを十分に濡れ広がらせることが可能であり、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0038】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
〔付記事項〕
本発明に係るインクジェット印刷方法は、記録媒体10上に形成された第1インク層1上に、第2インクを吐出した後乾燥させて第2インク層2を形成する第2インク層形成工程と、第2インク層2上に、第3インクを吐出した後乾燥させて第3インク層3を形成する第3インク層形成工程とを包含し、第2インク層形成工程における乾燥時間は、第3インク層形成工程における乾燥時間よりも短いことを特徴としている。
【0040】
上記の構成によれば、第1インク層1に接する第2インク層2を形成する第2インク層形成工程において、第2インクを短時間で乾燥させるため、第2インクにより第1インク層1のインクが滲むことを防ぐことができる。また、第2インク層2上にさらに第3インク層3を設け、第3インクを長時間かけて乾燥させるため、第3インク層3の表面を十分に平坦化させることができる。これにより、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0041】
また、本発明に係るインクジェット印刷方法において、第1インク層1を形成する第1インクは、溶剤に可溶なインクである。
【0042】
上記の構成によれば、第1インク層1を、より滲みやすい、溶剤に可溶な第1インクを用いて形成する場合でも、第1インク層1に接する第2インク層2の形成時に、第2インクを乾燥させる乾燥時間が短いため、滲みがなく高光沢な印刷物を得ることができる。
【0043】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷方法において、第2インクと第3インクとが同一である。
【0044】
上記の構成によれば、同一のインクを用いて第2インク層2の乾燥時間を第3インク層3の乾燥時間より短くするだけで、第2インク層2により第1インク層1の滲みを防ぎ、第3インク層3により印刷物の光沢性が得られるので、滲みがなく高光沢な印刷物を容易に得ることができる。
【0045】
また、本発明に係るインクジェット印刷方法において、第3インクは、クリアインクである。
【0046】
上記の構成によれば、第3インク層3の表面を十分に平坦化させて高い光沢性を得ることができるので、第3インク層3としてクリアインクを用いることによって、高光沢なオーバーコートが可能である。
【0047】
さらに、本発明に係るインクジェット印刷方法において、第2インクは、紫外線硬化型インクである。
【0048】
上記の構成によれば、第2インク層2を、速乾性に優れた紫外線硬化型インクにより形成するため、より滲みのない印刷物を得ることができる。
【実施例】
【0049】
本発明の一実施例について図2及び3に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0050】
インクジェットプリンタとして、UJF−3042(ミマキエンジニアリング社製、ヘッド温度:45℃)を用い、記録媒体としてU292W(帝人デュポンフィルム社製)を用い、印刷物を評価した。
【0051】
2つの記録媒体のそれぞれに、LUS−150(ミマキエンジニアリング社製)のシアン、マゼンダ、イエロー及びブラックの4色を吐出して、カラーインク層を形成した。第1インク層の印刷条件は、720×600dpi/8pass、積算光量:120mJ/cm2とした。
【0052】
次に、カラーインク層上にLH−100CL(ミマキエンジニアリング社製)を吐出し、クリアインク層を形成した。一方の記録媒体上のカラーインク層にクリアインク層をマット印刷(印刷条件:720×600dpi/4pass)し、他方の記録媒体上のカラーインク層にはクリアインク層をグロス印刷した(印刷条件:720×600dpi/4pass)。記録媒体へのインクの吐出及びインクの乾燥に要する時間を印刷時間とした場合、縦42cm×横30cmの記録媒体に対する印刷時間は、マット印刷においては約1分間であったのに対して、グロス印刷においては約2分間であった。すなわち、マット印刷における乾燥時間はグロス印刷における乾燥時間よりも短かった。クリアインク層をマット印刷した方の記録媒体には、さらに、クリアインク層上にLH−100CLを用いてグロス印刷した。
【0053】
結果を図2及び3に示す。図2は、実施例の印刷結果を表す顕微鏡写真を示す図であり、図3は、比較例の印刷結果を表す顕微鏡写真を示す図である。図2に示すように、カラーインク層上にクリアインク層をマット印刷した後、さらにグロス印刷した記録媒体においては、カラーインク層の滲みがなく、光沢性の高い印刷物が得られた。一方、図3に示すように、カラーインク層上に直接クリアインク層をグロス印刷した記録媒体においては、カラーインク層とクリアインク層との界面において滲みが生じた。
【0054】
このように、カラーインク層とグロス印刷したクリアインク層との間に、クリアインクによりマット印刷した層を設けることによって、カラーインクが溶解して滲むことを防ぎ、また、印刷物の最表面はグロス仕上げされるため、高い光沢性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、インクジェット印刷に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 第1インク層
2 第2インク層
3 第3インク層
10 記録媒体
図1
図2
図3