(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370564
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】受電ユニット及びそれを有する給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20180730BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20180730BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/60
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-39274(P2014-39274)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-164362(P2015-164362A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 曜
【審査官】
早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−219861(JP,A)
【文献】
特開平08−263764(JP,A)
【文献】
特開2010−087353(JP,A)
【文献】
特開2012−257446(JP,A)
【文献】
特開2013−125754(JP,A)
【文献】
特開2009−004266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H01M10/42−10/48
B60L11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下面に設けられ、地面に設けられた給電部から伝送された電力を非接触で受電する受電ユニットであって、
前記受電ユニットの筐体に、前記車両にボルト固定される固定部が設けられ、
少なくとも前記固定部を覆い、前記筐体又は前記車両に取り付けられる非金属製のカバーを有し、
前記カバーが前記筐体の側方に位置付けられ、
前記カバーの下面が前記筐体の下面と面一に連続している
ことを特徴とする受電ユニット。
【請求項2】
地面に設けられた給電部と車両に設けられた受電部とを有し、前記受電部が前記給電部から伝送された電力を非接触で受電する給電システムであって、
前記受電部が、請求項1に記載の受電ユニットを有している
ことを特徴とする給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられ、車両外から非接触で給電された電力を受電する受電ユニット、及びこの受電ユニットを有する給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)等が備える二次電池(以下、単に「動力用バッテリ」という)の充電などにおいて、充電作業を容易にするために、プラグ接続等の物理的接続を必要としないワイヤレス(非接触)での電力伝送技術が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている給電システムでは、互いに電磁共鳴する一対のコイルの一方を給電設備の地面に設置し、他方を車両に搭載して、給電設備の地面に設置された給電側コイルから車両に搭載された受電側コイルに非接触で電力を供給している。このような給電システムにおいて、通常、前記受電側コイルは、コンデンサなどの部品と共に筐体内に収容されている。また、前記筐体は、車両の下面にボルト固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−90470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受電側コイルを収容した筐体が車両の下面にボルト固定された上記構造においては、ボルトの近傍に路面上の異物又は風により飛ばされた異物が引っ掛かることがあるという問題があった。また、仮に前記異物が空き缶や金属箔などの金属であり、この金属異物が引っ掛かった状態のまま給電が開始された場合、金属異物が発熱することにより給電システムの動作や性能に影響を及ぼすおそれがあるという問題があった。
【0006】
なお、給電設備の地面と車両下面との間の空間に存在する金属異物を検出可能なセンサは現状では存在せず、ボルト近傍に金属異物が引っ掛かった状態を発見し難かった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、受電ユニットの筐体を車両にボルト固定した部分に金属異物が引っ掛かることを防止できる受電ユニット及びそれを有する給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、車両の下面に設けられ、地面に設けられた給電部から伝送された電力を非接触で受電する受電ユニットであって、前記受電ユニットの筐体に、前記車両にボルト固定される固定部が設けられ、少なくとも前記固定部を覆い、前記筐体又は前記車両に取り付けられる非金属製のカバーを有し
、前記カバーが前記筐体の側方に位置付けられ、前記カバーの下面が前記筐体の下面と面一に連続していることを特徴とする受電ユニットである。
【0011】
請求項
2に記載された発明は、上記目的を達成するために、地面に設けられた給電部と車両に設けられた受電部とを有し、前記受電部が前記給電部から伝送された電力を非接触で受電する給電システムであって、前記受電部が、請求項
1に記載の受電ユニットを有していることを特徴とする給電システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、
2に記載された発明によれば、前記受電ユニットの筐体に、前記車両にボルト固定される固定部が設けられ、少なくとも前記固定部を覆い、前記筐体又は前記車両に取り付けられる非金属製のカバーを有しているので、固定部及びボルトの近傍に金属異物が引っ掛かることを防止できる。
また、前記カバーが前記筐体の側方に位置付けられ、前記カバーの下面が前記筐体の下面と面一に連続しているので、カバー下面と筐体下面の境界部に金属異物が引っ掛かり難い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
本発明の一実施形態にかかる受電ユニット及び給電システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の給電システムにおける給電ユニット及び受電ユニットの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態にかかる受電ユニット及び給電システムについて、
図1〜3を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の給電システムは、磁界共鳴方式を用いて非接触で地面側から車両に電力を供給する。なお、給電側と受電側とを電磁的に結合させることにより電力を伝送するものであれば、磁界共鳴方式以外の方式を用いてもよい。
【0018】
図1に示すように、給電システム1は、地面G(
図2に示す)に配置される給電部としての給電装置20と、車両V(
図2に示す)に配置される受電部としての受電装置30と、を有している。この車両Vは、エンジン及びモータを有するドライブユニットDRVと、モータに電力を供給する動力用バッテリBATTと、を有している。
【0019】
給電装置20は、高周波電源21と、給電ユニット22と、整合器27と、制御部28と、を有している。
【0020】
高周波電源21は、例えば、商用電源から高周波電力を生成して、後述する給電ユニット22に供給している。この高周波電源21により生成される高周波電力は、給電ユニット22の共振周波数及び後述する受電ユニット32の共振周波数と等しい周波数に設定されている。
【0021】
給電ユニット22は、給電側コイル23と、給電側コンデンサ体24と、これらを収容する給電側ケース25と、を有している。給電ユニット22は、
図2に示すように、地面G上に設置されている。給電ユニット22は、地面Gに埋設されていてもよい。
【0022】
給電側コイル23は、図示しないフェライト製のコアにリッツ線がコイル状に巻き付けられて構成されている。給電側コンデンサ体24は、図示しない回路基板に互いに直列若しくは並列、又は直列及び並列に接続されて実装された複数の図示しないコンデンサを有している。給電側コイル23と給電側コンデンサ体24とは、互いに直列接続されて所定の共振周波数で共振する共振回路を形成している。
本実施形態では、給電側コイル23と給電側コンデンサ体24とは、直列接続されているが、並列接続されていてもよい。
【0023】
整合器27は、高周波電源21と給電側コイル23及び給電側コンデンサ体24からなる共振回路との間のインピーダンスを整合させるための回路である。
【0024】
制御部28は、ROM、RAM、CPUを有する周知のマイクロコンピュータなどで構成され、給電装置20全体の制御を司る。制御部28は、例えば、電力伝送の要求に応じて、高周波電源21のオンオフ制御を行う。
【0025】
受電装置30は、受電ユニット32と、整流器38と、を有している。
【0026】
受電ユニット32は、受電側コイル33と、受電側コンデンサ体34と、これらを収容する「筐体」としての受電側ケース35と、受電側ケース35の両側方に位置付けられる一対のカバー4と、を有している。
【0027】
受電側コイル33は、図示しないフェライト製のコアにリッツ線がコイル状に巻き付けられて構成されている。受電側コンデンサ体34は、図示しない回路基板に互いに直列若しくは並列、又は直列及び並列に接続されて実装された複数の図示しないコンデンサを有している。受電側コイル33と受電側コンデンサ体34とは、互いに直列接続されて給電ユニット22と同一の共振周波数で共振する共振回路を形成している。
本実施形態では、受電側コイル33と受電側コンデンサ体34とは、直列接続されているが、並列接続されていてもよい。
【0028】
受電側ケース35は、
図3に示すように、開口が設けられた本体部36と、該本体部36の開口を覆う蓋部37と、に分割可能に形成されている。本体部36は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)などの給電装置20からの磁気を通すことが可能な材料で構成されている。蓋部37は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの磁気を通さない(磁気シールドとなる)材料で構成されている。または、蓋部37も本体部36と同様にFRPなどの樹脂製とし、蓋部37の上方に銅やアルミニウムからなる磁気シールド板等を配置してもよい。受電側ケース35は、本体部36と蓋部37とを組み合わせて図示しないねじ等の固定手段により固定することで、内側に受電側コイル33及び受電側コンデンサ体34を収容する空間を形成する。
【0029】
また、本体部36の両側面36b,36cには、車両Vの下面にボルト固定される固定部39が設けられている。このような受電側ケース35は、
図3に示すように、蓋部37が車両Vの下面側、本体部36が地面G側となるように車両Vの下面にボルト固定される。
図3中の符号5は、固定部39のボルト孔に通されたボルトである。
図3中の符号6は、ボルト5に螺合されたナットである。なお、
図3においては、受電側コイル33及び受電側コンデンサ体34の図示を省略している。
【0030】
カバー4は、固定部39及びボルト5の近傍に異物が引っ掛かることを防止するためのものであり、固定部39及びボルト5を覆うように形成されている。
本実施形態では、本体部36の両側面36b,36cに固定部39が設けられていることから、カバー4も一対設けられている。このカバー4は、当該カバー4と受電側ケース35との境界部に異物が引っ掛からないようにするため、その下面4aが本体部36の下面36aと面一に連続しており、その側面(
図3中に図示されていない側面である)が本体部36の側面(
図3中に図示されていない側面である)と面一に連続している。また、カバー4は、その外表面に異物が引っ掛からないようにするため、極力凹凸が少なく形成されている。
【0031】
さらに、カバー4は、給電システム1が形成する磁界に影響を及ぼさないようにするため、また、カバー4自体が磁界の影響を受けないようにする(カバー4が磁界の作用を受けて発熱することを防止する)ために、絶縁性の合成樹脂で構成されている。また、カバー4は非金属製であればよく、例えば、ゴムやスポンジで構成されていてもよい。このようなカバー4は、図示しない固定手段により、車両Vの下面に取り付けられている。また、カバー4は、受電側ケース35に取り付けられていてもよく、車両V及び受電側ケース35の双方に取り付けられていてもよい。
【0032】
整流器38は、受電ユニット32が受電した高周波電力を直流電力に変換する。この整流器38には、例えば、車両Vに搭載された動力用バッテリBATTの充電に用いられる充電ユニットなどの負荷Lが接続される。
【0033】
上述した給電システム1は、給電施設において、駐車した車両Vの動力用バッテリBATTの充電操作が入力されて車両Vへの電力伝送の要求が発生すると、制御部28が、高周波電源21をオンして高周波電力を生成する。そして、この高周波電力が給電ユニット22に供給されると、給電ユニット22と受電ユニット32とが磁界共鳴して、給電ユニット22から高周波電力が伝送されて、当該高周波電力が受電ユニット32で受電される。受電ユニット32で受電された高周波電力は、整流器38で直流電力に変換されて、車両Vの充電ユニットに供給され、この充電ユニットにより動力用バッテリBATTが充電される。
【0034】
また、上述した給電システム1においては、異物が引っ掛かり易い固定部39及びボルト5がカバー4で覆われているので、当該固定部39及びボルト5の近傍に異物が引っ掛かることを防止できる。なお、本願の課題の項で説明したように、空き缶や金属箔などの金属異物が固定部39及びボルト5の近傍に引っ掛かった状態のまま給電が開始された場合、この金属異物が発熱することにより給電システム1の動作や性能に影響を及ぼすおそれがあるが、固定部39及びボルト5がカバー4で覆われた給電システム1においてはそのようなことが起こらず、安全かつ安定的に給電を行うことができる。
【0035】
参考例の受電ユニット及び給電システムについて、
図4を参照して説明する。
図4において、前述した
一実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
本例の給電システムは、
図4に示すように、受電ユニット132が、
一実施形態で説明した一対のカバー4の代わりにカバー104を有していること以外は
一実施形態で説明した給電システムと同じ構成である。
【0037】
カバー104は、受電側ケース35全体を車両Vの下面との間に遮蔽するように設けられている。カバー104は、
一実施形態のカバー4と同様に絶縁性の合成樹脂で構成されており、その外表面に異物が引っ掛からないようにするため、極力凹凸が少なく形成されている。このようなカバー104は、図示しない固定手段により、車両Vの下面に取り付けられている。
【0038】
本例の給電システムにおいては、受電側ケース35全体を車両Vの下面との間に遮蔽したカバー104により、固定部39及びボルト5の近傍だけでなく、受電側ケース35のいずれの部位にも異物が引っ掛かることがなく、安全かつ安定的に給電を行うことができる。
【0039】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 給電システム
4,104 カバー
20 給電装置(給電部)
22 給電ユニット
30 受電装置(受電部)
32,132 受電ユニット
35 受電側ケース(筐体)
39 固定部
G 地面
V 車両