特許第6370690号(P6370690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370690
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】車両用バンパ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20180730BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20180730BHJP
   B60R 19/03 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B60R19/18 M
   B60R19/18 N
   B60R19/04 N
   B60R19/03 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-236209(P2014-236209)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-97794(P2016-97794A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】金子 孝信
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
(72)【発明者】
【氏名】大林 環
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−505000(JP,A)
【文献】 特開2002−240658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0306222(US,A1)
【文献】 実開昭57−32555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/04
B60R 19/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前方又は後方にて車幅方向に延設された車両用バンパ装置であって、
車幅方向に延びる筒状に形成された金属製の第1衝撃吸収部と、
車幅方向に延びる筒状に形成され、前記第1衝撃吸収部の側面であって、前記車室とは反対側の側面に接着された合成樹脂製の第2衝撃吸収部と、を備え、
前記第2衝撃吸収部は、車幅方向に延びる板状に形成された板状部であって、前記第1衝撃吸収部の前記側面に接着される炭素繊維強化樹脂製の板状部を有し、
前記第2衝撃吸収部における前記板状部とその他の部分が共押出成形法を用いて一体的に形成されている、車両用バンパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バンパ装置において、
前記第1衝撃吸収部の前記側面及び前記第2衝撃吸収部の前記板状部は、車幅方向に延設された嵌合部であって、前記第2衝撃吸収部の前記板状部が前記第1衝撃吸収部の前記側面に接着される際に互いに嵌合する嵌合部をそれぞれ有する、車両用バンパ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用バンパ装置において、
前記第1衝撃吸収部の前記側面が、前記第2衝撃吸収部の前記板状部によって覆われている、車両用バンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1及び2に記載されているように、車両が物体に衝突したときに生じた衝撃を吸収する車両用バンパ装置は知られている。これらの車両用バンパ装置は、例えば、車両の前端部に組み付けられる。車両用バンパ装置は、バンパカバーによって覆われている。車両用バンパ装置は、第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部を備える。第1衝撃吸収部(バンパーリインフォースメント)は、金属製である。第1衝撃吸収部は、車幅方向に延びる筒状(中空状)に形成されている。第1衝撃吸収部は、例えば、押出成形法を用いて製造される。第1衝撃吸収部には、第2衝撃吸収部が組み付けられている。第2衝撃吸収部は、合成樹脂製である。すなわち、第2衝撃吸収部は、発泡樹脂材で構成されている。第2衝撃吸収部は、第1衝撃吸収部の前面に沿って車幅方向に延びる柱状(中実状)に形成されている。
【0003】
車両が低速(例えば時速10km未満)で走行しているときに車両の前端が物体に衝突(以下、低速衝突と呼ぶ)すると、第2衝撃吸収部のうちの前記物体が衝突した部分が車両前後方向に圧縮される。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第1衝撃吸収部は、ほとんど変形しない。一方、車両が高速(例えば時速10km以上)で走行しているときに車両の前端が物体に衝突(以下、高速衝突と呼ぶ)すると、第2衝撃吸収部のうちの前記物体が衝突した部分が車両前後方向に圧縮されるとともに、第1衝撃吸収部を構成する各壁部のうちの前記物体が衝突した部分が湾曲又は座屈する。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第2衝撃吸収部によって吸収される衝撃は僅かであり、前記衝撃の大部分が第1衝撃吸収部によって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4233042号公報
【特許文献2】特開2007−290499号公報
【発明の概要】
【0005】
上記のように、第2衝撃吸収部は発泡樹脂材によって柱状(中実状)に形成されているので、第2衝撃吸収部が圧縮されて残った残骸(以下、潰れ残りと呼ぶ)の車両前後方向の寸法は比較的大きい。言い換えれば、圧縮前の第2衝撃吸収部の車両前後方向の寸法と圧縮後の第2衝撃吸収部の車両前後方向の寸法との比(圧縮率)は比較的小さい。つまり、第2衝撃吸収部は、衝突時に少し潰れ、それ以上は潰れない。よって、車両を設計するにあたり、上記の潰れ残りを考慮して、バンパカバーと車両用バンパ装置の間の寸法を決定する必要がある。そのため、上記従来のバンパ装置を車両に適用した場合、前記車両の前後方向の寸法が大きくなってしまう。
【0006】
また、上記のように、高速衝突時には、その衝撃の大部分が第1衝撃吸収部によって吸収される。したがって、この場合、衝撃を十分に吸収するためには、第1衝撃吸収部の剛性を高くする必要がある。例えば、第1衝撃吸収部を構成する壁部の肉厚を大きくすれば、第1衝撃吸収部の剛性を高くすることができる。しかし、この場合、第1衝撃吸収部の重量が大きくなるだけでなく、材料コストが高くなる。
【0007】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、低速衝突時及び高速衝突時の衝撃を効率良く吸収できる車両用バンパ装置であって、小型且つ軽量な車両用バンパ装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車室の前方又は後方にて車幅方向に延設された車両用バンパ装置であって、車幅方向に延びる筒状に形成された金属製の第1衝撃吸収部と、車幅方向に延びる筒状に形成され、前記第1衝撃吸収部の側面であって、前記車室とは反対側の側面に接着された合成樹脂製の第2衝撃吸収部と、を備え、第2衝撃吸収部は、車幅方向に延びる板状に形成された板状部であって、第1衝撃吸収部の前記側面に接着される炭素繊維強化樹脂製の板状部を有し、第2衝撃吸収部における前記板状部とその他の部分が共押出成形法を用いて一体的に形成されている、車両用バンパ装置としたことにある。
【0009】
この場合、第1衝撃吸収部の前記側面が、第2衝撃吸収部の前記板状部によって覆われているとよい。
【0010】
これによれば、低速衝突時においては、第2衝撃吸収部のうち、前記物体が衝突した部分が破壊される。具体的には、第2衝撃吸収部(筒状の部分)を構成する壁部が割れたり砕けたりする。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第1衝撃吸収部は、ほとんど変形しない。
【0011】
第2衝撃吸収部は筒状(中空状)に形成されているので、車両用バンパ装置を軽量化である。また、第2衝撃吸収部のうち、前記物体が衝突した部分は破壊される。つまり、上記従来の車両用バンパ装置とは異なり、潰れ残りがほとんど発生しない。したがって、車両を設計するにあたり、第2衝撃吸収部の潰れ残りの寸法を考慮する必要が無い。そのため、第2衝撃吸収部の車両前後方向の寸法を小さくできる。
【0012】
また、第2衝撃吸収部30のうち、炭素繊維樹脂製の部分とその他の部分とが一体的に形成されている。したがって、前記炭素繊維強化樹脂製の部分とその他の部分とを別々に製造した後に両者を接着する場合に比べて、第2衝撃吸収部の製造工数を削減できる。
【0013】
一方、高速衝突時においては、第2衝撃吸収部が破壊されるとともに、第1衝撃吸収部を構成する各壁部が湾曲又は座屈する。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第2衝撃吸収部によって吸収される衝撃は僅かであり、前記衝撃の大部分が第1衝撃吸収部によって吸収される。
【0014】
第1衝撃吸収部には、第2衝撃吸収部の板状部が接着されている。板状部は炭素繊維強化樹脂製であるので、第1衝撃吸収部の剛性(曲げ剛性)が従来に比べて向上している。言い換えれば、第1衝撃吸収部が変形していく際に、第1衝撃吸収部に作用する荷重が従来よりも大きい。つまり、本発明に係る車両用バンパ装置は、従来の車両用バンパ装置に比べて、高速衝突時の衝撃吸収量が大きい。第1衝撃吸収部の衝撃吸収性能は従来よりも向上しているが、第1衝撃吸収部の構成は従来と同等であるので、第1衝撃吸収部の重量及び材料コストは従来の車両用バンパ装置の第1衝撃吸収部と同等である。
【0015】
上記のように、本発明によれば、低速衝突時及び高速衝突時の衝撃を効率良く吸収できる車両用バンパ装置であって、小型且つ軽量な車両用バンパ装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、第1衝撃吸収部の前記側面及び第2衝撃吸収部の前記板状部は、車幅方向に延設された嵌合部であって、第2衝撃吸収部の前記板状部が第1衝撃吸収部の前記側面に接着される際に互いに嵌合する嵌合部をそれぞれ有することにある。
【0017】
これによれば、第2衝撃吸収部を第1衝撃吸収部に接着する際に、第1衝撃吸収部に対する第2衝撃吸収部の車両高さ方向の位置がずれ難い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置が適用された車両の概略を示す平面図である。
図2図1の車両用バンパ装置の分解斜視図である。
図3図1の車両用バンパ装置の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図4】本発明の変形例に係る車両用バンパ装置の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図5】本発明の他の変形例に係る車両用バンパ装置の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る車両用バンパ装置10について説明する。まず、車両用バンパ装置10が組み付けられる車両1の構成について簡単に説明しておく。この車両1は、図1に示すように、左右一対のサイドメンバSL,SRを有する。サイドメンバSL,SRは、車両前後方向にそれぞれ延設されている。サイドメンバSL,SRは、車幅方向に間隔をおいて配置されている。車両用バンパ装置10は車幅方向に延設され、その車幅方向両端部がサイドメンバSL,SRの前端面に締結部材(ボルト及びナット)を用いて組み付けられる。車両用バンパ装置10は、図示しないバンパカバーによって覆われている。なお、本実施形態では、本発明を、車両の前端部(車室Cの前方)に組み付けられる車両用バンパ装置10に適用した例について説明する。しかし、本発明は、車両の後端部(車室Cの後方)に組み付けられる車両用バンパ装置にも適用可能である。
【0020】
車両用バンパ装置10は、図2に示すように、第1衝撃吸収部20と第2衝撃吸収部30とを有する。第1衝撃吸収部20の構成は、上記従来の車両用バンパ装置の第1衝撃吸収部の構成と同等である。すなわち、第1衝撃吸収部20は、金属製(例えばアルミニウム製)である。第1衝撃吸収部20は、車幅方向に延びる筒状(中空状)に形成されている。図3に示すように、第1衝撃吸収部20の長手方向に垂直な断面の外形は略長方形を呈する。第1衝撃吸収部20は、上壁部21、下壁部22、前壁部23及び後壁部24を有する。上壁部21及び下壁部22は、車両高さ方向に垂直な板状に形成されている。下壁部22は上壁部21の下方に配置されている。
【0021】
前壁部23は、上壁部21及び下壁部22に垂直な板状に形成されている。前壁部23の後面に上壁部21及び下壁部22の前端面が接続されている。前壁部23の上端は、上壁部21の上面よりも少し上方に位置している。また、前壁部23の下端は、下壁部22の下面よりも少し下方に位置している。前壁部23は、凹部23a,23b,23cを有する。凹部23a,23b,23cは、前壁部23の部分であって、第1衝撃吸収部20の前方から見て、後方へ凹むように形成された部分である。凹部23aは、前壁部23の車両高さ方向における中央部にて、車幅方向に延設されている。凹部23aの延設方向に垂直な断面は、台形を呈する。凹部23b,23cは、凹部23aの上方及び下方にて、車幅方向にそれぞれ延設されている。凹部23b,23cの延設方向に垂直な断面は、V字を呈する。
【0022】
後壁部24は、上壁部21及び下壁部22に垂直な板状に形成されている。後壁部24の上端部及び下端部は、前方へ湾曲しており、上壁部21及び下壁部22の後端面にそれぞれ接続されている。
【0023】
第1衝撃吸収部20は、平面視において、弓状に湾曲している(図1参照)。すなわち、第1衝撃吸収部20の車幅方向中央部は、第1衝撃吸収部20の車幅方向両端部よりも前方に位置している。
【0024】
第1衝撃吸収部20は、例えば、押出成形法を用いて一体的に製造された直筒状の成形体を、弓状に曲げ加工して製造される。なお、上壁部21、下壁部22、前壁部23及び後壁部24の肉厚は、例えば、6mmである。
【0025】
第2衝撃吸収部30は、詳しくは後述するように、合成樹脂製である。第2衝撃吸収部30は、車幅方向に延びる筒状(中空状)に形成されている。図3に示すように、第2衝撃吸収部30の長手方向に垂直な断面の外形は略台形を呈する。すなわち、第2衝撃吸収部30は、上壁部31、下壁部32、前壁部33及び後壁部34を有する。上壁部31は、車両高さ方向に垂直な平面に対して僅かに傾斜した板状に形成されている。具体的には、上壁部31の前端部が上壁部31の後端部よりも少し下方に位置している。下壁部32は、車両高さ方向に垂直な板状に形成されている。下壁部32は上壁部31の下方に配置されている。上壁部31の後端と下壁部32の後端との車両高さ方向の距離は、第1衝撃吸収部20の車両高さ方向の寸法の半分程度である。
【0026】
前壁部33は、下壁部32に垂直な板状に形成されている。前壁部33の上端及び下端が、上壁部31及び下壁部32の前端面にそれぞれ接続されている。
【0027】
後壁部34は、下壁部32に垂直な板状に形成されている。後壁部34の車両高さ方向の寸法は、第1衝撃吸収部20の前壁部23の車両高さ方向の寸法と同等である。後壁部34の前面に、上壁部31の後端及び下壁部32の後端が接続されている。上壁部31の後端は、後壁部34の車両高さ方向における中央よりも少し上方に位置している。下壁部32の後端は、後壁部34の下端よりも少し上方に位置している。後壁部34は、第1衝撃吸収部20の凹部23a,23b,23cにそれぞれ嵌合する凸部34a,34b,34cを有する。凸部34a,34b,34cは、後壁部34の部分であって、第2衝撃吸収部30の後方から見て、後方へ突出するように形成された部分である。凸部34aは、後壁部34の車両高さ方向における中央部にて、車幅方向に延設されている。凸部34aの延設方向に垂直な断面は、台形を呈する。凸部34b,34cは、凸部34aの上方及び下方にて、車幅方向にそれぞれ延設されている。凸部34b,34cの延設方向に垂直な断面は、V字を呈する。
【0028】
上壁部31、下壁部32及び前壁部33はポリプロピレン樹脂製であり、後壁部34は、炭素繊維強化樹脂製である。ポリプロピレン樹脂製の部分(上壁部31、下壁部32及び前壁部33)と、炭素繊維強化樹脂製の部分(後壁部34)とが、共押出成形法(二色押出成形法)を用いて一体的に形成される。すなわち、押出型における上壁部31、下壁部32及び前壁部33を形成する部分からポリプロピレン樹脂材を押し出すとともに、前記押出型における後壁部34を形成する部分から炭素繊維及びエポキシ樹脂材を同時に押し出すことにより、第2衝撃吸収部30が一体的に製造される。なお、上壁部31、下壁部32及び前壁部33の肉厚は、例えば、3mmであり、後壁部34の肉厚は、例えば、0.5mmである。
【0029】
第2衝撃吸収部30は、第1衝撃吸収部20の前面に接着される。具体的には、第2衝撃吸収部30の後壁部34の後面が第1衝撃吸収部20の前壁部23の前面に接着される。後壁部34が前壁部23の前面に接着された状態において、前壁部23の前面は、後壁部34によって覆われている。後壁部34が前壁部23の前面に接着された状態において、凸部34a,34b,34cが凹部23a,23b,23cに嵌合している(図3参照)。上記のように、第1衝撃吸収部20は、弓状に湾曲している。一方、第2衝撃吸収部30が共押出成形法を用いて製造された状態においては、第2衝撃吸収部30は直筒状を呈する。ただし、上記のように、第2衝撃吸収部30を構成する各壁部の肉厚が比較的小さいため、第2衝撃吸収部30を第1衝撃吸収部20に沿うように湾曲させつつ、第1衝撃吸収部20と第2衝撃吸収部30とを接着することができる。なお、第2衝撃吸収部30を湾曲させ易くするために、第2衝撃吸収部30を加熱して少し軟化させてもよい。なお、後壁部34が、本発明の「板状部」に相当する。また、前壁部23の前面が、本発明の「車室とは反対側の側面」に相当する。
【0030】
低速衝突時においては、第2衝撃吸収部30のうち、前記物体が衝突した部分が破壊される。具体的には、第2衝撃吸収部30の前壁部33が、前記物体(又は前記物体によって後方へ押圧されたバンパカバー)によって後方へ押圧される。すると、上壁部31及び下壁部32が湾曲する。前壁部33がさらに後方へ押圧されると、上壁部31及び下壁部32が割れる(砕ける)。なお、前壁部33が割れる(砕ける)場合もある。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第1衝撃吸収部20は、ほとんど変形しない。
【0031】
第2衝撃吸収部30は筒状(中空状)に形成されているので、車両用バンパ装置10を軽量化できる。また、第2衝撃吸収部30における前記物体が衝突した部分は破壊される。つまり、上記従来の車両用バンパ装置とは異なり、潰れ残りがほとんど発生しない。したがって、車両1を設計するにあたり、第2衝撃吸収部30の潰れ残りの寸法を考慮する必要が無い。そのため、第2衝撃吸収部の車両前後方向の寸法を小さくできる。
【0032】
また、第2衝撃吸収部30のうち、ポリプロピレン樹脂製の部分(上壁部31、下壁部32及び前壁部33)と、炭素繊維強化樹脂製の部分(後壁部34)とが、共押出成形法(二色押出成形法)を用いて一体的に形成される。したがって、前記ポリプロピレン樹脂製の部分と炭素繊維強化樹脂製の部分とを別々に製造した後に両者を接着する場合に比べて、第2衝撃吸収部30の製造工数を削減できる。
【0033】
一方、高速衝突時においては、第2衝撃吸収部30が破壊されるとともに、第1衝撃吸収部20を構成する各壁部が湾曲又は座屈する。これにより、前記衝突によって生じた衝撃が吸収される。なお、この場合、第2衝撃吸収部30によって吸収される衝撃は僅かであり、前記衝撃の大部分が第1衝撃吸収部20によって吸収される。
【0034】
第1衝撃吸収部20の前壁部23の前面には、第2衝撃吸収部30の後壁部34が接着されている。後壁部34は炭素繊維強化樹脂製であるので、前壁部23の曲げ剛性が従来に比べて向上している。言い換えれば、前壁部23が変形していく際に、前壁部23に作用する荷重が従来よりも大きい。つまり、従来の車両用バンパ装置に比べて、高速衝突時の衝撃吸収量が大きい。第1衝撃吸収部20の衝撃吸収性能は従来よりも向上しているが、第1衝撃吸収部20の構成は従来と同等であるので、第1衝撃吸収部20の重量及び材料コストは従来の車両用バンパ装置の第1衝撃吸収部と同等である。
【0035】
また、第1衝撃吸収部20の前壁部23には、車幅方向に延びる凹部23a,23b,23cが形成されている。これにより、前壁部23が平板状である場合に比べて、前壁部23の剛性が高くなる。また、第2衝撃吸収部30の後壁部34には、前記凹部23a,23b,23cに嵌合する凸部34a,34b,34cが形成されている。したがって、第2衝撃吸収部30を第1衝撃吸収部20に接着する際に、第1衝撃吸収部20に対する第2衝撃吸収部30の車両高さ方向の位置がずれ難い。
【0036】
上記のように、本発明によれば、低速衝突時及び高速衝突時の衝撃を効率良く吸収できる車両用バンパ装置10であって、小型且つ軽量な車両用バンパ装置10を提供することができる。
【0037】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、第1衝撃吸収部20及び第2衝撃吸収部30の断面形状を変更しても良い。例えば、凹部23a,23b,23c及び凸部34a,34b,34cの断面形状は上記実施形態に限られず、互いに嵌合可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。一方、図4に示すように、前壁部23及び後壁部34を平板状に形成しても良い。
【0039】
また、第1衝撃吸収部20及び第2衝撃吸収部30のいずれか一方又は両方の内部にリブを設けても良い。
【0040】
また、第2衝撃吸収部30のうちのポリプロピレン樹脂製の部分の車両高さ方向の位置を変更しても良い。例えば、バンパの位置が比較的低い車両においては、図5に示すように、前記ポリプロピレン樹脂製の部分を上記実施形態よりも上方に位置させるとよい。また、上記実施形態では、第1衝撃吸収部20の前壁部23の前面が第2衝撃吸収部30の後壁部34によって完全に覆われているが、後壁部34の車両高さ方向の寸法を小さくして、前壁部23の一部(上端部又は下端部)を露出させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・・車両、10・・・車両用バンパ装置、20・・・第1衝撃吸収部、21・・・上壁部、22・・・下壁部、23・・・前壁部、23a,23b,23c・・・凹部、24・・・後壁部、30・・・第2衝撃吸収部、31・・・上壁部、32・・・下壁部、33・・・前壁部、34・・・後壁部、34a,34b,34c・・・凸部、C・・・車室、SL,SR・・・サイドメンバ
図1
図2
図3
図4
図5