特許第6370828号(P6370828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370828
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】被服修理方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 3/12 20060101AFI20180730BHJP
   D05C 7/00 20060101ALI20180730BHJP
   D05B 19/10 20060101ALI20180730BHJP
   D05B 91/10 20060101ALI20180730BHJP
   A41H 27/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   D05B3/12
   D05C7/00
   D05B19/10
   D05B91/10
   A41H27/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-76928(P2016-76928)
(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公開番号】特開2017-185059(P2017-185059A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年6月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516104032
【氏名又は名称】有限会社トランスゲート
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴浩
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−252767(JP,A)
【文献】 特公昭49−014688(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H 1/00−43/04
D05B 1/00−97/12
D05C 1/00−17/02
D06C29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の枠を動かすことによって該枠内に固定された布上に所定の柄を自動作成するミシンを使用して被服の修理を行う被服修理方法であって、
修理対象である被服の修理箇所の裏側から補強布を当て、該補強布を布用のりで前記被服に留める補強布当て工程と、
前記修理箇所が前記枠内に位置するように、前記枠に前記被服を固定する被服設置工程と、
前記枠を前記ミシンの所定位置に設置する枠設置工程と、
前記ミシンにおいて、複数の柄パターンの中から前記修理箇所の形状及び大きさに応じて前記被服上に作成する一の前記柄パターンを選択する柄パターン選択工程と、
前記ミシンに、前記柄パターン選択工程において選択された前記柄パターンを前記修理箇所の表面に縫って自動作成させる柄パターン作成工程と、を含み、
前記柄パターンが、該柄パターン外周の一端から他端までを塗り潰すように同じ向きの複数の直線が配置されるパターンであることを特徴とする被服修理方法。
【請求項2】
前記ミシンが、刺しゅう作成用のミシンであり、
前記枠が、該枠内に刺しゅうを作成するための刺しゅう枠であり、
前記柄パターンが、前記刺しゅう作成用のミシンに作成させる刺しゅうの柄であることを特徴とする請求項1に記載の被服修理方法。
【請求項3】
前記柄パターンが、前記ミシンに記憶されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の被服修理方法。
【請求項4】
前記柄パターンが、前記ミシンに該柄パターンを読み込ませることが可能な記憶媒体に記憶されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の被服修理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被服のやぶれ、すりきれ、虫食いを、ミシン刺し(裏側に補強布を当てて、ミシンで極めて細かく縫い込む修復方法のこと)によって修復する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被服が破れたり、擦り切れたり、虫食いをしたりした場合、当該箇所を修理して、通常の使用に耐え得る状態にすること(被服修理)が一般的に行われる。被服修理には、「かけはぎ」と呼ばれ、共布を破れた修理箇所に、繊維をほぐして一本一本を紡ぎ合わせて編み込んでいく方法である。「かけはぎ」は、可能な限り現状に近づけるための修理方法であり、職人の特殊技術に依存する方法である。
【0003】
一方、被服修理には「ミシン刺し」と呼ばれる方法もあって、これは、修理箇所の裏側に補強布を当てて、ミシンで極めて細かく縫い込む方法であるが、「かけはぎ」に比べて修理痕が残るというデメリットはあるものの、一般的に「かけはぎ」よりも「ミシン刺し」の方が安価である。
【0004】
現状「ミシン刺し」によって被服を修理する場合、修理の担当者は、修理箇所を自らの目で確認し、修理対象の被服を自らの手で動かしながら、ミシンを使用して修理箇所の表側から縫い込む作業を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、「ミシン刺し」による修理担当者が、修理箇所を目で確認し、被服を手で動かしながら縫い込む作業を行うことによって、人手に頼る部分が多くなるため、作業時間が長くなるという問題点があった。特に、「ミシン刺し」では修理箇所を塗りつぶすように縫い込むため、縫い付け方向の転換作業が多数回必要になるが、当該各転換作業では、被服の上下を転換させる作業が発生するため、作業時間が長くなる。
【0006】
また上記のように、従来の「ミシン刺し」による修理は手作業で行うため、担当者の技術の熟練度による仕上がり具合のバラツキ、熟練度を上げるための訓練の必要性が生じ、さらには、修理箇所を縫い込む細かさの限界に基づいて仕上がり具合にも限界が生じるという問題点もあった。
【0007】
そこで本発明では、上記問題点に鑑み、ミシン刺しと呼ばれる被服の修理方法において、作業効率を高め、作業者の技術熟練度に左右され難く、仕上がり具合を高めることができる被服修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示する被服修理方法の一形態は、所定の枠を動かすことによって該枠内に固定された布上に所定の柄を自動作成するミシンを使用して被服の修理を行う被服修理方法であって、修理対象である被服の修理箇所の裏側から補強布を当て、該補強布を布用のりで前記被服に留める補強布当て工程と、前記修理箇所が前記枠内に位置するように、前記枠に前記被服を固定する被服設置工程と、前記枠を前記ミシンの所定位置に設置する枠設置工程と、前記ミシンにおいて、複数の柄パターンの中から前記修理箇所の形状及び大きさに応じて前記被服上に作成する一の前記柄パターンを選択する柄パターン選択工程と、前記ミシンに、前記柄パターン選択工程において選択された前記柄パターンを前記修理箇所の表面に縫って自動作成させる柄パターン作成工程と、を含み、前記柄パターンが、該柄パターン外周の一端から他端までを塗り潰すように同じ向きの複数の直線が配置されるパターンであることを特徴とする。
【0009】
開示する被服修理方法の一形態は、上記構成に加え、前記ミシンが、刺しゅう作成用のミシンであり、前記枠が、該枠内に刺しゅうを作成するための刺しゅう枠であり、前記柄パターンが、前記刺しゅう作成用のミシンに作成させる刺しゅうの柄であることを特徴とする。
開示する被服修理方法の一形態は、上記構成に加え、前記柄パターンが、前記ミシンに記憶されていることを特徴とする。
【0010】
開示する被服修理方法の一形態は、上記構成に加え、前記柄パターンが、前記ミシンに該柄パターンを読み込ませることが可能な記憶媒体に記憶されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
開示する被服修理方法は、ミシン刺しと呼ばれる被服の修理方法において、作業効率を高め、作業者の技術熟練度に左右され難く、仕上がり具合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る被服修理方法の流れを示すフローチャートである。
図2】本実施の形態に係る柄パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。図1を用いて、本実施の形態に係る被服修理方法1について説明する。図1は、被服修理方法1の流れを示すフローチャートである。
【0014】
被服修理方法1は、被服14のやぶれ、すりきれ、虫食い等を、ミシン刺し(裏側に補強布22を当てて、ミシン12で極めて細かく縫い込む修理方法のこと)によって修復する方法である。被服修理方法1で使用するミシン12は、一般に、刺しゅう用ミシンと呼ばれるミシンであるが、これと同等の機能を発揮するのであれば、刺しゅう用ミシンでなくても良い。ミシン12では、刺しゅう作成用の枠18が用意され、当該枠18内に刺しゅうを作成する被服(布)14を設置した後、枠18をミシン12の所定位置に設置する。そして、ミシン12において、被服14に縫い込む刺しゅうの柄パターン20を選択し、枠18内にある被服14上で縫い込み開始位置を設定すると、ミシン12は、針を同じ位置で上下させつつ、枠18を動かすことによって、枠18内に固定された布14上に選択された刺しゅうの柄パターン20を自動作成する。
【0015】
図1で示すように、被服修理方法1は、補強布当て工程(S10)、被服設置工程(S20)、枠設置工程(S30)、柄パターン選択工程(S40)、柄パターン作成工程(S50)を含む。
【0016】
S10の補強布当て工程2においては、修理対象である被服14の修理担当者24が、被服14の修理箇所16の裏側に補強布22を当て、補強布22を布用のり等で被服14上に固定する。例えば、補強布22の被服14との接着面には、布用のりが予め塗布されており、補強布22上からアイロンを当てることによって、補強布22を被服14上に固定する。修理後の被服14の外観上、補強布22が目立つことは不適切であるため、補強布22は修理箇所16の裏側に固定する。
【0017】
S20の被服設置工程4においては、修理担当者24が、刺しゅう作成用の枠18の内側に修理対象被服14の修理箇所16が配置されるように、枠18に修理対象被服14を固定する。このとき、枠18内の中心付近に修理箇所16が配置されるように、修理対象被服14を固定することが好適である。また、刺しゅう作成用の枠18については種々の形状及び大きさがあるが、修理対象箇所16への縫込みが可能であれば、枠の形状及び大きさは限定されない。
【0018】
S30の枠設置工程6においては、修理担当者24が、上記刺しゅう作成用の枠18を、ミシン12の刺しゅう作成用枠18を設置すべき所定の位置に設置する。つまり、枠設置工程6においては、ミシン12が、刺しゅう作成用枠18内に刺しゅうを作成可能な状態とする。
【0019】
S40の柄パターン選択工程8において、修理担当者24が、ミシン12を操作し、刺しゅう作成用枠18内に作成する(縫い込む)刺しゅう柄である柄パターン20を選択する。ミシン12が備える記憶装置又はミシン12が読み取り可能な記憶媒体には、複数の柄パターン20が記憶されており、修理担当者24は、ミシン12を操作し、記憶されている柄パターン20の中から、修理箇所16(補強布22)の大きさ及び形状に合致する柄パターン20を選択する。
【0020】
ここで、修理箇所16(補強布22)の大きさ及び形状に合致するとは、修理箇所16(補強布22)全体を覆うことができるという意である。また柄パターン20は、柄パターン20外周(外縁)の一端から他端までを塗りつぶすように同じ向きの複数の直線が配置されるパターンであることが好適である。柄パターン20内に配置される各直線の間隔は適宜決めることができるが、人の手作業で縫い込める間隔よりも小さく設定する(例えば、0.5mm程度に設定する)ことが好適である。こうすることで、補強布22及び縫い込まれた刺しゅう糸で修理箇所16を確実・強固に修復することが可能となる。
【0021】
図2を用いて、柄パターン20の一例を説明する。図2(a)(b)(d)で示すように、柄パターン20は、外周が方形であっても良く、図2(c)のように、角のない楕円形(円形)であっても良い。また図2(a)(b)で示すように、柄パターン20は、同じ外形状であっても、大きさの異なるものが複数用意される形態であっても良い。なお、柄パターン20の形状及び大きさはこれらに限定されない。また、柄パターン20の色(縫い込まれる刺しゅう糸の色)も限定されないが、修理箇所16を目立たない様にする観点から、修理対象被服14(修理箇所16)と略同じ色であることが好適である。
【0022】
S50の柄パターン作成工程10においては、ミシン12が、S40において選択された柄パターン20を、ミシン12に設置される枠18内の布14上に自動作成する。このとき、ミシン12は、被服14の表面に柄パターン20を作成する。
なお、S10乃至S40の各工程を実施する順序は適宜変更可能である。
【0023】
上記S10乃至S50で説明した被服修理方法1によって、修理担当者24は、ミシン12の作動中、別の作業が実施可能となり、また、一人の修理担当者24が、複数の被服修理作業を同時進行させることも可能となる。つまり、被服修理方法1によって被覆修理の作業効率が向上する。
【0024】
さらには、修理対象被服14への縫い込み作業自体はミシン12が行うため、修理担当者24の技術熟練度に左右されない修理の仕上がり具合が実現される。同時に、修理の仕上がり具合が、修理担当者24の技術熟練度に左右されないため、修理担当者24の技術訓練(技術教育)の負担も小さくすることができる。
加えて、手作業では実現できない細かい縫い込み間隔も実現され、修理の仕上がり具合は手作業に比べて格段に向上する。
【0025】
従来、熟練技術者であっても、縫い込む糸により発生する直線と直線の間隔は2〜3mm程度であったが、本発明においては0.5mm程度の間隔で、極めて細かく縫い込むことが出来る。
従来、熟練技術者であっても、縫い込む糸により発生する直線と直線は交差したり、その間隔にばらつきが生じたりするが、本発明においては糸と糸が交わることなく、指定した間隔を平行に保つことが出来る。
従来、熟練技術者であっても、上記直線の始点と終点が不揃いであったが、本発明においては綺麗に揃えることが出来る。
このように本発明においては、被服の修理該当箇所と縫い込む糸が一体化したように視認され、補修痕が非常に目立ち難いという点で、被服修理の質が格段に向上している。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 被服修理方法
2 補強布当て工程(S10)
4 被服設置工程(S20)
6 枠設置工程(S30)
8 柄パターン選択工程(S40)
10 柄パターン作成工程(S50)
12 ミシン(刺しゅう作成用ミシン)
14 修理対象の被服
16 修理箇所
18 刺しゅう作成用の枠
20 柄パターン(ミシン12に作成させる刺しゅう柄)
22 補強布
24 被服の修理担当者
図1
図2