(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370900
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】水で満たされた容器の基部の損傷を修理するための装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20180730BHJP
G21C 19/02 20060101ALN20180730BHJP
【FI】
E04G23/02
!G21C19/02 Y
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-527285(P2016-527285)
(86)(22)【出願日】2014年11月3日
(65)【公表番号】特表2016-538443(P2016-538443A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2014073544
(87)【国際公開番号】WO2015067553
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】102013112136.5
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501315289
【氏名又は名称】アレヴァ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Areva GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】クラマー、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】マイアー−ヒネク、コンラード
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514529(JP,A)
【文献】
特開2003−156586(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第03913202(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
G21C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(10)で満たされた容器(2)の、複数の基部要素(12)により形成された基部(8)の損傷を修理するための装置(16)であって、
− 前記容器(2)の前記基部(8)上に置かれることができるガイド装置(22)であって、前記ガイド装置(22)を前記基部要素(12)の壁部(14)の間にセンタリングするためのセンタリング装置(26)と、前記ガイド装置(22)を前記容器(2)の前記基部(8)上に固定するための固定装置(38)とを有するガイド装置(22)と、
− 前記ガイド装置(22)に沿ってガイドされることができるキャリア(40)であって、前記キャリア(40)の上に少なくとも1つの回動アーム(42)が、前記基部(8)の面に垂直に向いた搬送位置と前記基部(8)の面に平行に延びる動作位置との間で回動されることができるように配置されたキャリア(40)と、
− 前記回動アーム(42)の自由端(44)に配置され、前記基部要素(12)の壁部(14)の一部を覆うために用いられることができる接着剤(50)を収容するように構成された収容要素(48)と、
を備える装置(16)。
【請求項2】
前記ガイド装置(22)は、前記容器(2)の上側から前記基部(8)に延びるマストにより形成されている、請求項1に記載の装置(16)。
【請求項3】
前記マストは複数のマスト要素(24)から形成されている、請求項2に記載の装置(16)。
【請求項4】
前記センタリング装置(26)は2つの回動可能なウィング(32)を有し、前記ウィング(32)のそれぞれの上に、前記壁部(14)に対して押し付けられることができる固定要素(34)が配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項5】
前記固定装置(38)は磁石または真空カップを備える、請求項1から4のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項6】
前記キャリア(40)を下ろし前記回動アーム(42)を回動するための巻き上げ機を備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項7】
前記収容要素(48)は、前記基部(8)の面に垂直に向いた搬送位置と前記基部(8)の面に平行に向いた動作位置との間で回転されることができるように配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項8】
前記収容要素(48)は、解錠機構を用いて前記回動アーム(42)から外されることができる、請求項1から7のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項9】
前記回動アーム(42)と収容要素(48)は、それらの間に運動要素(46)を配置しており、前記運動要素(46)を用いて、前記収容要素(48)は、前記動作位置において、前記回動アーム(42)と前記ガイド装置(22)に対して垂直に動かされることができる、請求項1から8のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項10】
前記ガイド装置(22)を支え、それを前記容器(2)に導入し、それをそこから取り除くクレーン装置(19)を備える、請求項1から9のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項11】
前記基部要素(12)は、前記容器(2)内に垂直に延びる前記壁部(14)を用いて少なくとも2つの向かい合う端部にて一緒に結合されている、請求項1から10のいずれかに記載の装置(16)。
【請求項12】
前記ガイド装置(22)は、前記容器(2)の上側に位置した開口(18)を通して前記容器(2)に導入されることができる、請求項1から11のいずれかに記載の装置(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水で満たされた容器の基部の損傷を修理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器は、例えば放射性汚染水を蓄えるために用いられる。このような容器は、通常、容器壁、カバーおよび基部(base)を有し、基部は、容器内に垂直に延びる壁部を用いて少なくとも2つの向かい合う端部にて一緒に結合された複数の基部要素により形成されている。これらの壁部はフランジを形成しており、フランジにて個々の基部要素は一緒にねじで取り付けられている。時間経過に伴い、これらのフランジの場所は損傷するかもしれず、汚染水は損傷した場所を通って容器の外に流れ出ることがある。容器の周囲が流出する水によって汚染されることを避けるために、損傷した場所をふさぐことにより損傷を直す必要がある。接着剤を損傷した場所に持ってくることができるようにするためには、水を容器の外に出すことが必要になるが、防護または他の理由のため、このことは不可能である。
【発明の概要】
【0003】
従って本発明の目的は、水で満たされた容器の基部の損傷を修理するための装置を特定することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置による発明により達成される。従って、装置は、容器の基部上に置かれることができるガイド装置を備える。この目的のため、ガイド装置は容器の上側に位置した開口を通して容器に導入されることができる。
【0005】
ガイド装置は、ガイド装置を基部要素の壁部の間にセンタリングできるセンタリング装置を有する。ガイド装置は、ガイド装置を基部上に固定することができる固定装置も有する。
【0006】
装置は、ガイド装置に沿ってガイドされることができるキャリアを備え、キャリアの上に少なくとも1つの回動アームが、基部の面に垂直に向いた搬送位置と基部の面に平行に延びる動作位置との間で回動されることができるように配置されている。装置は、回動アームの自由端に配置され、基部要素の壁部の一部を覆うために用いられることができる接着剤を収容するように構成された収容要素も備える。
【0007】
従って、本発明による装置は、基部の領域が、水の下に位置した領域であっても、遠隔制御によって接着剤で修理されることができるようにする。従って、汚染水を流出させる必要がない。ガイド装置は、その上に回動アームと収容要素が配置されたキャリアを損傷した場所に動かすために用いられることができ、従って、最後に、収容要素内に位置する接着剤は、人間が容器内に入ることなく損傷をふさぐことができる。即ち、ガイド装置は動作位置において搬送ルートを形成しており、搬送ルートを介して、接着剤が、人間が近づける場所から損傷した場所に搬送されることができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態の場合、ガイド装置は、動作位置において容器の上側の開口から容器の基部に延びるマスト(mast)により形成されている。
【0009】
もしマストが複数の個々のマスト要素から形成されていれば、それは修理されるべき容器の所望の寸法、特に高さに適合されることができる。異なる数のマスト要素および/または異なる長さのマスト要素を用いることは、マストが特定の場合のそれぞれに個々に適合できるようにする。
【0010】
センタリング装置は好ましくは2つの回動可能なウィング(wings)を有し、ウィングのそれぞれの上に、壁部に対して押し付けられることができる固定要素が配置されている。
【0011】
本発明の好ましい構成では、固定装置は磁石または真空カップ(バキュームカップ)により形成されている。
【0012】
キャリアを下ろし、回動アームを回動させる動作は、巻き上げ機を用いて行うことができる。
【0013】
キャリアが、回動アームおよび収容要素とともに、出来るだけ小さい開口を通ってガイドされることができるために、収容要素は、基部の面に垂直に向いた搬送位置と基部の面に平行に向いた動作位置との間で回転されることができるように配置されている。搬送位置では、例えば細長いU型の断面(U profile)により形成され得る収容要素は、従って、それが開口を通って容易に動かされることができる垂直位置にある。次に接着剤を損傷した場所に置くために、容器内に位置されるときだけ、収容要素は容器の基部の面に平行に向いた水平位置に90°回転される。
【0014】
修理動作の後で装置が容器から再び取り除かれるために、収容要素は、解錠機構(ロック解除機構)を用いて回動アームから外されることができる。従って、収容要素と接着剤は、一度修理された損傷した場所に残る。
【0015】
壁部の異なる場所に収容要素と接着剤が届くことができるために、回動アームと収容要素はそれらの間に運動要素(movement element)を配置しており、運動要素を用いて、収容要素は、動作位置において、回動アームとガイド装置に垂直に、即ち壁部に沿って、動かされることができる。運動要素は、好ましくは収容要素と一緒に回転されるように回動アーム上に配置されている。運動要素は、好ましくは伸縮して変位可能な2つのレールにより形成されている。
【0016】
本発明のさらに好ましい構成の場合、装置は、ガイド装置と全ての他の必要な構成要素を支え、これらを容器に導入し、これらをそこから取り除くクレーン装置を追加的に備える。ここでのクレーン装置は、設けられたカバーが装置により受ける表面領域の荷重を所望量に減らすように構成されている。この目的のため、クレーン装置は例えば底板を有してもよく、底板を用いて、全体としての装置の重さは一定の表面領域にわたって分布される。クレーン装置の個々の部品は、モジュール構造であり、個々の部品に分解されることができる。
【0017】
本発明をさらに説明するため、図面に示された例示的な実施形態を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、容器に導入される前の本発明による装置を有する容器を示す。
【
図3】
図3は、容器内に下ろされた本発明による装置を示す。
【
図4】
図4は、センタリング動作の間の本発明による装置を示す。
【
図7】
図7は、搬送位置におけるキャリアと回動アームを有するガイド装置の詳細を示す。
【
図8】
図8は、動作位置における回動アームと収容要素を有するキャリアを示す。
【
図9】
図9は、回動した回動アームを有するキャリアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、側壁4と、カバー6と、基部8とを有する円柱状の容器2を示す。容器2は、放射性汚染水10で満たされている。
【0020】
容器の基部8は、容器2内に垂直に延びる壁部14を用いて2つの向かい合う端部にて一緒に結合された複数の基部要素12から形成されている。2つの隣接した基部要素12のそれぞれ隣接した壁部14は、ここではフランジを形成しており、フランジはねじを用いてねじ止めされることができる。水10が一定期間蓄えられた後で損傷が起こるのは、特にこれらのフランジの場所であり、さらなる汚染水10が容器2から容器2の周囲の環境に流出することができないようにその損傷を修理してふさぐことが必要である。
【0021】
損傷を修理する目的で、個々の部品に分解された状態で
図1と2に示される本発明による装置16が用いられる。装置16が容器2に導入されることができるようにするため、円形の開口18がカバー6に作られている。さらに、クレーン装置19が開口18の上に配置されている。そのクレーン装置は、順番に、骨組み20と、開口18の周りでカバー6の上側に配置された底板(base plate)21とを備える。ここでのクレーン装置19は、モジュール構造であり、従って個々の部品に分解できる。カバーの一定の許容される表面領域の荷重を保つために、底板21は、全体としての装置16の重さを一定の表面領域にわたって分布させるように働くので、カバーは重さによって凹まない。マスト要素24の形のガイド装置22の最初の部分は、クレーン装置19にさらに取り付けられている。マスト要素24は、下端にセンタリング装置26を有する。さらに、マスト要素24は、センタリング装置26と共に、クレーン装置19を用いて開口18を通って容器2内に下ろされる。装置16を容器2内に導入する動作および修理動作は、制御要素27によって完全に制御される。開口18内に回動されることができる2つのボルト(bolts)28により形成された保持装置30は、最初のマスト要素24を
図3に示される仮の位置に保持する。最初のマスト要素24は、
図3に同様に示された、その上に置かれてそれに接続される追加のマスト要素24をさらに有することができる。さらに、任意の所望の数のマスト要素24が組み立てられることができるので、
図4に示された動作位置において、複数のマスト要素により形成されたガイド装置22は、容器2の基部8から開口18上に延びる。
【0022】
ガイド装置22を下ろすことが続くので、
図4と5に示されるように、センタリング装置26は最初に容器2の基部8に接触する。図示された例示的な実施形態では、センタリング装置26は、2つの回動可能なウィング32を有する。これらは、基部8への接触の結果、回動されて開き、これらは基部8の面に平行に位置する。
【0023】
センタリング装置26のそれぞれのウィング32は、それらの上に、例えば油圧、空気圧またはモーターを用いて壁部14と更に横支柱36に対して押し付けられることができる2つの固定要素34を配置している。このような状態は、
図6に示される。個々の固定要素34が対称に動く(move out)ことにより、ガイド装置22は基部要素12に関してセンタリングされる。従ってガイド装置22は、基部要素12の中心点の上に配置される。次に、この位置において、ガイド装置22は固定装置38によって容器2の基部8上に固定される。このような固定装置38は、例えば磁石または真空カップによって形成され得る。次に固定要素34は、センタリング装置26内の最初の位置に再び戻されるので、それらは残りの修理動作を妨害しない。
【0024】
次に、キャリア40はガイド装置22上に下ろされ、そのキャリアは、2つの荷台により形成されており、
図7と8では1つだけが見えるが、キャリア上にこの場合2つの向かい合って位置した回動アーム42を配置している。
【0025】
回動アーム42は、
図7と8に示され2つの回動アームが基部の面に垂直に向いた搬送位置と、
図9に示され回動アームが基部8の面に平行に延びる動作位置との間で回動されることができるようにキャリア40上に配置されている。さらに、伸縮して変位可能な2つのレールの形の運動要素46が回動アーム42の自由端44に配置されており、レールの1つは、その上に、U型の断面の形であり接着剤50を収容できる収容要素48を配置している。
【0026】
図7では、回動アーム42と収容要素48の両方は、運動要素46とともに、それらが基部8の面に垂直に向いているそれぞれの搬送位置に位置している。このことは、キャリア40が、回動アーム42と収容要素48とともに、開口18を通って容器2内に導入されることができるようにする。
【0027】
図8に示すように、キャリア40が回動アーム42および接着剤50を備える収容要素48とともに容器2に導入されると、運動要素46は、収容要素とともに、シリンダ52を用いて90°回転されるので、それは基部8の面に平行に延びる動作位置に位置する。
図9に示すように、回動アーム42は、次に、基部8の面に平行に延びる動作位置に同様に回動される。この状態において、収容要素48は、損傷した場所を接着剤50を用いて覆ってふさぐ。収容要素48は解錠機構を用いて運動要素46から外されるので、回動アーム42は搬送位置に再び回動されることができる。逆に、キャリア40は、順番に、巻き上げ機を用いて開口18を通って上側方向に容器2から取り除かれることができる。同様に、ガイド装置22は、容器2から取り出されて更なる場所の修理目的で用いられることができる。
【0028】
従って、損傷した場所は、誰かが容器2に入ることなく、遠隔制御により完全に修理される。さらに、容器2内の水10を流出させる必要がない。