特許第6370904号(P6370904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6370904高早期圧縮強度および低収縮率を有する、アルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩を含有する急結性ポルトランドセメント組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370904
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】高早期圧縮強度および低収縮率を有する、アルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩を含有する急結性ポルトランドセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20180730BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 14/12 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 22/16 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20180730BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C04B28/04
   C04B18/08 Z
   C04B22/14 B
   C04B24/22
   C04B14/12
   C04B22/16 A
   C04B22/08 Z
   C04B24/06 A
【請求項の数】20
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2016-531750(P2016-531750)
(86)(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公表番号】特表2016-528150(P2016-528150A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】US2014047582
(87)【国際公開番号】WO2015017185
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】13/954,581
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリアネラ・ペレス−ペナ
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0302276(US,A1)
【文献】 特表2010−528972(JP,A)
【文献】 米国特許第04888058(US,A)
【文献】 特開昭63−147849(JP,A)
【文献】 特表2010−532309(JP,A)
【文献】 特表2012−503592(JP,A)
【文献】 特表2012−520821(JP,A)
【文献】 特表2013−518795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、
80〜100重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜7重量%の硫酸カルシウム、0〜20重量%ポゾラン、10重量%以下のフライアッシュを含むセメント反応性粉体
クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、およびその混合物から成る群から選択され、前記セメント反応性粉体の重量に対して、1.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩
前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.05〜1.5重量%のトリメタリン酸ナトリウム、が混合され、
アルカノールアミンを含ま
前記セメント反応性粉体の重量に対する前記水の重量比が、0.20/1〜0.80/1であることを特徴とする急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項2】
前記急結性セメント混合物が、乾燥基準で、100重量部のセメント反応性粉体当たり、0〜4重量部の硫酸カルシウムをさらに含み、フライアッシュを含まないことを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項3】
前記急結性セメント混合物は、ASTM C266試験法で規定されたギルモアニードルテストによる最終凝結時間が20分以下であることを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項4】
記トリメタリン酸ナトリウムが、前記セメント反応性粉体の重量に対して、.15〜1.0重量%の量で準備されることを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項5】
前記トリメタリン酸ナトリウムが、前記セメント粉体の重量に対して、.3〜0.9重量%の量で準備されることを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項6】
前記急結性セメント混合物は、 前記トリメタリン酸ナトリウムが、記セメント反応性粉体の重量に対して、.15〜0.90重量%の量で含まれ、前記アルカリ金属クエン酸塩が、.0〜4.5重量%の量クエン酸三カリウムであることを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項7】
前記セメント反応性粉体は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、および硫酸カルシウムの総和に対して、0〜100重量%の前記ポルトランドセメント、0〜20重量%の前記アルミン酸カルシウムセメント、および0〜7重量%の前記硫酸カルシウムを含み、前記ポゾランを含まないことを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項8】
前記急結性セメント混合物が、0〜5重量部のポゾランを含むことを特徴とする請求項7記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項9】
前記急結性セメント混合物前記セメント反応性粉体の重量に対して、3.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩、前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.15〜1.0重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含み、
90°F〜135°F(32.2℃〜57.2℃)の温度で混合され、混合は、前記急結性セメント混合物の1つ以上の成分の加熱による混合後〜5分達成されることを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項10】
80〜100重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜7重量%の硫酸カルシウム、0〜20重量%ポゾラン、10重量%以下のフライアッシュを含むセメント反応性粉体、
クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、およびその混合物から成る群から選択され、前記セメント反応性粉体の重量に対して、1.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩、
前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.05〜1.5重量%のトリメタリン酸ナトリウムおよび
水、
を含み、アルカノールアミンを含まないことを特徴とする水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【請求項11】
前記組成物は、前記セメント反応性粉体の重量に対して、3.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩、前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.15〜1.0重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項10記載の水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記セメント反応性粉体の重量に対して、.0〜4.5重量%のクエン酸三カリウムおよび、前記セメント反応性粉体の重量に対して、.15〜1.0重量%の量でトリメタリン酸ナトリウムを含み、ライアッシュを含まないことを特徴とする請求項10記載の水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【請求項13】
膨張粘土骨材,凝結遅延剤、発泡剤、空気連行剤、流動化剤およびその混合物から成る群から選択される少なくとも1つのメンバーをさらに含むことを特徴とする請求項10記載の水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【請求項14】

80〜100重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜7重量%の硫酸カルシウム、0〜20重量%ポゾラン、10重量%以下のフライアッシュを含むセメント反応性粉体
クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、およびその混合物から成る群から選択され、前記セメント反応性粉体の重量に対して、1.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩、および
前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.05〜1.5重量%のトリメタリン酸ナトリウム
を含み、ルカノールアミンを含まないことを特徴とする組成物。
【請求項15】
前記組成物
フライアッシュを含まず、
前記セメント反応性粉体の重量に対して、3.0〜4.5重量%のアルカリ金属クエン酸塩、前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.15〜1.5重量%のトリメタリン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記セメント反応性粉体は、95〜100重量%のポルトランドセメント、0〜5重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜5重量%の硫酸カルシウムを含み、
前記以外のクエン酸やリン酸塩、及び無機凝結剤と凝結促進剤を含まないことを特徴とする請求項1記載の急結性セメント混合物を提供する方法。
【請求項17】
前記セメント反応性粉体は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウムの総和に対し、95〜100重量%のポルトランドセメント、0〜5重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜5重量%の硫酸カルシウムを含み、
前記以外のクエン酸やリン酸塩、及び無機凝結剤と凝結促進剤を含まないことを特徴とする請求項10記載の水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【請求項18】
前記セメント反応性粉体は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウムの総和に対し、95〜100重量%のポルトランドセメント、0〜5重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜5重量%の硫酸カルシウムを含み、
前記以外のクエン酸やリン酸塩、及び無機凝結剤と凝結促進剤を含まないことを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記セメント反応性粉体の重量に対して、1.0〜4.5重量%のクエン酸三カリウムおよび、前記セメント反応性粉体の重量に対して、0.15〜1.0重量%の量でトリメタリン酸ナトリウムを含み、フライアッシュを含まないことを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項20】
前記セメント反応性粉体が前記ポゾランを含まないことを特徴とする請求項10記載の水硬性混合物を含むセメントボード用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、早期強度の急硬および達成ならびに低収縮率が望ましい様々な用途で使用され得るポルトランドセメントを含む、超急結フライアッシュセメント組成物に関する。特に、本発明は、建築物の乾湿繰り返しを受ける場所での使用に対して優れた水分耐久性を有する、ボードおよび他のコンクリートを設置するため使用され得るセメント組成物に関する。セメントボードおよび他のコンクリート施用などのプレキャストコンクリート製品は、セメント混合物の急結性を提供する条件下、フライアッシュ系セメント以外のポルトランドセメントおよび随意の他の水硬セメントを用いて製造されるので、該ボードまたは他のコンクリート設置は、該セメント混合物を静止もしくは移動する型枠中に、または連続移動ベルトもしくは他のコンクリート設置先上に打設直後に取り扱いできる。理想的には、該セメント混合物のこの凝結は、該セメント混合物を、適切な量の水と混合後、約10分するや否や、好ましくは、約5分するや否や達成され得る。
【背景技術】
【0002】
Perez−Penaらの米国特許第7,670,427号(参照により本明細書に組み入れられる)では、アルカノールアミンおよびポリリン酸を、ポルトランドセメントなどの水硬セメントに添加して、少なくとも90°F(32℃)の初期スラリー温度を提供する条件下、水でスラリー状にすることにより得られたセメントボードなどのセメント系製品を製造するため、セメント組成物の超急結性について論じている。高アルミナセメント、硫酸カルシウムおよびクラスCフライアッシュなどのポゾラン材料など、混和される反応性材料が含まれ得る。
【0003】
Perez−Penaらの米国特許第6,869,474号(参照により本明細書に組み入れられる)では、アルカノールアミンを、ポルトランドセメントなどの水硬セメントに添加して、少なくとも90°F(32℃)の初期スラリー温度を提供する条件下、水でスラリー状にすることにより得られたセメントボードなどのセメント系製品を製造するため、セメント組成物の極めて急速な凝結性について論じている。高アルミナセメント、硫酸カルシウムおよびフライアッシュなどのポゾラン材料など、混和される反応性材料が含まれ得る。トリエタノールアミンの添加が、フライアッシュおよび石膏のレベル増加、およびアルミン酸カルシウムセメントを必要することなく、比較的短時間の終結を有する処方物を製造可能な非常に強力な促進剤になることが発見された。
【0004】
Dubeyの米国特許第8,070,878号(参照により本明細書に組み入れられる)では、40〜80%のポルトランドセメント、0〜20%の高アルミナセメント、0〜7%の硫酸カルシウム(石膏)および0〜55%のフライアッシュのブレンドを含む反応性材料を含む建築製品用軽量セメント組成物について論じている。該組成物は、フライアッシュおよびトリエタノールアミンの両方を含み得るが、該組成物は、アルカリ金属クエン酸塩もトリメタリン酸ナトリウム(STMP)などのポリリン酸も使用しない。
【0005】
Dubeyの米国特許第6,641,658号(参照により本明細書に組み入れられる)では、先行技術のセメント組成物と比較して、短い凝結時間を提供するポルトランドセメント、ポゾラン、高アルミナセメント、および不溶性硫酸カルシウム無水石膏を、反応性粉末として含むセメントボードの製造に有用な急結性セメント組成物について論じている。該組成物は、好ましくは、35〜90重量%のポルトランドセメント、0〜55重量%のポゾラン、5〜15重量%の高アルミナセメント、および1〜8重量%の不溶性硫酸カルシウム無水石膏を、反応性粉末ブレンドとして含む。従来の可溶性石膏(二水和物)を、不溶性硫酸カルシウム無水石膏に置き換えることにより、非常に大量のポゾラン材料、好ましくはフライアッシュの使用にもかかわらず、放熱を増加および凝結時間を短縮する。
【0006】
Dubeyの米国特許出願公開第20100040165号(参照により本明細書に組み入れられる)では、アルカノールアミン、STMPのようなポリリン酸を含み、含水フライアッシュを含んでもよいポルトランドセメント混合物のため、骨格構造として線維格子を使用するガラス繊維メッシュスクリム格子補強セメントボードシステムの使用について論じている。全ての場合に、該スラリー混合物は、フライアッシュおよび/またはアルカノールアミンを含む。
【0007】
エトリンガイトは、式CaAl(SO・32HOあるいは3CaO・Al・3CaSO・32HOを有する硫酸アルミニウムカルシウム化合物である。これは、CaAl(SO(OH)12・26HOとも記載される。エトリンガイトは、長針状結晶として形成され、型枠中または連続鋳造および成形ベルト上に打設される直後に取り扱うため、セメントボードに急速な早期強度を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高早期および高長期圧縮強度の両方の性能を発揮するが、アルカノールアミンなどの望ましくない反応物が、パネル表面にマイグレーションしない、通常、約4〜7分以下未満の終結時間を有するポルトランドセメント組成物が必要とされている。該終結時間は、より一般に、化学反応が長期間続き得るにもかかわらず、該セメント混合物が、それから製造された該セメント系製品が取り扱いおよび積み重ねられ得る程度まで凝結したときと定義される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの実施形態は、水、水硬セメントを含み、フライアッシュを含まないセメント反応性粉体、ならびに促進量のアルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩を混合することを含む、早期発現型圧縮強度を有する急結性スラリーの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、3時間および14日後の改良された急速な終結性能および改良された早期圧縮強度を有するセメント組成物を提供する。該セメント組成物は、フライアッシュを含まず、アルカリ金属クエン酸塩、およびリン酸塩を含むポルトランドセメントなどの水硬セメントを含むが、アルカノールアミン類を含まず、着色および、セメント組成物中の促進剤としてのアルカノールアミン類の使用に起因するコンクリート表面へのブリーディングの問題がない。
【0011】
本発明の別の実施形態は、水および骨材と混合され得るセメント組成物を提供し、該組成物は、ポルトランドセメントを含み、ならびに他の水硬セメント、アルカリ金属クエン酸塩、およびリン酸塩を含んでもよく、しかし、クラスCフライアッシュなどのフライアッシュを含まず、石膏をほとんどまたは全く含まない。水および該骨材と混合して、着色の問題を有しないセメントボードを形成するとき、特に、高アルミニウムフェライト含有率、すなわち、該ポルトランドセメント中5〜15重量%のフェライトを含有するポルトランドセメントが使用されるとき、スラリー混合物を提供する。石膏は、この高アルミニウムフェライト含有率ポルトランドセメントが、最終コンクリート製品の着色を減少するために使用されるとき、鉄に富むゲルの生成を抑制するために使用され得る。しかしながら、石膏は、本発明のポルトランドセメント組成物の反応速度を低下することが分かっている。従って、使用される石膏の量は、最小限にして、鉄に富むゲルの生成を抑制しながら、反応性に対する影響とバランスをとるべきである。
【0012】
フライアッシュは、本組成物に必要なく、通常、フライアッシュは存在しない。フライアッシュは、発泡の悪影響を有し得、変動する供給源からのフライアッシュ中の炭素および金属含有率の一貫性のないレベルを考慮して発泡するように、空気連行剤量を有意に増加する必要があり得る。本発明に従えば、フライアッシュもアルカノールアミン類もなく、ポルトランドセメントおよび酸塩類と一緒に、リン酸塩を使用すると、反応性および終結時間を促進するだけでなく、化学収縮を減少することが分かった。
【0013】
ポルトランドセメントを含むセメント混合物と比較して、フライアッシュを使用するとき、コンクリートの色を制御するのが、より困難であることも分かった。フライアッシュを含まないポルトランドセメントの使用は、ポルトランドセメント、フライアッシュ、アルカリ金属クエン酸塩およびトリエタノールアミンを含むセメント組成物で製造されたセメントボードと比較して、化学収縮の減少に加えて、色むらを回避する。Boxleyらの米国特許第8357239号は、コンクリート中のフライアッシュの使用で起こる問題を指摘し、ポルトランドセメントと一緒にフライアッシュを使用する問題を回避するために、フライアッシュのジオポリマー化による前処理を提案している。
【0014】
リーハイセメント、ホルシムセメント、およびセントメアリーセメントなどの増量したアルミニウムフェライトを含むポルトランドセメントで製造した、本発明の実施形態のセメント組成物の反応速度、終結時間および最終圧縮強度は、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの存在なしで改良されることも、予想外に分かった。これらのポルトランドセメントの反応性は、トリエタノールアミン促進剤が、該セメントに添加されるとき、これらの同じアルミニウムフェライトセメントの反応性と、直接的に反対であることが、予想外に分かった。
【0015】
従って、本発明は、一般に、急速な終結および早強の達成が望ましい様々な用途で使用され得る、急結性セメント組成物およびかかる組成物の製造方法に関する。セメント組成物の急結のため、リン酸塩と併用してアルカリ金属クエン酸塩の使用は、特に、高温において、スラリーが生成されるとき、石膏使用の減少およびアルカノールアミン反応促進剤およびフライアッシュなどの混和材料の必要の排除と同時に、セメントボードなどのセメント製品の生産速度の上昇を可能とする。
【0016】
本発明のセメント組成物は、建築物の乾湿繰り返しを受ける場所での使用に対する優れた水分耐久性を有するセメントボードなどのプレキャストコンクリート製品を製造するために使用され得る。セメントボードなどの該プレキャストコンクリート製品は、該セメント混合物の急速な終結を提供する条件下、すなわち、後述される標準ギルモアニードルテスト法で、押し込みが確認されないとき、製造されるので、該ボードは、該セメント混合物が、静止もしくは移動する型枠中に、または連続移動ベルト上に打設される直後に取り扱いされ得る。
【0017】
プレキャストコンクリート製品の製造工程中、小さい気泡が、空気連行混和材料の使用により、予め形成された泡を生成することにより添加され、引き続いて、30〜115pcfの範囲の嵩密度を有する軽量コンクリート製品を製造する。フライアッシュの高投与量の使用は、空気連行量を減少させ、泡立って合体して、次に、微細構造欠陥および比較的低い強度を招く原因となる。ポルトランドセメントの使用は、気泡コンクリート製品を設計するとき、比較的安定な気泡を提供し、より高圧縮強度をもたらす。
【0018】
急速な凝結は、
水、
水硬セメントを含むセメント反応性粉体、および
上記周囲温度、例えば、少なくとも約90°F(32.2℃)、より好ましくは、少なくとも約100°F(38℃)または少なくとも約105°F(41℃)または少なくとも約110°F(43℃)において、急結量のリン酸塩の混合物を含むスラリーを調合することにより達成される。通常、該スラリーは、約90°F〜160°F(32℃〜71℃)またはより好ましくは、約90°F〜135°F(32.2℃〜57.2℃)、最も好ましくは、約120°F〜130°F(49℃〜54℃)の初期温度を有する。
【0019】
ギルモアニードルテストに従って測定したとき、該セメント組成物の終結時間(すなわち、セメントボードを取り扱いできるようになる時間)は、適切量の水と混合後、最大20分、より好ましくは、最大10分、または最大5分であるべきである。より短い凝結時間およびより高い圧縮強度は、生産高を増加および製品製造コストの低減の助けとなる。
【0020】
該スラリー中のアルカリ金属クエン酸塩量は、本発明の該セメント反応性成分(セメント反応性粉体)に対して、好ましくは、約1.0〜4.5重量%、より好ましくは、約3.0〜4.5重量%である。クエン酸三カリウムの形態のクエン酸カリウムは、推奨のアルカリ金属クエン酸塩である。
【0021】
該リン酸塩量は、本発明のセメント反応性成分に対して、約0.15〜1.0重量%、好ましくは、0.3〜0.9重量%である。好ましいリン酸塩が、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)であるが、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、リン酸二カルシウム、およびリン酸一カリウム(MKP)などの他のリン酸塩を用いた処方物も、終結性能を改良し、圧縮強度を改良する。該リン酸塩は、石膏含有率が、該混合物中、増加するときに起こる誘導時間の増加および比較的長い凝結時間の影響も克服する。リン酸一カリウム(MKP)が、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)の使用と同じく効果があり得るので、本発明は、リン酸塩に限定されない。ポリリン酸塩の定義は、これらの化合物が、MKPの場合でないSTMPの場合と同様に、酸素イオンを共有することである。
【0022】
上述のように、これらの重量パーセントは、該セメント反応性成分(セメント反応性粉体)の重量に対するものである。これは、少なくとも1つの水硬セメント、好ましくは、ポルトランドセメントを含み、アルミン酸カルシウムセメントなどの少なくとも1つの他の水硬セメントも含み、硫酸カルシウム、例えば、石膏も含み得る。該セメント反応性成分は、水でスラリーを生成するために適切である。セメント反応成分は、ポゾラン、例えば、フライアッシュを含む。セメント反応性成分は、不活性成分、例えば、骨材または充填剤を含まない。
【0023】
典型的なセメント反応性粉体は、約60〜100重量%のポルトランドセメントを含み、重量パーセントは、該ポルトランドセメント、他のいずれものセメント、および石膏の総和に対するものである。
【0024】
別の典型的セメント反応性粉体は、該ポルトランドセメント、フライアッシュ非含有水硬セメント、および硫酸カルシウムの総和に対して、約80〜100重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメントなどのフライアッシュ系セメント以外の追加の水硬セメント、および0〜約10重量%の硫酸カルシウム(石膏)を含む。
【0025】
石灰は、該セメント反応性粉体の不可欠要素であり、急結を得る助けのため通常使用される成分である。セメントボード中の過剰な石灰の存在は、それらの長期耐久性にとって有害である。セメントボードは、しばしば、過剰な石灰(例えば、10%以上)により引き起こされるなどの高アルカリ性環境中で、強度および靭性を失って低下する高分子被覆ガラス繊維メッシュで補強される。
【0026】
従って、該セメント組成物の反応性粉体ブレンドは、外から添加する石灰を含むべきでない。石灰含有率の低減は、該セメントマトリックスのアルカリ性を低下させるのに役立ち、該製品の長期耐久性を向上させるはずである。
【0027】
該リン酸塩と該アルカリ金属クエン酸塩間の有益な相互作用がある。該リン酸塩とアルカリ金属クエン酸塩の添加は、該パネル表面へブリーディングする、アルカノールアミン類のような促進剤の必要なく、化学収縮および着色の原因となるフライアッシュ混和材の必要なく、および/または該セメントボード製品の着色に対抗するため、石膏などの混和材の必要なく、組成物の短終結の達成および早期圧縮強度の増進に有利である。該リン酸塩は、該リン酸塩不足の組成物と比較して、要求されるアルカリ金属クエン酸塩量も低減する。
【0028】
加えて、該リン酸塩の添加は、コンクリート混合物の偽凝結の原因となり得る硫酸アルミニウムなどの他の促進剤に反して、混合流動性を改良する。
【0029】
1つ以上の砂、骨材、軽量充填剤、流動化剤などの減水剤、急結剤、凝結遅延剤、空気連行剤、起泡剤、収縮低減剤、スラリー粘性改質剤(増粘剤)、着色剤および内部養生材などの他の混和材料は、本発明のセメント組成物の加工性および用途に依存して、要望通りに含まれ得る。
【0030】
必要に応じて、本発明の反応性粉体は、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)(通常、アルミナセメントまたは高アルミナセメントとも呼ばれる)および/または硫酸カルシウムなどの非フライアッシュ系水硬セメントを含んでも、含まなくてもよい。別の実施形態では、該反応性粉体ブレンドは、高アルミナセメントを含まず、ポルトランドセメントのみ、少なくとも1つのアルカリ金属クエン酸塩、少なくとも1つのリン酸塩、および混和材料を、反応性粉体成分として含む。
【0031】
本明細書中の全てのパーセント、比および比率は、他に特に規定がない限り、重量基準である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、3%のクエン酸カリウムおよび各種量のSTMPに対する、ホルシムIII型ポルトランドセメントの効果を示す表3の結果のグラフである。
図2図2は、0.60%のSTMPおよび各種量のクエン酸カリウムに対する、ホルシムポルトランドセメントの時間速度セット(TRS)データを示す表4の結果のグラフである。
図3図3は、0.60%のSTMPおよび様々な石膏投与量に対する、ホルシムセメントを含む混合物の温度上昇効果を示す表の結果のグラフである。
図4図4は、4.5%のクエン酸カリウムおよび様々なSTMP投与量に対する、100部のホルシムセメント+4部の石膏を含む混合物の温度上昇プロットのグラフである。
図5図5は、0.15%のSTMPおよび様々なクエン酸カリウムの投与量に対する、100部のホルシムセメント(石膏なし)を含む混合物の温度上昇のグラフである。
図6図6は、0.30%のSTMPおよび様々なクエン酸カリウムの投与量に対する、100部のホルシムセメント(石膏なし)を含む混合物の温度上昇のグラフである。
図7図7は、様々なクエン酸カリウムの投与量および様々なSTMP値に対する、0部石膏を含むホルシムセメントを含む混合物の24時間後に測定された立方体の圧縮強度のグラフである。
図8図8は、様々なSTMPの投与量における、3.0%のクエン酸カリウムを含む、0部石膏を含むリーハイセメントを含む混合物の温度プロットのグラフである。
図9図9は、様々なクエン酸カリウム値に対する、0.60%のSTMPを含み、リーハイセメント(石膏なし)を含む混合物のTRSプロットのグラフである。
図10図10は、0.60%のSTMPおよび4.5%のクエン酸カリウムを含み、および様々な石膏の投与量における、リーハイセメント混合物の温度上昇のグラフである。
図11図11は、4.5%のクエン酸カリウムを含み、および様々なSTMPの投与量における、100部のリーハイセメントおよび4部の石膏を含む混合物の温度上昇のグラフである。
図12図12は、4部の石膏含有セントメアリーセメント、3.0%のクエン酸カリウムおよび様々なSTMP値を含む混合物の3時間までプロットしたTRSデータのグラフである。
図13図13は、4部の石膏含有セントメアリーセメント、0.30%のクエン酸カリウムおよび様々なSTMP値を含む混合物の3時間までプロットしたTRSデータのグラフである。
図14図14は、0部の石膏含有セントメアリーセメントを含み、0%のSTMPを含み、様々なクエン酸カリウムの投与量を含む混合物のTRSデータプロットのグラフである。
図15図15は、0.15%のSTMPを含み、様々なクエン酸カリウムの投与量を含む、0部の石膏含有セントメアリーセメント混合物のTRSデータプロットのグラフである。
図16図16は、0部の石膏含有セントメアリーセメントを含み、0.30%のSTMPを含み、様々なクエン酸カリウムの投与量を含む混合物のTRSデータプロットのグラフである。
図17図17は、0部の石膏含有セントメアリーセメントを含み、0.60%のSTMPを含み、様々なクエン酸カリウムの投与量を含む混合物のTRSデータプロットのグラフである。
図18図18は、様々な量のSTMP混和剤を含むセメントペーストの収縮率と比較した、クラスCフライアッシュペーストの化学収縮率のグラフである。
図19図19は、実施例19での様々なリン酸塩を添加した化学収縮セメントペーストのグラフである。
図20図20は、実施例19での3%のクエン酸カリウムおよび様々なリン酸塩を含むセメントペーストの温度上昇データのグラフである。
図21図21は、3%のクエン酸カリウムおよび様々なリン酸カルシウムおよび量を含むセメントペーストの温度上昇データのグラフである。
図22図22は、0.15%のリン酸一カリウムおよび0.15%のSTMPに対して、3%のクエン酸カリウムおよび0%のリン酸塩を含むセメントペーストについて、時間に対する温度上昇のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、セメント反応性粉体を、少なくとも90°F(32.2℃)の初期スラリー温度で、アルカリ金属クエン酸塩、リン酸塩および水と混和して、30分未満、より好ましくは、20分未満、最も好ましくは、10分未満または5分未満の急結を得る。
【0034】
本発明は、改良された急速な終結性能および改良された早期圧縮強度も提供する。
【0035】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、急結は、該セメント反応性粉体、例えば、もし、該セメントの色が問題でないならば、比較的高フェライト含有率を有する80〜100重量%のポルトランドセメント、フライアッシュ系セメント以外の0〜20重量%の水硬セメント、例えば、アルミン酸カルシウムセメント、および乾燥基準で0〜10%硫酸カルシウム(石膏)を準備して、該セメント反応性粉体、アルカリ金属クエン酸塩、リン酸塩、および水を混和することにより達成され、エトリンガイトおよび/またはアルミン酸カルシウムの他の水和物および/またはリン酸カルシウム化合物の生成は、この反応性粉体ブレンドの水和反応の結果として起こり得ると理論付けられる。
【0036】
従って、適切量の水が供給されて、該セメント反応性粉体を水和して、エトリンガイト、アルミン酸カルシウムの他の水和物および/またはリン酸カルシウムを急速に生成する。一般に、添加された水量は、該セメント反応性粉体の水和に、理論的に必要な量より多いであろう。この増加水量は、該セメントスラリーの加工性を促進する。
【0037】
通常、該スラリーでは、セメント反応性粉体ブレンドに対する該水の重量比は、約0.20/1〜0.80/1、好ましくは、約0.30/1〜0.60/1、より好ましくは、約0.375/1である。該水量は、該セメント組成物中に存在する個々の物質の必要性に依存する。
【0038】
通常、比較的高C4AF(鉄アルミン酸四カルシウムまたはフェライト相)を含むポルトランドセメントの使用は、高硫酸耐性を有するコンクリートを生み出す。このタイプのポルトランドセメントでは、エトリンガイトから一流酸塩への転換が、鉄成分の存在により阻害される。しかしながら、該反応は遅く、石膏の存在により、さらに減速する。トリメタリン酸ナトリウム(STMP)と併用したクエン酸カリウムの使用は、早強を促進し、アルカノールアミン類の非存在下、高C4AF含有セメントの凝結時間を短縮する。高C4AFセメントは、伝統的に、当産業で好ましい暗色を有する。
【0039】
エトリンガイト、アルミン酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウム化合物の他の水和物は、該水和過程で、非常に急速に生成され、従って、本発明のセメント組成物の該セメント反応性粉体ブレンドで製造される混合物に急結および剛性を与える。セメントボードなどのセメント系製品の製造では、それは、本質的に、本発明のセメント組成物が適切量の水と混合される後、数分以内で、セメントボードの取り扱いを可能とするエトリンガイト、他のアルミン酸カルシウム水和物および/またはリン酸カルシウム化合物の生成である。
【0040】
該組成物の凝結は、ASTM C266試験方法で規定されたギルモアニードルを用いて測定した、初期および最終凝結時間により特徴付けられる。該終結時間は、セメント系製品、例えば、セメントボードが、十分に硬化して、取り扱い可能であるときの時間にも相当する。当業者は、養生反応が、終結時間に達した後、長期間、続くことを分かっているだろう。
【0041】
該組成物の早期強度は、ASTM C109の規定通りに、3時間、それから、14日の養生後の圧縮強度を測定することにより特徴付けられる。具体的には、立方体の検体を同時に打設して、試験時間まで、154°F(68℃)の温度において、含水タオルを含む密閉したプラスチック袋の内側に入れたままにする。各試験混合物の少なくとも3個の立方体の圧縮強度を測定した。該立方体を粉砕するのに必要な最大荷重を、ASTM C109の方法により規定された荷重速度に従ってプログラムされたSATEC UTC 120HVL圧縮機を用いて測定した。高早強の達成は、重ねられたパネルの取り扱いを容易にする。本発明は、表Aの次の組成を包含する。
【0042】
【表A】
【0043】
セメント反応性粉体
セメント反応性粉体(セメント反応性成分としても公知)としては、セメント、ポゾラン、および添加石灰が挙げられる。不活性骨材および充填剤を含まない。本発明のセメント反応性粉体の主要成分は、水硬セメント、好ましくは、ポルトランドセメントである。
【0044】
該セメント反応性粉体の他成分としては、高アルミナセメントおよび硫酸カルシウムが挙げられ得る。好ましくは、アルミン酸カルシウムセメントおよび硫酸カルシウムが、該セメント反応性粉体の0〜10重量%、例えば、2〜10重量%などの少量で使用され、好ましくは、該ポルトランドセメントのみを残して、促進剤として、アルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩を含まない。アルミン酸カルシウム、粉砕造粒高炉スラグ、またはスルホアルミン酸カルシウムなどの他の水硬セメントが添加され得るが、あまり必要とされないことが多い。
【0045】
他の水硬セメントが存在するとき、該セメント反応性粉体は、通常、これらの成分の総重量に対して、80〜100重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメント、および0〜7重量%の硫酸カルシウムを含む。本発明のセメント反応性粉体は、表Bの次の組成物を含む。
【0046】
【表B】
【0047】
水硬セメント
水硬セメント、特に、ポルトランドセメントは、本発明の実施形態の組成物の実質的量を構成する。本明細書で使用されるとき、「水硬セメント」は、いくつかの石膏が、通常、ポルトランドセメントに含まれるが、水中で強度を得ない石膏を含まないことを理解すべきである。ポルトランドセメントのASTM C150標準仕様は、同時粉砕添加として、1つ以上の形態の硫酸カルシウムを通常含む水硬性ケイ酸カルシウムから本質的に成るクリンカーを微粉砕することにより製造される水硬セメントとしてポルトランドセメントを定義している。より一般に、他の水硬セメントは、ポルトランドセメント、例えば、スルホアルミン酸カルシウム系セメントに代替され得る。ポルトランドセメントを製造するため、石灰石および粘土の均質混和物は、キルンで強熱して、ポルトランドセメントクリンカーを生成する。
【0048】
アルミン酸三カルシウムおよびフェライト相
ポルトランドセメントの次の4つの主要な相が、該クリンカーに存在する−ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO、CSとも呼ばれる)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO、CSと呼ばれる)、アルミン酸三カルシウム(CaO)・(Al)またはCA)、および四カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al・FeまたはCAF)。上記化合物を含む得られたクリンカーは、ポルトランドセメントを製造するため、所望の粉末度に、硫酸カルシウムと同時粉砕される。なお、セメント記号は、C=CaO、A=Al、F=Fe、S=SO、H=HOを示す。アルミン酸およびフェライト相は、20%未満のセメントバルクを含むが、それらの反応物は、急結処方物の開発に非常に重要である。CSに対する反応性、CAの水和反応は非常に速い。下式3の左側は、水と水和して2つの中間体六方晶相、CAHおよびCAH13を生成するポルトランドセメントのCAの反応を示し、これは、式4に示すように、完全に水和した、熱力学的に安定な立方晶相、CAHに自然に転位する。
2(CaO)(Al)+21HO→(CaO)(Al)・13(HO)+(CaO)(Al)・8(HO) (3)
(CaO)(Al)・13(HO)+(CaO)(Al)・8(HO)→2(CaO)(Al)・6(HO)+9HO (4)
【0049】
もし、CAの非常に急速な発熱水和反応は、セメント中で障害なく進行することが可能ならば、凝結は、あまりに急速に起こるため、該セメントは強くならない。従って、石膏[硫酸カルシウム二水和物、CaSO・2(HO)]が、CA水和反応を減速するために添加される。石膏の存在下、アルミン酸三カルシウムは、エトリンガイト、[CaAl(OH).12(HO)].(SO.2(HO)、式5を生成し、これは、(CaO)(Al).3(CaSO).32(HO)とも記載され得る。
(CaO)(Al)+3CaSO.2(HO)+26HO→(CaO)(Al)(CaSO・32(HO) (5)
【0050】
該ポルトランドセメントの四カルシウムアルミノフェライト(CAF)は、CAと非常に同様に反応する、すなわち、式(6)中、下記に示すように、石膏の存在下、エトリンガイトを生成する。
3(CaO)4(Al)(Fe)+12CaSO−2(HO)+110HO → 4[(CaO)6(Al)(Fe)(CaSO・32(HO)]+2(Al)(Fe)・3(HO) (6)
しかしながら、該フェライト相の水和反応は、CAの水和反応より、ずっと遅く、水が、CAF表面上に水滴になるのが観察される。これは、鉄が、ペースト中で、アルミニウムのように自由に移動できないという事実のためであり得、CAF粒子の表面および水酸化鉄の単離領域において、あまり透過性のない鉄に富む層の形成を引き起こす。セメント中、もし、該CAFの全てをエトリンガイトに転換するのに不十分な石膏しかないならば、鉄に富むゲルが、それらの水和反応を減速すると考えられているケイ酸粒子表面に生成する。該鉄に富むゲルは、セメントボード製品の着色に寄与すると考えられる。
【0051】
本発明は、クエン酸カリウムの存在下、その水和反応の増加により、フェライト相の遅い反応性を克服し、トリメタリン酸ナトリウムまたはリン酸一カリウムおよび他のリン酸塩相などの他のリン酸塩の添加により、石膏の存在下、遅い反応性をさらに克服しようとする。
【0052】
ポルトランドセメント中の少量で存在する他の化合物としては、アルカリ性硫酸塩の複塩、カルシウム酸化物、およびマグネシウム酸化物が挙げられる。セメントボードが製造されるべき時、該ポルトランドセメントは、通常、該粒子表面積が、ブレーン表面積法(ASTM C204)により測定して、4,000cm/グラムより大きく、典型的には、5,000〜6,000cm/グラムになるように、微細粒子の形態であろう。ポルトランドセメントの様々な認識された分類のうち、ASTM III型ポルトランドセメントは、本発明のセメント組成物のセメント反応性粉体で、最も好ましい。これは、その比較的速い反応性および超早強発現による。
【0053】
本発明では、5〜15重量%のフェライト含有量を有する多くのIII型ポルトランドセメントは、本発明の実施例で使用された3種の異なるセメントの化学酸化物分析および化学成分について、表1および2の一覧に例示するように使用され得る。本発明の組成物中のIII型ポルトランドセメントを代替または補足するために使用され得る他の認識された型のセメントとしては、I型ポルトランドセメント、またはII型ポルトランドセメントを含む他の水硬セメント、白色セメント、高炉スラグセメントなどのスラグセメント、ポゾラン混和セメント、膨張セメント、スルホアルミン酸セメント、および油井セメントが挙げられる。
【0054】
ポゾラン鉱物系混和材料
該水硬セメントは、実質的、ほとんど、または全くセメント特性を有しない鉱物系混和充填材により部分的に代替され得る。本明細書の目的のため、鉱物系混和材は、通常、セメントの様な破砕された材料の使用とともに、「鉱物系混和材」と呼ばれる1つ以上のポゾランであり、コンクリートのいくつかの特性の改良の目的、またはコンクリートに特別な適性を与えるために、サイロ粉体、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、トラス、石ダストで貯蔵される。鉱物系混和材料は、それらが、単独で使用されるとき、セメントの様な結合特性を全く有しないが、一緒に使用されるとき、それらは、セメントと同様な働きをし、それ故、それらは、セメントの経済性に寄与する。鉱物系混和材は、高強度コンクリートの製造でも使用される。このさらなる寄与は、コンクリートをさらに増強するだけでなく、コンクリートの耐久性に関しての性能も増進させる。それらは、世界中および国内で使用される。それらは、コンクリートおよびポルトランドセメントまたは併用されるポルトランドセメントクリンカーで補強した持続性構造の製造での全ての種類の物理的、化学的および電気化学的外因子に対して使用される。
【0055】
ASTM C618−97は、「それ自体では、ほとんどまたは全くセメントの価値を有しないが、微細に分割された形態および水分の存在下、常温で水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント特性を有する化合物を生成するケイ酸含有またはケイ酸およびアルミニウム含有材料として、ポゾラン材料を定義している。様々な天然および人工材料は、ポゾラン特性を有するポゾラン材料と呼ばれている。本発明の実施形態で使用され得るポゾラン材料のいくつかの例としては、軽石、珪藻土、シリカフューム、火山性凝灰岩、もみ殻、メタカオリン、粉砕造粒高炉スラグ、バーミキュライト粘土、炭酸カルシウム、および粉砕雲母が挙げられる。ポゾラン材料の使用は好ましくなく、本発明で達成される改良された凝結時間および早期圧縮強度に必要ないが、全てのこれらのポゾラン材料は、本発明のセメント反応性粉体の一部として、単独または併用のいずれかで使用され得る。さらに、クラスCフライアッシュの様なフライアッシュ系鉱物系混和材料の使用は、該反応性粉体の約10重量%以下に、正常に制限されるべきであり、好ましくは、もし、該コンクリートの化学収縮、起泡および/または変色が、最終製品で課題であるならば、全て一緒に使用するのは避けるべきである。
【0056】
不活性骨材および充填材
ポゾラン鉱物系混和材料とは対照的に、該骨材および充填材は不活性である。例えば、フライアッシュ、シリカフューム、その他などの鉱物系混和材料は、該ポルトランドセメントと反応し、骨材および充填材は、該ポルトランドセメントと反応しない。開示されたセメント反応性粉体ブレンドが、本発明のセメント組成物の急結成分と定義されるが、他の材料は、その意図される使用および用途に依存する該組成物中に含まれ得ることは、当業者により理解されるだろう。
【0057】
例えば、セメントボード用途では、該製品の所望の機械的特性を過度に妥協しない軽量ボードを製造することが望ましい。この目的は、軽量骨材および充填材の添加により達成される。有用な軽量骨材および充填材の例としては、砂、粘土の膨張形態、火山性凝灰岩、頁岩、およびパーライト、中空セラミック球、中空プラスチック球、膨張プラスチックビーズなどが挙げられる。セメントボード製造のため、膨張粘土および頁岩骨材は、特に有用である。膨張プラスチックビーズおよび中空プラスチック球は、該組成物で使用されるとき、それらの極めて低い嵩密度のおかげで、重量基準で、非常に少量で必要とされる。
【0058】
選択された軽量骨材または充填材の選択に依存して、該反応性粉体ブレンドに対する該軽量骨材または充填材の重量比は、約1/100〜200/100、好ましくは、約2/100〜125/100であり得る。例えば、軽量セメントボードを製造するため、該反応性粉体ブレンドに対する該軽量骨材または充填材の重量比は、好ましくは、約2/100〜125/100であろう。該軽量製品の特徴が重要な判断基準ではない用途では、コンクリート建設で、通常に使用されるとき、川砂および粗骨材は、本発明の組成物の一部として利用され得る。
【0059】
硫酸カルシウム
下記に示すように、硫酸カルシウムの様々な形態が、エトリンガイトおよび他のスルホアルミン酸カルシウム水和物化合物を生成するための硫酸イオンを供給するため、本発明で使用される。
【0060】
二水和物−CaSO.2HO(通常、石膏または粉末石膏として公知)
【0061】
半水和物−CaSO.1/2HO(通常、しっくいまたはパリプラスターもしくは単にプラスターとして公知)
【0062】
無水石膏−CaSO(無水硫酸カルシウムとも呼ばれる)
【0063】
粉末石膏は、比較的低純度の石膏であり、高純度グレードの石膏が使用され得るが、経済的考察で好ましい。粉末石膏は、採石された石膏から製造され、ブレーン表面積法(ASTM C204)により測定して、該比表面積が、2,000cm/グラムより大きく、典型的には、約4,000〜6,000cm/グラムであるように、比較的小さな粒子に粉砕される。該微細粒子は、容易に溶解し、エトリンガイトを生成するために必要な石膏を供給する。様々な製造工業から、副生成物として得られる合成石膏も、本発明で使用され得る。硫酸カルシウムの他の2つの形態、例えば、半水和物および無水石膏も、石膏、すなわち、硫酸カルシウムの二水和物の形態の代わりに、本発明で使用され得る。
【0064】
本発明の硫酸カルシウムの使用は、リン酸塩が、凝結時間のこの短縮を克服するため、開示の範囲で添加されない限り、石膏の様な硫酸カルシウムが、該セメントの凝結時間および最終硬化を減少する傾向がある。従って、乾燥基準で、100重量部の全セメント当たり、4重量部以下の石膏を使用、より好ましくは、100重量部の全セメント当たり、0重量部〜2重量部以下の石膏を使用することが好ましい。
【0065】
リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩および二次無機凝結促進剤
本発明のいくつかの好ましい実施形態での該リン酸塩が、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)である一方、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、リン酸一カリウム(MKP)、およびリン酸二カルシウムなどの他のリン酸塩を含む処方物も、改良された急結性能および改良された早期および最終圧縮強度を有する処方物を提供する。対照的に、リン酸一カルシウムおよびリン酸三カルシウムなどのいくつかのリン酸塩が、実際、終結を遅延させることが、予想外に分かった。
【0066】
リン酸塩の投与量は、本発明のセメント反応性成分に対して、約0.05〜1.5重量%、好ましくは、約0.3〜0.60重量%、より好ましくは、約0.15〜0.3重量%である。従って、例えば、セメント反応性粉体の100ポンドに対して、約0.05〜1.5ポンドのリン酸塩であり得る。
【0067】
90°F(32℃)より高いスラリー温度を得る条件下、リン酸塩の適切な投与量の添加で得られた急結の程度は、高アルミナセメントの非存在下、トリエタノールアミンの有意な減少を可能とする。
【0068】
該スラリー中のアルカリ金属クエン酸塩の量は、本発明のセメント反応性成分(セメント反応性粉体)に対して、好ましくは、約1.0〜4.5重量%の範囲、より好ましくは、3.0〜4.5重量%である。クエン酸三カリウムの形態のクエン酸カリウムは、好ましいアルカリ金属クエン酸塩である。
【0069】
上記のように、リン酸塩と併用のアルカリ金属クエン酸塩は、該セメント混合物に、極めて急結の特性を付与するのに、本質的に貢献する。しかしながら、該アルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩の併用では、他の無機凝結促進剤を、本発明のセメント組成物中に、第二の無機凝結促進剤として添加してもよい。
【0070】
第二の無機凝結促進剤の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウムが挙げられる。塩化カルシウムの使用は、セメントボードファスナーの腐食が、関心事であるときは、避けるべきである。第二の無機凝結促進剤は、通常、該セメント反応性粉体の2重量%未満、好ましくは、約0.1〜1重量%である。
【0071】
他の化学混和材料および成分
減水剤(流動化剤)などの化学混和剤は、本発明の組成物中に含まれ得る。それらは、乾燥物または溶液の形態で添加され得る。流動化剤は、該混合物の水の要求量を減少する助けとなる。流動化剤の例としては、ポリナフタレンスルホン酸塩類、ポリアクリル酸塩類、ポリカルボン酸塩類、リグニンスルホン酸塩類、メラミンスルホン酸塩類などが挙げられる。使用される流動化剤のタイプに依存して、該流動化剤(乾燥粉体基準)は、通常、該セメント反応性粉体の約0.1〜0.5重量%、より好ましくは、約0.2重量%であろう。
【0072】
軽量セメントボードなどの軽量コンクリート製品を製造したいとき、空気連行剤が添加される。
【0073】
空気連行剤は、該セメントスラリーに添加され、現場で、気泡(air bubbles)(気泡(foam))を生成する。空気連行剤は、通常、該コンクリート中の無数のミクロな気泡を故意に捕捉するために使用される界面活性剤である。あるいは、空気連行剤は、該コンクリート製品の密度を低減するために、混合操作中に、本発明の組成物の混合物中に導入される気泡(シェービングクリームフォームと同様な)を外部から生成するために使用される。
【0074】
空気連行/起泡剤の例としては、とりわけ、アルキルスルホン酸塩類、アルキルベンゾールスルホン酸塩類およびアルキルエーテルスルホン酸塩オリゴマー類が挙げられる。
【0075】
ASTM C260/C260M−10a「コンクリート用空気連行混和剤の標準仕様」に記載の基準に適合するものなどの空気連行剤(起泡剤)が使用され得る。かかる空気連行剤は、当業者に周知であり、Kosmatka et al. “Design and Control of Concrete Mixtures,” Fourteenth Edition, portland Cement Association、特に第8章の表題“Air Entrained Concrete”(米国特許出願公開第2007/0079733A1号中に引用)に記載されている。市販の空気連行物質としては、ビンソール樹脂、スルホン化炭化水素類、脂肪および樹脂酸類、スルホン化リグニン塩類などの脂肪族置換アリールスルホン酸塩類およびアニオン性または非イオン性界面活性剤の形を通常とる多数の他の界面活性物質、アビエチン酸ナトリウム、飽和または不飽和脂肪酸およびその塩類、界面活性剤(tensides)、アルキル−アリール−スルホン酸塩類、フェノールエトキシレート類、リグニンスルホン酸塩類、樹脂石鹸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸塩類)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類)、アルカンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル類、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル類もしくはその塩類、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル類もしくはその塩類、タンパク質様物質、アルケニルスルホコハク酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸のナトリウム塩、またはラウリル硫酸もしくはスルホン酸ナトリウムおよびその混合物が挙げられる。
【0076】
通常、該空気連行(起泡)剤は、水を含めて、全組成物の重量の約0.01〜1重量%である。
【0077】
収縮低減剤、着色剤、粘性改質剤(増粘剤)および内部養生材などの他の化学混和材料も、必要に応じて、本発明の組成物中に添加され得る。
【0078】
本発明の方法
本発明は、該セメント反応性組成物、リン酸塩、アルカリ金属クエン酸塩と混合、ならびに第二の無機凝結促進剤、鉱物系混和材料、減水剤(流動化剤)、空気連行剤、他の化学混和材料および成分、例えば、収縮低減剤、着色剤、粘性改質剤(増粘剤)および内部養生剤、骨材および充填材などの他の成分を混合してもよい水のスラリーを生成することを含む方法も提供する。好ましくは、該スラリーは、選択された初期スラリー温度でこれらの成分を混合および5秒間〜30分間の選択された範囲で、該混合温度を維持することにより生成される。しかしながら、必要に応じて、該成分は、周囲温度で混合され、所望の初期温度まで加熱され、それから、5秒間および30分までの選択された範囲の温度で混合され得る。それから、該混合物を、形に形成して、凝結させる。
【0079】
初期スラリー温度
本発明では、初期に高スラリー温度を提供する条件下での該スラリーの生成は、セメント処方物の急結および硬化を達成するために重要であることが分かった。該初期スラリー温度は、少なくとも約約90°F(32℃)であるべきである。90°F〜160°F(32℃〜71℃)または90°F〜135°F(32℃〜57℃)の範囲のスラリー温度は、非常に短い凝結時間を起こす。該初期スラリー温度は、好ましくは、約120°F〜130°F(49℃〜54℃)である。本明細書の目的のため、初期という語は、該成分が水と混和されるときの温度のときを意味する。一般に、この範囲内で、該スラリーの初期温度の上昇は、該反応が進行するにつれて、温度上昇速度を増加させ、該凝結時間を短縮する。従って、95°F(35℃)の初期スラリー温度は、90°F(32℃)などの初期スラリー温度以上が好ましい。該初期スラリー温度の上昇の利点は、上記温度範囲の上限に近づくにつれ、減少すると考えられる。
【0080】
当業者により理解されているように、初期スラリー温度の達成は、1つより多い方法により達成され得る。たぶん、最も好都合な方法は、該スラリーの1つ以上の成分を加熱することである。例えば、本発明者らは、該乾燥反応性粉体および非反応性(不活性)固体物に添加されたとき、得られたスラリーが、所望の温度であるように、該温度に加熱した水を供給した。
【0081】
潜在的により遅いが、スラリーは、周囲温度で調合され、迅速に(例えば、約10、5、2または1分以内)、約90°F以上(または他の上記列記の範囲のいずれか)まで温度を上昇するため加熱され、さらに本発明の利点を達成され得る。
【0082】
セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品の製造
セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、該反応性粉体ブレンドを骨材、充填材および他の必要な成分と配合して、次いで、該混合物を、型枠中または連続鋳造および成形ベルト上に打設する直前に、水および他の化学混和材料を添加する連続工程で、最も効率的に製造される。
【0083】
水との混合後、4〜7分以内に凝結するように設計された、本発明のセメント混合物の急結特性のため、水と、該セメントブレンドの乾燥成分との混合は、通常、鋳造操作の直前に実施されるだろうことは認識されるべきである。アルミン酸カルシウム化合物の水和物生成および実質的量での随伴水の消費の結果として、該セメント系製品は、強固となり、切断される状態になり、さらなる養生のため、取り扱われ、重ねられる。
【実施例】
【0084】
次の実施例は、該反応性粉体の成分として、ポルトランドセメントおよび硫酸カルシウム二水和物の混合物を含む本発明のセメント組成物のスラリー温度上昇挙動、凝結特性および立方体圧縮強度(CCS)に対するアルカリ金属クエン酸塩およびリン酸塩の影響を例示する。使用された混和材料は、クエン酸三カリウムおよびリン酸塩、例えば、トリメタリン酸ナトリウム、水溶液として添加された両方であった。
【0085】
加えて、いくつかの実施形態では、スルホン化ナフタレン流動化剤を添加して、該混合物の流動性を制御した。これらの混和材料を、全セメント反応性粉体の重量パーセントとして添加した。
【0086】
実施例に含まれる該組成物を、0.375/1のセメント(反応性粉体)に対する水の重量比および0.60/1のセメント(セメント反応性粉体)に対する膨張粘土骨材の重量比を用いて混合した。
【0087】
該液体の温度を、セメントと混合する前に調節して、特定の混合温度を得た。ホバートミキサーで混合後、該混合物(約280グラム)を、6オンススタイロフォームコップに入れて、絶縁されたスタイロフォームボックス中に入れた。該温度応答を、コンピューター化データ収集プログラムを用いて、連続的に測定した。最大温度および最大温度までの時間だけでなく、最大温度上昇速度を該実験混合物の反応性の指標として使用した。
【0088】
始発および終結時間を、ASTM C266に従って、ギルモアニードルを用いて決定した。目標は、混合後、10分未満、好ましくは、5〜7分以内で、終結に到達することであった。圧縮強度のため、テスト立方体(2インチx2インチx2インチ(5.1cmx5.1cmx5.1cm))を、該テスト時間まで、68℃(154°F)の温度において、湿らしたタオルを含む密封プラスチック袋内に入れておいた。各混合物から3個の立方体の圧縮強度を、該混合液体の添加後3時間で決定した。該立方体を破砕するのに必要な最大負荷を、ASTM C109の方法により規定された負荷速度を満足するようにプログラムされたSATEC UTC 120HVL圧縮機を用いて測定した。化学収縮率を、ASTM C1608−12に記載と同様な方法に従って、測定した。
【0089】
これらの特定の実施例で使用した原料および成分は、次のものであった:
3つの供給源からのIII型ポルトランドセメント
石膏
膨張粘土骨材
クエン酸カリウム
スルホン化ナフタレン縮合物流動化剤
トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、リン酸一カリウムおよびリン酸二カルシウムおよびその混合物から成る群から選択されるリン酸塩
【0090】
下記実施例では、使用された乾燥反応性粉体成分およびいずれかの骨材を、周囲以上の初期スラリー温度を供給する条件下で混合した。通常、90°F〜135°F(32℃〜57℃)の範囲以内の初期温度を有するスラリーを生じる温度を有する熱水を使用した。
【0091】
該実施例は、ポルトランドセメント系組成物中のクエン酸カリウム、リン酸塩およびスラリー温度の相乗的役割を示す。該実施例は、ASTM C109に従った高初期圧縮強度だけでなく、ASTM C266試験方法で規定された上記ギルモアニードルを用いて測定した始発および終結時間により特徴付けられる、該組成物の凝結を報告する。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
実験
3つの異なるポルトランドセメントを、本試験で使用した。表1は、これらのセメントの化学分析を含む。この試験は、急結セメント組成物の開発に焦点を当てた。従って、これらのセメントのCA(アルミン酸三カルシウム)、およびCAF(四カルシウムアルミニウムフェライトまたはフェライト相)に、特に注目した。表1から、セントメアリーセメントが、より多くのアルミン酸三カルシウムおよび高アルカリ値を含む一方、ホルシムおよびリーハイセメントは、比較的大量のフェライトを有する。全ての3つのセメントは、ブレーン法により測定したとき、同様な表面積を有する。加えて、この試験に使用したクエン酸三カリウムは、KO(COの化学式を有し、促進混和剤として、トリメタリン酸ナトリウム(NaPOを使用した。
【0095】
各ポルトランドセメント供給源を含む組成物を、0.60/1のセメント+石膏(反応性粉体)に対する膨張粘土骨材の重量比および0.375/1の反応性粉体に対する固定水を用いて混合した。加えて、全混合物は、0.10〜0.20重量%(該反応性粉体の)の比で添加したナフタレン系流動化剤を含有した。詳細な処方を、各セットの実験の次のセクションに記載した。次のパラメーターを測定した。
1.温度上昇および凝結
2.相対湿度90%および90°Fの空調室での着色
3.3時間後CCSおよび14日後CCSの立方体圧縮強度(CCS)
4.化学収縮率
【0096】
温度上昇および急結方法
ホバートミキサーを、室内実験の準備のため使用した。液体の温度を、特定の混合温度を得るために、セメントと混合する前に調節した。約280gのセメントモルタルを、絶縁スタイロフォームボックス内の6オンススタイロフォームコップ中に入れた。
【0097】
全混合物に対する温度応答を、ふたの穴を通して試料の中央部に熱電対を入れて、コンピューター化データ収集プログラムを用いて、連続的に測定した。最大温度および最大温度までの時間だけでなく、最大温度上昇速度を該実験混合物の反応性の指標として使用した。始発および終結時間を、ASTM C266に従って、ギルモアニードルを用いて決定した。目標は、混合後、5〜7分以内で、終結に到達することである。
【0098】
立方体圧縮強度方法
立方体検体を、同時に打設し、試験時間まで、68℃(154°F)の温度で、湿ったタオルを含む密封プラスチック袋内に入れた。各混合物から少なくとも3つの立方体の立方体圧縮強度(CCS)を測定した。該立方体を破砕するのに必要な最大負荷を、ASTM C109により規定された負荷速度を満足するようにプログラムされたSATEC UTC 120HVL圧縮機を用いて測定した。
【0099】
化学収縮方法
気圧および室温におけるセメントおよびフライアッシュの体積化学収縮率を、次の方法により測定した:該セメントまたはフライアッシュペーストを、スパチュラを用いて手動で混合する。該試料を、試験終了の前後で重量測定して、該試料を入れているゴム製膜中のあり得る欠陥を検出する。該セメントまたはフライアッシュペースト(骨材なし)を、水密ゴム風船中に入れ、これを、水で完全に満たした密閉容器中に入れた。該混合室を、73°Fの一定温度および相対湿度50%を維持した。該容器を、挿入された目盛付きピペットを有するゴム製ストッパーで閉じた。小さなプラスチック袋を、該ピペットの開口部からの蒸発を最小限にするため、該ピペットの上に被せた。該手順を、いずれの試料も存在なしで、該方法の安定性または精度および最初の水の高さを維持できるかを確認するため、いずれのセメントもフライアッシュ試料もなしで繰り返した。該ピペットの上端に近い水のレベルを、初期水高さとして記録した。該水高さを、初期に10分毎、それから30分毎または最初の12〜14時間については、2時間毎に記録し、最終データは、20〜24時間後の翌朝に収集した。この試料のため、混合物を、室温の水を用いて打設した。記録する収縮率は、1時間齢において0から始めて、最初の1時間の収縮は含めない。各組成物のため、少なくとも2回試験を実施して、再現性を確認した。記録データは平均収縮率である。
【0100】
ホルシムセメントを用いた実施例1〜6
【0101】
実施例1
表3の混合物比率を、本実施例の試験で使用した。混合物1−3.0%のクエン酸カリウム、0%のSTMP、混合物2−3.0%のクエン酸カリウム、0.15%のSTMP、混合物3−3.0%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP、混合物4−3.0%のクエン酸カリウム、0.90%のSTMP。
【0102】
【表3】
【0103】
様々なレベルのSTMPにおける3%のクエン酸カリウムを含むホルシムセメントを含む混合物についての温度上昇データを表4に記載する。なお、このデータから、STMPが0のとき、温度が上昇し始めるのに約45分かかり、70分以上かかる。
【0104】
【表4】
【0105】
対照的に、STMPが添加されるとき、該混合物温度は、混合後直ぐに上昇し始め、3〜4時間、上昇し続ける。STMPの存在での急速な反応性は、混合物がSTMPなしで終結に達する約2時間と比較して、7〜10分の範囲の凝結時間をもたらす。
【0106】
実施例2
表5の混合物比率を、本実施例の試験で使用した。混合物は、様々なクエン酸カリウム値における、0.60%のSTMPを含むホルシムセメントを含む。混合物5−0.750%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP、混合物6−1.75%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP、混合物3−3.0%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP、混合物7−4.5%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP。
【0107】
【表5】
【0108】
クエン酸カリウム(3.0および4.5%)の量の増加と共に、ホルシムセメントを含む混合物についての温度プロットは、図3のグラフに示された低クエン酸塩(0.75および1.5%)を含む混合物と比較して、相対的に高い温度上昇を達成した。加えて、12分以内の単一ピークを示す低クエン酸量含有混合物と異なり、1つより多い反応を示す2つまたは3つの異なるピークは、該クエン酸塩量が増加したとき現れた。表6の結果に示すように、温度上昇は、0.75%および1.5%のクエン酸塩含有混合物の159°Fおよび154°Fと比較して、3.0および4.5%のクエン酸カリウムを含む混合物で、最大約183°Fおよび217°Fであった。
【0109】
【表6】
【0110】
実施例3
様々なレベルの石膏を含み、ホルシムセメントを含む混合物比率を、次の組成物で、表7に記載する:混合物7−4.50%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP;0石膏、混合物8−4.5%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP;2部の石膏、混合物9−4.5%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP;4部の石膏。
【0111】
【表7】
【0112】
図3に記載の最大温度プロットは、最大温度が、石膏なしの混合物と比較して、混合物石膏で減少する。最大温度の低下は、表8のデータに示されたように、終結時間に対して有意に影響しなかった。なお、2つの屈曲点も有意に変化せず、硬化に寄与する反応は同じままであることを示唆した。これらの結果は、比較的大量のクエン酸カリウム(4.5%)およびSTMP(0.6%)に起因する。
【0113】
【表8】
【0114】
実施例4
実施例4の混合物比率を、表9に記載する。これらの混合物は、様々なレベルのSTMPにおいて、4部の石膏を含むホルシムセメントを含む。混合物9−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏、混合物10−4.50%のクエン酸カリウム、0.0%のSTMP;混合物11−4.5%のクエン酸カリウム、0.15%のSTMP、4部の石膏;混合物12−4.5%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP、4部の石膏。
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
表9のデータから、100部のホルシム、4部の石膏を含む混合物は、急な温度上昇および10分の終結時間を達成する前に、たとえ、クエン酸カリウムが高い(4.5%)場合でさえ、少なくとも0.30%のSTMPを必要とする。加えて、STMPを含まない混合物(混合物10)は、ほぼ3時間の終結に達し、温度上昇は、ほぼ3時間の終結に達しながらも見られなかった。
【0118】
実施例5
0.15%のSTMPおよび様々なレベルのクエン酸カリウムを含む100部のホルシムセメントおよび0部の石膏を、表11に記載する。
【0119】
【表11】
【0120】
【表12】
【0121】
実施例4の混合物と異なり、石膏を使用しなかった本実施例の混合物は、比較的低レベルのSTMP(0.15%)でさえ、比較的低レベルのクエン酸カリウムを必要とし、該様々な混合物は、10分以内の終結時間を達成する。最高反応速度を、4.5%の最大量のクエン酸カリウムにおいて達成し、4.5分以内の終結時間を達成する。
【0122】
実施例6
該フライアッシュ混合物を、100部のホルシムセメント、0.30%のSTMP、石膏なしおよび様々な量のクエン酸カリウムを用いて、表13の比率で調合した。混合物17−0.75%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP、0石膏;混合物18−1.5%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP;混合物19−3.0%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP;混合物20−4.5%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP。表14は、表13の混合物のTRSデータを記載している。本実施例の混合物は、実施例5の混合物の温度上昇の挙動と同等であった。0.30%のSTMPを含み、石膏なしの本混合物は、同様なレベルのクエン酸塩を含む実施例5の混合物の6〜10分の凝結時間より速い、5分以内に終結時間に達するのに、比較的低レベルのクエン酸カリウム(0.75%および1.5%)を必要とする。
【0123】
【表13】
【0124】
【表14】
【0125】
ホルシムセメントでのCCS
石膏のあるなしで、および様々な量のSTMPおよびクエン酸カリウムを含むホルシムセメントを含む、実施例1〜6の混合物の24時間および7日の養生後に測定された立方体圧縮強度(CCS)を、表15にまとめる。石膏なしの混合物のデータを、図7のグラフにプロットする。図7のプロットおよび終結時間から、最適な混合物は、STMP値が、0.15%から0.30%との間である。0.60%のSTMPを含む混合物は、あまりに急速に硬化し、圧縮強度の著しい低下を示す。
【0126】
【表15】
【0127】
リーハイセメント(実施例7〜10)
【0128】
実施例7
本実施例で使用されたフライアッシュ非含有混合物比率を、リーハイ(ユニオンブリッジ)セメント、石膏なし、3.0%のクエン酸カリウムおよび様々なレベルのSTMPについて、表16に記載する。混合物1−3.0%のクエン酸カリウム、0%のSTMP;混合物2−3.0%のクエン酸カリウム、0.15%のSTMP;混合物3−3.0%のクエン酸カリウム、0.30%のSTMP;混合物4−3.0%のクエン酸カリウム、0.60%のSTMP。
【0129】
【表16】
【0130】
【表17】
【0131】
0%のSTMPを含む混合物が、わずかに異なる挙動をすることに注目する実施例1に対する本実施例の混合物リーハイセメントの比較。なお、図8から、リーハイセメントを含み、0%のSTMPを含む混合物、該温度は、決して、初期温度以下に下がらず、30分以内で145°Fに達する。対照的に、0%のSTMPを含み、ホルシムセメントを含む混合物、該温度は、初期に約10°F下がり、約40分後に上昇し始めるのみで、約50分で、145°Fに達する。従って、リーハイセメントを含む混合物は、比較的、より反応性があり、ホルシムセメントを含む同様な混合物と比較して、約半分の時間より速い終結時間に達する。
【0132】
実施例8
本実施例で使用された混合物比率を、混合物5−0.60%のSTMP、0.75%のクエン酸カリウム;混合物6−0.60%のSTMP、1.5%のクエン酸カリウム;混合物4−0.60%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム;混合物7−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウムについて、表18に記載する。表19に記載のデータは、リーハイセメントを含む本実施例の混合物が、該混合物温度が、最初の3時間に比較的高いままであるホルシムセメントを含む実施例2の同様な混合物と比較したとき、有意に速い7〜20分以内の最大温度に達する。なお、表19から、終結時間が比較的速い。しかしながら、これらの混合物の流動性は、比較的低い。
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
実施例9
表20の混合物比率を、混合物7−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、0部の石膏;混合物8−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、2部の石膏;混合物9−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏について、本実施例で使用した。図10および表21中のデータから、2および4部の石膏の添加が、流動性の改良および圧縮強度の増加の利点を有して、凝結時間の増加なしで、反応中の放熱を減少させる助けとなることを示している。
【0136】
【表20】
【0137】
【表21】
【0138】
実施例10
100部のリーハイ、4部の石膏、4.5%のクエン酸カリウムおよび様々なレベルのSTMPを含む混合物を、混合物10−0.0%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏;混合物11−0.15%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏;混合物12−0.30%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏;混合物9−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム、4部の石膏について、表22に記載する。なお、実施例4で観察されたのと同様に、STMPの添加の効果は、温度が上昇し始める時間を短縮する。最終温度は、様々なSTMP投与量を含む混合物について、同様である。なお、表23から、STMP投与量と最大温度までのより短い時間およびより短い凝結時間との間に直接的相関関係がある。
【0139】
【表22】
【0140】
【表23】
【0141】
セントメアリーセメント(実施例11〜16)
【0142】
実施例11
4部の石膏、3.0%のクエン酸カリウム投与量および様々なSTMP投与量を含むセントメアリーセメントを含む混合物。表24の混合物比率を、本実施例で、次にように使用した:混合物1−0.0%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム、混合物2−0.15%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム、混合物3−0.30%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム、および混合物4−0.60%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム。
【0143】
次の実施例で示したセントメアリーセメント含有混合物の温度上昇挙動および終結時間から、一般に、セントメアリーセメントを含む混合物は、ホルシムセメントおよびリーハイセメントを含む前の実施例の混合物と比較して、少なくとも反応性があったことが分かる。なお、図12から、0%、0.15%、および0.30%のSTMPを含み、4部の石膏および3.0%のクエン酸カリウムを含む混合物の最初の3時間での比較的浅い温度上昇または平坦もしくは低下する温度でさえ注目する。なお、表25から、最初の20分間に測定した有意な温度上昇を有する唯一の混合物は、0.60%のSTMPを含む混合物であった。
【0144】
【表24】
【0145】
【表25】
【0146】
実施例12
本実施例の混合物は、4部の石膏、0.30%のSTMPおよび様々なレベルのクエン酸カリウムを含むセントメアリーセメントを含む。表26の混合物比率を、混合物5−0.30%のSTMP、2.0%のクエン酸カリウム;混合物6−0.30%のSTMP、2.5%のクエン酸カリウム;混合物3−0.30%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム;混合物7−0.30%のSTMP、3.5%のクエン酸カリウム;混合物8−0.30%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウムで、本実施例で使用した。なお、図13に示すプロットおよび表27に記載のデータから、4部の石膏を含むセントメアリーセメントを含む混合物では、もし、STMP投与量を0.30%で維持するならば、クエン酸カリウム投与量は、最初の20分間の有意な温度上昇に影響を及ぼすために、4.5%まで増加しなければならない。このことおよび前の実施例11から、セントメアリーセメントを含む混合物への石膏の添加は、望ましくないと結論できる。
【0147】
【表26】
【0148】
【表27】
【0149】
実施例13
石膏なしのセントメアリーセメントを含み、STMPなしで、様々なクエン酸カリウム投与量における混合物を、本実施例で使用した。表28は、混合物9−0.0%STMP、4.5%のクエン酸カリウム;混合物10−0.0%STMP、3.0%のクエン酸カリウム;混合物11−0.0%STMP、1.5%のクエン酸カリウムについて記載している。図14および表29のデータから、クエン酸カリウムを、終結時間を短縮およびより短時間で最大反応温度に達するために使用できることが分かる。しかしながら、0%のSTMPを含むセントメアリーセメントを含むこれらの混合物の凝結時間は、前の実施例と比較して、比較的長い凝結時間を有し、得られた最良の凝結時間は、ホルシムおよびリーハイセメントを用いた同様な混合物の5〜10分と比較して、4.5%のクエン酸カリウムを含む混合物の25分以上であった。
【0150】
【表28】
【0151】
【表29】
【0152】
実施例14
表30の混合物比率を、次のように変化させたクエン酸カリウム投量において、0部の石膏、0.15%のSTMPを含むセントメアリーセメントを含む本実施例で使用した:混合物12−0.15%のSTMP、0.75%のクエン酸カリウム;混合物13−0.15%のSTMP、1.5%のクエン酸カリウム;混合物14−0.15%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム、および混合物15−0.15%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウム。図15に記載の比較的急な温度上昇プロットから、0.15%の比較的小さいレベルでさえ、STMP添加の重要性を示す。しかしながら、ホルシムおよびリーハイセメントを含む前の混合物と比較して、クエン酸カリウムとの異なる相互作用が存在すると思われる。なお、本実施例では、最も短い凝結時間は、最低量(0.75%)および最大量(4.5%)のクエン酸カリウムにおける混合物で得られ、1.5%および3.0%の中間のクエン酸塩投与量を含む混合物は、実際、より長い凝結時間を有する。
【0153】
【表30】
【0154】
【表31】
【0155】
実施例15
様々なクエン酸カリウム投与量における、0部の石膏、0.30%のSTMPを含むセントメアリーセメントを含む混合物。表32の混合物比率を、混合物16−0.30%のSTMP、0.75%のクエン酸カリウム;混合物17−0.30%のSTMP、1.5%のクエン酸カリウム;混合物18−0.30%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム;混合物19−0.30%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウムでの本実施例で使用した。なお、図16に記載の温度上昇プロットから、0.30%のSTMPの添加は、0.15%のSTMPを含む前の実施例と比較して、温度上昇の初期速度をさらに増加させる。表33は、凝結時間は、増加したクエン酸塩を含む混合物と比較して、0.75%を含む混合物に対して、最も短いことを示している。従って、また、ホルシムおよびリーハイセメントを含む混合物と比較して、異なる挙動に注目する。
【0156】
【表32】
【0157】
【表33】
【0158】
実施例16
様々なクエン酸カリウム投与量において、0部の石膏、0.60%のSTMPを含むセントメアリーセメントを含む混合物。表34の混合物比率を、混合物20−0.60%のSTMP、0.75%のクエン酸カリウム;混合物21−0.60%のSTMP、1.5%のクエン酸カリウム;混合物22−0.60%のSTMP、3.0%のクエン酸カリウム、および混合物23−0.60%のSTMP、4.5%のクエン酸カリウムでの本実施例で使用した。なお、図17に記載の温度上昇プロットおよび表35に記載の終結データおよび温度上昇パラメーターから、0.75%、1.5%、3.0%、および4.5%のクエン酸カリウムを含む0.60%STMP含有セントメアリーセメントを含むこれらの混合物は、基本的に反応をして、9〜14分の間で最大温度および4.5〜6.5分以内で終結に達する。
【0159】
【表34】
【0160】
【表35】
【0161】
セントメアリーセメントでのCCS
石膏のあるなし両方で、様々なSTMPおよびクエン酸カリウム量を含むセントメアリーセメントで製造された実施例11〜16の混合物について、24時間および7日の養生後測定された立方体圧縮強度を、表36にまとめる。これらのプロットが、最適な強度が、0.60%のSTMPを含む混合物で、0.15%から0.30%の間のSTMP値を含む混合物で得られる一方、該圧縮強度は、ホルシムセメントの場合と劇的というほど低下しない。
【0162】
【表36】
【0163】
実施例17
本実施例のため、混合物を、特に、フライアッシュの非存在下、比較的高温において、過度に急速にドライアウトする傾向にあるアルカノールアミン含有混合物の瞬結を防止するため、50°Fの水温を用いて打設した。全混合物を、5時間のみで、室温で硬化させた。0.15%のSTMPおよび4.5%のクエン酸カリウムを含む4部石膏含有リーハイセメントを含む本発明の混合物(混合物#16)を、前の発明のクラスCフライアッシュを含む混合物(混合物#17および#18)だけでなく、前の発明のアルカノールアミンおよびSTMPを含む混合物(混合物#13、#14および#15)とも比較した。
【0164】
表37に記載の立方体圧縮強度から、本発明の混合物は、比較的低レベルのクエン酸カリウム(0.20%)を含むトリエタノールアミン(TEA)含有混合物およびSTMP、クエン酸カリウム、およびクラスCフライアッシュを含む混合物と比較して、早期、すなわち5時間において優れた圧縮強度を有する。
【0165】
【表37】
【0166】
実施例18
本実施例のため、混合物も、アルカノールアミン含有する混合物の瞬結を防止するため、50°Fの水温を用いて打設したが、この場合、全混合物が、該立方体圧縮強度が得られた後5時間、65°Fで硬化可能であった。3.0および4.0%のクエン酸カリウムを含み、4部の石膏および0.15%のSTMPを含むリーハイセメントを含む本発明の混合物(混合物#21、#22および#23)を、4部の石膏を含み、4%のクエン酸カリウムを含む前の発明からのクラスCフライアッシュ含有混合物(混合物#24および#25)だけでなく、前の処理からアルカノールアミンおよびSTMP含有混合物(混合物#19および#20)とも比較した。0.20%(セメント粉体の固体重量%)ナフタレン系分散剤および使用したTEAを含む全混合物は、85%固体分および15%水を含む低凍結グレード(LFG)であった。
【0167】
なお、表38に記載の立方体圧縮強度から、本発明の混合物は、比較的低レベルのクエン酸カリウム(0.20%)を含むトリエタノールアミン(TEA)含有混合物および0.35のセメントに対する水の比を有するフライアッシュ含有混合物組成物と比較して、5時間の早期において優れた圧縮強度を有する。石膏を含むクラスCフライアッシュを含む混合物は、セメントに対する水の比が0.25まで減少するとき(前の組成物に記載のように)、圧縮強度を改良したが、フライアッシュ混合物の強度は、4部の石膏の存在下、セメントに対する水の比が、0.35まで増加するとき、劇的に低下した。
【0168】
【表38】
【0169】
実施例19(化学収縮)
0.35のセメントに対する水の比を有し、様々なSTMP投与量において、4部(2重量%)の石膏および3重量%のクエン酸カリウムを含むリーハイセメントを含む本発明の混合物を、0.25のw/cを有し、3%のクエン酸カリウムを含むクラスCフライアッシュを含む混合物と比較した。表39は、セメントペースト組成物および本実施例で使用されたペーストの化学収縮について記載しており、図18は、水和反応の最初の24時間の異なるペーストの化学収縮挙動を示している。
【0170】
ポルトランドセメント対フライアッシュペースト。なお、一般に、クラスCフライアッシュを含むペーストの化学収縮率は、0%のSTMPを含むセメントペーストと比較して、約40%高い。該クラスCフライアッシュペーストが、該セメントペーストの0.35と比較して、0.25のより低いセメントに対する水の比を有するので、これは有意である。一般に、より高含水率のペーストは、より高化学収縮率を有することが期待されるはずである。
【0171】
様々なリン酸塩を含むペースト。該セメントペーストへのSTMPの添加は、約20〜40%収縮をさらに減少させる。0.15%および0.30%のSTMP(セメントおよび石膏の重量基準)を含むセメントペーストは、STMPなしのペーストの1.26%と比較して、0.96%および0.70%の24時間収縮を有した。
【0172】
このデータは、アルカリクエン酸塩/STMPの併用で活性化したポルトランドセメント(5〜15重量%の比較的高フェライト含有率)の使用が、フライアッシュおよびクエン酸塩混合物と比較して、水硬セメントペーストの早期水和反応間の収縮の減少をもたらすという利点を示している。
【0173】
他のリン酸塩を含むセメントペーストを評価した。本実施例のため、ピロリン酸四カリウム(TKPP)およびトリポリリン酸ナトリウム(STPP)を、STMPを含むペーストと比較した。図18は、3.0%のクエン酸カリウムおよび0.30%のSTMP、TKPP、およびSTPPの各々を含むセメントペーストの化学収縮率を示している。図19および表39から、STMPおよびSTPPを含むペーストは、収縮率測定値が1.26%であるリン酸塩を含まないペーストと比較して、0.70%および0.98%の化学収縮率測定値を有した。対照的に、TKPPを含むペーストを測定して、1.46%の増加した化学収縮率であった。様々なリン酸塩のあるなしでセメントペーストは、2.0%の収縮率であるフライアッシュペーストと比較して、比較的低い収縮率を有した。
【0174】
【表39】
【0175】
表40および図20は、3%のクエン酸カリウムおよび添加された様々なリン酸ナトリウムを含むセメントペーストの温度上昇データを含む。該混合物のいくつかを、S4、S5、およびS6と名付けたペーストの比率とともに、表39に記載した。加えて、化学式NaHPO・2HO(本明細書で、SMPHと略す)を有する一リン酸ナトリウム水和物を含むペースト。S7およびS8と名付けたペースト混合物は、それぞれ、0.85%および0.425%のSMPHを含有した。なお、このデータから、様々なリン酸塩を含むペースト混合物は、28〜47分以内に、最大温度に達する。対照的に、いずれのリン酸塩も含まないペースト混合物(S9)は、最大温度に達するのに約90分かかる。同様に、様々なリン酸塩を含むペーストの終結は、リン酸塩を含まないペーストでほとんど2時間であることと比較して、53〜76分の範囲にある。
【0176】
【表40】
【0177】
表41および図21のグラフは、3%のクエン酸カリウムおよび添加された様々なリン酸カルシウムを含むセメントペーストの温度上昇データを含む。リン酸二カルシウムを含む混合物は、終結時間の減少に比較的影響が小さい。リン酸三カルシウムを含む混合物の場合、凝結時間は、実際、3時間以上まで増加している。
【0178】
表41および図22のグラフは、0.15%のSTMPを含む混合物および0%のリン酸塩を含む混合物と比較して、0.15%のリン酸一カリウム(MKP)を含むセメントの温度上昇データを含む。なお、驚くべきことに、MKPは、リン酸塩を含まない混合物と比較して、リーハイセメントの凝結時間の促進で、STMPと同様な有効性を有する。
【0179】
【表41】
【0180】
我々の発明を実行するための実施形態を記載したが、本開示は、その趣旨と範囲を逸脱せず、我々の発明に変更および追加が成され得ることは、本開示が対象とする当業者により理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
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図18
図19
図20
図21
図22