【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る可変ノズル機構は、
円環状のノズルマウントと、
前記ノズルマウントの周方向に沿って複数箇所において夫々回動可能に支持された複数のノズルベーンと、
前記ノズルマウントに対して回動可能に設けられ、かつ前記ノズルベーンの翼角が可変となるように前記ノズルベーンに駆動力を伝えて前記ノズルベーンを回動させるように構成されたドライブリングと、を備え、
前記ドライブリングは、
低剛性領域と、
前記ドライブリングの厚さ方向に凹凸を有し、前記ドライブリングの半径方向に沿っ
た断面における断面二次モーメントが前記低剛性領域よりも大きい高剛性領域と、
を含み、
前記低剛性領域と前記高剛性領域とが前記周方向に交互に配列され、
前記低剛性領域及び前記高剛性領域が奇数であるか、又は前記低剛性領域及び前記高剛性領域が前記周方向において不等ピッチで設けられている。
【0009】
ドライブリングは、円環状で概ね対称な構造を有し、内燃機関から伝達する振動によって一次振動モードによる固有振動が励起しやすい。一次振動モードとは、最小の固有振動数によって発生する振動モードである。即ち、
図14に示すように、円板又は円環状の構造部材において、半径方向X−X及びX−Xに直交する方向Y−Yに節をもつモードであって、これらX−X及びY−Yに挟まれている部分が振幅の大きい腹になり、網掛け部分と白地部分とでは振動の位相が逆になるモードである。
図15は、ドライブリング100に一次振動モードによる固有振動を模式的に示している。図中、節100aとなる4か所の領域の間に、振幅が大きい腹100bが4か所形成され、隣り合う腹100bは振動の位相が逆になっている。
【0010】
前記構成(1)では、前記凹凸を有する前記高剛性領域及び前記低剛性領域がドライブリングの周方向に奇数であるか、又は不等ピッチで設けられるため、等間隔で偶数の節及び腹を形成する一次振動モードによる固有振動の励起を抑制できる。これによって、応力の発生を抑制でき、ドライブリングの損傷を防止できる。また、断面二次モーメントが大きい高剛性領域を形成し、全体としてドライブリングの剛性を高めたことで、固有振動の発生をさらに抑制できる。
また、前記支持ピンと一次振動モードにより形成される節の位置関係を考慮することなく、応力の発生を抑制できる。さらに、応力の発生を抑制できるため、ドライブリングの板厚を低減でき低コスト化できる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、前記構成(1)において、
前記ドライブリングの少なくとも前記高剛性領域には、前記ドライブリングの内周側又は外周側において前記周方向に沿って延在するリブが設けられ、該リブによって前記凹凸が形成されている。
前記構成(2)によれば、前記高剛性領域を前記リブによって構成するので、簡易かつ低コストな加工で前記高剛性領域を形成できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記構成(1)又は(2)において、
前記ノズルマウントに固定され、前記ドライブリングを回動自在に前記ノズルマウントに支持する支持ピンをさらに備え、
前記支持ピンは、
前記ノズルマウントから前記ドライブリングに向かって前記ドライブリングの中心軸
に沿って延びる支柱部と、
前記支柱部の先端側に設けられたフランジ部と、
を含み、
前記ドライブリングは、前記フランジ部と前記ノズルマウントとの間に前記凹凸が挟まれるように配置されている。
【0013】
前記構成(3)によれば、前記凹凸を前記支持ピンのフランジ部と前記ノズルマウントとの間に配置するので、前記凹凸と前記フランジ部又は前記ノズルマウントとの間のクリアランスを低減できる。これによって、前記凹凸に生じる衝突振動を低減でき、前記凹凸における応力の発生を抑制できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(3)の何れかにおいて、
前記ドライブリングに、前記高剛性領域に対して選択的に前記凹凸が設けられている。
前記構成(4)によれば、前記高剛性領域に前記凹凸を設けることで、高剛性領域の断面二次モーメントを効果的に増加できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(3)の何れかにおいて、
前記ドライブリングの全周に亘って前記凹凸が設けられ、
前記ドライブリングの前記低剛性領域は、前記高剛性領域に比べて前記半径方向における幅が狭い。
前記構成(5)によれば、前記低剛性領域を簡易かつ低コストな加工で容易に形成できる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、前記構成(5)において、
前記ドライブリングの前記低剛性領域にはヌスミが形成されている。
前記構成(6)によれば、前記低剛性領域を簡易かつ低コストな加工で容易に形成できる。また、前記ヌスミを形成することで、前記凹凸(例えば、前記リブ)の形成が容易になる。
【0017】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る可変ノズル機構は、
円環状のノズルマウントと、
前記ノズルマウントの周方向に沿って複数箇所において夫々回動可能に支持された複数のノズルベーンと、
前記ノズルマウントに対して回動可能に設けられ、かつ前記ノズルベーンの翼角が可変となるように前記ノズルベーンに駆動力を伝えて前記ノズルベーンを回動させるように構成されたドライブリングと、を備え、
前記ドライブリングは、
前記周方向において互いに離れて設けられた底部と、
前記周方向において隣接する前記底部の間に設けられ、前記ドライブリングの中心軸
に沿った方向における前記ノズルマウントからの距離が前記底部よりも大きい複数の頂部と、
を含み、
前記底部と前記頂部とが前記周方向に交互に配列されている。
【0018】
前記構成(7)によれば、前記底部と前記頂部とが前記周方向に交互に配置されているので、ドライブリングを周方向で全体として高剛性とすることができる。これによって、一次振動モードによる固有振動の励起を抑制でき、応力の発生を抑制できるので、ドライブリングの損傷を防止できる。
また、前記支持ピンと一次振動モードにより形成される節の位置関係を考慮することなく、応力の発生を抑制できる。さらに、応力の発生を抑制できるため、ドライブリングの板厚を低減でき低コスト化できる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、前記構成(7)において、
前記底部と前記頂部との間に段差部が形成され、
前記段差部が前記周方向において奇数形成されるか、又は前記段差部が前記周方向において不等ピッチで設けられている。
前記構成(8)によれば、前記段差部がドライブリングの周方向に奇数形成されるか、又は前記段差部が前記周方向において不等ピッチで設けられるので、等間隔で偶数の節及び腹を形成する一次振動モードによる固有振動の励起を抑制でき、これによって、応力の発生を抑制できる。
【0020】
(9)幾つかの実施形態では、前記構成(7)又は(8)において、
前記ノズルマウントに固定され、前記ドライブリングを回動自在に前記ノズルマウントに支持する支持ピンをさらに備え、
前記支持ピンは、
前記ノズルマウントから前記ドライブリングに向かって前記ドライブリングの中心軸
に沿って延びる支柱部と、
前記支柱部の先端側に設けられたフランジ部と、
を含み、
前記ドライブリングは、前記フランジ部と前記ノズルマウントとの間に前記頂部が前記フランジ部に近接するように配置されている。
【0021】
前記構成(9)によれば、前記フランジ部と前記ノズルマウントとの間に前記頂部が前記フランジ部に近接して配置されるので、前記頂部と前記支持ピンとの間のクリアランスを小さくでき、これによって、前記頂部と前記支持ピンとの間の衝突振動によって前記頂部に発生する応力を抑制できる。
【0022】
(10)幾つかの実施形態では、前記構成(7)において、
前記底部及び前記頂部が前記周方向に波形を形成するように交互に配列されている。
前記構成(10)によれば、簡易かつ低コストな加工で高剛性領域を形成できる。
【0023】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る可変容量型排気ターボ過給機は、
内燃機関から導入された排気ガスによって駆動されるタービン部と、
前記タービン部と連動して前記内燃機関に外気を圧送するコンプレッサ部と、
前記タービン部において排気ガスが導入されるタービンハウジングに設けられた前記構成(1)〜(10)の何れかの可変ノズル機構と、を備えている。
前記構成(11)によれば、可変ノズル機構を構成するドライブリングの振動を抑制でき、これによって、応力の発生を抑制できるので、ドライブリングの損傷を防止できる。
また、前記支持ピンと一次振動モードにより形成される節の位置関係を考慮することなく、応力の発生を抑制できる。さらに、応力の発生を抑制できるため、ドライブリングの板厚を低減でき低コスト化できる。