(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度センサを実施形態に基づいて説明する。
[第1実施形態]
温度センサ1は、
図1及び
図2に示すように、感温素子10と、感温素子10を収容するケース20と、感温素子10と電気的に接続されるリードフレーム40と、ケース20に収容される感温素子10とリードフレーム40をケース20に保持する充填材50と、を備えている。
第1実施形態に係る温度センサ1は、
図1(b)に示すように、装着対象物である回路基板90との電気的な接続をリードフレーム40が担うところに特徴を有する。以下、温度センサ1の各構成要素について順に説明する。
なお、温度センサ1において、ケース20のラグ端子部31が設けられる側を前(F)と定義し、その逆側でリードフレーム40が引き出される側を後(R)と定義する。また、温度センサ1において、長手方向L、幅方向W及び高さ方向Hを、
図1に示す通りに定義する。
【0015】
[感温素子10]
感温素子10は、
図2に示すように、素子本体11と、素子本体11から引き出される一対のリード線12,12と、を備える。
素子本体11は、好ましくはサーミスタ(thermistor)からなる。サーミスタは、温度変化に対して電気抵抗の変化が大きい特性を有し、温度が上がると抵抗値が下がるNTC(negative temperature coefficient)サーミスタと、ある温度まで抵抗値が一定で、ある温度を境に急激に抵抗値が高くなるPTC(positive temperature coefficient)サーミスタがある。素子本体11としては、サーミスタに限らず、他の公知の感温素子を用いることができる。
リード線12,12は、素子本体11とリードフレーム40を電気的に接続する。リード線12,12としては、典型的にはジュメット線(Dumet wire)が用いられるが、他の電線を用いることもできる。なお、ジュメット線は、中心に鉄ニッケル合金を配し、外層に導電率の良い銅をクラッドした複合線である。
感温素子10は、ガラスからなる封止体13を備え、素子本体11と、素子本体11と接続されるリード線12,12の所定範囲とが封止体13により覆われる。
【0016】
[ケース20]
次に、ケース20について、
図1及び
図2を参照して説明する。
ケース20は、二つの機能を有している。第一の機能は、感温素子10とリードフレーム40の一部とを収容する機能であり、第二の機能は、温度センサ1を測定対象物に固定するとともに、測定対象物と接触する部位から測定対象物の熱を感温素子10に向けて伝達する機能である。
【0017】
二つの機能を有するケース20は、収容保持部21とラグ端子部31を備えている。
なお、ケース20は、金属板に打ち抜き加工、折り曲げ加工などの機械加工を施すことにより、収容保持部21とラグ端子部31が一体的に形成されている。熱伝達の機能を担保するために、ケース20は熱伝達率の高い金属材料、例えばアルミニウム合金、銅合金から構成されることが好ましい。
【0018】
収容保持部21は、
図1及び
図2に示すように、支持壁22と、支持壁22の幅方向Wの両縁から立ち上がる一対の側壁23,23と、支持壁22の長手方向Lの前端側において立ち上がる前壁27と、を備えている。支持壁22、側壁23及び前壁27は、いずれも厚さが一様な偏平な形状を有している。
収容保持部21は、支持壁22と、支持壁22に対向する側壁23,23と、前壁27とによって取り囲まれる収容空間28を備え、この収容空間28は、側壁23,23と前壁27の先端部が開放されているとともに、側壁23,23と支持壁22の後端側が開放されている。感温素子10及びリードフレーム40の一部は、この収容空間28に収容されるとともに、充填材50を介して収容保持部21に保持される。
【0019】
それぞれの側壁23は、
図1(b),
図2(a)に示すように、前後方向の中央部分の背を高くし、両端部の背が低く形成されている。ここでいう背の高さは、支持壁22からの寸法をいう。それぞれの側壁23の上述した背の高い中央部分が、接続体24をなす。さらに、それぞれの側壁23は、支持体として、接続体24の前側に設けられる前方支持体25と、接続体24の後側に設けられる後方支持体26とを備える。前方支持体25と後方支持体26は、前後方向であって、接続体24を挟む二箇所に設けられる。
【0020】
側壁23,23のそれぞれには、
図1(b)に示すように、長手方向Lの中程に、その表裏を貫通する脱気孔30が形成されている。この脱気孔30は、後述する充填材50を収容空間28に充填する工程において、収容空間28内の空気を外部に排出させることにより、収容空間28の内部に充填材50が行き渡るように設けられる。
【0021】
接続体24は、温度センサ1を回路基板90に固定するのに用いられる。具体的には、接続体24が回路基板90に形成されている、平面視で幅広のスリット形状の切込み91に挿入されることで、リードフレーム40とともに、温度センサ1を回路基板90に固定する。接続体24は、支持壁22と直交するように、側壁23から立ち上がる。切込み91は、一対の接続体24,24が挿入される部分は、接続体24,24により規定される幅方向Wの寸法と同等の幅方向Wの寸法を有している。
【0022】
前方支持体25は、
図1(a),(b)に示すように、それぞれの側壁23から幅方向Wの外側に向けて突き出している。前方支持体25は支持壁22と平行をなしており、前方支持体25の当接面251は、回路基板90に繋がっている外枠92に面接触する。当接面251が外枠92に面接触したままで、温度センサ1を回路基板90に固定すると、回路基板90と支持壁22が平行を保ったままで、ケース20の高さ方向Hの位置決めをすることができる。なお、外枠92は、その後に回路基板90から取り除かれる。
【0023】
後方支持体26は、前方支持体25と同様に、それぞれの側壁23から幅方向Wの外側に向けて突き出している。後方支持体26は、前方支持体25の当接面251が外枠92に当接すると、後方支持体26の一部が、回路基板90の切込み91から幅方向Wに伸びた溝(図示省略)に挿入される。それにより、温度センサ1は長手方向L及び幅方向Wの位置決めがされる。
【0024】
前方支持体25及び後方支持体26により、温度センサ1を回路基板90に設置すると、温度センサ1を容易に位置決めすることができ、さらに、支持壁22及び後述するラグ端子部31の伝熱面33が回路基板90と平行な状態を維持することができる。つまり、回路基板90が測定対象物のラグ端子部31と接する面と平行な状態となっていれば、伝熱面33を測定対象物のラグ端子部31と接する面と平行にすることができるので、ラグ端子部31が測定対象物に対して平行に密着することになり、測定対象物の温度を正確に測定できる。このように前方支持体25及び後方支持体26は、装着対象物である回路基板90と伝熱面33の相対的な位置関係を規制する。
【0025】
次に、ラグ端子部31は、
図1(a)に示すように、平面視した外形が円形をなしており、その内側に表裏を貫通するねじ孔32が形成されている。ねじ孔32の周囲のリング状の部分が、測定対象物と接触する伝熱面33をなしている。ラグ端子部31は、温度センサ1が実装される回路基板90と測定対象物の位置関係により、図中の上側の面及び下側の面のいずれかを測定対象物と接触させることができる。
ねじ孔32を介してねじを測定対象物にねじ込むことにより、温度センサ1を測定対象物に固定するとともに、伝熱面33を測定対象物に密着できる。測定対象物と接する伝熱面33は回路基板90と平行をなす。
ラグ端子部31は、支持壁22から前方に向けて延設された連結部29により収容保持部21と繋がっており、温度センサ1を測定対象物に固定すれば、連結部29及び支持壁22も熱を伝える機能を果たす。
【0026】
[リードフレーム40]
リードフレーム40は、
図2(a),(b)に示すように、感温素子10の一対のリード線12,12と電気的に接続される。また、リードフレーム40は、回路基板90に形成された挿通孔93に挿入されることで回路基板90に固定されるとともに、回路基板90の対応する回路部分と電気的に接続される。
リードフレーム40は、
図1(a),
図2(b)に示すように、リード線12,12のそれぞれ一方に対応する第一端子41と第二端子45を備えている。第一端子41と第二端子45は、互いに対称の形状をなしていることを除く基本的な構成は同じであるから、以下では第一端子41についてその構成を説明する。
なお、第一端子41及び第二端子45の材質はその目的を達成できる限り任意であるが、例えば電気伝導度の優れる銅、銅合金を用いることができる。また、第一端子41及び第二端子45の表面に表面処理、例えばメッキを施すこともできる。
【0027】
第一端子41は、
図1(a),
図2(a)に示すように、リード線12と接続され、長手方向Lに沿う接続部42と、接続部42と同一平面上で連なる開脚部43と、開脚部43と連なり、高さ方向Hに沿う挿入部44と、を備えている。
接続部42は真っ直ぐに延びており、
図2(a)に示すように、その上下の一方の面、本実施形態では図中の上面にリード線12が載せられることで、接続部42とリード線12が電気的に接続される。接続部42とリード線12は、電気的な接続を確保するために、互いに重複する部分の一部または全部が溶接、その他の手段により接合されることが好ましい。
開脚部43は、接続部42に対して所定の傾斜角度を有して連なっており、幅方向Wの外側に向けて拡開する。こうすることで、
図1(a),
図2(b)に示すように、第一端子41の開脚部43と第二端子45の開脚部43の間隔を後側に向けて広げることができる。
挿入部44は、回路基板90に形成された挿通孔93に挿入するために、接続部42及び開脚部43に対して直交するように、折り曲げられる。挿入部44の先端は、回路基板90に形成された挿通孔93に挿入しやすいようにテーパ状にすることが好ましい。
【0028】
[充填材50]
充填材50は、
図2(a)に示すように、収容保持部21の収容空間28において、感温素子10のリード線12,12とリードフレーム40(第一端子41と第二端子45)の接続部42,42の接続部分の少なくとも一部を覆うとともに、感温素子10とリードフレーム40を収容保持部21に保持する。
【0029】
充填材50は、電気的な絶縁性を有するとともに収容保持部21に対する接着力を有する樹脂材料、例えばエポキシ樹脂で構成される。充填材50は、
図2(a)に示すように、内層51と外層53の二層、つまり複数の樹脂層で構成することもできるが、一層だけで構成することもできる。
【0030】
充填材50は、温度センサ1が回路基板90にリフロー方式で半田付けされる場合に、昇温に伴って充填材50がケース20から剥離するのを防ぐために、ケース20を構成する金属材料、本実施形態ではアルミニウム合金と線膨張係数の差が小さいことが好ましい。ここで、純アルミニウムの線膨張係数は24×10
−6/℃であり、エポキシ樹脂の線膨張係数は4〜8×10
−5/℃であり、アルミニウム合金に比べてエポキシ樹脂の線膨張係数が大きい。そこで、充填材50は、樹脂材料だけで構成するのではなく、充填材50の全体としての線膨張係数を調整する添加剤、具体的にはエポキシ樹脂よりも線膨張係数の小さい添加剤を加えることが好ましい。この添加剤としては、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)の粒子を用いることができる。酸化アルミニウムの線膨張係数は、7.2×10
−6/℃である。また、酸化アルミニウムの熱伝導率は237W/(m・K)であり、エポキシ樹脂の熱伝導率は0・30W/(m・K)であり、エポキシ樹脂に比べて酸化アルミニウムの熱伝導率が高いので、酸化アルミニウムが加えられることにより、充填材50の熱伝導率を向上させることもできる。
酸化アルミニウムの粒子は、充填材50を構成する樹脂が溶融する際に、樹脂の中で沈降しないように、球状ではなく、リーフ状、薄板状に形成されているのが好ましい。
添加剤としては、酸化アルミニウムに限るものではなく、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)等のアルミニウム化合物、又は酸化チタン(TiO
2)等のチタン化合物を用いることができる。
【0031】
充填材50に覆われる感温素子10の素子本体11は、支持壁22、側壁23,23及び前壁27のそれぞれから所定の間隔を隔てて強固に固定された状態で、収容空間28の内部に保持される。素子本体11は、伝熱面となる支持壁22にできるだけ近くなるように配置されるのが好ましい。
第一端子41と第二端子45は、リード線12,12と電気的な接続を保ったままで充填材50に覆われる。第一端子41と第二端子45もまた、支持壁22、側壁23,23及び前壁27のそれぞれから所定の間隔を隔てて、収容空間28の内部に保持される。
充填材50は、リード線12,12の先端まで覆うことが、リード線12,12とリードフレーム40(第一端子41と第二端子45)の接続状態を確保する上で好ましい。ただし、
図2(b)に示すようにリード線12,12の先端の微小量が露出していてもよい。
【0032】
[温度センサ1の製造方法]
次に、温度センサ1を製造する手順について、
図3を参照して説明する。
この製造方法は、接続工程、被覆工程、配置工程、充填工程及び硬化工程を有している。
なお、当該製造方法において、ケース20は、
図4に示すように、ラグ端子部31の側でキャリア34を介して複数のケース20の前駆体が並列に繋がっている部材として提供される。図示を省略するが、リードフレーム40も、接続部42の側でキャリアを介して並列に繋がっている部材として提供される。
【0033】
[接続工程(
図3(a))]
本工程は、感温素子10とリードフレーム40を電気的に接続する工程である。
具体的には、まず、キャリアにより繋がった複数のリードフレーム40の挿入部44の側を、図示を省略する冶具で固定し、その状態でキャリアを切り離す。キャリアを切り離しても、複数のリードフレーム40は、治具により固定されているので、整列した状態が維持される。
そして、感温素子10のリード線12をリードフレーム40の接続部42に載せて接触させた状態で、リード線12と接続部42を溶接により接続する。
【0034】
[被覆工程(
図3(b))]
次に、感温素子10とリードフレーム40の一部を充填材50により構成される内層51で被覆する。
具体的には、感温素子10とリードフレーム40の一部を、図示を省略するエポキシ樹脂槽に浸漬することで、感温素子10とリードフレーム40の一部に内層51をなすエポキシ樹脂を付着させる。エポキシ樹脂槽から引き揚げた後に、付着したエポキシ樹脂を加熱することにより硬化させて、内層51を形成する。リード線12は内層51によりほとんどが覆い隠されるので、硬化した内層51によりリード線12を含めた感温素子10は、リードフレーム40に高い剛性をもって接合される。
【0035】
[配置工程(
図3(c))]
次に、内層51が形成された感温素子10とリードフレーム40は、ケース20の収容保持部21の所定位置に配置される。
具体的には、ラグ端子部31及びラグ端子部31を繋いでいるキャリア34を、図示を省略する冶具により固定する。次に、収容保持部21に、リードフレーム40の挿入部44が上になるようにして、内層51が形成された部分とリードフレーム40の一部を収容保持部21内に収容する。内層51とリードフレーム40は、収容保持部21の支持壁22、側壁23及び前壁27と接触しない位置に保持される。
【0036】
[充填工程・硬化工程(
図3(d))]
次に、収容保持部21に、外層53を構成するエポキシ樹脂を充填してから硬化させることで、充填材50を形成する。
具体的には、収容保持部21に保持されている感温素子10とリードフレーム40の上に外層53をなす固体状のエポキシ樹脂を載せる。エポキシ樹脂を載せるのは室温で行われる。
次に、外層53をなすエポキシ樹脂を加温して粘度を下げることで、収容保持部21と内層51の間の隙間にエポキシ樹脂を行き渡らせる。ここで、ケース20には、脱気孔30が設けられているので、エポキシ樹脂が充填される際に、収容空間28の空気が外部に排出され、収容空間28の内部にエポキシ樹脂を行き渡らせることができる。
【0037】
そして、外層53をなすエポキシ樹脂が当該隙間に行き渡ったならば、さらに高い温度まで加温して、外層53を硬化する。これにより外層53(充填材50)は、支持壁22、前壁27及び一対の側壁23,23により、4方向から取り囲まれる。
その後、ラグ端子部31の側と繋がっているキャリア34をケース20から切り離す。これで、本実施形態の温度センサ1の一連の製造方法が完了する。
【0038】
[温度センサ1の効果]
以下、本実施形態の温度センサ1及びその製造方法が奏する効果について説明する。
温度センサ1は、
図1及び
図2に示すように、リードフレーム40と、測定対象物と接触する伝熱面33を有するケース20を有しており、リード線12によって感温素子10に接続されるリードフレーム40が回路基板90との電気的な接続を担う。しかも、リードフレーム40は充填材50によりケース20に強固に固定される。
したがって、温度センサ1を回路基板90に実装する際の作業負担を軽減することができる。つまり、特許文献1のように感温素子10の回路基板90との電気的な接続をリード線12が担うものとすると、ケース20を回路基板90に設置する工程の他に、リード線12の先端を回路基板90に形成された挿通孔93に挿入する工程が必要になる。これに対し温度センサ1は、リードフレーム40が充填材50を介してケース20に強固に固定されている。リードフレーム40は、電線に比べて剛性が高いので、ケース20から挿通孔93までの距離に合わせたものが用いられていれば、ケース20を回路基板90の切り込み91に位置合わせして装着するだけで、リードフレーム40を回路基板90の挿通孔93へ挿入される。したがって、温度センサ1は、回路基板90に実装する際の作業工程を減らすことができ、作業効率を向上させることができる。
また、電線を用いる場合は、温度センサ1を回路基板90に実装する際に、電線の先端を挿通孔93に挿入するのに、電線の長さにある程度余裕を持たせる必要がある。このため、電線を配線した後にも、長さに余裕を持たせた分だけ、回路基板90の周囲のスペースを占める。これに対し、リードフレーム40は、電線のように余裕を持たせる必要がないため、回路基板90の周囲のスペースを占めることがなく、省スペース化を図ることができる。
【0039】
また、温度センサ1は、ケース20に設けられた前方支持体25及び後方支持体26により、回路基板90に実装する際の位置決めを容易に行うことができ、さらに、支持壁22を回路基板90と平行に配置することができる。このように、温度センサ1を定まった姿勢で回路基板90に装着すれば、温度センサ1の伝熱面が測定対象物に対して定まった姿勢になるので、ラグ端子部31の伝熱面33を測定対象物に密着できる。
特に、前方支持体25と後方支持体26は、接続体24の前側と後側とで所定の間隔をあけて複数の箇所に設けられているので、支持壁22と回路基板90の平行な状態を安定して得ることができる。
【0040】
次に、本実施形態の温度センサ1は、測定対象物の温度を正確に感知することができる。つまり、温度センサ1のケース20は、
図1及び
図2に示すように、収容保持部21の支持壁22、前壁27及び一対の側壁23,23の4方向から充填材50を取り囲んでいる。したがって温度センサ1によれば、充填材50を介して感温素子10に熱を伝える面積が広いので、測定対象物の温度を感温素子10に速やかに伝えることができる。
【0041】
さらに、充填材50は、全体としての線膨張係数を調整するための添加剤が含まれているので、ケース20と充填材50の線膨張係数の差が小さい。
したがって温度センサ1によれば、回路基板90にリフロー方式で半田付けされても、ケース20と充填材50の間に隙間ができたり、充填材50に亀裂が入ったりするのを防止できるので、充填材50を介する素子本体11への伝熱性能の低下を防ぐことができる。
【0042】
[第1実施形態の変形例1]
図5は、第1実施形態の変形例を示す。
この変形例にかかる温度センサ1は、ケース20に前方支持体25を設ける代わりに、ラグ端子部31に前方支持体35を設けている。
具体的には、
図5(a)に示すように、ラグ端子部31の前端寄りに、一対の前方支持体35,35が設けられている。それぞれの前方支持体35は、
図5(b)に示すように、ラグ端子部31とその側面で繋がっており、高さ方向Hにケース20の後方支持体26と同じ向きに立ち上がっている。前方支持体35の先端は、後方支持体26と同じ高さになっている。
【0043】
図5(a)に示す変形例は、前方支持体35と後方支持体26の間隔を、第1実施形態の前方支持体25と後方支持体26の間隔よりも広くすることができるので、温度センサ1のケースと回路基板90との平行状態をより安定して保つことができる。
【0044】
なお、一対の前方支持体35,35は、連結部29に近い側に設けられていてもよい。さらに、前方支持体35を、
図5(c)に示すように、ラグ端子部31の前端に一つだけ設けることで、前方支持体35と一対の後方支持体26,26による3点でケース20を支持することもできる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る温度センサ2について、
図6を参照して説明する。
温度センサ2は、
図6(a)に示すように、ケース80に保持されるリードフレーム60が、第1実施形態の温度センサ1よりも長く、かつ、平面視して、第一端子41と第二端子45が前端から後端まで平行に延びている。なお、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同じ符号を用いる。以下、温度センサ2について、温度センサ1との相違点を中心に説明する。
【0046】
リードフレーム60の第一端子41及び第二端子45のそれぞれは、
図6(a),(b)に示すように、長手方向Lに沿う第一水平部61と、第一水平部61と繋がる第一垂直部62と、第一垂直部62と繋がる第二水平部63と、第二水平部63に繋がり、接続部42をなす第二垂直部64と、を備えている。第一水平部61と第二水平部63は、ケース20の支持壁22と平行をなし、第一垂直部62と第二垂直部64はケース20の前壁27と平行をなしている。第一水平部61は、
図6(c)に示すように、接続部42を担う。
【0047】
リードフレーム60は、第一端子41と第二端子45が長いために、温度センサ2を回路基板90に実装して使用している最中に振動を受けると、第一端子41と第二端子45が接触するおそれがある。そこで、温度センサ2は、第一端子41と第二端子45の相互の間隔を維持して、第一端子41と第二端子45が接触するのを防ぐために、第一端子41と第二端子45の間にスペーサ70が設けられている。スペーサ70は、エポキシ樹脂をインサート成形することにより設けられている。
【0048】
スペーサ70は、
図6(a),(b)に示すように、第二垂直部64を除いて、ケース80から引き出さるリードフレーム60(第一端子41,第二端子45)の全体を連なって覆っている。ただし、第一端子41と第二端子45の間隔を維持できるのであれば、スペーサ70は、間欠的に設けられていてもよい。間欠的にスペーサ70を設ける場合は、リードフレーム60の全体を連なって覆っているスペーサ70に比べて、個々のスペーサ70をインサート成形する際に用いる金型により形成されるキャビティを小さくすることができ、エポキシ樹脂を容易に行き渡らすことができる。
【0049】
温度センサ2は、第1実施形態の温度センサ1と異なり、ケース80が装着対象物である回路基板90に固定されない。
【0050】
また、温度センサ2は、ラグ端子部31のねじ孔32の中心が、ケース20の幅方向Wの中心から幅方向Wの一方にずれている。このように、ラグ端子部31を取り付ける周辺の素性によっては、ラグ端子部31をケース20から偏心させることができる。
【0051】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0052】
上述した第1実施形態は、温度センサ1の支持壁22と回路基板90が平行をなすことを前提にしているが、本発明はこれに限定されない。回路基板90と測定対象物の伝熱面が傾斜している場合には、この傾斜に合わせて、回路基板90に対する支持壁22の姿勢を調整することができる。
【0053】
また、充填材50は、温度センサ1が回路基板90にリフロー方式により半田付けされる場合を想定して、線状材膨張係数を調整する添加剤として酸化アルミニウム粒子を含むエポキシ樹脂を用いたが、本発明はこれに限定されない。リフロー方式以外の手段により半田付けするのであれば、添加剤を含まない樹脂を用いてもよい。
【0054】
上述した第1、第2実施形態では、ラグ端子部31が支持壁22から前方に向けて延設された連結部29により収容保持部21と繋がっているが、本発明はこれに限定されない。ラグ端子部31が前壁27や側壁23から高さ方向Hに延設された連結部により収容保持部21と繋がっていてもよい。
【0055】
上述した第1、第2実施形態では、ケース20にラグ端子部31を備える温度センサ1,2について説明したが、本発明はこれに限定されず、測定対象に接触する伝熱面を有するケースを備える温度センサに広く適用することができる。また、第1、第2実施形態では、ケース20の支持壁22も伝熱面としているが、前壁27や側壁23を測定対象に接触させて、前壁27や側壁23を伝熱面とすることができる。さらに、ケース20は、充填材50を4方向から取り囲む形状になっているが、これに限定されず、充填材50を4方向以上から取り囲む形状であってもよい。
【0056】
第1実施形態の温度センサ1は、一対の前方支持体25が、長手方向Lの同じ位置に設けられているが、長手方向Lの異なる位置に設けられてもよい。後方支持体26も同様である。
【0057】
また、温度センサ1は、前方支持体25の当接面251が、回路基板90と繋がっている外枠92に面接触するが、本発明はこれに限定されず、回路基板90自体や測定対象物に隣接しその後に取り除かれる他の部材と面接触してもよい。
本発明は、素子本体11と、素子本体11から引き出される一対のリード線12と、を有する感温素子10と、感温素子10を収容し、温度の測定対象物に接する伝熱面33を有するケース20と、リード線12のそれぞれと電気的に接続され、ケース20から引き出される一対のリードフレーム40と、ケース20に収容される感温素子10とリードフレーム40を覆い、接続の状態を維持して感温素子10とリードフレーム40をケース20に保持する充填材50と、を備えることを特徴とする。