特許第6371014号(P6371014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6371014
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】医薬製剤及び医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/42 20060101AFI20180730BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20180730BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20180730BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20180730BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20180730BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180730BHJP
   A61M 15/08 20060101ALN20180730BHJP
   A61M 15/00 20060101ALN20180730BHJP
   A62B 18/02 20060101ALN20180730BHJP
【FI】
   A61K33/42
   A61K33/38
   A61K33/24
   A61K9/70
   A61P11/02
   A61P37/08
   !A61M15/08
   !A61M15/00 Z
   !A62B18/02 C
【請求項の数】12
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2017-544978(P2017-544978)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2016088231
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-239723(P2016-239723)
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 コロンブス,東方通信社,平成28年10月27日,11月号,Vol.180,通巻665号,p.20〜22に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Public Health Research,2016年12月15日,Vol.6,No.6,p.168−176に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515248458
【氏名又は名称】DR.C医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】岡 崎 成 実
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−040416(JP,A)
【文献】 特開2001−178825(JP,A)
【文献】 特開平10−277171(JP,A)
【文献】 光触媒チタンアパタイトのアレルゲン不活化効果,アレルギー,2004年,Vol.53, No.2/3,p.331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00−33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー性鼻炎を予防又は治療するための、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤であって、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる複合粒子を含有する、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
アレルギー性鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内に挿入して使用される、鼻炎を予防又は治療するための医療器具であって、
前記医療器具が、前記対象の鼻腔内に挿入されるシート部と、前記シート部に付着した複合粒子とを備え、
前記複合粒子が、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記医療器具。
【請求項7】
前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、請求項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、請求項6又は7に記載の医療器具。
【請求項9】
前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項10】
前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項11】
前記シート部が、通気性を有する、請求項6〜10のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項12】
前記複合粒子が、前記シート部に脱離可能に付着している、請求項6〜11のいずれか一項に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年12月9日に出願された日本出願である特願2016−239723に基づく優先権を主張するものであり、それらの開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤、鼻炎を予防又は治療するための医療器具、鼻炎を予防又は治療する方法、鼻炎を予防又は治療する方法において使用するための複合粒子、並びに、鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するための複合粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アレルギー性鼻炎は、外部環境中の原因物質に対して体内の自己免疫システムが反応することによって引き起こされる疾患であり、原因物質として、ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等が知られている。
【0004】
アレルギー性鼻炎の治療法としては、薬剤療法、減感作療法等が知られている。
【0005】
薬剤療法では、ステロイド性抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤等が使用されているが、これらの薬剤は、副作用を生じるおそれがある。ステロイド性抗炎症剤の副作用としては、例えば、副腎萎縮、機能不全、胃潰瘍等の副作用が、免疫抑制剤の副作用としては、例えば、感染症等の副作用が、抗ヒスタミン剤の副作用としては、例えば、倦怠感、眠気、めまい等の副作用が知られている。
【0006】
減感作療法は、アレルギーに関与している抗原を特定し、その抗原を皮内に投与することで減感作を誘導することにより、必要な抗原に特異的な免疫反応だけを抑制する方法であるが、十分な効果が現れるまでに、通常、数カ月から数年を要する。また、アレルギーの原因となる抗原を全身性に直接投与することによるアナフィラキシーショック等の危険性があり、投与量を少量から徐々に上げていく必要がある。また、減感作療法は、長期間の治療が必要となるだけでなく、注射による患者の苦痛を伴う。
【0007】
非特許文献1には、株式会社信州セラミックス(日本国長野県)が製造及び販売する「アースプラス(earthplus)」(商標)が、黄色ブドウ球菌、大腸菌及び緑膿菌に対して殺菌作用を有することが記載されている。アースプラスは、酸化チタン、銀及びハイドロキシアパタイトが複合化された複合材料の粉末であり、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の銀粒子と、1個以上のハイドロキシアパタイト粒子とを含んでなる複合粒子を含有する。当該複合粒子において、1個以上の酸化チタン粒子、1個以上の銀粒子及び1個以上のハイドロキシアパタイト粒子は、三次元かつランダムに配置されており、少なくとも1個の銀粒子は、少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている。アースプラスは、酸化チタン粒子の光触媒作用、銀粒子の殺菌作用及びハイドロキシアパタイト粒子の吸着作用に基づいて、殺菌作用を発揮する。すなわち、アースプラスは、ハイドロキシアパタイト粒子の吸着作用により、微生物を吸着し、酸化チタン粒子の光触媒作用及び銀粒子の殺菌作用により、微生物に対して殺菌作用を発揮する。
【0008】
アースプラスの光触媒作用に基づく殺菌作用は、次のメカニズムにより発揮されると考えられる。アースプラスに紫外線(波長385nm以下)が照射されると、酸化チタン粒子が有する価電子帯の電子が、禁制帯(バンドギャップ)を超えるエネルギーを吸収して伝導帯に励起されるとともに、価電子帯に正孔(電子が抜けた孔)が生じる。励起電子が、酸化チタン粒子に結合した銀粒子に移行することにより、励起電子と正孔との再結合が抑制される。励起電子は酸化チタン粒子の表面及び銀粒子の表面で還元反応を生じ、正孔は酸化チタン粒子の表面で酸化反応を生じる。例えば、励起電子は酸素を還元してスーパーオキシドアニオンを生成し、正孔は水を酸化してヒドロキシラジカルを生成する。これらの活性酸素が微生物を分解し、これにより殺菌作用が発揮されると考えられる。
【0009】
特許文献1には、基材表面に、光半導体セラミックス(例えば、酸化チタン)と、電極となる金属(例えば、銀)と、吸着機能を有するセラミックス(例えば、ハイドロキシアパタイト)との混合粉体からなる複合セラミックスを溶射してなる機能体が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して殺菌作用を有することが記載されている。
【0010】
特許文献2には、半導体粉末(例えば、酸化チタン粉末)及び金属粉末(例えば、銀粉末)を組み合わせた光触媒と、光触媒作用により処理する対象物(例えば、細菌)を吸着及び保持するための吸着材料(例えば、ハイドロキシアパタイト)とを含有する被着処理剤が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及び緑膿菌に対して殺菌作用を有することが記載されている。
【0011】
特許文献3には、金属粒子(例えば、銀粒子)と、セラミックス粒子(例えば、酸化チタン粒子)とを結合させた金属−セラミックス結合体粒子と、吸着材(例えば、ハイドロキシアパタイト)との混合物が、光の不存在下において、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して殺菌作用を有することが記載されている。特許文献3において、金属−セラミックス結合体粒子は、金属粒子及びセラミックス粒子に対して、(1)高温に維持されたゾーンを通過させる工程、(2)ボールミルを使用して加圧する工程、(3)ボールミル、高温ローラー及び高温超音波圧着法のいずれかを使用して加熱及び加圧を同時に行う工程、からなる群より選択される工程を施すことにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2585946号公報
【特許文献2】特許第2963657号公報
【特許文献3】特許第5995100号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Eriko Kasuga et al., Bactericidal activities of woven cotton and nonwoven polypropylene fabrics coated with hydroxyapatite-binding silver/titanium dioxide ceramic noncomposite "Earth-plus", International Journal of Nanomedicine, 2011:6, pp.1937-1943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤、鼻炎を予防又は治療するための医療器具、鼻炎を予防又は治療する方法、鼻炎を予防又は治療する方法において使用するための複合粒子、並びに、鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するための複合粒子の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる複合粒子を、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内粘膜に投与することにより、対象の鼻炎を予防又は治療できることを見出し、本発明を完成するに至った。当該複合粒子が、光触媒作用の発現に必要な光が存在しない対象の鼻腔内において、鼻炎に対して予防又は治療効果を発揮することは、従来の知見からは予測し得ない驚くべき知見である。
【0016】
本発明の一態様によれば、以下の医薬製剤が提供される。
[A1]鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤であって、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる複合粒子を含有する、前記医薬製剤。
[A2]鼻炎を予防又は治療するための、[A1]に記載の医薬製剤。
[A3]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[A2]に記載の医薬製剤。
[A4]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[A1]〜[A3]のいずれかに記載の医薬製剤。
[A5]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[A1]〜[A4]のいずれかに記載の医薬製剤。
[A6]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[A1]〜[A5]のいずれかに記載の医薬製剤。
[A7]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[A1]〜[A6]のいずれかに記載の医薬製剤。
【0017】
本発明の別の一態様によれば、以下の医療器具(以下「第1の医療器具」という場合がある)が提供される。
[B1]鼻炎を予防又は治療するための医療器具であって、前記医療器具が、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻孔を覆う通気性マスク部と、前記通気性マスク部に設けられた耳掛け部と、前記通気性マスク部に脱離可能に付着した複合粒子とを備え、前記複合粒子が、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記医療器具。
[B2]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[B1]に記載の医療器具。
[B3]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[B1]又は[B2]に記載の医療器具。
[B4]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[B1]〜[B3]のいずれかに記載の医療器具。
[B5]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[B1]〜[B4]のいずれかに記載の医療器具。
[B6]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[B1]〜[B5]のいずれかに記載の医療器具。
【0018】
本発明のさらに別の一態様によれば、以下の医療器具(以下「第2の医療器具」という場合がある)が提供される。
[C1]鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内に挿入して使用される、鼻炎を予防又は治療するための医療器具であって、前記医療器具が、前記対象の鼻腔内に挿入されるシート部と、前記シート部に付着した複合粒子とを備え、前記複合粒子が、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記医療器具。
[C2]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[C1]に記載の医療器具。
[C3]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[C1]又は[C2]に記載の医療器具。
[C4]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[C1]〜[C3]のいずれかに記載の医療器具。
[C5]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[C1]〜[C4]のいずれかに記載の医療器具。
[C6]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[C1]〜[C5]のいずれかに記載の医療器具。
[C7]前記シート部が、通気性を有する、[C1]〜[C6]のいずれかに記載の医療器具。
[C8]前記複合粒子が、前記シート部に脱離可能に付着している、[C1]〜[C7]のいずれかに記載の医療器具。
【0019】
本発明のさらに別の一態様によれば、以下の方法が提供される。
[D1]鼻炎を予防又は治療する方法であって、前記方法が、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与する工程を含み、前記複合粒子が、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記方法。
[D2]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[D1]に記載の方法。
[D3]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[D1]又は[D2]に記載の方法。
[D4]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[D1]〜[D3]のいずれかに記載の方法。
[D5]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[D1]〜[D4]のいずれかに記載の方法。
[D6]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[D1]〜[D5]のいずれかに記載の方法。
[D7]前記投与工程において、本発明の医薬製剤(すなわち、[A1]〜[A7]のいずれかに記載の医薬製剤)を鼻腔内粘膜に投与することにより、前記対象の鼻腔内粘膜に前記複合粒子を投与する、[D1]〜[D6]のいずれかに記載の方法。
[D8]前記投与工程において、第1の医療器具(すなわち、[B1]〜[B6]のいずれかに記載の医療器具)を前記対象の顔に装着することにより、前記対象の鼻腔内粘膜に前記複合粒子を投与する、[D1]〜[D6]のいずれかに記載の方法。
[D9]前記投与工程において、第2の医療器具(すなわち、[C1]〜[C8]のいずれかに記載の医療器具)を前記対象の鼻腔内に挿入することにより、前記対象の鼻腔内粘膜に前記複合粒子を投与する、[D1]〜[D6]のいずれかに記載の方法。
【0020】
本発明のさらに別の一態様によれば、以下の複合粒子が提供される。
[E1]鼻炎を予防又は治療する方法において使用するための複合粒子であって、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記複合粒子。
[E2]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[E1]に記載の複合粒子。
[E3]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[E1]又は[E2]に記載の複合粒子。
[E4]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[E1]〜[E3]のいずれかに記載の複合粒子。
[E5]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[E1]〜[E4]のいずれかに記載の複合粒子。
[E6]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[E1]〜[E5]のいずれかに記載の複合粒子。
[E7]前記方法において、前記複合粒子が鼻腔内粘膜に投与される、[E1]〜[E6]のいずれかに記載の複合粒子。
【0021】
本発明のさらに別の一態様によれば、以下の使用が提供される。
[F1]鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するための複合粒子の使用であって、前記複合粒子が、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる、前記使用。
[F2]前記鼻炎がアレルギー性鼻炎である、[F1]に記載の使用。
[F3]前記複合粒子において、前記1個以上の酸化チタン粒子、前記1個以上の金属粒子及び前記1個以上のリン酸カルシウム粒子が、三次元かつランダムに配置されている、[F1]又は[F2]に記載の使用。
[F4]前記1個以上の金属粒子のうち少なくとも1個の金属粒子が、前記1個以上の酸化チタン粒子のうち少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている、[F1]〜[F3]のいずれかに記載の使用。
[F5]前記1個以上の金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される、[F1]〜[F4]のいずれかに記載の使用。
[F6]前記1個以上の金属粒子が銀粒子を含み、前記1個以上のリン酸カルシウム粒子がハイドロキシアパタイト粒子を含む、[F1]〜[F5]のいずれかに記載の使用。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤、鼻炎を予防又は治療するための医療器具、鼻炎を予防又は治療する方法、鼻炎を予防又は治療する方法において使用するための複合粒子、並びに、鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するための複合粒子の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の医療器具の一実施形態を示す一部破断図である。
図2図2は、本発明の第2の医療器具の一実施形態を示す斜視図である。
図3図3は、製造例2で製造された複合粒子付着不織布の電子顕微鏡観察(500倍)の結果を示す図である。
図4図4は、製造例2で製造された複合粒子付着不織布の電子顕微鏡観察(5000倍)の結果を示す図である。
図5図5は、製造例2で製造された複合粒子付着不織布の電子顕微鏡観察(20000倍)の結果を示す図である。
図6図6は、複合粒子が付着していない不織布の電子顕微鏡観察(500倍)の結果を示す図である。
図7図7は、複合粒子が付着していない不織布の電子顕微鏡観察(1000倍)の結果を示す図である。
図8図8は、試験例8における電子顕微鏡観察(10000倍)の結果を示す図である。
図9図9は、試験例8における電子顕微鏡観察(3000倍)の結果を示す図である。
図10図10は、試験例8における電子顕微鏡観察(5000倍)の結果を示す図である。
図11図11は、試験例8における電子顕微鏡観察(5000倍)の結果を示す図である。
図12図12は、試験例8における電子顕微鏡観察(5000倍)の結果を示す図である。
図13図13は、試験例8における電子顕微鏡観察(5000倍)の結果を示す図である。
図14図14は、試験例8における元素マッピング(X線マッピング)の結果を示す図である。
図15図15は、試験例8における元素マッピング(X線マッピング)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
複合粒子
複合粒子に関する以下の説明は、別段規定しない限り、本発明に包含されるいずれの態様にも適用される。
【0026】
本発明で使用される複合粒子は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。
【0027】
複合粒子1個あたりの酸化チタン粒子の個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。複合粒子1個あたりの酸化チタン粒子の個数は、通常2個以上である。
【0028】
複合粒子に含まれる酸化チタン粒子の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、粒状、針状、薄片状、不定形状等が挙げられる。複合粒子は、異なる形態を有する2個以上の酸化チタン粒子を含んでいてもよい。
【0029】
複合粒子に含まれる酸化チタン粒子の粒子径は、複合粒子の粒子径よりも小さい限り特に限定されるものではなく、複合粒子の粒子径に応じて適宜調整することができる。複合粒子に含まれる酸化チタン粒子は、例えば、ナノ粒子又はサブミクロン粒子である。
【0030】
酸化チタン粒子を構成する酸化チタンの結晶構造としては、例えば、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられ、これのうち、アナターゼ型が好ましい。
【0031】
複合粒子1個あたりの金属粒子の個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。複合粒子1個あたりの金属粒子の個数は、通常2個以上である。
【0032】
複合粒子に含まれる金属粒子の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、粒状、針状、薄片状、不定形状等が挙げられる。複合粒子は、異なる形態を有する2個以上の金属粒子を含んでいてもよい。
【0033】
複合粒子に含まれる金属粒子の粒子径は、複合粒子の粒子径よりも小さい限り特に限定されるものではなく、複合粒子の粒子径に応じて適宜調整することができる。複合粒子に含まれる金属粒子は、例えば、ナノ粒子又はサブミクロン粒子である。
【0034】
複合粒子に含まれる金属粒子は、例えば、銀粒子、金粒子、白金粒子及び銅粒子からなる群から選択される。複合粒子に含まれる金属粒子は、好ましくは、銀粒子である。複合粒子は、異なる種類の2個以上の金属粒子を含んでいてもよい。
【0035】
複合粒子1個あたりのリン酸カルシウム粒子の個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。複合粒子1個あたりのリン酸カルシウム粒子の個数は、通常2個以上である。
【0036】
複合粒子に含まれるリン酸カルシウム粒子の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、粒状、針状、薄片状、不定形状等が挙げられる。複合粒子は、異なる形態を有する2個以上のリン酸カルシウム粒子を含んでいてもよい。
【0037】
複合粒子に含まれるリン酸カルシウム粒子の粒子径は、複合粒子の粒子径よりも小さい限り特に限定されるものではなく、複合粒子の粒子径に応じて適宜調整することができる。複合粒子に含まれるリン酸カルシウム粒子は、例えば、ナノ粒子又はサブミクロン粒子である。
【0038】
リン酸カルシウム粒子を構成するリン酸カルシウムとしては、例えば、アパタイト(リン灰石)、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうち、アパタイトが好ましい。アパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ化アパタイト、炭酸アパタイト等が挙げられ、これらのうち、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)が好ましい。
【0039】
複合粒子1個あたりの酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子の含有量は、特に限定されないが、酸化チタン粒子の含有量の下限値は、金属粒子1質量部に対して、通常10質量部、好ましくは20質量部、さらに好ましくは25質量部、さらに一層好ましくは30質量部であり、酸化チタン粒子の含有量の上限値は、金属粒子1質量部に対して、通常300質量部、好ましくは250質量部、さらに好ましくは200質量部、さらに一層好ましくは180質量部である。また、リン酸カルシウム粒子の含有量の下限値は、金属粒子1質量部に対して、通常1質量部、好ましくは2質量部、さらに好ましくは3質量部であり、リン酸カルシウム粒子の含有量の上限値は、通常100質量部、好ましくは80質量部、さらに好ましくは60質量部、さらに一層好ましくは50質量部である。
【0040】
動的光散乱法により測定される複合粒子の粒子径は、好ましくは100〜600nm、さらに好ましくは200〜500nm、さらに一層好ましくは250〜350nmである。動的光散乱法による粒子径の測定は、市販の動的光散乱式粒子径分布測定装置、好ましくは動的光散乱式ナノトラック粒子径分布測定装置「UPA−EX150」(日機装株式会社製)により測定される。
【0041】
複合粒子において、1個以上の酸化チタン粒子、1個以上の金属粒子及び1個以上のリン酸カルシウム粒子は、三次元かつランダムに配置されていることが好ましい。
【0042】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、少なくとも1個の金属粒子が、少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている。
【0043】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、ある1個の粒子(酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される1個の粒子)の周囲に、別の1個以上の粒子(酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される1個以上の粒子)が存在している。この実施形態において、ある1個の粒子には、同種の1個以上の粒子が隣接していてもよいし、異種の1個以上の粒子が隣接していてもよい。隣接する粒子は互いに結合し、固着していることが好ましい。隣接する粒子の組み合わせとしては、酸化チタン粒子同士、金属粒子同士、リン酸カルシウム粒子同士、酸化チタン粒子と金属粒子、酸化チタン粒子とリン酸カルシウム粒子、金属粒子とリン酸カルシウム粒子等が挙げられる。
【0044】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される少なくとも1個の粒子の一部が、複合粒子の表面に露出している。
【0045】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、少なくとも1個の酸化チタン粒子の一部、少なくとも1個の金属粒子の一部及び少なくとも1個のリン酸カルシウム粒子の一部が、複合粒子の表面に露出している。
【0046】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される少なくとも1個の粒子が、複合粒子の表面に露出することなく、複合粒子の内部に存在している。
【0047】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される少なくとも1個の粒子が膜状の形態を有し、複合粒子の表面の少なくとも一部に存在している。
【0048】
三次元かつランダムな配置の一実施形態では、酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子から選択される2個以上の粒子が一体となって又は連なって膜状の形態を有し、複合粒子の表面の少なくとも一部に存在している。
【0049】
ある1個の粒子が粒子形態を有するか、あるいは、膜状の形態を有するか、あるいは、別の1個以上の粒子と一体となって又は連なって膜状の形態を有するかは、複合粒子を製造する際の粒子の配合比等の影響を受け得る。配合比によっては、ある1個の粒子が、もはや粒子形態を維持せず、複合粒子の表面の少なくとも一部に存在する膜状の形態をとり得る。例えば、ビーズミル、ボールミル等の機械的手法により粒子複合化を実施する場合、その他の粒子よりも硬度が低い材料で構成される粒子(例えば、銀粒子)は、このような膜状の形態をとり得る。
【0050】
三次元かつランダムな配置に関する上記実施形態のうち2種以上が組み合わせられてもよい。
【0051】
複合粒子としては、例えば、株式会社信州セラミックスから、商品名「アースプラス(earthplus)」の下で販売されている複合材料の粉末を使用することができる。アースプラスは、酸化チタン、銀及びハイドロキシアパタイトが複合化された複合材料の粉末であり、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の銀粒子と、1個以上のハイドロキシアパタイト粒子とを含んでなる複合粒子を含有する。当該複合粒子において、1個以上の酸化チタン粒子、1個以上の銀粒子及び1個以上のハイドロキシアパタイト粒子は、三次元かつランダムに配置されており、少なくとも1個の銀粒子は、少なくとも1個の酸化チタン粒子に固着されている。また、当該複合粒子において、少なくとも1個の酸化チタン粒子の一部、少なくとも1個の銀粒子の一部及び少なくとも1個のハイドロキシアパタイト粒子の一部は、複合粒子の表面に露出していると考えられる。
【0052】
複合粒子は、例えば、湿式ミルを使用して、酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末を液体中で混合し、酸化チタン粉末に含まれる1個以上の酸化チタン粒子と、金属粉末に含まれる1個以上の金属粒子と、リン酸カルシウム粉末に含まれる1個以上のリン酸カルシウム粒子とを複合化することにより製造することができる。なお、こうして製造された複合粒子は、その後、焼結されずに、本発明において使用される。
【0053】
酸化チタン粉末における酸化チタン含量(純度)は、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、さらに一層好ましくは98%以上である。上限値は、例えば、99%である。
【0054】
酸化チタン粉末に含まれる酸化チタン粒子(一次粒子)の粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.03〜0.1μmである。湿式ミルは、粒子凝集体を個々の粒子に分散させることができるので、酸化チタン粉末には、酸化チタン粒子の凝集体(二次粒子)が含まれていてもよい。酸化チタン粒子の凝集体の粒子径は、例えば、1〜2μmである。酸化チタン粒子又はその凝集体の粒子径は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)を使用して測定される。
【0055】
金属粉末における金属含量(純度)は、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、さらに一層好ましくは98%以上である。上限値は、例えば、99.9%である。
【0056】
金属粉末に含まれる金属粒子(一次粒子)の粒子径は、特に限定されないが、例えば、1.1〜1.9μmである。湿式ミルは、粒子凝集体を個々の粒子に分散させることができるので、金属粉末には、金属粒子の凝集体(二次粒子)が含まれていてもよい。なお、金属粉末を使用まで冷凍保存しておくことにより、金属粉末に含まれる金属粒子の凝集を抑制することができる。金属粒子又はその凝集体の粒子径は、例えば、比表面積に基づいて算出される。
【0057】
リン酸カルシウム粉末におけるリン酸カルシウム含量(純度)は、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、さらに一層好ましくは98%以上である。
【0058】
リン酸カルシウム粉末に含まれるリン酸カルシウム粒子(一次粒子)の粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜0.2μmである。湿式ミルは、粒子凝集体を個々の粒子に分散させることができるので、リン酸カルシウム粉末には、リン酸カルシウム粒子の凝集体(二次粒子)が含まれていてもよい。リン酸カルシウム粒子の凝集体の粒子径は、例えば、4〜5μmである。リン酸カルシウム粒子又はその凝集体の粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法によって測定される。
【0059】
湿式ミルは、酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末に含まれる粒子を液体中で分散及び微粉砕しながら、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを複合化することができる。湿式ミルとしては、例えば、ビーズミル、ボールミル等が挙げられ、これらのうち、ビーズミルが好ましい。ビーズミル、ボールミル等のミルで使用されるビーズ、ボール等の粉砕メディアの材質としては、例えば、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、ガラス等が挙げられ、これらのうち、ジルコニアが好ましい。粉砕メディアのサイズ(直径)は、製造すべき複合粒子の粒子径等に応じて適宜調整することができるが、通常0.05〜3.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。粉砕メディアとしては、例えば、サイズが約0.1mm、質量が約0.004mgのビーズ又はボールを使用することができる。
【0060】
混合の際に使用される液体は、例えば、水等の水性媒体である。混合の際に使用される液体が水である場合、酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末の合計配合量は、水65質量部に対して、通常25〜45質量部、好ましくは30〜40質量部となるように調整される。
【0061】
酸化チタン粉末、金属粉末、リン酸カルシウム粉末及び液体を含む原料を湿式ミルで混合する際、各種条件、例えば、原料粉末の合計添加量、液の流量、シリンダー内の羽根の周速、攪拌温度、攪拌時間等は、製造すべき複合粒子の粒子径等に応じて適宜調整することができる。原料粉末(酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末)の合計添加量は、例えば4kg以上であり、シリンダー容積は、例えば0.5〜4L、液の流量は、例えば0.5〜3L/分であり、羽根の周速は、例えば300〜900m/分であり、液温は、例えば20〜60℃であり、原料粉末1kgあたりの混合時間は、例えば0.5〜2時間である。原料粉末の合計添加量の上限値は、シリンダー容積等に応じて適宜調整可能である。混合時間は、原料粉末の合計添加量等に応じて適宜調整可能である。
【0062】
原料には、酸化チタン粉末、金属粉末、リン酸カルシウム粉末及び液体に加えて、分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、高分子型分散剤、低分子型分散剤、無機型分散剤等が挙げられ、湿式混合で使用される液体の種類に応じて適宜選択することができる。混合の際に使用される液体が水等の水性媒体である場合、分散剤としては、例えば、アニオン性高分子型分散剤、非イオン性高分子型分散剤等を使用することができ、アニオン性高分子型分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸系分散剤、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合系分散剤等が挙げられ、非イオン性高分子型分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。分散剤の添加量は、適宜調整することができるが、酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末の合計配合量35質量部に対して、例えば、0.1〜3質量%、好ましくは、0.3〜1質量%である。
【0063】
湿式ミルを使用して、酸化チタン粉末、金属粉末及びリン酸カルシウム粉末を液体中で混合し、酸化チタン粉末に含まれる1個以上の酸化チタン粒子と、金属粉末に含まれる1個以上の金属粒子と、リン酸カルシウム粉末に含まれる1個以上のリン酸カルシウム粒子とを複合化することにより、複合粒子の懸濁液(スラリー)を製造することができる。その後、懸濁液中の溶媒を蒸発等により除去することにより、複合粒子の集合体(乾燥粉末)を製造することができる。噴霧乾燥造粒法等の公知の造粒法により、複合粒子の懸濁液(スラリー)から、複合粒子の集合体(乾燥粉末)を製造することもできる。
【0064】
動的光散乱法により測定される複合粒子の集合体の粒子径は、例えば100〜600nm、好ましくは200〜500nmである。動的光散乱法により体積基準で測定される複合粒子の集合体のメディアン径(d50)は、例えば250〜350nm、好ましくは約300nmである。動的光散乱法による粒子径は、市販の動的光散乱式粒子径分布測定装置、好ましくは動的光散乱式ナノトラック粒子径分布測定装置「UPA−EX150」(日機装株式会社製)を使用して測定される。
【0065】
製造された複合粒子は、そのまま、本発明において使用することができるが、本発明において使用する前に、粒子径の調整を行ってもよい。粒子径の調整は、例えば、粉末の状態又は懸濁液の状態の複合粒子を篩化することにより行うことができる。
【0066】
複合粒子の集合体において、複合粒子1個あたりの酸化チタン粒子、金属粒子及びリン酸カルシウム粒子のそれぞれの個数は、複合粒子の間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
複合粒子の集合体には、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる複合粒子に加えて、該複合粒子を製造する際に副生され得るその他の粒子が混在していてもよい。その他の粒子としては、例えば、単独の酸化チタン粒子、単独の金属粒子、単独のリン酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子同士の結合体(金属粒子及びリン酸カルシウム粒子を含まない)、金属粒子同士の結合体(酸化チタン粒子及びリン酸カルシウム粒子を含まない)、リン酸カルシウム粒子同士の結合体(酸化チタン粒子及び金属粒子を含まない)、酸化チタン粒子と金属粒子との結合体(リン酸カルシウム粒子を含まない)、酸化チタン粒子とリン酸カルシウム粒子との結合体(金属粒子を含まない)、金属粒子とリン酸カルシウム粒子との結合体(酸化チタン粒子を含まない)等が挙げられる。
【0068】
複合粒子は、後述するように、鼻炎を予防又は治療する方法において使用することができる。したがって、本発明には、鼻炎を予防又は治療する方法において使用するための複合粒子も包含される。
【0069】
複合粒子は、後述するように、鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するために使用することができる。したがって、本発明には、鼻炎を予防又は治療するための医薬製剤を製造するための複合粒子の使用も包含される。
【0070】
医薬製剤
本発明の医薬製剤は、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤であり、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子と、1個以上の金属粒子とを含んでなる複合粒子を含有する。複合粒子に関しては、上記説明が適用される。
【0071】
本発明の医薬製剤は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内粘膜に投与されることにより、対象の鼻炎を予防又は治療することができる。鼻炎の予防には、対象において将来発生し得るくしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を予防することが含まれ、鼻炎の治療には、対象において既に発生しているくしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を改善又は抑制することが含まれる。
【0072】
本発明の医薬製剤が適用される鼻炎は、鼻粘膜に炎症が生じており、くしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を有する限り、特に限定されない。本発明の医薬製剤は、各種鼻炎に対して適用することができる。
【0073】
本発明の医薬製剤が適用される鼻炎としては、例えば、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎等が挙げられる。本発明の医薬製剤が適用される鼻炎は、好ましくは、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎等である。感染性鼻炎としては、例えば、急性鼻炎、慢性鼻炎等が挙げられる。過敏性非感染性鼻炎は、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎等の複合型鼻炎(鼻過敏症);味覚性鼻炎、冷気吸入性鼻炎、老人性鼻炎等の鼻漏型鼻炎;薬物性鼻炎、心因性鼻炎、妊娠性鼻炎、内分泌性鼻炎、寒冷性鼻炎等のうっ血型鼻炎;乾燥型鼻炎等が挙げられる。
【0074】
本発明の医薬製剤が適用される鼻炎は、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、さらに好ましくは、アレルギー性鼻炎又は非アレルギー性鼻炎であり、さらに一層好ましくは、アレルギー性鼻炎である。
【0075】
アレルギー性鼻炎は、好発時期から、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎とに分類することができる。本発明の医薬製剤が適用されるアレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎であってもよいし、季節性アレルギー性鼻炎であってもよい。本発明の医薬製剤は、予防又は治療が難しいと考えられてきたアレルギー性鼻炎、特に、ハウスダスト、ダニ、カビ等を原因とする通年性アレルギー性鼻炎に対して、優れた予防又は治療効果を発揮することができる。
【0076】
アレルギー性鼻炎は、通常、くしゃみ、水性鼻漏、鼻閉(鼻づまり)の症状のうちの2種以上、例えば、くしゃみと水性鼻漏、くしゃみと水性鼻漏と鼻閉を複合している複合型鼻炎(鼻過敏症)の1種である。アレルギー性鼻炎は、外部環境中の原因物質に対して体の免疫システムが反応することによって引き起こされる。アレルギー性鼻炎の原因物質としては、例えば、ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉、草、樹木、動物等が挙げられる。より詳しくは、アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜のI型アレルギー性疾患であり、原則的には発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を特徴とする。アレルギー性鼻炎は、I型アレルギー性疾患であるので、アレルギー性鼻炎患者は、アレルギー素因(アレルギーの既往、合併症、家族歴)を有する場合があり、血清特異的IgE抗体レベルの上昇、局所肥満細胞及び好酸球の増加、粘膜の非特異的過敏性亢進等の特徴を呈する場合がある。アレルギー性鼻炎のうち通年性アレルギー性鼻炎は、多くはハウスダスト又はダニが原因である場合が多く、季節性アレルギー性鼻炎は、花粉が原因である場合が多い。
【0077】
本発明の医薬製剤が適用される鼻炎は、物理性鼻炎、化学性鼻炎、放射線性鼻炎等の刺激性鼻炎;萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎等のその他の鼻炎であってもよい。
【0078】
本発明の医薬製剤が投与される対象は、鼻炎の予防又は治療を必要とする限り特に限定されないが、通常、鼻炎患者、好ましくは、アレルギー性鼻炎患者である。
【0079】
本発明の医薬製剤の投与量は、鼻炎の予防又は治療に有効な量である。鼻炎の予防又は治療に有効な量は、医薬製剤の剤形、鼻炎の程度、投与計画等に応じて適宜調整することができる。本発明の医薬製剤の1回あたりの投与量は、1回あたりに投与される複合粒子の量が、通常0.1〜10μg、好ましくは0.2〜5μg、さらに好ましくは0.4〜4μgとなるように調整される。本発明の医薬製剤の1日あたりの投与回数は、特に限定されないが、通常1〜5回、好ましくは1〜3回、さらに好ましくは1〜2回である。本発明の医薬製剤の投与間隔は、鼻炎の予防又は治療効果の持続期間等を考慮して適宜調整することができる。本発明の医薬製剤を、上記1回あたりの投与量及び上記1日あたりの投与回数で1日間、対象に投与した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、数時間〜数日間であり、本発明の医薬製剤を、上記1回あたりの投与量及び上記1日あたりの投与回数で1〜2週間、対象に投与した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、1週間〜2カ月である。
【0080】
本発明の医薬製剤には、有効成分である複合粒子に加えて、医薬上許容され得る添加剤を配合して製造することができる。このような添加剤としては、例えば、pH調整剤、保存剤、着香料、分散剤、湿潤剤、安定剤、防腐剤、懸濁剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0081】
pH調整剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。pH調整剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸等の無機酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、シュウ酸、乳酸、グルタル酸、サリチル酸、酒石酸等の有機酸、これら酸の塩等が挙げられる。pH調整剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
保存剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。保存剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸アルキルエステル等が挙げられる。保存剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
着香料は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。着香料の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。着香料としては、例えば、メントール、ローズ油、ユーカリ油、d−カンフル等が挙げられる。着香料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
分散剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。分散剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。分散剤としては、例えば、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
湿潤剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。湿潤剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。湿潤剤としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。湿潤剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
安定剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。安定剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。安定剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸等が挙げられる。安定剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
防腐剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。防腐剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、塩酸ベンザルコニウム、ソルビン酸等が挙げられる。防腐剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
懸濁剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。懸濁剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。懸濁剤としては、例えば、トラガント末、アラビアゴム末、ベントナイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。懸濁剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
界面活性剤は、外用剤に一般的に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。界面活性剤の配合量は、剤形、基剤成分等に応じて適宜調整することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル等が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
本発明の医薬製剤の剤形は、鼻腔内粘膜に投与可能である限り特に限定されず、例えば、点鼻剤、スプレー剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、リニメント剤、パップ剤、プラスター剤、パッチ剤、硬膏剤、ゲル剤、液剤、テープ剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。所望の剤形への製剤化は、日本薬局方の製剤総則等に記載される通常の方法に従って、各剤形に適した添加剤、基剤等を使用して行うことができる。貼付剤、テープ剤等の投与剤形において使用される基材としては、例えば、綿、スフ、麻、化学繊維等の織布;レーヨン、ポリエステル、ナイロン等の不織布;軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のプラスチックフィルム等が挙げられる。基材は、2以上の層からなる積層シートであってもよい。
【0091】
剤形が軟膏剤又はクリーム剤である場合、基剤としては、例えば、油脂性基剤又は乳剤性基剤を使用することができる。
【0092】
油脂性基剤としては、例えば、炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリコール類、植物油、動物油等が挙げられる。油脂性基剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
油脂性基剤として使用可能な炭化水素としては、例えば、炭素数12〜32の炭化水素、種々の炭化水素の混合物である流動パラフィン、分枝状パラフィン、固形パラフィン、白色ワセリン、黄色ワセリン、スクワレン、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0094】
油脂性基剤として使用可能な高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、セトステアリルアルコール等の炭素数12〜30の脂肪族1価アルコール等が挙げられる。
【0095】
油脂性基剤として使用可能な高級脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、エライジン酸、ブラシジン酸等の炭素数6〜32の飽和又は不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0096】
油脂性基剤として使用可能な高級脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、リグノセリン酸セリル、セロチン酸ラクセリル、ラクセル酸ラクセリル等の脂肪酸エステル;ラノリン、ミツロウ、クジラロウ、セラックロウ等の動物由来の天然ロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウ等の植物由来の天然ロウ等の炭素数10〜32の脂肪酸と炭素数14〜32の脂肪族1価アルコールとのエステル;グリセリルモノラウリレート、グリセリルモノミリスチレート、グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルジラウリレート、グリセリルジミリスチレート、グリセリルジステアレート、グリセリルトリラウリレート、グリセリルトリミリスチレート、グリセリルトリステアレート等の炭素数10〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステル又はそれらの水素添加物等が挙げられる。
【0097】
油脂性基剤として使用可能なグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0098】
油脂性基剤として使用可能な植物油としては、例えば、ツバキ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、ヤシ油、パーム油、マカデミアナッツ油、大豆油、茶実油、ゴマ油、ヘントウ油、サフラワー油、綿実油、テレピン油、これら植物油に水素添加した植物油脂類等が挙げられる。
【0099】
油脂性基剤として使用可能な動物油としては、例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン、ラノリン、動物油の誘導体等が挙げられる。
【0100】
乳剤性基剤としては、例えば、水中油型基剤、油中水型基剤、懸濁型基剤等が挙げられる。乳剤性基剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
水中油型基剤としては、界面活性剤の存在下又は非存在下で、ラノリン、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、ワセリン、シリコーン油、流動パラフィン、グリセリルモノステアレート、ポリエチレングリコール等の成分を水相中に乳化、分散せしめた基剤等が挙げられる。水中油型基剤は、クリーム等を調製する際に好適に使用することができる。
【0102】
油中水型基剤としては、ワセリン、高級脂肪族アルコール、流動パラフィン等の成分に、非イオン性界面活性剤の存在下で、水を加え、乳化、分散せしめた基剤等が挙げられる。
【0103】
水中油型基剤及び油中水型基剤は、水を含む剤形、例えば、水を含有する液剤、ローション剤、パップ剤、軟膏剤等に好適に使用することができる。
【0104】
懸濁性基剤としては、水にデンプン、グリセリン、高粘度カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の懸濁化剤を加えてゲル状にした水性基剤等が挙げられる。
【0105】
本発明の医薬製剤は、一般に採用されている外用剤の調製方法に従って製造することができる。例えば、軟膏剤又はクリーム剤は、それぞれの剤形に応じて基剤の原料を混練、乳化又は懸濁せしめて基剤を調製した後、有効成分及び各種添加剤を加えて混合することにより製造することができる。混合に際しては、スクリューミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル等の一般に使用されている混合機を使用することができる。
【0106】
剤形がローション剤である場合には、懸濁型、乳剤形及び溶液型のいずれのタイプであってもよい。
【0107】
懸濁型ローションの基剤としては、アラビアゴム、トラガントゴム等のゴム類、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン等のセルロース類、ベントナイト、ビーガムHV等の粘土類の懸濁剤と水の混合物等が挙げられる。懸濁型ローションの基剤は、通常、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0108】
乳剤形ローションの基剤としては、水とステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール等の油性物質を乳化させた基剤等が挙げられる。乳剤形ローションの基剤は、通常、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0109】
溶液型ローションの基剤としては、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等のアルコール等が挙げられる。溶液型ローションの基剤は、通常、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0110】
ローション剤は、例えば、精製水に種々の基剤成分を添加して混合、攪拌した後、有効成分及び添加剤を加えて混合し、所望に応じて濾過を行なうことにより、製造することができる。
【0111】
剤形がリニメント剤の場合には、その基剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、ヘントウ油、綿実油、テレピン油等の植物油類、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、それらと水との混合物等が挙げられる。リニメント剤の基剤は、通常、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0112】
リニメント剤は、基剤に有効成分を溶解し、更に所望の成分を加えて混合することにより、製造することができる。
【0113】
剤形がパップ剤の場合には、その基剤として、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物、該水溶性高分子化合物をミョウバンなどの多価金属塩によって架橋せしめた基剤、該水溶性高分子化合物に放射線照射のような物理的処理を施し架橋せしめた基剤等の架橋体等が挙げられる。パップ剤の基剤は、通常、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0114】
パップ剤は、有効成分、基剤及び所望の添加物を混合し、加熱後冷却することにより、製造することができる。
【0115】
プラスター剤、パッチ剤及び硬膏剤の場合には、不織布等の支持体、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリビニルアルキルエーテル、ポリウレタン、ジメチルポリシロキサン、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、イソプレンゴム等の弾性体、亜鉛華、酸化チタン、シリカ等の充填剤、弾性体との相溶性がよい、テルペン樹脂、ロジン又はそのエステル、フェノール樹脂等の粘着付与剤、酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル等の剥離処理剤、流動パラフィン、プロセスオイル等の軟化剤、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の老化防止剤等が挙げられる。これらの成分は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0116】
プラスター剤、パッチ剤、硬膏剤等は、溶液法や熱圧法などの常法により製造することができる。具体的には、例えば、熱圧式によるときは、有効成分及び各成分をロール機などで均一に混練し、熱及び圧力を加えたカレンダーを使用して離型紙上に均一の厚さとなるよう塗布して薬物含有層を形成し、これを支持体表面へ積層し、密着させて製造することができる。
【0117】
ゲル剤、液剤、テープ剤等の場合にも、その基剤は、通常の外用剤に使用されているものであればよく、特に限定されない。
【0118】
第1の医療器具
本発明の第1の医療器具は、鼻炎を予防又は治療するための医療器具である。
【0119】
本発明の第1の医療器具は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻孔を覆う通気性マスク部と、前記通気性マスク部に設けられた耳掛け部と、前記通気性マスク部に脱離可能に付着した複合粒子とを備え、前記複合粒子は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。
【0120】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の医療器具の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の医薬器具の一実施形態を示す一部破断図である。
【0121】
図1に示すように、本実施形態に係る医療器具10は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻孔を覆う通気性マスク部11と、通気性マスク部11の両側に設けられた耳掛け部12a,12bと、通気性マスク部11に脱離可能に付着した複合粒子13とを備える。
【0122】
医療器具10が対象に装着される際、耳掛け部12aが対象の一方の耳に、耳掛け部12bが対象の他方の耳に掛けられ、対象の顔のうち少なくとも鼻孔が通気性マスク部11で覆われる。医療器具10が対象に装着される際、対象の鼻孔に加えて対象の口が通気性マスク部11で覆われてもよい。
【0123】
図1に示すように、医療器具10の形態は、平型マスクの形態であるが、医療器具10の形態は、平型マスクの形態に限定されるものではなく、プリーツ型マスク、立体型マスク等、その他のマスクの形態であってもよい。
【0124】
通気性マスク部11は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻孔を覆うマスク本体であり、通気性を有する。通気性マスク部11の通気性は、医療器具10を装着した対象が呼吸を行うことができる範囲で適宜調整することができる。通気性マスク部11の通気度は、例えば、5〜150cm/cm・sec、好ましくは、30〜100cm/cm・secである。通気度の測定は、例えば、JIS L10968.27.1A法(フラジール形法)に準拠して実施される。
【0125】
通気性マスク部11は、重ね合わされた複数の通気性シート部材により形成されている。複数の通気性シート部材の端縁部は、熱溶着、超音波溶着、接着剤等の公知の接合方法により接合されている。通気性マスク部11は、順に重ね合わされた第1の通気性シート部材111、第2の通気性シート部材112及び第3の通気性シート部材113を備える。対象に医療器具10を装着する際、第1の通気性シート部材111は、対象の顔側に配置され、第3の通気性シート部材113は、外気側に配置される。通気性マスク部11を構成する通気性シート部材の数は適宜変更可能である。例えば、第1の通気性シート部材111と第2の通気性シート部材112との間に、1又は2以上の通気性シート部材を設けてもよい。また、第2の通気性シート部材112と第3の通気性シート部材113との間に、1又は2以上の通気性シート部材を設けてもよい。
【0126】
それぞれの通気性シート部材は、例えば、不織布、織布、編物等により形成することができる。それぞれの通気性シート部材を構成する繊維としては、例えば、合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維等が挙げられる。合成繊維は、芯鞘型繊維等の複合繊維であってもよい。再生繊維としては、例えば、レーヨン、アセテート等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、コットン等が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。織布としては、例えば、ガーゼ等が挙げられる。不織布は、2層以上を有する多層構造であってもよい。このような多層構造としては、例えば、SS構造(スパンボンド−スパンボンドの2層構造)、SMS(スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドの3層構造)等が挙げられる。
【0127】
それぞれの通気性シート部材の目付は、市販の家庭用又は医療用マスクで使用される通気性シート部材と同程度に調整することができる。第1の通気性シート部材111及び第3の通気性シート部材113の目付は、例えば、通気性の観点から調整することができる。第2の通気性シート部材112の目付は、例えば、フィルター性の観点から調整することができる。第1の通気性シート部材111と第2の通気性シート部材112との間に、1又は2以上の通気性シート部材を設ける場合、あるいは、第2の通気性シート部材112と第3の通気性シート部材113との間に、1又は2以上の通気性シート部材を設ける場合、これらの通気性シート部材の目付は、例えば、通気性又はフィルター性の観点から調整することができる。
【0128】
耳掛け部12a,12bは、例えば、紐状部材で形成される。紐状部材は、伸縮性を有することが好ましい。紐状部材は、例えば、伸縮性を有するゴム製又はプラスチック製紐状部材等である。耳掛け部12a,12bの両端部は、例えば、縫い付け等の接合方法により、通気性マスク部11に固定されており、これにより、対象の耳に掛けることができる輪が形成されている。
【0129】
複合粒子13は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。複合粒子に関しては、上記説明が適用される。
【0130】
複合粒子13は、医療器具10を装着した対象の呼吸により脱離可能となるように、通気性マスク部11に付着している。したがって、医療器具10を装着した対象が呼吸を行うと、通気性マスク部11に付着した多数の複合粒子13のうち一部が脱離し、対象の鼻腔内粘膜に投与される。すなわち、医療器具10を装着した対象の呼吸を利用して、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子13を投与することができ、これにより、対象の鼻炎を予防又は治療することができる。
【0131】
医療器具10が適用される対象は、鼻炎の予防又は治療を必要とする限り特に限定されないが、通常、鼻炎患者、好ましくは、アレルギー性鼻炎患者である。
【0132】
医療器具10が適用される鼻炎は、鼻粘膜に炎症が生じており、くしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を有する限り、特に制限されない。医療器具10が適用される鼻炎としては、例えば、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎等が挙げられる。医療器具10が適用される鼻炎は、好ましくは、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎等である。医療器具10が適用される鼻炎は、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、さらに好ましくは、アレルギー性鼻炎又は非アレルギー性鼻炎であり、さらに一層好ましくは、アレルギー性鼻炎である。アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎であってもよいし、季節性アレルギー性鼻炎であってもよい。医療器具10は、予防又は治療が難しいと考えられてきたアレルギー性鼻炎、特に、ハウスダスト、ダニ、カビ等を原因とする通年性アレルギー性鼻炎に対して、優れた予防又は治療効果を発揮することができる。
【0133】
本実施形態において、複合粒子13は、通気性マスク部11を構成する複数のシート部材のうち、第2の通気性シート部材112に脱離可能に付着している。複合粒子13が脱離可能に付着するシート部材は、第2の通気性シート部材112に限定されるものではなく、その他の通気性シート部材であってもよい。また、複合粒子13は、2以上の通気性シート部材に脱離可能に付着していてもよい。
【0134】
通気性シート部材の単位面積あたりの複合粒子の合計付着量は、特に限定されないが、合計付着量の下限値は、通常1g/m、好ましくは2g/m、さらに好ましくは3g/m、さらに一層好ましくは4g/m、さらに一層好ましくは5g/mであり、合計付着量の上限値は、通常20g/m、好ましくは15g/m、さらに好ましくは10g/mである。
【0135】
複合粒子13は、例えば、バインダ樹脂を介して通気性シート部材に脱離可能に付着させることができる。例えば、複合粒子13及びバインダ樹脂を含有する混合液を通気性シート部材に供給した後、あるいは、複合粒子13及びバインダ樹脂を含有する混合液中に通気性シート部材を浸漬した後、通気性シート部材を乾燥することにより、複合粒子13がバインダ樹脂を介して脱離可能に付着した通気性シート部材を製造することができる。また、複合粒子13及びバインダ樹脂を含有する混合液を通気性シートの原反に供給した後、あるいは、複合粒子13及びバインダ樹脂を含有する混合液中に通気性シートの原反を浸漬した後、通気性シートの原反を乾燥し、次いで、通気性シートの原反から通気性シート部材を切り出すことにより、複合粒子13がバインダ樹脂を介して脱離可能に付着した通気性シート部材を製造することができる。
【0136】
混合液に含有されるバインダ樹脂の量は、複合粒子100質量部に対して、好ましくは20〜90質量部、さらに好ましくは30〜85質量部、さらに一層好ましくは40〜80質量部である。通気性シート部材に含有されるバインダ樹脂の量も同様である。
【0137】
通気性シート部材の単位面積あたりの複合粒子及びバインダ樹脂の合計付着量は、特に限定されないが、合計付着量の下限値は、通常2g/m、好ましくは3g/m、さらに好ましくは4g/m、さらに一層好ましくは5g/m、さらに一層好ましくは6g/mであり、合計付着量の上限値は、通常30g/m、好ましくは25g/m、さらに好ましくは20g/m、さらに一層好ましくは15g/mである。
【0138】
バインダ樹脂としては、接着性を有する公知の樹脂を1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、シェラック、ダンマル、エレミー、サンダラック等の天然糊料あるいは天然樹脂類;メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセテート等の半合成糊料又は半合成樹脂類;イソフタル酸系、テレフタル酸系、ビスフェノール系、ビニルエステル系のポリエステル樹脂;エチレンーアクリル酸、エチレンーアクリル酸エステル、アクリルエステルービニル、メタクリル酸エステルービニル等のアクリル系共重合樹脂;トリレンジシソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート等のイソシアネート誘導体又はイソシアヌレート誘導体と、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート誘導体又はイソシアヌレート誘導体と、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルロイルオール、フェノーリックポリオール等のポリオールとの反応により形成されるウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルエステル、ポリスチレン、ポリビニルアセタール等のアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セルロースアセテート等のセルロース系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂等の合成糊料あるいは合成樹脂類;ポリアルキルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキルシリコネート、ポリアルカリアルキルシリコネート、ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーン樹脂をはじめ、エポキシ変性、アミノ変性、ウレタン変性、アルキド変性、アクリル変性等の変性体、共重合体等を含むシリコーン樹脂;あるいは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の重合体、これらのモノマーと他種モノマーとの共重合体等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらのうち、接着性等の観点から、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、ウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0139】
バインダ樹脂に代えて又はバインダ樹脂と組み合わせて、無機バインダを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。無機バインダとしては、例えば、アルキルシリケート、ハロゲン化ケイ素、これらの部分加水分解物等の加水分解性ケイ素化合物を分解して得られる生成物、有機ポリシロキサン化合物とその重縮合物、シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ素化合物、リン酸亜鉛等のリン酸塩、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、重リン酸塩、セメント、石膏、石灰、ほうろう用フリット等が挙げられる。
【0140】
医療器具10の装着時間は、鼻炎の予防又は治療に有効な時間である。鼻炎の予防又は治療に有効な装着時間は、通気性マスク部に脱離可能に付着した複合粒子の量、鼻炎の程度、投与計画等に応じて適宜調整することができる。1回あたりの医療器具10の装着時間は、通常30〜120分間、好ましくは30〜90分間、さらに好ましくは30〜60分間である。1日あたりの医療器具10の装着回数は、特に限定されないが、通常1〜10回、好ましくは2〜8回、さらに好ましくは3〜6回である。医療器具10の装着間隔は、鼻炎の予防又は治療効果の持続期間等を考慮して適宜調整することができる。医療器具10を、上記1回あたりの装着時間及び上記1日あたりの装着回数で1日間、対象の顔に装着した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、数時間〜数日間であり、医療器具10を、上記1回あたりの装着時間及び上記1日あたりの装着回数で1〜2週間、対象の顔に装着した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、1週間〜2カ月である。
【0141】
第2の医療器具
本発明の第2の医療器具は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内に挿入して使用される、鼻炎を予防又は治療するための医療器具である。
【0142】
本発明の第2の医薬器具は、対象の鼻腔内に挿入されるシート部と、前記シート部に付着した複合粒子とを備え、前記複合粒子は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。
【0143】
以下、図面に基づいて、本発明の第2の医療器具の実施形態を説明する。図2は、本発明の第2の医療器具の一実施形態を示す斜視図である。
【0144】
図2に示すように、本実施形態に係る医療器具20は、対象の鼻腔内に挿入されるシート部21と、シート部21に付着した複合粒子22とを備える。
【0145】
医療器具20は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内に挿入して使用される。医療器具20を対象の鼻腔内に挿入する際、挿入が容易となるように医療器具20を変形させてもよい。例えば、医療器具20をねじり、紙縒り状に変形させた上で、対象の鼻腔内に挿入することができる。シート部21のうち複合粒子22が付着した部分が対象の鼻腔内に挿入される限り、医療器具20の全体が対象の鼻腔内に挿入されてもよいし、医療器具20の一部が対象の鼻腔内に挿入されてもよいが、鼻腔内からの除去の容易性の観点から、医療器具20の一部が対象の鼻腔内に挿入され、残部が対象の鼻腔外に保持されることが好ましい。医療器具20は、鼻腔内後方まで(下鼻点からの距離が例えば1〜10cm、好ましくは1〜8cmの位置まで)挿入されることが好ましい。また、医療器具20は、シート部21のうち複合粒子22が付着した部分が対象の鼻腔内粘膜に接触するように、対象の鼻腔内に挿入されることが好ましい。
【0146】
シート部21は、対象の鼻腔内に挿入可能なサイズを有する。シート部21の長さは、通常50〜300mm、好ましくは100〜200mmであり、シート部21の幅は、通常5〜40mm、好ましくは10〜20mmである。医療器具20が対象の鼻腔内に挿入される際、例えば、シート部21の一部(例えば、長さが1〜5cmの部分)が対象の鼻腔内に挿入されずに鼻腔外に保持され、シート部21の残部が対象の鼻腔内に挿入される。シート部21は、例えば、短冊状である。シート部21は、通気性を有しなくてもよいが、通気性を有することが好ましい。シート部21の通気性は、医療器具20を挿入した対象が呼吸を行うことができる範囲で適宜調整することができる。シート部21の通気度は、例えば、5〜150cm/cm・sec、好ましくは、30〜100cm/cm・secである。通気度の測定は、例えば、JIS L10968.27.1A法(フラジール形法)に準拠して実施される。
【0147】
シート部21は、例えば、不織布、織布、編物、通気孔を有するプラスチックフィルム等により形成することができる。シート部21を構成する繊維としては、例えば、合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維等が挙げられる。合成繊維は、芯鞘型繊維等の複合繊維であってもよい。再生繊維としては、例えば、レーヨン、アセテート等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、コットン等が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。織布としては、例えば、ガーゼ等が挙げられる。不織布は、2層以上を有する多層構造であってもよい。このような多層構造としては、例えば、SS構造(スパンボンド−スパンボンドの2層構造)、SMS(スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドの3層構造)等が挙げられる。
【0148】
複合粒子22は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。複合粒子に関しては、上記説明が適用される。
【0149】
複合粒子22は、医療器具20を鼻腔内に挿入した対象の呼吸により脱離可能となるように、シート部21に付着していてもよいし、医療器具20を鼻腔内に挿入した対象の呼吸により脱離しないように、シート部21に付着していてもよい。
【0150】
医療器具20が対象の鼻腔内に挿入されると、シート部21に付着した複合粒子22は、対象の鼻腔内粘膜に接触又は付着する。したがって、対象の呼吸を利用しなくも、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子22を投与することができ、これにより、対象の鼻炎を予防又は治療することができる。
【0151】
医療器具20が適用される対象は、鼻炎の予防又は治療を必要とする限り特に限定されないが、通常、鼻炎患者、好ましくは、アレルギー性鼻炎患者である。
【0152】
医療器具20が適用される鼻炎は、鼻粘膜に炎症が生じており、くしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を有する限り、特に制限されない。医療器具20が適用される鼻炎としては、例えば、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎等が挙げられる。医療器具20が適用される鼻炎は、好ましくは、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎等である。医療器具20が適用される鼻炎は、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、さらに好ましくは、アレルギー性鼻炎又は非アレルギー性鼻炎であり、さらに一層好ましくは、アレルギー性鼻炎である。アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎であってもよいし、季節性アレルギー性鼻炎であってもよい。医療器具20は、予防又は治療が難しいと考えられてきたアレルギー性鼻炎、特に、ハウスダスト、ダニ、カビ等を原因とする通年性アレルギー性鼻炎に対して、優れた予防又は治療効果を発揮することができる。
【0153】
複合粒子22が、医療器具20を鼻腔内に挿入した対象の呼吸により脱離可能となるように、シート部21に付着している場合、医療器具20を鼻腔内に挿入した対象が呼吸を行うと、シート部21に付着している多数の複合粒子22のうち一部が脱離し、対象の鼻腔内粘膜に付着する。したがって、医療器具20を鼻腔内に挿入した対象の呼吸を利用して、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子22を投与することができ、これにより、対象の鼻炎を予防又は治療することができる。
【0154】
シート部21の単位面積あたりの複合粒子の合計付着量は、特に限定されないが、合計付着量の下限値は、通常1g/m、好ましくは2g/m、さらに好ましくは3g/m、さらに一層好ましくは4g/m、さらに一層好ましくは5g/mであり、合計付着量の上限値は、通常20g/m、好ましくは15g/m、さらに好ましくは10g/mである。
【0155】
複合粒子22は、例えば、バインダ樹脂を介してシート部21に付着させることができる。例えば、複合粒子22及びバインダ樹脂を含有する混合液をシート部材に供給した後、あるいは、複合粒子22及びバインダ樹脂を含有する混合液中にシート部材を浸漬した後、シート部材を乾燥することにより、複合粒子22がバインダ樹脂を介して付着したシート部21を製造することができる。また、複合粒子22及びバインダ樹脂を含有する混合液をシートの原反に供給した後、あるいは、複合粒子22及びバインダ樹脂を含有する混合液中にシートの原反を浸漬した後、シートの原反を乾燥し、次いで、シートの原反からシート部材を切り出すことにより、複合粒子22がバインダ樹脂を介して付着したシート部21を製造することができる。
【0156】
混合液に含有されるバインダ樹脂の量は、複合粒子100質量部に対して、好ましくは20〜90質量部、さらに好ましくは30〜85質量部、さらに一層好ましくは40〜80質量部である。シート部21に含有されるバインダ樹脂の量も同様である。
【0157】
シート部21の単位面積あたりの複合粒子及びバインダ樹脂の合計付着量は、特に限定されないが、合計付着量の下限値は、通常2g/m、好ましくは3g/m、さらに好ましくは4g/m、さらに一層好ましくは5g/m、さらに一層好ましくは6g/mであり、合計付着量の上限値は、通常30g/m、好ましくは25g/m、さらに好ましくは20g/m、さらに一層好ましくは15g/mである。
【0158】
バインダ樹脂としては、接着性を有する公知の樹脂を1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂の具体例は、第1の医療器具に関して記載した具体例と同様である。
【0159】
バインダ樹脂に代えて又はバインダ樹脂と組み合わせて、無機バインダを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。無機バインダの具体例は、第1の医療器具に関して記載した具体例と同様である。
【0160】
医療器具20の鼻腔内挿入時間は、鼻炎の予防又は治療に有効な時間である。鼻炎の予防又は治療に有効な挿入時間は、シート部21に付着した複合粒子22の量、鼻炎の程度、投与計画等に応じて適宜調整することができる。1回あたりの医療器具20の鼻腔内挿入時間は、通常10〜60分間、好ましくは20〜60分間、さらに好ましくは30〜45分間である。1日あたりの医療器具20の鼻腔内挿入回数は、特に限定されないが、通常1〜3回、好ましくは1〜2回、さらに好ましくは1回である。医療器具20の鼻腔内挿入間隔は、鼻炎の予防又は治療効果の持続期間等を考慮して適宜調整することができる。医療器具20を、上記1回あたりの挿入時間及び上記1日あたりの挿入回数で1日間、対象の鼻腔内に挿入した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、数時間〜数日間であり、医療器具20を、上記1回あたりの挿入時間及び上記1日あたりの挿入回数で1〜2週間、対象の鼻腔内に挿入した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、1週間〜2カ月である。
【0161】
方法
本発明の方法は、鼻炎を予防又は治療する方法である。
【0162】
本発明の方法は、鼻炎の予防又は治療が必要な対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与する工程を含み、前記複合粒子は、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる。複合粒子に関しては、上記説明が適用される。
【0163】
本発明の方法が適用される対象は、鼻炎の予防又は治療を必要とする限り特に限定されないが、通常、鼻炎患者、好ましくは、アレルギー性鼻炎患者である。
【0164】
本発明の方法が適用される鼻炎は、鼻粘膜に炎症が生じており、くしゃみ、鼻汁、鼻閉等の症状を有する限り、特に限定されない。本発明の方法が適用される鼻炎としては、例えば、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎、刺激性鼻炎、萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎等が挙げられる。本発明の方法が適用される鼻炎は、好ましくは、感染性鼻炎、過敏性非感染性鼻炎等である。本発明の方法が適用される鼻炎は、好ましくは、過敏性非感染性鼻炎、さらに好ましくは、アレルギー性鼻炎又は非アレルギー性鼻炎であり、さらに一層好ましくは、アレルギー性鼻炎である。アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎であってもよいし、季節性アレルギー性鼻炎であってもよい。本発明の方法は、予防又は治療が難しいと考えられてきたアレルギー性鼻炎、特に、ハウスダスト、ダニ、カビ等を原因とする通年性アレルギー性鼻炎に対して、優れた予防又は治療効果を発揮することができる。
【0165】
複合粒子の投与量は、鼻炎の予防又は治療に有効な量である。鼻炎の予防又は治療に有効な量は、複合粒子の投与剤形、鼻炎の程度、投与計画等に応じて適宜調整することができる。1回あたりの複合粒子の投与量は、通常0.1〜10μg、好ましくは0.2〜5μg、さらに好ましくは0.4〜4μgである。1日あたりの複合粒子の投与回数は、特に限定されないが、通常1〜5回、好ましくは1〜3回、さらに好ましくは1〜2回である。複合粒子の投与間隔は、鼻炎の予防又は治療効果の持続期間等を考慮して適宜調整することができる。複合粒子を、上記1回あたりの投与量及び上記1日あたりの投与回数で1日間、対象に投与した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、数時間〜数日間であり、複合粒子を、上記1回あたりの投与量及び上記1日あたりの投与回数で1〜2週間、対象に投与した場合に見込まれる鼻炎の予防又は治療効果の持続期間は、対象の個体差はあるものの、通常、1週間〜2カ月である。
【0166】
本発明の方法の一実施形態では、投与工程において、本発明の医薬製剤を対象の鼻腔内粘膜に投与することにより、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与する。
【0167】
本発明の方法の一実施形態では、投与工程において、本発明の第1の医療器具を対象の顔に装着することにより、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与する。
【0168】
本発明の方法の一実施形態では、投与工程において、本発明の第2の医療器具を対象の鼻腔内に挿入することにより、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与する。
【実施例】
【0169】
以下、製造例及び試験例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、これらの製造例及び試験例によって限定されるものではない。
【0170】
製造例1:複合粒子の製造
本製造例では、酸化チタン粉末、銀粉末及びハイドロキシアパタイト粉末を原料粉末として使用し、1個以上の酸化チタン粒子、1個以上の銀粒子及び1個以上のハイドロキシアパタイト粒子を含んでなる複合粒子を製造した。
【0171】
本製造例では、2種類の複合粒子M1及びM2を製造した。複合粒子M1及びM2は、酸化チタン、銀及びハイドロキシアパタイトの含有比の点で異なる。複合粒子M1及びM2は、株式会社信州セラミックスが製造及び販売する「アースプラス(earthplus)」(商標)と同様にして製造した。複合粒子M1及びM2の製造は、株式会社信州セラミックスに委託した。
【0172】
表1に示す原料粉末を準備した。酸化チタン粉末の粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)を使用して測定された値であり、銀粉末の粒子径は、比表面積に基づいて算出された値であり、ハイドロキシアパタイト粉末の粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定された値である。銀粉末は使用まで冷凍保存しておいたので、銀粉末に含まれる銀粒子の凝集は抑制されていた。
【0173】
【表1】
【0174】
市販の湿式ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製「スターミルLME」)を使用して、酸化チタン粉末、銀粉末、ハイドロキシアパタイト粉末及びポリカルボン酸系分散剤を水中で混合することにより、酸化チタン粉末に含まれる1個以上の酸化チタン粒子と、銀粉末に含まれる1個以上の銀粒子と、ハイドロキシアパタイト粉末に含まれる1個以上のハイドロキシアパタイト粒子とを複合化し、複合粒子の懸濁液(スラリー)を製造した。使用した湿式ビーズミルは、原料粉末に含まれる酸化チタン粒子、銀粒子及びハイドロキシアパタイト粒子を分散させながら微粉砕し、ナノ粒子又はサブミクロン粒子まで微粒子化することができるとともに、微粒子化した粒子を複合化することができる。
【0175】
湿式ビーズミルを使用した粒子複合化の条件は、次の通りである。
原料粉末の合計添加量:4kg以上
シリンダー容積:3.3L
ビーズ:ジルコニア製ビーズ(直径0.5mm、質量0.37mg)
液の流量:2L/分
シリンダー内の羽根の周速:540m/分
液温:35〜45℃
原料粉末1kgあたりの混合時間:30〜40分(約36分)
【0176】
酸化チタン粉末、銀粉末及びハイドロキシアパタイト粉末の合計配合量は、水65質量部に対して、35質量部に調整した。ポリカルボン酸系分散剤の配合量は、酸化チタン粉末、銀粉末及びハイドロキシアパタイト粉末の合計配合量35質量部に対して、0.5質量部に調整した。
【0177】
複合粒子M1の製造では、酸化チタン粉末の配合量を、銀粉末1質量部に対して約160質量部(155〜165質量部)に調整し、ハイドロキシアパタイト粉末の配合量を、銀粉末1質量部に対して約40質量部(39〜41質量部)に調整した。
【0178】
複合粒子M2の製造では、酸化チタン粉末の配合量を、銀粉末1質量部に対して約30質量部(29〜31質量部)に調整し、ハイドロキシアパタイト粉末の配合量を、銀粉末1質量部に対して約3質量部(2.5〜3.5質量部)に調整した。
【0179】
複合粒子の懸濁液(スラリー)を乾燥することにより、複合粒子M1及びM2を製造した。動的光散乱法により測定された複合粒子M1及びM2の粒子径は、200〜500nmであった。動的光散乱法により体積基準で測定された複合粒子M1及びM2のメディアン径(d50)は、約300nmであった。動的光散乱法による粒子径は、市販の動的光散乱式粒子径分布測定装置、具体的には、動的光散乱式ナノトラック粒子径分布測定装置「UPA−EX150」(日機装株式会社製)を使用して測定した。
【0180】
製造例2:複合粒子付着不織布の製造
製造例1で得られた複合粒子M1の懸濁液(スラリー)にバインダ樹脂を加えて混合液を調製した後、ポリエステル製スパンポンド不織布を混合液に浸漬し、不織布に混合液を含浸させた。浸漬後、混合液から不織布を取り出し、ローラーでプレスして余剰の混合液を絞り出した。プレス後、不織布を約130℃で約1分間乾燥して、複合粒子付着不織布N1を製造した。バインダ樹脂としては、ウレタン系樹脂(CNO/NHCOOC)を使用した。
【0181】
混合液中の複合粒子M1及びバインダ樹脂の濃度を調整することにより、複合粒子付着不織布N1の単位面積あたりの複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)を4g/m、6g/m、8g/m又は10g/mに調整した。
【0182】
4g/mの内訳は、酸化チタン2.27g/m、ハイドロキシアパタイト0.571g/m、銀0.014g/m、バインダ樹脂1.14g/mであった。
【0183】
6g/mの内訳は、酸化チタン3.41g/m、ハイドロキシアパタイト0.857g/m、銀0.021g/m、バインダ樹脂1.71g/mであった。
【0184】
8g/mの内訳は、酸化チタン4.54g/m、ハイドロキシアパタイト1.143g/m、銀0.029g/m、バインダ樹脂2.29g/mであった。
【0185】
10g/mの内訳は、酸化チタン5.68g/m、ハイドロキシアパタイト1.428g/m、銀0.036g/m、バインダ樹脂2.86g/mであった。
【0186】
複合粒子M1の懸濁液に代えて複合粒子M2の懸濁液を使用した点を除き、上記と同様にして、複合粒子付着不織布N2を製造した。
【0187】
混合液中の複合粒子M2及びバインダ樹脂の濃度を調整することにより、複合粒子付着不織布N2の単位面積あたりの複合粒子M2及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)を13.5g/mに調整した。
【0188】
13.5g/mの内訳は、酸化チタン6.525g/m、ハイドロキシアパタイト0.750g/m、銀0.225g/m、バインダ樹脂6.00g/mであった。
【0189】
複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が4g/mである複合粒子付着不織布N1を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡観察結果を図3〜5に示す。図3は、500倍での観察結果、図4は、5000倍での観察結果、図5は、20000倍での観察結果を示す。図3図5に示すように、複合粒子M1が不織布に付着していることが確認された。なお、対照として、複合粒子が付着していない不織布の電子顕微鏡観察結果を図6及び図7に示す。図6は、500倍での観察結果、図7は、1000倍での観察結果を示す。
【0190】
製造例3:複合粒子付着シートの製造
製造例2で製造された複合粒子付着不織布を切断して、幅1cm×長さ10cmの短冊状の複合粒子付着シートを製造した。複合粒子付着不織布としては、複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が4g/mである複合粒子付着不織布N1を使用した。
【0191】
製造例4:複合粒子付着マスクの製造
外気側から順に、ポリプロピレンスパンボンド不織布、ポリプロピレンメルトブロー不織布、複合粒子付着不織布及びポリプロピレンスパンボンド不織布を順に積層し、複合粒子付着マスクを製造した。複合粒子付着不織布としては、複合粒子M2及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が13.5g/mである複合粒子付着不織布N2を使用した。
【0192】
製造例5:複合粒子含有軟膏の製造
医療用ワセリン(健栄製薬株式会社製の日本薬局方白色ワセリン)及び複合粒子M1を混合し、複合粒子M1を1重量%含有する軟膏を製造した。
【0193】
試験例1〜6
試験例1〜6では、通年性のアレルギー性鼻炎に罹患している6名の患者(男性2名及び女性4名)を被験者とした(表2参照)。6名の被験者は全員、掃除及び布団の上げ下げ時にほぼ毎回、アレルギー性鼻炎の主な症状であるくしゃみ、鼻汁及び鼻閉(以下「3主徴」という)が生じる。
【0194】
【表2】
【0195】
各被験者の既往歴を以下に示す。
[被験者No.1]
17年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。今まで、アレルギー性鼻炎用の標準的な薬剤を多数使用したが、どれも満足のいく効果はなかった。使用薬剤は、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、血管収縮剤、鼻腔内ステロイド噴霧薬、ステロイド内服薬、各種漢方薬等であった。これらの薬剤は、効果も持続性も弱く、症状を多少緩和する程度であった。
【0196】
[被験者No.2]
16年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。今まで、アレルギー性鼻炎用の標準的な薬剤を多数使用したが、どれも満足のいく効果はなかった。
【0197】
[被験者No.3]
16年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。喘息及び食物アレルギーにも罹患している。
【0198】
[被験者No.4]
40年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。今まで、アレルギー性鼻炎用の標準的な薬剤を多数使用したが、どれも満足のいく効果はなかった。
【0199】
[被験者No.5]
19年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。今まで、アレルギー性鼻炎用の標準的な薬剤を多数使用したが、どれも満足のいく効果はなかった。
【0200】
[被験者No.6]
19年前より、通年性のアレルギー性鼻炎を発症した。今まで、アレルギー性鼻炎用の標準的な薬剤を多数使用したが、どれも満足のいく効果はなかった。
【0201】
試験例1:複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎予防効果
本試験例では、製造例4で製造された複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎予防効果を評価した。
各被験者に対して、以下の試験を行った。
【0202】
[試験A−1]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者に、いずれのマスクも装着させなかった。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、いずれのマスクも装着させずに、掃除を開始させ、掃除開始60分後、掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0203】
[試験B−1]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者に、通常の医療用マスク(サージカルマスク)を装着させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、通常の医療用マスクを装着させた状態で、掃除を開始させ、掃除開始60分後、掃除を終了させた。掃除終了時にマスクを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0204】
[試験C−1]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者に、複合粒子付着マスクを装着させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、複合粒子付着マスクを装着させた状態で、掃除を開始させ、掃除開始60分後、掃除を終了させた。掃除終了時にマスクを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0205】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−1、試験B−1及び試験C−1を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、掃除機による8畳程度の寝室の掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を以下の通り変更して行った。
鼻アレルギー診療ガイドラインの評価基準を表3に示す。
【0206】
【表3】
【0207】
本試験では、掃除終了〜掃除終了12時間後の12時間における3主徴を評価するので、鼻アレルギー診療ガイドラインの評価基準を、表4に示すように変更した。
【0208】
【表4】
【0209】
試験A−1、試験B−1及び試験C−1の結果を表5に示す。
【0210】
【表5】
【0211】
複合粒子付着マスクが使用された試験C−1では、いずれのマスクも使用されなかった試験A−1及び通常の医療用マスクが使用された試験B−1と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の出現が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着マスクを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子付着マスクは、アレルギー性鼻炎予防効果を有することが判明した。
【0212】
各被験者の呼吸によって複合粒子付着マスクから脱離し、鼻腔内に吸入されて鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎予防効果が発揮されると考えられる。
【0213】
但し、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着マスクを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎予防効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0214】
複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎予防効果には、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0215】
試験例2:複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎治療効果
本試験例では、製造例4で製造された複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎治療効果を評価した。
各被験者について、以下の試験を行った。
【0216】
[試験A−2]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、いずれのマスクも装着させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現後も掃除を継続させ、3主徴出現60分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0217】
[試験B−2]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、いずれのマスクも装着させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現後も掃除を継続させ、3主徴出現10分後に通常の医療用マスク(サージカルマスク)を装着させ、3主徴出現60分後に掃除を終了させた。掃除終了時にマスクを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0218】
[試験C−2]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、いずれのマスクも装着させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現も掃除を継続させ、3主徴出現10分後に複合粒子付着マスクを装着させ、3主徴出現60分後に掃除を終了させた。掃除終了時にマスクを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:いずれのマスクも装着させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0219】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−2、試験B−2及び試験C−2を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、掃除機による8畳程度の寝室の掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を上記の通り変更して行った。
【0220】
試験A−2、試験B−2及び試験C−2の結果を表6に示す。
【0221】
【表6】
【0222】
複合粒子付着マスクが使用された試験C−2では、いずれのマスクも使用されなかった試験A−2及び通常の医療用マスクが使用された試験B−2と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の持続が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着マスクを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子付着マスクは、アレルギー性鼻炎治療効果を有することが判明した。
【0223】
各被験者の呼吸によって複合粒子付着マスクから脱離し、鼻腔内に吸入されて鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎治療効果が発揮されると考えられる。
【0224】
但し、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着マスクを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎治療効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0225】
複合粒子付着マスクのアレルギー性鼻炎治療効果には、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0226】
試験例3:複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎予防効果
本試験例では、製造例5で製造された複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎予防効果を評価した。
各被験者に対して、以下の試験を行った。
【0227】
[試験A−3]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者の鼻腔内粘膜に、いずれの軟膏も塗布させなかった。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0228】
[試験B−3]
掃除開始30分前〜掃除開始:掃除開始30分前に、各被験者の鼻腔内粘膜(下鼻点から約5cm)に、複合粒子含有軟膏の製造に使用した医療用ワセリン(複合粒子不含)0.1gを綿棒で塗布させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0229】
[試験C−3]
掃除開始30分前〜掃除開始:掃除開始30分前に、各被験者の鼻腔内粘膜(下鼻点から約5cm)に、複合粒子含有軟膏0.1gを綿棒で塗布させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0230】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−3、試験B−3及び試験C−3を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、掃除機による8畳程度の寝室の掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を上記の通り変更して行った。
【0231】
試験A−3、試験B−3及び試験C−3の結果を表7に示す。
【0232】
【表7】
【0233】
複合粒子含有軟膏が使用された試験C−3では、いずれの軟膏も使用されなかった試験A−3及び通常の医療用ワセリンが使用された試験B−3と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の出現が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子含有粉末の塗布後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子含有軟膏は、アレルギー性鼻炎予防効果を有することが判明した。
【0234】
鼻腔内粘膜に塗布された複合粒子含有軟膏中の複合粒子が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎予防効果が発揮されると考えられる。
【0235】
但し、被験者の個体差はあるものの、複合粒子含有軟膏の塗布後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎予防効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0236】
複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎予防効果には、例えば、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0237】
試験例4:複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎治療効果
本試験例では、製造例5で製造された複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎治療効果を評価した。
各被験者について、以下の試験を行った。
【0238】
[試験A−4]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者の鼻腔内粘膜に、いずれの軟膏も塗布させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現後も掃除を継続させ、3主徴出現40分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0239】
[試験B−4]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者の鼻腔内粘膜に、いずれの軟膏も塗布させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現後も掃除を継続させ、3主徴出現10分後に複合粒子含有軟膏の製造に使用した医療用ワセリン(複合粒子不含)0.1gを鼻腔内粘膜(下鼻点から約5cm)に綿棒で塗布させ、3主徴出現40分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0240】
[試験C−4]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者の鼻腔内粘膜に、いずれの軟膏も塗布させずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現10分後に複合粒子含有軟膏0.1gを鼻腔内粘膜(下鼻点から約5cm)に綿棒で塗布させ、3主徴出現40分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0241】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−4、試験B−4及び試験C−4を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、掃除機による8畳程度の寝室の掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を上記の通り変更して行った。
【0242】
試験A−4、試験B−4及び試験C−4の結果を表8に示す。
【0243】
【表8】
【0244】
複合粒子含有軟膏が使用された試験C−4では、いずれの軟膏も使用されなかった試験A−4及び通常の医療用ワセリンが使用された試験B−4と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の持続が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子含有軟膏の塗布後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子含有軟膏は、アレルギー性鼻炎治療効果を有することが判明した。
【0245】
鼻腔内粘膜に塗布された複合粒子含有軟膏中の複合粒子が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎治療効果が発揮されると考えられる。
【0246】
但し、被験者の個体差はあるものの、複合粒子含有軟膏の塗布後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎治療効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0247】
複合粒子含有軟膏のアレルギー性鼻炎治療効果には、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0248】
試験例5:複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防効果
本試験例では、製造例3で製造された複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防効果を評価した。
各被験者に対して、以下の試験を行った。
【0249】
[試験A−5]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者の鼻腔内に、何も挿入させなかった。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0250】
[試験B−5]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者に、掃除開始30分前に、複合粒子付着シートの製造に使用した不織布(複合粒子不含)を鼻腔内後方(下鼻甲介)(下鼻点から約1〜8cm)に挿入させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。掃除終了時に不織布を外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0251】
[試験C−5]
掃除開始30分前〜掃除開始:各被験者に、掃除開始30分前に、複合粒子付着シートを鼻腔内後方(下鼻甲介)(下鼻点から約1〜8cm)に挿入させた。
掃除開始〜掃除終了:各被験者に、掃除を開始させ、掃除開始30分後に掃除を終了させた。掃除終了時に複合粒子付着シートを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0252】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−5、試験B−5及び試験C−5を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、掃除機による8畳程度の寝室の掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を上記の通り変更して行った。
【0253】
試験A−5、試験B−5及び試験C−5の結果を表9に示す。
【0254】
【表9】
【0255】
複合粒子付着シートが使用された試験C−5では、いずれのシートも使用されなかった試験A−5及び通常の不織布(複合粒子不含)が使用された試験B−5と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の出現が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着シートを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子付着シートは、アレルギー性鼻炎予防効果を有することが判明した。
【0256】
複合粒子付着シートのうち鼻腔内粘膜と接触する部分に存在する複合粒子、及び、各被験者の呼吸により複合粒子付着シートから脱離し、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子の一方又は両方が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防効果が発揮されると考えられる。
【0257】
被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着シートを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0258】
複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防効果には、鼻腔内粘膜に接触又は付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0259】
試験例6:複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎治療効果
本試験例では、製造例3で製造された複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎治療効果を評価した。
各被験者について、以下の試験を行った。
【0260】
[試験A−6]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、鼻腔内に何も挿入せずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現40分後、掃除を終了させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0261】
[試験B−6]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、鼻腔内に何も挿入せずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現10分後に、複合粒子付着シートの製造に使用した不織布(複合粒子不含)を鼻腔内後方(下鼻甲介)(下鼻点から約1〜8cm)に挿入させ、3主徴出現40分後、掃除を終了させた。掃除終了時に不織布を外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0262】
[試験C−6]
掃除開始〜3主徴出現:各被験者に、鼻腔内に何も挿入せずに、掃除を開始させた。各被験者において、掃除開始10〜30分後に3主徴が出現した。
3主徴出現〜掃除終了:各被験者に、3主徴出現10分後に複合粒子付着シートを鼻腔内後方(下鼻甲介)(下鼻点から約1〜8cm)に挿入させ、3主徴出現40分後、掃除を終了させた。掃除終了時に複合粒子付着シートを外させた。
掃除終了〜掃除終了12時間後:鼻腔内に何も挿入させない状態で、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴を評価した。
【0263】
なお、以下の事項は、各試験に共通する。
同一被験者に対して試験A−6、試験B−6及び試験C−6を実施する際、試験の間隔は3日以上あけた。
掃除の開始時刻は午前10時とした。
掃除の内容は、8畳程度の寝室の掃除機による掃除、布団の上げ下げ、書籍整理及び卓上清拭とした。
3主徴の評価は、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会著、株式会社ライフ・サイエンス発行)の評価基準を上記の通り変更して行った。
【0264】
試験A−6、試験B−6及び試験C−6の結果を表10に示す。
【0265】
【表10】
【0266】
複合粒子付着シートが使用された試験C−6では、いずれの不織布も使用されなかった試験A−6及び通常の不織布(複合粒子不含)が使用された試験B−6と比較して、各被験者におけるアレルギー性鼻炎の3主徴の持続が有意差をもって抑制された。また、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着シートを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持された。
このことから、複合粒子付着シートは、アレルギー性鼻炎治療効果を有することが判明した。
【0267】
複合粒子付着シートのうち鼻腔内粘膜と接触する部分に存在する複合粒子、及び、各被験者の呼吸により複合粒子付着シートから脱離し、鼻腔内粘膜に付着した複合粒子の一方又は両方が、鼻腔内粘膜上のハウスダスト、ダニ、カビ、花粉等のアレルゲン(抗原タンパク質)を不活化(分解)し、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することにより、複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎治療効果が発揮されると考えられる。
【0268】
但し、被験者の個体差はあるものの、複合粒子付着シートを外した後、数時間〜数日間、アレルギー性鼻炎の3主徴の出現抑制効果が維持されたことは、鼻腔内粘膜上のアレルゲン(抗原タンパク質)の不活化(分解)のみが、複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎治療効果に関与するわけではないことを示唆する。
【0269】
複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎治療効果には、鼻腔内粘膜に接触又は付着した複合粒子が、鼻腔内粘膜上のアレルゲン受容体を変性させ、鼻腔内粘膜上での抗原抗体反応を抑制することが関与する可能性があると考えられる。
【0270】
試験例7
製造例2と同様にして製造した、複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)を4g/mに調整したポリエステル製スパンレース不織布(ユウホウ株式会社製「S0040」、目付量40g/m)から、1cm×5cmのサイズを有する試験片S1〜S3を作製した。
【0271】
試験片S1〜S3を、160℃で5分間、熱処理した後、生理食塩水30mLに加え、37℃恒温室中で2時間静置した。生理食塩水から不織布を取り出した後、生理食塩水をメンブレンフィルター(孔径0.1μm)でろ過した。
【0272】
ろ液に含まれるチタンイオン及び銀イオンを、プラズマ質量分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent 7800」)で定量した。また、試験片を生理食塩水30mLに加えずに、上記と同様の定量を行い、これを対照とした。それぞれの定量は3回行い、3回の定量値の平均値を求めた。なお、検出下限値は1.0ppbである。
定量結果を表11及び表12に示す。
【0273】
【表11】
【0274】
【表12】
【0275】
ろ過後のメンブレンフィルターをフッ化水素酸及び硝酸の混合液で溶解し、マイクロウェーブ処理した後、溶解液に含まれるチタン元素及び銀元素を、プラズマ発光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「PS3520UVDDII」)で定量した。また、試験片を生理食塩水30mLに加えずに、上記と同様の定量を行い、これを対照とした。それぞれの定量は3回行い、3回の定量値の平均値を求めた。なお、検出下限値は1μgである。
定量結果を表13及び表14に示す。
【0276】
【表13】
【0277】
【表14】
【0278】
1個の試験片(サイズ:1cm×5cm)における付着成分量の計算値は、酸化チタン1.13×10−3(g)、ハイドロキシアパタイト2.94×10−4(g)、銀7.55×10−6(g)、バインダ樹脂5.71×10−4(g)であるから、上記結果は、試験片を生理食塩水中に浸漬しても、大部分の酸化チタン及び銀は不織布に残存することを示す。したがって、複合粒子付着シートが鼻腔内に挿入された患者において、鼻水が生じたとしても、大部分の複合粒子は、溶出又は脱落することなく、シートに残存し、したがって、複合粒子付着シートは、鼻炎の予防効果又は治療効果を持続的に発揮できると考えられる。
【0279】
試験例8
製造例2と同様にして製造した、複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)を4g/mに調整したポリエステル製スパンレース不織布(ユウホウ株式会社製「S0040」、目付量40g/m)から、1cm×5cmのサイズを有する試験片S4を作製した。
【0280】
試験片S4を、160℃で5分間、熱処理した後、生理食塩水30mLに加え、37℃恒温室中で2時間静置した。生理食塩水から不織布を取り出した後、生理食塩水をメンブレンフィルター(孔径0.1μm)でろ過した。
【0281】
ろ過後のメンブレンフィルターを、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。また、試験片を生理食塩水30mLに加えずに、上記と同様の観察を行い、これを対照とした。
SEM観察結果を図8図13に示す。
【0282】
図8は、対照におけるSEM観察結果(10000倍)を示す。図8に示すように、対照では、メンブレンフィルター上に粒子は観察されなかった。
【0283】
図9図13は、メンブレンフィルターに捕捉された粒子のSEM観察結果(3000倍又は5000倍)を示す。図9〜13に示すように、複合粒子付着不織布を生理食塩水に浸漬した場合、メンブレンフィルター上に粒子が観察された。なお、図9〜13中のスケールバーは5μmを表す。
【0284】
図9及び図12に示す粒子について、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を使用して、特性X線によるTi元素、Ag元素、P元素及びCa元素の元素マッピング(X線マッピング)を実施し、各元素の分布を分析した。
分析結果を図14及び図15に示す。
【0285】
図14は、図9に示す粒子に関する元素マッピングの分析結果を示し、図15は、図12に示す粒子に関する元素マッピングの分析結果を示す。図14及び図15に示すように、Ti元素、Ag元素、P元素及びCa元素が、粒子全体に分布していることが確認された。このことから、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の銀粒子と、1個以上のハイドロキシアパタイト粒子とを含んでなる複合粒子が、複合粒子M1に含まれていることが確認された。
【0286】
試験例9
製造例4で製造された複合粒子付着マスクを切断して、直径47mmの試験片を作製した。マスク装着時に外気側を向く面が上側、マスク装着時に顔側を向く面が下側となるように試験片を保持し、試験片の上下を2個のポリエチレン製リング状ホルダー(外径47mm、内径20mm)を挟んだ。下側のホルダーに、配管を介して、流量計及び吸引ポンプを接続し、予備吸引(5L/分で約10秒間)を行った。予備吸引後、下側のホルダーと流量計及び吸引ポンプとの間に、配管を介して、捕集フィルター(直径90mmのMF−ミリポアVCWP09025)を接続し、本吸引(10L/分で8時間)を行った。この捕集フィルターは、粒子径0.1μm以上の粒子を捕集可能である。なお、配管として、純水中で3分間超音波処理して洗浄し、乾燥したものを使用した。下側のスペーサーと捕集フィルターとの間の圧力(陰圧)は、デジタルマノメーター(株式会社ホダカ社製HT−1500NH)を使用して測定した。
【0287】
本吸引後、ホルダー及び配管を純水約40mLで洗浄し、洗浄液中の固形物を捕集フィルター(直径47mmのMF−ミリポアVCWP04700)で捕集した。
【0288】
直径90mmの捕集フィルター及び直径47mmの捕集フィルターをフッ酸及び硝酸の混酸溶液で溶解し、マイクロウェーブ処理した後、溶解液に含まれるチタン、銀及びハイドロキシアパタイトを、プラズマ発光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「PS3520UVDDII」)で定量した。
【0289】
複合粒子M2及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が13.5g/mである複合粒子付着不織布N2に代えて、複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が4g/m、6g/m、8g/m又は10g/mである複合粒子付着不織布N1を使用した点を除き、製造例4と同様にして複合粒子付着マスクを製造した。製造した複合粒子付着マスクを切断して、直径47mmの試験片を作製し、上記と同様に試験を行った。但し、試験片の上下を挟む2個のホルダーとして、ポリエチレン製リング状ホルダー(外径47mm、内径20mm)に代えて、ポリエチレン製リング状ホルダー(外径47mm、内径39mm)を使用する試験も実施した。また、予備吸引を行わずに本吸引を行う試験も実施した。
結果を表15に示す。
【0290】
【表15】
【0291】
表15に示すように、吸引によって複合粒子付着不織布から複合粒子が脱離した。したがって、複合粒子付着マスクを装着した対象が呼吸を行うと、マスクに付着した多数の複合粒子のうち一部が脱離し、対象の鼻腔内に取り込まれると考えられる。すなわち、複合粒子付着マスクを装着した対象の呼吸を利用して、対象の鼻腔内粘膜に複合粒子を投与することができ、これにより、対象の鼻炎を予防又は治療できると考えられる。
【0292】
試験例10
本試験例では、製造例2で製造された複合粒子付着不織布を切断して、幅2cm×長さ15cmの短冊状の複合粒子付着シートを製造し、この複合粒子付着シートのアレルギー性鼻炎予防及び治療効果を評価した。複合粒子付着不織布としては、製造例2で製造された、複合粒子M1及びバインダ樹脂の合計付着量(合計固定量)が4g/mである複合粒子付着不織布N1を使用した。
【0293】
(1)被験者
花粉症シーズンである3〜5月の期間中に、くしゃみ、鼻水及び鼻閉がほぼ毎日みられ、日本アレルギー学会鼻アレルギー診療ガイドライン2013年の診断基準に基づいて耳鼻科専門医に診断された花粉症スコアが3〜4点であり、有病期間が3年以上のアレルギー性鼻炎患者を、本試験の被験者の候補として選定した。これまでの薬物療法では、一定の臨床効果が得られず、治療抵抗性がある患者から、本人の同意を得て選定した28歳から54歳までの男性5名、女性7名の12名を、本試験の被験者とした。本試験の被験者の平均年齢は47.6歳であった。被験者の詳細な特性を以下に示す。
【0294】
[被験者No.1]
被験者No.1は、26歳の女性であり、18年前から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの症状を呈する花粉症及び通年性アレルギーに毎年罹患し、これまでに標準的な薬剤を使用してきた。これまでに使用した薬剤(抗ヒスタミン剤、鼻腔内ステロイド噴霧等)は、症状を緩和するものの、どれも満足のいく効果は見られず、持続的な治療効果は見られなかった。
【0295】
[被験者No.2]
被験者No.2は、33歳の女性であり、6歳頃から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの花粉症アレルギー症状が毎年継続し、標準的な薬剤を継続使用してきたが、どれも満足のいく効果はみられず、特に鼻水の症状が強く、花粉症の季節は日々の生活に支障をきたしてきた。
【0296】
[被験者No.3]
被験者No.3は、34歳の女性であり、4年前から突然、花粉症に加えて金属アレルギーも合併した。特有症状であるくしゃみ、鼻水及び鼻づまりがみられ、標準的な薬剤を多数使用するものの、眠気の副作用が見られたことから継続的服薬ができなかった。ベッドに横になるだけで鼻水が枕まで流れ落ち、睡眠時には鼻閉のため口呼吸せざるを得なく、不眠症状も強い状態であった。
【0297】
[被験者No.4]
被験者No.4は、38歳の女性であり、7歳頃から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの花粉症アレルギー症状が毎年継続し、標準的な薬剤を継続使用してきたが、どれも満足のいく効果はみられず、生活に支障をきたしていた。
【0298】
[被験者No.5]
被験者No.5は、44歳の女性であり、32歳頃から、花粉症の症状が悪化し、症状がひどいときに、服薬にて対処療法をしてきたが、十分な治療効果が見らなかった。
【0299】
[被験者No.6]
被験者No.6は、44歳の女性であり、28歳頃から、花粉症症状が悪化し、過去に2回、レーザーによる鼻腔粘膜焼灼術を施行したが、著効なく、症状がひどいときに、服薬にて対処療法をしてきたが、十分な治療効果が見らなかった。
【0300】
[被験者No.7]
被験者No.7は、45歳の男性であり、5年ほど前から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの花粉症アレルギー症状が毎年継続し、標準的な薬剤を継続使用してきたが、どれも満足のいく効果はみられず、特に鼻水及びくしゃみの症状が毎朝強い状態であった。
【0301】
[被験者No.8]
被験者No.8は、47歳の男性であり、22歳頃から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの花粉症アレルギー症状が毎年継続し、標準的な薬剤を継続使用してきた。2015年に一度、レーザー治療を行ったが、効果は不完全であったので、抗ヒスタミン剤を適時服用している。
【0302】
[被験者No.9]
被験者No.9は、49歳の男性であり、18年前から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの症状を呈する花粉症及び通年性アレルギーに罹患し、これまでに標準的な薬剤を使用してきた。これまでに使用した薬剤(抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、血管収縮剤、鼻腔内ステロイド噴霧、ステロイド内服薬、各種漢方薬等)は、症状を緩和するものの、どれも満足のいく効果は見られず、持続的な治療効果が見られなかった。
【0303】
[被験者No.10]
被験者No.10は、50歳の男性であり、40年前から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの花粉症アレルギー症状が毎年継続し、標準的な薬剤を継続使用してきたが、どれも満足のいく効果はみられず、特に鼻閉が強く血管収縮剤等を使用してきたものの、年々症状が悪化傾向にあり、日々の生活に支障をきたしていた。
【0304】
[被験者No.11]
被験者No.11は、50歳の女性であり、28歳頃から、花粉症症状が悪化し、標準的な薬剤を継続使用してきたが、どれも満足のいく効果はみられなかった。
【0305】
[被験者No.12]
被験者No.12は、53歳の男性であり、40年前から、くしゃみ、鼻水及び鼻づまりの症状を呈する通年性アレルギーに加えて花粉症にも罹患しており、標準的な薬剤を長年使用してきたものの、どれも満足のいく効果は見られなかった。
【0306】
(2)評価指標
アレルギー性鼻炎に対する複合粒子付着シートの臨床的予防及び治療効果を評価する指標として、2013年に日本アレルギー学会が提示した鼻アレルギー診療ガイドラインに基づいて、くしゃみ、鼻水及び鼻閉の3主徴をスコア化した。3主徴の臨床症状は、起床時の自己申告として記録用紙に記入した。くしゃみ、鼻水及び鼻閉の3主徴について、「無い」を0点、「軽い」を1点、「やや重い」を2点、「重い」を3点、「非常に重い」を4点とし、総合的効果を評価する総症状スコア(TSS;Total Symptom Score)を、3主徴のスコアの合計として算出した。
【0307】
(3)評価方法
複合粒子付着シートの真の臨床的予防及び治療効果を評価するために、プラシィボ効果を排除する必要がある。そこで、各被験者に、通常のマスクを2日間装着させ、次いで、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを5日間鼻腔内に挿入させ、次いで、複合粒子付着シートを5日間鼻腔内に挿入させた。複合粒子が付着していない通常の不織布シート(幅2cm×長さ15cm)は、紙縒り状にして、朝9時から40分間、各被験者の鼻腔内(下鼻点から約1〜8cm)に5日間連続で挿入させた。複合粒子付着シート(幅2cm×長さ15cm)は、紙縒り状にして、朝9時から40分間、各被験者の鼻腔内(下鼻点から約1〜8cm)に5日間連続で挿入させた。鼻腔内へのシートの挿入は、被験者自身に実施させた。
【0308】
各被験者には、5日間毎日、くしゃみ、鼻水及び鼻閉の3主徴を自己評価させた。通常のマスクを2日間使用した場合、及び、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを5日間使用した場合では、3主徴にほとんど変化が見られなかったことから、通常のマスクを使用した2日間のスコアの平均値、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを使用した5日間のスコアの平均値を求め、複合粒子付着シートを使用した5日間(1日目から5日目までの各1日)のスコアと比較し、対応のあるt検定を用いて、3主徴の自覚的臨床的予防効果を統計学的に比較検証した。統計学的な検定の有意水準は、0.1%とした。
【0309】
複合粒子が付着していない通常の不織布シートを使用した5日間のスコアの平均値、及び、複合粒子付着シートを使用した5日間のスコア(1日目から5日目までの各1日のスコア)について、対照である通常のマスクを使用した2日間のスコアの平均値に対して、対応のあるt検定を行い、群別比較では、等分散の検定後に一元配置分散分析により解析し、統計学的に検定した。
【0310】
倫理的配慮としてヘルシンキ宣言を遵守した。また、複合粒子付着シートの使用を中断する必要性が認められたときは、被験者本人の判断で使用を適宜中止できるものとした。中止は自由意志であり、それにより何らかの不利益を得ることはない旨を被験者に伝え、継続的な協力を求めた。複合粒子付着シートの使用により効果が見られたものの、4日目から粘膜の違和感があり臨床的な自己評価が出来なかった症例は、12名のうち1名にみられた。
【0311】
(4)結果
通常のマスクを2日間使用した場合、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを5日間使用した場合、及び、複合粒子付着シートを5日間使用した場合における各スコア(くしゃみスコア、鼻水スコア、鼻閉スコア及び総症状スコア)を表16に示す。また、統計学的検定結果を表17に示す。
【0312】
【表16】
【0313】
【表17】
【0314】
(5)考察
表16及び表17に示すように、通常のマスクを2日間使用した場合のスコアの平均値と、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを5日間使用した場合のスコアの平均値との間には、いずれのスコアについても、統計学的な有意差は認められなかった。
一方、表16及び表17に示すように、通常のマスクを2日間使用した場合のスコアの平均値と、複合粒子付着シートを5日間使用した場合の1日目から5日目までの各1日のスコアとの間には、いずれの組み合わせにおいても、統計学的な有意差が認められた(P<0.05)。
これらのことは、複合粒子付着シートを鼻腔内に挿入することにより、くしゃみ、鼻水及び鼻閉の3主徴を有意に改善できること、すなわち、複合粒子付着シートが、有意なアレルギー性鼻炎予防効果及び治療効果を有することを示す。
【0315】
(6)副作用
複合粒子付着シートの副作用について、被験者の自覚的な症状及び血液学的な変化度に基づいて検証した。この際、複合粒子が付着していない通常の不織布シートを挿入した場合を対照とした。その結果、複合粒子付着シート使用群、通常の不織布シート使用群の両群ともに、7人の症例において、鼻腔内挿入30分後に鼻水の一時的増量が観察された。また、3名の症例において、くしゃみがやや増強した。それ以外の自覚的な副作用である、疼痛、流涙、鼻閉増強、出血、嗅覚障害、唇しびれ感、鼻腔内ひりひり感等は、12症例のいずれにおいても観察されなかった。一方、6名について、免疫学的な検査値である血中IgE及びLDHを検査したところ、いずれの被験者においても異常値は観察されなかった。
【要約】
本発明は、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤を提供することを課題とし、かかる課題を解決するために、本発明は、鼻腔内粘膜に投与される医薬製剤であって、1個以上の酸化チタン粒子と、1個以上の金属粒子と、1個以上のリン酸カルシウム粒子とを含んでなる複合粒子を含有する、前記医薬製剤を提供する。
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