(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部を凹溝とし、前記保持部と前記挟持片との間隙を拡開して前記放熱パイプを嵌入し、前記挟持片の弾性により前記放熱パイプを保持した請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を図面に基づき説明する。冷蔵庫の概略的な全体構成である
図1に示すように、冷蔵庫本体1は鋼板製の外箱2aと合成樹脂製の内箱2bとの間隙にウレタンフォームなどの断熱材2cを発泡充填することで、前面を開口し内部を貯蔵空間とした縦長の断熱箱体2を形成しており、貯蔵空間を上方の冷蔵貯蔵空間と下方の冷凍貯蔵空間に断熱区画している。
【0009】
単一の内箱2bで形成された冷蔵貯蔵空間には、複数の載置棚を設けた冷蔵室3と貯蔵容器である下部ケースと上部ケースを備えた野菜室4とを隣接状態で上下に区分配置している。
【0010】
野菜室4の下方には断熱壁を介して、自動製氷装置と貯氷箱を設けた製氷室5と、図示しない小冷凍室とを左右に併置するとともに、最下段には、貯蔵容器である下部ケースと上部ケースを備えた主冷凍室7を配置して−18〜−20℃に冷却する冷凍貯蔵空間としている。
【0011】
各貯蔵室の前面開口部は、独立した断熱扉で閉塞されており、冷蔵室3の前面開口部は、左右両側の上下部に設けたヒンジにより回動自在に支承された観音開き式の扉3aが設けられている。野菜室4及び製氷室5と小冷凍室、主冷凍室7は、それぞれの貯蔵容器を扉4a、5a、7aに連結保持し、貯蔵室内に設けたレール機構により引き出し式で閉塞されている。
【0012】
冷蔵室3と野菜室4に跨る冷蔵貯蔵空間の背部には、冷蔵用冷却器8と冷蔵用送風機9が配設されるとともに、冷気ダクト10と冷却器カバー11と送風機カバー12によって貯蔵室内と区画されている。また、製氷室5や小冷凍室及び主冷凍室7の背面にわたっては、冷凍用冷却器13と冷凍用送風機14が配設され、カバー体15によって貯蔵室内と区画されている。
【0013】
冷蔵用冷却器8の除霜は、冷蔵用冷却器8への冷媒の流入を停止させた状態で、冷蔵用送風機9を運転することで、冷蔵室3並びに野菜室4の0℃以上の温度の空気を循環させて行う。
【0014】
冷凍用冷却器13の下方には、除霜ヒータ16と除霜水を受ける図示しない排水樋が配設される。冷凍用冷却器13の除霜は、除霜ヒータ16による輻射熱で冷凍用冷却器13を加熱することで行う。この時、融解した除霜水は排水樋により、外部に排出される。
【0015】
断熱箱体2の背面下部の外側には内方に凹陥する機械室17を形成し、冷凍サイクルの一環をなす圧縮機18や凝縮器19、放熱ファン、除霜水を蒸発させる蒸発皿20を配設している。
【0016】
また機械室17の上部には、冷蔵庫の運転を制御するマイコンなどを実装した制御装置21を設置している。
【0017】
制御装置21には、冷蔵室3、野菜室4、主冷凍室7の各室内に設けた温度センサーからの検出信号と、冷蔵室3や主冷凍室7の扉開閉を検出する各検出スイッチからの検出信号が入力される。また、冷蔵室3の扉前面に設置した図示しない操作パネルへの使用者の操作による冷却モードの切換えなどの信号が入力され、事前に備えた制御プログラムに基づき、圧縮機18の駆動や冷凍サイクルの冷媒切換え、冷蔵用送風機9、冷凍用送風機14の制御や、操作パネル部の表示などを行う。
【0018】
次に、冷凍サイクルについて説明する。冷凍サイクルを示す模式図である
図2に示すように、圧縮機18を起動することで冷媒が圧縮され、高温高圧となった冷媒ガスは蒸発皿20の下面に配した蒸発パイプ22に導かれる。高温となった蒸発パイプ22は、蒸発皿20に溜まっている除霜水の蒸発を促す。さらに、蒸発パイプ22には凝縮器19が接続され、高温のガス冷媒は凝縮器19でその熱を放出させながら冷却される。
【0019】
その後、冷媒は、冷蔵庫本体1背面の周縁に配された凝縮器19の一部を成す放熱パイプ23aに導かれ、さらに、冷蔵庫側面下部を通って冷蔵庫前面下部に回りこみ、最下段に位置する主冷凍室7の開口部周縁から順に、各冷却貯蔵室の開口部周縁における外箱2aの鍔部の裏面などの露付を防止したい箇所に配した放熱パイプ23を流下する。各冷却貯蔵室の仕切部においては、放熱パイプ23をU字状に折り返すことで、開口部周縁に連続する加熱体を形成する。したがって、冷凍サイクルを運転する間、放熱パイプ23には高温の冷媒が流れるため、熱伝導により放熱パイプ23近傍の外箱2aの温度が上昇し、露点以上の温度を保持することで防露を実現する。
【0020】
放熱パイプ23を通過した冷媒は機械室17に位置する三方弁24に導かれ、制御装置21の指令に基づき、この三方弁24によって冷蔵用キャピラリチューブ25と冷凍用キャピラリチューブ26のそれぞれに冷媒流路を切換える。キャピラリチューブを通過することで減圧され、液状となった冷媒は冷蔵庫奥面に配される冷蔵用冷却器8と冷凍用冷却器13のそれぞれの冷却器へと向かい、冷却器で気化することで気化熱によって冷蔵用と冷凍用冷却器8、13を低温化し、冷気を生成して冷却室を冷却する。熱交換により気化した冷媒は、その後、冷蔵用と冷凍用キャピラリチューブ25、26と熱交換しながらサクションパイプ27を通って再び圧縮機18に吸入され、一連の冷凍サイクルが繰り返される。
【0021】
なお、製品組み立て時には、放熱パイプ23が内箱2bの前面開口周縁の鍔部31と外箱2aの鍔部41との間に挟み込まれた状態で、内箱2bと外箱2aとの間に断熱材2cが充填され、断熱箱体2が組み立てられる。組み立てられた製品においては、放熱パイプ23が露付を防止したい箇所の近傍に安定的に配された状態を維持することで、露付の防止機能を果たす。そのため、断熱箱体2を組み立てる際には、放熱パイプ23が所定の位置からずれないように、放熱パイプ23は内箱2bにあらかじめ固定された状態で組み立てを行う。
【0022】
図3は、内箱2bの斜視図であり、貯蔵空間を形成する本体の開口部周縁には全周にわたって外側に向かう鍔部31が形成されている。内箱2bの鍔部31は放熱パイプ23を保持する凹溝33を全周に渡って形成している。凹溝33は放熱パイプ23の長手方向に沿って延びていて、奥方(
図8の上方向)に断面円弧状に凹陥して、放熱パイプ23の保持部として働く。鍔部31のこの断面円弧状の形状は外箱2aのU字状受け部37の幅寸法(
図8における上下方向の寸法)に合致している。
【0023】
図8に示すように、内箱26の鍔部31に対応する外箱2aの箇所には、外箱2aの開口部周縁40から内方に向かって鍔部41が延びており、鍔部41はその右側端縁において内側に折り返して左側に延びたあと比較的大きな曲率半径でもってU字状に湾曲し、このようにしてU字状受け部37を形成している。内箱2bの鍔部31は、この外箱2aのU字状受け部37に嵌入させることで外箱2a内に保持される。
【0024】
なお、
図3に示すように、挟持片32は、鍔部31が配設される周縁のうち、冷蔵室3の開口部周縁の左右両側部の中央(図における最上段の挟持片32)と、野菜室4の開口部周縁の左右両側部の中央(図における中段の挟持片32)と、主冷凍室7の開口部周縁の左右両側部の中央(図における最下段の挟持片32)に設けている。ただし、挟持片32の配設箇所は上記箇所に限られない。
【0025】
内箱2bの要部の拡大図である
図4に示すように、凹溝33の幅並びに溝の深さは放熱パイプ23の外径寸法と同程度の大きさにしており、凹溝33の内部に放熱パイプ23を保持するようにしている。
【0026】
内箱2bの鍔部31の長手方向には、凹溝33を横断する一対の所定幅のスリット34を複数箇所にわたって設けている。所定幅に形成したスリット34間の部分は、ほぼ平坦状であって、鍔部31の端部まで至り、凹溝33との間に放熱パイプ23を挟み込んで保持する挟持片32とする。
【0027】
内箱2bの鍔部31に放熱パイプ23を挟持した状態を示す要部斜視図である
図5に示すように、スリット34を介して内箱2bに一体形成された鍔部31と挟持片32によって、凹溝33内に保持された放熱パイプ23を挟んで固定している。
【0028】
以下、具体的に挟持片32及びスリット34を設ける方法について説明する。
図6はスリット34を設ける前の凹溝33及び平坦部35の縦断面図であり、
図7はスリット34を設け、放熱パイプ23を挿入した状態での
図6相当図である。
【0029】
図6に示すように、内箱2bの周縁に凹溝33である溝を形成する際に、凹溝33が内箱2bの周縁の全周にわたって連続する溝ではなく、部分的に平坦な形状の平坦部35を複数備えたものとする。ただし、平坦部35に代えて、湾曲した形状であるなど放熱パイプ23を保持するために有効な他の形状の部分としてもよい。
【0030】
平坦部35の両側には、この平坦部と放熱パイプ23が安定して保持できる幅並びに深さの凹溝33とを滑らかにつなぐ傾斜部36が配されているが、この傾斜部36の全体を、例えば矩形に切り取ることでスリット34を設ける。この時、少なくとも凹溝33に放熱パイプ23が収まるように、スリット34の幅を広くとる。これにより、
図7に示すように、スリット34を通過して凹溝33に放熱パイプ23を挿入し、鍔部31と平坦部35とによって放熱パイプ23を挟持し、凹溝33によって安定して所定位置に保持することができる。すなわち、スリット34を設けたことで、平坦部35が放熱パイプ23を挟持するための挟持片32としての機能を備え、放熱パイプ23を挟持する。なお、
図8に示すように、挟持片32において庫外側に位置する先端部は、放熱パイプ23が挟持される側に湾曲した形状である。
【0031】
従って、内箱2bの開口部周縁においては、
図4に示すように両側にスリット34を有した挟持片32と放熱パイプ23の保持手段としての凹溝33を有した鍔部31が内箱2bに一体形成される。
【0032】
ただし、内箱2bの外縁に挟持片32及びスリット34を設ける方法は上述した方法に限定されず、射出成形により内箱2bを成形する段階で、予め挟持片32及びスリット34を備えるなどして、内箱2bの成形後に加工を加えることのない方法で挟持片32及びスリット34を設けてもよい。
【0033】
図8は、放熱パイプ23を固定した内箱2bをさらに外箱2aで挟んだ状態の挟持片32における横断面図である。外箱2aは外箱2aの開口縁を内向きにU字状に折り曲げて形成したU字状受け部37を有し、内箱2bの外縁は外箱2aに設けられたU字状受け部37に挿入される。従って放熱パイプ23が内箱2bに挟持された状態で、内箱2bに設けられた鍔部31及び挟持片32は、外箱2aによって挟み込まれる。
【0035】
内箱2bの開口部周縁に放熱パイプ23を支持する鍔部31を形成し、この鍔部31には放熱パイプ23を保持することのできる凹溝33が形成される。凹溝33は、放熱パイプ23が外箱2aの鍔部41側に露出するように、溝の幅並びに溝の深さを放熱パイプ23の外径寸法に合わせて形成しているため、放熱パイプ23は容易に凹溝33内に収まり、安定して保持される。
【0036】
さらに、内箱2bの開口部周縁には、両側にスリット34を有した挟持片32と放熱パイプ23の保持部としての凹溝33を有した鍔部31が内箱2bに一体形成される。これにより挟持片32の先端部を放熱パイプ23が挟持される側とは反対方向に押し開くことで、挟持片32の先端部と内箱2bの鍔部31との間に放熱パイプ23の外径よりも大きな隙間を作り、庫外側から凹溝33内に放熱パイプ23を挿入し保持することができる。放熱パイプ23の挿入後、押し開いていた挟持片32の先端部が、その弾性により元の位置に戻ることで、凹溝33と挟持片32によって放熱パイプ23を挟み込み、内箱2bの鍔部31における所定の位置に安定して保持固定される状態を維持する。
【0037】
このようにして放熱パイプ23を内箱2bに固定した状態で、外箱2aのU字状受け部37が鍔部31及び挟持片32を外側から挟み込むことで、鍔部31と挟持片32に外側から、内側である放熱パイプ23に向かう側に力を加えることになるので、放熱パイプ23は凹溝33によって保持される位置に安定して固定される。
【0038】
上述した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0039】
露付を防止するために放熱パイプ23を冷蔵庫前面の開口部周縁に配設した冷蔵庫において、テープ等の副資材を使用することなく、放熱パイプ23を内箱2bに固定できるので、製品の組み立て作業効率が上がり、製造コストを低く抑えられる。
【0040】
また、放熱パイプ23をテープで固定した場合には、製品を組み立てた際に固定用テープがはみ出てしまう場合があり、完成した冷蔵庫の美観を損なう虞があったが、副資材を使用することがないので、固定用テープがはみ出してしまうなどして冷蔵庫の美観を損なう虞がない。
【0041】
さらに、放熱パイプ23は鍔部31と挟持片32に挟持されるため、放熱パイプ23の外表面が外箱2aの鍔部やU字状受け部37に直接接触することがない。よって、高温の放熱パイプ23が外箱2aに直接接触した場合に比し、高温度の熱伝導を防ぐことができる。このため、外箱2aの外表面温度が過度に高くなることで、使用者に不快感や不信感を与えることがなく、外箱2aの外表面の高温化を防ぐために放熱パイプ23に断熱材を巻きつけるなどして、外箱2aの外表面温度が過度に高くなることを防止する目的で副資材を使用する必要がなく、製造コストを低く抑えられる。
【0042】
挟持片32の両側にスリット34が存在することで、内箱2bの周縁において挟持片32が存在する箇所の認識が容易であり、製品の組み立て作業において放熱パイプ23を挟持して固定する作業の効率が良い。
【0043】
挟持片32は開口部周縁に設けられ、挟持片32の先端42は庫外側に位置しているので、挟持片32が反ってしまうなどして、放熱パイプ23を挟持する側とは反対方向に変形を起こし、挟持片32の先端部42と内箱2bの外縁43との間に放熱パイプ23の外径よりも大きな隙間が常時生じた状態になると、放熱パイプ23が内箱2bに挟持固定できなくなる虞がある。しかし、挟持片32の先端部42は放熱パイプ23が挟持される側にあらかじめ湾曲した形状であるため、放熱パイプ23を挟持する側とは反対方向に変形を起こした場合であっても、挟持片32の先端部42と内箱2bの外縁43との間に生じる隙間自体は大きくなりにくく、放熱パイプ23を内箱2bに挟持固定する状態を安定的に保ちやすい。
【0044】
そしてまた、挟持片32が放熱パイプ23を挟持する側とは反対方向に変形を起こすと、放熱パイプ23を固定した状態の内箱2bを外箱2aに挟み込む際に、外箱2aに設けたU字状受け部37の先端44が誤って内箱2bの鍔部31と挟持片32の間に入ることで、挟持片32がまくれあがる状態になるなど、内箱2bと挟持片32を外箱2aに挟み込む作業ができなくなる虞がある。しかし、挟持片32の先端部42を放熱パイプ23が挟持される側にあらかじめ湾曲した形状にすることで、挟持片32の先端部42と内箱2bの外縁43との間に大きな隙間が生じにくい。従って、外箱2aに設けたU字状受け部37の先端44が誤って内箱2bの鍔部31と挟持片32の間に入ってしまう事態を起こしにくいため、製品の組み立て作業において内箱2bと挟持片32を外箱2aに挟み込む作業をスムーズに行うことができ、製造時における作業性が良い。
【0045】
実施形態の変形例として、スリット34を介して鍔部31と挟持片32を内箱2bに一体形成するのではなく、スリット34の存在しない鍔部31に対向して、内箱2bと一体あるいは別部材の挟持片32を備えてもよい。この場合、鍔部31は切れ間なく内箱2bの開口部周縁に配設され、放熱パイプ23を固定したい箇所に挟持片32を備える。
【0046】
別の変形例として、内箱2bの鍔部31に保持部としての凹溝33を形成するのではなく、挟持片32に保持部として凹溝33を形成することで、放熱パイプ23を保持してもよいし、鍔部31と挟持片32の両方に凹溝33を設けて放熱パイプ23を保持してもよい。
【0047】
また、冷凍サイクルとしては、冷蔵用冷却器8と冷凍用冷却器9の2個を備えたものに限られず、冷却器が1個の場合でもよい。冷却器が1個の場合は、冷蔵温度帯と冷凍温度帯のどちらに冷気を供給するかを、ダンパにより切り替える構成が一般的である。
【0048】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。