(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371047
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
H01R9/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-205820(P2013-205820)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69940(P2015-69940A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 テンパール工業株式会社 刊行物名 新型住宅用分電盤パールテクトカタログ 発行年月日 平成25年4月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上木 一也
(72)【発明者】
【氏名】松本 一馬
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−268210(JP,A)
【文献】
実開昭63−063974(JP,U)
【文献】
特開2008−029133(JP,A)
【文献】
実開昭50−151375(JP,U)
【文献】
実開平01−166486(JP,U)
【文献】
特開2010−279104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 9/22−9/24
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にオフセットして受電電線を接続する上段端子部と送電電線を接続する下段端子部に分けられ、前記上段端子部と前記下段端子部が左右方向にオフセットして設けられた端子体が複数左右方向に並んで配置される端子台であって、
前記複数の端子体の間には、前記上段端子部の極間を絶縁するための上段絶縁壁と前記下段端子部の極間を絶縁するための下段絶縁壁が設けられ、
該下段絶縁壁は、左右方向の位置を前記上段端子部の電線固定部の左右方向と同じ位置に設定し、該下段絶縁壁の高さを前記電線固定部と略同一の高さに設定し、該下段絶縁壁の上面を前記上段端子部に固定する受電電線の支持部として構成する一方、前記下段絶縁壁には、前記端子台を被取付体に取り付けるための取付部を設け、前記取付部は、前記端子台取付後に、金属製の取付部材が前記下段絶縁壁上面より突出しないよう凹状に設けられ、該金属製の取付部材と前記下段絶縁壁上面の間に空間部を設定すると共に、複数の一次送り用のブレーカに接続される異極の接続部を上下2段に配置しかつ前記端子台の左右方向に延出させ、該接続部のうち上段側に配置される接続部の上面側に、供給電圧を示す標識を設けたことを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤等で用いられる電線を接続する端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
分電盤等において、電力量計の二次側から供給される電力を負荷回路に分配する形態として、主幹ブレーカを介して各分岐ブレーカへ電力を分配する第一の系統と、主幹ブレーカを介さずに、特定の負荷回路へ直接電力を供給する第二の系統(一次送り系統)との二つの系統に分配する形態がある。これら第一の系統と第二の系統とに電力を分配する分岐手段としては、分電盤内に端子台を用いることが多い。
【0003】
このような場合において、一つの端子部に一つの電線を対応付けて配線する一般的な端子台を利用した場合、送電側が二つに分配されるため、一つの端子部に二つの電線を接続して、一次送り配線を行うことになる。この様な配線方法では、一つの端子部に一つの電線を対応付けて配線する場合に比べて、ネジやボルトによる締付けの作業性が悪くなる。また、締付けが不十分であった場合には締付けたネジが緩みやすくなり、経年的に端子部の異常過熱を引き起こす恐れが推測される。
【0004】
そこで、第一の系統と第二の系統とに電力を分配する端子台として、特許文献1に記載の端子台が開示されている。特許文献1記載の端子台1は、電線を接続する端子部を上下に分けて、上側の端子部を、入線用電線2aを接続する入線用端子部5aとして設けた構成としている。また、下側の端子部を、送り用電線2bを接続する送り用端子部5bとして設けた。これにより、1つの端子部に1本の電線を接続することができるため、一次送り配線を行う場合でも電線ごとに各端子への確実な接続が可能で、作業性が良く、また、締付けが緩みやすくなるという問題も改善されている。
【0005】
さらに、この端子台1では入線用端子部5aと送り用端子部5bとを左右方向にオフセットして設けており、施工後においても、下側の送り用端子部5bが接続した電線によって隠れることがなく、点検時の増締め作業等も容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−68379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示される端子台においては、入線用端子部5aと送り用端子部5bを左右方向にオフセットして設けたことにより、三つある入線用端子部5a、送り用端子部5bのうち、中極の入線用端子部5aと左極の送り用端子部5bなど、異極の端子間において、左右方向の導体の位置が近接するため、施工時に電線の入線方向が左右方向に曲がった方向で取り付けた場合や、施工後に電線に外力が加わって左右方向にずれた場合等に、異極間の電線が接触して、短絡事故を招く危険性がある。
【0008】
一方、入線用電線2aと送り用電線2bとの合計6本の電線が端子台1に対してオフセットされて接続されるため、一見して一次送りされる電源の大きさを把握しづらくなっていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、一次送りされる電源の大きさを容易に確認することができ、短絡事故を防止する安全性の高い端子台を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る端子台は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、第1の発明は、上下方向にオフセットして受電電線を接続する上段端子部と送電電線を接続する下段端子部に分けられ、前記上段端子部と前記下段端子部が左右方向にオフセットして設けられた端子体が複数左右方向に並んで配置される端子台であって、前記複数の端子体の間には、前記上段端子部の極間を絶縁するための上段絶縁壁と前記下段端子部の極間を絶縁するための下段絶縁壁が設けられ、該下段絶縁壁は、左右方向の位置を前記上段端子部の電線固定部の左右方向と同じ位置に設定し、下段絶縁壁の高さを前記電線固定部と略同一の高さに設定し、該下段絶縁壁の上面を前記上段端子部に固定する受電電線の支持部として構成する一方、
前記下段絶縁壁には、端子台を被取付体に取り付けるための取付部を設け設け、前記取付部は、前記端子台取付後に、前記取付部は、前記端子台取付後に、金属製の取付部材が前記下段絶縁壁上面より突出しないよう凹状に設けられ、該金属製の取付部材と前記下段絶縁壁上面の間に空間部をられ、該金属製の取付部材と前記下段絶縁壁上面の間に空間部を設定す設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、複数の一次送り用のブレーカに接続される異極の接続部を上下2段に配置しかつ端子台の左右方向に延出させて、該接続部のうち上段側に配置される接続部の上面側に、供給電圧を示す標識を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
かかる構成によれば、下段絶縁壁の上面が、上段端子部に固定される受電電線の支持部として構成されているため、該受電電線は下段端子部の方向へ曲がることがない。よって、受電電線の直下の下段端子部に接続する送電電線が異極である場合でも、その異極間の電線の接触が防止され、短絡事故を防ぐことが可能となる。また、取付部の凹状の空間部によって金属製の取付部材と受電電線との絶縁距離が確保されて絶縁性が向上させることができるため、安全性の高い端子台を提供することができる。一方で、上段側に配置される接続部の上面側に、供給電圧を示す標識を設けることにより、複数のブレーカに対して供給される電圧を一見して容易に把握することができるため、複数の負荷回路への電圧の誤印加を抑制することができる。
【0013】
(削除)
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明によれば、一次送りされる電源の大きさを容易に把握することができ、なおかつ絶縁壁上面が送り用電線の支持部の役割を果たすため短絡事故を防止することができる安全性の高い端子台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】住宅用分電盤に端子台を取り付けた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
本発明における端子台1Tは、主に、一般家庭の住宅用分電盤13において、電力量計の二次側から供給される電力を、主幹ブレーカを介して各分岐ブレーカへ電力を分配する第一の系統と、主幹ブレーカを介さずに、特定の負荷回路へ直接電力を供給する第二の系統(一次送り系統)との二つの系統に分配する端子として用いられる。より具体的には、柱上トランスから給電される電源を、主幹ブレーカ14及びその配下の系統と、時間帯別電灯契約用ブレーカの系統との、二系統に分配配線するために設置する。
【0018】
端子台1Tは、
図6に示すように、端子台取付具12に取り付けた状態で住宅用分電盤13に組み込み使用する。
【0019】
(端子台の構成)
本発明における端子台1Tは、
図1に示すように、端子台ベース2、左極端子体3a、中極端子体3b、右極端子体3c、一次送り系統として用いられるブレーカに接続される、ブレーカ上側接続部6a、ブレーカ下側接続部6b、二次側絶縁壁7から構成される。
【0020】
端子台ベース2は、左−中極上段絶縁壁41a、中−右極上段絶縁壁41b、左−中極下段絶縁壁42a、中−右極下段絶縁壁42b、周縁部に左側外壁43a、右側外壁43bを設けており、下段絶縁壁42a、42bには凹状に取付部5をそれぞれ有する。また、下段絶縁壁42a、42bの上面42a1、42b1には凹部42a、42b2を設けている。
【0021】
左極端子体3aは、
図2に示すように、電線を接続するための上段端子部31aと下段端子部32aとを上下方向にオフセットして設け、その間を端子接続部33aにより接続している。また、上段端子部31a及び下段端子部32aは、左右方向にオフセットして形成している。上段端子部31aの中央部には受電電線81aの固定部たる上段固定孔311aを有し、下段端子部32aの中央部には送電電線82aの固定部たる下段固定孔321aを有している。
【0022】
中極端子体3b及び右極端子体3cは、左極端子体3aと同一の形状であり、それぞれ左極端子体3aと同様に上段端子部31b及び31c、下段端子部32b及び32c、端子接続部33b及び33c、上段固定孔311b及び311c、下段固定孔321b及び321cを有している。
【0023】
左−中極下段絶縁壁42aは、その左右方向の位置を、中極上段端子部31bの中央部に設けられた上段固定孔311bの左右方向の位置と略同じに設定している。また、左−中極下段絶縁壁42aの上面42a1の高さは、中極上段端子部31bと略同一高さに設定している。
【0024】
中−右極下段絶縁壁42bの左右方向の位置も、左−中極下段絶縁壁42aと同様に、右極上段端子部31cの中央部に設けられた上段固定孔311cの左右方向の位置と略同じに設定し、また、中−右極下段絶縁壁42bの上面42b1の高さは、右極上段端子部31cと略同一高さに設定している。
【0025】
ブレーカ上側接続部6aは、左極上段端子部31aと共に、端子ネジ10により螺着固定する。また、ブレーカ下側接続部6bは、右極上段端子部31cと共に、端子ネジ10により螺着固定する。ブレーカ上側接続部6a及びブレーカ下側接続部6bは、このようにして、端子台1Tの二次側に分岐ブレーカを電気的に接続するために設ける。
【0026】
本実施形態の場合、ブレーカ上側接続部6aは、左極上段端子部31aに接続され、ブレーカ下側接続部6bは、右極上段端子部31cに接続されるため、一般的な単相3線式の回路においては、200Vの電圧が一次送り用ブレーカに供給される。したがって、「200V」という標識を該ブレーカ上側接続部6aの上面側に刻印することで記載し、容易に識別できるようにしている。
【0027】
また、ブレーカ上側接続部6a、ブレーカ下側接続部6bともに、端子台T1の左右方向に延出され、複数のブレーカを接続するための接続部を左右方向に形成している。このようにブレーカ上側接続部6a、ブレーカ下側接続部6bを形成したため、複数のブレーカに対して一次送り電源を供給することができるとともに、供給電圧がいくらなのかが、ブレーカを取り付けるときに一見して把握することができ、誤った電圧を複数の負荷回路側に印加してしまうことを抑制することができる。
【0028】
二次側絶縁壁7は、ブレーカ上側接続部6aと、該ブレーカ上側接続部6aとは異極となる中極受電電線81b及び右極受電電線81cとを絶縁するために端子台ベース2に取り付けられる。
【0029】
(端子台の取付作業)
端子台1Tの使用者は、まず、端子台取付具12の所定位置に端子台1Tを仮置きしたうえ、端子台1Tの取付部5に金属製の取付部材として取付ネジ11を挿入し、端子台1Tを端子台取付具12に螺着固定する。そして、端子台取付具12を住宅用分電盤13に取り付ける。
【0030】
(電線の接続作業)
下段端子部32a、32b、32cに、送電電線82a、82b、82cの一方側を端子ネジ10によりそれぞれ螺着固定する。送電電線82a、82b、82cの他方側は、
図6に示すように、主幹ブレーカ14に接続する。
【0031】
次に、上段端子部31a、31b、31cに、電力量計からの受電電線81a、81b、81cを端子ネジ10によりそれぞれ螺着固定する。端子台1Tへの電線の接続はこれで完了する。
【0032】
(取付状態)
端子台取付具12に端子台1Tを取り付けた状態においては、下段絶縁壁42a、42bに凹状に設けられた取付部に、取付ネジ11が嵌まり込む。このとき、下段絶縁壁上面から所定の深さの空間部が設けられているため、
図4に示すように、取付ネジ11のネジ頭が取付部5から突出しない。換言すれば、下段絶縁壁の上面から取付ネジ11のネジ頭の間に空間部51を有することにより、施工後、受電電線81b、81cの導電部と取付ネジ11との接触を防止して、且つ、絶縁距離を確保できるため、不要な短絡や地絡自己を防止できるため安全である。
【0033】
また、左極受電電線81aは左側外壁43aの上面によって、中極受電電線81bは左−中極下段絶縁壁42aの上面によって、右極受電電線81cは中−右極下段絶縁壁42bの上面によってそれぞれ取付台側への変位が規制されるよう支持される。即ち、受電電線81a、81b、81cが下方向へ曲げられることを抑止される効果が得られる。
【0034】
さらに、左−中極下段絶縁壁42aの上面42a1に設けられた凹部42a2により、
図5に示すように、左−中極下段絶縁壁42aは中極受電電線81bの左右方向への変位を抑制する台座のような役割を持つ。即ち、中極受電電線81bは左右方向への変位を抑制される効果が得られ、左−中極下段絶縁壁42aの支持力がより確実なものとなる。
【0035】
中−右極下段絶縁壁42bについても同様に,上面42b1に設けられた凹部42b2により、右極受電電線81cの左右方向への変位を抑制する台座のような役割をもち、右極受電電線81cは左右方向への変位を抑制される効果が得られ、中−右極下段絶縁壁42bの支持力がより確実なものとなる。
【符号の説明】
【0036】
1T 端子台
2 端子台ベース
3a 左極端子体
31a 左極上段端子部
311a 左極上段固定孔
32a 左極下段端子部
321a 左極下段固定孔
33a 左極端子接続部
3b 中極端子体
31b 中極上段端子部
311b 中極上段固定孔
32b 中極下段端子部
321b 中極下段固定孔
33b 中極端子接続部
3c 右極端子体
31c 右極上段端子部
311c 右極上段固定孔
32c 右極下段端子部
321c 右極下段固定孔
33c 右極端子接続部
41a 左−中極上段絶縁壁
41b 中−右極上段絶縁壁
42a 左−中極下段絶縁壁
42b 中−右極下段絶縁壁
43a 左側外壁
43b 右側外壁
44a 左−中極下段絶縁壁上面
44b 中−右極下段絶縁壁上面
45a 左−中極凹部
45b 中−右極凹部
5 取付部
51 空間部
6a ブレーカ上側接続部
6b ブレーカ下側接続部
7 二次側絶縁壁
81a 左極受電電線
81b 中極受電電線
81c 右極受電電線
82a 左極送電電線
82b 中極送電電線
82c 右極送電電線
10 端子ネジ
11 取付ネジ
12 端子台取付具
13 住宅用分電盤
14 主幹ブレーカ