特許第6371077号(P6371077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371077ジフルオロメチル基含有化合物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371077
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ジフルオロメチル基含有化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 381/12 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   C07C381/12
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-34419(P2014-34419)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157789(P2015-157789A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年1月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】花本 猛士
(72)【発明者】
【氏名】香川 巧
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/055887(WO,A1)
【文献】 特表2012−526820(JP,A)
【文献】 SYNTHESIS,2012年,Vol.44,pp.3489-3495
【文献】 J. Org. Chem.,2011年,Vol.76,pp.7359-7369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、Xはハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホン酸又はヘキサフルオロリン酸を示し、Phはフェニル基を示す。)
で表されるジフルオロメチル基含有化合物の製造方法であって、
(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドを塩基で処理し、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドを調製した後、銅粉末存在下、ジフェニルヨードニウム塩を反応させる、ジフルオロメチル基含有化合物の製造方法。
【請求項2】
ジフェニルヨードニウム塩が、ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩又はジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロリン酸塩である、請求項1に記載のジフルオロメチル基含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なジフルオロメチル基含有化合物及びその用途に関する。本発明のジフルオロメチル基含有化合物は電子材料原料や医・農薬の製造中間体として有用な化合物である。また、本発明のジフルオロメチル基含有化合物と電子不足メチレン化合物との反応により得られるジフルオロメチル基含有シクロプロパン類も電子材料原料や医・農薬の製造中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来より、本発明のジフルオロメチル基含有化合物は知られていない。
本発明のジフルオロメチル基含有化合物と類似のトリフルオロメチル基を含有化合物として(3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン−1−イル)ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナートは知られており、各種アミンとの反応でアジリジン環が製造可能であることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ジフルオロメチル基を有するシクロプロパン類の製造方法も知られており、(Z)−エチル 2−ベンゾイルアミノ−4,4−ジフルオロ−2−ブテノエートとジアゾメタンの反応によりジフルオロメチル基含有シクロプロパン類を得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
特許文献1に記載の(3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン−1−イル)ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナートは、アミン類との反応によりアジリジン環が形成される反応等が知られている。
【0004】
一方、非特許文献1に記載の方法でジフルオロメチル基含有シクロプロパン類を得るには、爆発性を有するという課題があるジアゾメタンまたはその類似化合物の使用が必須で、工業的に実施が極めて困難な製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/055887号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】W.ウオン(W. Won),ら ジャーナル オブ フルオライン ケミストリー(J. Fluorine Chemistry), 129(2008), 510-514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ジフルオロメチル基含有化合物の調製に有用な、新規ジフルオロメチル基含有化合物を提供するとともに、該試剤を用いたジフルオロメチル基含有シクロプロパン類の新規製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、新規なジフルオロメチル基導入剤について鋭意検討した結果、本発明の、ジフルオロメチル基含有化合物を見出した。さらに当該化合物を電子不足メチレン含有化合物と反応させることにより、容易にジフルオロメチル基含有シクロプロパン類の調製が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、文献公知の方法で調製される(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドを塩基で処理し、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドを調製した後、銅粉末存在下、ジフェニルヨードニウム塩を反応させ、下記一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Xはハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホン酸又はヘキサフルオロリン酸を示し、Phはフェニル基を示す。)
で表される新規ジフルオロメチル基含有化合物及びその製造方法並びに、それを用いた下記一般式(2)
1−CH2−R2 (2)
(式(2)中、R1及びR2は各々独立して、アセチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基、シアノ基、フェニルスルホニル基、アミノカルボニル基、ジエトキシホスホリル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ジフェニルイミノ基又は、R1とR2が結合して環を形成したN,N−ジメチル尿素ジカルボニル基を示す。)
で表わされる電子不足メチレン化合物を、塩基存在下で反応させ、下記一般式(3)
【0011】
【化2】
【0012】
(式(3)中、R1及びR2は前記式(2)と同じである。)
で表わされるジフルオロメチル基含有シクロプロパン類の製造方法を提供するものである。
なお、本明細書において、Phはフェニル基を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電子材料原料や医農薬及び電子材料の合成原料として有用な、ジフルオロメチル基含有化合物が提案され、それを用いたジフルオロメチル基含有シクロプロパン類の製造方法が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるジフルオロメチル基含有化合物としては、具体的には、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム フルオリド、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム クロリド、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム ブロミド、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム ヨージド、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0015】
本発明の一般式(1)で表されるジフルオロメチル基含有化合物の製造方法としては、文献公知の方法で調製される(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドを塩基で処理し、[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドを調製した後、銅粉末存在下、ジフェニルヨードニウム塩を反応させることにより製造するか、予め製造が容易なトリフルオロメタンスルホン酸塩を調製の後、塩交換反応により陰イオンを目的とするものに交換することによっても可能である。
【0016】
ここで、(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドを塩基で処理するに際し、十分に異性化できる程度の塩基性を有しておればよい。またジフェニルヨードニウム塩を反応させる際に用いられる銅粉末としては本発明の目的を達しうるものであれば特に制限なく用いることができる。
本発明の一般式(1)で表されるジフルオロメチル基含有化合物の製造原料である[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドの製造は、文献公知の方法で調製される(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドを、(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドに対して1〜20重量倍のN,N−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒中、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ソジウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、カリウムヘキサメチルジシラジド、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の塩基を(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィドに対して、0.01〜0.30モル%使用し、0〜40℃の温度範囲で0.5〜4時間反応させることにより調製可能であり、通常の後処理の後、褐色液体として得られる。
【0017】
本発明の一般式(1)で表されるジフルオロメチル基含有化合物を[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドより調製する方法としては、1〜20重量倍量の1,2−ジクロロエタン又はトルエン等の溶媒中、反応に具する[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィドに対して、0.8〜1.5モル量のジフェニルヨードニウム塩及び2.0〜10.0モル量の銅粉末を、70〜110℃の温度範囲で、1〜6時間反応させることにより調製可能であり、通常の後処理及びシリカゲルカラム精製により、白色固体として得られる。
【0018】
本発明の一般式(1)で表わされるジフルオロメチル基含有化合物を塩交換反応により調製する方法としては、例えば比較的調製が容易な[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナートを1〜100重量倍量のアセトニトリル等の溶媒中、1.0〜1.5モル倍量の該当する陰イオンのカリウム塩等を、0〜60℃の温度範囲で、1〜6時間反応させることにより調製可能である。
【0019】
本発明において用いられる一般式(2)で表わされる電子不足メチレン化合物としては、具体的には例えば、フェニルスルホニルアセトニトリル、2−エトキシエチル シアノ酢酸、てジエチル(シアノメチル)リン酸エステル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸−n−ブチル、マロン酸ジ−tert−ブチル、マロン酸tert−ブチルメチル、フェニルスルホニル酢酸メチル、マロン酸ジベンジル、ビス(フェニルスルホニル)メタン、1,3−ジメチルバルビツル酸等を挙げることができる。
【0020】
本発明において用いられる一般式(3)で表わされるジフルオロメチル基含有シクロプロパン類としては、具体的には例えば、1−(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シアノプロパンカルボニトリル、エトキシエチル 1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル、ジエチル [1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シアノプロピル]ホスフェート、tert−ブチル 1−メトキシカルボニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル、1−フェニルスルホニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル、ジベンジル 2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンジカルボン酸エステル、1,1−ビス(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパン、5,7−ジメチル−1−(ジフルオロメチル)−5,7−ジアザスピロ[2,5]オクタン−4,6,8−トリオン等を挙げることができる。
【0021】
本発明において用いられる一般式(3)で表わされるジフルオロメチル基含有シクロプロパン類の製造方法としては、一般式(2)で表わされる電子不足メチレン化合物類と、一般式(2)で表わされる電子不足メチレン化合物類に対して1.0〜1.5モル量の一般式(1)で表わされるジフルオロメチル基含有化合物及び1.0〜5.0モル倍量の炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリを、10〜200重量倍量のアセトン等の溶媒中、0〜60℃の温度範囲で、0.5〜4時間反応させることにより調製可能で、通常の後処理の後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法で精製することにより目的物のジフルオロメチル基含有シクロプロパン類を得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、生成物の分析に当たっては、下記装置を使用した。
NMR:バリアン社製NMR System 400HFX
IR:パーキン・エルマー社製Spectrum 2000 FT−IR spectrometer
GC−MS:アジレント社製5975C spectrometer
元素分析:ヤナコ社製CHNコーダー MT−6
〔参考例1〕 (3,3−ジフルオロ−2−プロペン−1−イル)フェニルスルフィド(4)の調製
【0023】
【化3】
【0024】
撹拌子を備えた300mLの二口ナスフラスコを乾燥アルゴン置換後、水素化ナトリウム(50%油性,1.55g,38.2mmol,1.5eq)を入れ、適当量のヘキサンで3回洗浄し鉱油を除いた後、1,4−ジオキサン(30mL)を加え、超音波洗浄機を用い超音波で10分間分散させた。次いで、ベンゼンチオール(3.0mL,29.4mmol)を添加し、5分程撹拌の後、3−ブロモ3,3−ジフルオロプロペン(4.5mL,44.1mmol,1.5eq)を添加し、撹拌しながら室温下、1時間反応を行った。反応終了後、反応液に飽和の塩化アンモニウム水溶液を添加、ヘキサン/酢酸エチル混合溶剤(3/1 vol/vol)で3回抽出、有機層を合わせて硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、粗製物を得た。
【0025】
得られた粗製物は、シリカゲルkラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的物の(3,3−ジフルオロ−2−プロペン−1−イル)フェニルスルフィド(4)を無色透明液体として得た(5.39g,29.4mmol,収率99%)。
なお、生成物は物性測定の結果、下記文献に記載の物性値と一致し目的物であることを確認した。
【0026】
Yuan-yao Xu, et. al., J. Fluorine Chem., 70(1995), 5-6。
〔参考例2〕 [(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィド(5)の調製
【0027】
【化4】
【0028】
撹拌子を備えた300mLの二口ナスフラスコを乾燥アルゴン置換後、参考例1で調製した(3,3−ジフルオロ−2−プロペニル)フェニルスルフィド(4)(5.32g,28.6mmol)及びジメチルスルホキシド(10mL)を入れ、撹拌した。次いで、tert−ブトキシカリウム(163.2mg,1.43mmol,0.05eq)を添加し、撹拌しながら室温下、1時間反応を行った。反応終了後、反応液に水を添加、ヘキサンで3回抽出、有機層を合わせて硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し、目的物の[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィド(5)を褐色液体として得た(4.95g,26.6mmol,収率93%)。
IR(ART):2925,1616,1376,1130,1060,1108,936,828,742,690cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=7.47−7.41(m,2H),7.41−7.34(m,3H),6.84(dtd,J=15.3,3.2,0.6Hz,1H),6.09(tdd,J=56.2,5.5,0.6Hz,1H),5.60−5.53(m,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=136.1(t,J=12.4Hz),132.5,131.2,129.5,128.7,119.2(t,J=24.9Hz),114.3(t,J=234.3Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−110.4(ddd,J=56.0,8.3,3.6Hz,2F)。
GC−MS(m/z):186(92,M+),165(25),147(12),135(100),134(19),109(21),91(35),77(25),65(12),51(24)。
【0029】
〔実施例1〕 [(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニ ルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート(6)の調製
【0030】
【化5】
【0031】
乾燥アルゴンで置換した300mLの二口ナスフラスコに、室温下、参考例2で調製した[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]フェニルスルフィド(5)(4.83g,25.9mmol,1.05eq)及び1,2−ジクロロエタン(30mL)を入れ、撹拌しながら溶解させた後、次いでこれにジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホナート(10.60g,24.7mmol,1.0eq)及び銅粉末(7.90g,123.5mmol,5.0eq)を添加した。油浴上で80℃に加熱し、2時間反応を行った後、室温まで冷却、固形物をセライトろ過のよりろ別し、濃縮することにより粗製物を得た。得られた粗製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン/アセトン=2/1 vol/vol)で精製することにより、目的物(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート(6)を白色結晶として得た(9.62g,24.3mmol,収率94%)。
融点:51.3−52.4℃。
IR(ATR):3046,1709,1448,1253,1151,1027,746,682,625,573,516,500cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=7.94−7.90(m,4H),7.82(dt,J=14.8,2.3Hz,1H),7.77−7.72(m,2H),7.70−7.65(m,4H),7.04−6.90(m,1H),65.8(td,J=54.0,4.3Hz,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=143.3(t,J=26.4Hz),135.0,131.7,130.7,124.2, 123.3(t,J=24.1Hz),120.6(q,J=320.7Hz),111.0(t,J=239.8Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−79.6(s,3F),−117.5(ddd,J=53.6,8.3,2.3Hz,2F)。
元素分析 計算値C,46.60、H,3.18、測定値C,46.68,H,3.23。
【0032】
〔実施例2〕 [(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート(7)の調製
【0033】
【化6】
【0034】
アルゴン気流下、撹拌子を備えた50mlのナフ型二口フラスコに、実施例1で調製した[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート(6)(433mg,1.05mmol,1.05eq.)及びアセトニトリル(4mL)を入れ、溶解させた後、次いで、カリウム ヘキサフルオロホスフェート(184mg,1.00mmol)を添加し、室温下、2時間反応を行った。反応終了後、濃縮し得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/アセトン=2/1 vol/vol)で精製し、目的物の[(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート(7)を白色固体として得た(394.6mg,0.960mmol,収率96%)。
白色結晶。
融点:92.5−93.7℃。
IR(ATR):3078,1449,1359,1134,1053,842,822,746,730,555cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=7.90(d,J=7.5Hz,4H),7.83(t,J=7.4Hz,4H),7.75(t,J=7.5Hz,2H),7.53(d,J=15.1Hz,1H),6.89(m,1H),6.55(t,J=53.9Hz,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=143.1(t,J=24.9Hz),134.9,131.6,130.4,123.4,122.1(t,J=11.6Hz),110.6(t,J=239.8Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−73.2(d,J=71.4Hz,6F),−118.9(d,J=7.1Hz,1F),−119.1(d,J=7.2Hz,1H)。
【0035】
〔実施例3〕 1−(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボニトリル(8)の調製
【0036】
【化7】
【0037】
撹拌子を備えた25mLの丸底フラスコに、室温、大気下、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)、塩基として炭酸カリウム(124.4mg,0.9mmol,3.0eq)及びアセトン(3.0mL)を仕込み、溶解させた後、次いでこれに実施例1で調製した(1E)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン−1−イル]ジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート(6)(129.90mg,0.315mmol,1.05eq)を添加し、1時間反応を行った。
【0038】
反応終了後、反応液をセライトろ過により固形物をろ別、濃縮し、粗製物を得た。
得られた粗製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1 vol/vol)で精製し、目的物の1−(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボニトリル(8)を白色固体として得た(73.0mg,0.283mmol,収率98%)。
融点:62.8−63.1℃。
IR(ATR):3109,3048,2248,2236,1977,1334,1146,1078,1055,762,728,685,608,561cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=8.02−7.96(m,2H),7.83−7.75(m,1H),7.71−7.64(m,2H),5.83(td,J=54.8,4.3Hz,1H),2.71−2.63(m,1H),2.22−2.15(m,1H),1.92(t,J=6.8Hz,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=136.0,135.5,129.9,129.0,112.8,112.5(t,J=242.9Hz),35.1(d,J=3.2Hz),28.0(t,J=30.4Hz),16.5(t,J=4.7Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−115.8(ddd,J=295.7,54.9,9.8Hz,1F),
−118.8(ddd,J=295.6,56.0,9.5Hz,1F)。
GC−MS(m/z):257(17,M+),143(4),142(7),141(85),77(100),51(25),50(6)。
元素分析 計算値C,51.36、H,3.53、N,5.44、測定値C,51.39,H,3.23、N,5.42。
【0039】
〔実施例4〕 エトキシエチル 1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(9)の調製
【0040】
【化8】
【0041】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えて2−エトキシエチル シアノ酢酸を(42.1μL,0.29mmol)を用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1 vol/vol)で単離精製し、目的物のエトキシエチル 1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(9)を無色透明液体として得た(61.5mg,0.264mmol、収率91%)。
IR(ATR):2978,2874,2252,1740,1293,1176,1103,1043,862,759cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=5.81(td,J=48.5,5.2Hz,1H),4.48−4.22(m,2H),37.1(t,J=3.4Hz,2H),3.57,3.62−3.43(m,2H),2.58−2.48(m,1H),2.02−1.95(m,1H),1.85(t,J=6.5Hz,1H),1.23(t,J=5.7Hz,3H)。
13C−NMR(100MHz):δ=165.6,114.7(t,J=240.6Hz),113.8,67.3,66.5,66.4,30.0(t,J=30.3Hz),19.3(t,J=2.3Hz),16.7(d,J=6.2Hz),14.8。
19F−NMR(376MHz):δ=−113.9(dd,J=296.9,54.9Hz,1F),−118.0(dd,J=294.4,54.8Hz,1F)。
GC−MS(m/z):188(33),162(8),144(26),116(19),89(10),80(12),72(28),59(100),51(9)。
【0042】
〔実施例5〕 ジエチル [1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シクロプロピル]ホスフェート(10)の調製
【0043】
【化9】
【0044】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えてジエチル (シアノメチル)リン酸エステル(47.2μL,0.29mmol)を用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/アセトン=10/1 vol/vol)で単離精製し、目的物のジエチル [1−シアノ−2−(ジフルオロメチル)シアノプロピル]ホスフェート(10)を無色透明液体として得た(57.4mg,0.154mmol、収率53%)。
IR(ATR):2988,2920,2241,1263,1165,1100,1012,982,796,602,553cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=5.79(td,J=54.7,5.6Hz,1H),4.26(quin,J=7.0Hz,4H),2.44−2.29(m,1H),1.89−1.80(m,1H),1.74−1.66(m,1H),1.46−1.38(m,6H)。
13C−NMR(100MHz):δ=115.4,114.4(td,J=240.5,2.4Hz),64.4(t,J=6.2Hz),26.1(t,J=30.4Hz),16.2(t,J=5.1Hz),15.3(quin,J=3.1Hz),8.31(dd,J=195.4,3.9Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−114.2(ddd,J=294.5,54.9,9.6Hz,1F),−116.8(ddd,J=293.2,54.8,6.0Hz,1H)。
GC−MS(m/z):226(77),198(100),180(53),178(24),157(36),146(35),132(13),116(18),109(49),97(20),81(42),65(17)。
【0045】
〔実施例6〕 tert−ブチル 1−メトキシカルボニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(11)の調製
【0046】
【化10】
【0047】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えてマロン酸tert−ブチルメチル(49.0μL,0.29mmol)を用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=5/1 vol/vol)で単離精製し、目的物のtert−ブチル 1−メトキシカルボニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(11)を無色透明液体として得た(67.3mg,0.287mmol、収率99%)。
IR(ATR):2981,1705,1370,1328,1252,1210,1160,1222,1091,1042,840cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=5.69(td,J=55.8Hz,1H),2.40(s,3H),2.42−2.29(m,1H),1.71−1.65(m,1H),1.51(s,9H),1.44−1.38(m,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=200.6,167.1,115.1(dd,J=237.4,236.6Hz),83.4,39.9(d,J=4.7Hz),28.94,28.90(t,J=30.4Hz),27.8,18.1(dd,J=6.2,1.5Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−110.9(dd,J=293.2,57.1Hz,1F),−116.9(ddd,J=292.1,56.0,10.7Hz,1F)。
GC−MS(m/z):179(29),161(63),119(29),114(15),90(7),57(100)。
【0048】
〔実施例7〕 1−フェニルスルホニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(12)の調製
【0049】
【化11】
【0050】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えてフェニルスルホニル酢酸メチル(74.7μL,0.45mmol)を用い、他の試剤を1.55倍のスケールで用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1 vol/vol)で単離精製することにより目的物の1−フェニルスルホニル−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンカルボン酸エステル(12)を無色透明液体として得た(112.5mg,0.387mmol,収率86%)。
IR(ATR):2959,1736,1447,1310,1135,1082,1048,929,743,686,602,564cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=79.4(d,J=7.4Hz,2H),75.8(t,J=7.4Hz,2H),57.7(td,J=55.5,6.4Hz,1H),3.68(s,3H),2.78−2.66(m,1H),2.32−2.24(m,1H),2.17(s,1H),2.06−1.99(m,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=164.8,138.8,134.1,129.0,128.9,113.9(t,J=238.2Hz),53.3,47.4(t,J=6.2Hz),29.6(dd,J=35.8,30.3Hz),16.2(d,J=7.0Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−111.5(dd,J=296.8,54.8Hz,1F),−117.2(ddd,J=296.8,54.8,10.7Hz,1F)。
GC−MS(m/z):259(10),226(24),175(6),159(18),147(29),141(20),125(12),77(100),59(12),51(25)。
【0051】
〔実施例8〕 ジベンジル 2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンジカルボン酸エステル(13)の調製
【0052】
【化12】
【0053】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えてマロン酸ジベンジル(71.7μL,0.3mmol)を用い、他の試剤を1.07倍のスケールで用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=3/1 vol/vol)で単離精製することにより目的物のジベンジル 2−(ジフルオロメチル)シクロプロパンジカルボン酸エステル(13)を無色透明液体として得た(99.9mg,0.291mmol,収率94%)。
IR(ATR):3036,2958,1726,1456,1379,1315,1266,1198,1127,1096,1032,961,905,736,695,584cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=7.40−7.20(m,10H),5.69(td,J=55.7,5.2Hz,1H),5.22−5.09(m,4H),2.45−2.34(m,1H),1.80(td,J=5.5,1.2Hz,1H),1.62−1.54(m,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=167.8,166.1,134.60,134.56,128.3,128.2,128.14,128.12,128.0,127.8,114.0(t,J=238.2Hz),67.7,67.5,32.0(dd,J=5.4,2.4Hz),28.0(t,J=31.1Hz),15.9(q,J=3.1Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−112.4(dd,J=292.0,56.0Hz,1F),−118.7(ddd,J=292.1,56.0,10.7Hz,1F)。
GC−MS(m/z):269(9),180(6),163(54),123(5),119(5),107(55),92(10),91(100),77(6),65(11),51(3)。
【0054】
〔実施例9〕 1,1−ビス(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパン(14)の調製
【0055】
【化13】
【0056】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えてビス(フェニルスルホニル)メタン(91.9mg,0.3mmol)を用い、他の試剤を1.03倍のスケールで用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1 vol/vol)で単離精製することにより目的物の1,1−ビス(フェニルスルホニル)−2−(ジフルオロメチル)シクロプロパン(14)を無色透明液体として得た(112.2mg,0.291mmol,収率97%)。
IR(ATR):3104,3070,1730,1448,1325,1243,1155,1050,950,791,749,722,613cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=7.98(d,J=7.6Hz,2H),7.91(d,J=7.5Hz,2H),7.74−7.68(m,2H),7.59−7.55(m,4H),6.40(td,J=54.8,7.3Hz,1H),2.94−2.80(m,1H),2.38−2.31(m,1H),2.30−2.24(m,1H)。
13C−NMR(100MHz):δ=138.7,137.6,134.8,134.6,129.5,129.3,129.0,128.9,113.4(dd,J=240.6,236.7Hz),61.8(d,J=7.8Hz),32.3(dd,J=39.7,32.7Hz),16.9(t,J=7.0Hz)。
19F−NMR(376MHz):δ=−108.2(ddd,J=300.4,54.8,3.6Hz,1F),−111.2(dddd,J=299.2,54.9,11.9,3.6Hz,1F)。
GC−MS(m/z):308(6),183(13),167(11),163(17),147(15),141(23),125(45),105(9),97(10),77(100)。
【0057】
〔実施例10〕 5,7−ジメチル−1−(ジフルオロメチル)−5,7−ジアザスピロ[2,5]オクタン−4,6,8−トリオン(15)の調製
【0058】
【化14】
【0059】
実施例3と同じ反応装置に、フェニルスルホニルアセトニトリル(52.5mg,0.29mmol)に替えて1,3−ジメチルバルビツル酸(68.7mg,0.44mmol)を用い、他の試剤を1.52倍のスケールで用いた以外、実施例2と同じ操作により粗製物を得、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1 vol/vol)で単離精製することにより目的物の5,7−ジメチル−1−(ジフルオロメチル)−5,7−ジアザスピロ[2,5]オクタン−4,6,8−トリオン(15)を白色結晶として得た(83.7mg,0.361mmol,収率82%)。
融点:89.6−91.2℃。
IR(ATR):3105,1667,1447,1386,1298,1227,1089,1036,852,752cm-1
1H−NMR(400MHz):δ=6.09(dt,J=55.4,7.5Hz,1H),3.339(s,3H),3.336(s,3H),2.74−2.62(m,1H),2.18(d,J=3.7Hz,1H),2.16(d,J=3.3Hz)。
13C−NMR(100MHz):δ=166.9,166.5,151.1,114.1(dd,J=238.2,236.7Hz),37.6(dd,J=38.9,30.4Hz),30.6(d,J=6.2Hz),28.997,28.904,25.0(d,J=9.4Hz)。
19F−NMR(376MHz)δ=−111.0(dd,J=299.2,54.9Hz,1F),117.4(ddd,J=299.2,56.0,9.5Hz,1F)。
GC−MS(m/z):232(23,M+),212(60),181(100),174(20),147(17),124(27),99(23),90(35),56(21)。
元素分析 計算値C,46.56、H,4.34、N,12.07、測定値C,46.66,H,4.35、N,12.07。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により提案された新規ジフルオロメチル基含有化合物は電子不足メチレンとの反応が可能で、工業的に有用なジフルオロメチル基含有シクロプロパン化合物の製造が可能となる。