(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の栓体では、複数の混注用ディンプルを互いに識別できる構成となっておらず、針を刺した後も目立たないため、同じ混注用ディンプルに針を刺す回数が多くなる場合がある。この場合、コアリング(栓体の一部(ゴム片)が針によって削り取られる現象)が発生する可能性が高くなるとともに、シール性能の低下も懸念される。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、同じ混注用ディンプルに針を刺す回数を低減することができる栓体及び医療用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、医療用容器の口部に配置され
、前記口部を封止する弾性材料からなる栓体であって、混注時に刺される複数の混注用ディンプルと、前記混注用ディンプルと同数の複数の文字を有し、
前記複数の文字にて薬剤を前記医療用容器内に注入する操作である混注を示唆する単語を表す混注表記部と、前記複数の混注用ディンプルとは識別可能に設けられ、輸液ラインの接続時に刺される排出用ディンプルと、を備え、前記各混注用ディンプルの近傍に、前記複数の文字が一文字ずつ割り当てられており、前記複数の文字の間隔は、前記各混注用ディンプルと前記各文字との間隔の2倍以上であり、且つ、前記各文字の高さの1.5倍以上であり、前記排出用ディンプルの近傍に、排出を示唆する単語を表す排出表記部が設けられて
おり、前記複数の文字はそれぞれ、前記栓体の表面に、該表面から前記栓体の厚さ方向に突出した凸形状、または、該表面に対して前記栓体の厚さ方向に窪んだ溝として形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された栓体によれば、混注表記部を構成する各文字が、各混注用ディンプルの近傍に割り当てられている。このため、医療用容器の内容液に対して複数種類の薬剤を混注するために栓体に針を何度も刺す際に、各文字を目印にすることで、各混注用ディンプルに対して針を刺す回数を平準化することができる。これにより、ある特定の混注用ディンプルが他の混注用ディンプルよりも多い回数刺されることを防止することができ、結果として、1つの混注用ディンプルあたりの針の刺される回数を低減できる。よって、コアリングの発生及びシール性能の低下を抑制することができる。
【0009】
上記の栓体において、前記各混注用ディンプルと前記各文字との間隔は、前記各文字の高さの半分以下であってもよい。これにより、文字が混注用ディンプルにより近接しているように見えやすくなる。
【0010】
上記の栓体において、前記複数の文字の間隔は、前記各混注用ディンプルの直径以上であってもよい。これにより、文字の間隔が大きく見えやすくなる。
【0011】
上記の栓体において、前記混注表記部は、2つの前記文字からなる単語であり、2つの前記文字は、2つの前記混注用ディンプルの各中心を通る円よりも外側に配置されており、2つの前記混注用ディンプルの離間方向に関して、前記各文字と前記各混注用ディンプルとは、前記各混注用ディンプルの直径の20%以上の長さで重なってもよい。このように各文字が配置されることにより、各文字が各混注用ディンプルにより近接しているように見えやすくなる。
【0012】
また、本発明は、弾性材料からなる栓体が口部に配置され
、前記栓体で前記口部が封止された医療用容器であって、前記栓体は、混注時に刺される複数の混注用ディンプルと、前記混注用ディンプルと同数の複数の文字を有し、
前記複数の文字にて薬剤を前記医療用容器内に注入する操作である混注を示唆する単語を表す混注表記部と、前記複数の混注用ディンプルとは識別可能に設けられ、輸液ラインの接続時に刺される排出用ディンプルと、を備え、前記各混注用ディンプルの近傍に、前記複数の文字が一文字ずつ割り当てられており、前記複数の文字の間隔は、前記各混注用ディンプルと前記各文字との間隔の2倍以上であり、且つ、前記各文字の高さの1.5倍以上であり、前記排出用ディンプルの近傍に、排出を示唆する単語を表す排出表記部が設けられて
おり、前記複数の文字はそれぞれ、前記栓体の表面に、該表面から前記栓体の厚さ方向に突出した凸形状、または、該表面に対して前記栓体の厚さ方向に窪んだ溝として形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の栓体及び医療用容器によれば、同じ混注用ディンプルに針を刺す回数を低減することができ、これにより、コアリングの発生及びシール性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る栓体及び医療用容器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る栓体10Aを備えた医療用容器12の全体斜視図である。医療用容器12は、内部に液室15を有する容器本体としてのバッグ14と、バッグ14の下端部14bに取り付けられた口部16と、口部16の内側に配置された栓体10Aと、口部16に溶着されたフィルム24とを備える。バッグ14は筒状に成形されている。
【0017】
バッグ14は、例えば、インフレーション成形法により成形することができる。また、バッグ14は、2枚の樹脂製シートを重ね、液室15を形成するように所定領域を周回してシールしたものや、1枚のシートを2つ折りにして所定領域をシールして袋状にしたものであってもよい。
【0018】
バッグ14の上端部14aには、折り曲げ可能なタブ18が設けられる。タブ18を折り曲げ、ハンガー等に引っ掛けることにより、医療用容器12をハンガー等に吊り下げることができる。なお、タブ18に代えて、ハンガー等に設けられるフック部が挿入可能な穴が設けられてもよい。
【0019】
バッグ14の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、環状ポリオレフィンのようなポリオレフィン類が挙げられる。また、これらのポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、あるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし、柔軟化させた軟質樹脂が挙げられる。
【0020】
バッグ14の液室15には、予め所定の液体11が収容されている。液室15に収容される液体11としては、例えば、生理食塩水、リンゲル液等が挙げられる。この液体11は、後述する薬剤を希釈するために使用される。
【0021】
医療用容器12において、口部16は、流体の出入口を形成する部分である。
図2に示すように、口部16は、バッグ14内(液室15)と連通する内腔21が形成された口部本体20と、バッグ14とは反対側で口部本体20に固定されたキャップ22とを有する。
【0022】
口部本体20は、両端が開口した中空筒状(本実施形態では、中空円筒状)の部材であり、その一端部がバッグ14の下端部14bに結合されている。口部本体20の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の硬質樹脂が挙げられる。
【0023】
キャップ22は、口部本体20との間に栓体10Aを保持することにより、栓体10Aを口部本体20に対して固定する。キャップ22は、栓体10Aを囲む環状の側周壁34と、側周壁34の下端(バッグ14側とは反対側の端部)から内方に突出した径方向壁36と、径方向壁36の内端から上方(口部本体20側)に突出した環状の係合突部38とを有する。側周壁34と係合突部38との間に環状の係合溝40が形成される。
【0024】
側周壁34の上端には、外方に膨出するフランジ42が設けられる。キャップ22に設けられたフランジ42と、口部本体20の外周面に膨出形成されたフランジ44とが接合されることにより、キャップ22が口部本体20に対して固定されている。キャップ22と口部本体20との接合方法は、特に限定されず、例えば、融着(熱融着、超音波融着)、接着、嵌合等が挙げられる。
【0025】
栓体10Aは、口部本体20の他端側を封止する部材である。栓体10Aは、後述する針70(
図5参照)及び瓶針76(
図6参照)を刺すことができ、且つ針70及び瓶針76を抜いた後も液密性及び気密性を維持できるように、弾性材料により構成される。すなわち、栓体10Aは、いわゆるゴム栓である。
【0026】
栓体10Aは、針70及び瓶針76が刺される刺通部26(栓体10Aの本体)と、刺通部26の外周部に沿って周方向に延在する係合環28と、刺通部26と係合環28とを連結する連結部30とを有しており、全体として円盤状に構成される。また、栓体10Aの一端面と他端面には、刺通部26と係合環28との間に第1環状溝31と第2環状溝32とが形成される。第1環状溝31に口部本体20の下端が嵌合する。キャップ22に設けられた係合溝40に栓体10Aの係合環28が嵌合し、栓体10Aに設けられた第2環状溝32にキャップ22の係合突部38が嵌合する。
【0027】
栓体10Aの構成材料としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
医療用容器12の初期状態(使用前状態)において、フィルム24はキャップ22の端部に剥離可能に溶着され、栓体10Aの表面(刺通部26の表面27)がフィルム24によって覆われており、これにより、外部環境による栓体10Aの汚染が防止されるとともに、使用済みかどうかを見分けることができる。フィルム24とキャップ22との溶着部は、キャップ22の端部に沿って環状に形成される。医療用容器12を使用する際には、キャップ22からフィルム24が剥離される。
【0029】
フィルム24は、例えば、基材層と溶着層とが積層された構造を有する。基材層の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、あるいはアルミニウム等の金属が挙げられる。溶着層の構成材料は、基材層よりも融点の低い材料が用いられる。
【0030】
次に、栓体10Aの構成について、より詳細に説明する。
図3及び
図4に示すように、栓体10Aの表面(具体的には、刺通部26の表面27)には、混注時(
図5参照)に刺される複数の混注用ディンプル46と、輸液ライン72の接続時(
図6参照)に刺される排出用ディンプル48とが設けられる。
【0031】
複数の混注用ディンプル46は互いに離間しており、本実施形態では、混注用ディンプル46は2つ設けられる。混注を行う際には、薬剤が充填されたシリンジ68の針70(
図5参照)が混注用ディンプル46に刺される。各混注用ディンプル46は、栓体10Aの厚さ方向に凹んだ円形の凹部50と、凹部50を囲み且つ栓体10Aの厚さ方向に突出した円形の枠部51とを有する。本実施形態では、凹部50は、略円柱状に形成されており、平坦な底部50aを有する。
【0032】
栓体10Aにおいて、排出用ディンプル48は1つだけ設けられる。輸液を行う際には、輸液ライン72の端部に設けられた瓶針76(
図6参照)が排出用ディンプル48に刺される。排出用ディンプル48は、栓体10Aの厚さ方向に凹んだ円形の凹部52と、凹部52を囲み且つ栓体10Aの厚さ方向に表面27から突出した円形の枠部53とを有する。本実施形態では、凹部52は、円柱状に形成されており、平坦な底部52aを有する。排出用ディンプル48の枠部53の太さ(枠部53の線幅)は、混注用ディンプル46の枠部51の太さよりも太く形成されており、これにより、混注用ディンプル46と排出用ディンプル48との識別性が向上されている。
【0033】
また、栓体10Aの表面には、混注用ディンプル46の近傍に配置され、「混注」を示唆する単語を表す混注表記部60と、排出用ディンプル48の近傍に配置され、「排出」を示唆する単語を表す排出表記部62とが設けられる。
【0034】
混注表記部60は、混注用ディンプル46と同数の文字61で構成される。本実施形態では、混注用ディンプル46は2つ設けられるため、混注表記部60を構成する文字61も2つ設けられる。具体的には、混注表記部60を構成する2つの文字61(61a、62b)は、「I」と「N」である。従って、混注表記部60は、英単語の「IN」と読める。図示例の混注表記部60を構成する各文字61は、栓体10Aの厚さ方向に表面27から突出した凸形状である。なお、各文字61は、栓体10Aの厚さ方向に表面27に対して窪んだ溝であってもよい。
【0035】
混注用ディンプル46を互いに識別できるように、各混注用ディンプル46に、混注表記部60を構成する各文字61が割り当てられている。すなわち、2つの混注用ディンプル46が設けられた本実施形態では、一方の混注用ディンプル46aの近傍に一方の文字61aが配置され、他方の混注用ディンプル46bの近傍に他方の文字61bが配置され、文字61a、61bの間隔L1は、各混注用ディンプル46と各文字61との間隔L2よりも大きくされている。ここで、間隔L1は、混注表記部60において隣接する文字61の最短距離であり、間隔L2は、対応する混注用ディンプル46の外周部(図示例では、枠部51の外周面)と文字61との最短距離である。
【0036】
各文字61が混注用ディンプル46を識別する目印になるためには、各文字61の間隔L1はできるだけ大きいことが好ましく、各混注用ディンプル46と各文字61との間隔L2はできるだけ小さいことが好ましい。そこで、文字61の間隔L1は、各混注用ディンプル46と各文字61との間隔L2の2倍以上に設定され、且つ、各文字61の高さL3の1.5倍以上に設定される。ここで、文字61の高さL3は、通常の向きで文字61を見たときの文字61の上端から下端までの寸法である。
【0037】
また、文字61の間隔L1は、各混注用ディンプル46と各文字61との間隔L2の3倍以上に設定されることが好ましく、4倍以上に設定されることがより好ましい。間隔L1と間隔L2との関係が上記のように設定されることにより、文字61が混注用ディンプル46により近接しているように見えやすくなる。
【0038】
また、文字61の間隔L1は、各文字61の高さL3の1.8倍以上に設定されるのが好ましい。上記のように設定されることにより、文字61の間隔L1が大きく見えやすくなる。
【0039】
また、各混注用ディンプル46と各文字61との間隔L2は、各文字61の高さL3の半分以下に設定されるのが好ましく、各文字61の高さL3の3分の1以下に設定されるのがより好ましい。上記のように設定されることにより、文字61が混注用ディンプル46により近接しているように見えやすくなる。
【0040】
図3のように、混注表記部60を構成する各文字61は、刺通部26の外周部の近傍に配置されるのが好ましい。具体的には、混注表記部60を構成する各文字61は、混注用ディンプル46の各中心Oを通る直線Aよりも、栓体10Aの径方向外側に配置される。また、混注表記部60を構成する各文字61は、2つの混注用ディンプル46の各中心Oを通る円Bよりも外側に配置される。このように、混注表記部60を構成する各文字61が刺通部26の外周部の近傍に配置されることにより、文字61の間隔L1を大きくしやすい。
【0041】
本実施形態に係る栓体10Aでは、混注表記部60を構成する各文字61の向き(高さ方向)は、上記直線Aに垂直ではなく、各文字61が各混注用ディンプル46側に傾くように、直線Aに対して傾斜している。このため、各文字61と各混注用ディンプル46との間の面積が小さく、各文字61が各混注用ディンプル46により近接しているように見えやすくなっている。
【0042】
文字61の間隔L1は、各混注用ディンプル46の直径D(図示例の場合、枠部51の外周部の直径)以上に設定されるとよい。これにより、文字61の間隔L1が大きく見えやすくなる。
【0043】
2つの混注用ディンプル46の離間方向(
図3中のX方向)に関して、混注表記部60を構成する各文字61と各混注用ディンプル46とが、各混注用ディンプル46の直径Dの20%以上の長さで重なるように、各文字61が配置されるのがよい。このように各文字61が配置されることにより、各文字61が各混注用ディンプル46により近接しているように見えやすくなる。
【0044】
本実施形態において、排出表記部62は、排出用ディンプル48よりも栓体10Aの径方向外側に配置される。排出表記部62を構成する文字63は、「O」と「U」と「T」である。従って、排出表記部62は、英単語の「OUT」と読める。図示例の排出表記部62を構成する各文字63は、栓体10Aの厚さ方向に表面27から突出した凸形状である。なお、各文字は、栓体10Aの厚さ方向に表面27に対して窪んだ溝状であってもよい。
【0045】
栓体10Aの表面27において、複数の混注用ディンプル46と排出用ディンプル48との間には、栓体10Aの厚さ方向に表面27から突出した壁部66が設けられる。壁部66は、複数の混注用ディンプル46と排出用ディンプル48との間に連続して延在しており、複数の混注用ディンプル46側に頂点を有する凸状に屈曲している。この壁部66は、排出用ディンプル48に輸液ライン72の瓶針76を刺した際の亀裂が混注用ディンプル46に達することを阻止するための障壁として機能する。
【0046】
なお、混注表記部60及び排出表記部62に用いられる言語は、英語以外の言語であってもよい。すなわち、混注表記部60及び排出表記部62を表す各単語は、英単語以外の単語であってもよい。従って、各文字61、63は、アルファベット以外の文字であってもよい。
【0047】
本実施形態に係る栓体10A及び医療用容器12は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。ここでは、混注用ディンプル46の数よりも多い種類の薬剤を医療用容器12内の液体11に混注する場合を説明する。
【0048】
まず、口部16のキャップ22からフィルム24を剥がし、栓体10Aの表面27を露出させる。
【0049】
次に、複数種類の薬剤を医療用容器12内に注入する操作(混注)を行う。具体的には、
図5のように、薬剤が充填されたシリンジ68の針70を栓体10Aに刺す。このとき、混注表記部60を構成する一方の文字61a(
図3参照)を目印にして、一方の混注用ディンプル46aに針70を刺し、シリンジ68の図示しない押し子を押し込んで、薬剤を医療用容器12内に注入する。薬剤の注入後、栓体10Aから針70を抜き取ると、針70が貫通していた部分は栓体10A自体の弾性によって自己閉塞するため、医療用容器12の内容液が漏れることはない。なお、混注する薬剤としては、例えば、ビタミン剤、抗生剤、抗がん剤等が挙げられる。
【0050】
次に、他方の文字61b(
図3参照)を目印にして、他方の混注用ディンプル46bに、別の薬剤が充填された別のシリンジ68の針70を刺して薬剤を医療用容器12内に注入し、薬剤の注入後、栓体10Aから針70を抜き取る。このように、ユーザは、異なる文字61が割り当てられた混注用ディンプル46を識別できるため、今回の針70を刺す際には、前回の針70を刺した混注用ディンプル46とは別の混注用ディンプル46を容易に選択して、針70を刺すことができる。従って、3種類目以降の薬剤の注入に際しても、上記と同様に、文字61を目印にして、前回とは異なる混注用ディンプル46に針70を刺すことができる。
【0051】
必要な種類の薬剤が混注されることにより、所望の成分及び濃度に調製された薬液が得られる。
【0052】
次に、
図6のように、医療用容器12に輸液ライン72を接続し、薬液の排出(輸液)を行う。具体的には、輸液ライン72の端部(輸液チューブ74の端部)に設けられた瓶針76を、排出用ディンプル48に刺して栓体10Aを貫通させる。上述したように、栓体10Aの表面27において、複数の混注用ディンプル46と排出用ディンプル48との間には壁部66(
図3、
図4参照)が設けられているため、瓶針76を刺した際に亀裂が混注用ディンプル46まで達することが防止される。瓶針76が栓体10Aを貫通すると、輸液ライン72の内腔とバッグ14内とが連通する。薬液は、バッグ14から排出され、輸液ライン72を介して患者に供給される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る栓体10A及び医療用容器12によれば、混注表記部60を構成する各文字61が、各混注用ディンプル46の近傍に割り当てられている。このため、医療用容器12の内容液に対して複数種類の薬剤を混注するために栓体10Aに針70を何度も刺す際に、各文字61を目印にすることで、各混注用ディンプル46に対して針70を刺す回数を平準化することができる。これにより、ある特定の混注用ディンプル46だけが他の混注用ディンプル46よりも多い回数刺されることを防止することができ、結果として、1つの混注用ディンプル46あたりの針70が刺される回数を低減できる。よって、コアリングの発生及びシール性能の低下を抑制することができる。
【0054】
上述した医療用容器12において、第1実施形態に係る栓体10Aに代えて、
図7〜
図10に示す第2〜第5実施形態に係る栓体10B〜10Eが採用されてもよい。なお、第2〜第5実施形態において、第1実施形態と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
図7に示す第2実施形態に係る栓体10Bに設けられる各混注用ディンプル82及び排出用ディンプル86は、それぞれ円錐状の凹部83、87を有する。栓体10Bのその他の部分の構成は、第1実施形態に係る栓体10Aと同様に構成されている。
【0056】
図8に示す第3実施形態に係る栓体10Cに設けられる各混注用ディンプル82及び排出用ディンプル86は、それぞれ円錐状の凹部83、87を有する。また、栓体10Cでは、混注用ディンプル82が設けられた表面27よりも、排出用ディンプル86が設けられた面84の方が全体的に一段高い。代わりに、栓体10Cには、壁部66(
図4参照)が設けられていない。栓体10Cのその他の部分の構成は、第1実施形態に係る栓体10Aと同様に構成されている。
【0057】
図9に示す第4実施形態に係る栓体10Dは、
図8に示した第3実施形態に係る栓体10Cの変形例であり、排出用ディンプル86が設けられた面が、栓体10Dの径方向外側に向かうにつれて低くなる傾斜面90となっている。栓体10Dのその他の部分の構成は、第3実施形態に係る栓体10Cと同様に構成されている。栓体10Dの場合、排出用ディンプル86が設けられた面が傾斜面90であることにより、排出表記部62を構成する各文字63の厚みt2が、
図8に示した栓体10Cにおける各文字63の厚みt1よりも厚い。よって、排出表記部62を構成する各文字63の視認性を向上できる。
【0058】
図10に示す第5実施形態に係る栓体10Eにおいて、混注表記部60を構成する各文字61は、文字高さ方向が、混注用ディンプル46の各中心を通る直線Aに対して垂直になるように配置されている。また、栓体10Eでは、排出用ディンプル48の外側に、表面27から突出する外周リング92が設けられる。外周リング92は、瓶針76を刺した際の亀裂が混注用ディンプル46に達することを阻止する障壁として機能させることもできる。また、栓体10Eでは、排出用ディンプル48よりも混注用ディンプル46側、すなわち、混注用ディンプル46と排出用ディンプル48との間に排出表記部62が配置される。代わりに、栓体10Eには、壁部66(
図4参照)が設けられていない。栓体10Eのその他の部分の構成は、第1実施形態に係る栓体10Aと同様に構成されている。
【0059】
上述した第2〜第5実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0060】
なお、第1〜第5実施形態では、2つの混注用ディンプル46(82)が設けられたが、3つの混注用ディンプル46(82)が設けられてもよい。この場合、3つの混注用ディンプル46(82)の各々の近傍に、「混注」を示唆する単語を表す異なる3つの文字が配置される。例えば、3つの文字を「M」、「I」、「X」とした場合、英単語の「MIX」と読める。
【0061】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。