特許第6371094号(P6371094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371094
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20180730BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180730BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20180730BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20180730BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20180730BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H05B33/02
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-71441(P2014-71441)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195094(P2015-195094A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森田 壮臣
(72)【発明者】
【氏名】倉永 卓英
(72)【発明者】
【氏名】奥 規夫
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−190794(JP,A)
【文献】 特開2014−026780(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0248867(US,A1)
【文献】 特開2005−038633(JP,A)
【文献】 特開2005−310709(JP,A)
【文献】 特開2002−252082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/12
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面上に、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層されて構成される有機EL素子の発光領域を備える複数の画素を備える第1基板と、
前記第1電極上に配置され、前記発光領域に対応する位置に前記有機EL層と接続される前記第1電極を開口する開口部を備える第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上の前記開口部の形成されていない領域に所定の高さを有して配置される第2絶縁層と、
前記第2電極上に、前記有機EL素子を覆って配置される封止膜と、を備え、
前記有機EL層は、前記開口部上、前記第1絶縁層上、及び前記第2絶縁層上に配置されて前記第2絶縁層の側面上には配置されない領域を含み、
前記開口部は、平面的に見て、前記第2絶縁層の隣り合う2辺に沿うL字形状を有し、
前記第2電極は、前記開口部に重畳する領域、前記第2絶縁層の側面に重畳する領域、及び前記第2絶縁層の上面に重畳する領域に亘って連続的に設けられ、
前記第2絶縁層の側面上の前記有機EL層の配置されない領域において、前記第2絶縁層と、前記第2電極または前記封止膜とが接することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記封止膜は、窒化シリコンまたは酸化シリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、樹脂を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1基板と対向して配置される第2基板を有し、
前記第1基板及び第2基板は、樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記発光領域は、前記第1基板上に複数設けられ、
前記第2絶縁層は、複数の前記発光領域に囲まれた領域に設けられることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第2絶縁層は、平面的に見て矩形形状を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
第1面上に、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層されて構成される有機EL素子の発光領域を備える複数の画素を備える第1基板と、
前記第1電極上に配置され、前記発光領域に対応する位置に前記有機EL層と接続される前記第1電極を開口する第1開口部を備える第1絶縁層と、
前記第2電極上に、前記有機EL素子を覆って配置される封止膜と、を備え、
前記有機EL層は、前記第1開口部上及び前記第1絶縁層上に配置されて、前記発光領域以外の領域に前記第1絶縁層を開口する第2開口部を備え、
前記第1開口部は、平面的に見て、前記第2開口部の隣り合う2辺に沿うL字形状を有し、
前記第2電極は、前記第1開口部に重畳する領域、及び前記第2開口部に亘って連続的に設けられ、
前記有機EL層の前記第2開口部を介して、前記第1絶縁層と、前記第2電極または前記封止膜とが接することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
前記封止膜は、窒化シリコンまたは酸化シリコンを含むことを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記第1絶縁層は、樹脂を含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記第1基板と対向して配置される第2基板を有し、
前記第1基板及び第2基板は、樹脂を含むことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記発光領域は、前記第1基板上に複数設けられ、
前記第2開口部は、複数の前記発光領域に囲まれた領域に設けられることを特徴とする、請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
前記第2開口部は、平面的に見て矩形形状を有することを特徴とする、請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(electro-luminescence)素子を備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス材料を利用した有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、有機材料を選択することにより、あるいは有機EL素子の構造を適当なものとすることにより、白色発光はもとより可視光帯域において各色の発光を実現できる。このため有機EL素子を用いた表示装置や照明器具の開発が進められている。
【0003】
有機EL表示装置は、各画素に有機EL素子を備えており、各画素における有機EL素子はトランジスタと接続され、該トランジスタを介して発光が制御される。有機EL素子はトランジスタが形成された素子基板に形成される。有機EL表示装置は、このような画素がマトリクス状に配列した画素アレイを有して構成され、有機EL素子から発光した光が、素子基板又は素子基板上に対向配置される対向基板側に出射されることにより、その面に表示画面が形成される。
【0004】
画素の構造において、有機EL素子とトランジスタとの間には層間絶縁層が設けられているのが通常である。そして、有機EL素子は、一対の電極間に有機エレクトロルミネセンス材料を含む層(以下、「有機EL層」という。)を備えており、有機EL素子の一方の電極とトランジスタのソース・ドレイン電極とは、層間絶縁層に形成されたコンタクトホールにおいて電気的に接続される。また、有機EL素子は、雰囲気中の水分・酸素等に曝されると急速に劣化するため、その表面が、窒化シリコン(SiN)膜等からなる封止層によって覆われることがある。
【0005】
このような構成を備える有機EL表示装置は、有機EL表示装置に対して外力が加わると、有機EL素子に含まれる有機EL層と電極等との間の界面、あるいは封止層と有機EL素子との間の界面において層間剥離を生じることがあった。
【0006】
そこで、従来の有機EL表示装置には、このような層間剥離を抑制するために、隣接する画素の電極間に挟まれた領域に、電極と同じ材料を用いて複数の凸状構造物を形成し、この凸状構造物上に有機化合物層から封止層に至る各層を形成することにより、各層の表面に形成された凹凸によって積層方向に隣接する層間の接触面積を増やし、層間の界面における密着力を高めようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−077382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の有機EL表示装置は、有機化合物層、電極、及び封止層の各層を凸状構造物の凹凸に倣うように形成することで、積層される各層において隣接する層間の接触面積を増加させ、層間剥離の抑制を図ろうとしている。しかしながら、各層に凹凸面が形成されたところで、積層される薄膜において隣接する層自体に変化はないため、下層に位置する層とその上層に積層される層とでその付着力も変化しないことから、層間剥離を抑制することができない虞がある。
【0009】
また、上述した従来の有機EL表示装置は、凸状構造物上に配置される複数層に凹凸面を形成しようとすると、上層に至る程、下層の厚みによって表面の凹凸が小さくなり、凹凸面が平坦化されることによって積層方向に隣接する層間の密着力が弱まり、層間剥離を生じさせる虞がある。
【0010】
そこで本発明は、有機EL素子と隣接する層との間の層間剥離を防ぎ、高信頼性を確保することの可能な有機EL表示装置を提供することを目的の一つとする。また、このような構成を、製造工程を大幅に変更することなく、簡素な構造で実現することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置は、第1面上に、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層されて構成される有機EL素子の発光領域を備える複数の画素を備える第1基板と、前記第1電極上に配置され、前記発光領域に対応する位置に前記有機EL層と接続される前記第1電極を開口する開口部を備える第1絶縁層と、前記第1絶縁層上の前記開口部の形成されていない領域に所定の高さを有して配置される第2絶縁層と、前記第2電極上に、前記有機EL素子を覆って配置される封止膜と、を備え、前記有機EL層は、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層上に配置されて前記第2絶縁層の側面上には配置されない領域を含み、前記第2絶縁層の側面上の前記有機EL層の配置されない領域において、前記第2絶縁層と、前記第2電極または前記封止膜とが接することを特徴とする。
【0012】
前記封止膜は、窒化シリコンまたは酸化シリコンからなるものであってもよい。
【0013】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、樹脂からなるものであってもよい。
【0014】
前記第1基板と対向して配置される第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板は、樹脂からなるものであってもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置は、第1面上に、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層されて構成される有機EL素子の発光領域を備える複数の画素を備える第1基板と、前記第1電極上に配置され、前記発光領域に対応する位置に前記有機EL層と接続される前記第1電極を開口する第1開口部を備える第1絶縁層と、前記第2電極上に、前記有機EL素子を覆って配置される封止膜と、を備え、前記有機EL層は、前記第1絶縁層上に配置されて、前記発光領域以外の領域に前記第1絶縁層を開口する第2開口部を備え、前記有機EL層の前記第2開口部を介して、前記第1絶縁層と、前記第2電極または前記封止膜とが接することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の積層構造を示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の概略構成を示す図であり、(a)は画素の平面図であり、(b)は(a)に示すA−A´線の断面図である。
図4A】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の概略構成を示す図であり、(a)は画素の平面図であり、(b)は画素の断面図である。
図4B】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の概略構成を示す断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の他の例を示す図であり、(a)は画素の平面図であり、(b)は(a)に示すB−B´線の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の他の例を示す平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる画素の概略構成を示す図であり、(a)は画素の平面図であり、(b)は(a)に示すC−C´線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施することができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の概略構成について、以下、図1及び図2を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、有機EL表示装置100の中央部には、基板2上に、例えば、三原色(赤(R)、緑(G)、青(B))及び白色(W)をそれぞれ発することにより一つの画素10を構成する、4つ一組のサブ画素10aがマトリクス状に複数配置されて構成される。複数の画素10に含まれる各サブ画素10aが選択的且つ発光量を調整して駆動されることによって、画像が表示される表示領域50が形成される。また、表示領域50の周辺領域には、表示領域50内の各画素10を選択的且つ発光量を調整して駆動するための駆動回路(Xドライバ、Yドライバ、シフトレジスタ等)30、40が配置される。
【0020】
基板2上の表示領域50には、各駆動回路30、40に導通した複数の制御信号線と複数のデータ信号線とが互いに交差して配置され、制御信号線とデータ信号線との交差部に対応する位置には、複数の画素10がマトリクス状に配置される。各画素10には、制御信号線から供給される制御信号に応じて画素10に供給されるデータ電圧の書き込みを制御することにより画素10の発光を制御する薄膜トランジスタと、データ信号線から供給されるデータ電圧を保持する容量素子等を備える画素回路が配置される。
【0021】
また、基板2上には、各駆動回路30、40に導通して各駆動回路30、40に対して電源電圧や駆動信号を供給するともにグラウンドへの接地を行うための多数の配線パターンが形成される。各配線パターンの端部は、基板2上の金属電極60aにそれぞれ接続される。各金属電極60aは、例えば、外部から駆動電力、駆動信号及びアース電位等を供給するフレキシブルプリント回路基板(図示せず)に接続される端子領域60として構成されてもよい。
【0022】
次に、図2を参照し、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の積層構造について説明する。図2は、有機EL表示装置100の積層構造を示す縦断面図である。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の積層構造を示す断面図である。有機EL表示装置100は、図2に示すように、基板2上に、表示領域50において各画素10を構成する有機EL素子層1を備える。有機EL素子層1は、基板2側から順に、例えば、第1電極(アノード)、有機EL層、第2電極(カソード)が積層されることにより構成される。第1電極は、例えば、反射電極であり、第2電極は、例えば、透明電極であってもよい。有機EL層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が積層されて構成される。
【0024】
有機EL素子層1は、雰囲気中の水分に曝されると急速に劣化するため、外気から密閉される必要がある。このため、有機EL素子層1の表面は、例えば、CVD成膜された窒化シリコン膜または酸化シリコン膜等の透明な無機膜からなる封止膜3によって覆われるとともに、透明部材からなる基板6によって覆われる。以下、基板2上に有機EL素子層1及び封止膜3が形成された構成を「第1基板7」といい、これに合わせて基板6を「第2基板6」という。第2基板6は、カラーフィルタを含み、有機EL表示装置100の仕様によってはタッチパネル機能を備えた薄膜デバイス等を含むものであってもよい。また、第1基板7及び第2基板6は、樹脂からなる基板を含んで構成され、フレキシブルな表示装置100が構成されるものであってもよい。
【0025】
第1基板7と第2基板6との間隙には、図2に示すように、両者間の距離を一定に保つことにより有機EL素子層1の表面と第2基板6の表面とを平行に保つとともに、両者の界面における反射や屈折を防止するために、例えば、エポキシ樹脂等の透明な樹脂4、5が充填されてもよい。また、樹脂4、5以外にも、シール材等の公知の材料を用いて第1基板7と第2基板6との間隙を維持してもよく、第1基板7と第2基板6との間隙がシール材等を用いて維持される構成であれば、第1基板7と第2基板6との間に空間を有する構成としてもよい。
【0026】
このような構成を有する本発明の第1及び第2の実施形態に係る有機EL表示装置100について、以下、図3乃至図7を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について、図3乃至図4Bを参照して述べる。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の概略構成を示す図であり、(a)は画素10の平面図であり、(b)は(a)に示すA−A´線の断面図である。図4Aは、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の概略構成を示す図であり、(a)は画素10の平面図であり、(b)は画素10の断面図である。図4Bは、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の概略構成を示す断面図であり、図3A(b)に示す点線3aで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10は、図3(a)に示すように、略L字型の発光領域を有する4つのサブ画素10aが、それぞれ矩形状の画素10の角部に、発光領域の略L字型の角部が合わされて配置されてもよい。図3(a)に示す各サブ画素10aの発光領域は、有機EL素子層1の第1電極11と有機EL層12と第2電極12とが積層されて構成される。第1電極11上には第1絶縁層14が配置され、第1絶縁層14の第1電極11を開口する開口部を介して第1電極11と有機EL層12とが接続される。また、第1絶縁層14上の、第1電極11を開口する開口部の形成されていない領域には、所定の高さ(例えば1μm以上の高さ)を有して第2絶縁層15が配置される。第2絶縁層15は、各サブ画素10aの発光領域の形成されない領域に配置され、図3(a)に示すように、画素10の略中央部に配置されてもよい。
【0030】
図3(b)を参照して、有機EL表示装置100の構成をより詳細に述べる。図3(b)は、図3(a)に示す画素10のA−A´線の断面図である。図3(b)に示すように、基板2は、ガラス基板20上に、樹脂層21、第1絶縁膜22、配線層23、第2絶縁膜24、及び平坦化膜25が積層されて構成されてもよい。
【0031】
樹脂層21は、ポリイミドやポリエステル等の樹脂を用いてガラス基板20の全面上に形成される。第1絶縁膜22は、無機絶縁膜であり、樹脂層21上に、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、または窒化シリコンと酸化シリコンとの積層膜を用いて形成される。配線層23には、チタン及びアルミニウム等を用いて形成された複数の金属配線が配置される。第2絶縁膜24は、窒化シリコン膜等の無機絶縁膜であり、配線層23を覆って形成される。第2絶縁膜24上には、ポリイミドやアクリル等の樹脂を用いて平坦化膜25が形成される。
【0032】
ガラス基板20は、製造工程上、樹脂層21の支持基板として利用され、最終的にガラス基板20が樹脂層21から剥離されることにより、有機EL表示装置100が形成されてもよい。このように、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100は、硬質なガラス基板20を用いて形成されることなく、第1基板7及び第2基板6が柔軟性を有する樹脂層21を用いて形成されることにより、フレキシブルな有機EL表示装置100を構成するものであってもよい。一方、樹脂層21を備えることなく、ガラス基板20上に樹脂層21を除く基板2の各構成22〜25を形成することにより、有機EL表示装置100が形成されてもよい。
【0033】
図3(b)に示すように、基板2上には、有機EL素子層1の第1電極11がITO等の透明な導電膜を用いて形成される。有機EL素子層1の第1電極11は、第2絶縁膜24及び平坦化膜25に形成されたコンタクトホールを介して、配線層23の配線に接続される。これにより、有機EL素子層1の第1電極11と、各画素10に対応して形成されたトランジスタのソース・ドレイン電極とが、電気的に接続される。
【0034】
第1電極11上には、第1絶縁層14が、第1電極11を覆って形成された後、第1絶縁層14には、各サブ画素10aの発光領域に対応させて第1電極11の一部を露出させる開口部が形成される。この開口部によって第1電極11の一部が露出された領域上に、後述する製造工程において、有機EL層12及び第2電極13が積層されて接続される。このように、第1絶縁層14は、各サブ画素10aにおいて第1電極11、有機EL層12、及び第2電極13が積層されて構成される発光領域をそれぞれ区画するバンク層として機能する層であってもよい。
【0035】
第1絶縁層14上には、画素10の略中央部であって各サブ画素10aの発光領域が形成されない領域に、所定の高さを有する第2絶縁層15が形成される。第1絶縁層14及び第2絶縁層15は、アクリル、ポリイミド等の樹脂を用いて形成される。
【0036】
以下、さらに図4A及び図4Bを参照し、第1絶縁層14及び第2絶縁層15の構成及び製造工程を詳細に述べる。
【0037】
第2絶縁層15は、図3(b)には、画素10の略中央部のみに配置された構成を図示しているが、図4A(b)に示すように、第2絶縁層15が第1絶縁層14の全面上に配置された後、パターニングにより画素10の略中央部においてのみ、他の領域に配置された第2絶縁層15よりも高い高さを有して形成されてもよい。
【0038】
図3(b)及び図4A(b)に示すように、画素10の略中央部の第1絶縁層14上に配置された第2絶縁層15は、基板2の水平面に対して垂直に近い角度の側面を有する柱状の形状を有していてもよい。また、図4Bに示すように、第2絶縁層15は、側面に滑らかな斜面を有する山型の形状を有していてもよい。このように、第2絶縁層15は、所定の高さを有し、基板2の水平面から突出した凸形状を有するものであれば、図3乃至図4Bに図示した構成に限定されない。このような第2絶縁層15は、水平面に対して45度以上の角度の側面を有するテーパ又は逆テーパの形状を有していることが望ましい。
【0039】
このような形状を有する第2絶縁層15は、感光性の樹脂をパターニングして形成する。感光性の樹脂としては、例えば、アクリル、ポリイミド等の樹脂を用いてもよい。また、第1絶縁層14についても、第2絶縁層15と同じ材料を用いてパターニングにより形成してもよい。このような第1絶縁層14及び第2絶縁層15を成膜した後、各サブ画素10aの発光領域に対応させて第1電極11の一部を露出させるコンタクトホールをパターニングにより形成してもよい。
【0040】
第2絶縁層15上に、有機EL層12を、メタルマスクを用いた真空蒸着法により形成する。有機EL層12を蒸着法により形成すると、蒸着の特性上、図4Bに示すように、第2絶縁層15の側壁には有機EL層12が形成されない領域3bができる。
【0041】
有機EL層12上には、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて第2電極13を形成する。第2電極13は、IZO等の透明な導電膜を成膜して形成する。真空蒸着法を用いて第2電極13を形成した場合、図4Bに図示するように、第2絶縁層15の側面の領域3b上に第2電極13を形成しないようにすることができる。
【0042】
また、第2電極13は、スパッタ法を用いて形成してもよく、この場合には、第2絶縁層15の側面の領域3b上に第2電極13が形成される。なお、図4A及び図4Bには、有機EL層12及び第2電極13を一層のものとして図示しており、第2電極13が有機EL層12と同様に第2絶縁層15の側面上に形成されない構成を図示しているが、第2電極13は、スパッタ法を用いて形成されることにより領域3bを覆って形成されてもよい。
【0043】
このように形成された第2電極13上に、封止膜3を形成する。封止膜3は、窒化シリコン、酸化シリコン等の無機絶縁膜を用いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法等により、有機EL素子層1の形成された基板2の全面上を覆うように形成する。これにより、第2絶縁層15によって凹凸の形成された基板2上であっても付きまわりの良いCVD法やALD法等の成膜方法を用いることにより、図4Bに示すように、第2絶縁層15の側面の領域3bに封止膜3を形成することができる。
【0044】
このように、有機EL素子層1の形成された基板2の全面上を覆って形成される封止膜3は、図4Bに示すように第2絶縁層15の側面上の有機EL層12及び第2電極13が形成されない領域3bにおいて、第2絶縁層15に接して形成されることとなる。このような無機膜と有機膜からなる封止膜3と第2絶縁層15との間の界面の密着性は、互いに有機膜からなる有機EL層12と第2絶縁層15との間の界面と比べてその密着性を高いものとすることができる。従って、第2絶縁層15に対する密着性が有機EL層12よりも高い封止膜3を、領域3bにおいては第2絶縁層15に密着させつつ、有機EL層12及び第2電極13の全面上を覆うものに形成することができる。これにより、一層の封止膜3によって有機EL素子層1を封止しつつ、封止膜3と第2絶縁層15とが密着する部分の高い密着性によって、封止膜3による有機EL素子層1の固定をより強固なものとすることができるため、有機EL素子層1の剥離を抑制することが可能となる。
【0045】
また、上述したように、第2電極13が、第2絶縁層15の側面上の領域3bに形成される場合にも、導電膜と有機膜からなる第2電極13と第2絶縁層15との間の界面の密着性は、互いに有機膜からなる有機EL層12と第2絶縁層15との間の界面の密着性よりも高いものとすることができる。従って、領域3bに第2電極13が形成された場合にも、封止膜3が第2絶縁層15の側面上の領域3bに形成される場合と同様に、第2電極13と第2絶縁層15とが密着する部分の高い密着性によって有機EL層12の剥離を抑制することが可能となる。
【0046】
このように、有機EL層12を、画素10の略中央部に配置された第2絶縁層15上に、蒸着法を用いて形成することにより、第2絶縁層15の側面上には有機EL層12の形成されない領域3bを形成することができる。すなわち、有機EL層12は蒸着法により形成するため、合わせずれや回り込みが大きく、緻密なパターンを形成することができない。そこで、パターニングが容易で合わせずれも1μm程度とすることのできるアクリル等の樹脂を用いて第2絶縁層15を形成すれば、所望のテーパ形状に容易に形成することができ、この第2絶縁層15上に有機EL層12を蒸着することにより、蒸着の特性上、第2絶縁層15の側壁上の一部の領域3bに有機EL層12を形成しないようにすることができる。このような有機EL層12を形成した後にCVD法やALD法などの付き周りの良い成膜手法で、封止膜3又は第2電極13を形成すると、第2絶縁層15の側壁に第2絶縁層15と封止膜3又は第2電極13とが直接接する領域3bができる。従って、この領域3bは、有機EL層12を介する他の領域よりも密着性が高いため、有機EL層12の剥離の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
以上のとおり、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100及びその製造方法によれば、有機EL層12と隣接する層との間の層間剥離を防ぎ、高信頼性を確保することの可能な有機EL表示装置100を提供することができる。また、このような有機EL表示装置100を、製造工程を大幅に変更することなく、簡素な構造で実現することができる。
【0048】
また、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100は、図3乃至図4Bを参照して上述した画素10の構成に限らず、他の画素10の構成についても適用可能である。以下、図5及び図6を参照し、画素10の他の構成例について説明する。
【0049】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の他の例を示す図であり、(a)は画素10の平面図であり、(b)は(a)に示すB−B´線の断面図である。図6は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の他の例を示す平面図である。
【0050】
図5(a)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10は、6つのサブ画素10aが一組となって構成されるものであってもよく、このとき、画素10の略中央部であって、対向する3つのサブ画素10aと3つのサブ画素10aとの間に、第2絶縁層15が配置されてもよい。
【0051】
また、図6(a)に示すように、画素10の非発光領域において、4つのサブ画素10aを囲む額縁状に第2絶縁層15が配置されてもよい。また、図6(b)に示すように、6つのサブ画素10aを囲む額縁状に第2絶縁層15が配置されてもよい。
【0052】
このように、第2絶縁層15は、画素10の非発光領域であれば、多様な位置に配置され得る。また、画素10の備えるサブ画素10aの数についても、図示した構成に限定されず、例えば、RGBの3原色のサブ画素10aを備える画素10であってもよい。図5及び図6に例示した画素10の構成についても、図3乃至図4Bに図示した画素10の構成と同様に、有機EL層12を覆って形成される封止膜3又は第2電極13と、第2絶縁層15の側壁とが密着する部分を形成することができる。このような構成を備えることにより、有機EL層12と隣接する層との間の層間剥離を防ぎ、高信頼性を確保することの可能な有機EL表示装置100を提供できる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100について、図7を参照して述べる。
【0054】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10の概略構成を示す図であり、(a)は画素10の平面図であり、(b)は(a)に示すC−C´線の断面図である。
【0055】
図7(a)に示すように、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10と同様に、略L字型の発光領域を有する4つのサブ画素10aが、それぞれ矩形状の画素10の角部に、発光領域の略L字型の角部が合わされて配置された構成を備えるものであってもよい。また、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10とは、第2絶縁層15を備えない点において、その構成が異なるものである。以下、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100に含まれる画素10と同様の構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
図7(b)に示すように、各サブ画素10aの発光領域を区画して第1電極11を露出させる第1絶縁層14上に有機EL層12及び第2電極13を形成した後、画素10の略中央部であって、各サブ画素10aの発光領域の形成されない非発光領域の有機EL層12及び第2電極13を、レーザ光の照射などの既存の方法を用いて除去する。これにより、図7(b)に点線16bで囲んだ範囲に示すように、第1絶縁層14が有機EL層12及び第2電極13から露出される開口部が形成される。このような開口部を備える有機EL素子層1上に、封止膜3が有機EL素子層1を覆って形成されることにより、封止膜3と第1絶縁層14とが直接接する領域16aが形成される。
【0057】
このように形成された封止膜3と第1絶縁層14とが直接接する領域16aは、互いに有機膜からなる有機EL層12と第1絶縁層14との間の界面の密着性に比べて、その密着性を高いものとすることができる。従って、第1絶縁層14に対する密着性が有機EL層12よりも高い封止膜3を、領域16aにおいては第1絶縁層14に密着させつつ、有機EL層12及び第2電極13の全面上を覆うものに形成することができる。これにより、一層の封止膜3によって有機EL素子層1を封止しつつ、封止膜3と第2絶縁層15とが密着する部分の高い密着性によって、封止膜3による有機EL素子層1の固定をより強固なものとすることができるため、有機EL素子層1の剥離を抑制することができる。
【0058】
このように、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100によると、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、有機EL素子層1の剥離を防ぐことが可能な構成を、製造工程を大幅に変更することなく、簡素な構造で実現することができる。
【0059】
また、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100の画素10の構成も、図7に示す画素10の構成に限らず、例えば、図5及び図6に示して上述した画素10の構成において、第2絶縁層15が配置される位置に、封止膜3と第1絶縁層14とが接する領域16aを備えるものであってもよい。また、有機EL層12を形成した後、レーザ光の照射等により有機EL層12を一部除去して第1絶縁層14を露出させ、領域16aにおいて有機EL層12上に形成される第2電極13と第1絶縁層14とが直接接する構成を備えるものであってもよい。このように、封止膜3又は第2電極13と、第1絶縁層14とが直接接する領域16aを備えることにより、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置100によれば、有機EL層12の剥離の発生を抑制することが可能となる。
【0060】
以上のとおり、本発明の第1及び第2の実施形態に係る有機EL表示装置100及びその製造方法によれば、有機EL層12と隣接する層との間の層間剥離を防ぎ、高信頼性を確保することの可能な有機EL表示装置100を提供することができる。また、このような有機EL表示装置100を、製造工程を大幅に変更することなく、簡素な構造により製造コストを低減させて実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…有機EL素子層、2…基板、3…封止膜、4、5…樹脂、6…第2基板、7…第1基板、10a…サブ画素、11…第1電極、12…有機EL層、13…第2電極、14…第1絶縁層、15…第2絶縁層、20…ガラス基板、21…樹脂層、22…第1絶縁膜、23…配線層、24…第2絶縁膜、25…平坦化膜、100…有機EL表示装置。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7