【文献】
J. Catal., Vol.311, p.257-265(2014.03)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の脱硫剤では、硫黄吸着容量が十分ではなく、多量の脱硫剤が必要となったり、脱硫処理に時間を要したり、脱硫剤の交換頻度が高くなって効率よく脱硫処理できないなどのおそれがある。
本発明は、銀を用いることなく硫黄吸着容量が増大し、脱硫効率を向上できる金属担持成形体、その製造方法、吸着脱硫触媒、吸着脱硫方法、さらに水素製造方法、および、燃料電池システムを提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明
の金属担持成形体は、リンを含有するニッケル化合物とゼオライトと無機バインダーとの混合物からなり、全体組成100質量%に対して、酸化ニッケル(NiO換算)が30質量%以上55質量%以下であり、比表面積が200m
2/g以上500m
2/g以下、細孔容積が0.30ml/g以上1.0ml/g以下であることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明では、前記混合物は、リンが添加された酸化ニッケル前駆体に、ゼオライト粉末が混合されてなることが好ましい。
【0008】
本発明の金属担持成形体は、リンを含有するニッケル化合物とゼオライトと無機バインダーとの混合物からなることを特徴とする。
ここで、リンを含有するニッケル化合物は、リンを含有する酸化ニッケル前駆体、リンが添加された酸化ニッケル前駆体の焼成物、リンが添加された酸化ニッケル前駆体にゼオライトおよび無機バインダーのうちの少なくともいずれか一方が混合されたもの、この混合されたものの焼成物を含むものである。
【0009】
そして、本発明では、全体組成100質量%に対して、酸化ニッケル(NiO換算)が30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5換算)が1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3換算)が15質量%以上25質量%以下、残部が無機バインダー成分であることが好ましい。
【0010】
本発明の金属担持成形体は、全体組成100質量%に対して、酸化ニッケル(NiO換算)が30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5換算)が1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3換算)が15質量%以上25質量%以下、残部が無機バインダー成分であることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明では、前記無機バインダーは、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアのうちの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の金属担持成形体は、全体組成100質量%に対して、ゼオライト35質量%以上50質量%以下、酸化ニッケル(NiO換算)30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5換算)1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3換算)(前記ゼオライト由来の酸化アルミニウム含む)15質量%以上25質量%以下であることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明では、前記ゼオライトは、Y型、β型、モルデナイト、およびZSM−5のうちの少なくともいずれか1種である構成とすることが好ましい。
また、本発明では、比表面積が200m
2/g以上500m
2/g以下、細孔容積が0.30ml/g以上1.0ml/g以下である構成とすることが好ましい。
【0014】
本発明の金属担持成形体の製造方法は、酸化ニッケル前駆体にリンが添加された混合物を成形した後に焼成して金属担持成形体を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明の吸着脱硫触媒は、炭化水素原料と接触されて前記炭化水素原料中に含まれる硫黄成分を吸着除去する吸着脱硫触媒であって、酸化ニッケル前駆体とリンとの混合物が焼成されてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の吸着脱硫方法は、本発明の金属担持成形体、または本発明の吸着脱硫触媒を、炭化水素原料と接触されて前記炭化水素原料中に含まれる硫黄成分を吸着除去することを特徴とする。
【0017】
そして、本発明では、前記吸着脱硫触媒が充填密度0.5g/ml以上1.0g/ml以下で充填された層に前記炭化水素原料を流通させることが好ましい。
また、本発明では、前記炭化水素原料を−20℃以上300℃以下で前記金属担持成形体、または前記吸着脱硫触媒に接触させることが好ましい。
さらに、本発明では、前記炭化水素原料は、天然ガスまたは石油ガスであることが好ましい。
【0018】
本発明の水素製造方法は、本発明の吸着脱硫方法により脱硫処理された炭化水素原料を、改質触媒を用いて改質処理し水素を生成させることを特徴とする。
【0019】
本発明の燃料電池システムは、本発明の金属担持成形体、または本発明の吸着脱硫触媒が充填された脱硫床を有し、前記脱硫床に炭化水素原料を流過させて前記炭化水素原料中に含まれる硫黄成分を吸着除去する脱硫手段と、改質触媒が充填され、前記脱硫手段で脱硫処理された前記炭化水素原料を、前記改質触媒により改質処理して水素を生成させる改質手段と、前記改質手段で生成した水素を用いて発電する燃料電池と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、銀を用いない比較的安価な金属担持成形体で、硫黄吸着容量が向上し、硫黄を効率よく吸着除去できる材料として提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、炭化水素原料として、気体燃料、具体的には都市ガスなどの天然ガス、プロパンガスやブタンガスなどの石油ガス、それらの混合物などを利用する燃料電池システムの構成を例示するが、灯油、軽油、ナフサなどの液体燃料を利用する構成、気体燃料および液体燃料双方を利用する構成にも適用できる。
【0023】
[燃料電池システムの構成]
図1において、1は燃料電池システムで、この燃料電池システム1は、気体燃料を原料として水素を主成分とする燃料ガスに改質し、燃料電池11により発電させるシステムである。
この燃料電池システム1は、脱硫手段12と、改質手段13、燃料電池11と、を備えている。
【0024】
脱硫手段12は、供給される炭化水素原料から硫黄成分を吸着により除去する。脱硫手段12は、詳細は後述する本発明の金属担持成形体である吸着脱硫触媒を充填した図示しない脱硫容器と、吸着脱硫触媒により脱硫処理する際に加熱する脱硫加熱手段とを備えている。脱硫加熱手段は、−20℃以上300℃以下で脱硫処理する条件で加熱可能で、ヒーターなど、各種の構成を利用できる。
脱硫容器には、吸着脱硫触媒が充填密度0.5g/ml以上1.0g/ml以下で充填されていることが好ましく、より好ましくは0.52g/ml以上0.80g/ml以下である。
ここで、吸着脱硫触媒の充填密度が0.5g/mlより小さくなると硫黄化合物の吸着が可能なNi種の量が体積当たりに低下し、体積当たりの硫黄吸着量が低下するという不都合を生じるおそれがあり、1.0g/mlより大きくなると脱硫剤の最高容積が低下しているため、硫黄化合物が内部まで拡散せず、吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあることから、吸着脱硫触媒の充填密度は0.5g/ml以上1.0g/ml以下とすることが好ましい。なお、充填密度は、メスシリンダー法により測定される。
【0025】
改質手段13は、脱硫手段12で脱硫処理した炭化水素原料を改質、例えば水蒸気改質して水素を主成分とする燃料ガスに改質する。改質手段13は、改質触媒が充填された改質器と、改質器から供給される燃料ガス中の一酸化炭素(CO)を除去するCO除去装置とを備えている。
燃料電池11は、改質手段13でCOが除去された燃料ガス中の水素と、別途供給される例えば空気である酸素含有気体中の酸素とを反応させて直流電力を発生させる。燃料電池は、例えば固体高分子型燃料電池が用いられる。
【0026】
[吸着脱硫触媒]
脱硫容器に充填される吸着脱硫触媒は、酸化ニッケル前駆体とリンとの混合物が成形されて焼成されたものである。
混合物としては、酸化ニッケル前駆体とリンとの他に、ゼオライト粉末がさらに混合されていると、硫黄化合物の吸着容量を増大できるので好ましい。また、混合物には、成形性や吸着脱硫触媒としての保形性などの点から、適宜無機バインダーや有機バインダーが混合されることが好ましい。
【0027】
ここで、原料の酸化ニッケル前駆体としては、ニッケル−アルミニウム水酸化物、水酸化ニッケルなどが用いられる。なお、ニッケル−アルミニウム水酸化物は、詳細は後述するように、一部がバインダーとしても機能することから好ましい。また、ニッケル−アルミニウム水酸化物としては、例えば以下の式(1)で示されるものが用いられる。
Ni
xAl
y(OH)
2x+3y…(1)
(式中、xおよびyは、それぞれNiおよびAlのモル数を表す。)
なお、焼成後NiAl
2O
4となると不活性な固溶体となるため、x>2yであることが好ましい。
また、原料のリンとしては、白リン(黄リン)、赤リン、紫リン、黒リンなどの金属の他、六酸化四リン(P
4O
6)、八酸化四リン(P
4O
8)、五酸化二リン(P
2O
5)などの酸化リン、リン酸塩などが利用できる。なお、リン酸塩としては、リン酸、リン酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが例示できる。特に、リン酸が酸化ニッケル前駆体に対する反応性という点で好ましく用いられる。
ゼオライト粉末として、Y型、β型、モルデナイト、およびZSM−5のうちの少なくともいずれか1種が、硫黄吸着容量を向上できることから好適に用いることができる。また、ゼオライト粉末は、成形体である吸着脱硫触媒中への硫黄化合物の内部拡散および成形体の形状保持という理由から、平均粒径が0.05μm以上10μm以下に成形されていることが好ましく、0.10μm以上1μm以下がより好ましい。なお、平均粒径は、例えば動的光散乱法により測定される。
【0028】
そして、吸着脱硫触媒は、全体組成100質量%に対して、酸化ニッケル(NiO換算)が30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5換算)が1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3換算)が15質量%以上25質量%以下、残部が無機バインダー成分であることが好ましい。なお、組成は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により測定される。
ここで、NiOが30質量%より少なくなると硫黄化合物が吸着可能なNi種が少なくなるため硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあり、55質量%より多くなると焼成後に最高容積が低下し、硫黄化合物の成形体内部への拡散が起こりにくくなり、硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあることから、NiOは30質量%以上55質量%以下、より好ましくは32質量%以上53質量%以下、特に好ましくは34質量%以上50質量%以下に調製される。
また、吸着脱硫触媒は、P
2O
5が1質量%より少なくなると添加効果が十分ではなく、硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあり、3質量%より多くなると酸化ニッケルに対して多くなりすぎ硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあることから、P
2O
5は1質量%以上3質量%以下、より好ましくは1.2質量%以上2.8質量%以下、特に好ましくは1.4質量%以上2.6質量%以下に調製される。
なお、吸着脱硫触媒は、原料に用いる酸化ニッケル前駆体としてのニッケル−アルミニウム水酸化物は、ニッケル水酸化物とアルミニウム水酸化物とが複合化しており、アルミニウム水酸化物に基づくアルミナは吸着脱硫触媒の無機バインダーとして機能する。このことから、アルミニウム水酸化物を無機バインダーとして配合することが好ましい。なお、Al
2O
3は15質量%以上25質量%以下、より好ましくは16質量%以上23質量%以下、特に好ましくは17質量%以上21質量%以下に調製される。
なお、吸着脱硫触媒は、無機バインダー成分として、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアのうちの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0029】
なお、原料としてゼオライトを用いる場合には、吸着脱硫触媒は、全体組成100質量%に対して、ゼオライト35質量%以上50質量%以下、酸化ニッケル(NiO換算)30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5換算)1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3換算)(前記ゼオライト由来の酸化アルミニウム含む)15質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
ここで、ゼオライトが35質量%より少なくなるとゼオライトを添加することによる硫黄吸着容積の向上が望めなくなり、50質量%より多くなると硫黄化合物の吸着に必要なNi種の量が少なくなり硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあることから、ゼオライトは35質量%以上50質量%以下、より好ましくは38質量%以上48質量%以下、特に好ましくは40質量%以上47質量%以下に調製される。
なお、NiO、P
2O
5、Al
2O
3の範囲については、上述したゼオライトを原料に用いない場合と同様の理由である。
【0030】
そして、吸着脱硫触媒は、比表面積が200m
2/g以上500m
2/g以下に成形されることが好ましく、より好ましくは220m
2/g以上480m
2/g以下、特に240m
2/g以上460m
2/g以下が好ましい。
ここで、比表面積が200m
2/gより小さくなると硫黄化合物との接触が可能な面積が小さいため硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあり、500m
2/gより大きくなることは硫黄吸着容量を低下させない酸化ニッケルの組成範囲では、得ることが難しく、得ようとした場合、無機バインダー成分やゼオライト成分を増やす必要があり、硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあることから、比表面積は200m
2/g以上500m
2/g以下とすることが好ましい。なお、比表面積は、BET法により測定される。
【0031】
また、吸着脱硫触媒は、細孔容積が0.30ml/g以上1.00ml/g以下に成形されることが好ましく、より好ましくは0.35ml/g以上0.90ml/g以下、特に0.38ml/g以上0.85ml/g以下が好ましい。
ここで、細孔容積が0.30ml/gより小さくなると硫黄化合物の内部への拡散が低下し硫黄吸着容量が低下するという不都合を生じるおそれがあり、1.00ml/gより大きくなると成形体の強度が十分に得られないという不都合を生じるおそれがあることから、細孔容積は0.30ml/g以上1.00ml/g以下とすることが好ましい。なお、細孔容積は、N
2吸着法により測定される。
【0032】
さらに、吸着脱硫触媒は、流通ガスとの接触効率という理由から、平均粒径が0.5mm以上3mm以下に成形されていることが好ましく、0.7mm以上2.5mm以下がより好ましい。
なお、吸着脱硫触媒の平均粒径は、ノギス法により測定される。
【0033】
[燃料電池システムの動作]
次に、上述した燃料電池システム1における動作について、図面を参照して説明する。
【0034】
まず、吸着脱硫触媒が充填密度0.5g/ml以上1.0g/ml以下で充填され、−20℃以上300℃以下、より好ましくは−10℃以上100℃以下に加熱された脱硫手段12に、気相燃料を例えば10h
−1以上10,000h
−1以下の条件で流通させる。
ここで、脱硫時の温度が−20℃より低くなると硫黄化合物の吸着能が低下するおそれがあり、300℃より高くなると吸着した硫黄化合物が熱により分解脱離してしまう可能性があることから、−20℃以上300℃以下で脱硫処理することが好ましい。
気体燃料を吸着脱硫触媒と接触させることにより、気体燃料中の硫黄成分が吸着脱硫触媒に吸着除去される。
【0035】
そして、脱硫手段12で脱硫処理された気体燃料は、適宜水蒸気が混合されて改質手段13に供給されて改質処理される。具体的には、気体燃料を改質器で水蒸気改質して水素を主成分とする燃料ガスに改質する。さらに、改質器で生成された燃料ガスは、CO除去装置で燃料ガス中のCOが除去される。
この改質処理後、COが除去された燃料ガスは、燃料電池11に供給される。そして、燃料電池11は、別途供給される酸素含有気体中の酸素と、燃料ガス中の水素を反応させて水を生成するとともに直流電力を発生させる。なお、直流電力は、例えばインバータを介して交流電力に変換させ、外部の電力負荷へ適宜供給される。
【0036】
[燃料電池システムの効果]
上述したように、上記実施形態の燃料電池システム1では、ニッケル−アルミニウム水酸化物とリンとの混合物が焼成されてなる金属担持成形体を吸着脱硫触媒として用い、脱硫手段12で、炭化水素原料である気体燃料と接触させて脱硫処理させている。
このため、貴金属である銀を用いず、比較的安価な金属担持成形体で硫黄吸着容量を向上できる。したがって、気体燃料中の硫黄を高度に除去するための脱硫処理の時間短縮や処理する気体燃料の処理量の増大などが得られ、効率よく吸着除去できる。さらに、燃料電池システム1に用いた場合では、硫黄吸着容量の向上により吸着脱硫触媒の交換頻度を低減でき、発電のための保守管理が容易にできる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、リンが添加されたニッケル−アルミニウム水酸化物にゼオライト粉末を混合させることで、より硫黄吸着容量を向上でき、より効率よく脱硫できる。
このゼオライトとしては、Y型、β型、モルデナイト、ZSM−5のうちのいずれかとすることで、より硫黄吸着容量を向上でき、より効率よく脱硫できる。
【0038】
そして、上記実施形態では、吸着脱硫触媒は、酸化ニッケル(NiO)が30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5)が1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が15質量%以上25質量%以下、残部が無機バインダー成分、特に、ゼオライトを原料として混合する場合には、ゼオライト35質量%以上50質量%以下、酸化ニッケル(NiO)30質量%以上55質量%以下、酸化リン(P
2O
5)1質量%以上3質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3)(ゼオライト由来の酸化アルミニウム含む)15質量%以上25質量%以下としている。
このため、より硫黄吸着容量を向上でき、より効率よく脱硫できる。
【0039】
また、上記実施形態では、リンが添加されたニッケル−アルミニウム水酸化物に混合される無機バインダーとして、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアのうちの少なくともいずれか1種を用いることで、酸化ニッケルの焼結に伴う表面積の低下の抑制および成形体の形状を保持し、強度を高めるという効果を奏する。
【0040】
そして、上記実施形態では、比表面積を200m
2/g以上500m
2/g以下、細孔容積を0.30ml/g以上1.0ml/g以下としている。
このことにより、より硫黄吸着容量を向上でき、より効率よく脱硫できる。
【0041】
また、脱硫処理に際して、吸着脱硫触媒の充填密度を0.5g/ml以上1.0g/ml以下としている。
このことにより、気体燃料との接触効率が向上し、より硫黄吸着容量を向上でき、より効率よく脱硫できる。
【0042】
さらに、上記実施形態では、300℃以下で脱硫処理している。
このため、300℃を超えた温度での脱硫処理では硫黄化合物の吸着が起こりにくくなったり、硫黄化合物の分解が起こったり、燃料ガスの分解が起こったりすることがあることから、300℃以下で脱硫処理することで硫黄化合物の吸着除去が容易となり、脱硫器を含めた燃料電池システム設計が容易となる。
【0043】
[変形例]
なお、本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材質、層構成などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0044】
例えば、金属担持成形体を吸着脱硫触媒として利用したが、脱硫処理に限らず、例えば有機化合物の水素化反応などの他の用途に利用してもよい。
また、脱硫処理として、燃料電池システム1における脱硫のみならず、例えば石油製品の製造に際して実施する脱硫処理など、各種の脱硫処理に利用できる。
さらに、脱硫処理に際して、上記所定の温度に加熱したが、例えば加熱せずに常温で脱硫処理するなどしてもよい。
【0045】
そして、金属担持成形体としては、酸化ニッケル前駆体とリンとを混合した混合物に限られない。例えば、混合物にゼオライトあるいは無機バインダー、もしくはゼオライトおよび無機バインダーの双方を混合した混合物を焼成したもの、酸化ニッケル前駆体とリンとを混合した混合物を焼成したニッケル化合物である金属担持成形体とゼオライトや無機バインダー、もしくはゼオライトおよび無機バインダーの双方を混合した混合物、さらにはその混合物を焼成したものでもよい。
【0046】
そして、ニッケル−アルミニウム水酸化物とリンとの混合物が焼成されてなるものであれば、NiO、P
2O
5、Al
2O
3が上記所定の割合の組成となるものに限られない。
逆に、NiO、P
2O
5、Al
2O
3が上記所定の割合の組成であれば、ニッケル−アルミニウム水酸化物とリンとを原料に用いなくてもよい。例えば、酸化ニッケル、酸化リン、酸化アルミニウムを原料に用いて適宜焼成するなどして金属担持成形体とするなどしてもよい。
さらに、得られた金属担持成形体としては、比表面積、細孔容積などの物性値が上記所定の範囲内のものに限らない。さらに、脱硫処理に利用する際の充填密度についても、上記所定の範囲内に限られない。
【0047】
また、原料として無機バインダーを添加する場合、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアのうちの少なくともいずれか1種に限られるものではない。例えば、ジルコニウムとチタンとの複合酸化物などの酸化物、焼成によりアルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、これらの複合酸化物となる水酸化物、炭酸化物などを無機バインダーとして用いてもよい。
さらに、焼成により成形体として保形性を有する場合などでは、無機バインダーを加えず、例えば有機バインダーを添加して造粒(成形)して焼成するなどしてもよい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
なお、本発明は実施例などの内容に何ら限定されるものではない。
【0049】
[吸着脱硫触媒の調製]
(実施例1)
イオン交換水2.9kgに炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製 特級)1.04kgを溶解し、アルカリ溶液を得た。40℃に加温保持する。イオン交換水1.2kgに硫酸ニッケル(関東化学株式会社製 鹿1級)1.22kg(NiO換算で28.4質量%)を溶解し、さらに、硫酸アルミニウム14−18水(関東化学株式会社製 鹿1級)をAl
2O
3換算で30質量%となるようにイオン交換水で溶解した硫酸アルミニウム溶液1.05kgを添加し、Ni−Al水溶液を得た。そして、40℃に加温保持したアルカリ溶液に、Ni−Al水溶液を攪拌しつつ添加して調合スラリーを得た。
得られた調合スラリーを攪拌しつつ80℃で1時間保持した後、濾過し、75kgの60℃温水で掛け水洗浄し、ニッケル−アルミニウム水酸化物ゲルを得た。得られたニッケル−アルミニウム水酸化物ゲルを固形分濃度が15質量%となるようにイオン交換水を加え、撹拌混合することによりスラリーを得た。得られたスラリーにリン酸(関東化学株式会社製 鹿1級)をP
2O
5換算で固形分に対して5質量%となるように添加し、スプレードライヤー(大川原工機株式会社製 商品名:ODT−27型)を用いて噴霧乾燥(熱風の入口温度を280℃〜310℃、出口温度118℃〜128℃)し、ニッケル−アルミニウム複合酸化物前駆体を得た。
【0050】
得られたニッケル−アルミニウム複合酸化物前駆体と、Y型ゼオライト(日揮触媒化成株式会社製 商品名:ZCP−50S SiO
2/Al
2O
3=5.1)と、無機バインダーとしてのアルミナ粉末(日揮触媒化成株式会社製 商品名:AP−1)とを、酸化物換算比で4.5:4.5:1.0となるように混合し、混合物を得た。高速攪拌粉体混合機(ヘンシェルミキサー:三井鉱山株式会社製 商品名:FM−20C/I型)を用いて、得られた混合物に水分含有量が32質量%となるようにイオン交換水を徐々に加えつつ十分混合した。この後、水分含有量が調整された混合物をノズル口径1.0mmの下押しロール型押出機(不二パウダル株式会社製 商品名:F−5(PV−S)/11−175型)を用いて5回押出してペレットを成形した。得られたペレットを120℃で一晩乾燥させた後、400℃にて5時間焼成し、金属担持成形体を得た。
【0051】
(実施例2)
実施例2は、実施例1において用いたゼオライトをβ型ゼオライト(東ソー株式会社製
商品名:HSZ−930NHA SiO
2/Al
2O
3=28)に変更した以外は、同様に金属担持成形体を作成した。
(実施例3)
水酸化ニッケル(関西触媒化学株式会社製 商品名:水酸化ニッケルNo.3)(NiO濃度78.9%)457gおよびイオン交換水50gを高速攪拌粉体混合機(ヘンシェルミキサー:三井鉱山株式会社製 商品名:FM−20C/I型)を用いて撹拌混合した後、りん酸(関東化学株式会社製 鹿1級)29gを加えて撹拌混合した後、Y型ゼオライト(日揮触媒化成株式会社製 商品名:ZCP−50S SiO
2/Al
2O
3=5.1)461gおよびイオン交換水100を加え撹拌混合した後、無機バインダーとしてのアルミナ粉末(日揮触媒化成株式会社製 商品名:AP−1)114gを加え、水分含有量が28質量%となるようにイオン交換水を徐々に加えつつ十分混合した。この後、水分含有量が調整された混合物をノズル口径1.0mmの下押しロール型押出機(不二パウダル株式会社製 商品名:F−5(PV−S)/11−175型)を用いて5回押出してペレットを成形した。得られたペレットを120℃で一晩乾燥させた後、400℃にて5時間焼成し、金属担持成形体を得た。
(
比較例A)
比較例Aは、実施例1においてゼオライトおよび無機バインダーを用いなかった以外は、同様に金属担持成形体を作成した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1において噴霧乾燥前のスラリーにリン酸を加えずに噴霧乾燥を行い、得られたニッケル−アルミニウム複合酸化物前駆体を同様に成形した以外は、同様に金属担持成形体を作成した。
【0052】
[組成および物性]
得られた金属担持成形体について、組成は高周波プラズマ発光分析装置(ICP)(SII社製SPS−5520)を用いて、NiO、P
2O
5、Al
2O
3含有量を測定し、フレーム原子吸光光度計(日立ハイテクフィールディング社製Z−2310)を用いてNa
2O含有量を測定し、残部をSiO
2として組成割合を算出した。その結果を、以下の表1に示す。
また、金属担持成形体について、比表面積測定装置(カンタクロム社製マルチソーブ16)を用いて、BET1点法で比表面積を測定した。その結果を、以下の表1に示す。
そして、金属担持成形体について、細孔分布測定装置(日本ベル社製ベルソープ−miniII)を用いて、N
2吸着で細孔容積を測定した。その結果を、以下の表1に示す。
さらに、金属担持成形体について、250mlメスシリンダーを用いて、150gの脱硫剤を投入し、タッピングを行った後、体積を測定することで充填密度を測定した。その結果を、以下の表1に示す。
また、金属担持成形体について、硫黄吸着容量測定装置(桜木理化学社製硫黄吸着容量測定装置)を用いて、脱硫剤10mlに対して空間速度7500h
−1となるように、ジメチルサルファイド(DMS)60ppm、ターシャリーブチルメルカプタン(TBM)、窒素バランスのガスを流通させ、出口ガスのDMS濃度が0.2ppmとなるまでの積算流量から吸着した硫黄化合物の量を算出し、脱硫剤100gに対する硫黄吸着容量を算出した。その結果を、以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
[考察]
上記表1にも示すように、酸化ニッケル(NiO換算)が多くリンを含有しない比較例1では、硫黄吸着容量が小さいことが認められた。