特許第6371105号(P6371105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371105
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】チタン酸カリウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-92274(P2014-92274)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-209361(P2015-209361A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 護
(72)【発明者】
【氏名】堺 英樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧 大輔
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241100(JP,A)
【文献】 特開2008−266131(JP,A)
【文献】 特開2009−114050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0249222(US,A1)
【文献】 特開2000−256013(JP,A)
【文献】 特開2008−110918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸カリウムを製造する方法であって、
比表面積1〜2m/gの酸化チタン0〜60質量%、比表面積7〜200m /gの酸化チタン40〜100質量%並びに金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上を合計で0〜4.5質量%配合されてなるチタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを振動ミルを用いて混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400°Cで焼成する焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機により粉砕する粉砕工程と
を含むことを特徴とするチタン酸カリウムの製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程において、前記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1200〜1400℃で焼成する請求項1に記載のチタン酸カリウムの製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記チタン原料には、比表面積1〜2m/gの酸化チタンおよび比表面積7〜200m/gの酸化チタンが1:1の重量割合で含まれている請求項1または請求項2に記載のチタン酸カリウムの製造方法。
【請求項4】
前記混合工程において、前記チタン原料には、金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上が含まれていない請求項1〜請求項3のいずれかに記載のチタン酸カリウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸カリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸カリウムは、自動車、鉄道車両、航空機および産業機械類等における制動装置を構成する、ブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェージング等の摩擦摺動部材用の摩擦材として有用な材料である。特に、一般式KO・nTiO(nは1〜12の整数)で示されるチタン酸カリウムのうち、nが6である6チタン酸カリウムは、トンネル構造の結晶構造を有し、上記6チタン酸カリウムの繊維状物(繊維状粒子)を含有する摩擦材は特に耐熱性等に優れることが知られている。
【0003】
しかしながら、繊維状のチタン酸カリウムは、嵩高いために成形性に劣るばかりか、流動性が低いために摩擦材中に均一に分散させることが困難であり、取り扱い難かった。
【0004】
そこで、繊維状のチタン酸カリウムに代えて、6チタン酸カリウムの焼成物を衝撃式ミルで粉砕してなる非繊維状チタン酸カリウムが提案されており(特許文献1(特開2008−110918号公報)参照)、非繊維状チタン酸カリウムとして、電子顕微鏡観察したときに、直径3μm以下、長さ5μm以上で、長さと直径との比(アスペクト比)が3以上である粉末を0.7〜3.0%含むものが開示されているものの、繊維状のチタン酸カリウムの含有割合をさらに低減する製造方法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−110918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明は、単相化率が高く、繊維状物の含有量が低減されたチタン酸カリウムを簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、比表面積1〜2m/gの酸化チタンが0〜60質量%、比表面積7〜200m/gの酸化チタンが40〜100質量%および金属チタンが0〜4.5質量%配合されてなるチタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを振動ミルを用いて混合する混合工程と、前記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機から選ばれる一種以上により粉砕する粉砕工程とを含むチタン酸カリウムの製造方法により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
チタン酸カリウムを製造する方法であって、
比表面積1〜2m/gの酸化チタン0〜60質量%、比表面積7〜200m/gの酸化チタン40〜100質量%並びに金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上を合計で0〜4.5質量%配合されてなるチタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを振動ミルを用いて混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成する焼成工程と、
前記焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機から選ばれる一種以上により粉砕する粉砕工程と
を含むことを特徴とするチタン酸カリウムの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単相化率が高く、繊維状物の含有量が低減されたチタン酸カリウムを簡便に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法は、比表面積1〜2m/gの酸化チタン0〜60質量%、比表面積7〜200m/gの酸化チタン40〜100質量%並びに金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上を合計で0〜4.5質量%配合されてなるチタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを振動ミルを用いて混合する混合工程と、前記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成する焼成工程と、前記焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機から選ばれる一種以上により粉砕する粉砕工程とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料中に占める比表面積1〜2m/gの酸化チタンの含有割合は、0〜60質量%であり、0〜40質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、比表面積1〜2m/gの酸化チタンの含有割合が上記範囲内にあることにより、繊維状物の含有割合を低減したチタン酸カリウムを容易に製造することができる。
【0013】
なお、本出願書類において、酸化チタンの比表面積は、BET法により、比表面積測定機(カンタクローム・インスツルメンツ社製)を用い、脱気温度350℃、脱気時間45分で測定された値を意味するものとする。
【0014】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料中に占める比表面積7〜200m/gの酸化チタンの含有割合は、40〜100質量%であり、60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料中に占める比表面積7〜200m/gの酸化チタンの含有割合が上記範囲内にあることにより、原料の混合時に酸化チタン原料の分散性が向上し易くなり、また、焼成後に得られるチタン酸カリウムの太さ(短径)を容易に太くすることができる。
【0016】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、比表面積7〜200m/gの酸化チタンとしては、比表面積が7〜50m/gであるものが好ましく、比表面積が7〜25m/gであるものがより好ましい。
比表面積が上記範囲内にある酸化チタンを使用することにより、繊維状物の含有割合を低減したチタン酸カリウムを製造し易くなり、さらに焼成時に反応容器や炉壁材等の炉材への付着率を低減して、より簡便にチタン酸カリウムを製造することができる。
【0017】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料を構成する酸化チタンは、焼成によりチタン酸カリウムを生成する際にチタン源となるものであり、チタン酸カリウムとして、6チタン酸カリウムを好適に調製し得るものであることが好ましい。
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料を構成する酸化チタンは、通常粒子形状をとる。
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、比表面積1〜2m/gの酸化チタンや、比表面積7〜200m/gの酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン、亜酸化チタン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、これ等の酸化チタンのうち二酸化チタンが好ましい。
二酸化チタンは、カリウム化合物との混合性および反応性に優れ、また安価であることから、チタン化合物として好適に使用することができる。
【0018】
二酸化チタンとしては、結晶型がルチル型の二酸化チタンまたはアナターゼ型の二酸化チタンが好ましく、アナターゼ型の二酸化チタンがより好ましい。これ等の二酸化チタンは、純度が90%以上であるものが好ましい。
【0019】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料を構成する酸化チタンの形態は、凝集体または造粒体であることが好ましく、酸化チタンが凝集体または造粒体の形態を採ることにより、カリウム化合物からなるカリウム原料と均一に混合することが容易になる。
酸化チタンの凝集体または造粒体としては、二酸化チタンの凝集体(顆粒を含む)または造粒体が好ましい。
【0020】
本出願書類において、酸化チタンの凝集体とは、酸化チタンの一次粒子が凝集した二次粒子や、酸化チタンの二次粒子が凝集した三次粒子等、酸化チタンのn次粒子が凝集したn+1次粒子(nは1以上の整数)と表現される粗大粒子(顆粒を含む)であって、平均粒径が0.1mm以上であるものを意味する。
また、本出願書類において、酸化チタンの造粒体とは、酸化チタン粉粉末を造粒してなる平均粒径が0.1mm以上であるものを意味する。
【0021】
二酸化チタンの凝集体としては、硫酸チタンや硫酸チタニルから製造されるもの(硫酸法酸化チタン)や、四塩化チタンを気相で酸化あるいは加水分解して製造されるもの(気相法酸化チタン)や、四塩化チタン水溶液あるいはアルコキシチタンを中和または加水分解して製造されるものを挙げることができる。
【0022】
二酸化チタンの造粒体としては、市販の微粒酸化チタンをスプレードライにより造粒したものや、市販の微粒酸化チタンにバインダーを添加して混練し造粒したもの等を挙げることができる。
チタン化合物として二酸化チタンの造粒体を採用することにより、振動ミル等の粉砕エネルギーの大きい機械的な混合装置を用いてカリウム化合物と混合した場合であっても、振動ミル等の混合装置の内壁への混合物の付着や固着等を効果的に抑制することができ、容易に均一混合することができる。
【0023】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料中に占める金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上の合計含有割合は、0〜4.5質量%であり、0〜2.0質量%であることが好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、チタン原料である金属チタンおよび水素化チタンはさらに酸化されて二酸化チタンを生成するものであり、混合工程により得られる原料混合物が金属チタンや水素化チタンを含むものであることにより、後述する焼成時に反応容器内で同時に燃焼して反応容器内部における温度分布の偏りを抑制し、反応をより均一に行うことができ、結果として目的組成のチタン酸カリウムを容易に得ることができる。
【0025】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、混合工程で得られる金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上の合計含有割合が上記範囲内にあることにより、得られるチタン酸カリウムの単相化率を容易に向上させることができるとともに、比表面積7〜200m/gの酸化チタンを一定割合含有することが可能になることから、繊維状物の含有割合を低減したチタン酸カリウムを容易に製造することができる。
【0026】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、カリウム原料を構成するカリウム化合物は、焼成によりチタン酸カリウムを生成する際にカリウム源となるものであり、チタン酸カリウムとして、6チタン酸カリウムを好適に調製し得るものであることが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法において、カリウム化合物としては、例えば、酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、シュウ酸カリウム等から選ばれる一種以上を挙げることができ、炭酸カリウムであることが好ましい。
これ等のカリウム化合物は、焼成反応時に溶融あるいは分解してチタン原料と反応を生じ易く、また分解後も炭酸ガスや水等を生成するだけで製品中に不純物を残存させ難い。
【0028】
本発明の製造方法において、通常、カリウム化合物は粉末形状を採り、その比表面積は、取扱いが容易なことから、0.5〜10.0m2/gであることが好ましく、1.0〜8.0m2/gであることがより好ましく、1.5〜7.5m2/gであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、カリウム化合物の比表面積は、BET法により測定した値を意味する。
【0029】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、混合工程において、チタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを混合する。
【0030】
得ようとするチタン酸カリウムが6チタン酸カリウムである場合、理論的には、チタン原料とカリウム原料とを、チタン原子のモル数:カリウム原子のモル比=6:2になる量を混合工程に供することが効率的であるが、次工程である焼成工程での揮発を考慮して、カリウム原料を、上記カリウム原子の理論量よりも、0モル%を超え15モル%過剰になるように混合工程に供することが好ましく、上記カリウム原子の理論量よりも5〜15モル%過剰になるように混合工程に供することがより好ましく、上記カリウム原子の理論量よりも10〜14モル%過剰になるように混合工程に供することがさらに好ましい。
チタン原料とカリウム原料を上記割合で混合することにより、得られるチタン酸カリウムの単層化率を向上させることができる。
【0031】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、混合工程において、チタン原料およびカリウム原料に加えて、炭酸リチウムなどのリチウム化合物や、マグネシウム化合物やバリウム化合物などのアルカリ土類金属化合物をさらに混合してもよい。
【0032】
混合工程で得られる原料混合物が、炭酸リチウムなどのリチウム化合物を含むものであることにより、得られるチタン酸カリウムの形状を容易に所望形状に制御することができる。
また、混合工程で得られる原料混合物が、マグネシウム化合物やバリウム化合物などのアルカリ土類金属化合物を含有するものであることによっても、後述する焼成処に繊維状結晶の生成を抑制しつつ、得られるチタン酸カリウムの形状を容易に所望形状に制御することができる。
【0033】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、混合工程において、チタン酸カリウムの生成に影響しない程度に、チタン化合物およびカリウム化合物に加えて、さらに他の化合物、例えば無機酸化物などを微量混合してもよい。
ここで無機酸化物としては、例えば、Fe、Al、SiO、CeO、WO、ZrO、Zr(CO、CaCO等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0034】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、混合工程で得られる原料混合物が、チタン原料およびカリウム原料に加えて、さらに上記無機酸化物を含有するものである場合、得られる原料混合物中の無機酸化物の含有割合は、固形分換算したときに、全原料量あたり、合計で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、混合工程で得られる原料混合物は、固形分換算したときに、チタン原料およびカリウム原料を、85〜100質量%含むものであることが好ましく、85〜97質量%含むものであることがより好ましい。
【0036】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、混合工程において各原料を混合することにより原料混合物を調製することができ、これ等の成分を混合する方法としては、乾式混合法または湿式混合法のいずれも採用することができるが、工程簡略化の観点から乾式混合法が好ましい。
【0037】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、混合工程における混合は、振動ロッドミル、振動ボールミル等の振動ミルから選ばれる一種以上を挙げることができ、振動ミルが好ましく、振動ロッドミルがより好ましい。
【0038】
特に、振動ロッドミルでは棒状のロッドによりチタン原料とカリウム原料を粉砕しながら混合することで、ロッド間においてある程度粒径の大きな粉末を粉砕する一方、粒径の小さな粒子は粉砕され難いため、ボールミルのようにより細かい粉末を過粉砕することが少ない。
特に酸化チタンは表面に存在する水酸基のため付着性が強く、過粉砕されて粒径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、混合容器内に粉砕物が固着され易くなる。このため、振動ロッドミルを用いて原料を混合することにより他の混合方法に比べより均一に混合することが可能になる。この結果、後述する原料混合物の焼成反応をより均一に行うことができ、所望組成のチタン酸カリウムを容易に生成することができる。
【0039】
振動ミルを用いて混合する場合、混合条件は、振幅幅が2mm〜6mm、処理時間が10分〜120分であることが好ましい。
【0040】
振動ミルを用いて混合する場合、分散性を向上させるために、原料とは別に、木屑、有機溶媒(アルコール類、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン等)、水等を添加して混合することが好ましい。
上記成分を混合することにより振動ミル内部における酸化チタン等の付着や固着を抑制しつつ、酸化チタンとカリウム化合物とがより均一に分散した原料混合粉を得ることができる。
上記有機溶媒等は、適宜加温等して気化すること等により、得られる原料混合物から容易に除去することができる。
【0041】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、上記混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成する。上記焼成温度は、1150℃〜1350℃が好ましく、1200℃〜1300℃がより好ましい。
【0042】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、上記焼成温度が上記範囲内にあることにより、単相化率が向上するとともに、粒成長が促進され、得られる焼成粉の太さ(短径)がさらに太く(長く)なるために、アスペクト比が小さく球形状のチタン酸カリウムを容易に製造することができる。
【0043】
焼成工程で採用する焼成温度まで昇温する昇温速度は特に限定されないが、2℃/分〜70℃/分であることが好ましく、反応効率を考慮した場合、上記昇温速度は3〜50℃/分であることが好ましい。
【0044】
また、本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、焼成工程において目的とする焼成温度で10分間以上焼成することが好ましく、20〜40分間焼成することがより好ましい。
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、焼成工程において上記の時間焼成することにより、得られるチタン酸カリウム中に含まれる繊維状物の含有割合をより低減することができる。
【0045】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、目的とする焼成温度から500℃まで2℃/分〜300℃/分の降温速度になるように冷却することが好ましい。
特に、本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、上記降温速度は、5〜200℃/分であることが好ましく、20〜150℃/分であることがより好ましい。
【0046】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、目的とする焼成温度からの降温速度が上記のとおり規定することにより、チタン酸カリウムの長手方向(長径方向)の粒子成長がより一層阻害され、太さ(短径)方向の長さがより増大した、柱状の結晶をさらに容易に生成することができ、この結果、繊維状物の含有率を一層低減することができる。
【0047】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、焼成工程で焼成を行う方法としては、反応容器内に混合工程で得られた原料混合物を装入した状態で焼成する方法、上記混合物にバインダーなどを添加して所望形状の成型体に成形した上で焼成する方法や、上記原料混合物をロータリーキルン等に導入して流動状態で焼成する方法を挙げることができ、ロータリーキルン等のような流動状態で焼成する方法が好ましい。
【0048】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、上記焼成時に用いられる反応容器や炉材としては、セラミックス製のものが好ましく、具体的には、アルミナ等のセラミックス材料からなるものを挙げることができる。上記焼成時に用いられる反応容器や炉材の形状としては、円筒状物、凹部を有する円柱状物、凹部を有する方形状物、皿状物等が挙げられる。
【0049】
また、上記セラミックス製反応容器や炉材に上記原料混合物を接触させるにあたり、セラミックス製反応容器や炉材との接触部に焼成時に炭化する材質からなるシート材を介在させることが好ましい。
【0050】
焼成時に炭化する材質からなるシート材は、焼成時に焼失すると共に軟化物または流動物を生成しない材質からなるものが好ましく、具体的には、紙、天然繊維製布地、樹皮または熱硬化性樹脂性シート状物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0051】
焼成時に炭化する材質からなるシート材が紙である場合、例えば、塩化ビニール等のように炭化し難く軟化するものが張り合わされていないものが好ましく、いわゆる未晒クラフト紙、両更晒クラフト紙、片艶晒などの包装用紙、段ボール原紙、新聞用紙、上質紙、中質紙、再生紙、書籍用紙、キャストコート紙、アート紙、PPC用紙などの情報用紙等が挙げられる。
【0052】
また、焼成時に炭化する材質からなるシート材が天然繊維製布地である場合、例えば、綿、麻、絹等が挙げられ、焼成時に炭化する材質からなるシート材が熱硬化性樹脂製シート状物である場合、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等からなるシート状物が挙げられる。
【0053】
焼成時に炭化する材質からなるシート材の形態は、シート、織布、不織布または袋等を挙げることができる。
【0054】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、混合物の焼成時に、セラミックス製反応容器や炉材との接触部に焼成時に炭化する材質からなるシート材を介在させることにより、焼成時に混合物中のカリウム化合物が溶融して原料ロスを生じたり、セラミックス製反応容器や炉材に溶融したカリウム化合物が浸透することを回避することができる。
【0055】
本発明の製造方法において、上記シート材は、例えば、セラミックス製反応容器に設けられる凹部内側の底部に静置した上で混合物を導入することにより、カリウム化合物のロスや、カリウム化合物のセラミックス製反応容器への浸透を好適に回避することができる。
【0056】
また、上記シート材は、例えば、セラミックス製反応容器に設けられる凹部の内壁全体に設置した上で混合物を導入することにより、カリウム化合物のロスや、カリウム化合物のセラミックス製反応容器への浸透をより好適に回避することができる。
【0057】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法においては、粉砕工程において、上記焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機から選ばれる一種以上によって粉砕する。
【0058】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法において、焼成工程で得られた焼成粉を粉砕する手段は、振動ミル(振動ロッドミル、振動ボールミル等)または衝撃型粉砕機(高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミル、気流式粉砕機等)であり、これ等の粉砕手段を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
特に振動ロッドミルと分級機内蔵型高速回転ミルを組み合わせて使用することが好ましく、振動ロッドミルと分級機内蔵型高速回転ミルを組み合わせて使用することにより、得られるチタン酸カリウム中の繊維状物(繊維状のチタン酸カリウム)の含有量を低減し易くなる。
【0060】
粉砕工程において、振動ロッドミルを用いて焼成粉を粉砕する場合、粉砕条件は、振幅幅が2mm〜6mm、焼成粉の投入速度が20〜100kg/時間であることが好ましい。
粉砕工程において、分級機内蔵型高速回転ミルを用いて焼成物を粉砕する場合、粉砕条件は、回転数が40000〜100000rpm、焼成粉の投入速度が20〜100kg/時間であることが好ましい。
【0061】
上記焼成処理により得られた焼成粉は、柱状の太さ(短径)方向の長さが増大したチタン酸カリウム結晶を含むものであるが、その多くが比較的強く密着した凝集体であることから、上記粉砕処理により、所望の粒径まで粉砕することができる。
【0062】
上記粉砕処理によって得られる粉砕物は、必要に応じてさらに分級処理または篩分け処理することにより、所望の粒度分布を有するチタン酸カリウムを得ることができる。
【0063】
本発明のチタン酸カリウムの製造方法によれば、従来、焼成反応後に行われていた、pH調整や酸洗浄などによる成分調整を行う必要がなく、目的とする6チタン酸カリウム等のチタン酸カリウムを単に焼成するだけで簡便かつ安価に製造することができる。
【0064】
本発明の製造方法においては、混合工程において、チタン原料として比表面積7〜200m/gの酸化チタン40質量%以上含むものを用い、振動ミルを用いて混合することで分散性が向上するとともに、引き続く焼成工程で得られる焼成粉の太さ(短径)を太くすることができ、また、焼成工程において、混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成することにより単相化率を向上させるとともに、粒成長が促進されて得られる焼成粉の太さ(短径)をさらに太くすることができ、粉砕工程において、振動ミルおよび衝撃型粉砕機から選ばれる一種以上で焼成粉を粉砕することで、得られるチタン酸カリウムの長径をさらに短くするとともに、得られるチタン酸カリウムの分散性がより向上すると考えられる。
【0065】
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、平均粒径が、20〜120μmであるものが好適であり、40〜80μmであるものがより好適である。
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、平均太さ(平均短径)が、2〜6μmであるものが好適であり、3〜5μmであるものがより好適である。また、本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、長手方向の平均長さ(平均長径)が、3〜10μmであるものが好適であり、4〜8μmであるものがより好適である。
また、本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、アスペクト比(長手方向の長さ(長径)/太さ(短径))の平均値が、1〜3であるものが好適であり、1〜2であるものがより好適である。
【0066】
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、平均円形度が0.73以下であることが好ましく、0.50〜0.70であることがより好ましく、0.55〜0.67であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明の製造方法においては、特定の混合工程、焼成工程および粉砕工程を施すために、得られるチタン酸カリウムにおいて、繊維状物の含有割合を低減し、円形度を容易に所望の値に制御することができる。
【0068】
なお、本出願書類において、チタン酸カリウムの平均粒径は、得られたチタン酸カリウム粒子10000個程度について、粒度・形状分布測定器((株)セイシン企業製 PITA−2型)を用いて各粒子の投影像の面積を測定し、その面積と同じ面積を有する円の直径と、当該直径を有する球に換算した時の体積頻度分布を求めたときの、累積体積が50%となる直径を意味するものとする。
【0069】
本出願書類において、チタン酸カリウムの平均太さ(平均短径)および長手方向の平均長さ(平均長径)は、得られたチタン酸カリウムの表面を、イオンスパッター((株)日立サイエンスシステムズ製)により白金を蒸着後、走査型電子顕微鏡 型式名:S−4700((株)日立ハイテクノロジーズ製)により一視野に粒子数が250以上程度となるような倍率で撮影を行い、得られた画像(4視野以上)を基に、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア 型式名:Mac−View Ver.4((株)マウンテック製)を用いて、各結晶粒子を最小の長方形で囲み、直交する二つの軸のうち短い方を太さ(短径)、長い方を長さ(長径)として200個以上の粒子を各々測定したときの算術平均値を意味する。
本出願書類において、アスペクト比の平均値も、上記方法で測定された200個以上の粒子の各短径と長径から各々アスペクト比(長径/短径)を算出したときの算術平均値を意味する。
【0070】
また、本出願書類において、平均円形度は、上記方法により得られた画像を基に、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア 型式名:Mac−View Ver.4((株)マウンテック製)を用いて各粒子の面積Sと周囲長Lを測定した後、各粒子の面積および周囲長から下記式
円形度=4π×(面積)/(周囲長)
に基づいて各々円形度を算出したときの算術平均値を意味する。
【0071】
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、繊維状物(繊維状チタン酸カリウム)の含有割合が、1質量%以下であるものが好ましく、0.7質量%以下であるものがより好ましく、0.5質量%以下であるものがさらに好ましい。
【0072】
本出願書類において、繊維状物(繊維状チタン酸カリウム)とは、上述した方法により各々求めた、短径が3μm以下、長径が5μm以上、アスペクト比が3以上であるチタン酸カリウムを意味する。
また、本出願書類において、繊維状物(繊維状チタン酸カリウム)の含有割合は、各結晶粒子を円柱状とみなし、上記方法により求めた短径を円柱の直径、上記方法により求めた長径を円柱の長さ(高さ)として、各粒子の体積を求め、目的とするチタン酸カリウムの真比重(6チタン酸カリウムの場合は3.5g/cm)から各粒子の質量を算出した上で、チタン酸カリウムの総質量および繊維状物の総質量を求め、以下の計算式より算出される値を意味する。
繊維状物の含有率(質量%)={(繊維状物の総質量/チタン酸カリウムの総質量)}×100
【0073】
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、比表面積が0.5〜5.0m/gであるものが好ましく、1.0〜4.0m/gであるものがより好ましく、1.5〜3.0m/gであるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、チタン酸カリウムの比表面積は、BET法により、比表面積測定機(カンタクローム・インスツルメンツ社製)を用い、脱気温度350℃、脱気時間45分で測定された値を意味する。
【0074】
本発明の製造方法で得られるチタン酸カリウムは、単相化率が、90%以上であるものが好ましく、92%以上であるものがより好ましく、95%以上であるものがさらに好ましい。
【0075】
なお、本出願書類において、単相化率は、得られたチタン酸カリウムをアルミナ製の乳鉢で粉砕して測定試料とし、粉末X線回折装置(X線源:CuKα線、パナリティカル社製 型式名:X‘Part−ProMPD)を用いて回折X線パターンを測定したときに、得られた回折X線パターンのチタン酸カリウムと不純物のメインピークの高さから、以下の計算式により算出される値を意味する。
単相化率(%)={I/(I+S)}×100
I:チタン酸カリウムの2θ=0°〜50°における最強ピークの高さ
S:全ての不純物のメインピークの高さの和
本出願書類において、上記不純物とは、TiO、KTi等のチタン酸カリウム以外の成分を意味する。
【0076】
本発明の製造方法により得られるチタン酸カリウムとしては、一般式KO・6TiOで表される6チタン酸カリウムを含むものが好ましく、6チタン酸カリウムや、6チタン酸カリウムとTiOとの混合物や、6チタン酸カリウムと4チタン酸カリウム等の6チタン酸カリウム以外のチタン酸カリウム相との混合物や、6チタン酸カリウムと4チタン酸カリウム等の6チタン酸カリウム以外のチタン酸カリウム相とTiOの混合物であってもよい。
本発明の製造方法により得られるチタン酸カリウムとしては、6チタン酸カリウムの単相化率が90%以上であるものが好ましく、92%以上であるものがより好ましく、95%以上であるものがさらに好ましい。
【0077】
本発明によれば、単相化率が高く、繊維状物の含有量が低減されたチタン酸カリウムを簡便に製造する方法を提供することができる。
本発明の製造方法により得られるチタン酸カリウムは、耐熱性に優れることから、摩擦調整剤等として好適に使用することができる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の例により何ら制限されるものではない。
【0079】
(実施例1)
1.混合工程
チタン原料として、四塩化チタン水溶液をアンモニア水で中和し、100℃で乾燥させて得られた比表面積180m/gの二酸化チタン(純度99.9%)113.09kg、カリウム原料として炭酸カリウム(Unid Co., Ltd.製、純度99.9%)36.91kgを計量し、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)を用いて、上記のとおり計量したチタン原料およびカリウム原料と、変性アルコール(三協化学(株)製)1Lとを、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)を用い、振幅幅6mmで、20分間混合することにより、原料混合粉を得た。
2.焼成工程
1.で得られた混合原料粉をコージライトおよびムライトからなる匣鉢に入れた状態で、箱型電気炉((株)モトヤマ製)を用いて、大気雰囲気下、焼成温度1250℃で3時間焼成することにより焼成粉を得た。
3.粉砕工程
得られた焼成粉を、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)および衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン(株)製ACMパルベライザー)に対してこの順番で順次50kg/時間で投入して、粉砕処理を行うことにより、6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物(繊維状チタン酸カリウム)の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0080】
(実施例2)
「1.混合工程」において、比表面積180m/gの二酸化チタンの使用量を102.85kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を33.57kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0081】
(実施例3)
「2.焼成工程」において、箱型電気炉((株)モトヤマ製)を、トンネル炉(高砂工業(株)製)に変更して焼成した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率と、平均円形度とを表2に示す。
【0082】
(実施例4)
「2.焼成工程」において、箱型電気炉((株)モトヤマ製)を、ロータリーキルン((株)ツービーエム製)に変更し、焼成時間を3時間から10分間に変更して焼成した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物、平均円形度とを表2に示す。
【0083】
(実施例5)
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m/gの二酸化チタン113.09kgから比表面積20m/gの二酸化チタン(東邦チタニウム(株)製 純度99.9%)113.09kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0084】
(実施例6)
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m/gの二酸化チタン113.09kgから比表面積9m/gの二酸化チタン(CHINA BLUESTAR INTERNATIONAL CHEMICAL CO., LTD製 純度99.9%)113.48kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.52kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0085】
(実施例7)
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m/gの二酸化チタン113.09kgから比表面積7.2m/gの二酸化チタン(COSMO CHEMICAL CO., LTD.社製 純度98.8%)113.40kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.60kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0086】
(実施例8)
「1.混合工程」において、チタン原料を、四塩化チタン水溶液をアンモニア水で中和し、100℃で乾燥させて得られた比表面積180m/gの二酸化チタン(純度99.9%)56.94kgおよび比表面積1.6m/gの二酸化チタン(Rio Tinto Fer et Titane inc.社製 純度94.7%)56.94kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.11kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0087】
(実施例9)
「1.混合工程」において、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.11kgに変更し、「2.焼成工程」において、焼成温度を1250℃から1150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0088】
参考例1
「1.混合工程」において、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.11kgに変更し、「3.粉砕工程」において、粉砕処理を行う手段を、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)および衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン(株)製ACMパルベライザー)から、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0089】
参考例2
「1.混合工程」において、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから36.11kgに変更し、「3.粉砕工程」において、粉砕処理を行う手段を、振動ロッドミル(中央化工機(株)製)および衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン(株)製ACMパルベライザー)から、衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン(株)製ACMパルベライザー)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0090】
(実施例10
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m /gの二酸化チタン(COSMO CHEMICAL CO., LTD.社製 純度98.8%)107.23kgおよび金属チタン粉(トーホーテック(株)製、純度98.6%)5.05kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから37.71kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表1に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
(比較例1)
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m/gの二酸化チタン(純度99.9%)113.09kgから比表面積1.6m/gの二酸化チタン(Rio Tinto Fer et Titane inc.社製 純度94.7%)114.59kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから35.41kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表4に示す。
【0094】
(比較例2)
「1.混合工程」において、チタン原料を、四塩化チタン水溶液をアンモニア水で中和し、100℃で乾燥させて得られた比表面積180m/gの二酸化チタン(純度99.9%)22.87kgおよび比表面積1.6m/gの二酸化チタン(Rio Tinto Fer et Titane inc.社製 純度94.7%)91.47kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから35.66kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表4に示す。
【0095】
(比較例3)
「2.焼成工程」において、焼成温度を、1250℃から1100℃に変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表4に示す。
【0096】
(比較例4)
粉砕処理を行わなかった(「3.粉砕工程」を施さなかった)以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表4に示す。
【0097】
(比較例5)
「1.混合工程」において、混合手段を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に変更し、「2.焼成工程」において、焼成処理を、ロータリーキルンを用い、大気雰囲気中、焼成温度940℃で2時間行い、得られた焼成粉を乾式分級し、粉砕処理を行わなかった(「3.粉砕工程」を施さなかった)以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率、平均円形度とを表4に示す。
【0098】
(比較例6)
「1.混合工程」において、チタン原料を、比表面積180m/gの二酸化チタン(COSMO CHEMICAL CO., LTD.社製 純度98.8%)106.72kgおよび金属チタン粉(トーホーテック(株)製、純度98.6%)5.50kgに変更し、炭酸カリウムの使用量を36.91kgから37.78kgに変更した以外は、実施例1と同様にして6チタン酸カリウムを得た。
原料の使用量を表3に示すとともに、6チタン酸カリウムの製造条件と、得られた6チタン酸カリウムの単相化率、繊維状物の含有率と、平均円径度とを表4に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
表1および表2より、実施例1〜実施例10においては、比表面積1〜2m /gの酸化チタン0〜60質量%、比表面積7〜200m /gの酸化チタン40〜100質量%並びに金属チタンおよび水素化チタンから選ばれる一種以上を合計で0〜4.5質量%配合されてなるチタン原料と、カリウム化合物からなるカリウム原料とを振動ミルを用いて混合する混合工程と、混合工程で得られた原料混合物を焼成温度1150〜1400℃で焼成する焼成工程と、焼成工程で得られた焼成粉を振動ミルおよび衝撃型粉砕機により粉砕する粉砕工程とを施して6チタン酸カリウムを製造していることにより、単相化率が高く、繊維状物の含有割合が低減された6チタン酸カリウムを簡便に製造し得ることが分かる。
【0102】
一方、表3および表4より、比較例1〜比較例6においては、混合工程において、チタン原料として、比表面積が1.6m/gである酸化チタンのみを用いたり(比較例1)、比表面積が180m/gである酸化チタン量が不十分であったり(比較例2)、混合工程における混合手段として振動ミルを用いなかったり(比較例5)、また、焼成工程において、焼成温度が低過ぎたり(比較例3、比較例5)、さらには、粉砕工程を施さない(比較例4、比較例5)ために、単相化率が低かったり(比較例5、比較例6)、繊維状物の含有割合が高い(比較例1〜比較例4)、6チタン酸カリウムしか得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、単相化率が高く、繊維状物の含有量が低減されたチタン酸カリウムを簡便に製造する方法を提供することができる。