(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予洗い用洗剤は、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン及びアルキルアミンオキシドからなる群から選択された少なくとも1種の界面活性剤を含む請求項2に記載の洗浄方法。
前記食品由来の発泡性の汚れは、鶏卵、食肉、水産物、豆製品、乳製品及び小麦粉からなる群から選択された少なくとも1種の食品に由来する汚れである請求項4に記載の洗浄方法。
前記洗浄剤組成物は、さらにアルカリ剤、塩素剤、キレート剤、高分子分散剤、溶媒/工程剤及び可溶化剤からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含む請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品由来の汚れが付着した洗浄対象物を自動洗浄機を用いて洗浄する場合、汚れとして洗浄対象物に付着した食品に発泡性があり、自動洗浄機内で泡が発生することがある。
発泡性のある食品の代表例はタンパク質汚れや油脂汚れである。
【0007】
また、自動洗浄機による洗浄の前に、洗浄対象物に対して予洗い用洗剤を用いた予洗いをすることがある。予洗い用洗剤として起泡性の高い洗浄剤組成物が用いられた場合に、予洗い用洗剤が洗浄対象物に付着したまま自動洗浄機に導入されると、自動洗浄機内で泡が発生することがある。
【0008】
特許文献1に記載されているような低起泡性の界面活性剤を、自動洗浄機に用いる洗浄剤組成物として採用した場合であっても、洗浄対象物に食品由来の汚れや予洗い用洗剤のような泡発生源が付着した場合には、その洗浄対象物を自動洗浄機内に導入すると泡が発生することがあった。
そこで、洗浄対象物に付着した泡発生源に起因する泡の発生を防止して自動洗浄機での洗浄を行う方法が求められていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、洗浄対象物に付着した泡発生源に起因する泡の発生を防止して自動洗浄機での洗浄を行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の構造を有する非イオン性界面活性剤を用いると、洗浄対象物に泡発生源が付着していても泡の発生が抑制されて、自動洗浄機での洗浄を好適に行うことができることを発見し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明の洗浄方法は、泡発生源が付着した洗浄対象物が洗浄剤組成物と共に自動洗浄機に導入されて、自動洗浄機を用いて洗浄対象物を洗浄する洗浄方法であって、
上記洗浄剤組成物は下記一般式(1)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜400の数である。)
【0012】
上記構造を有する非イオン性界面活性剤はその末端に、アルキレンオキサイド末端の酸素原子を含むアセタール構造(AO−C(R
1)(R
2)−O−R
3)を有する。
アセタール構造を構成する2つの酸素原子のうちの1つは、アルキレンオキサイド末端に存在していたヒドロキシル基に由来する酸素原子である。
上記構造の化合物は、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基がアセタール構造により封鎖されているため、低起泡性の非イオン性界面活性剤となり、自動洗浄機による洗浄に用いても泡発生源とはならない。
なお、本明細書におけるアセタール構造とは、R
1が水素原子であるアセタール、R
1がアルキル基であるケタールの両方を含む概念である。
【0013】
さらに、上記構造の非イオン性界面活性剤はそれ自体が低起泡性であることに加えて、消泡性を有しており、自動洗浄機内に泡発生源が共に導入された際に、泡発生源に起因する泡の発生を抑制する作用を有する。そのため、上記構造の非イオン性界面活性剤を用いることにより、洗浄対象物に付着した泡発生源に起因する泡の発生を防止して自動洗浄機での洗浄を行うことができる。
【0014】
本発明の洗浄方法は、自動洗浄機による洗浄の前に、洗浄対象物に対して予洗い用洗剤を用いた予洗いをする工程をさらに含み、
上記泡発生源が、洗浄対象物に付着した上記予洗い用洗剤であることが望ましい。
【0015】
泡発生源となる予洗い用洗剤には、洗浄力に優れた洗剤があり、洗浄力に優れた洗剤を用いた予洗いをすることで洗浄対象物の洗浄をより綺麗に行うことができる。本発明の洗浄方法では自動洗浄機に予洗い用洗剤が混入したとしても自動洗浄機内での泡の発生が抑制されるので、泡発生源となってしまうような種類の予洗い用洗剤であっても予洗いに使用することができ、予洗い用洗剤の選択の幅を広げることができる。
【0016】
本発明の洗浄方法では、上記予洗い用洗剤は、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン及びアルキルアミンオキシドからなる群から選択された少なくとも1種の界面活性剤を含むことが望ましい。
【0017】
上記のような界面活性剤は泡発生源となりやすいが、本発明の洗浄方法では自動洗浄機に上記界面活性剤が混入したとしても自動洗浄機内での泡の発生が抑制されるので、泡発生源となってしまうような種類の界面活性剤を含む予洗い用洗剤を予洗いに使用することができ、予洗い用洗剤の選択の幅を広げることができる。
【0018】
本発明の洗浄方法では、上記泡発生源が、洗浄対象物に付着した、食品由来の発泡性の汚れであることが望ましい。
【0019】
食品由来の発泡性の汚れが洗浄対象物に付着している場合、自動洗浄機内での泡の発生を防止するために予洗いを入念に行い洗浄対象物に付着した発泡性の汚れの量を減らす必要があったが、予洗いを入念に行うことは洗浄の作業性を低下させ、ひいては自動洗浄機を使用する意義を没却させる。
本発明の洗浄方法では食品由来の発泡性の汚れが洗浄対象物に付着していても自動洗浄機内での泡の発生が抑制されるので予洗いを入念に行う必要はなく、作業効率よく自動洗浄機を用いた洗浄を行うことができる。
【0020】
本発明の洗浄方法では、上記食品由来の発泡性の汚れは、鶏卵、食肉、水産物、豆製品、乳製品及び小麦粉からなる群から選択された少なくとも1種の食品に由来する汚れであることが望ましい。
【0021】
上記食品に由来する汚れにはタンパク質が含まれており、タンパク質は発泡性が高い。また、上記食品に含まれる油脂が加水分解されてセッケン分が生じると泡立ちの原因となる。本発明の洗浄方法では自動洗浄機内での泡の発生が抑制されるので、タンパク質や油脂を含む汚れが自動洗浄機に導入されても泡の発生が抑制される。
すなわち、本発明の洗浄方法は上記食品に由来する汚れの洗浄に特に適している。
【0022】
本発明の洗浄方法では、上記洗浄剤組成物は、さらにアルカリ剤、塩素剤、キレート剤、高分子分散剤、溶媒/工程剤及び可溶化剤からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含むことが望ましい。
【0023】
一般式(1)で示される構造を有する界面活性剤はアルカリ性下で安定であるため、アルカリ剤と組み合わせて使用することができ、アルカリ剤により洗浄力を高めることができる。さらに、一般式(1)で示される構造を有する界面活性剤は塩素剤と反応しないため塩素剤と組み合わせて使用することもできる。その他、必要に応じてキレート剤、高分子分散剤、溶媒/工程剤又は可溶化剤と組み合わせて使用することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の洗浄方法で用いる洗浄剤組成物に含まれる非イオン性界面活性剤は低起泡性であることに加えて、消泡性を有しており、自動洗浄機内に泡発生源が共に導入された際に、泡発生源に起因する泡の発生を抑制する作用を有する。そのため、洗浄対象物に付着した泡発生源に起因する泡の発生を防止して自動洗浄機での洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の洗浄方法は、泡発生源が付着した洗浄対象物が洗浄剤組成物と共に自動洗浄機に導入されて、自動洗浄機を用いて洗浄対象物を洗浄する洗浄方法であって、
上記洗浄剤組成物は下記一般式(1)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜400の数である。)
【0027】
まず、本発明の洗浄方法で使用する洗浄剤組成物に含まれる、上記一般式(1)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤について説明する。
以下、本明細書では、一般式(1)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を非イオン性界面活性剤(A)とする。
【0028】
上記一般式(1)で示される構造は、アセタール構造である。
アセタール構造は、ヒドロキシル基の保護基として用いられる構造である。ヒドロキシル基はアルカリ性環境下で酸化されてカルボキシル基となり、泡発生源となる構造になることがあるが、ヒドロキシル基末端をアセタール構造とすることで酸化が防止され、界面活性剤が泡発生源となることが防止される。
また、末端がアセタール構造であると、末端がヒドロキシル基である場合に比べて末端の疎水性が上がる。界面活性剤の疎水性が上がると消泡性が向上すると考えられる。
また、分子鎖の末端部分が疎水基で中央部分が親水基になっていると特に消泡性が高いと考えられる。
【0029】
アセタール構造は、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対する付加反応により生成させることができる。この付加反応は反応率が高いため、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させることができる。
また、アセタール構造は、アルカリ性環境下での安定性が高いという特徴も有するので、ベンジル基やアセチル基のような他の保護基でヒドロキシル基末端を封鎖した界面活性剤に比べて「アルカリ性環境下での低起泡性」という効果を発揮するために有利であるといえる。
【0030】
一般式(1)におけるR
2は、エーテル結合を含んでもよい炭化水素基である。R
2は炭素及び水素のみからなるアルキレン基であってもよく、エーテル結合を含むアルキレン基であってもよい。
また、R
2自体に環状構造が含まれていてもよく、環状構造の例としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
R
2自体に環状構造が含まれる場合、R
2とR
3が環を形成することによって、一般式(1)で示される構造の末端が縮合環となっていてもよい。
【0031】
一般式(1)に含まれるアセタール構造として望ましい構造は、下記一般式(2)に示される構造である。
【化3】
(式中、mは3以上の整数である)
上記一般式(2)で示される構造は、一般式(1)においてR
2とR
3が環を形成した構造である。
【0032】
また、上記一般式(2)に含まれる構造のうち、末端に一般式(3)で示される構造を有することが望ましい。
【化4】
上記一般式(3)で示される構造は、一般式(2)においてmが4である構造である。
また、一般式(3)で表される構造のうち、さらに望ましい構造は、R
1がHである構造(テトラヒドロピラニルエーテル)である。
テトラヒドロピラニルエーテルは、中性及びアルカリ性環境下での安定性が高く、また、アセタール構造の原料となるジヒドロピランが安価で入手しやすいため、好ましい。
この構造は、後述するように、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることにより得られる。
なお、本明細書におけるジヒドロピランとは、下記式(6)で表される3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を意味する。
【化5】
【0033】
上記一般式(1)で示されるアセタール構造として、上記一般式(2)、(3)で表される環を有する構造の他、環を有する構造として下記式(7)、(8)、(9)で表される構造も挙げられる。
【化6】
【0036】
式(7)で示す構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に下記式(10)で示す2,3−ジヒドロ―1,4−ジオキシンを付加させることにより得られる。
【化9】
【0037】
式(8)で示す構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に下記式(11)で示す2,3−ジヒドロフランを付加させることにより得られる。
【化10】
【0038】
式(9)で示す構造は、一般式(1)において、R
2がR
2自体に環状構造を含む構造であり、一般式(1)で示される構造の末端が縮合環となる構造の一例である。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に下記式(12)で示す2,3−ベンゾフランを付加させることにより得られる。
【化11】
【0039】
上記一般式(1)で示されるアセタール構造としては、環を有する構造の他に、環を有さない構造も挙げられる。
一般式(1)に含まれるアセタール構造が環を有さない場合に望ましい構造は、上記一般式(1)におけるR
1がアルキル基である構造である。
R
1としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(1)におけるR
2及びR
3は、R
1がアルキル基であるか否かに関係なく、炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
また、R
2及びR
3は、エーテル結合を含む炭化水素基であってもよい。
【0041】
また、一般式(1)においてR
1がアルキル基である構造のうち、末端に下記一般式(13)に示される構造を有することが特に望ましい。
【化12】
上記一般式(13)で示される構造は、一般式(1)においてR
1とR
2が共にメチル基であり、R
3がエチル基である構造である。
【0042】
上記一般式(13)で表される構造は、末端が2−エトキシプロピル基となっており、酸触媒下でヒドロキシル基に2−エトキシプロペンを付加させることにより得られる。
【0043】
その他の具体的な構造の例としては、下記一般式(14)〜(19)で表される構造等が挙げられる。
【化13】
上記一般式(14)で示される構造は、一般式(1)においてR
1がメチル基、R
2がエチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ブテンを付加させることにより得られる。
【0044】
【化14】
上記一般式(15)で示される構造は、一般式(1)においてR
1がメチル基、R
2がペンチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ヘプテンを付加させることにより得られる。
【0045】
【化15】
上記一般式(16)で示される構造は、一般式(1)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がシクロヘキシル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−シクロヘキシルオキシ−1−プロペンを付加させることにより得られる。
【0046】
【化16】
上記一般式(17)で示される構造は、一般式(1)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がフェニル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−フェノキシ−1−プロペンを付加させることにより得られる。
【0047】
【化17】
上記一般式(18)で示される構造は、一般式(1)においてR
1、R
2、R
3がいずれもメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシプロペンを付加させることにより得られる。
【0048】
【化18】
上記一般式(19)で示される構造は、一般式(1)においてR
1、R
2がいずれもメチル基、R
3がベンジル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にベンジルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0049】
また、上記一般式(1)に含まれる構造のうち、末端に一般式(20)で示される構造を有することも望ましい。
【化19】
上記一般式(20)で示される構造は、一般式(1)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基であり、R
3がエチル基である構造である。
【0050】
上記一般式(20)で表される構造は、末端がエトキシエチル基となっており、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0051】
AO(オキシアルキレン基)としては、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、又は、オキシブチレン基が挙げられる。非イオン性界面活性剤(A)には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基のうちの1種類のみが含まれていてもよく、これらのうちの複数種類が含まれていてもよい。オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基の繰り返し構造の単位も特に限定されるものではない。
【0052】
非イオン性界面活性剤(A)におけるAOの平均付加モル数nは、1〜400であり、nの好ましい範囲は3〜100、より好ましい範囲は5〜50である。
通常、非イオン性界面活性剤(A)は、AOの付加モル数nが異なる複数の化合物の混合物である。非イオン界面活性剤(A)の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数は整数値であるが、AOの付加モル数を測定した場合の測定値は、非イオン界面活性剤(A)の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の平均値として測定されるので、これを平均付加モル数とする。
また、非イオン性界面活性剤(A)は、AOの種類が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。
【0053】
非イオン性界面活性剤(A)は、末端に一般式(1)で示されるアセタール構造を有することを特徴としているが、非イオン性界面活性剤全体の構造としては、下記一般式(4)で示される構造を有することが望ましい。
【化20】
(Xはアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基である。)
【0054】
上記一般式(4)におけるXのうち、アルコールの残基の好ましい具体例としては、アルコールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルコールの望ましい例としては、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール(エイコサノール)、2−オクチルドデカン−1−オール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール、トリコサノール、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、ペンタコサノール、セリルアルコール、1−ヘプタコサノール、モンタニルアルコール(1−オクタコサノール)、1−ノナコサノール、ミリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、1−ヘントリアコンタノール、1−ドトリアコンタノール、ゲジルアルコール(1−テトラトリアコンタノール)等が挙げられる。
【0055】
アルキルフェノールの残基の好ましい具体例としては、アルキルフェノールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルキルフェノールの望ましい例としては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクチルフェノール、オクチルクレゾール等が挙げられる。
【0056】
また、非イオン性界面活性剤(A)は、Xとしてこれらのアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基のうちの1種類のみを有する化合物であってもよく、異なるアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基を有する複数の化合物の混合物であってもよい。
【0057】
また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基の中にはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0058】
また、非イオン性界面活性剤(A)は、両末端にアセタール構造を有してもよく、下記一般式(21)で示される構造を有していてもよい。
【化21】
(式中、R
1及びR
4は水素原子またはアルキル基、R
2、R
3、R
5及びR
6はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3、R
5とR
6はそれぞれ環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜400の数である。)
【0059】
両末端にアセタール構造を有する非イオン界面活性剤は、分子両末端にヒドロキシル基を有する(ポリ)アルキレングリコールのヒドロキシル基をアセタール化することにより得られる。
(ポリ)アルキレングリコールとしては、AOがオキシエチレン基であるポリエチレングリコール、AOがオキシプロピレン基であるポリプロピレングリコールが挙げられる。また、AOがHO−(PO)
o1−(EO)
p1−(PO)
q1−Hの構造(o1、p1及びq1は1以上の整数である)を有するポリアルキレングリコール(例えば、プルロニック(BASFジャパン株式会社製))、HO−(EO)
o2−(PO)
p2−(EO)
q2−Hの構造(o2、p2及びq2は1以上の整数である)を有するポリアルキレングリコール(例えば、ブラウノン(青木油脂工業株式会社製))等が挙げられる。
なお、分子両末端にヒドロキシル基を有する(ポリ)アルキレングリコールとしてのAOの平均付加モル数nは、1〜400であるが、nが3〜300のものが好ましく、nが5〜200のものがより好ましい。
【0060】
上記一般式(21)で示される構造の界面活性剤の具体例としては、両末端がテトラヒドロピラニルエーテルとなっている下記式(22)で示される構造が挙げられる。
【化22】
この構造は、ポリエチレングリコール等の両末端にヒドロキシル基を有する界面活性剤1モルに対してジヒドロピランを2モル付加させることによって得られる。
また、上記一般式(21)で示される構造の界面活性剤の他の具体例としては、両末端がジオキサニル基(一般式(7)参照)である構造、両末端がテトラヒドロフラニルエーテル(一般式(8)参照)である構造、両末端が2−エトキシエチル基(一般式(20)参照)である構造、両末端が2−エトキシプロピル基(一般式(13)参照)である構造等が挙げられる。
【0061】
以下、非イオン性界面活性剤(A)の製造方法について説明する。
まず、出発物質として、末端に下記一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を準備する。
【化23】
【0062】
一般式(5)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤としては、市販されている界面活性剤を使用することができる。例えば、商品名「エマルミン」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「ワンダーサーフ」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ブラウノン」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ファインサーフ」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「アデカノール」(株式会社ADEKA製)、商品名「プルラファック」「プルロニック」(BASFジャパン株式会社製)、商品名「ノイゲン」(第一工業製薬株式会社製)、商品名「ペレテックス」(ミヨシ油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0063】
上記非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して、付加反応を行うことによりヒドロキシル基を封鎖して、一般式(1)で示されるアセタール構造を得る。
付加反応の具体的な手順は、ヒドロキシル基に付加反応させて得るアセタール構造によって異なるが、例えば、一般式(3)で表され、R
1がHである構造(テトラヒドロピラニルエーテル)は、非イオン性界面活性剤のヒドロキシル基末端にジヒドロピラン(DHP)を酸触媒と共に有機溶媒下で反応させることにより得ることができる。
【0064】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。この中では、扱いが容易であり、安価であるためp−トルエンスルホン酸が望ましい。
【0065】
上記反応に用いる有機溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0066】
反応の終了は、酸触媒の中和により行う。中和に用いる塩基としては特に限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの溶液等を用いることができる。
【0067】
反応条件は、出発物質の種類や量により適宜定めることができるが、例えば、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル60〜70gを塩化メチレン溶液25〜100ml中で反応させる場合、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの全てのヒドロキシル基と反応させるのに充分な量(モル比でポリオキシエチレンラウリルエーテルに対して1〜10倍)のジヒドロピランと酸触媒として1〜10mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、0.5時間〜終夜(10時間)室温にて撹拌した後、炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒及び未反応のジヒドロピランを留去する方法が挙げられる。
【0068】
洗浄剤組成物中における非イオン性界面活性剤(A)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜40重量%であることが望ましく、0.5〜25重量%であることがより望ましく、0.5〜10重量%であることがさらに望ましい。
【0069】
洗浄剤組成物のpHは特に限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤(A)の末端のアセタール構造の安定性の観点からは、中性〜アルカリ性域であることが望ましい。
中性の洗浄剤組成物とする場合、そのpHが6以上9未満であることが望ましく、弱アルカリ性の洗浄剤組成物とする場合、pHが9以上12未満であることが望ましく、強アルカリ性の洗浄剤組成物とする場合、pHが12以上であることが望ましい。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、堀場製作所製、D−21型を用いて測定することができる。
【0070】
洗浄剤組成物には、非イオン性界面活性剤(A)の他に、必要に応じてアルカリ剤(B)、塩素剤(C)、高分子分散剤(D)、キレート剤(E)、溶媒/工程剤(F)、可溶化剤(G)等の、洗浄剤組成物に配合される他の成分を含有してもよい。また、非イオン性界面活性剤(A)以外の界面活性剤を、起泡性が増大しない範囲で含有していてもよい。
【0071】
アルカリ剤(B)としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム等が望ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。これらのアルカリ剤を使用すると洗浄力の高いアルカリ洗浄剤とすることができる。
また、これらのアルカリ剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤(B)の濃度は、特に限定されるものではないが、2〜95重量%であることが望ましく、30〜95重量%であることがより望ましく、45〜95重量%であることがさらに望ましい。
アルカリ剤が複数種類用いられている場合、アルカリ剤の濃度は各アルカリ剤の濃度の合計値として定められる。
アルカリ剤を配合してアルカリ性とした洗浄剤組成物ではアルカリ剤による油汚れ等に対する洗浄効果を発揮させることができる。
【0072】
塩素剤(C)としては、例えば、塩素化イソシアヌール酸塩(塩素化イソシアヌール酸ナトリウム、塩素化イソシアヌール酸カリウム等)、トリクロロイソシアヌール酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。
また、これらの塩素剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄剤組成物に含まれる非イオン性界面活性剤(A)はその末端にヒドロキシル基を有さず、アセタール構造を有しており、アセタール構造は塩素剤(C)と反応しないので、洗浄剤組成物中の塩素剤(C)の失活が防止される。非イオン性界面活性剤と塩素剤が安定に共存すると、非イオン性界面活性剤による洗浄効果、塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮させることができる。
洗浄剤組成物中における塩素剤の濃度は、洗浄剤組成物100重量%中、純分で1重量%以上であることが望ましく、4重量%以上であることがより望ましい。塩素剤の濃度が1重量%以上であると高い漂白性、殺菌性を発揮することができる。
塩素剤の濃度の上限は、純分で50重量%であることが望ましく、30重量%であることがより望ましい。
塩素剤が複数種類用いられている場合、塩素剤の濃度は各塩素剤の濃度の合計値として定められる。
また、非イオン性界面活性剤(A)の含有量に対する塩素剤(C)の含有量が同じ又は多いことが望ましく、非イオン性界面活性剤の含有量に対する上記塩素剤の含有量の割合が、塩素剤/非イオン性界面活性剤=1〜100であることが望ましく、1〜20であることがより望ましく、1〜6であることがさらに望ましい。
塩素剤が相対的に多く含まれている洗浄剤組成物は、高い漂白性、殺菌性を発揮することができる。
【0073】
高分子分散剤(D)としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸アクリル酸共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。なかでも、コスト面、経済性の点から、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量Mw=3,000〜30,000)、ポリマレイン酸−アクリル酸ナトリウム等が好適に用いられる。
【0074】
キレート剤(E)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、ポリアクリル酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、並びに、下記式(23)で表されるポリアスパラギン酸系化合物、下記式(24)で表されるイミノジコハク酸系化合物、下記式(25)で表されるイミノジ酢酸系化合物が挙げられる。
【化24】
[式(23)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。s、tは整数である]
【化25】
[式(24)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【化26】
[式(25)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【0075】
洗浄剤組成物中におけるキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0〜80重量%であることが望ましく、0〜70重量%であることがより望ましく、15〜50重量%であることがさらに望ましい。
【0076】
溶媒(F)としては、水や一般的に用いられる有機溶媒が挙げられる。工程剤(F)は、剤形が固体の場合の増量剤であり、pHが中性であるものが望ましく、硫酸ナトリウム(芒硝)等が挙げられる。
【0077】
可溶化剤(G)としては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、カプリル酸、オクチル酸及びこれらの塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0078】
洗浄剤組成物の剤形は、液体、固体(錠剤、粉末等)のいずれでもよく、液体に限定されるものではない。
なお、洗浄剤組成物が固体であり、洗浄剤組成物のpHを直接測定できない場合、洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物10gを水90gと混合した状態(洗浄剤組成物の濃度が10重量%)で測定したpHと定める。
【0079】
本発明の洗浄方法において洗浄される洗浄対象物としては、自動洗浄機で洗浄可能な物品であれば特に限定されるものではないが、食堂、厨房、食品工場、家庭の台所等で使用される食器、調理器具、食材運搬用容器、コンテナー、ケース等が挙げられる。
洗浄対象物の材質も、自動洗浄機で洗浄可能な材質であれば特に限定されるものではなく、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、金属(鉄、ステンレス、アルミ、銀、銅、真鍮、ブリキ、金等)、陶磁器(セラミック)、漆器、ガラス(クリスタルガラス)、木材、竹等が挙げられる。
【0080】
洗浄対象物に付着する泡発生源には、大きく分けて2種類あり、一つは洗浄対象物に付着した食品由来の発泡性の汚れであり、もう一つは予洗い用洗剤である。
【0081】
食品由来の発泡性の汚れの例としては、鶏卵、食肉、水産物、豆製品、乳製品又は小麦粉に由来する汚れが挙げられる。また、これらの食品が洗浄対象物に直接付着した汚れの他に、食品工場や台所等におけるこれらの食品の加工工程において発生する汚れも、食品由来の発泡性の汚れに含まれる。
鶏卵、食肉、水産物(魚介類、海藻類等)、豆製品(大豆製品、ナッツ類等)、乳製品、小麦粉等の食品にはタンパク質が多く含まれている。例えば卵白が容易に泡立つように、タンパク質は発泡性が高い物質として知られている。
また、食品に含まれる油脂がアルカリで加水分解されてセッケン分が生じると泡立つため、油脂も発泡性が高い物質と考えられる。油脂を多く含む食品としては、食肉、魚介類、ナッツ類、乳製品、鶏卵(卵黄)等が挙げられる。
【0082】
予洗い用洗剤としては、洗浄対象物に付着した汚れの洗浄に適した成分を含む洗剤を任意に使用することができ、特に限定されるものではないが、本発明の洗浄方法においては予洗い用洗剤が起泡性の高い洗剤であっても自動洗浄機内での泡の発生が抑制される。
起泡性の高い予洗い用洗剤の例としては、起泡性の高い界面活性剤を含む洗剤が挙げられ、起泡性の高い界面活性剤の例としてはアニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。なお、起泡性の高い界面活性剤には、界面活性剤自体の起泡性が高いもののほかに、界面活性剤自体は低泡性であっても、洗剤中の他の成分と接触した際に反応して起泡性が高い構造に変化する可能性があるものも含まれる。例えば、エステル構造を有する界面活性剤はアルカリにより分解し石鹸を生じ起泡性の高い構造に変化することがある。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0083】
予洗い用洗剤には、自動洗浄機に導入する洗浄剤組成物に含まれる非イオン性界面活性剤(A)を含んでいてもよく、予洗い用洗剤として自動洗浄機に導入する洗浄剤組成物と同じ組成物を用いてもよい。その場合の泡発生源は予洗い用洗剤ではなく食品由来の発泡性の汚れとなる。
【0084】
また、予洗い用洗剤には、界面活性剤の他に自動洗浄機に導入する洗浄剤組成物に含まれてもよい他の成分として説明した、アルカリ剤(B)、塩素剤(C)、高分子分散剤(D)、キレート剤(E)、溶媒/工程剤(F)、可溶化剤(G)等の成分が含まれていてもよい。
【0085】
予洗い用洗剤を用いる場合、自動洗浄機による洗浄の前に、洗浄対象物に対して予洗い用洗剤を用いた予洗いをする工程、すなわち予洗い工程を行う。
予洗い工程の方法は特に限定されるものではなく、スポンジ等に予洗い用洗剤を付着させてこすり洗いをする方法、洗浄対象物の全体が充分に浸るような大きさの容器を用意し、その容器に予洗い用洗剤の溶液を満たして、洗浄対象物を予洗い用洗剤の溶液に所定の時間浸漬したのちに引き上げる漬け置き洗いをする方法が挙げられる。
予洗い工程の後には、予洗い工程で洗浄対象物に付着した予洗い用洗剤をすすぎによりある程度落としてから洗浄対象物を自動洗浄機に導入してもよく、予洗い用洗剤が洗浄対象物に付着したままで洗浄対象物を自動洗浄機に導入してもよい。
【0086】
本発明の洗浄方法では、泡発生源が付着した洗浄対象物を洗浄剤組成物と共に自動洗浄機に導入し、自動洗浄機を用いて洗浄対象物を洗浄する。
自動洗浄機の種類は特に限定されるものではなく、上述した洗浄対象物を洗浄可能な自動食器洗浄機等の洗浄機を使用することができる。
【実施例】
【0087】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(製造例1)界面活性剤(A−1)の製造
非イオン性界面活性剤として、オキシアルキレン基を1〜400個の範囲で有し、アルキレンオキサイド末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(株式会社ADEKA製、アデカノールB722)(140g)の塩化メチレン溶液(50ml)に20gのジヒドロピラン(DHP)と、触媒として1mol%のパラトルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒及び未反応のジヒドロピランを留去して目的生成物を得た。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端にアセタール構造を有する非イオン性界面活性剤(A−1)である。
【0089】
(製造例2)界面活性剤(A−2)の製造
非イオン性界面活性剤として、オキシアルキレン基を1〜400個の範囲で有し、アルキレンオキサイド末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(株式会社ADEKA製、アデカノールB−2020)(300g)の塩化メチレン溶液(50ml)に17gの2,3−ジヒドロフランと、触媒として1mol%のパラトルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去して目的生成物を得た。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基と2,3−ジヒドロフランが反応してなる、末端にアセタール構造を有する非イオン性界面活性剤(A−2)である。
【0090】
(製造例3)界面活性剤(A−3)の製造
非イオン性界面活性剤として、オキシアルキレン基を1〜400個の範囲で有し、アルキレンオキサイド末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(株式会社ADEKA製、アデカノールB−2030)(280g)の塩化メチレン溶液(50ml)に18gのエチルビニルエーテルと、触媒として1mol%のパラトルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去して目的生成物を得た。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とエチルビニルエーテルが反応してなる、末端にアセタール構造を有する非イオン性界面活性剤(A−3)である。
【0091】
(比較製造例)
後述する泡高計測試験で使用する界面活性剤として、以下の界面活性剤を準備した。
(比較製造例1)界面活性剤(A´−1)
オキシアルキレン基を1〜400個の範囲で有し、アルキレンオキサイド末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(株式会社ADEKA製、アデカノールB722)。
【0092】
(洗浄剤組成物の調製)
上記製造例又は比較製造例で準備した界面活性剤と、他の成分を表1に示す配合で混合し、実施例1〜3及び比較例1の洗浄剤組成物を調製した。
各成分の配合量は重量部(純分)で示している。
【0093】
【表1】
【0094】
(予洗い用洗剤を混合しての泡高計測試験)
実施例1〜3及び比較例1に係る洗浄剤組成物135gに対して、予洗い用洗剤(株式会社ニイタカ製、ビーバー900:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を主成分とする洗剤)の添加量(g)を表2に示すようにして、ホバート製一槽式コンベアータイプの自動食器洗浄機に、洗浄剤組成物の濃度が0.15重量%、予洗い用洗剤の濃度が表2に示す濃度(ppm)となるように投入して、水温60℃で2分間運転し、運転直後の泡高を計測した。
泡高計測試験の結果を表2及び
図1に示した。
【0095】
【表2】
【0096】
(複合汚垢を混合しての泡高計測試験)
実施例1〜3及び比較例1に係る洗浄剤組成物135gに対して、複合汚垢(卵黄、小麦粉、バター、牛脂、大豆油、牛乳の混合物)の添加量(g)を表3に示すようにして、ホバート製一槽式コンベアータイプの自動食器洗浄機に、洗浄剤組成物の濃度が0.15重量%、複合汚垢の濃度が表3に示す濃度(ppm)となるように投入して、水温60℃で2分間運転し、運転直後の泡高を計測した。
泡高計測試験の結果を表3及び
図2に示した。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例1〜3に係る洗浄剤組成物を用いた洗浄では、予洗い用洗剤が存在する場合、複合汚垢が存在する場合のいずれにおいても、比較例1に係る洗浄剤組成物を用いた洗浄に比べて泡高が低くなっており、泡発生源に起因する泡の発生を抑制することができていることがわかった。
また、予洗い用洗剤又は複合汚垢の量が多くなると泡高が上昇する傾向があるが、実施例1〜3に係る洗浄剤組成物を用いた場合、予洗い用洗剤又は複合汚垢の量が多い場合であっても泡高は低い範囲に収まっている。また、泡高の上昇の傾きも比較例1の場合に比べ緩やかであるため、少量の予洗い用洗剤又は複合汚垢が混入した場合であっても泡発生が問題を引き起こす可能性が低いと推測される。