特許第6371122号(P6371122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371122パワー半導体装置および樹脂封止型モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371122
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】パワー半導体装置および樹脂封止型モータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20180730BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L25/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-117042(P2014-117042)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230990(P2015-230990A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
(72)【発明者】
【氏名】磯部 太輔
(72)【発明者】
【氏名】内海 智之
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−258197(JP,A)
【文献】 特開2000−156461(JP,A)
【文献】 特開2003−152158(JP,A)
【文献】 特開平06−181286(JP,A)
【文献】 実開平04−134862(JP,U)
【文献】 特開2013−065364(JP,A)
【文献】 特開2003−319615(JP,A)
【文献】 特開2001−168270(JP,A)
【文献】 特開2002−170920(JP,A)
【文献】 特開2002−373971(JP,A)
【文献】 特開2004−146728(JP,A)
【文献】 特開2001−168265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/065
H01L 25/18
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成された第1のICチップと、前記第1のICチップよりもチップサイズが大きく、かつ、大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成されていない第2のICチップとを含んで構成され、
前記第1のICチップと前記第2のICチップとは、互いの主表面が対向するように配置されるとともに、前記第1のICチップの主表面に形成された複数の第1の電極パッドと前記第2のICチップの主表面に形成され、前記複数の第1の電極パッドとそれぞれ対になる複数の第2の電極パッドとが第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記第2のICチップの主表面上の前記第1のICチップが対向していない部分に、前記第2のICチップの主表面上に配置された前記第1のICチップの高さと略同じ高さを有する複数の突起状端子が形成されているパワー半導体装置であって、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、第1のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、第1の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、前記第1のパッドサイズよりも大きい第2のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、前記第1の大きさよりも大きい第2の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記複数の突起状端子のそれぞれは、第1の端子サイズの大きさまたは前記第1の端子サイズよりも大きい第2の端子サイズの大きさに形成されていること
を特徴とするパワー半導体装置。
【請求項2】
大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成された第1のICチップと、前記第1のICチップよりもチップサイズが大きく、かつ、大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成されていない第2のICチップと、前記第1のICチップおよび前記第2のICチップが実装される基板とを含んで構成され、
前記第1のICチップと前記第2のICチップとは、互いの主表面が対向するように配置されるとともに、前記第1のICチップの主表面に形成された複数の第1の電極パッドと前記第2のICチップの主表面に形成され、前記複数の第1の電極パッドとそれぞれ対になる複数の第2の電極パッドとが第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記第2のICチップの主表面上の前記第1のICチップが対向していない部分に、前記第2のICチップの主表面上に配置された前記第1のICチップの高さと略同じ高さを有する複数の突起状端子が形成され、
前記第1のICチップの裏面および前記突起状端子の頭頂部が、第2の導電性接続部材を介して、前記基板の表面に形成された第3の電極パッドに接着されているパワー半導体装置であって、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、第1のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、第1の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、前記第1のパッドサイズよりも大きい第2のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、前記第1の大きさよりも大きい第2の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、
前記複数の突起状端子のそれぞれは、第1の端子サイズの大きさまたは前記第1の端子サイズよりも大きい第2の端子サイズの大きさに形成されていること
を特徴とするパワー半導体装置。
【請求項3】
前記第1の導電性接続部材は、はんだ、AuもしくはCuからなる金属、または、導電性接着材で構成されること
を特徴とする請求項に記載のパワー半導体装置。
【請求項4】
前記第1の導電性接続部材および前記第2の導電性接続部材は、それぞれが、はんだ、AuもしくはCuからなる金属、または、導電性接着材で構成されること
を特徴とする請求項に記載のパワー半導体装置。
【請求項5】
前記突起状端子は、はんだ、AuまたはCuからなる金属で構成されること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のパワー半導体装置。
【請求項6】
モータを構成する機構部のうち、回転機構部を除いた部分が樹脂で封止され、前記樹脂の中に請求項1または請求項2に記載のパワー半導体装置が併せて封止されていること
を特徴とする樹脂封止型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体装置とそのパワー半導体装置を搭載した樹脂封止モータに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor)などによって実現されるパワー半導体装置は、モータを制御するインバータ回路などに盛んに用いられている。そして、インバータ回路、言い換えれば、パワー半導体装置を備えたモータは、家電用のみならず産業用などでも小型化や低コスト化の要求が大きい。
【0003】
モータ制御用のインバータ回路は、多くの場合、パワーMOSFETやIGBTなどが形成されたパワー半導体チップと、PWM(Pulse Width Modulation)回路などが形成された制御回路チップと、を少なくとも含んで構成される。特許文献1には、このようなインバータ回路などを小型化するための技術として、ヒートシンク上に配置されたパワー半導体チップと、薄膜基板上に搭載された制御回路チップと、をボンディングワイヤまたはバンプ電極を介して接続して構成したマルチチップモジュール型のパワー半導体装置の例が開示されている。
【0004】
また、一般的なシステムLSI(Large Scale Integrated circuits)製造の分野では、第1のIC(Integrated Circuits)チップ上に第2のICチップを直接に搭載する、いわゆるチップ・オン・チップの技術が知られている。例えば、特許文献2には、第1のICチップと第2のICチップがボンディングワイヤを介して電気的に接続する例が開示され、特許文献3には、第1のICチップと第2のICチップがハンダバンプを介して電気的に接続する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−181286号公報
【特許文献2】特開2001−267488号公報
【特許文献3】特開2003−17656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたマルチチップモジュール型のパワー半導体装置では、パワー半導体チップにヒートシンクが取り付けられていること、パワー半導体チップと制御回路チップとが薄膜基板を介在させて電気的、機械的に接続されていること、さらに、それらが絶縁性のエンキャップ材やモールド樹脂で覆われた構造となっていることなどのために、パワー半導体装置自体の小型化には限界があり、また、大幅なコスト低減も望めない。加えて、特許文献1に開示されたパワー半導体装置は、外部接続用のリード端子を備えていることから、インダクタンスを低減する面でも不利な構造となっている。
【0007】
特許文献2および特許文献3に開示されたチップ・オン・チップ型のシステムLSIでは、第1のICチップ、第2のICチップのいずれについても、放熱性については何ら考慮されていない。従って、その構造は、大電流が流れるパワー半導体装置の構造としては決して適切な構造とはいえない。
【0008】
以上の従来技術の現状に鑑み、本発明は、放熱性に優れ、小型化および低コスト化が容易なパワー半導体装置を実現するとともに、そのパワー半導体装置を搭載した樹脂封止型モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパワー半導体装置は、大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成された第1のICチップと、前記第1のICチップよりもチップサイズが大きく、かつ、大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成されていない第2のICチップとを含んで構成され、前記第1のICチップと前記第2のICチップとは、互いの主表面が対向するように配置されるとともに、前記第1のICチップの主表面に形成された複数の第1の電極パッドと前記第2のICチップの主表面に形成され、前記複数の第1の電極パッドとそれぞれ対となる複数の第2の電極パッドとが第1の導電性接続部材を介して接着され、前記第2のICチップの主表面上の前記第1のICチップが対向していない部分に、前記第2のICチップの主表面上に配置された前記第1のICチップの高さと略同じ高さを有する複数の突起状端子が形成されているパワー半導体装置であって、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、第1のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、第1の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対のうち、前記第1のパッドサイズよりも大きい第2のパッドサイズを有する前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとの対は、前記第1の大きさよりも大きい第2の大きさを有する前記第1の導電性接続部材を介して接着され、前記複数の突起状端子のそれぞれは、第1の端子サイズの大きさまたは前記第1の端子サイズよりも大きい第2の端子サイズの大きさに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放熱性に優れ、小型化および低コスト化が容易なパワー半導体装置が実現され、さらに、そのパワー半導体装置を搭載した樹脂封止型モータを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るパワー半導体装置の断面構造を模式的に示した図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るパワー半導体装置下面図を模式的に示した図である。
図3】モータを駆動するインバータ回路の例を示した図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るパワー半導体装置の断面構造を模式的に示した図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るパワー半導体装置の下面図を模式的に示した図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るパワー半導体装置を用いた樹脂封止型モータの断面構造の例を模式的に示した図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るパワー半導体装置を用いた樹脂封止型モータの断面構造の例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るパワー半導体装置100aの断面構造を模式的に示した図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係るパワー半導体装置100aの下面図を模式的に示した図である。この実施形態に係るパワー半導体装置100aは、例えば家庭用エアコンの室内外機に搭載されるファンモータなどに内蔵され、ファンモータの駆動用として用いられる。
【0014】
図1および図2に示すように、パワー半導体装置100aは、パワーICチップ1とパワーICチップ1よりもチップサイズが大きい集積回路チップ2とが、互いの主表面が対向するように配置されて構成される。このとき、パワーICチップ1の主表面に設けられた電極パッド5aと集積回路チップ2の主表面に設けられた電極パッド5bとは、導電性接続部材3aを介して接着され(図1中の拡大図a参照)、パワーICチップ1は、集積回路チップ2の主表面に機械的に固定される。
【0015】
ここで、パワーICチップ1とは、パワーMOSFET、IGBT、サイリスタなど大電流をオン・オフ制御する半導体素子が形成されたSi、SiC、SiNなどからなる半導体チップをいう。また、集積回路チップ2とは、大電流をオン・オフ制御する半導体素子を含まない半導体チップをいう。すなわち、集積回路チップ2とは、例えば、通常の論理回路、メモリ回路、ドライバ回路、アナログ回路などが多数形成され(集積され)、必要に応じて、マイクロプロセッサなど形成された半導体チップをいう。ただし、本実施形態では、集積回路チップ2は、Siなどの基板上に電極パッド5bや配線8だけが形成されたものであってもよいとする。
【0016】
また、パワーICチップ1の主表面とは、ソース領域、ベース領域、エミッタ領域などの不純物領域や、ソース電極、エミッタ電極、ゲート電極などの各種電極が形成されている側の表面をいい、図1に描かれたパワーICチップ1では、上部側の表面が主表面となっている。また、集積回路チップ2についてもほぼ同様であり、図1に描かれた集積回路チップ2では、下部側の表面が主表面となっている。
【0017】
また、導電性接続部材3aは、はんだ、AuもしくはCuを含む金属または導電性接着材などにより構成され、パワーICチップ1の主表面に設けられた電極パッド5aと集積回路チップ2の主表面に設けられた電極パッド5bとを電気的に接続する役割を果たすとともに、パワーICチップ1を集積回路チップ2に接着して固定する役割を果たす。なお、導電性接続部材3aを構成するはんだとしては、一般的な共晶はんだ、鉛フリーはんだなどが用いられ、また、導電性接着材としては、Ag、Cu、Niなどの金属フィラーが樹脂に含有されたものが用いられる。
【0018】
さらに、パワーICチップ1が接着された集積回路チップ2の主表面で、パワーICチップ1が配置されていない部分に、パワー半導体装置100aの外部端子として機能する突起状端子4が、パワーICチップ1を取り囲むように配設される(図2参照)。本実施形態では、この突起状端子4は、その背高がパワーICチップ1の高さ、すなわち、集積回路チップ2の主表面からパワーICチップ1の主表面の反対の面(以下、裏面という)までの高さにほぼ等しくなるように形成される。
【0019】
この突起状端子4は、図1の拡大図bに示されているように、集積回路チップ2の主表面に設けられた電極パッド5b上(図1の拡大図bでは電極パッド5bの下側)に形成され、はんだ、Cu、Auなどの金属からなる。なお、突起状端子4を形成するはんだとしては、一般的な共晶はんだ、鉛フリーはんだなどが用いられる。
【0020】
なお、突起状端子4がCuで形成される場合、その突起状端子4は、しばしば、Cuピラーと呼ばれる。このCuピラー(突起状端子4)の少なくともその頭頂部の表面には、外部配線接続用のはんだなどの導電性材料を接合する場合の接合安定性を向上させるために、AuやNiなどをめっきしておくのが好ましい。
【0021】
さらに、図1および図2に示されているように、導電性接続部材3aと突起状端子4とは、集積回路チップ2の主表面に形成された配線8によって電気的に接続される。なお、配線8は、Al、Cuなど導電度の大きい金属などで形成され、通常は、集積回路チップ2の主表面に形成される電極パッド5aと同じ材料で形成される。
【0022】
また、とくに図示はしていないが、パワーICチップ1の裏面(図1では下側の面)には、金属層が形成されている。その金属層は、パワーICチップ1に形成される半導体素子が縦型のパワーMOSFETやIGBTの場合には、ドレイン電極やコレクタ電極などとして機能し、横型のパワーMOSFETやIGBTの場合には、基板電位を安定化させる電極として機能する。さらには、この金属層は、パワーICチップ1の内部に形成される各種の半導体層や領域から絶縁されたものであってもよい。
【0023】
図3は、モータ106を駆動するインバータ回路10の例を示した図である。図3に示すように、インバータ回路10は、三相交流電源端子101と、ダイオードブリッジ回路からなる整流回路102と、直流電圧の安定化を図るコンデンサ103と、直交流変換に係る上アーム回路104と、下アーム回路105と、を含んで構成される。
【0024】
ここで、上アーム回路104は、コレクタが上位側の直流電源に接続され、エミッタがモータ106の三相の駆動信号それぞれに接続される3つのIGBT104aと、それぞれのIGBT104aのゲート電極を制御するゲート制御回路104bと、それぞれのIGBT104aのコレクタ−エミッタ間に並列に、かつ、逆電圧方向に接続される還流ダイオード104cとによって構成される。同様に、下アーム回路105は、エミッタが下位側の直流電源(接地電位)に接続され、コレクタがモータ106の三相の駆動信号それぞれに接続される3つのIGBT105aと、それぞれのIGBT105aのゲート電極を制御するゲート制御回路105bと、それぞれのIGBT105aのコレクタ−エミッタ間に並列に,かつ,逆電圧方向に接続される還流ダイオード105cとによって構成される。
【0025】
ところで、図1および図2に示したパワーICチップ1上には、図3に示したIGBT104a(105a)と還流ダイオード104c(105c)の組を、1組または複数組形成することができる。また、ゲート制御回路104b(105b)は、一般的な論理回路やドライバ回路などで構成されるため、そのすべてを集積回路チップ2上に形成することができる。そのため、インバータ回路10のうち、少なくとも直交流変換に係る上アーム回路104および下アーム回路105の部分については、1つまたは複数のパワーICチップ1と、1つの集積回路チップ2とからなるパワー半導体装置100aによって実現することができる。
【0026】
なお、図1および図2には、導電性接続部材3aを介して、1つの集積回路チップ2に1つのパワーICチップ1が取り付けられたパワー半導体装置100aが図示されているが、パワー半導体装置100aは、1つの集積回路チップ2に複数のパワーICチップ1が取り付けられたものであってもよい。
【0027】
また、モータ106の駆動回路は、図3に示したようなIGBT104a,105aなどを用いたインバータ回路10であってもよいが、パワーMOSFETなどを用いて構成したものであってもよい。
【0028】
以上、図3のような直交流変換に係る上アーム回路104および下アーム回路105を図1および図2に示したようなパワー半導体装置100aで実現した場合、集積回路チップ2には、少なくとも5つの電流供給用の突起状端子4が設けられる。このうち2つは、直流電源端子(整流回路102およびコンデンサ103のプラス側端子(+)およびマイナス側端子(−)に接続され、他の3つは、モータ106の駆動端子に電気的に接続される。
【0029】
ここで、図3における整流回路102およびコンデンサ103で構成される直流電源回路から供給される主電流は、まず、図1および図2における集積回路チップ2に設けられた突起状端子4、配線8および導電性接続部材3aのいずれかを経由してパワーICチップ1へ流れ込む。このパワーICチップ1へ流れ込んだ主電流は、IGBT104aまたは105aのボディ部を通過し、さらに、他の導電性接続部材3aを経由して集積回路チップ2へ戻り、他の配線8および突起状端子4を介して、三相のモータ駆動電流としてモータ106に供給される。なお、ここでは、IGBT104a,105bは、横型構造を想定しており、IGBT104a,105bのコレクタ電極もエミッタ電極もパワーICチップの主表面側に形成されているものとしている。
【0030】
また、本実施形態に係るパワー半導体装置100aでは、集積回路チップ2のチップサイズがパワーICチップ1のチップサイズよりも大きく、また、パワーICチップ1が導電性接続部材3aを介して集積回路チップ2に電気的に直接に接続される。そのため、主電流が流れる突起状端子4の大きさ、配線8の幅、電極パッド5a,5bを含む導電性接続部材3aの大きさなどを大きくすることできる。その場合には、主電流の抵抗損失を低減することが可能になる、あるいは、主電流としてより大きな電流を流すことが可能になる。
【0031】
なお、図2の図中に示された突起状端子4のうち、大きいものは、主電流を流す外部端子として用いられ、小さいものは、例えば、ゲート制御用などの信号端子として用いられることを意味する。また、電極パッド5a,5bを含む導電性接続部材3aについても同様である。
【0032】
本実施形態に係るパワー半導体装置100aは、パワーICチップ1が導電性接続部材3aを介して集積回路チップ2に接着される(機械的に直接に固定される)構造を有しているために、パワー半導体装置100aの厚みを薄くすること(低背化)が可能になり、小型化が実現される。
【0033】
また、本実施形態に係るパワー半導体装置100aは、パワーICチップ1の裏面が直接に外に露出した構造を有しているため、そのパワーICチップ1の裏面を、例えば、パワー半導体装置100aが適用されるファンモータの構造体などに直接に接着させることが容易になる。すなわち、本実施形態に係るパワー半導体装置100aは、ファンモータの構造体などをパワーICチップ1からの発熱を放熱する放熱体として用いることが可能になるので、ファンモータなどの小型化や低コスト化を図る上で効果がある。
【0034】
また、本実施形態に係るパワー半導体装置100aは、集積回路チップ2に形成される突起状端子4の背高が、集積回路チップ2に取り付けられたパワーICチップ1の高さにほぼ等しくなるように形成されるため、当該パワー半導体装置100aを実装する基板を放熱体として用いることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係るパワー半導体装置100aは、特定のパッケージに封止されたものでもなく、樹脂などでモールドされたものでもなく、また、ヒートシンクなどの放熱体が付されたものでもない。そのため、リード端子も必要でないので、制御用の信号端子のインダクタンスや抵抗を小さくすることができ、さらには、その小型化、低コスト化を図る上でも効果がある。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るパワー半導体装置100bの断面構造を模式的に示した図であり、図5は、本発明の第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bの下面図を模式的に示した図ある。この第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bは、第1の実施形態に係るパワー半導体装置100aを基板6の上に取り付けたものに相当する。以下、第1の実施形態と相違する事項を中心に説明する。
【0037】
図4に示すように、第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bでは、集積回路チップ2の主表面に設けられた電極パッド5b上(図4の拡大図cでは電極パッド5bの下側)に形成された突起状端子4は、導電性接続部材3bを介して、基板6上に形成された電極パッド5cに電気的に接続されるとともに、機械的に接着(固定)される。また、拡大した部分の図示を省略しているが、パワーICチップ1の裏面は、導電性接続部材3bを介して、基板6上に形成された広い電極パッド(図示省略:ただし、図4の拡大図cに図示された電極パッド5cと同じ電極層)に電気的に接続されるとともに、機械的に接着(固定)される。
【0038】
ここで、基板6は、一般的なプリント基板などであり、樹脂基板または無機基板からなる。すなわち、基板6としては、ガラスエポキシ基板(FR−4)、ガラスコンポジット基板(CEM−3)、紙フェノール基板などの樹脂基板、または、アルミナ基板、セラミック基板などの無機基板が用いられる。
【0039】
導電性接続部材3bは、はんだ、Au、Cuなどの金属または導電性接着材などにより構成され、パワーICチップ1の主表面に設けられた電極パッド5a(図1の拡大図aを参照:図4では、図示を省略)と集積回路チップ2の主表面に設けられた電極パッド5bとを接続する導電性接続部材3aと同じ材料であってもよい。なお、導電性接続部材3bを構成するはんだとしては、一般的な共晶はんだ、鉛フリーはんだなどが用いられ、また、導電性接着材としては、Ag、Cu、Niなどの金属フィラーが樹脂に含有されたものが用いられる。
【0040】
また、パワーICチップ1の裏面および突起状端子4の基板6との接続部分(頭頂部)には、導電性接続部材3bを構成する導電性材料(はんだなど)が接合しやすいように、AuやNiなどのめっきを施しておくのが好ましい。
【0041】
以上、第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bでは、パワーICチップ1の裏面が導電性接続部材3bを介してほぼ全面にわたり基板6に接続されるため、パワー半導体装置100bで発生する熱を基板6へ効率よく放熱させることができる。これにより、半導体装置100bの高放熱化が実現される。
【0042】
また、第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bでは、例えば、ゲート制御回路104b,105b(図3参照)を統括して制御するマイクロプロセッサ(図示せず)などを基板6上に搭載することも可能になり、さらには、交直流変換に係る整流回路102やコンデンサ103(図3参照)を基板6上に搭載することも可能になる。よって、モータ106の駆動回路全体を小型化、低コスト化することが可能になる。
【0043】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパワー半導体装置100aを用いた樹脂封止型モータ110aの断面構造の例を模式的に示した図であり、図7は、本発明の第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bを用いた樹脂封止型モータ110bの断面構造の例を模式的に示した図である。
【0044】
図6に示ように、樹脂封止型モータ110aは、回転シャフト111に取り付けられた磁気ロータ112の外周部を取り囲むようにコイル113が設けられて構成される。このとき、回転シャフト111は、図示しない架体に取り付けられた軸受114によって支持され、さらに、その架体には、第1の実施形態に係るパワー半導体装置100aが搭載された基板6aが取り付けられている。そして、そのパワー半導体装置100aが搭載された基板6a、コイル113および軸受114は、そのほとんどの部分が架体ごと一括してモールド樹脂7によってモールドされ、機械的に固定される。
【0045】
また、図7に示す樹脂封止型モータ110bの構造も、図6に示した樹脂封止型モータ110aの構造とほとんど同じである。第2の実施形態に係るパワー半導体装置100bは、基板6(図4参照)を含んだものであるのに対し、第1の実施形態に係るパワー半導体装置100aは、基板6aを含まないものであるという形式的な相違でしかない。図6および図7では、その相違は、基板6aおよび基板6の大きさの違いで表されている。
【0046】
そして、いずれの場合でも、モールド樹脂7は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビフェニール樹脂などの一般的なモールド材料からなり、例えば、金型を用いたモールド方法などにより形成される。この金型を用いたモールド方法を用いた場合、大量生産が可能となるため、大幅なコスト低減が可能となる。
【0047】
なお、パワー半導体装置100a,100bは、もともとパッケージに封止されたものでもなく、また、樹脂でモールドされたものでもないが、本実施形態では、コイル113などとともに、モールド樹脂7でモールドされる。そのため、パワー半導体装置100a,100b内部への水や異物の侵入が防止され、さらには、導電性接続部材3a,3bが受ける熱応力が緩和される。その結果、パワー半導体装置100a,100bの信頼性が向上する。
【0048】
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 パワーICチップ(第1のICチップ)
2 集積回路チップ(第2のICチップ)
3a 導電性接続部材(第1の導電性接続部材)
3b 導電性接続部材(第2の導電性接続部材)
4 突起状端子
5a 電極パッド(第1の電極パッド)
5b 電極パッド(第2の電極パッド)
5c 電極パッド(第3の電極パッド)
6,6a 基板
7 モールド樹脂
8 配線
10 インバータ回路
101 三相交流電源端子
102 整流回路
103 コンデンサ
104 上アーム回路
105 下アーム回路
106 モータ
104a,105a IGBT
104b,105b ゲート制御回路
104c,105c 還流ダイオード
100a,100b パワー半導体装置
110a,110b 樹脂封止型モータ
111 回転シャフト
112 磁気ロータ
113 コイル
114 軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7