(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各段の前記壁部構成体が前記突出部を有し、且つ、各段の前記壁部構成体の前記突出部に対して、それぞれ対応する前記格子状立体セル層が連結されている請求項7に記載の盛土構造。
前記格子状立体セルの前記複数の第1帯状体の各々における前記壁部側の端部は、前記連結部材に対して固定されて、前記連結部材に対して相対的に前記第2の水平方向に移動することが規制されている請求項2に記載の盛土構造。
前記突出部は、前記本体部から一方に突出した棒状部と、前記棒状部の端部に設けられて前記本体部における前記盛土側となる面と対向している板状部と、を有する請求項16に記載の盛土構造用の壁部構成体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0013】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る盛土構造の側断面図である。
図2(a)は第1の実施形態に係る盛土構造を構成する壁部構成体320および格子状立体セル100を示す斜視図であり、
図2(b)は格子状立体セル100の平面図である。
図3は第1の実施形態に係る盛土構造を構成する壁部構成体320の本体部321に対する係止部310の取り付け構造を示す斜視図である。
図4は第1の実施形態に係る盛土構造の構築工法を説明するための側断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る盛土構造は、盛土200と、盛土200に沿って立設された壁部300と、を備えている。
【0015】
壁部300は、例えば、盛土200の前端面に沿って立設されている。盛土200の前端面が平面状の場合、壁部300は、例えば、平面視において直線状に延在するように形成される。一方、盛土200の前端面が曲面状の場合、壁部300は、平面視において曲線状に延在するように形成される。
【0016】
盛土200は、互いに上下方向に離間して配置された複数の格子状立体セル層210と、隣り合う格子状立体セル層210どうしの層間に充填された盛土層220と、を含んでいる。なお、盛土層220は、例えば、最上層の格子状立体セル層210の上にも配置されている。
【0017】
盛土層220は、土砂(現地発生土など)、砕石、砂質土などにより構成されている。
【0018】
格子状立体セル層210は、平面視において格子状に配置された複数のセル構造体101を有する格子状立体セル100と、格子状立体セル100の複数のセル構造体101内に充填された中詰材102と、を備えている。中詰材102は、土砂(現地発生土など)、砕石、砂質土、コンクリート又はモルタルなどである。
【0019】
図2(a)および(b)に示すように、格子状立体セル100は、複数の第1帯状体10と、複数の第2帯状体20と、を有している。複数の第1帯状体10の各々、並びに、複数の第2帯状体20の各々は、可撓性のものである。複数の第1帯状体10の各々、並びに、複数の第2帯状体20の各々は、一方向に長尺なシート材により構成されている。
このシート材は、例えば樹脂製のものとすることができるが、樹脂材料と他の材料(ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維など)との複合材料により構成されていても良い。シート材は、該シート材に対してその長手方向に引張り力が作用する際の、シート材の伸びが極力小さくなるものであることが好ましい。このシート材は、単層構造のものであっても良いし、複数の層を積層することにより構成された積層構造のものであっても良い。積層構造のシート材の例として、ターポリン構造のもの(そのようなシート材は、単にターポリンともいう)が挙げられる。ターポリン構造のシート材の具体的な材料及び層構造の一例としては、例えば、ポリエステル、PET等の繊維からなる織布の表裏両面に、軟性ポリ塩化ビニール、ポリウレタン、EVA等の合成樹脂フィルムを貼り合わせてなるサンドイッチ構造のものが挙げられる。
【0020】
複数の第1帯状体10は、互いに並列に配置されている。複数の第2帯状体20は、互いに並列に配置されているとともに各々が複数の第1帯状体10に対して交差している。そして、複数の第1帯状体10と複数の第2帯状体20とにより、平面視において格子状に配置された複数のセル構造体101が構成されている。
より具体的には、複数の第1帯状体10は、所定間隔(例えば一定間隔)で配置され、且つ、それらのうち隣り合う第1帯状体10どうしが互いに対向している。同様に、複数の第2帯状体20は、所定間隔(例えば一定間隔)で配置され、且つ、それらのうち隣り合う第2帯状体20どうしが互いに対向している。
【0021】
盛土層220内の格子状立体セル100は、複数の第1帯状体10の各々が壁部300から遠ざかる第1の水平方向(
図1の左側から右側に向かう方向)に延在するとともに、複数の第1帯状体10の各々の面方向が水平面に対して交差した状態となり、且つ、複数の第2帯状体20の各々が第1の水平方向に対して交差する第2の水平方向(
図1の紙面に対して直交する方向)に延在するとともに、複数の第2帯状体20の各々の面方向が水平面に対して交差した状態となるように、配置されている。
【0022】
図2には、複数の第1帯状体10が、それぞれ直線状に延在するとともに互いに平行に対向する状態となるように、格子状立体セル100を展張した状態を示す。この状態では、複数の第2帯状体20が、それぞれ直線状に延在するとともに互いに平行に対向する状態となり、且つ、複数の第2帯状体20の各々が、複数の第1帯状体10に対して直交する状態となる。また、複数のセル構造体101の各々が、直方体形状となる。また、この状態では、複数の第1帯状体10の各々の面方向、並びに、複数の第2帯状体20の各々の面方向が、水平面に対して直交し、複数のセル構造体101の各々は、上方および下方に向けて開口した姿勢となる。
【0023】
理想的には、格子状立体セル100は、
図2に示すような形態で敷設されて、格子状立体セル層210を構成する。
ただし、実際に格子状立体セル層210が施工された状態では、複数の第1帯状体10ならびに複数の第2帯状体20に撓み、捻れ、歪みが生じることも想定される。
このため、第1の水平方向、第2の水平方向は、必ずしも厳密に水平面に沿った方向に限定されず、概ね水平な方向(横方向)であれば良い。第1の水平方向および第2の水平方向は、それぞれ例えば、水平面に対して20度以下程度、好ましくは10度以下程度の傾斜を有する方向であっても良い。要は、格子状立体セル層210が良好な土中引き抜き抵抗を発揮でき、格子状立体セル210層によって壁部300を良好に支持できればよい。
また、上述の撓み、捻れ、歪み等のために、複数の第1帯状体10のうちの一部の第1帯状体10の面方向、並びに、複数の第2帯状体20のうちの一部の第2帯状体20の面方向は、必ずしも水平面に対して交差しないことも想定される。ただし、概ね、複数の第1帯状体10の各々の面方向、並びに、複数の第2帯状体20の各々の面方向が、水平面に対して交差した状態となるように、格子状立体セル100は配設される。例えば、格子状立体セル100を構成する第1帯状体10のうちの少なくとも一部、好ましくは半数以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上について、その面方向が水平面に対して交差し、格子状立体セル100を構成する第2帯状体20のうちの少なくとも一部、好ましくは半数以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上について、その面方向が水平面に対して交差するように、格子状立体セル100は配設される。
ここで、ある第1帯状体10について、その面方向が水平面に対して交差すると言うことは、必ずしも、当該第1帯状体10の長手方向の全域において、その面方向が水平面に対して交差していることを意味するのではなく、当該第1帯状体10の長手方向の少なくとも一部領域について、その面方向が水平面に対して交差していることを意味する。ただし、当該第1帯状体10の長手方向における半分以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることが好ましく、当該第1帯状体10の長手方向における60%以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることがより好ましく、当該第1帯状体10の長手方向における80%以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることが更に好ましい。
同様に、ある第2帯状体20について、その面方向が水平面に対して交差すると言うことは、必ずしも、当該第2帯状体20の長手方向の全域において、その面方向が水平面に対して交差していることを意味するのではなく、当該第2帯状体20の長手方向の少なくとも一部領域について、その面方向が水平面に対して交差していることを意味する。ただし、当該第2帯状体20の長手方向における半分以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることが好ましく、当該第2帯状体20の長手方向における60%以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることがより好ましく、当該第2帯状体20の長手方向における80%以上の領域において、その面方向が水平面に対して交差していることが更に好ましい。
また、第2の水平方向は、第1の水平方向に対して直交していることが好ましいが、必ずしも直交していなくても良く、平面視において、第2の水平方向と第1の水平方向とのなす角度は、例えば70度以上110度以下程度とすることができる。
また、第1帯状体10の延在方向および第2帯状体20の延在方向は、それぞれ直線状であることに限定されず、曲線状であっても良い。
【0024】
複数の第1帯状体10の各々には、上下方向に長い複数のスリット11が、各第1帯状体10の長手方向において所定間隔で形成されている。なお、複数の第1帯状体10の各々は、例えば、各スリット11の形状、寸法及び配置も含めて、互いに同一の形状及び寸法に形成されている。
そして、各第2帯状体20は、複数の第1帯状体10のスリット11のうち互いに対応する位置に形成されたスリット11に対して挿通されている。これにより、複数の第1帯状体10と複数の第2帯状体20とが格子状に組み付けられて、格子状立体セル100を構成している。
【0025】
なお、各第2帯状体20と各第1帯状体10とは、互いの交差部分、例えばスリット11において、相互に接合され固定されていても良いし、各第2帯状体20は、第1帯状体10のスリット11に対して相対的に、該第2帯状体20の長手方向において摺動可能となっていても良い。後者の場合、例えば、図示しない固定部材によって、各第2帯状体20と各第1帯状体10とが、互いの交差部分において相互に固定されていることが好ましい。
【0026】
図2では、各第2帯状体20の両端部が、複数の第1帯状体10のうち両端に位置する第1帯状体10から、格子状立体セル100の外方向きに突出している例を示している。
ただし、各第2帯状体20の両端部は、複数の第1帯状体10のうち両端に位置する第1帯状体10から、格子状立体セル100の外方向きに突出していなくても良い。この場合、格子状立体セル100は、例えば、各第2帯状体20の両端部が、複数の第1帯状体10のうち両端に位置する第1帯状体10における互いの対向面に接合及び固定された構造とすることができる。
【0027】
本実施形態の場合、格子状立体セル層210は、更に、複数の第1帯状体10における壁部300側の端部を相互に連結している連結部材230を有している。
連結部材230は、例えば、棒状体であり、当該棒状体の長手方向が、上記の第2の水平方向に沿って配置されている。この棒状体は、例えば、鉄筋等の鋼棒、或いは、FRP(Fiber Reinforced Plastics)ロッドなどである。連結部材230は、例えば、複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部を貫通している。
【0028】
本実施形態の場合、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部は、連結部材230に対して固定されている。これにより、複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部は、連結部材230に対して相対的に第2の水平方向に移動することが規制されている。
具体的には、例えば、棒状体である連結部材230の周面には雄ねじが形成されており、該連結部材230に対して螺合する一対ずつのナット231により各第1帯状体10における壁部300側の端部を挟持することによって、各第1帯状体10における壁部300側の端部が連結部材230に対して固定されている。なお、各ナット231と各第1帯状体10との間にはワッシャー232が介装されていることが好ましい。
【0029】
一方、壁部300には、該壁部300より盛土200側に突出した突出部(例えば係止部310)が設けられている。本実施形態の場合、係止部310に対して連結部材230が係止されることによって、係止部310と格子状立体セル100とが相互に連結されている。ここで、係止部310と格子状立体セル100とが相互に連結されているということは、係止部310と格子状立体セル層210とが相互に連結されていること、壁部300と格子状立体セル100とが相互に連結されていること、ひいては、壁部300と格子状立体セル層210とが相互に連結されていることを意味する。
【0030】
係止部310は、例えば、J字形などのフック形状に形成されている。連結部材230を係止部310の上側から係止部310に係止することができるように、係止部310はJ字形状における開放部が上側に位置する姿勢で配置されている。
【0031】
本実施形態の場合、例えば、隣り合う第2帯状体20の間隙の各々に対応して、それぞれ係止部310が配置されており、これら係止部310に対して連結部材230が係止されている。これにより、壁部300と格子状立体セル100との高い連結強度が得られる。
【0032】
壁部300は、例えば、複数段に積み重ねられた壁部構成体320により構成されている。そして、各段の壁部構成体320が係止部310を有している。本実施形態に係る盛土構造においては、各段の壁部構成体320の係止部310に対して、それぞれ対応する格子状立体セル層210が連結されている。すなわち、各段の壁部構成体320の係止部310に対して、それぞれ対応する格子状立体セル層210の連結部材230が係止されている。
【0033】
本実施形態に係る壁部構成体320は、盛土200と、盛土200に沿って立設された壁部300と、を備える盛土構造の端部において複数個積み重ねられることにより壁部300を構成する本体部(本実施形態の場合、本体部321)と、突出部(本実施形態の場合、係止部310)と、を有している。突出部は、本体部から一方に突出している。突出部は、盛土200に埋設される格子状立体セル層210と連結される。係止部310は、格子状立体セル層210が係止されるものであり、フック形状に形成されている。
【0034】
図2(a)に示すように、本実施形態の場合、壁部構成体320は、コンクリートブロックにより形成された本体部321を備えている。本体部321の形状は、複数の本体部321を相互に積み重ねることが可能な形状であれば、特に限定されないが、例えば、直方体形状とすることができる。本体部321は、複数段に積み重ねられることによって壁部300を構成するものである(
図1参照)。すなわち、壁部300は、壁部構成体320の本体部321が複数段に積み重ねられることにより構成されている。また、本体部321の一方の面、すなわち盛土200側の面に係止部310が設けられている。
【0035】
図3に示すように、例えば、本体部321において盛土200側となる面には、係止部310を固定するためのナット322が埋め込まれている。係止部310には、ナット322と螺合するボルト311が形成されている。ボルト311がナット322に螺入されることによって、係止部310が本体部321に固定されている(
図2(a)参照)。
なお、係止部310は、当該係止部310の一部分が、本体部321を構成するコンクリートに埋め込まれることによって、本体部321に固定されていても良い。
【0036】
なお、本体部321において盛土200側となる面には、本体部321の幅方向(
図1の紙面に対して直交する方向)において、複数の係止部310が所定間隔(例えば一定間隔)で設けられている。
これらの複数の係止部310のうち、隣り合う係止部310の間隔は、格子状立体セル100の隣り合う第1帯状体10の間隔と同等の間隔に設定することができる。このようにすることにより、隣り合う第1帯状体10の間隙の各々に対応して、それぞれ係止部310を配置することができる。
【0037】
本体部321の下面には、第1嵌合部323が形成され、本体部321の上面には、第1嵌合部323と嵌合可能な第2嵌合部324が形成されている。本実施形態の場合、第1嵌合部323と第2嵌合部324とのうち、一方が突起(例えばリブ)であり、他方が、この突起と嵌合する凹部(例えば凹溝)である。例えば、第1嵌合部323が凹溝であり、第2嵌合部324がリブである。
第1嵌合部323と第2嵌合部324とを相互に嵌合させて、複数の壁部構成体320の本体部321を積み重ねることによって、壁部300が構成されている。
【0038】
なお、格子状立体セル100の厚み方向(上下方向)における格子状立体セル100の下端から連結部材230までの距離(高さ)と、壁部構成体320の本体部321の下面(第1嵌合部323を除く)から係止部310までの距離(高さ)とが互いに等しく設定されていることが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態に係る盛土構造の構築工法を説明する。
【0040】
本実施形態に係る盛土構造の構築工法は、壁部300を立設する工程と、壁部300の一方の側に盛土200を形成する工程と、を備える。詳細は後述するように、壁部300を立設する工程は、例えば、盛土200を形成する工程と並行して行う。ただし、壁部300を立設した後で、盛土200を形成しても良い。
【0041】
盛土200を形成する工程では、格子状立体セル層210を形成する工程と、格子状立体セル層210の上に盛土層220を形成する工程と、を行うことによって、互いに上下方向に離間して配置された複数の格子状立体セル層210と、隣り合う格子状立体セル層210どうしの層間に充填された盛土層220と、を含む盛土200を形成する。盛土200は、その下部から上部に向けて、段階的に形成する。また、最上層の格子状立体セル層210の上にも、盛土層220を形成する。
【0042】
格子状立体セル層210を形成する工程は、格子状に配置された複数のセル構造体101を有する格子状立体セル100を配置する工程と、複数のセル構造体101内に中詰材102を充填する工程と、を含む。
【0043】
上述のように、格子状立体セル100は、互いに並列に配置された可撓性の複数の第1帯状体10と、互いに並列に配置されているとともに各々が複数の第1帯状体10に対して交差しており、複数の第1帯状体10とともに複数のセル構造体101を構成している可撓性の複数の第2帯状体20と、を有している。
【0044】
格子状立体セル100を配置する工程では、複数の第1帯状体10は、各々が壁部300から遠ざかる第1の水平方向(
図4の左側から右側に向かう方向)に延在するとともに、各々の面方向が水平面に対して交差し、複数の第2帯状体20は、各々が第1の水平方向に対して交差する第2の水平方向(
図4の紙面に対して直交する方向)に延在するとともに、各々の面方向が水平面に対して交差し、複数のセル構造体101が平面視において格子状に配置されるように、格子状立体セル100を配置する。
【0045】
ここで、壁部300には、壁部300の一方の側に突出した突出部(例えば、係止部310)が設けられる。
そして、格子状立体セル100を配置する工程は、更に、突出部と格子状立体セル100とを相互に連結する工程を含む。
【0046】
以下、
図4等を参照して、本実施形態に係る盛土構造の構築工法の一例についてより詳細に説明する。
ここでは、盛土構造を地山3に沿って構築する例を説明する。なお、地山3は、地山3の上端部と同じ高さの上側平坦面4を有し、地山3の前方には、地山3の下端部と同じ高さの下側平坦面5が存在しているものとする。また、地山3の前面3aは、例えば傾斜しているものとする。
【0047】
先ず、下側平坦面5における壁部300の形成予定位置に、コンクリートからなる平板状の台座370を形成する。
次に、台座370上に、最下段の壁部構成体320を配置する。ここで、壁部構成体320は、地山3の前面3aの前方位置に配置し、且つ、当該壁部構成体320の係止部310が地山3側を向くように配置する。
なお、最下段の壁部構成体320は、
図1及び
図4に示すように第1嵌合部323を有していても良いし、第1嵌合部323を有しておらず当該壁部構成体320の下面が平坦に形成されていても良い。
【0048】
次に、最下段の格子状立体セル層210を構成する格子状立体セル100を、最下段の壁部構成体320と地山3との間の下側平坦面5上に配置する。なお、各格子状立体セル層210を構成する格子状立体セル100は、予め展張されて各セル構造体101が平面視矩形状となっていても良いし、コンパクトに畳まれた状態であったものを、当該格子状立体セル100の施工現場で展張し各セル構造体101を平面視矩形状とするのであっても良い。
【0049】
次に、最下段の格子状立体セル100に連結部材230を取り付ける。すなわち、最下段の格子状立体セル100の各第1帯状体10の前端部(壁部構成体320側の端部)に、順次に連結部材230を挿通させるとともに、各第1帯状体10の前端部を、連結部材230と螺合させた一対のナット231により挟持させる。これにより、格子状立体セル100の第1帯状体10の各々における壁部構成体320側の端部は、連結部材230に対して固定されて、連結部材230に対して相対的に、該連結部材230の長手方向に移動してしまうことが規制される。ここで、各ナット231と第1帯状体10との間には、ワッシャー232を介装することが好ましい。
なお、各格子状立体セル層210の連結部材230は、各格子状立体セル層210の格子状立体セル100を施工現場に搬入する以前に、格子状立体セル100に取り付けられていても良い。
【0050】
次に、最下段の格子状立体セル100に設けられた連結部材230を、最下段の壁部構成体320の係止部310の各々に対して係止する。このとき、連結部材230において、格子状立体セル100の隣り合う第1帯状体10の間隙の各々に位置する部分を、それぞれ対応する係止部310に対して係止することが好ましい。これにより、隣り合う第1帯状体10の間隙の各々に対応して、それぞれ係止部310が配置された構造とすることができる。
こうして、最下段の壁部構成体320と最下段の格子状立体セル100とが相互に連結された状態となる。
【0051】
次に、最下段の格子状立体セル100の第1帯状体10の各々が、最下段の壁部構成体320から地山3に向けて遠ざかる方向へと直線状に延在した状態となるように、最下段の格子状立体セル100にテンションを加える。すなわち、最下段の格子状立体セル100において壁部構成体320から遠い側の端部(地山3側の端部)を、壁部構成体320から遠ざかる方向へ引っ張る。これにより、例えば、各第1帯状体10が互いに平行となるとともに、各第2帯状体20が第1帯状体10に対して直交し、且つ、各第1帯状体10並びに各第2帯状体20が水平面に対して直交した状態となる。
【0052】
次に、最下段の格子状立体セル100に対する上述のテンションを維持しながら、最下段の格子状立体セル100の各セル構造体101内に中詰材102を充填する。ここで、格子状立体セル100に対するテンションを維持するために、図示しない仮留め杭によって格子状立体セル100における地山3側の端部を下側平坦面5に固定した上で、中詰材102の充填を行っても良い。上述のように、中詰材102は、現地発生土などの土砂、砕石、コンクリート又はモルタルなどである。ここで、壁部300(壁部構成体320の本体部321)に最も近い第2帯状体20と壁部300との間にも中詰材102を充填する。
最下段の格子状立体セル100と地山3の前面3aとの間には、クリアランスが存在していても良いし、クリアランスが存在していなくても良い。クリアランスが存在する場合、最下段の格子状立体セル100に中詰材102を充填するとともに、そのクリアランスにも中詰材102と同種の充填材料を充填する。
【0053】
ここで、格子状立体セル100内に充填されて格子状立体セル層210を構成する中詰材102と、盛土層220を構成する充填材料とは、同種のものを用いることができる。
一般的に、土砂などの充填材料の締め固めは、土砂を例えば50cm程度の厚さに盛って転圧することにより行われる。50cm程度の厚さに盛った土砂を転圧するとおよそ30cm程度の厚さになる。
したがって、壁部構成体320の上下寸法(高さ)が50cm〜60cm程度であれば、壁部構成体320を設置した後、50cm程度の厚さに土砂を充填し、転圧することによってその土砂の厚さを30cm程度にし、その上に再度、50cm程度の厚さに土砂を充填し、転圧することによってその土砂の厚さを30cm程度にすることによって、一段分の壁部構成体320の高さに土砂が充填されることになる。つまり、「土入れ→転圧→土入れ→転圧」の2サイクルによって、一段分の壁部構成体320の高さの土砂層が形成される。
例えば、格子状立体セル100の上下寸法(高さ)が30cmであれば、1サイクル目の「土入れ→転圧」を行うことによって、格子状立体セル層210の上端位置までの中詰材102の充填が完了し、2サイクル目の「土入れ→転圧」を行うことによって、格子状立体セル層210上の1層分の盛土層220が形成される。
また、例えば、格子状立体セル100の上下寸法(高さ)が20cmであれば、1サイクル目の「土入れ→転圧」では、格子状立体セル100内に土砂を充填するとともに格子状立体セル100の上に30cm程度の余盛りを行ってから、転圧を行うこととなる。これにより、格子状立体セル層210の上端位置までの中詰材102の充填が完了するとともに、格子状立体セル層210の上に厚さ10cm程度の土砂層が形成される。その後、2サイクル目の「土入れ→転圧」を行うことによって、格子状立体セル層210上の土砂層の総厚が30cm程度加算されて合計40cm程度となり、格子状立体セル層210上の1層分の盛土層220の形成が完了する。このように、格子状立体セル100内に充填されて格子状立体セル層210を構成する中詰材102と、盛土層220を構成する充填材料とは、部分的には一括して施工される場合もある。
【0054】
このように、「土入れ→転圧」を所要回数繰り返すことによって、壁部構成体320の上端位置まで土砂などの充填材料を充填する。
以上により、最下段の格子状立体セル100と、当該格子状立体セル100の各セル構造体101内に充填された中詰材102と、により最下段の格子状立体セル層210が構成されるとともに、最下段の盛土層220が形成される。
なお、便宜的に、格子状立体セル層210は、壁部構成体320に最も近い第2帯状体20と壁部構成体320間に充填された充填材料、および、格子状立体セル100と地山3の前面3aとの間のクリアランスに充填された充填材料も含むものとする。
【0055】
次に、最下段の壁部構成体320の上に、2段目の壁部構成体320を積み重ねる。このとき、2段目の壁部構成体320の下面の第1嵌合部323と、最下段の壁部構成体320の上面の第2嵌合部324とを相互に嵌合させる。2段目の壁部構成体320についても、当該壁部構成体320の係止部310が地山3側を向くように配置する。
【0056】
次に、最下段の格子状立体セル層210を構成する格子状立体セル100を、最下段の盛土層220の上、すなわち2段目の壁部構成体320と地山3との間に配置する。
【0057】
その後、2段目の格子状立体セル100に設けられた連結部材230を、2段目の壁部構成体320の係止部310の各々に対して係止する。このとき、連結部材230において、2段目の格子状立体セル100の隣り合う第1帯状体10の間隙の各々に位置する部分を、それぞれ対応する係止部310に対して係止することが好ましい。これにより、2段目の壁部構成体320と2段目の格子状立体セル100とが相互に連結された状態となる。
【0058】
次に、2段目の格子状立体セル100の第1帯状体10の各々が、2段目の壁部構成体320から地山3に向けて遠ざかる方向へと直線状に延在した状態となるように、2段目の格子状立体セル100にテンションを加える。すなわち、2段目の格子状立体セル100において壁部構成体320から遠い側の端部(地山3側の端部)を、壁部構成体320から遠ざかる方向へ引っ張る。これにより、例えば、各第1帯状体10が互いに平行となるとともに、各第2帯状体20が第1帯状体10に対して直交し、且つ、各第1帯状体10並びに各第2帯状体20が水平面に対して直交した状態となる。
なお、
図4には、ここまでの工程を完了した状態を示している。
【0059】
次に、1段目の格子状立体セル層210および1段目の盛土層220を形成するときと同様に、「土入れ→転圧」を所要回数繰り返すことによって、2段目の壁部構成体320の上端位置まで土砂等の充填材料を充填する。
【0060】
以上により、2段目の格子状立体セル100と、当該格子状立体セル100の各セル構造体101内に充填された中詰材102と、により2段目の格子状立体セル層210が構成されるとともに、2段目の盛土層220が形成される。
【0061】
その後は、2段目の壁部構成体320、2段目の格子状立体セル層210および2段目の盛土層220を施工する工程と同様の工程を所要回数だけ繰り返し行うことにより、3段目から最上段までの壁部構成体320、格子状立体セル層210および盛土層220を施工する。
【0062】
なお、最上段の壁部構成体320の上端位置、並びに、最上段の盛土層220の上端位置は、上側平坦面4と同じ高さとすることが好ましい。
また、最上段の壁部構成体320は、
図1に示すように第2嵌合部324を有していても良いし、第2嵌合部324を有しておらず当該壁部構成体320の上面が平坦に形成されていても良い。
【0063】
以上により、
図1に示すように、地山3の前面3aに沿って盛土構造が構築される。
【0064】
したがって、本実施形態に係る盛土構造は、盛土200と、盛土200に沿って立設された壁部300と、を備えている。盛土200は、互いに上下方向に離間して配置された複数の格子状立体セル層210と、隣り合う格子状立体セル層210どうしの層間に充填された盛土層220と、を含む。格子状立体セル層210は、平面視において格子状に配置された複数のセル構造体101を有する格子状立体セル100と、複数のセル構造体101内に充填された中詰材102と、を備える。格子状立体セル100は、互いに並列に配置された可撓性の複数の第1帯状体10と、互いに並列に配置されているとともに各々が複数の第1帯状体10に対して交差しており、複数の第1帯状体10とともに複数のセル構造体101を構成している可撓性の複数の第2帯状体20と、を有する。複数の第1帯状体10は、各々が壁部300から遠ざかる第1の水平方向に延在しているとともに、各々の面方向が水平面に対して交差しており、複数の第2帯状体20は、各々が第1の水平方向に対して交差する第2の水平方向に延在しているとともに、各々の面方向が水平面に対して交差している。壁部300には、盛土200側に突出した突出部(例えば係止部310)が設けられ、突出部と格子状立体セル層210とが相互に連結されている。
【0065】
以上のような第1の実施形態によれば、盛土構造は、盛土200と、盛土200に沿って立設された壁部300と、を備え、盛土200は、互いに上下方向に離間して配置された複数の格子状立体セル層210と、隣り合う格子状立体セル層210どうしの層間に充填された盛土層220と、を含んでいる。そして、壁部300には、盛土200側に突出した突出部(例えば係止部310)が設けられ、突出部と格子状立体セル層210とが相互に連結されている。すなわち、格子状立体セル100、ひいては、格子状立体セル100を含む格子状立体セル層210は、壁部300と連結されている。よって、壁部300に連結された格子状立体セル100、ひいては、格子状立体セル100を含む格子状立体セル層210は、引張り補強材として機能し、壁部300を支持することができる。すなわち、格子状立体セル層210と盛土層220との界面における摩擦抵抗などによって、壁部300を前方に付勢する力に対する抗力を得ることができる。
さらに、格子状立体セル層210が盛土200内に配置されているので、格子状立体セル層210によって盛土200の円弧滑り線を断つことができる。よって、盛土200の円弧滑りを抑制することができる。
【0066】
ここで、格子状立体セル100、ひいては、格子状立体セル100を含む格子状立体セル層210は、ジオグリッド等の面状補強材と比べて、上下寸法が大きいため、ジオグリッド等の面状補強材と比べて、壁部300を前方に付勢する力に対して、より大きな抗力(引き抜き抵抗)を持つ。よって、壁部300の安定性を向上することができるとともに、盛土200において格子状立体セル層210が埋設されている部分の安定性を向上することができる。
【0067】
また、格子状立体セル100は、平面視において格子状に配置された複数のセル構造体101を有する。すなわち、格子状立体セル100は、互いに並列に配置された可撓性の複数の第1帯状体10と、互いに並列に配置されているとともに、各々が複数の第1帯状体10に対して交差しており、複数の第1帯状体10とともに複数のセル構造体101を構成している可撓性の複数の第2帯状体20と、を有している。そして、複数の第1帯状体10は、各々が壁部300から遠ざかる第1の水平方向に延在しているとともに、各々の面方向が水平面に対して交差しており、複数の第2帯状体20は、各々が第1の水平方向に対して交差する第2の水平方向に延在しているとともに、各々の面方向が水平面に対して交差している。このように、格子状立体セル100は、平面視において格子状に配置された複数のセル構造体101を有するので、格子状立体セル100における壁部300側の端部に連結された連結部材230が、壁部300側へ引張り力を受けたときにおいて、格子状立体セル100の各セル構造体101の変形が抑制される。すなわち、各セル構造体101の平面形状を矩形状に維持しつつ、壁部300を前方に付勢する力に対する抗力を発揮する。よって、格子状立体セル層210が一定以上の抗力を安定的に発揮することができるため、壁部300の安定性をより一層向上することができる。
【0068】
なお、一般的なジオセルは、平面視においてハニカム状に配置された複数のセル構造体を有しており、個々のセル構造体の平面形状は、両端がすぼまった紡錘形のような形状である。このため、このような一般的なジオセルを上記の格子状立体セル100の代わりに盛土構造における引張り補強材として用いた場合には、ジオセルが壁部側へ引張り力を受けたとき、セル構造体は、例えば壁部に近いものから順に、その内空断面積が縮小する方向に変形すると考えらる。特開2007−146632号公報記載の方法のように土中構造物に対する引張り補強材としてジオセルを用いるのであればさほど問題はないが、本実施形態のような補強土壁工法においてジオセルを用いた場合には引張り補強材として十分な抗力を発揮できない可能性がある。
【0069】
また、格子状立体セル層210は、複数の第1帯状体10における壁部300側の端部を相互に連結している連結部材230を有し、突出部(係止部310)に対して連結部材230が係止されることによって、突出部と格子状立体セル層210とが相互に連結されている。よって、連結部材230を突出部に係止するだけで、容易に壁部300と格子状立体セル100、ひいては格子状立体セル層210を連結することができる。
【0070】
ここで、格子状立体セル100の端部は、剛体の連結部230が設けられることによって、剛体とされている。そして、そのように剛体とされた格子状立体セル100の端部と、剛体の係止部310とが連結されることによって、壁部300と格子状立体セル100、ひいては、壁部300と格子状立体セル層210とが、相互に連結されている。よって、壁部300と格子状立体セル層210との連結構造、ひいては、壁部300と盛土200との連結構造の強度を向上し、それらを安定的に連結することを実現できる。
【0071】
このように、本実施形態によれば、ジオテキスタイルとして格子状立体セル100を有するとともに、格子状立体セル100と壁部300とが良好に連結された盛土構造を提供することができる。また、本実施形態に係る盛土構造の構築工法によれば、ジオテキスタイルとして格子状立体セルを用いる場合に、良好な盛土構造を構築することができる。また、本実施形態に係る盛土構造用の壁部構成体320を用いることにより、ジオテキスタイルとして格子状立体セルを用いる場合に、良好な盛土構造を構築することができる。
【0072】
また、係止部310は、フック形状に形成されているので、係止部310に対する連結部材230の係止動作を容易に行うことができ、盛土構造の施工性をより良好にすることができる。
【0073】
また、隣り合う第1帯状体10の間隙の各々に対応して、それぞれ係止部310が配置されているので、壁部300と格子状立体セル100との高い連結強度を得ることができる。また、壁部300に対する格子状立体セル100の配置が、水平面内における回転方向にてずれてしまうことを抑制できるので、壁部300を前方に付勢する力に対する格子状立体セル層210の抗力を良好に維持することができる。
【0074】
また、壁部300は、複数段に積み重ねられた壁部構成体320により構成されているので、盛土構造を下部から上部に向けて段階的に構築することを容易に行うことができ、盛土構造の施工性がより良好となる。
【0075】
また、各段の壁部構成体320が突出部(係止部310)を有し、且つ、各段の壁部構成体320の突出部に対して、それぞれ対応する格子状立体セル層210が連結されているので、壁部構成体320の各々について、前面側へのはらみ出しを抑制することができる。
【0076】
また、壁部構成体320は、コンクリートブロックにより形成された本体部321を備え、本体部321が複数段に積み重ねられることにより壁部300が構成されている。よって、安定的な構造の壁部300を容易に構築することができる。また、本体部321における盛土200側の面に突出部(係止部310)が設けられているので、突出部に対する連結部材230の係止動作を容易に行うことができる。
【0077】
また、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部は、連結部材230に対して固定されて、連結部材230に対して相対的に第2の水平方向に移動することが規制されている。よって、格子状立体セル100の各セル構造体101の形状をより確実に維持することができるので、壁部300を前方に付勢する力に対する格子状立体セル層210の抗力をより確実に維持することができる。
【0078】
また、連結部材230は棒状体であり、第2の水平方向に沿って配置されているので、簡易な構造によって、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部を相互に連結することができるとともに、連結部材230をより容易に突出部(係止部310)に対して係止することができる。
【0079】
連結部材230は、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部を貫通しているので、連結部材230と格子状立体セル100との十分な連結強度を確保することができる。
【0080】
〔第2の実施形態〕
図5は第2の実施形態に係る盛土構造の側断面図である。
図6は第2の実施形態に係る盛土構造を構成する壁部構成体320および格子状立体セル100を示す斜視図である。本実施形態に係る壁部構成体320は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態に係る壁部構成体320と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る壁部構成体320と同様に構成されている。
【0081】
本実施形態の場合、壁部構成体320は、凹溝又はリブである第1嵌合部323と、リブ又は凹溝である第2嵌合部324とを備えていない。その代わり、本実施形態の場合、壁部構成体320は、棒状体又は嵌入孔である第1嵌合部325と、第1嵌合部325と嵌合可能な嵌入孔又は棒状体である第2嵌合部326と、を備えている。例えば、壁部構成体320の本体部321の上面には、該上面から上方に突出する棒状体である第1嵌合部325が設けられ、壁部構成体320の本体部321の下面には、下向きに開口する嵌入孔である第2嵌合部326が設けられている。
【0082】
なお、
図6に示すように、壁部構成体320の本体部321の幅方向(
図5の紙面に対して直交する方向)において、複数の第1嵌合部325が所定間隔(例えば一定間隔)で設けられていても良い。この場合、平面視において複数の第1嵌合部325の各々と重なる位置に、それぞれ第2嵌合部326が設けられている。
【0083】
本実施形態の場合、壁部構成体320を積み上げる際には、下側の壁部構成体320の第1嵌合部325が上側の壁部構成体320の第2嵌合部326に差し込まれるようにして、壁部構成体320を積み上げる。
【0084】
なお、最下段の壁部構成体320は、
図5に示すように第2嵌合部326を有しておらず、当該壁部構成体320の本体部321の下面が平坦に形成されていても良いが、他の段の壁部構成体320と同様に第2嵌合部326を有していても良い。
また、最上段の壁部構成体320は、
図5に示すように第1嵌合部325を有しておらず、当該壁部構成体320の本体部321の上面が平坦に形成されていても良いが、他の段の壁部構成体320と同様に第1嵌合部325を有していても良い。
【0085】
本実施形態に係る盛土構造は、
図5および
図6に示す構造の壁部構成体320を備える点で、上記の第1の実施形態に係る盛土構造と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る盛土構造と同様に構成されている。
また、本実施形態に係る盛土構造の構築工法は、
図5および
図6に示す構造の壁部構成体320を用いる点で、上記の第1の実施形態に係る盛土構造の構築工法と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る盛土構造の構築工法と同様である。
【0086】
以上のような第2の実施形態によっても、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、壁部構成体320は、棒状体又は嵌入孔である第1嵌合部325と、第1嵌合部325と嵌合可能な嵌入孔又は棒状体である第2嵌合部326と、を備えているので、上下に積み重ねられる壁部構成体320どうしの連結強度が向上するので、壁部300の構造的安定性を向上することができる。
【0087】
〔第3の実施形態〕
図7は第3の実施形態に係る盛土構造の側断面図である。
図8は第3の実施形態に係る盛土構造を構成する壁部構成体320の斜視図である。本実施形態に係る壁部構成体320は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態に係る壁部構成体320と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る壁部構成体320と同様に構成されている。
【0088】
図8に示すように、本実施形態の場合、壁部構成体320は、コンクリートブロックにより形成された本体部321を有していない。
本実施形態の場合、壁部構成体320は、それぞれ棒状の金属材(金属材327、328)を格子状に組み付けることにより形成された第1面状部330および第2面状部340を備えている。
第1面状部330には、突出部(係止部310)が設けられている。
【0089】
図7に示すように、第1面状部330は、例えば、起立した状態で配置される。第1面状部330は、複数段に積み重ねられることにより壁部300を構成するものである。第2面状部340は、第1面状部330の下端部に連接されて、第1面状部330に対して交差している。第2面状部340は、第1面状部330の下端部から一方向に延出している。壁部構成体320の第1面状部330と第2面状部340とを合わせた部分は、側面視において、L字状などの形状をなしている。
【0090】
例えば、壁部構成体320によって、水平面に対して垂直に(つまり鉛直に)起立する壁部300を構築する場合、第2面状部340と第1面状部330とは相互に直交している。ただし、鉛直方向に対して傾斜した壁部300を構築する場合、壁部300の傾斜角度(例えば三分勾配、五分勾配などの傾斜角度)に応じて、第2面状部340と第1面状部330とのなす角度を90度未満の角度に設定する(
図10参照)。
【0091】
第1面状部330には、個々の突出部(係止部310)が個別に設けられていても良いが、例えば、
図8に示すように、一対の突出部が一体化されて第1面状部330に設けられている。
すなわち、本実施形態に係る壁部構成体320は、例えば、一対の突出部(係止部310)と、一対の突出部を相互に連結している連結体361と、を有する突出部材360を備えている。
突出部材360は、第1面状部330を基準として第2面状部340の延出方向とは反対側から、第1面状部330を構成する金属材どうしの間隙を通して一対の突出部の各々を第2面状部340の延出方向へ突出させることにより、第1面状部330に対して係合し、第2面状部340の延出方向への移動が規制されるようになっている。
なお、第1面状部330に設けられる突出部材360の数は1つでも良いが、例えば
図8に示すように、4つ以上の突出部が水平方向に並ぶように、複数の突出部材360を第1面状部330に設けることができる。
【0092】
より具体的には、第1面状部330は、例えば、それぞれ上下方向に延在し、且つ、互いに並列に(例えば互いに平行に)配置された複数本の金属材327と、それぞれ水平方向に延在し、且つ、互いに並列に(例えば互いに平行に)配置された複数本の金属材328と、を相互に組み付けることにより格子状に形成されている。
【0093】
同様に、第2面状部340は、それぞれ水平方向に延在し、且つ、互いに並列に(例えば互いに平行に)配置された複数本の金属材327と、これら金属材327に対して交差(例えば直交)する水平方向にそれぞれ延在し、且つ、互いに並列に(例えば互いに平行に)配置された複数本の金属材328と、を相互に組み付けることにより格子状に形成されている。
【0094】
なお、第1面状部330を構成する金属材327と第2面状部340を構成する金属材327とは別個のものであっても良いし、
図8に示すように、折り曲げられた金属材の屈曲部を境界とする一方の部分が第1面状部330の金属材327を構成し、折り曲げられた金属材の屈曲部を境界とする他方の部分が第2面状部340の金属材327を構成していても良い。
このように第1面状部330の金属材327と第2面状部340の金属材327とが、同一の金属材の一部分ずつからなる場合、第1面状部330の金属材327と第2面状部340の金属材327とが一体的であることによって、第1面状部330と第2面状部340とが相互に連接されている。この場合、壁部構成体320の良好な構造的安定性が得られる。
一方、第1面状部330を構成する金属材327と第2面状部340を構成する金属材327とが別個のものである場合、第1面状部330と第2面状部340とを相互に溶接することなどによって、第1面状部330と第2面状部340とが相互に連接されている。この場合、壁部構成体320の良好な製造容易性が得られる。
【0095】
また、第1面状部330を構成する金属材327の各々の上部は、上側に積み重ねられる壁部構成体320に差し込まれる差込部351を構成している。差込部351の基端部は、第1面状部330の背面側、すなわち盛土200側となる方向に向けてクランク状に屈曲した屈曲部352となっている。差込部351は、第1面状部330を構成する金属材327における屈曲部352よりも下側の部分と平行に伸びている。なお、差込部351には、水平方向の金属材328が設けられていない。
【0096】
次に、本実施形態に係る盛土構造の構築方法について、上記の第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0097】
図9(a)および
図9(b)は本実施形態に係る盛土構造を構成する壁部構成体320を上下に接続する動作を示す断面図である。
【0098】
図9(a)の状態では、下側の壁部構成体320の屈曲部352の高さまで盛土層220が形成されている。そして、下側の壁部構成体320の差込部351は、盛土層220よりも上方へと突出している。
【0099】
この状態から、下側の壁部構成体320の上に、上側の壁部構成体320を積み重ねる。このとき、上側の壁部構成体320の第2面状部340を構成する金属材328のうち、最も第1面状部330側の金属材328と、上側の壁部構成体320の第1面状部330を構成する金属材328との間に差込部351を差し込む。これにより、
図9(b)に示すように、上下の壁部構成体320が相互に連結された状態となる。
【0100】
その後、上側の壁部構成体320の第1面状部330に対して、突出部材360を係合させる(
図8参照)。すなわち、突出部材360は、第1面状部330を基準として盛土200側とは反対側から、第1面状部330を構成する金属材どうしの間隙を通して一対の係止部310の各々を盛土200側へ突出させることにより、第1面状部330に対して係合し、盛土200側への移動が規制された状態となる。
そして、該突出部材360の係止部310の各々に対して、格子状立体セル100に設けられた連結部材230を係止する。これにより、壁部構成体320と格子状立体セル100とが相互に連結された状態となる。
【0101】
その後、上記の第1の実施形態と同様に、充填材料の充填及び転圧を行う事によって、格子状立体セル層210および盛土層220を施工する。
これにより、第2面状部340は、盛土層220と格子状立体セル層210との境界部に埋設される。すなわち、本実施形態に係る盛土構造においては、第2面状部340は、盛土200に埋設されている。
【0102】
本実施形態の場合、盛土構造の前面側への充填材料(中詰材102等)のこぼれを抑制するために、壁部構成体320の第1面状部330の背面側(盛土200側)に沿って、不織布などからなるシート材(図示略)を配置しても良い。充填材料として細粒分を含む土砂等を用いる場合、格子状の第1面状部330だけでは、目が粗すぎて土こぼれが生じたり、水による表面浸食が生じたりする可能性がある。これらを抑制するために、シート材を配置することが好ましい。シート材は、網目状に孔を有する樹脂製のシートや不織布などである。シート材の孔径は第1面状部330のメッシュより細かいことが好ましい。なお、シート材として、不織布などに植物の種子を埋め込んだ植生マットを用いることにより、盛土構造の前面を緑化させることもできる。
【0103】
なお、最上段の壁部構成体320は、
図7に示すように差込部351および屈曲部352を有していなくても良いし、他の段の壁部構成体320と同様に差込部351および屈曲部352を有していても良い。
【0104】
以上のような第3の実施形態によっても、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
また、壁部構成体320は、金属材を格子状に組み付けることにより構成された第1面状部330および第2面状部340を備えて構成されているので、壁部構成体320を軽量化できる。よって、盛土構造の施工性が向上する。
【0106】
また、壁部構成体320は、一対の突出部(係止部310)と、一対の突出部を相互に連結している連結体361と、を有する突出部材360を備えている。そして、突出部材360は、第1面状部330を基準として第2面状部340の延出方向とは反対側から、第1面状部330を構成する金属材どうしの間隙を通して一対の突出部の各々を第2面状部340の延出方向へ突出させることにより、第1面状部330に対して係合し、第2面状部340の延出方向への移動が規制されるようになっている。よって、第1面状部330に対して、突出部材360を容易に組み付けることができ、且つ、突出部に連結部材230が係止されて突出部が壁部300から離間する方向へと引張り力を受けても、第1面状部330と突出部材360との係合状態を確実に維持することができる。
【0107】
<第3の実施形態の変形例>
図11は第3の実施形態の変形例に係る盛土構造の側断面図である。本変形例の場合、壁部構成体320は、第2面状部340を構成する金属材327が部分的に上に凸の山折り形状に折り曲げられている点で、上記の第3の実施形態と相違する。すなわち、第2面状部340は、山型部分345を有している。例えば、山型部分345が、壁部300に最も近い第2帯状体20と2番目に壁部300に近い第2帯状体20との間に位置するように、壁部構成体320および格子状立体セル100がそれぞれ構成されている。
【0108】
本変形例の場合、格子状立体セル100を構成する複数のセル構造体1のうち、一部のセル構造体1内に充填された中詰材102はコンクリート又はモルタルからなる。そして、山型部分345が、コンクリート又はモルタルからなる中詰材102(以下、固化部390)に埋設されることによって、格子状立体セル層210と山型部分345、ひいては格子状立体セル層210と壁部構成体320とが相互に連結されている。
【0109】
本変形例によれば、第3の実施形態と同様の効果が得られる他、壁部構成体320の第2面状部340が山型部分345を有し、この山型部分345が固化部390を介して格子状立体セル100と連結されていることにより、格子状立体セル層210と壁部構成体320との連結強度を向上することができる。
【0110】
なお、固化部390以外の中詰材102は、土砂(現地発生土など)、砕石又は砂質土等の、透水性の中詰材である。このため、壁部300と固化部390との間の部分の透水性を良好にすることができるので、当該部分に水が溜まってしまうことを抑制できる。
【0111】
〔第4の実施形態〕
図12(a)は第4の実施形態に係る盛土構造を構成する格子状立体セル100の平面図であり、
図12(b)は
図12(a)のA部の拡大図の一例を示す図であり、
図12(c)は
図12(a)のA部の拡大図の他の一例を示す図である。本実施形態に係る盛土構造は、格子状立体セル100と連結部材230との連結構造が、上記の第1の実施形態に係る盛土構造と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る盛土構造と同様に構成されている。
【0112】
本実施形態の場合、各第1帯状体10における壁部300側の端部が折り返されて2枚重ねとなっており、当該2枚重ねとなっている部分に連結部材230が挿通および固定されている。これにより、連結部材230と格子状立体セル100との連結強度が向上しているとともに、ナット231等との接触により第1帯状体10における壁部300側の端部が損傷した場合でも、第1帯状体10における壁部300側の端部の良好な耐久性を確保することができる。
よって、格子状立体セル100と壁部300とが離間する方向へと、壁部300と格子状立体セル層210との少なくとも何れか一方に対して力が作用したとしても、第1帯状体10における壁部300側の端部が破断して連結部材230と格子状立体セル100とが分離してしまうことを抑制することができる。
【0113】
なお、第1帯状体10における壁部300側の端部は、
図12(c)に示すようにループ状に折り返されていても良いし、
図12(b)に示すように折り畳まれた状態で折り返されていても良い。
また、
図12では、各第1帯状体10における壁部300側の端部が2枚重ねとなっている例を示しているが、各第1帯状体10における壁部300側の端部は3枚重ね以上となるように折り返されていても良い。
【0114】
以上のような第4の実施形態によれば、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
また、各第1帯状体10における壁部300側の端部が折り返されて複数枚重ねとなっており、当該複数枚重ねとなっている部分に連結部材230が挿通および固定されているので、連結部材230と格子状立体セル100との連結強度が向上する。よって、連結部材230と格子状立体セル100とが分離してしまうことを抑制することができる。
【0115】
〔第5の実施形態〕
図13(a)は第5の実施形態に係る盛土構造の側断面図、
図13(b)は第5の実施形態に係る盛土構造の突出部380の斜視図、
図13(c)は第5の実施形態に係る盛土構造を構成する格子状立体セル100の平面図である。
本実施形態に係る盛土構造は、壁部300に設けられた突出部と、格子状立体セル層210との連結構造が、上記の各実施形態に係る盛土構造と相違し、その他の点では、上記の各実施形態に係る盛土構造と同様に構成されている。なお、
図13(a)には、壁部構成体320(の本体部321)の構造が第1の実施形態と同様である例を示しているが、壁部構成体320の構造は、他の実施形態と同様の構造であっても良い。
【0116】
図13(c)に示すように、本実施形態の場合、格子状立体セル100には連結部材230が設けられていない。
【0117】
図13(a)および(b)に示すように、本実施形態の場合、突出部380は、壁部構成体320の本体部(例えば本体部321)から盛土200側に向けて突出した棒状部381と、棒状部381の端部(先端部)に設けられた板状部382と、を有している。
板状部382は、壁部300における盛土200側の面と対向している。板状部382は、壁部300における盛土200側の面に対して平行に対向していても良いし、斜向かいに対向していても良い。板状部382の面方向は、水平面に対して交差していれば良く、水平面に対して直交していることが好ましい。
棒状部381は、例えば、壁部構成体320の本体部(例えば本体部321)から盛土200側に向けて水平に突出している。より具体的には、例えば、棒状部381は、壁部構成体320の本体部(例えば本体部321)における盛土200側の面に対して直交している。ただし、棒状部381は、それ以外の向き(角度)で壁部構成体320の本体部(例えば本体部321)から盛土200側に向けて突出していても良い。
棒状部381の基端部は、壁部構成体320に固定されている。例えば、壁部構成体320の本体部321がコンクリートブロックからなる場合、棒状部381の基端部は、本体部321に埋設固定されている。
棒状部381および板状部382は、それぞれ金属により構成されていることが好ましい。
【0118】
本実施形態の場合、格子状立体セル100を構成する複数のセル構造体1のうち、一部のセル構造体1内に充填された中詰材102はコンクリート又はモルタルからなる。そして、突出部380の少なくとも板状部382が、コンクリート又はモルタルからなる中詰材102(固化部390)に埋設されることによって、突出部380と格子状立体セル層210とが相互に連結されている。より具体的には、板状部382と、棒状部381の先端部とが、固化部390に埋設されている。
【0119】
ここで、固化部390を構成するコンクリート又はモルタルは、例えば、壁部300に最も近い第2帯状体20と2番目に壁部300に近い第2帯状体20との間に充填されている。そして、板状部382は、壁部300に最も近い第2帯状体20と2番目に壁部300に近い第2帯状体20との間において、固化部390に埋設されている。
なお、
図13(a)では、板状部382が、壁部300に最も近い第2帯状体20と、2番目に壁部300に近い第2帯状体20との中間に位置する例を示している。ただし、板状部382は、壁部300に最も近い第2帯状体20に接していることも好ましい。
【0120】
棒状部381は、壁部300に最も近い第2帯状体20を貫通するように配置されている。具体的には、例えば、壁部300に最も近い第2帯状体20の下半部に、スリットないしは切欠形状部(図示略)が形成されており、このスリットないしは切欠形状部を棒状部381が通過するように、格子状立体セル100が配置されている。
【0121】
本実施形態に係る盛土構造の構築工法は、格子状立体セル層を形成する工程が、上記の各実施形態と相違し、その他の点では、上記の各実施形態に係る盛土構造の構築工法と同様である。
すなわち、本実施形態の場合、壁部300に最も近い第2帯状体20に形成されたスリットないしは切欠形状部を棒状部381が通過するように、格子状立体セル100を配置した後、壁部300に最も近い第2帯状体20と壁部300との間、並びに、壁部300に最も近い第2帯状体20と2番目に壁部300に近い第2帯状体20との間に、コンクリート又はモルタルからなる固化部390を充填し、固化させる。その後、格子状立体セル層210における他の部分に中詰材102を充填するとともに、盛土層220を形成することによって、一段分の壁部構成体320の高さの土砂層を形成することができる。
【0122】
以上のような第5の実施形態によれば、複数のセル構造体1のうち、一部のセル構造体1内に充填された中詰材102は、コンクリート又はモルタルからなり、突出部380の少なくとも一部分がコンクリート又はモルタルからなる中詰材102(固化部390)に埋設されることによって、突出部380と格子状立体セル層210とが相互に連結されている。よって、壁部300と格子状立体セル層210とをコンクリート又はモルタルからなる固化部390および突出部380によって、強固に連結することができ、盛土構造の強度及び安定性を向上することができる。
【0123】
また、突出部380は、盛土200側に突出した棒状部381と、棒状部381の端部に設けられて壁部300における盛土200側の面と対向している板状部382と、を有し、棒状部381の先端部及び板状部382がコンクリート又はモルタルからなる中詰材102(固化部390)に埋設されている。これにより、固化部390からの突出部380の引き抜き抵抗を向上することができるため、壁部300と格子状立体セル層210との連結強度をより向上することができる。
【0124】
本実施形態の場合、格子状立体セル100の端部には、連結部230が設けられていないが、格子状立体セル100の端部は、固化部390が充填されることによって、剛体とされている。そして、そのように剛体とされた格子状立体セル100の端部と、剛体の突出部380とが連結されることによって、壁部300と格子状立体セル100、ひいては、壁部300と格子状立体セル層210とが、相互に連結されている。よって、壁部300と格子状立体セル層210との連結構造、ひいては、壁部300と盛土200との連結構造の強度を向上し、それらを安定的に連結することを実現できる。
【0125】
なお、固化部390以外の中詰材102は、土砂(現地発生土など)、砕石又は砂質土等の、透水性の中詰材である。このため、壁部300と固化部390との間の部分の透水性を良好にすることができるので、当該部分に水が溜まってしまうことを抑制できる。
【0126】
第5の実施形態によれば、その他、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0127】
なお、上記の第5の実施形態では、突出部380が板状部382を有する例を説明したが、突出部380は板状部382を有していなくても良い。突出部380が板状部382を有していない場合、棒状部381の周面には、固化部390に対する定着力を向上するための凹凸構造(例えば螺旋溝など)が形成されていることが好ましい。
【0128】
〔第6の実施形態〕
図14は第6の実施形態に係る盛土構造の側断面図である。
上記の各実施形態では、各段の格子状立体セル層210が、地山3の前面3aの近傍に達している例を説明した。これに対し、本実施形態の場合、いくつかの段の格子状立体セル層(以下、格子状立体セル層410)が、壁部300の近傍で終端している。本実施形態の場合、その他の構成については、上記の各実施形態と同様である。
【0129】
図14の例では、格子状立体セル層410を構成する格子状立体セル100は、第2帯状体20を2枚のみ有しており、第1帯状体10の長さも、2枚分の第2帯状体20と対応した長さとなっている。このような格子状立体セル層410は、安定補助材として機能する。安定補助材とは、盛土構造の全体の安定に寄与する効果は小さく、主として、壁部300の安定化に寄与するアンカーとして機能するものである。
【0130】
このような第6の実施形態は、すべての壁部構成体320に対応して、地山3の前面3aの近傍に達するような長尺な格子状立体セル層210を敷設しなくても、盛土構造の全体が十分に土圧に耐えうる場合に適用することができる。
【0131】
このような第6の実施形態によっても、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0132】
〔第7の実施形態〕
図15は第7の実施形態に係る盛土構造の側断面図である。
上記の各実施形態では、各段の壁部構成体320と対応して、1層ずつの格子状立体セル層210(又は格子状立体セル層410)が設けられている例を説明した。これに対し、本実施形態では、いくつかの段の壁部構成体320と対応して、格子状立体セル層210(又は格子状立体セル層410)の代わりに、ジオグリッド430が設けられている。
換言すれば、本実施形態の場合、安定補助材として、上記の第6の実施形態における格子状立体セル層410の代わりに、ジオグリッド430を用いる。
【0133】
なお、壁部300における盛土側の面には、ジオグリッド430を壁部300に対して連結するための突出部として、係止部420が設けられている。係止部420は、ジオグリッド430の端部を係止できるものであれば、どのような形状のものでも良い。
図15の例では、係止部420は、上記の第1の実施形態と同様のJ字形のフック形状をなしている。
【0134】
より具体的には、ジオグリッド430の端部は、棒状の連結部材230に連結されており、この連結部材230が係止部420に係止されることによって、ジオグリッド430が壁部300に連結されている。
【0135】
ジオグリッド430の端部を連結部材230に連結する方法は、特に限定されないが、例えば、ジオグリッド430を縫うようにして、連結部材230をジオグリッド430の端部に挿通させることにより、ジオグリッド430の端部を連結部材230に連結することができる。
ジオグリッド430は、互いに平行に延在する複数の縦材と、それぞれ縦材に対して直交しているとともに互いに平行に延在する複数の横材432とを備え、平面視において格子形状に形成されている。ここで、複数の縦材のうち、縦材の並び方向において奇数番目に配置されているものを縦材431a、偶数番目に配置されているものを縦材431bと称する。
例えば、複数の縦材のうち、奇数番目の縦材431aは、連結部材230の上側を通り、偶数番目の縦材431bは、連結部材230の下側を通るように、連結部材230をジオグリッド430の端部に挿通させる。これにより、ジオグリッド430を縫うようにして連結部材230をジオグリッド430の端部に挿通させて、ジオグリッド430の端部を連結部材230に連結することができる。
【0136】
このような第7の実施形態は、すべての壁部構成体320に対応して格子状立体セル層210を敷設しなくても、盛土構造の全体が十分に土圧に耐えうる場合に適用することができる。
【0137】
このような第7の実施形態によっても、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0138】
なお、上記の各実施形態に係る盛土構造には、必要に応じて排水処理を施すことができる。
例えば、盛土200を構成する複数の層の層間(例えば、格子状立体セル層210と盛土層220との層間など)には、不織布等からなる面状排水材を配置することができる。
更に、盛土200と壁部300との境界近傍に水が溜まることを抑制するためには、壁部300に塩化ビニール管などの配水管を設けるか、または、壁部300における盛土200側の面に沿って縦排水構造を施工することができる。
配水管は、例えば、盛土200内から壁部300の前方に向けて、壁部300を貫通するようにして設置する。
また、縦排水構造の一例としては、カルドレーン(登録商標)等の縦排水材を、壁部300における盛土200側の面に貼り付けることにより構成されたものが挙げられる。或いは、盛土200において壁部300に沿った部分を、砕石により構成することによっても、縦排水構造を構築することもできる。
縦排水構造を設ける場合、壁部300に沿って流下した水を壁部300の延長方向(水平方向)に沿って排出するためのの砂利層を、壁部300の下端近傍に設けることが好ましい。砂利層は、例えば、台座370の下に設けることができる。
【0139】
また、上記の各実施形態では、地山3の前面3aの傾斜に対応して、上段の格子状立体セル層210ほど、奥行きが長くなっている例を示したが、各段の格子状立体セル層210の後端位置が揃っていても良い。要は、盛土構造に必要とされる安定性を満たすことができるように、構造計算に基づいて、格子状立体セル層210の配置領域を決定すればよい。
【0140】
また、上記においては、係止部310がフック形状に形成されている例を説明したが、係止部310は、他の形状に形成されていても良い。
【0141】
また、上記においては、隣り合う第2帯状体20の間隙の各々に対応して、それぞれ係止部310が配置されている例を説明したが、各壁部構成体320と格子状立体セル100とが、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の係止部310を介して相互に連結されていればよい。
【0142】
また、上記においては、壁部300は、複数段に積み重ねられた壁部構成体320により構成されている例を説明したが、壁部300は、その下端から上端に亘り一体の(一括施工された)壁により構成されていても良い。
【0143】
また、上記においては、壁部構成体320の各々が係止部310を有し、壁部構成体320の各々に対して、それぞれ対応する格子状立体セル層210の連結部材230が係止されている例を説明したが、必ずしも、上下に積み重ねられた複数の壁部構成体320の各々が係止部310を有していなくても良い。
【0144】
また、上記においては、壁部構成体320が、コンクリートブロックにより構成されている例と、金属材を格子状に組み付けることにより構成されている例を説明したが、壁部構成体320はその他の構造を有していても良い。
【0145】
また、上記の第1の実施形態においては、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部は、連結部材230に対して固定されている例を説明したが、格子状立体セル100の複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部は、例えば、連結部材230に沿って移動可能となっていても良い。
【0146】
また、上記においては、連結部材230が棒状体である例を説明したが、連結部材230は棒状以外の形状を有していても良い。
【0147】
また、上記においては、連結部材230が棒状体である場合に、連結部材230が複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部を貫通している例を説明したが、連結部材230は、複数の第1帯状体10の各々における壁部300側の端部を貫通せずに、複数の第1帯状体10における壁部300側の端部を相互に連結していても良い。