(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可変抵抗器は、抵抗値を電気的に制御可能な電子ボリュームであり、前記電子ボリュームの抵抗値は、クロックで駆動されるカウンタによって制御されることを特徴とする、請求項1又は2に記載された信号発生装置。
前記可変抵抗器は、軸の回転角度に比例して抵抗値が直線的に変化するポテンショメータであり、前記ポテンショメータの軸は、モータによって定速制御されることを特徴とする、請求項1又は2に記載された信号発生装置。
【背景技術】
【0002】
船舶等の航走体は、航走によって音響を発生する。航走体が発する音響は「航走信号」と呼ばれる。航走信号は、航走体とは異なる場所に設置された検知装置で音響として受波される。船舶の航走信号を受波する検知装置は、例えば海底に設置される。検知装置は、受波した航走信号の音圧を電気信号に変換する。
【0003】
航走信号の受波により検知装置で発生する信号を模擬する装置として、航走信号発生装置が用いられる。航走信号発生装置は、検知装置において受波される航走信号の音圧を示す信号を、検知装置を用いることなく、計算により発生させる。
【0004】
図9は、一般的な航走信号発生装置100の構成を示す図である。航走信号発生装置100は、模擬信号を発生するための、信号発生装置である。模擬信号は、航走信号が受波された際の音圧が模擬された信号である。航走信号発生装置100は、ROM(read only memory)101、マイクロコンピュータ(マイコン)102、DA(digital to analog)変換器103、低域通過フィルタ104、正弦波発振器105、乗算器106を備える。
【0005】
ROM101は、マイコン102に内蔵又は外付けされたメモリである。ROM101は、マイコン102とDA変換器103とを制御するプログラム、模擬信号の波形及び模擬信号の信号レベルの計算をするプログラム及びこれらのプログラムで用いられるデータを格納する。マイコン102は、プログラムに基づき、計算によって模擬信号のデジタルデ−タを生成してDA変換器103に時系列順に入力する。DA変換器103は、マイコン102が生成したデジタルデータをアナログ信号に変換して、変調信号を出力する。変調信号は、航走信号の信号レベル及び振幅変化を示すデータである。
【0006】
DA変換器103から出力された変調信号の振幅の波形は階段状である。低域通過フィルタ104は、変調信号の高周波成分を減衰させる。低域通過フィルタ104によって振幅の変化が滑らかとなった変調信号は、乗算器106に入力される。一方、正弦波発振器105は、所定の周波数かつ信号レベルの搬送波を生成して、乗算器106に入力する。乗算器106は、入力された搬送波を、低域通過フィルタ104を通過した変調信号で振幅変調して、模擬信号を生成する。
【0007】
本発明に関連して、特許文献1は、高速デジタル計算機を用いて、水中の音源が発する水中音波を模擬した模擬音波信号を発生する水中音響模擬装置の構成を記載している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について説明する。以降の実施形態において、航走体が発する航走信号の周波数は、単一周波数f(Hz)であるとする。
図1は、本発明の第1の実施形態における模擬信号生成の前提となる、船舶10と検出装置20との位置関係を示す図である。第1の実施形態では、航走体は海面上の船舶10である。検出装置20は、深度d(m)の海底に設置され、船舶10が発生する航走信号を受波する。
図1において、検出装置20は船舶10の航路の直下にある。
【0016】
船舶10は、海面上を一定速度a(m/sec)で移動する。検出装置20が深度dの海底で航走信号を受信している場合に、検出装置20で受信される航走信号の音響レベルは、以下の(1)式で表される。
【0017】
上式の各変数の意味は以下の通りである。
w:受波レベル(Pa)(検出装置20で受波される航走信号の受波レベル)
s:信号源レベル(Pa)(船舶10が発生する航走信号の音響レベル)
a:船舶10の速度(m/sec)
t:時刻(sec)
d:検知装置20の深度(m)
(1)式は、航走信号の音響の計算(以下、「音響計算」という。)によって算出された、検知装置20で受波される航走信号の受波レベルwを示す。ここで、船舶10が検出装置20の真上を通過する時刻が、時刻t=0である。時刻tの符号は、船舶10が検出装置20に近づく場合がマイナスであり、船舶10が検出装置から遠ざかる場合がプラスである。深度dは検出装置20の海面からの鉛直距離であり、船舶10と検出装置20との最短距離である。
【0018】
図2は、第1の実施形態の信号発生装置30の構成を示す図である。信号発生装置30は、
図1において検出装置20で受波される航走信号の受波レベルを模擬した電気信号(すなわち模擬信号)を発生する。信号発生装置30は、正弦波発振器31、コイル32、可変抵抗器33、固定抵抗器34が直列に接続された電気回路、及び、音圧取得部39を備える。信号発生装置30において、固定抵抗器33の両端の電圧(出力電圧)eは、以下の(2)式で表される。音圧取得部39は、出力電圧eに所定の倍率を乗じた信号を、模擬信号として出力する。倍率については後述する。
【0019】
(2)式のパラメータは以下の通りである。
E:正弦波発振器31の出力レベル(Vrms)
f:正弦波発振器31の発振周波数(Hz)
L:コイル32のインダクタンス(H)
b:可変抵抗器33の抵抗値の時間変化率(Ω/sec)
r:固定抵抗器34の抵抗値(Ω)
t:時刻(sec)
ここで、(2)式のrの値に対して、(3)式に示されるように、b×tが充分大きいとする。
【0020】
r<<b×t ・・・(3)
この場合、b×tに対してrは無視できるため、(2)式は、(4)式のように変形される。
【0021】
(4)式は、
図2の抵抗器34の両端の電圧eを示す。ここで、航走信号の受波レベルwを示す(1)式と、電圧eを示す(4)式との形は類似している。すなわち、(1)式において、パラメータs、a、dは、航走信号が検知装置20で受波される際の条件で決まる値である。一方、(4)式では、パラメータE、r、b、f、Lは、信号発生装置30において電気回路の計算の際の条件で決まる値である。(1)式及び(4)式とも、時刻tのみが時間的に変化する。
【0022】
従って、(1)式のパラメータと(4)式のパラメ−タとは、以下のように対応する。
(1)式 ・・・(4)式
s ・・・ E×r
a ・・・ b
d ・・・2×π×f×L
tは、(1)式及び(4)式で共通する、時刻を示すパラメ−タである。従って、時刻tを変化させながら抵抗器34の両端の電圧eを計算することで、(4)式を用いて(1)式の受波レベルwに対応する模擬信号を生成できる。
【0023】
続いて、(4)式を用いて(1)式を模擬するための条件を導く。(1)式と(4)式とが等しいとすることで、下の(5)式が得られる。
【0024】
(5)式を変形すると以下の(5a)式が得られる。
【0025】
(5a)式の左辺の値と右辺の値とが、tが変化しても同一となるための条件を導く。(5a)式において、左辺のs/a、右辺のE×r/bは、(1)式及び(4)式が示す値の大きさに関するパラメータであり、(1)式及び(4)式の波形の時間的な変化に関するパラメータではない。(1)式及び(4)式の時間的な波形の変化は、(5a)式の根号の中のパラメータで決まる。(5a)式の両辺の根号内の値が等しくなるためには、以下の(6)式が満たされればよい。
【0026】
d/a=2×π×f×L/b ・・・(6)
(6)式において、dは検出装置20の深度、aは航走体の速度、fは航走信号の周波数である。これらのパラメータの値は、検出装置20が使用される際の条件から定まる。Lは、コイル32のインダクタンス、bは可変抵抗器33の抵抗値の時間変化率である。可変抵抗器33の抵抗値Rは有限であり、またr<<btという(3)式の条件により、(6)式の各パラメータの値の範囲は制限される。(6)式を変形することで、(7)式が得られる。
【0027】
L=(d×b)/(a×2×π×f) ・・・(7)
コイルのインダクタンスLは比較的自由に選ぶことができるため、(7)式を用いてコイルのインダクタンスLを決めることができる。(7)式を満たすように各パラメータが決定されれば、(1)式と(4)式とが示す波形が相似となり、(4)式を用いて(1)式を模擬できる。
【0028】
次に、倍率について検討する。倍率は、(1)式の受波レベルwの値と(4)式の出力電圧eの値とを一致させるための係数である。倍率gは、出力電圧eに倍率gを乗じた値が、受波レベルの音圧と一致するように設定される、倍率をgとすると、(1)式と(4)式との値が同一となるには、以下の(8)式が満たされればよい。
【0029】
s/a=g×(E×r/b) ・・・(8)
sは、船舶10における航走信号のレベル(信号源レベル)であり、aは、船舶10の速度である。これらは航走信号が模擬される条件から決まる。また、Eは、正弦波発振器31の出力電圧であり、有限である。固定抵抗器34の抵抗値r及び可変抵抗器33の変化率bは、(3)式から自由度は制限される。(8)式を変形してgを導くと、(9)式が得られる。
【0030】
g=(s×b)/(a×E×r) ・・・(9)
(9)式を用いて倍率gを決定すれば、(1)式と(4)式との波形の大きさは等しくなる。具体的には、出力電圧eは音圧取得部39においてg倍され、g倍された値は音圧(Pa)を示す。音圧取得部39は(9)式に基づくgの値を保持しており、電圧がe×gとなった信号を模擬信号として出力する。音圧取得部39は、出力電圧eの値をg倍した数値データを、音圧(Pa)を示す模擬信号として出力してもよい。
【0031】
このようにして、信号発生装置30は、検知装置20を用いることなく、検知装置20で受波される航走信号の受波レベルwを模擬した模擬信号を出力できる。受波レベルwを模擬する模擬信号を得る手順は、例えば以下のようになる。
【0032】
まず、模擬の対象となる船舶10の速度aや検知装置20の深度dなどの、実際に航走信号が発生する際のパラメータの値が決定される。決定されたパラメータの値を(1)式に反映させることで、(1)式の時間的な変化が求まる。次に、信号発生装置30で模擬信号を生成するための、(2)式のパラメータの値が決定される。固定抵抗器34の抵抗値r及び可変抵抗器の抵抗値の変化率bは、(3)式の条件を満たすように決定される。コイル32のインダクタンスLの範囲には制約が特にないため、その他のパラメータの値が決定された後、最後に、(7)式からLの値が決定されてもよい。
【0033】
その結果、検知装置20で実測される航走信号の受波レベルwを示す(1)式と等価な(4)式が得られる。従って、決定されたパラメータに基づいて
図2の信号発生装置30を構成すれば、航走信号を検知装置20で実測した場合と相似な波形が出力電圧eとして得られる。得られた出力電圧eを、音圧取得部39で倍率gだけ増幅することで、音圧である受波レベルwを模擬した模擬信号が得られる。
【0034】
続いて、具体的な数値を例に、上述した模擬の検証を行う。
図1において、航走体のパラメータを以下の通りとする。
航走体の速度a=20(ノット)=10.3(m/sec)
深度d=50(m)
船舶10の航走信号の送波レベルs=170(dB)=10
(170/20)(μPa)≒316(pa)
一方、
図2の信号発生装置30の定数は、上述の制約条件を加味して、以下のように定められる。
正弦波発振器31の周波数f=100(Hz)
可変抵抗器33の抵抗値の範囲:0−50(kΩ)
固定抵抗器34の抵抗値:50(Ω)
図3は、可変抵抗器33の抵抗値Rと時刻tとの関係を示す図である。可変抵抗器33の抵抗値Rの制御は、3分間(180秒)に渡って、以下のように行われる。時刻tが−90(sec)から0(sec)の間は、抵抗値Rを50(kΩ)から0(Ω)の範囲で時刻tに対して直線的に低下させる。時刻tが0(sec)から+90(sec)の間は、抵抗値Rを0(Ω)から50(kΩ)の範囲で時刻tに比例して上昇させる。
図3において、抵抗値Rの時間変化率bは、b=50000(Ω)/90(sec)≒556(Ω/sec)となる。
【0035】
可変抵抗器33の抵抗値Rは、時間に対してリニアに変化する。(4)式において時間と共に抵抗値Rが減少することが、(1)式において船舶10が検出装置20に接近することに対応する(t<0)。抵抗値Rが0となる点は、船舶10が検出装置20に最接近する点に対応する(t=0)。抵抗値Rが時間と共に増加することが、船舶10が検出装置20から離れることに対応している(t>0)。
【0036】
すなわち、このような抵抗値の変化は、時刻tが−90秒から0秒までは船舶10が検知装置20に接近し、時刻t=0で船舶10が検知装置20の真上を通過し、時刻tが0秒から+90秒までは船舶10が検知装置20から遠ざかる状態を模擬する。
【0037】
(7)式からよりコイルLの値を求めると、
L=(50×556)/(10.3×2×π×100)≒4.3(H)
となる。次に、(9)式より倍率gを求める。
【0038】
s=316(Pa)
b=556(Ω/sec)
a=10.3(m/sec)
E=1(Vrms)
r=50(Ω)
であるので、(10)式のようにgが求まる。
【0039】
g=(316×556)/(10.3×1×50)≒341 ・・・(10)
また、(1)式に航走体及び検知装置のパラメータの値を代入すると以下となる。
【0040】
(11)式と相似な波形を発生する電気回路は、(4)式から
【0042】
(1)式及び(4)式から求めた、(11)式及び(12)式の値の間に差異がないことを確認する。
図4は、航走信号の音響計算結果と信号発生装置30による模擬結果とを比較するための図である。
図4において、「音響計算結果」は(11)式の値を示し、「信号発生装置による模擬結果」は(12)式に倍率gの値を乗じた値を示す。
図4から、音響計算による(11)式から求めた受波レベルwと、信号発生装置30の出力電圧eを示す(12)式をg倍して求めた値(模擬信号による音圧)との間には、ほとんど差異がないことがわかる。すなわち、
図4は、(12)式によって実際の受波レベルwが模擬できることを示す。
【0043】
また、
図5は、信号発生装置30において、模擬信号の計算に近似を行った場合と行わない場合との模擬結果を示す図である。
図5から、信号発生装置30が出力する模擬信号において、(12)式の値(
図5の「近似式」)と(3)式の近似を行わない(2)式に基づく値(
図5の「真式」)との間にもほとんど差異がないことがわかる。
【0044】
このように、本発明の第1の実施形態の信号発生装置は、簡単な構成で、移動体からの航走信号を受波して得られる受波レベルを模擬できる。
【0045】
(第1の実施形態の第1の変形例)
図6は、第1の実施形態の信号発生装置の第1の変形例の構成を示す図である。信号発生装置40は、
図1に示す検出装置20で受波される、船舶10の航走信号の受波レベルを模擬する。信号発生装置40では、正弦波発振器31、コイル32、電子ボリューム331、固定抵抗器34が直列に接続されている。電子ボリューム331は、制御回路35により抵抗値を電気的に制御可能な可変抵抗器である。信号発生装置40の電子ボリューム331及び制御回路35以外の構成は、
図2の信号発生装置30と同様である。信号発生装置40においても、電子ボリューム331の抵抗値は、
図3に示すシンプルなリニア制御により行われる。そして、信号発生装置40は、固定抵抗器34の両端の電圧eを取り出し、音圧取得部39でその電圧をg倍することにより、(1)式の受波レベルwを模擬できる。
【0046】
制御回路35は、カウンタ回路で構成されてもよい。カウンタ回路は、一定の速度のクロック信号によって、電子ボリューム331の抵抗値を、時間tに対して
図3のように変化するように制御する。このような制御回路35は簡便に構成することができ、消費電力も小さい。従って、制御回路にカウンタ回路が用いられても、信号発生装置40を簡単に構成できるとともに、検知装置20で受波される航走信号の受波レベルを、ダイナミックに模擬できる。
【0047】
制御回路35は、メモリを内蔵したマイコンでもよい。メモリには、マイコンを制御するプログラムが格納される。マイコンによる電子ボリューム331の制御は容易であり、また、高速な演算も必要とされない。このため、電子ボリューム331の制御にマイコンを用いても、信号発生装置40の構成が大きく複雑化したり、信号発生装置40の消費電力が増大したりすることはない。
【0048】
(第1の実施形態の第2の変形例)
図7は、第1の実施形態の信号発生装置の第2の変形例の構成を示す図である。信号発生装置50も、信号発生装置30、40と同様に、検出装置20の受波レベルを模擬する。信号発生装置50では、正弦波発振器31、コイル32、ポテンショメータ332、固定抵抗器34、が直列に接続されている。信号発生装置50も、固定抵抗器34の両端の電圧eを取り出し、音圧取得部39でその振幅をg倍することにより、(1)式の受波レベルwを模擬できる。
【0049】
信号発生装置50では、
図6の信号発生装置40における電子ボリューム331及び制御回路35に代えて、ポテンショメータ332、モータ36及び制御回路37が用いられる。ポテンショメータ332は、軸の回転角度に比例して抵抗値が変化する可変抵抗器である。ポテンショメータ332の軸は、モータ36に接続される。モータ36を制御回路37によって等速回転させることで、ポテンショメータ332の抵抗値を時間に対してリニアに変化させることができる。
【0050】
制御回路37は、時刻tに対するポテンショメータの抵抗値が
図3のように変化するように、モータ36の回転を制御する。ポテンショメータ332の軸をモータ36によって回転させることにより、航走信号の受波音の振幅の変動を模擬できる。例えば、船舶10が検知装置20に接近し、最接近の後に検知装置20から離れていく、という1回の航走信号の測定の際の受波レベルの変化を、モータ−の1回転に対応させてもよい。この場合には、モータは、非常に低速で等速回転するように、制御回路37によって制御される。その結果、第1の実施形態の第2の変形例によっても、移動体のダイナミックな動きを模擬できる。
【0051】
そして、
図7の構成においても、可変抵抗器のボリュームの制御は、シンプルなリニア制御で行われるとともに、信号発生装置は、電気回路を主体とした、受動部品で簡便に構成できる。
【0052】
図6の電子ボリューム331及び
図7のポテンショメータ332の抵抗値は、
図3に示したように、時間に対してリニアに制御される。これは、航走体が等速度で移動すること、すなわち、第1の実施形態の信号発生装置30と同様に、
図1において、航走体が船速a(m/sec)の等速度で移動することを模擬したものである。
【0053】
(効果の説明)
以上説明したように、本発明の第1の実施形態及びその変形例の信号発生装置30、40及び50は、簡単な構成で、移動体からの航走信号が受波される際の受波レベルを模擬できる。その理由は、信号発生装置は、電気回路の可変抵抗の抵抗値をシンプルにリニア制御して、固定抵抗器の両端の電圧を取り出すことにより、受波レベルが模擬された信号を生成するからである。その結果、信号発生装置は、移動体のダイナミックな動きを模擬できる。
【0054】
また、第1の実施形態及びその変形例の信号発生装置は、複雑なプログラムの作成や複雑なハードウエアの設計を必要としない。さらに、第1の実施形態及びその変形例の信号発生装置は、正弦波発振器31、音圧取得部39及び制御回路35、37を除くと、主として受動素子で構成され、また、高速な計算装置も必要としないため、消費電力も小さい。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で説明した信号発生装置30、40及び50において、コイル32に代えてコンデンサ38を使用しても、第1の実施形態と同様に、航走信号の受波レベルを模擬できる。
【0056】
図8は、第2の実施形態の信号発生装置の構成を示す図である。第2の実施形態の信号発生装置60は、正弦波発振器31、コンデンサ38、可変抵抗器33、固定抵抗器34を備え、これらが直列に接続されている。信号発生装置60の構成は、第1の実施形態の信号発生装置30のコイル32に代えてコンデンサ38に用いられている点のみが相違する。このような構成の信号発生装置60によっても、固定抵抗器34の両端の電圧を取り出し、音圧取得部39でその振幅をg倍することにより、(1)式の受波レベルwを模擬できる。
【0057】
コンデンサ38を使用した、信号発生装置60の固定抵抗器34の両端の電圧eは、以下の(13)式で表せる。
【0058】
ここで、Cはコンデンサの静電容量(F)であり、それ以外のパラメータは第1の実施形態と同様である。また、第1の実施形態と同様に、以下の(14)式のように、rに対してb×tを十分大きくなるように決定することで、(15)式が得られる。
【0060】
受波レベルwを音響計算により算出する(1)式と第2の実施形態の信号発生装置60の出力電圧eを算出する(15)式を比較すると、第1の実施形態と同様に、両式は時刻tを変数として同じ形をしている。そして、(4)式と(15)式との相違点は、(4)式の(2×π×f×L)が(1/(2×π×f×C))となっている点のみである。従って、第2の実施形態の信号発生装置において、第1の実施形態の信号発生装置の手順に倣ってパラメータを決定し、模擬信号を生成することは容易である。
【0061】
すなわち、第2の実施形態の信号発生装置60も、第1の実施形態及びその変形例の信号発生装置30、40及び50と同様に、簡単な構成で、移動体からの航走信号を受波する際の受波レベルを模擬できる。
【0062】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の信号発生装置は、以下の構成を備える。すなわち、第3の実施形態の信号発生装置は、電気回路と、音圧取得部と、を備える。第3の実施形態における電気回路は、第1の実施形態の
図1における発振器31と、可変抵抗器33と、コイル32(すなわち受動回路部品)と、固定抵抗器34と、が直列に接続されている。
【0063】
音圧取得部は、第1の実施形態の音圧取得部39と同様に、固定抵抗器34の両端の電圧に所定の倍率を乗じた信号を、特定地点における移動体から受波される音圧を模擬する信号として出力する。
【0064】
可変抵抗器33の抵抗値は、時刻に対して直線的に変化するとともに、可変抵抗器33の抵抗値の変化率は、船舶10(すなわち移動体)の移動速度及び音圧を求める範囲に基づき決定される。また、コイル32のインダクタンスは、可変抵抗器33の抵抗値の変化率、船舶10の移動速度、及び、音圧を受波する検知装置20と船舶10との最短距離、に基づき決定される。
【0065】
このような構成を備える第3の実施形態の信号発生装置も、第1の実施形態と同様に、可変抵抗器33の抵抗値を時間的に変化させることで、検知装置20で受波される航走信号の受波レベルを模擬できる。
【0066】
すなわち、第3の実施形態の信号発生装置も、第1の実施形態の信号発生装置30と同様に、簡単な構成で、移動体からの航走信号を受波する際の受波レベルを模擬できる。
【0067】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0068】
例えば、本発明の各実施形態は、海上を航行する船舶の航走信号が海底の検知装置で受波された信号を模擬する場合について記載された。しかし、航走体は海上の船舶に限定されない。また、検知装置は海中あるいは海底に設置される場合に限定されない。すなわち、航走体は、潜水して水中を移動するものであってもよく、あるいは大気中を飛行する飛翔体であってもよい。このように、本発明の実施形態は、移動に伴い音響を発生する移動体であれば、上空、陸上、海上、海中、水中のいずれを移動する移動体についても同様に適用できる。