(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371131
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】基礎の人通口補強構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/08 20060101AFI20180730BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20180730BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
E02D27/08
E02D27/01 A
E02D27/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-127933(P2014-127933)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-8385(P2016-8385A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】松下 克也
(72)【発明者】
【氏名】梶川 久光
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−256892(JP,A)
【文献】
特開平08−199592(JP,A)
【文献】
特開2009−097249(JP,A)
【文献】
特開2003−293381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E04C 5/00〜 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に形成される人通口用の切り欠き部の両側に各々取り付けられる一対の側枠部材と、
前記一対の側枠部材の上部間に配置される上枠部材と、
前記一対の側枠部材の下部間に配置される下枠部材と、
前記一対の側枠部材に対し前記上枠部材及び下枠部材を各々位置調整可能にそれぞれ連結する連結部材と、を備える基礎の人通口補強構造であって、
前記連結部材は、
前記側枠部材と上枠部材または下枠部材に少なくとも長孔を介して各々位置調整可能に重ねられる連結プレートと、
前記側枠部材と上枠部材または下枠部材を前記長孔に各々通してそれぞれ固定するボルト及びナットとからなることを特徴とする基礎の人通口補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記連結プレートは、
前記側枠部材と上枠部材または下枠部材の前記長孔を設けていない枠部材に対し丸孔に通したボルトにナットを締め付けて固定されて、
前記側枠部材と上枠部材または下枠部材の前記長孔を設けた枠部材に対し前記長孔に通したボルトにナットを締め付けて固定されることを特徴とする基礎の人通口補強構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記側枠部材は、前記基礎の主筋を避けた位置に埋設固定したアンカーボルトにナットを締め付けて固定されることを特徴とする基礎の人通口補強構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記側枠部材、上枠部材及び下枠部材は鉄板で形成されることを特徴とする基礎の人通口補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎に形成される人通口の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、布状基礎開口部の耐震補強フレームが提案される。
その耐震補強フレームは、布状基礎の切り欠き部として形成された方形状の開口部、具体的には、換気口や人通口に取り付けられるもので、その開口部の内側に取り付けられ四隅が剛接合である方形枠部材を備える。そして、方形枠部材が開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面を有している。また、開口部を囲む4面のうち、左右面及び下面が布状基礎により形成される面である。また、上面が天端に載置される連続的な土台により又は布状基礎により形成される面である。また、方形枠部材における開口部の上面に位置する部分が、土台又は布状基礎の一部をその両側面から挟み込むことが可能な断面形状を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5142656号(特開2009−91778号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の耐震補強フレームは、画一の大きさのため、基礎の開口部の大きさの変化に対応できない。
また、耐震補強フレームの上面は、天端に載置される連続的な土台により形成される構造か、布状基礎により形成される構造のいずれかに制限されていた。
また、既存の基礎の人通口は、耐力上、不連続の状態であった。すなわち、既存の基礎の人通口には、上端筋が無く、せん断力を伝える役割が無かった。
【0005】
そこで、本発明は、基礎に形成される人通口用の切り欠き部の大きさの変化に対応可能で、基礎の上に載る構造物に影響されない人通口補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば
図1から
図4に示すように、
基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の両側に各々取り付けられる一対の側枠部材3と、
前記一対の側枠部材3の上部間に配置される上枠部材4と、
前記一対の側枠部材3の下部間に配置される下枠部材5と、
前記一対の側枠部材3に対し前記上枠部材4及び下枠部材5を各々位置調整可能にそれぞれ連結する連結部材と、を備える、基礎の人通口補強構造
であって、
前記連結部材は、
前記側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5に少なくとも長孔4a・5aを介して各々位置調整可能に重ねられる連結プレート7と、
前記側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5を前記長孔4a・5aに各々通してそれぞれ固定するボルト8及びナット9とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の両側に一対の側枠部材3を各々取り付け、その上部間と下部間に上枠部材4及び下枠部材5を各々配置して、その上枠部材4及び下枠部材5を一対の側枠部材3に対し連結部材で各々位置調整しながらそれぞれ連結して、一対の側枠部材3とその間の上枠部材4及び下枠部材5とで囲まれた人通口7を形成することができる。
従って、基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の大きさの変化に対応することができて、基礎1の上に載る構造物に影響されない人通口補強構造を提供することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5に少なくとも長孔4a・5aを介して連結プレート7を各々位置調整しながら重ね、その長孔4a・5aにボルト8を各々通してナット9で側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5をそれぞれ固定することができる。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、例えば
図1から
図4に示すように、
請求項
1に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記連結プレート7は、
前記側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5の前記長孔4a・5aを設けていない枠部材3に対し丸孔3a・7aに通したボルト8にナット9を締め付けて固定されて、
前記側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5の前記長孔4a・5aを設けた枠部材4・5に対し前記長孔4a・5aに通したボルト8にナット9を締め付けて固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項
2に記載の発明によれば、側枠部材3に対し丸孔3a・7aに通したボルト8にナット9を締め付けて連結プレート7を固定して、上枠部材4または下枠部材5に対し長孔4a・5aに通したボルト8にナット9を締め付けて連結プレート7を固定することができる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、例えば
図3から
図5に示すように、
請求項1
又は2に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記側枠部材3は、前記基礎1の主筋1aを避けた位置に埋設固定したアンカーボルト11にナット12を締め付けて固定されることを特徴とする。
【0013】
請求
項3に記載の発明によれば、基礎1の主筋1aを避けた位置に埋設固定したアンカーボルト11にナット12を締め付けて側枠部材3を固定することができる。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図1から
図5に示すように、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の基礎の人通口補強構造において、
前記側枠部材3、上枠部材4及び下枠部材5は鉄板で形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項
4に記載の発明によれば、基礎1に形成される人通口6を側枠部材3、上枠部材4及び下枠部材5の鉄板による高い強度で四方を囲んで補強することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基礎に形成される人通口用の切り欠き部の大きさの変化に対応することができて、基礎の上に載る構造物に影響されない補強構造を提供することができる。
また、一対の側枠部材、上枠部材、下枠部材及び連結部材により、切り欠き部で離間する基礎のせん断力を基礎全体に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る基礎の人通口補強構造を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1の枠部材及び連結プレートの分解図である。
【
図3】
図1の人通口補強構造部の横断平面図である。
【
図4】
図1の人通口補強構造部の縦断正面図である。
【
図6】変形例の側枠部材と上枠部材との関係を示すもので、結合状態の平面図(a)と、分離状態の側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施形態)
図1は本発明に係る基礎の人通口補強構造を示すもので、1は布基礎、2は人通口形成枠である。
【0019】
図示のように、布基礎1に形成される人通口用の切り欠き部には、人通口形成枠2を取り付けて補強されている。この人通口形成枠2は、床下に潜って既設の布基礎を削り取って形成した切り欠き部に取り付けられるもので、例えば縦450mm×横(最小)780mmで幅110mm程度の大きさである。
人通口形成枠2は、鉄板(鋼板)製で、左右一対の側枠部材3と、上下で対をなす上枠部材4及び下枠部材5から構成されて、これら一対の側枠部材3とその間の上枠部材4及び下枠部材5とで囲まれた人通口6が形成される。この人通口6は、例えば縦300mm×横(最小)550mm程度の大きさである。
【0020】
そして、左右の側枠部材3に対し上枠部材4及び下枠部材5を各々位置調整可能にそれぞれ連結する連結部材が設けられている。
なお、連結部材は、側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5に少なくとも長孔を介して各々位置調整可能に重ねられる連結プレート7と、側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5を長孔に各々通してそれぞれ固定するボルト8及びナット9からなる。
【0021】
図2は枠部材3・4・5及び連結プレート7を分解したものである。
【0022】
図示のように、左右の側枠部材3の各々は、前面板、後面板、上面板、下面板及び側面板から形成されている。その前面板及び後面板の上下に、左右一対の丸孔3aがそれぞれ形成されて、側面板には、上下一対の丸孔3bがそれぞれ形成されている。この上下一対の丸孔3bは、側面板の略対角線上に配置されている。
【0023】
そして、上枠部材4は、前面板、後面板及び上面板から形成されている。その前面板及び後面板の左右に、横方向に長い一対の長孔4aがそれぞれ形成されている。
【0024】
また、下枠部材5は、前面板、後面板及び下面板から形成されている。その前面板及び後面板の左右に、横方向に長い一対の長孔5aがそれぞれ形成されている。
【0025】
連結プレート7は、二枚一組で合計八組用意され、その各々の左右に、左右一対の丸孔7aがそれぞれ形成されている。この左右一対の丸孔7aのピッチは、側枠部材3の左右一対の丸孔3aのピッチに対応する。
以上の連結プレート7は、四組のボルト8及びナット9で側枠部材3と上枠部材4または下枠部材5に結合される。
【0026】
図3及び
図4は人通口補強構造部を横断平面と縦断正面でそれぞれ示したもので、
図5は側枠部材3部を縦断側面で示したものである。
【0027】
図示のように、布基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の両側面の各々には、上下一対のアンカーボルト11が接着剤で埋設固定されている。この上下一対のアンカーボルト11は、布基礎1の主筋1aを避けた略対角線上の位置に配置されている。
なお、アンカーボルト11とは、いわゆる後施工アンカーを指しており、種々のものを採用できる。
【0028】
以上の上下一対のアンカーボルト11を、側枠部材3の側面板の丸孔3bに各々通して、そのアンカーボルト11にナット12をそれぞれ締め付けることで、布基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の両側面に側枠部材3をそれぞれ固定する。
【0029】
次に、左右の側枠部材3の間に上枠部材4及び下枠部材5を挿入し、側枠部材3の一対の丸孔3aの前後に連結プレート7を各々添わせて、その丸孔7a・3aにボルト8をそれぞれ通しておく。
【0030】
また、上枠部材4の長孔4aの前後にも連結プレート7を各々添わせて、その丸孔7a及び長孔4aにボルト8をそれぞれ通しておく。
【0031】
同様に、下枠部材5の長孔5aの前後にも連結プレート7を各々添わせて、その丸孔7a及び長孔5aにボルト8をそれぞれ通しておく。
【0032】
そして、ボルト8にナット9をそれぞれ締め付けることで、
図1に示したように、布基礎1に形成される人通口用の切り欠き部に対する人通口形成枠2の取り付けを完了する。
【0033】
以上、実施形態によれば、基礎1に形成される人通口用の切り欠き部の両側に一対の側枠部材3を各々取り付け、その上部間と下部間に上枠部材4及び下枠部材5を各々配置して、その上枠部材4及び下枠部材5を一対の側枠部材3に対し連結部材で各々位置調整しながらそれぞれ連結して、
図1に示すように、左右一対の側枠部材3とその間の上枠部材4及び下枠部材5とで囲まれた人通口6を形成することができる。
【0034】
すなわち、基礎1の主筋1aを避けた位置に埋設固定したアンカーボルト11にナット12を締め付けて左右の側枠部材3をそれぞれ固定し、その左右の側枠部材3に対し丸孔3a・7aに通したボルト8にナット9を締め付けて連結プレート7をそれぞれ固定して、上枠部材4または下枠部材5に対し長孔4a・5aに通したボルト8にナット9を締め付けて連結プレート7をそれぞれ固定する。
これにより、左右の側枠部材3と、その間の上枠部材4及び下枠部材5で囲まれた人通口6を形成することができる。
【0035】
従って、布基礎1に形成される人通口6用の切り欠き部の大きさの変化に対し、長孔4a・5aの長さにより対応することができて、布基礎1の上に載る構造物に影響されない人通口6の補強構造を提供することができる。
【0036】
そして、左右一対の側枠部材3、上枠部材4、下枠部材5及び連結部材(連結プレート7、ボルト8、ナット9)からなる人通口形成枠2により、切り欠き部で離間する布基礎1のせん断力を基礎全体に伝えることができる。
また、長孔4a・5aへのボルト箇所は、実施形態のように二つだと回転しないので、せん断力が有効に伝わるものとなっている。
【0037】
(変形例)
図6(a)及び(b)は変形例の側枠部材3と上枠部材4との関係を示すもので、図示
のように、側枠部材3は、側面板の中央に縦面板を有する横断面T字状で、上枠部材4は、上面板の中央に縦面板を有する縦断面T字状となっている。
そして、横断面T字状の側枠部材3中央の縦面板の上下に左右一対の丸孔3aが形成されて、縦断面T字状の上枠部材4中央の縦面板の左右に横方向に長い一対の長孔4aが形成されている。
【0038】
従って、左右の側枠部材3の間に上枠部材4を挿入し、側枠部材3中央の縦面板の一対の丸孔3aの前後に連結プレート7を各々添わせて、その丸孔7a・3aにボルト8をそれぞれ通しておく。
また、上枠部材4中央の縦面板の長孔4aの前後にも連結プレート7を各々添わせて、その丸孔7a及び長孔4aにボルト8をそれぞれ通しておく。
そして、ボルト8にナット9をそれぞれ締め付ける。
【0039】
なお、下枠部材5は、図示しないが、下面板の中央に縦面板を有する縦断面逆T字状とする。
【0040】
このように、側枠部材3、上枠部材4及び下枠部材5は、せん断力に耐えること、ねじれに耐えること、手作業でボルト・ナットを回すことを考えると、T字状断面の方が好ましい。
【0041】
なお、その他、側枠部材3、上枠部材4及び下枠部材5は、板面が縦方向のプレートや横H型断面でもよい。
【0042】
(他の変形例)
以上の実施形態においては、上枠部材及び下枠部材に長孔を各々形成して連結プレートとボルトナット結合する構造としたが、逆に、側枠部材に長孔を形成して連結プレートとボルトナット結合する構造としたり、連結プレートに長孔を形成して上枠部材及び下枠部材または/及び側枠部材にボルトナット結合する構造としてもよい。
また、側枠部材、上枠部材、下枠部材、及び連結プレートの形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0043】
以上の実施形態及び変形例で説明したように、連結部材である連結プレート7及びボルト8・ナット9と、長孔とはセットで用いられ、基礎の人通口補強構造における一対の側枠部材3と上枠部材4・下枠部材5との連結手段及び位置調整手段として機能する。また、以上において、位置調整とは、側枠部材3と上枠部材4との間隔、側枠部材3と下枠部材5との間隔を、人通口6用の切り欠き部の大きさに対応させて調整することを意味している。
【符号の説明】
【0044】
1 布基礎
1a 主筋
2 人通口形成枠
3 側枠部材
3a 丸孔
3b 丸孔
4 上枠部材
4a 長孔
5 下枠部材
5a 長孔
6 人通口
7 連結プレート
7a 丸孔
8 ボルト
9 ナット
11 アンカーボルト
12 ナット