(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽部が有する前記固定部は、前記入口開口部と前記出口開口部との間から、前記発熱部の重力方向上側に亘って延びており、前記加熱室の重力方向上側の内壁に固定されることを特徴とする請求項1、3から6のいずれか一項に記載の燃料加熱装置。
前記加熱室形成部は、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記発熱部に対して前記入口開口部とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(304)から、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記加熱手段の前記本体が固定される壁(305)とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(303)に亘り、断面が外側に凸の円弧状に形成された曲面部(310)を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料加熱装置。
前記加熱室形成部は、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記発熱部に対して前記入口開口部とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(304)と、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記加熱手段の前記本体が固定される壁(305)とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(303)とを接続すると共に、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記発熱部に対して前記入口開口部とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(304)、及び、前記入口開口部が形成された前記加熱室の内壁(301)に接続しつつ前記加熱手段の前記本体が固定される壁(305)とは反対側に位置する前記加熱室の内壁(303)に対して傾斜するように設けられた傾斜部(307)を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料加熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、図面の記載が煩雑になることを避けるため、1つの図面において、実質的に同一の複数の部材または部位には、複数のうち1つのみに符号を付す場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の燃料レール1は、内燃機関(以下、「エンジン」という)2の近傍に取り付けられる。エンジン2は、4つの気筒3を有する4気筒エンジンである。各気筒3には、燃焼室4が形成されている。エンジン2は、例えばエタノール等のアルコール燃料、または、アルコールとガソリンとの混合燃料を燃料として駆動する。各燃焼室4には、吸気ポート5が接続されており、当該吸気ポート5を経由して燃焼室4に吸気が導入される。吸気ポート5は、インテークマニホールド6に形成されている。
【0012】
吸気ポート5のそれぞれに燃料噴射弁10が設けられる。すなわち、燃料噴射弁10は、4つ設けられる。燃料噴射弁10は、噴孔11が吸気ポート5内に露出するよう設けられる。燃料噴射弁10の噴孔11から吸気ポート5内に噴射される燃料は、霧状となって吸気とともに燃焼室4に導入され、燃焼室4で燃焼する。
本実施形態では、燃料レール1は、燃料噴射弁10とともに、エンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられ、燃料供給源としての燃料タンク7から供給される燃料を燃料噴射弁10に分配する。
【0013】
燃料レール1は、レール本体20、および、燃料加熱装置100等を備えている。
図1、2に示すように、レール本体20は、上部材21および下部材22からなる。
上部材21および下部材22は、例えば、所定の板厚の金属板をプレス加工等の塑性変形加工をすることにより形成されている。上部材21および下部材22は、長尺状に形成されている。ここで、上部材21と下部材22との長手方向の長さ、および、短手方向の長さは、概ね同じである。
【0014】
上部材21は、一方の面側から他方の面側へ凹む凹部を有している。また、下部材22も、一方の面側から他方の面側へ凹む凹部を有している。
下部材22は、上部材21に対し長手方向および短手方向が対応するよう、かつ、凹部が上部材21の凹部に対向するよう上部材21に接合している。これにより、上部材21の凹部と下部材22の凹部との間に燃料流路200が形成されている。この燃料流路200を燃料タンク7から供給される燃料が流れる。
【0015】
また、レール本体20には、長手方向に略等間隔で、4個の凸部23が形成されている。凸部23は、レール本体20の長手方向に対し垂直な方向に突出している。4個の凸部23は、そこに固定される4個の燃料加熱装置100及び4個の燃料噴射弁10に対応して形成されている。
【0016】
上部材21には、長手方向の一端に燃料入口24が形成されている。燃料入口24は、上部材21の一方の面と他方の面とを接続するよう、すなわち、上部材21を板厚方向に貫くよう形成されている。
【0017】
レール本体20(上部材21)の燃料入口24には、インレットパイプ25の一端が接続される。インレットパイプ25の他端には、燃料タンク7から延びる燃料供給路8が接続される(
図1参照)。燃料供給路8の燃料タンク7とインレットパイプ25との間には、燃料ポンプ9が設けられている。燃料ポンプ9は、燃料タンク7内の燃料を吸引し吐出する。燃料ポンプ9が作動すると、燃料タンク7内の燃料が燃料供給路8を経由してインレットパイプ25へ圧送される。これにより、燃料タンク7からの燃料が燃料流路200に流入する。
【0018】
本実施形態では、燃料加熱装置100は、レール本体20の凸部23に取り付けられるよう、レール本体20の長手方向に沿って複数が略等間隔で設けられている。燃料加熱装置100は、取り付けられる燃料噴射弁10に対応するよう4つ設けられており、燃料タンク7からレール本体20の燃料流路200を経由して供給される燃料を加熱して燃料噴射弁10に導くものである。
【0019】
図3〜6に示すように、燃料加熱装置100は、加熱室形成部30、入口開口部33、出口開口部34、加熱手段60および遮蔽部70等を備えている。
加熱室形成部30は、上部材40および下部材50から構成される。
上部材40および下部材50は、例えば、所定の板厚の金属板をプレス加工や深絞り加工等の塑性変形加工をすることにより形成されている。
上部材40は、一方の面側から他方の面側へ凹む上凹部41を有している。下部材50は、一方の面側から他方の面側へ凹む下凹部51を有している。
【0020】
加熱室形成部30は、上部材40の上凹部41と下部材50の下凹部51とが対向するよう、上部材40と下部材50とを接合することにより形成されている。上部材40と下部材50との接合面は筒状に形成されている。本実施形態では、上部材40と下部材50とは、例えばろう付けにより接合されている。これにより、加熱室形成部30の上凹部41と下凹部51との間に、所定の容積の加熱室300が形成される。
【0021】
加熱室形成部30は、加熱室300を形成する略平面状の壁面として、第1壁面301、第2壁面302、第3壁面303、第4壁面304、第5壁面305および第6壁面306を有している。
第1壁面301は、上部材40の上凹部41の底に形成されている。第6壁面306は、第1壁面301に対向し、下部材50の下凹部51の底に形成されている。
第2壁面302、第3壁面303、第4壁面304および第5壁面305は、第1壁面301および第6壁面306に対して略垂直に設けられ、第1壁面301と第6壁面306とを接続する。
第5壁面305に、加熱手段60が取り付けられる。第5壁面305に向き合うのが第3壁面303である。第2壁面302は、第3壁面303に接続し、レール本体側に位置する。第4壁面304は、第5壁面305に接続し、反レール本体側に位置する。
【0022】
図4に示すように、本実施形態では、加熱室形成部30は、加熱室300を形成する曲面状の壁面として、第1曲面部310および第2曲面部320を有している。第1曲面部310は、加熱室300内の特定の点Pを中心とする円弧に沿うよう形成され、第3壁面303と第4壁面304とを接続している。
第2曲面部320は、加熱室300内の特定の点Qを中心とする円弧に沿うよう形成され、第2壁面302と第5壁面305とを接続している。第2曲面部320は、断面が外側に凸の円弧状に形成され、後述する第2筒部32の周囲に設けられている。加熱室形成部30に第1曲面部310及び第2曲面部320を設けることにより、加熱室300の容積を小さくし、燃料の加熱効率を高めることができる。
本実施形態の第1曲面部310は、特許請求の範囲に記載の「曲面部」の一例に相当する。また、本実施形態の第2曲面部320は、特許請求の範囲に記載の「容積縮小部」の一例に相当する。
【0023】
加熱室形成部30は、第2曲面部320の外気側に、燃料噴射弁10のコネクタ13に嵌合する外部コネクタ14(
図4参照)に当接可能な鍔37を有する。
図6に示すように、加熱室形成部30が有する鍔37は、燃料噴射弁10の中心軸Ocを挟んで外部コネクタ14の左右2カ所A,Bに当接可能である。これにより、加熱室形成部30に第2曲面部320を設けた場合でも、加熱室形成部30が有する鍔37は、燃料噴射弁10が軸周りに回転することを防ぐことが可能である。
なお、仮に、外部コネクタ14が燃料噴射弁10のコネクタ13の内側に嵌合するものである場合、加熱室形成部30が有する鍔37は、燃料噴射弁10のコネクタ13に当接可能な位置に設けてもよい。
【0024】
本実施形態では、燃料加熱装置100は、第1筒部31および第2筒部32をさらに備えている。
第1筒部31は、上部材40と同じ材料により筒状に形成されている。第1筒部31は、加熱室300外に位置し、一端が上部材40に接続するよう上部材40と一体に形成されている。
入口開口部33は、上部材40の上凹部41の第1筒部31の一端に対応する位置に形成されている。入口開口部33は、第1壁面301上に位置している。
【0025】
第2筒部32は、下部材50と同じ材料により有底筒状に形成されている。第2筒部32は、加熱室300内に位置している。本実施形態では、第2筒部32は、例えば深絞り加工により下部材50と一体に形成され、第6壁面306から加熱室300内に延びている。
出口開口部34は、第2筒部32の第6壁面306とは反対側の端部に形成されている。このように、第2筒部32は、一端(底部側の端部)に出口開口部34が形成され、他端(底部とは反対側の端部)が加熱室形成部30の下部材50に接続するよう加熱室300内に設けられている。ここで、第2筒部32は、特許請求の範囲における「筒部」に対応している。
【0026】
出口開口部34は、第2筒部32の軸Axに対し第2壁面302側に位置するよう形成されている。すなわち、出口開口部34は、第2壁面302の近傍に形成されている。
また、出口開口部34は、加熱室300を形成する壁面のうち互いに対向する第1壁面301と第6壁面306との間の距離の1/2の位置よりも第1壁面301側に寄った位置に形成されている。すなわち、第2筒部32の底部に形成された出口開口部34は、加熱室300の全体の高さの1/2よりも高い所に位置している。
【0027】
入口開口部33と出口開口部34とは、互いに対向するのを避けた位置に形成されている。また、入口開口部33および出口開口部34は、互いに所定距離以上離れるよう形成されている。
図4に示すように、入口開口部33と出口開口部34はいずれも、燃料加熱装置100が車両に搭載された状態で、後述する発熱部62より所定距離h1、h2分、重力方向上側に位置している。
【0028】
加熱室形成部30は、第1筒部31の他端側がレール本体20の燃料流路200内に位置するよう、上部材40がレール本体20の凸部23(下部材22)に接合されている。これにより、レール本体20の燃料流路200内の燃料は、第1筒部31の他端側の開口部、内側、および、入口開口部33を経由して加熱室300内に流入する。本実施形態では、加熱室形成部30(上部材40)とレール本体20(下部材22)とは、例えばろう付けにより接合されている。
【0029】
第2筒部32の内側には、燃料噴射弁10の噴孔11とは反対側の端部が接続される。そのため、加熱室300内の燃料は、出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に導かれる。
【0030】
加熱手段60は、本体61、発熱部62およびホルダ63を有している。
本体61は、略円筒状に形成されている。発熱部62は、例えば金属により棒状、より具体的には長い円柱状に形成されている。発熱部62は、本体61と同軸となるよう本体61に設けられている。発熱部62は、電力を供給されることにより発熱する。これにより、発熱部62は、周囲の媒体(気体または液体等)を加熱することができる。
【0031】
ホルダ63は、例えば金属により略円筒状に形成され、加熱室形成部30の上部材40に形成された開口部に一端が接続するよう上部材40に設けられている。ホルダ63と上部材40とは、例えばろう付けにより接続されている。
【0032】
本体61は、発熱部62が加熱室300内に位置するようホルダ63の内側に設けられている。すなわち、加熱手段60は、発熱部62が加熱室300内に位置するよう加熱室形成部30に設けられている。これにより、加熱手段60は、加熱室300内の燃料を発熱部62により加熱可能である。
【0033】
ここで、上述の特定の点Pは、発熱部62と出口開口部34との間に位置している(
図6参照)。また、加熱手段60は、発熱部62の軸が第1壁面301および第6壁面306に対し傾斜するよう加熱室形成部30に設けられている。また、本体61とホルダ63との間は、液密に保持されている。
【0034】
図1、2に示すように、本実施形態では、4つの加熱手段60は、それぞれ、長手方向が、「レール本体20の長手方向および凸部23の突出方向を含む仮想平面」に対し傾斜するよう設けられている。すなわち、加熱手段60は、本体61の軸が前記仮想平面に対し傾斜するよう設けられている。また、4つの加熱手段60は、それぞれの本体61の軸が互いに略平行になるよう、加熱室形成部30に設けられている。
【0035】
図3〜6に示すように、遮蔽部70は、例えば、所定の板厚の金属板を折り曲げ加工等の塑性変形加工することにより形成されている。
遮蔽部70は、固定部71、遮蔽部本体72及び流路形成部73を有する。
固定部71は、加熱室300の重力方向上側に位置する内壁である第1壁面301に固定される。固定部71は、入口開口部33と出口開口部34との間から、発熱部62の重力方向上側に亘って延びており、第1壁面301に対し、例えばろう付けにより固定される。固定部71と第1壁面301との接合面積を大きくすることで、エンジン2又は車両の振動などにより固定部71が第1壁面301から脱落することが防がれる。
【0036】
遮蔽部本体72は、固定部71から加熱室300の重力方向下側の内壁へ向けて延びる。遮蔽部本体72は、加熱室300をその遮蔽部本体72よりも入口開口部33側の予備加熱空間400と、遮蔽部本体72よりも出口開口部34側の本加熱空間500とに仕切るものである。なお、第2壁面302、第4壁面304および第6壁面306と、遮蔽部本体72との間には、燃料が流れる隙間があけられている。遮蔽部本体72は、入口開口部33と出口開口部34とを結ぶ仮想直線に対して交差するように設けられる。そのため、遮蔽部本体72は、入口開口部33から出口開口部34へ向けて直線状に流れる燃料の流れを遮り、加熱室300内の燃料の流れに乱れを発生させることが可能である。
遮蔽部本体72は、入口開口部33と出口開口部34との間で固定部71から第6壁面306の近傍まで延びる第1部分721と、固定部71から発熱部62の近傍まで延びる第2部分722を有する。
図4では、第1部分721と第2部分722の境界を概念的に破線Bで示しているが、これらは一体のものである。
【0037】
流路形成部73は、遮蔽部本体72のうち発熱部62に対応する位置に設けられ、燃料の流れる流路を形成する。流路形成部73は、遮蔽部本体72の第4壁面304側、および遮蔽部本体72の第6壁面306側が切り欠かれている。
加熱手段60の発熱部62は、流路形成部73を通過し、本加熱空間500と予備加熱空間400に亘って配置されている。発熱部62は、予備加熱空間400の燃料を加熱すると共に、その予備加熱空間400から本加熱空間500へ流入した燃料を本加熱空間500でさらに加熱することが可能である。予備加熱空間400から流路形成部73を通過して本加熱空間500に流れる燃料は、発熱部62に接触し、又は、発熱部62の近傍を流れることで効率よく加熱される。
【0038】
また、上述した加熱室形成部30の第1曲面部310は、発熱部62に対して入口開口部33とは反対側に位置する第4壁面304から、加熱手段60の本体61が固定される第5壁面305とは反対側に位置する第3壁面303に亘り、断面が外側に凸の円弧状に形成されている。これにより、第4壁面304と第3壁面303との接合箇所で燃料が渦を形成することが防がれる。したがって、燃料は、第1曲面部310に沿って、流路形成部73の外側を発熱部62に接触して流れ、又は発熱部62の近傍を流れる。
【0039】
図1、2に示すように、本実施形態では、燃料レール1は、取付部材90をさらに備えている。
取付部材90は、本体91および取付部92を有している。
本体91は、例えば金属により長尺の板状に形成されている。取付部92は、本体91の長手方向の2箇所に形成されている(
図2参照)。
【0040】
取付部材90は、本体91が、4つの加熱室形成部30の下部材50に接合するよう設けられている。取付部材90と加熱室形成部30(下部材50)とは、例えばろう付けにより接合されている。
取付部92は、取付部92が有する穴部に例えばボルト等の締結部材が通されて、エンジン2近傍のインテークマニホールド6に固定される。これにより、燃料レール1は、インテークマニホールド6に取り付けられる。
【0041】
本実施形態では、燃料加熱装置100(燃料レール1)は、入口開口部33が加熱室300の重力方向上側に位置するよう、インテークマニホールド6に取り付けられる。このとき、発熱部62は、入口開口部33および出口開口部34に対し重力方向下側に位置している。すなわち、本実施形態では、入口開口部33および出口開口部34は、燃料加熱装置100(燃料レール1)がインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、発熱部62に対し重力方向上側に位置するよう形成されている。
また、出口開口部34は、燃料加熱装置100がエンジン2近傍のインテークマニホールド6に取り付けられた状態において、加熱室300の重力方向の長さの1/2の位置よりも重力方向上側の位置に形成されている。
【0042】
図1に示すように、本実施形態では、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)12をさらに備えている。ECU12は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM、および、入出力手段等を有する小型のコンピュータである。ECU12は、車両の各部に取り付けられたセンサ類からの信号等に基づき、ROMに格納されたプログラムに従って処理を行い、車両各部の装置等を制御する。
【0043】
本実施形態では、ECU12は、エンジン2の始動時、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下の場合、燃料噴射弁10から燃料の噴射を開始する前に、燃料のプレヒート(予熱)を行う。このとき、加熱室300には、レール本体20の燃料流路200および入口開口部33を経由して、燃料タンク7からの燃料が流入しているものとする。
【0044】
ECU12は、プレヒートにおいて、加熱手段60に電力を供給し、発熱部62を発熱させる。これにより、加熱室300内の発熱部62近傍の燃料が加熱される。発熱部62により加熱された燃料は、重量が変化し、本加熱空間500の重力方向上側に滞留する。発熱部62により加熱室300内の燃料が十分に加熱されると、プレヒートが完了する。
【0045】
ECU12は、プレヒートの完了後、燃料噴射弁10に燃料の噴射を指示する。これにより、加熱室300に滞留した温度の高い燃料が出口開口部34を経由して燃料噴射弁10に導かれ、噴孔11から吸気ポート5内に噴射され、エンジン2の燃焼室4に供給される。このとき噴射される燃料は、温度が高いため、着火性が向上している。よって、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下であっても、エンジン2を始動させることができる。
【0046】
ECU12は、エンジン2の始動後も、燃料のアルコール濃度が所定値以上で、かつ、環境温度が所定値以下の場合、加熱手段60に継続的に電力を供給し、加熱室300内の燃料を加熱する。そのため、発熱部62により加熱された温度の高い燃料が燃料噴射弁10から噴射される。
【0047】
以上説明した第1実施形態の燃料レール1は、次の作用効果を奏する。
(1)第1実施形態では、燃料加熱装置100が備える遮蔽部70は、入口開口部33と出口開口部34との間に設けられ、入口開口部33から出口開口部34へ直線状に流れる燃料の流れを遮る。
これにより、加熱室300内の燃料の流れに乱れが発生し、加熱室300内での燃料の滞在時間が長くなる。したがって、燃料が発熱部62に接触する機会が増え、又は燃料が発熱部62の近傍を流れる機会が増えるので、燃料加熱装置100は、加熱効率を向上することができる。
また、遮蔽部70によって加熱室300を仕切ることにより、発熱部62により加熱された燃料を、出口開口部34の周囲に滞留させることが可能である。
【0048】
(2)第1実施形態では、燃料加熱装置100が車両に搭載された状態で、出口開口部34は、発熱部62よりも重力方向上側に位置している。
これにより、発熱部62により加熱された燃料は、加熱室300を重力方向上側に移動するので、燃料加熱装置100は、加熱された燃料を出口開口部34から燃料噴射弁10に導くことができる。
【0049】
(3)第1実施形態では、燃料加熱装置100が車両に搭載された状態で、入口開口部33は、発熱部62よりも重力方向上側に位置している。
また、遮蔽部70は、加熱室300の重力方向上側の第1壁面301に固定され、そこから重力方向下側の第6壁面306へ向けて延びている。
これにより、入口開口部33から加熱室300に導かれた燃料は、遮蔽部本体72により、入口開口部33から出口開口部34への流れを遮蔽される。そのため、燃料加熱装置100は、加熱室300内の燃料の流れに乱れを発生することができる。
【0050】
(4)第1実施形態では、遮蔽部70は、固定部71、遮蔽部本体72および流路形成部73を有する。流路形成部73は、遮蔽部本体72のうち発熱部62に対応する位置に設けられ、予備加熱空間400と本加熱空間500とを連通する流路を形成する。
これにより、遮蔽部70は、予備加熱空間400から流路形成部73を経由して本加熱空間500へ燃料を流すことにより、発熱部62に燃料が接触する機会を増やし、又は発熱部62の近傍を燃料が流れる機会を増やすことができる。
【0051】
(5)第1実施形態では、発熱部62は、流路形成部73を通過して、本加熱空間500から予備加熱空間400に亘って設けられる。
これにより、発熱部62は、予備加熱空間400の燃料を加熱すると共に、その予備加熱空間400から本加熱空間500へ流入した燃料をさらに加熱することが可能である。
【0052】
(6)第1実施形態では、遮蔽部70が有する固定部71は、入口開口部33と出口開口部34との間から、発熱部62の重力方向上側に亘って延びており、加熱室300の重力方向上側の内壁である第1壁面301に固定される。
これにより、遮蔽部70が有する固定部71と第1壁面301との接合面積を大きくすることが可能である。そのため、エンジン2又は車両の振動などにより、固定部71が第1壁面301から脱落することを防ぐことができる。
【0053】
(7)第1実施形態では、加熱室形成部30は、第3壁面303から第4壁面304に亘り、断面が外側に凸の円弧状に形成された第1曲面部310を有する。
これにより、入口開口部33から加熱室300に導入された燃料は、第4壁面304と第3壁面303との接続箇所で渦を形成することなく、流路形成部73の外側を発熱部62に向かって流れる。そのため、燃料が発熱部62に接触する機会が増え、又は燃料が発熱部62の近傍を流れる機会が増えるので、燃料加熱装置100は、加熱効率を向上することができる。
【0054】
(8)第1実施形態では、第6壁面306から加熱室300内に筒状に延び、加熱室300内の端部に出口開口部34が形成される第2筒部32を備える。
これにより、加熱室300の容積を小さくすることで、燃料の加熱効率を高めることができる。また、燃料噴射弁10の端部を第2筒部32の内側に取り付けることで、燃料噴射弁10を接続した状態の燃料加熱装置100と燃料噴射弁10とを合わせた体格を小型化することができる。
【0055】
(9)第1実施形態では、加熱室形成部30は、第2筒部32の周囲に形成された第2曲面部320を有する。
これにより、加熱室300の容積を小さくすることで、燃料の加熱効率を高めることができる。
【0056】
(10)第1実施形態では、加熱室形成部30は、第2曲面部320の外気側に、燃料噴射弁10のコネクタ13に嵌合する外部コネクタ14に当接可能な鍔37を有する。
これにより、加熱室形成部30に第2曲面部320を形成した場合でも、鍔37を設けることにより、燃料噴射弁10が軸周りに回転することを防ぐことができる。
【0057】
(11)第1実施形態では、燃料レールは、上述した燃料加熱装置100を備える。
この燃料レールは、複数の燃料噴射弁10に対し、十分に加熱された燃料を分配供給することができる。
【0058】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を
図7〜10に示す。第2実施形態の燃料加熱装置100が備える加熱室形成部30は、第3壁面303と第4壁面304とを接続する第7壁面307を有する。第7壁面307は、第3壁面303と第4壁面304に対して傾斜して設けられる。また、第7壁面307は、略平面状に形成される。
第2実施形態の第7壁面307は、特許請求の範囲に記載の「傾斜部」の一例に相当する。
燃料加熱装置100は、加熱室形成部30に第7壁面307を設けることにより、加熱室300の容積を小さくし、燃料の加熱効率を高めることができる。また、燃料加熱装置100は、第7壁面307により、第4壁面304と第3壁面303との接合箇所で燃料の渦が形成されるのを防ぐことができる。
【0059】
第2実施形態では、第7壁面307により、予備加熱空間400の容積が小さくなる。そのため、加熱手段60の発熱部62は、その大部分が本加熱空間500に配置され、予備加熱空間400に配置される部分が小さいものとなる。しかし、予備加熱空間400から流路形成部73を通過して本加熱空間500に流れる燃料は、発熱部62に接触し、又は、発熱部62の近傍を流れるので、燃料加熱装置100は、加熱室300の燃料を効率よく加熱することが可能である。
第2実施形態では、燃料加熱装置100は、第7壁面307により、第1実施形態よりも加熱室300の容積を小さくすることで、燃料の加熱効率を高めることができる。
【0060】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を
図11に示す。第3実施形態では、遮蔽部70が有する流路形成部73が、加熱手段60の発熱部62の周りに円形の流路として形成されている。
加熱手段60の発熱部62は、その円形の流路形成部73を通過し、本加熱空間500と予備加熱空間400に亘って配置されている。予備加熱空間400から流路形成部73を通過して本加熱空間500に流れる燃料は、発熱部62に接触し、又は、発熱部62の近傍を流れることで効率よく加熱される。
第3実施形態では、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、筒部(第2筒部32)は、加熱室形成部30と別体に形成されることとしてもよい。
【0062】
また、本発明の他の実施形態では、加熱室形成部30は、上部材40と下部材50とが一体に形成されることにより形成されていてもよい。また、加熱室形成部30は、例えば切削加工等、プレス加工以外の方法により形成されていてもよい。また、加熱室形成部30は、どのような形状に形成されていてもよい。
【0063】
また、本発明の他の実施形態では、入口開口部33は、加熱室300を形成する壁面のうち、どの壁面に形成されていてもよく、下部材50に形成されていてもよい。また、本発明の他の実施形態では、第1筒部31を備えないこととしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部34とは反対側の端部が上部材40に接続するよう設けられていてもよい。
【0064】
また、本発明の他の実施形態では、入口開口部33と出口開口部34とは、互いに対向する位置に形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部34は、加熱室300を形成する壁面のうち互いに対向する第1壁面301と第6壁面306との間の距離の1/2の位置、または、当該位置よりも第6壁面306側に寄った位置に形成されていてもよい。
【0065】
また、本発明の他の実施形態では、出口開口部34は、燃料加熱装置100がエンジン2またはその近傍に取り付けられた状態において、加熱室300の垂直方向の長さの1/2の位置、または、当該位置よりも重力方向下側の位置に形成されていてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、取付部材90を加熱室形成部30の下部材に接合し、燃料加熱装置100(燃料レール)をインテークマニホールドに取り付ける例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、取付部材90を、例えば加熱室形成部30の上部材40等、下部材50以外の部位に接合することとしてもよい。また、本発明の他の実施形態では、取付部材90を備えず、燃料加熱装置(燃料レール)を、エンジン2またはその近傍に直接取り付けることとしてもよい。
【0067】
また、本発明の他の実施形態では、加熱手段60の本体61、発熱部62およびホルダ63は、どのような形状に形成されていてもよい。また、ホルダ63は、加熱室形成部30と一体に形成されていてもよい。また、加熱手段60は、本体61およびホルダ63を備えていなくてもよい。
【0068】
また、本発明の他の実施形態では、レール本体20は、上部材21と下部材22とが一体に形成されることで形成されていてもよい。また、レール本体21は、例えば切削加工等、プレス加工以外の方法により形成されていてもよい。また、レール本体21は、内側に燃料流路200を有し、長尺状に形成されるのであれば、例えばパイプ状の部材等、どのような部材により形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、各部材同士をろう付けにより接合する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、各部材同士を、例えば溶接等、ろう付け以外の方法により接合することとしてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、燃料レール1を、燃料噴射弁10の噴孔が吸気ポート内に露出するようインテークマニホールド6に取り付ける例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、燃料レール1を、例えば燃料噴射弁10の噴孔11がエンジン2の燃焼室4に露出するよう、すなわち、直噴式のエンジン2に取り付けることとしてもよい。
【0070】
また、本発明の他の実施形態では、加熱室形成部30および加熱手段60は、エンジン2に取り付けられる燃料噴射弁10の数に応じて、任意の数設けることができる。すなわち、本発明は、任意の気筒数のエンジン2に適用することができる。例えば、本発明の燃料加熱装置100を単気筒のエンジンに適用することもできる。この場合、加熱室形成部30および加熱手段60はそれぞれ1つ設けられ、レール本体20は不要である。
【0071】
また、本発明は、エタノール等のアルコール燃料、または、アルコールとガソリンとの混合燃料を燃料とするエンジン2に限らず、ガソリンを燃料とするエンジン2にも適用することができる。この場合、環境温度が低くても、燃料加熱装置100による燃料の加熱により、燃料の粘度が低下し、噴霧の粒度を小さくできる。よって、燃焼室4での燃料の着火性を向上できる。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。