特許第6371172号(P6371172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371172
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/418 20060101AFI20180730BHJP
   G11C 8/08 20060101ALI20180730BHJP
   G11C 11/417 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   G11C11/418 110
   G11C8/08
   G11C11/417 100
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-183300(P2014-183300)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-58114(P2016-58114A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄一郎
【審査官】 酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−038673(JP,A)
【文献】 特開2002−042459(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0011883(US,A1)
【文献】 特開2008−071462(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0068915(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0110776(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0007861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/41 − 11/419
G11C 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に設けられた複数のメモリセルと、
メモリセル行にそれぞれ対応して設けられた複数のワード線と、
前記メモリセルのデータを保持するために設けられるメモリセル用の第1の電源と、
前記第1の電源と独立に投入され、前記メモリセルと電気的に接続される周辺回路のために設けられた第2の電源と、
前記第1の電源の投入に従って動作する、前記複数のワード線を固定するためのワード線固定回路とを備え、
前記メモリセルは、対応するワード線と接続され、前記メモリセルのデータの読出あるいは書込を実行するためのアクセストランジスタを含み、
前記ワード線固定回路は、
前記複数のワード線にそれぞれ対応して設けられ、対応するワード線と固定電位との間に設けられた複数の固定トランジスタと、
前記第2の電源の投入に応じた信号の入力に従って、前記複数の固定トランジスタを制御する固定制御回路とを含み、
前記固定制御回路は、前記第1の電源の投入に従って前記第2の電源が投入されていない場合に前記複数の固定トランジスタを導通させる、半導体記憶装置。
【請求項2】
アドレス信号に従ってワード線を選択するデコーダと、
前記複数のワード線にそれぞれ対応して設けられ、対応するワード線を駆動する複数のワード線ドライバとをさらに備え、
前記デコーダは、前記第2の電源が投入された場合には非選択信号を前記複数のワード線ドライバにそれぞれ出力し、
各前記ワード線ドライバは、前記第2の電源が投入された場合には前記非選択信号に従って前記対応するワード線を前記固定電位に設定する、請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記複数のワード線ドライバと接続され、前記ワード線を駆動するための電圧を供給するドライバ用電源線をさらに備え、
前記ワード線固定回路は、前記第2の電源の投入に応じた信号の入力に従って、前記ドライバ用電源線を駆動する電源線駆動回路をさらに含む、請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記電源線駆動回路は、前記第2の電源が投入された場合に前記第1の電源を前記ドライバ用電源線に供給する、請求項3記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記電源線駆動回路は、前記第2の電源が投入されるまでは前記ドライバ用電源線を前記固定電位に設定する、請求項3または4記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記固定制御回路は、前記第2の電源が投入された場合に前記複数の固定トランジスタを非導通に設定する、請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記固定制御回路は、複数の入力ノードを有し、
一方の入力ノードは、前記第2の電源の投入に応じた信号を受け付け、
他方の入力ノードは、前記第2の電源の投入に応じた信号を遅延させる遅延経路と接続され、
前記第2の電源が投入された場合には、前記遅延経路により遅延した信号に基づいて前記複数の固定トランジスタを非導通に設定する、請求項6記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
行列状に設けられた複数のメモリセルと、
メモリセル行にそれぞれ対応して設けられた複数のワード線と、
前記メモリセルのデータを保持するために設けられるメモリセル用の第1の電源と、
前記第1の電源と独立に投入され、前記メモリセルと電気的に接続される周辺回路のために設けられた第2の電源と、
前記第1の電源の投入に従って動作する、前記複数のワード線を固定するためのワード線固定回路とを備え、
前記第2の電源が投入されていない場合に前記第1の電源が投入された場合には、前記メモリセルと前記周辺回路との間に電位差が形成され、
前記メモリセルは、対応するワード線と接続され、前記メモリセルのデータの読出あるいは書込を実行するためのアクセストランジスタを含み、
前記ワード線固定回路は、
前記複数のワード線にそれぞれ対応して設けられ、対応するワード線と固定電位との間に設けられた複数の固定トランジスタと、
前記第2の電源の投入に応じた信号の入力に従って、前記複数の固定トランジスタを制御する固定制御回路とを含み、
前記固定制御回路は、前記第1の電源の投入に従って前記第2の電源が投入されていない場合に前記複数の固定トランジスタを導通させる、半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体記憶装置に関し、特に、メモリアレイと周辺回路との電源を分離した半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、SRAM(Static Random Access Memory)では、スタンバイ電流の低減化が進められている。あるSRAMでは、メモリアレイのメモリセル用の電源電圧と周辺回路用の電源電圧とを別々に供給し、周辺回路用の電源電圧をスタンバイ時に遮断することにより、スタンバイ電流の低減化を図っている(特許文献1)。
【0003】
また、動作中にメモリアレイの電源電圧は高く保ったまま、周辺回路の電源電圧を低くすることで、データ保持特性を保ちつつ動作電力を削減する方式も採用されている。
【0004】
メモリアレイのメモリセル用電源と周辺回路用の電源電圧の2電源を持つ場合には、一般的に電源の投入順に制約が設けられている。
【0005】
たとえば、電源の投入順として、先に周辺回路用の電源電圧を投入してから、メモリアレイのメモリセル用電源を投入する制約が設けられている。
【0006】
当該制約を守らない場合には、投入順序に従って電源間に貫通電流が流れたり、誤動作、故障等の不具合が生じる可能性がある。
【0007】
したがって、当該電源の投入順は、SRAMの仕様として決められていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−293594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、当該電源の投入順の制約は、回路設計者にとって不要な負担や改良を強いることになる。
【0010】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電源の投入順によらずに、不具合を生じさせない半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施例によれば、半導体記憶装置は、行列状に設けられた複数のメモリセルと、メモリセル行にそれぞれ対応して設けられた複数のワード線とを備える。さらに、半導体記憶装置は、メモリセルのデータを保持するために設けられるメモリセル用の第1の電源と、第1の電源と独立に投入され、メモリセルと電気的に接続される周辺回路のために設けられた第2の電源と、第1の電源の投入に従って動作する、複数のワード線を固定するためのワード線固定回路とを備える。メモリセルは、対応するワード線と接続され、メモリセルのデータの読出あるいは書込を実行するためのアクセストランジスタを含む。ワード線固定回路は、複数のワード線にそれぞれ対応して設けられ、対応するワード線と固定電位との間に設けられた複数の固定トランジスタと、第2の電源の投入に応じた信号の入力に従って、複数の固定トランジスタを制御する固定制御回路とを含む。固定制御回路は、第1の電源の投入に従って第2の電源が投入されていない場合に複数の固定トランジスタを導通させる。
【発明の効果】
【0013】
一実施例によれば、電源の投入順によらずに、不具合を生じさせない半導体記憶装置を実現させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に基づく半導体記憶装置の外観構成図である。
図2】実施形態に基づくメモリアレイMAおよび周辺回路の構成を説明する図である。
図3】実施形態に基づく電源投入時の電位レベルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、実施形態に基づく半導体記憶装置の外観構成図である。
図1に示されるように、半導体記憶装置は、ドライバ&デコーダ17と、メモリアレイMAと、制御部19と、I/O回路2とを含む。なお、デコーダは、アドレスデコーダを簡略化したものである。
【0017】
制御部19は、半導体記憶装置の各機能ブロックを制御する。具体的には、制御部19は、アドレス信号の入力に基づいてロウアドレス信号をドライバ&デコーダ17に出力する。また、制御部19は、I/O回路2を駆動するための各種の信号を出力する。
【0018】
メモリアレイMAは、行列状に配置された複数のメモリセルを有する。メモリアレイMAのメモリセルは、書き換え可能に設けられる。
【0019】
ドライバ&デコーダ17は、メモリアレイMAの行列状に配置されたメモリセルのメモリセル行にそれぞれ対応して設けられたワード線WLを駆動する。
【0020】
I/O回路2は、メモリアレイMAの入出力回路として設けられる。
図2は、実施形態に基づくメモリアレイMAおよび周辺回路の構成を説明する図である。
【0021】
図2に示されるように、本例においては、メモリアレイMAのメモリセル用の電源SVDDと、周辺回路用の電源VDDに分離されたデュアルレールSRAMの構成について説明する。
【0022】
メモリアレイMAは、行列状に配置された複数のメモリセル1を有する。各メモリセル1は、書き換え可能に設けられたSRAM(Static Random Access Memory)セルである。本例においては、2つのアクセストランジスタATT,ATBと、6トランジスタのSRAMセルとが示されている。SRAMセルの詳細については公知であるためその詳細な説明については省略する。アクセストランジスタATT,ATBは、対応するワード線WLと電気的に接続されている。アクセストランジスタATT,ATBは、メモリセル1のデータ読出あるいはデータ書込を実行する際に活性化されたワード線WLに従って導通する。
【0023】
メモリセル1には、メモリセル用の電源SVDDと、接地電圧(固定電圧)VSSと電気的に接続される。本例においては、2行2列のメモリセルが示されている。
【0024】
メモリアレイMA1のメモリセル行にそれぞれ対応して複数のワード線WLが設けられる。
【0025】
また、メモリアレイMA1のメモリセル列にそれぞれ対応して複数のビット線対が設けられる。本例においては、2列のメモリセル列が示されている。2列のメモリセル列に対応して設けられた2個のビット線対が設けられる。具体的には、ビット線BT<0>,BB<0>、BT<1>,BB<1>が示されている。
【0026】
I/O回路2は、メモリセル列毎に設けられたプリチャージ回路3と、選択回路4と、ライトドライバ5と、センスアンプ6とを含む。I/O回路2には、周辺回路用の電源VDDが設けられる。
【0027】
プリチャージ回路3は、データ読出時に対応するビット線対をイコライズするとともに、周辺回路用の電源VDDの電圧に設定する。
【0028】
選択回路4は、デコード信号Y1,Y0に従ってビット線対を選択する。
本例においては、図示しないコラムデコーダにより、1ビットのコラムアドレスデータに基づいてデコード信号Y1,Y0が生成される。
【0029】
選択回路4は、デコード信号Y1,Y0に従ってビット線対とデータ線対CBT,CBBとを接続する。一例としてデコード信号Y0が「1」(「H」レベル)の場合には、ビット線対BT<0>,BB<0>とデータ線対CBT,CBBとが電気的に接続される。
【0030】
一方、デコード信号Y1が「1」(「H」レベル)の場合には、ビット線対BT<1>,BB<1>とデータ線対CBT,CBBとが電気的に接続される。
【0031】
デコード信号Y1,Y0が「0」(「L」レベル)の場合には、プリチャージ回路3が活性化され、ビット線対BT,BBを接続してイコライズするとともに、電源VDDと電気的に接続する。
【0032】
ライトドライバ5は、データ書込時に書込データWDTに従ってメモリアレイMAにデータを書き込む。具体的には、ライトドライバ5は、活性化信号WEに従って活性化され、書込データWDTに基づいてデータ線対CBT,CBBを駆動する。ライトドライバ5は、一例として書込データWDTが「1」の場合にデータ線対CBT,CBBを「1」、「0」に設定する。これにより、選択回路4を介してデータ線対CBT,CBBと接続されたビット線対が駆動される。そして、選択されたワード線WLに対応するメモリセル1にデータが書き込まれる。
【0033】
センスアンプ6は、活性化信号SEに従って活性化され、データ読出時にメモリアレイMA1からの読出データRDTを出力する。具体的には、データ読出時において、センスアンプ6は、活性化信号SEに従って活性化され、メモリセル1が保持するデータに従ってデータ線対CBT,CBBと接続されたビット線対に伝達された電位差を増幅して読出データRDTを出力する。ビット線対は、デコード信号Yに従って選択回路4を介してデータ線対CBT,CBBと接続される。
【0034】
ドライバ&デコーダ17は、制御部19からのロウアドレス信号をプリデコードするプリデコーダ21と、メモリセル行にそれぞれ対応して設けられた複数のワード線WLに対応して設けられた複数のドライバユニット22を含む。
【0035】
プリデコーダ21は、ロウアドレス信号に基づいて上位ビットをプリデコードした結果、プリデコード信号XUを出力する。また、ロウアドレス信号の下位ビットをプリデコードした結果、プリデコード信号XLを出力する。
【0036】
ドライバユニット22は、プリデコード信号XUと、プリデコード信号XLとに基づいて選択信号を出力するNAND回路NDと、NAND回路NDの選択信号に基づいてワード線WLを駆動するPチャネルMOSトランジスタPTと、NチャネルMOSトランジスタNTとを含む。
【0037】
PチャネルMOSトランジスタPTと、NチャネルMOSトランジスタNTは、ワード電源線LCVDDと接地電圧VSSとの間に接続され、その接続ノードはワード線WLと電気的に結合される。
【0038】
NAND回路NDの選択信号が「0」(「「L」レベル」)の場合にPチャネルMOSトランジスタPTが導通してワード電源線LCVDDとワード線WLとが電気的に結合される。
【0039】
NAND回路NDの選択信号が「1」(「「H」レベル」)の場合にNチャネルMOSトランジスタNTが導通して接地電圧VSSとワード線WLとが電気的に結合される。
【0040】
なお、通常、メモリセル1の動作安定性の観点からワード線WLにはメモリセル1と同じ電位が供給される。従って、ドライバユニット22のPチャネルMOSトランジスタのソースとバックゲートにはメモリセル用の電源SVDDが接続される。
【0041】
次に、ワード線固定回路11について説明する。ワード線固定回路11は、メモリセル用の電源SVDDにより駆動される。
【0042】
ワード線固定回路11は、複数のワード線WLにそれぞれ対応して設けられる複数の固定トランジスタ12と、ワード線固定信号LCMWDを生成する制御回路13と、ワード電源線LCVDDを駆動する電源線駆動回路14と、遅延素子16と、インバータ15とを含む。
【0043】
遅延素子16は、抵抗あるいはインバータ等を用いて一定期間信号を遅延させる。なお、物理的な回路を形成することなく、配線抵抗に基づいて遅延素子を形成するようにしても良い。
【0044】
制御回路13は、インバータ25A〜25Cと、NAND回路25Dとを含む。
インバータ25A,25Bは、直列に接続され、周辺回路用の電源VDDの投入に応じた信号の入力を受け付ける。
【0045】
インバータ25Cは、インバータ25Bの出力信号を反転させた制御信号LCMを出力する。
【0046】
電源線駆動回路14は、制御信号LCMにより駆動される。
電源線駆動回路14は、電源SVDDと接地電圧VSSとの間に設けられたPチャネルMOSトランジスタ14Aと、NチャネルMOSトランジスタ14Bとを含む。
【0047】
PチャネルMOSトランジスタ14Aと、NチャネルMOSトランジスタ14Bとの接続ノードは、ワード電源線LCVDDと接続される。PチャネルMOSトランジスタ14Aと、NチャネルMOSトランジスタ14Bのゲートは、制御信号LCMの入力を受ける。
【0048】
制御信号LCMが「0」(「L」レベル)の場合に、PチャネルMOSトランジスタ14Aが導通して、ワード電源線LCVDDと電源SVDDとが電気的に結合される。
【0049】
制御信号LCMが「1」(「H」レベル)の場合に、NチャネルMOSトランジスタ14Bが導通して、ワード電源線LCVDDと接地電圧VSSとが電気的に結合される。
【0050】
制御信号LCMは、インバータ15および遅延素子16を介してNAND回路25Dの一方の入力ノードに入力される。
【0051】
NAND回路25Dの他方の入力ノードは、インバータ25Bの出力信号の入力を受ける。
【0052】
NAND回路25Dは、インバータ25Bの出力信号と、遅延素子16等を介する信号とのNAND論理演算結果をワード線固定信号LCMWDとして出力する。
【0053】
図3は、実施形態に基づく電源投入時の電位レベルを説明する図である。
図3に示されるように、メモリセル用の電源SVDDを先に投入した場合の動作について説明する。
【0054】
まず、周辺回路用の電源VDDおよびメモリセル用の電源SVDDがともに電源投入されていない場合(ともに「L」レベル)について説明する。
【0055】
トランジスタのN−Wellにも電圧が印加されていないので、信号は伝わらず、制御信号LCM、ワード線固定信号LCMWD、ワード電源線LCVDD、ワード線WL、プリデコード信号XU、XLのいずれの信号も不定の状態となっている。
【0056】
次に、時刻T1にメモリセル用の電源SVDDが電源投入されて、「H」レベルに遷移した場合が示されている。
【0057】
これにより、メモリセル用の電源SVDDが接続されたトランジスタのN−Wellに電圧が印加され、メモリセル用の電源SVDDが接続された回路の信号が伝搬する。
【0058】
本例の場合には、周辺回路用の電源VDDは「L」レベルの状態を維持している。
したがって、制御回路13は、電源VDDの電位に応じた信号(「L」レベル)の入力に従って、制御信号LCMを「H」レベルに設定する。これにより、電源線駆動回路14のNチャネルMOSトランジスタ14Bが導通して、ワード電源線LCVDDを接地電圧VSSと電気的に結合させる。
【0059】
また、制御回路13のNAND回路25Dは、電源VDDの電位に応じた信号(「L」レベル)の入力に従って、ワード線固定信号LCMWDは、「H」レベルに設定される。
【0060】
固定トランジスタ12は、ワード線固定信号LCMWD(「H」レベル)に従って導通し、ワード線WLを接地電圧VSSを電気的に結合させる。ワード線WLは、「L」レベルに設定される。
【0061】
これにより、電源投入に際し、周辺回路用の電源VDDよりも先にメモリセル用の電源SVDDが投入された場合であっても、ワード線WLが「L」レベルに設定されるためメモリセル1のアクセストランジスタATT,ATBは非導通状態となる。
【0062】
したがって、ワード線WLの電位が不定となることはない。
なお、仮に、ワード線WLの電位が不定となった場合にについて説明する。メモリセル用の電源SVDDが投入されると、メモリセル1のインバータクロスカップルの働きに従って、内部ノードのいずれか一方にメモリセル用の電源SVDDが印加される。
【0063】
一方、周辺回路用の電源VDDは「L」レベルに設定されている。
ここで、ワード線WLの電位が不定となるとアクセストランジスタATT,ATBを介して、メモリセル1の内部ノードに印加されたメモリセル用の電源SVDDと、電気的に接続された周辺回路用の電源VDD(「L」レベル)が接続されたプリチャージ回路3のPチャネルMOSトランジスタのバックゲートあるいは選択回路4のPチャネルMOSトランジスタのバックゲート間で貫通電流が流れる可能性がある。
【0064】
それゆえ、実施形態に基づく構成の如く、ワード線WLを「L」レベルに固定にすることにより、メモリセル用の電源SVDDから周辺回路用の電源VDD間で貫通電流が流れることを抑制し、誤動作、故障等の不具合を回避することが可能である。
【0065】
次に、周辺回路用の電源VDDが投入された場合について説明する。
時刻T2に周辺回路用の電源VDDが電源投入されて、「H」レベルに遷移した場合が示されている。
【0066】
これにより、制御回路13は、電源VDDの電位に応じた信号(「H」レベル)の入力に従って、制御信号LCMを「L」レベルに設定する。これにより、電源線駆動回路14のPチャネルMOSトランジスタ14Aが導通して、ワード電源線LCVDDをメモリセル用の電源SVDDと電気的に結合させる。ワード電源線LCVDDには電源SVDDが供給される。
【0067】
また、制御回路13のNAND回路25Dの一方の入力ノードは、電源VDDの電位に応じた信号(「H」レベル)が入力される。また他方の入力については、インバータ25C、インバータ15、遅延素子16を介して電源VDDの電位に応じた信号(「H」レベル)が遅延して入力される。インバータ25C、インバータ15、遅延素子16の信号経路を遅延経路とも称する。
【0068】
そして、NAND回路ND25Dは、遅延経路により電源VDDの電位に応じた信号(「H」レベル)が遅延した結果に基づいてワード線固定信号LCMWDを「L」レベルに設定する。これは、周辺回路用の電源VDDが投入されてから制御部19が安定してプリデコード信号XU,XLが「L」レベルに設定されるまでに一定時間がかかるためである。
【0069】
その間に、ワード線固定信号LCMWDが「H」レベルを維持して、ワード線WLが「L」レベルを継続するように維持し、ワード線WLが不定となって「H」レベルとなる状態を抑制することが可能である。これにより、メモリセル用の電源SVDDと周辺回路用の電源VDDとの間で貫通電流が流れるのを防止することが可能である。
【0070】
そして、一定期間経過後、ワード線固定信号LCMWD(「L」レベル)に従って固定トランジスタ12は、非導通となり、ワード線WLと接地電圧VSSとの間を接離する。ワード線WLは、ドライバユニット22により駆動される。すなわち、通常の動作モードに移行し、プリデコード信号XU,XLに従ってワード線WLが活性化される。
【0071】
これにより、電源投入に際し、周辺回路用の電源VDDよりも先にメモリセル用の電源SVDDが投入された場合であっても、電源投入の順序によらず、正常に動作させることが可能である。
【0072】
なお、周辺回路用の電源VDDがメモリセル用の電源SVDDよりも先に投入された場合には、制御部19が初期化されて、プリデコード信号XU,XLが「L」レベルに設定される。
【0073】
これにより、ドライバユニット22のNチャネルMOSトランジスタNTが導通し、ワード線WLは、接地電圧VSSと電気的に結合される。したがって、ワード線WLは「L」レベルに設定されるため、不定となることはなく、周辺回路用の電源VDDとメモリセル用の電源SVDDとの間に貫通電流が流れることは無い。
【0074】
当該構成により、デュアルレールSRAMにおいて、周辺回路用の電源VDDと、メモリセル用の電源SVDDの電源の投入順序によらずに、不具合を生じさせることなく回路を駆動させることが可能となり、回路設計者にとって設計のし易い回路構成を実現することが可能となる。
【0075】
以上、本開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 メモリセル、2 I/O回路、3 プリチャージ回路、4 選択回路、5 ライトドライバ、6 センスアンプ、11 ワード線固定回路、12 固定トランジスタ、13 制御回路、14 電源線駆動回路、16 遅延素子、17 ドライバ&デコーダ、19 制御部、21 プリデコーダ、22 ドライバユニット。
図1
図2
図3