特許第6371175号(P6371175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6371175-抵抗器 図000005
  • 特許6371175-抵抗器 図000006
  • 特許6371175-抵抗器 図000007
  • 特許6371175-抵抗器 図000008
  • 特許6371175-抵抗器 図000009
  • 特許6371175-抵抗器 図000010
  • 特許6371175-抵抗器 図000011
  • 特許6371175-抵抗器 図000012
  • 特許6371175-抵抗器 図000013
  • 特許6371175-抵抗器 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371175
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/148 20060101AFI20180730BHJP
   H01C 1/024 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H01C1/148 A
   H01C1/024
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-186690(P2014-186690)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-62902(P2016-62902A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100108394
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 健一
(72)【発明者】
【氏名】小平 清一
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−195503(JP,A)
【文献】 特開2012−094452(JP,A)
【文献】 特開2002−313601(JP,A)
【文献】 実開昭57−102102(JP,U)
【文献】 特開2006−324155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/024
H01C 1/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状抵抗体の両端にそれぞれ対面するように一対の端子板が取り付けられた抵抗体本体を、一面に開口部を有する箱型のケース内に収納し、前記端子板の一部を前記開口部から突出させた状態で埋設する抵抗器であって、
前記端子板は、前記ケースの開口縁部に面で当接する一対の端子着座部と、前記ケースの内壁に対して直線的に、かつ、面で当接する一対の端子支持部と、を有し、前記端子着座部は前記端子板の側壁部と垂直であることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記一対の端子着座部は、
前記端子板に形成された一対の切欠き溝により形成されることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記一対の端子支持部は、
前記端子板に形成された一対の切欠き溝により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗器。
【請求項4】
棒状抵抗体の両端にそれぞれ対面するように一対の端子板が取り付けられた抵抗体本体を、一面に開口部を有する箱型のケース内に収納し、前記端子板の一部を前記開口部から突出させた状態で埋設する抵抗器であって、
前記端子板は、前記ケースの開口縁部に面で当接する一対の端子着座部と、前記ケースの内壁に面で当接する一対の端子支持部と、を有し、
前記ケースの内壁の前記抵抗体本体の長さ方向に対して直交する位置に、前記端子板を取付けるための前記端子支持部を受け入れるガイド溝が設けられていることを特徴とする抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器に関し、より詳細には巻線抵抗体または皮膜抵抗体をケースに収納する抵抗器の端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線抵抗体または皮膜抵抗体をケースに収納する抵抗器は、例えば、図10(c)に示すように、抵抗体本体80をケース100内に収納した際、端子板87に設けた段部89をケース100の上端面に当接させることでケース100の上端面に着座し、端子板87はケース100の上面から垂直上方に突出するように位置決めされる。
【0003】
金属板からなる端子板やセラミックスからなるケースは、その加工の制約上、角が直角ではなく丸み(R)を帯びている。そのため、従来のような形状の段部(着座部)では、ケース内に抵抗体本体および端子を収納するときに、端子板がケースと当接する部分の面積が少なく、端子板の挿入位置がケース中心より左右のどちらか一方へ寄ってしまった場合には、端子板に形成された端子着座部の角のRとケース開口部縁の角のRが接触しやすくなる。その結果、端子がケース内に落ち込むように挿入されてしまうことがあり、端子板および抵抗体本体のケース内での位置やケース外部へ突出する端子板の方向・寸法にばらつきが生じるという問題がある。
【0004】
特許文献1に記載の抵抗器は、図10(a)、(b)に示すように、端子板133が取り付けられた金属キャップ130を巻線抵抗体121の端部に取り付けた抵抗体本体120と、端子板133を外部に突出した状態で抵抗体本体120を収納するケース110と、ケース110内に充填される充填材160を備えた固定抵抗器であって、端子板付き金属キャップ130は、ケース110内に収納される部分にケース110の内側面に当接することで端子板133のケース110からの突出方向の位置決めをする位置決め係止部135を有する構造である。この構造により、端子板のケースからの突出方向がねじれることはないという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−195503号 「固定抵抗器」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10(a)、(b)のような端子形状は、ケース内での端子および抵抗体の位置決めをするために端子板に位置決め係止部135を設けている。しかしながら、このような形状はプレス加工およびその金型の調整等のメンテナンスが複雑である。また、この位置決め係止部135の羽根部分はケース内壁に点で接している。そのため、係止部135は外力で変形しやすく、変形の度合いも左右の羽根部分では均等になりにくいため、ケース110内に挿入すると、抵抗体が斜めに挿入されてしまい、抵抗体を正しい姿勢に位置決めすることが困難であった。
【0007】
従って、抵抗体本体120がケース110内で安定せず、ケース110中心に対する端子(板)133のズレやねじれ、これに伴う右側端子と左側端子のねじれを防止するのに十分でなかった。
【0008】
本発明は、抵抗体本体がケース内で安定する構造を提供することを目的とする。また、ケース中心に対する端子のズレやねじれ、これに伴う右側端子と左側端子のねじれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、棒状抵抗体の両端にそれぞれ対面するように一対の端子板が取り付けられた抵抗体本体を、一面に開口部を有する箱型のケース内に収納し、前記端子板の一部を前記開口部から突出させた状態で埋設する抵抗器であって、前記端子板は、前記ケースの開口縁部に面で当接する一対の端子着座部と、前記ケースの内壁に面で当接する一対の端子支持部と、を有することを特徴とする抵抗器が提供される。
【0010】
前記開口縁部と内壁との両方に面接触することで端子板の前記棒状抵抗体の中心軸を回転軸とした傾きが抑制され、安定的に配置される。
【0011】
着座部とケース開口縁部の角同士が接触することがなくなるため、端子着座部とケース開口縁部の接触が安定し(据わりが良くなり)、端子板の位置ズレを防止できる。端子着座部の直線部分が長く確保できるため、端子着座部の角の加工時において、従来よりも丸み(R)を小さく加工することもできる。
【0012】
前記一対の端子着座部は、前記端子板に形成された一対の切欠き溝により形成されることを特徴とする。
【0013】
切欠き溝を形成するだけの簡単な構成で安定した構造を実現できる。例えば、前記切欠き溝は、端子板の側壁部から内側に向けて形成され、前記端子着座部は、前記切欠き溝の上面により形成されている。前記一対の端子支持部は、前記端子板に形成された一対の切欠き溝により形成されることを特徴とする。前記端子支持部は、前記端子板の当接面がケースの内面に面で当接するように形成され、前記切欠き溝の下面が前記端子支持部の一部を成すことが好ましい。
これにより、端子板の回転移動を抑制することができる。
【0014】
端子着座部の側壁部と端子支持部の当接面との間隔を、ケースの内壁と端子支持部の当接面との間にできる隙間の最大値よりも長くなるようにした(例えば、比率を2:5程度にした)ことで、端子板の回転移動を効率的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、棒状抵抗体の両端にそれぞれ対面するように一対の端子板が取り付けられた抵抗体本体を、一面に開口部を有する箱型のケース内に収納し、前記端子板の一部を前記開口部から突出させた状態で埋設する抵抗器であって、前記端子板は、前記ケースの開口縁部に面で当接する一対の端子着座部と、前記ケースの内壁に面で当接する一対の端子支持部と、を有し、前記ケースの内壁に、前記端子板を取付けるための前記端子支持部を受け入れるガイド溝が設けられていることを特徴とする抵抗器である。
【0016】
また、本発明は、棒状抵抗体の両端にそれぞれ対面するように一対の端子板が取り付けられた抵抗体本体を、一面に開口部を有する箱型のケース内に収納し、前記端子板の一部を前記開口部から突出させた状態で埋設する抵抗器に用いる端子板であって、前記端子板は、前記ケースの開口縁部に面で当接する一対の端子着座部と、前記ケースの内壁に面で当接する一対の端子支持部と、を有することを特徴とする端子板である。
【0017】
前記端子板の側壁部から内側に向けて一対の切欠き溝が形成されており、前記切欠き溝を形成する上側内壁部は、前記側壁部と垂直になっているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な構成で端子着座部とケースの開口縁部が接触する部分を広く確保し、ケース内においてケース内壁と端子支持部の当接面が面で接触するため、抵抗体本体を安定して収納することができる。従って、ケースから突出する端子の長さと方向のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態による抵抗器及びその端子構造の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態による抵抗器及びその端子構造の一例を示す斜視図である。
図3図3(a)、(b)は、図1図2の端子板を、それぞれ、図1に示すA方向、B方向から見た図である。
図4図4(a)は、本実施の形態による抵抗器の収容構造の一例を示す図であり、図4(b)は、図10(c)に対応する従来の抵抗器の収容構造を示す図である。
図5図5(a)から(c)までは、本発明の変形例として示す端子板の形状の例を示す図である。
図6図6(a)から図6(c)までは、端子板の「ズレ」と「ねじれ」について説明するための図である。
図7】抵抗器の位置ズレの検証結果を示す図である。
図8】ケース上面から端子板の突出する先端までの寸法を計測した検証結果を示す図である。
図9】本実施の形態による抵抗器の製造工程の概略例を示す図である。
図10】従来の巻線抵抗体または皮膜抵抗体をケースに収納する抵抗器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態による抵抗器及びその端子構造について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1及び図2は、本実施の形態による抵抗器及びその端子構造の一例を示す斜視図である。図3(a)、(b)は、図1図2の端子板7を、それぞれ、A方向、B方向から見た図である。抵抗器1は、大まかには、抵抗体本体2と、ケース11とからなる。
【0022】
抵抗体本体2は、例えば棒状の抵抗体3と、抵抗体3の両端部に装着された一対のキャップ5と、このキャップ5の内端部から、後述するケース外部方向へ立ち上がるように突出する例えば金属などの導電体からなる一対の平板状の端子板7と、を備えている。抵抗体3の両端にそれぞれ対面するように前記2つの端子板7を取り付けて抵抗体本体2とする。
【0023】
一面に開口部11aを有する箱型のケース11内に抵抗体本体2を収納し、ケース11内に絶縁材(図示せず)を充填することで、端子板7の一部を開口部11aから前記ケース11の上方に突出させた状態で埋設するようになっている。
【0024】
端子板7は、図2に示すようにケース11内に抵抗体本体2を挿入すると、ケース開口部11aの縁(開口縁部)11bに当接する部分である端子着座部7aを有している。この端子着座部7aは、端子板7の一部をその側壁部7d・7eの面から端子7の内側に向けて切欠いて形成した一対の凹状の溝部(切欠き溝)7bを設けることで簡単に形成することができる。一対の切欠き溝7bは、端子着座部7aと後述する端子支持部7cとの間に形成され、図3(a)に示すように、端子板7の中心線Oで折り返すと、同じ形状となっている。特に、端子着座部7aの位置は、端子板7の高さ方向において同じ位置に形成される。切欠き溝7bが端子板7において凹部であるのに対し、端子支持部7cと端子着座部7aとは端子板7において凸部を形成する(突出する)。そして、端子着座部7aは、開口縁部11bと面で当接する。
【0025】
切欠き溝7bを形成する上側内壁部(端子着座部7a)は、側壁部7d・7eと垂直になっている。
【0026】
このような面で当接する構造により、端子着座部7aとケース開口縁部11bの角同士が接触することがなくなるため、端子着座部7aとケース開口縁部11bの接触が安定し(据わりが良くなり)、ケース11内に固定した抵抗体本体2の位置ズレを防止できる。端子着座部7aの直線部分を長く確保することができるため、端子着座部7aの角の加工時において、従来よりも丸み(R)を小さく加工することが可能となる。また、簡単な構成で安定した構造を実現できる。
【0027】
さらに、端子板7は、端子着座部7aの下方に、ケース11内に抵抗体本体2を挿入するとケース11の内壁11cと端子板7の側壁部の一部である当接面7dで接する端子支持部(図1の囲み破線部分L11)7cを有する。端子支持部7cは、当接面7dがケース11の内壁に面で当接する(後述する図4(a)参照)。
【0028】
ケース11内に抵抗体本体2を挿入する際に端子板7の端子支持部7cを受け入れて抵抗体本体2をガイドする構成例として、ケース11の内面に抵抗体本体2を案内するガイド溝11dが形成されていても良い。以下では、ガイド溝11dが形成されている例を説明するが、ガイド溝11dがなく、端子板7の端子支持部7cが内壁11cに面で当接する場合でもガイドする機能がないことを除いて同様の原理で機能させることが可能である。
【0029】
図2に示すように、ケース11内に抵抗体本体2を挿入し終わると、端子着座部7aがケース開口部11aの縁(開口縁部)11bに当接する。さらに、端子支持部7cが、ケース11のガイド溝11d内の内壁11cとその当接面7dで接する。端子支持部7cがケース内壁11cに面で当接するため、端子支持部7cが外力によって変形しにくくなるとともに、端子着座部7aを大きく取ることが可能となり、端子着座部7aとケース開口縁部の11bとの面接触が安定して確保される。従って、端子板7のケース11内への落ち込みを防止することができる。端子板7が、互いに垂直な開口縁部11bと内壁11cとの両方の面に面接触することで端子板7の棒状の抵抗体3の中心軸を回転軸とした傾きが抑制され、安定的に配置される。
【0030】
図4(b)は、図10(c)に対応する抵抗器の収容構造を示す図であり、図4(a)は、本実施の形態による抵抗器1の収容構造の一例を示す図である。この図により、ケース開口縁部と端子着座部の接触部について比較する。
【0031】
本実施の形態における端子着座部7aは、端子板7を内側に切欠くことにより形成され、端子着座部7aの角が端子板7の内側に入り込むことになるため、端子着座部7aをケース11から長く突出させなくても、接触部P近傍において面接触する直線部分を長くとることができる。
【0032】
従来の端子87の接触部Pのように着座部とケース開口縁部の角同士が接触してしまうことがなく、端子着座部7aとケース開口縁部11bとの接触が安定し据わりが良くなる。従って、ケース11と端子板7との位置ズレを防止することができる。
【0033】
本実施の形態によれば、端子着座部7aの直線部分が長く確保できるため、端子着座部7aの角を加工する時に、従来よりも丸み(R)を小さく加工することもできるため、加工工程が簡単になる。
【0034】
また、ケース11内壁間(開口内)の寸法と端子支持部7cの幅寸法は可能な限り差がない方が端子板7の位置ズレを防止できるが、ケース11の溝幅の寸法バラツキ(例えば±0.2mm)と、端子支持板7cの幅の寸法バラツキ(例えば、±0.05mm)とを考慮すると、両者の間には隙間を持たせる必要がある。そこで、端子着座部7aの側壁部7eと端子支持部7cの当接面7dとの間隔W11を、ケース11の内壁11cと端子支持部7cの当接面7dとの間にできる隙間W12の最大値よりも長くなるようにした(例えば、比率、W12:W11=2:5程度にした)。すなわち、端子支持部7cの幅よりも一対の端子着座部7aを有する端子領域の幅を長くなるようにした。
【0035】
このように、本実施の形態による抵抗器及びその端子構造によれば、端子着座部7aを、端子板7を内側に切込んだ溝状(凹状)に形成することにより、簡単な構成で端子着座部7aとケース11の開口縁部11bが接触する部分を広く確保することができる。従って、ケース11内に抵抗体本体2をねじれに対して安定して収納することができる。また、ケース11から突出する端子板7の長さと方向を一定にすることができるため、抵抗器1の寸法バラツキを抑制することができる。
【0036】
また、ケース内壁11cに、抵抗体本体2をケース11内に挿入する際のガイド溝11d(図1)を形成しておくことで、端子板7をケース11内に挿入する作業を簡単に行うことができる。より高精度な位置決めとねじれ防止効果が得られる。
【0037】
ガイド溝11dに挿入する端子支持部7cを端子板7に形成し、抵抗体本体2をケース11内に挿入した状態で、ケース11のガイド溝11d内の内壁11cと当接面7dとが当接するようにしておく。このようにしておくことで、ケース11内に抵抗体本体2を嵌め込む際に、ねじれに対して端子位置ズレ防止やねじれを防止し、安定して収容することができる。
【0038】
以下に、図9を参照しながら、抵抗器1の製造工程の概略について説明する。適宜、図1等も参照する。抵抗体本体2は、ステップS1からS4までにより形成される。ステップS1の抵抗皮膜の着膜工程では、セラミック芯等の絶縁材からなる芯材に抵抗皮膜(酸化錫など)を例えば加水分解法により着膜して抵抗体を作製する。抵抗皮膜の着膜後は抵抗値にばらつきがあるため、その後の抵抗値調整工程(ステップS3)の準備として、ステップS2では、初期抵抗値ごとに分類を行なう。ステップS3の抵抗値調整工程の後、ステップS4において、抵抗体の両端部に端子板7を挿入し、圧入工程などによりキャップ5を装着することで、端子板7とキャップ5とを備えた抵抗体本体2が完成する。
【0039】
ステップS5以降に抵抗器1の組立工程を示す。
まず、ステップS5において、セラミックス等のケース11に、絶縁材(セメント等)を充填する。続いて、ステップS6において、ステップS4で作製した抵抗体本体2をケース11内に挿入し、ケース開口縁部11bと端子着座部7aとを当接させた状態を保持する。その後、ステップS7において、乾燥・焼付けを行なってからケース11表面に定格等の表示を行い抵抗器1が完成する。
【0040】
最後に、ステップS9において、抵抗器1の抵抗値の検測や本実施の形態で行なう検証2)、3)等の検査を行なうことで製品が完成する。
【0041】
尚、抵抗体は、一例として酸化金属皮膜抵抗体を使用できるが、巻線抵抗体等とすることもできる。巻線抵抗体にする場合は、ステップS1は芯材に抵抗線を巻き付ける巻線工程、ステップS2は乾燥・焼付け、ステップS3は必要なく、ステップS4のキャップ装着方法として、かしめ工程を行うことになる。ほかの組立工程は共通である。
【0042】
尚、本実施の形態における端子着座部7a及び端子支持部7cは、ステップS4の工程の前までに、端子板7の製造時にプレス等により形成しておくことが望ましい。
【0043】
(変形例)
図5(a)から(c)までは、本発明の変形例として示す端子板7の形状の例を示す図である。これらの端子板7には、例えば、端子着座部7aと端子支持部7cとの間に切欠き(凹部、溝、窪み等)7b−1〜3までがある。図5(a)の構造は、端子板7のケース開口11aより外側へ突出する方向において、切欠7b−1上の端子着座部7aの幅Wが同じように構成されている。
【0044】
図5(b)の構造では、端子板7のケース開口11aより外側へ突出する方向において、切欠7b−2量が小さくなっている。図5(c)の構造では、端子板7の内側(奥方向)に向けて切欠7b−3幅が狭くなっており、奥方向において丸みを帯びた形状を有している。
【0045】
このように、本実施の形態による切欠き溝は、ケースの開口縁部11bと端子着座部7aが平行となり、ケースの開口縁部と端子着座部の接触する長さ(面積)を従来よりも広くとることができる形状であれば良い。また、端子支持部7cの端子幅よりも、端子着座部7aを有する領域の端子幅のほうが大きくなっている。
【0046】
以下、従来の構造を比較例として本発明の実施例による構造との比較検証結果について説明する。
【0047】
[実施例1]
まず、端子板7の「ズレ」と「ねじれ」について、図6(a)から図6(c)までを参照しながら説明する。適宜、その他の図面も参照する。
【0048】
「ズレ」(「横ズレ」、「位置ズレ」とも称する。)とは、ケース11内に抵抗体本体2を挿入するとき、端子板7が、ケース11中心位置(基準位置)から、ケース11内の左または右へ偏って挿入されてしまった状態を示す(図6(a)、矢印方向におけるズレ量がΔXである)。
【0049】
このように、端子板7がケース11内の左または右へ偏った状態で挿入されると、端子着座部7aがケース11の開口縁部11bから外れてケース内へ入り込むことがあり、これにより端子がケース中心に挿入された状態と比べて傾く(図6(a)、矢印方向、回転量Δθ)こととなり、この傾いた状態を「ねじれ」と表現する。
【0050】
端子板7の位置ズレにより端子板7のねじれが起こると、端子板7のケース11からの突出量(突出高さ)の抵抗器1個体毎のばらつきが大きくなり、抵抗器1の基板への実装工程において、例えば自動処理を行うことが困難になるなどの問題が生じる。従って、端子板7のズレを抑制することは重要である。
【0051】
図6(b)、(c)に示すように、端子板7のズレ量ΔXは、ケース11の一側面を基準面とし、その基準面MからL1、L2の寸法を測定した値を、以下の式(1)によりで計算して比較することができる。
【0052】
ΔX=(L1+L2)/2−L3/2 式(1)
【0053】
尚、L1,L2は、図6(b)に示すケース11の基準面Mから端子板の各側面までの距離であり、L3はケース11の幅である。
【0054】
この値ΔXが0に近いほど、ケース11に対する端子板7のズレ量が少なく、ケース11の中心に端子板7が収まっていると言える。
【0055】
尚、図6では、ガイド溝11dの影響を考慮していない、但し、ガイド溝11dは端子板7に対して溝の幅に余裕を持たせ、端子板7のピッチのばらつきに対応できるようになっているため、以下の検証結果に与える影響は小さい。
【0056】
また、図6(b)には端子高さY2の測定位置と端子位置ズレY1の測定位置とを図示している。端子高さY2は端子位置ズレの検証における測定位置であり、端子位置ズレY1は端子高さの検証における測定位置である。本実施の形態における端子板7は、端子着座部7aが側方(外側)へ突出しているため、従来の端子との比較検証を行うにあたり測定位置(点)を定めている。
【0057】
(検証結果)
以下に検証結果について説明する。ここでは、酸化金属皮膜抵抗体を用いた定格電力7Wの抵抗器について下記の検証を行った。尚、各検証においてロットNo.が共通するものは同じサンプルを用いて検証を行なったことを意味する。
【0058】
1)端子支持部の幅寸法依存性について
ケース11の開口部11aを、縦34.0±0.5mm×横8.0±0.2mmとし、最も深い部分を9.5±0.3mmとした場合の、端子支持部7cの幅について検討を行なった。
表1は、その検証結果を示すものである。
【0059】
【表1】
【0060】
端子支持部7cの幅(寸法)を変えた抵抗器を3種類用意し、絶縁材による封止後の端子板7の位置ズレ(ΔX)を測定した。
【0061】
その結果、端子支持部7cの幅が狭い抵抗器は、絶縁材に位置ズレの影響によると考えられるピンホールやクラックがみられ、端子支持部7cの幅が広いほど端子板のねじれが少ない良品が多いという傾向が見られた。
【0062】
表1によれば、開口が8.0±0.2mmの抵抗器において、端子支持部は7.7mm付近が最も適していることがわかる。
【0063】
2)位置ズレの検証(測定機器:測微計(メーカー名:ニコン MM-400L))
本実施の形態における端子板7を用いた抵抗器1と、比較例とした従来の端子板(図4(b)参照)を用いた抵抗器を、それぞれ50個×5ロットずつ試作した。そして、それぞれサンプルを20個ずつランダムに選んで測定を行なった。尚、測定ポイントはケース上面より11.5mmの位置で、位置ズレの求め方は、上記の式(1)による。尚、図6(c)に示す目印21を基準に、右側であるか左側であるかを判定している。
【0064】
図6(b)の端子位置ズレY1の測定位置は、端子板7のある一点を定め、その測定位置から基準面Mの寸法(L1,L2)を測定した。この測定位置として、ケース開口縁部11bから端子先端までの端子板7の長さの目標値を例えば13.0±0.3mmとした場合、端子位置ズレにおいてはケース開口縁部11bから11.5mmの位置(Y1)とした。
表2、図7は、その結果を示すものである。
【0065】
【表2】
【0066】
従来の端子板を用いた抵抗器では、右側端子は−0.27〜0.21(差:0.48)、左側端子は−0.28〜0.12(差:0.40)の幅で端子板7の位置ズレが生じている。
【0067】
一方、本実施例による端子板7を用いた抵抗器では、右側端子は−0.16〜0.09(差:0.25)、左側端子は−0.19〜0.08(差:0.27)の幅にまで位置ズレが低減され、本実施例による端子板7を用いることで、端子位置のばらつきが差の値で約半分まで低減されていることがわかる。
【0068】
3)端子板の突出高さ
上記各サンプルについて、ケース11上面から端子板7の突出する先端までの寸法を計測した。尚、目標値は、13.0±0.3mmである。図6(c)に示す目印21を基準に、右側であるか左側であるかを判定している。端子高さについては、ケース開口縁部11bから端子先端までを測定した。これがY2である。
表3、図8は、その結果を示すものである。
【0069】
【表3】
【0070】
寸法の数値が13.00以上であり、かつ13.00に近いほど、端子板7がケース11中心に挿入されており、端子板7の位置ズレが少ない状態である。
【0071】
比較例とした従来の端子板では、右側端子は最大でも12.98mm、左側端子は最大でも12.97mmといずれも目標値以下となっている。
【0072】
一方、本実施例による端子板7では、右側端子は12.94〜13.05mm、左側端子は12.93〜13.05mmとなり、目標値の13.00mmに近いことがわかる。
【0073】
本実施例による端子板7を用いると、端子板7の位置ズレが少なくなり、端子板7がケース11内に落ち込みにくくなるため、ねじれも少なくなり、右側端子と左側端子との高さがともに目標値に近づいたと考えられる。
【0074】
以上の検証結果から、本実施の形態による端子板構造を用いた抵抗器は、一般的な端子板を用いた場合よりも、位置ズレが少なく、端子板の突出高さも目標値に近いため、抵抗器の寸法バラツキを抑制し、より高精度な位置決めとねじれ防止効果が得られることがわかる。
【0075】
本実施の形態によれば、簡単な構成で端子着座部とケースの開口縁部が接触する部分を広く確保し、ケース内に抵抗体本体を安定して収納することができる。従って、ケースから突出する端子の長さと方向のばらつきを抑制することができる。
【0076】
ケース内壁に端子支持部が面で接触して抵抗体本体の位置を決めることにより、十分な端子位置ズレ防止やねじれ防止の効果が得られる。ケース内壁に支持部の寸法に応じたガイド溝を形成しておくと、このガイド溝に支持部を嵌めることにより、より高精度な位置決めとねじれ防止効果が期待できる。
【0077】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0078】
例えば、端子板自体も権利の範囲内である。また、固定構造は、充填材による固定に限られるものではない。
【0079】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、抵抗器に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…抵抗器、2…抵抗体本体、3…抵抗体、5…キャップ、5a…キャップの外方の端面、7…端子板、7a…端子着座部、7b…切欠き溝、7c…端子支持部、7d…当接面、7e…側壁部、11…ケース、11a…ケース開口部、11b…ケース開口縁部、11c…ケース内壁、11d…ガイド溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10