(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2オシレータは、自身が生成する前記第2クロック信号の発振周波数を前記基準トリミングデータに応じて任意に調整するためのトリミング機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載のクロック信号生成回路。
不揮発性メモリ、ツェナーザップ法、ポリシリコンフューズ法、または、レーザーカット法を用いて前記基準トリミングデータを保持するトリミングデータ保持部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のクロック信号生成回路。
前記トリミングデータ変調部は、前記基準トリミングデータを中心値として前記変調トリミングデータを変化させるセンタースプレッド、前記基準トリミングデータを上限値として前記変調トリミングデータを変化させるダウンスプレッド、或いは、前記基準トリミングデータを下限値として前記変調トリミングデータを変化させるアップスプレッドを行うことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のクロック信号生成回路。
前記トリミングデータ変調部は、前記第1クロック信号の発振周波数に対する周波数拡散処理のオン/オフを設定する機能、前記周波数拡散処理における発振周波数の変調周期を設定する機能、ないしは、前記周波数拡散処理における発振周波数の変調幅を設定する機能を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のクロック信号生成回路。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<基本構成>
図1は、クロック信号生成回路の基本構成例を示すブロック図である。本構成例のクロック信号生成回路100は、後述する周波数拡散機能を実装することが可能なベース回路(トリミング機能を備えたクロック信号生成回路)であり、トリミングデータ保持部110と、レジスタ120と、オシレータ130とを有する。
【0022】
トリミングデータ保持部110は、不揮発性メモリ(本図ではOTPROM[one time programmable read only memory])、ツェナーザップ法、ポリシリコンフューズ法、または、レーザーカット法など、周知の手法を用いてトリミングデータS11を不揮発的に保持する。なお、トリミングデータS11は、オシレータ130で生成されるクロック信号S13の発振周波数f1を任意に調整するためのデータ信号である。
【0023】
レジスタ120は、トリミングデータ保持部110から読み出されたトリミングデータS11をレジスタデータS12として所定のアドレスに格納する。
【0024】
オシレータ130は、クロック信号生成回路100が搭載される電子機器の各部にクロック信号S13を出力する。なお、オシレータ130は、自身が生成するクロック信号S13の発振周波数f1を、レジスタ120から読み出されたレジスタデータS12(=トリミングデータS11)に応じて任意に調整するためのトリミング機能を備えている。
【0025】
図2は、オシレータ130の一構成例を示す回路図である。本構成例のオシレータ130は、インバータ131〜134と、キャパシタ135及び136と、Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタ137と、トランスミッションゲート138と、トリミング機能部139と、を含む。
【0026】
インバータ131の入力端は、トランジスタ137のドレインに接続されている。インバータ131の出力端は、インバータ132の入力端に接続されている。インバータ132の出力端は、インバータ133の入力端に接続されている。インバータ133の出力端は、トランスミッションゲート138の第1端に接続されている。トランスミッションゲート138の第2端は、クロック信号S13の出力端とトリミング機能部139の入力端(ノードA)に各々接続されている。トリミング機能部139の出力端(ノードB)は、インバータ131の入力端に接続されている。このように、本構成例のオシレータ130では、3段のインバータ131〜133を含むリングオシレータが形成されている。ただし、遅延素子の段数については上記に限定されるものではない。
【0027】
インバータ134の入力端とトランスミッションゲート138の非反転制御端は、いずれもイネーブル信号S14の入力端に接続されている。インバータ134の出力端は、トランジスタ137のゲートとトランスミッションゲート138の反転制御端に各々接続されている。トランジスタ137のソースは、接地端に接続されている。キャパシタ135は、インバータ131の入力端と接地端との間に接続されている。キャパシタ136は、インバータ131の入力端とインバータ132の出力端との間に接続されている。このような回路構成により、イネーブル信号S14がハイレベルであるときにクロック信号S13の生成動作が許可状態(イネーブル状態)となり、イネーブル信号S14がローレベルであるときにクロック信号S13の生成動作が禁止状態(ディセーブル状態)となる。
【0028】
トリミング機能部139は、発振周波数f1の精度を向上させるために、レジスタデータS12(=トリミングデータS11)に応じて、RCフィルタの時定数τ(=R×C)を切り替える。
【0029】
図3は、トリミング機能部139の一構成例を示す回路図である。本構成例のトリミング機能部139は、抵抗R1〜Rn(抵抗値:R1<R2<…<Rn)と、キャパシタC1〜Cnと、インバータINV1〜INVnと、トランスミッションゲートSW1〜SWnと、を含む。本構成例のトリミング機能部139には、nビットのレジスタデータS12(最下位ビット(S12−1)〜最上位ビット(S12−n))が入力されている。
【0030】
抵抗R1〜Rnは、ノードAとノードBとの間に図示の順序で直列に接続されている。キャパシタC1〜Cnは、それぞれ、抵抗R1〜Rnと共にRCフィルタを形成するように、抵抗R1〜Rnの各一端と接地端との間に接続されている。トランスミッションゲートSW1〜SWnは、それぞれ、抵抗R1〜Rnに対して並列に接続されている。インバータINV1〜INVnの各入力端とトランスミッションゲートSW1〜SWnの各非反転制御端は、それぞれ、レジスタデータS12−1〜S12−nの入力端に接続されている。インバータINV1〜INVnの各出力端は、それぞれ、トランスミッションゲートSW1〜SWnの反転制御端に接続されている。
【0031】
例えば、レジスタデータS12−1がローレベルである場合には、トランスミッションゲートSW1がオフするので、抵抗R1とキャパシタC1から成るRCフィルタがノードAとノードBとの間に挿入された形となる。一方、レジスタデータS12−1がハイレベルである場合には、トランスミッションゲートSW1がオンして抵抗R1の両端間がショートされるので、抵抗R1とキャパシタC1から成るRCフィルタがノードAとノードBとの間に挿入されない形となる。レジスタデータS12−2〜S12−nについても同様である。従って、レジスタデータS12−1〜S12−nの論理レベルに応じて、ノードAとノードBとの間に挿入されるRCフィルタの時定数τを任意に切り替えることができる。なお、時定数τが大きいほど発振周波数f1は低くなり、時定数τが小さいほど発振周波数f1は高くなる。
【0032】
図4は、トリミングデータS11の一設定例を示す図である。なお、本図(a)欄及び(b)欄に各々描写されているトリミングテーブルでは、トリミング前の発振周波数f1とトリミングデータS11(8ビット(n=8))とが一対一で対応付けられている。
【0033】
発振周波数f1を所望の目標値に合わせ込む際には、まずトリミング前の発振周波数f1を測定し、その測定結果から図示のトリミングテーブルを参照してトリミングデータS11のデータ値を決定した上で、当該データ値を持つトリミングデータS11をトリミングデータ保持部110に保持させる、という一連の作業が行われる。
【0034】
なお、図示のトリミングテーブルは、発振周波数f1を5.00MHzに合わせ込むために用意されたものである。例えば、トリミング前の発振周波数f1が元々5.00MHzと一致していた場合には、トリミングデータS11のデータ値が「10000000」に設定される。このとき、トリミング機能部139では、最も抵抗値の高い抵抗R8の両端間のみがショートされる。この状態は、RCフィルタの時定数τが設定可能レンジの中央値に設定された状態に相当する。
【0035】
一方、トリミング前の発振周波数f1が4.98MHzであった場合には、(a)欄で示すように、トリミングデータS11のデータ値が「10000010」に設定される。このとき、トリミング機能部139では、最も抵抗値の高い抵抗R8だけでなく抵抗R2の両端間もショートされる。その結果、トリミング前の発振周波数f1が元々5.00MHzであった場合と比べてRCフィルタの時定数τが小さくなるので、発振周波数f1が4.98MHzから5.00MHzに引き上げられる。
【0036】
また、トリミング前の発振周波数f1が5.04MHzであった場合には、(b)欄で示すように、トリミングデータS11のデータ値が「01111100」に設定される。このとき、トリミング機能部139では、最も抵抗値の高い抵抗R8がRCフィルタに挿入され、これより抵抗値の低い抵抗R3〜R7(R3+R4+R5+R6+R7<R8)の各両端間がショートされる。その結果、トリミング前の発振周波数f1が元々5.00MHzであった場合と比べてRCフィルタの時定数τが大きくなるので、発振周波数f1が5.04MHzから5.00MHzに引き下げられる。
【0037】
上記のトリミング処理により、発振周波数f1を所望の目標値に合わせ込むことができるので、発振周波数f1の精度を向上することが可能となる。
【0038】
図5は、上記のトリミング処理を適用することが可能なオシレータ130のバリエーションを示すテーブルである。
【0039】
(a)欄のオシレータ130aは、いわゆるウィーンブリッジ形RC発振回路であり、抵抗R11〜R14と、キャパシタC11及びC12と、オペアンプAMP11と、を含む。抵抗R11の第1端、抵抗R12の第1端、及び、キャパシタC11の第1端は、いずれもオペアンプAMP11の非反転入力端(+)に接続されている。抵抗R11の第2端とキャパシタC11の第2端は、いずれも接地端に接続されている。抵抗R12の第2端は、キャパシタC12の第1端に接続されている。キャパシタC12の第2端は、オペアンプAMP11の出力端に接続されている。抵抗R13の第1端と抵抗R14の第1端は、いずれもオペアンプAMP11の反転入力端(−)に接続されている。抵抗R13の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R14の第2端は、オペアンプAMP11の出力端に接続されている。本構成例のオシレータ130aでは、抵抗R11と抵抗R12との組み合わせ、若しくは、キャパシタC11とキャパシタC12との組み合わせで、それぞれの特性値を調整することにより、発振周波数f1を可変制御することが可能である。
【0040】
(b)欄のオシレータ130bは、いわゆるコルピッツ形LC発振回路であり、npn型バイポーラトランジスタQ21と、コイルL21と、キャパシタC21及びC22とを含む。トランジスタQ21のコレクタは、キャパシタC21の第1端とコイルL21の第1端にそれぞれ接続されている。トランジスタQ21のエミッタは、キャパシタC21の第2端とキャパシタC22の第1端にそれぞれ接続されている。トランジスタQ21のベースは、キャパシタC22の第2端とコイルL21の第2端にそれぞれ接続されている。本構成例のオシレータ130bでは、キャパシタC21及びC22の各容量値を調整することにより、発振周波数f1を可変制御することが可能である。
【0041】
(c)欄のオシレータ130cは、
図2の構成をより単純化したリングオシレータであり、インバータINV31〜INV33を含む。本構成例のオシレータ130cでは、RCフィルタの時定数τを切り替えるトリミング機能部139が省略されている。従って、発振周波数f1は、インバータチェインを形成するインバータINV31〜INV33の遅延量に依存して決定される。インバータINV31〜INV33の遅延量は、インバータINV31〜INV33に電力供給を行う電源の電流能力に応じて変化する。そこで、この電流能力を調整することにより、発振周波数f1を可変制御することが可能である。
【0042】
なお、
図2及び
図5で挙げたオシレータ130の回路構成は、あくまで例示であり、トリミング処理を適用することが可能であれば、いかなる回路構成を採用しても構わない。
【0043】
<第1実施形態>
図6は、クロック信号生成回路の第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態のクロック信号生成回路200は、先出の基本構成(
図1)をベースとしつつ、トリミング機能を利用した周波数拡散機能を実装するための回路ブロックとして、カウンタ210とトリミングデータ変調部220が追加されている点に特徴を有する。そこで、先出の基本構成と同様の回路ブロックについては、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第1実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0044】
カウンタ210は、クロック信号S13のパルス数をカウントしてカウンタ値S21を出力する。
【0045】
トリミングデータ変調部220は、カウンタ値S21に応じた周波数変化タイミングでレジスタデータS12(以下、説明の便宜上、基準トリミングデータS12と呼ぶ)を動的に変化させることにより変調トリミングデータS22を生成し、その変調トリミングデータS22を基準トリミングデータS12に代えてオシレータ130に出力する。具体的に述べると、トリミングデータ変調部220は、カウンタ値S21が所定の上限値に達する毎に周波数変化タイミング信号(トリミングデータ変調部220の内部信号)のパルス生成を行い、そのパルスをトリガとして変調トリミングデータS22のデータ値を切り替え、カウンタ値S21をゼロ値にリセットする、という一連の動作を繰り返す。なお、トリミングデータ変調部220は、簡易なロジック回路により実装することが可能である。
【0046】
上記したように、第1実施形態のクロック信号生成回路200では、データ値が固定された基準トリミングデータS12をそのままオシレータ130に入力するのではなく、基準トリミングデータS12のデータ値を動的に変化させた変調トリミングデータS22がオシレータ130に入力される。
【0047】
このような構成とすることにより、回路規模の大きい従来のSSCG回路(
図20を参照)を用いることなく、回路規模の小さいクロック信号生成回路100(
図1を参照)にカウンタ210とトリミングデータ変調部220を追加するだけで、発振周波数f1の変調処理(周波数拡散処理)を実現することが可能となる。
【0048】
なお、トリミングデータ変調部220には、設定信号S23に応じて、発振周波数f1に対する周波数拡散処理のオン/オフ(基準トリミングデータS12をオシレータ130にスルー出力するか否か)を設定する機能、周波数拡散処理における発振周波数f1の変調周期(カウンタ値S21の上限値)を設定する機能、ないしは、周波数拡散処理における発振周波数f1の変調幅(変調トリミングデータS22における調整ステップの上限値及び下限値)を設定する機能などを持たせてもよい。設定信号S23は、OTPROMから読み出してもよいし、レジスタ120から読み出してもよいし、或いは、装置外部から入力してもよい。
【0049】
図7は、変調トリミングデータS22の第1変調例(センタースプレッド)を示す図である。本図の例では、基準トリミングデータS12を中心値として、変調トリミングデータS22を上下に5ステップずつ変化させる場合を考える。
【0050】
(a)欄で示すように、トリミング前の発振周波数f1が4.98MHzであった場合は、基準トリミングデータS12のデータ値が「10000010」に設定されている。従って、この基準トリミングデータS12をオシレータ130にスルー出力してやれば、トリミング後の発振周波数f1が5.00MHzに合わせ込まれる。
【0051】
このとき、トリミングデータ変調部220は、基準トリミングデータS12のデータ値(調整基準値に相当)を中心値として、変調トリミングデータS22のデータ値を上下に5ステップずつ動的に変化させる。より具体的に述べると、トリミングデータ変調部220は、変調トリミングデータS22のデータ値を上限値「10000111」(=調整基準値+5ステップ)から下限値「01111101」(=調整基準値−5ステップ)まで動的に変化させる。その結果、発振周波数f1が5.00MHzを中心値として周期的にスイングされる。
【0052】
また、(b)欄で示すように、トリミング前の発振周波数f1が5.04MHzであった場合には、基準トリミングデータS12のデータ値が「01111100」に設定されている。従って、この基準トリミングデータS12をオシレータ130にスルー出力してやれば、トリミング後の発振周波数f1が5.00MHzに合わせ込まれる。
【0053】
このとき、トリミングデータ変調部220は、基準トリミングデータS12のデータ値(調整基準値に相当)を中心値として、変調トリミングデータS22のデータ値を上下に5ステップずつ動的に変化させる。より具体的に述べると、トリミングデータ変調部220は、変調トリミングデータS22のデータ値を上限値「10000001」(=調整基準値+5ステップ)から下限値「01110111」(=調整基準値−5ステップ)まで動的に変化させる。その結果、発振周波数f1が5.00MHzを中心値として周期的にスイングされる。
【0054】
なお、トリミング前の発振周波数f1が目標値から大きく乖離していた場合には、基準トリミングデータS12のデータ値がその最大値(11111111)または最小値(00000000)に近くなり、変調トリミングデータS22をフルレンジ(上記の例では±5ステップ)でスイングさせることができなくなる。このような不具合を避けるためには、基準トリミングデータS12をその最大値から最小値までフルレンジで設定可能とするのではなく、少なくともその最大値及び最小値からそれぞれ変調ステップ分(上記の例では5ステップ分)の設定禁止範囲を設けておくことが望ましい。
【0055】
図8は、第1実施形態でのセンタースプレッド結果を示すタイミングチャートであり、上から順番に、発振周波数f1、カウンタ用クロック(=クロック信号S13)、カウンタ値S21、周波数変化タイミング信号、及び、周波数調整ビットが描写されている。
【0056】
本図の例では、クロック信号S13のパルスが3カウントされる毎に、周波数変化タイミング信号のトリガパルスが生成されており、このトリガパルスに同期して周波数調整ビットが+5ステップから−5ステップまで1ステップずつ巡回的に切り替えられている。その結果、クロック信号S13の発振周波数f1は、その目標値を中心値として周期的に変化されることになる。
【0057】
図9は、変調トリミングデータS22の第2変調例(ダウンスプレッド)と第3変調例(アップスプレッド)を示す図である。本図の例では、基準トリミングデータS12を上限値として変調トリミングデータS22を下側にのみ8ステップ分だけ変化させる場合、及び、基準トリミングデータS12を下限値として変調トリミングデータS22を上側にのみ8ステップ分だけ変化させる場合を考える。
【0058】
(a)欄及び(b)欄で示すように、トリミング前の発振周波数f1が4.98MHzであった場合には、基準トリミングデータS12のデータ値が「10000010」に設定されている。従って、この基準トリミングデータS12をオシレータ130にスルー出力してやれば、トリミング後の発振周波数f1が5.00MHzに合わせ込まれる。
【0059】
発振周波数f1をダウンスプレッドさせる場合、トリミングデータ変調部220では、(a)欄で示すように、基準トリミングデータS12のデータ値(調整基準値に相当)を上限値として、変調トリミングデータS22のデータ値が下側にのみ8ステップ分だけ動的に変化される。より具体的に述べると、トリミングデータ変調部220は、変調トリミングデータS22のデータ値を上限値「10000010」(=調整基準値)から下限値「01111010」(=調整基準値−8ステップ)まで動的に変化させる。その結果、発振周波数f1が5.00MHzを上限値として周期的にスイングされる。
【0060】
一方、発振周波数f1をアップスプレッドさせる場合、トリミングデータ変調部220では、(b)欄で示すように、基準トリミングデータS12のデータ値(調整基準値に相当)を下限値として、変調トリミングデータS22のデータ値が上側にのみ8ステップ分だけ動的に変化される。より具体的に述べると、トリミングデータ変調部220は、変調トリミングデータS22のデータ値を上限値「10001010」(=調整基準値+8ステップ)から下限値「10000010」(=調整基準値)まで動的に変化させる。その結果、発振周波数f1が5.00MHzを下限値として周期的にスイングされる。
【0061】
図10は、第1実施形態でのダウンスプレッド結果を示すタイミングチャートであり、上から順番に、発振周波数f1、カウンタ用クロック(=クロック信号S13)、カウンタ値S21、周波数変化タイミング信号、及び、周波数調整ビットが描写されている。
【0062】
本図の例では、クロック信号S13のパルスが3カウントされる毎に、周波数変化タイミング信号のトリガパルスが生成されており、このトリガパルスに同期して周波数調整ビットが0ステップから−8ステップまで1ステップずつ巡回的に切り替えられている。その結果、クロック信号S13の発振周波数f1は、その目標値を上限値として周期的に変化されることになる。
【0063】
図11は、第1実施形態でのアップスプレッド結果を示すタイミングチャートであり、上から順番に、発振周波数f1、カウンタ用クロック(=クロック信号S13)、カウンタ値S21、周波数変化タイミング信号、及び、周波数調整ビットが描写されている。
【0064】
本図の例では、クロック信号S13のパルスが3カウントされる毎に、周波数変化タイミング信号のトリガパルスが生成されており、このトリガパルスに同期して周波数調整ビットが0ステップから+8ステップまで1ステップずつ巡回的に切り替えられている。その結果、クロック信号S13の発振周波数f1は、その目標値を下限値として周期的に変化されることになる。
【0065】
このように、第1実施形態のクロック信号生成回路200では、発振周波数f1のトリミング機能を活用することにより、極めて簡易に発振周波数f1の周波数拡散機能を実装することができる。ただし、第1実施形態のクロック信号生成回路200では、クロック信号S13のパルス数に応じて周波数変化タイミングを決定しているので、発振周波数f1の変調周期にも周波数拡散処理の影響が及んでしまう。すなわち、発振周波数f1が高いほど変調周期が短くなり、発振周波数f1が低いほど変調周期が長くなる。その結果、発振周波数f1の時間平均値が低周波数側に偏ってしまう。
【0066】
<第2実施形態>
図12は、クロック信号生成回路の第2実施形態を示すブロック図である。第2実施形態のクロック信号生成回路300は、先出の第1実施形態(
図6)をベースとしつつ、発振周波数f1の偏りを防ぐための回路ブロックとして、オシレータ310が追加されている点に特徴を有する。そこで、先出の第1実施形態と同様の回路ブロックについては、
図6と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0067】
オシレータ310は、カウンタ210に対して発振周波数f2が固定されたクロック信号S31を出力する。なお、オシレータ310は、自身が生成するクロック信号S31の発振周波数f2を基準トリミングデータS12に応じて任意に調整するためのトリミング機能を備えている。オシレータ310の回路構成としては、オシレータ130と同様の回路構成(先出の
図2または
図5を参照)を採用すればよいので重複した説明は割愛する。
【0068】
カウンタ210は、発振周波数f1に周波数変調処理(周波数拡散処理)が掛けられたクロック信号S13ではなく、発振周波数f2が固定されたクロック信号S31のパルス数をカウントしてカウンタ値21を出力する。トリミングデータ変調部220は、カウンタ値S21に応じた周波数変化タイミングで変調トリミングデータS22のデータ値を切り替える。
【0069】
上記したように、発振周波数f1の偏りが許容できない場合には、クロック信号S13を生成するためのオシレータ130に加えて、周波数変化タイミングを決定するためのオシレータ310を別系統で用意し、オシレータ310で生成されるクロック信号S31に周波数変調処理(周波数拡散処理)の影響が及ばないようにすればよい。
【0070】
このような構成とすることにより、カウンタ値S21のインクリメント周期が一定となり、延いては、周波数変化タイミングが一定となる。従って、発振周波数f1が高周波数に設定される期間と低周波数に設定される期間が等しくなるので、発振周波数f1の偏りが解消される。
【0071】
なお、オシレータ310は、従来のSSCG回路(
図20を参照)と比べて非常に小面積である。従って、オシレータ310を1つ余分に実装したとしても、従来のSSCG回路を実装する場合に比べれば、回路規模を大幅に縮小することが可能となる。
【0072】
図13〜
図15は、それぞれ、第2実施形態でのセンタースプレッド結果、ダウンスプレッド結果、及び、アップスプレッド結果を示すタイミングチャートであり、いずれも上から順に、発振周波数f1、カウンタ用クロック(=クロック信号S31)、カウンタ値S21、周波数変化タイミング信号、及び、周波数調整ビットが描写されている。
【0073】
いずれの図においても、クロック信号S31のパルスが3カウントされる毎に、周波数変化タイミング信号のトリガパルスが生成されており、このトリガパルスに同期して周波数調整ビットが1ステップずつ巡回的に切り替えられている。なお、クロック信号S31の発振周波数f2が一定なので、発振周波数f1が高周波数に設定される期間と低周波数に設定される期間が等しくなっていることが分かる。
【0074】
<第3実施形態>
図16は、クロック信号生成回路の第3実施形態を示すブロック図である。第3実施形態のクロック信号生成回路400は、先出の第2実施形態(
図12)をベースとしつつ、クロック信号S31をより有効活用するための回路ブロックとして、セレクタ410及び420が追加されている点に特徴を有する。そこで、先出の第2実施形態と同様の回路ブロックについては、
図12と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0075】
セレクタ410は、セレクタ制御信号S43に応じてクロック信号S13とクロック信号S31の一方をクロック信号S41として選択し、これを第1回路ブロック(不図示)に出力する。
【0076】
セレクタ420は、セレクタ制御信号S43に応じてクロック信号S13とクロック信号S31の一方をクロック信号S42として選択し、これを第2回路ブロック(不図示)に出力する。
【0077】
セレクタ制御信号S43は、OTPROMから読み出してもよいし、レジスタ120から読み出してもよいし、或いは、装置外部から入力してもよい。
【0078】
このような構成とすることにより、第1回路ブロックと第2回路ブロックのそれぞれに対して、周波数変調が掛けられたクロック信号S13と周波数変調が掛けられていないクロック信号S31のうち、より適切な方を任意に選択して出力することが可能となる。
【0079】
特に、セレクタを複数用意することにより、複数の回路ブロック毎にクロック信号の周波数変調を掛けるか否かを選択することが可能となる。また、一度クロック信号に周波数変調を掛けてEMIの低減効果を確認した後で、恒常的に周波数変調を掛けるべきか否かを判断することも可能となる。
【0080】
<電子機器への適用>
図17及び
図18は、それぞれ、スマートフォンX及びデジタルスチルカメラYの外観図である。例えば、これらの電子機器に各々組み込まれる表示パネル駆動用ドライバLSIに先述のクロック信号生成回路を搭載すれば、面積の大きいSSCG回路を実装することなく、簡易にEMI対策を施すことが可能となる。
【0081】
<車両への適用>
図19は、車両Zの一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Zは、不図示のバッテリと、バッテリから電源電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器Z11〜Z18とを搭載している。なお、本図における電子機器Z11〜Z18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0082】
電子機器Z11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0083】
電子機器Z12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0084】
電子機器Z13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0085】
電子機器Z14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0086】
電子機器Z15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0087】
電子機器Z16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Zに組み込まれている電子機器である。
【0088】
電子機器Z17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Zに装着される電子機器である。
【0089】
電子機器Z18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0090】
なお、先述のクロック信号生成回路は、電子機器Z11〜Z18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0091】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。