特許第6371192号(P6371192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371192
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20180730BHJP
   E06B 1/32 20060101ALI20180730BHJP
   E06B 3/26 20060101ALI20180730BHJP
   E06B 3/34 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B1/32
   E06B3/26
   E06B3/34
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-213195(P2014-213195)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-79717(P2016-79717A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晃尚
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−231774(JP,A)
【文献】 実開平02−121588(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 3/34
E06B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に取り付けられる窓枠、又は、窓枠に開閉可能に装着される障子の框に固定される機能部品を有し、
機能部品が固定される窓枠又は框は、金属形材と樹脂カバーとから形成されるとともに、窓枠又は框の機能部品取付け位置の樹脂カバーが切除されており、
樹脂カバーの切除部においてスペーサと加熱発泡材が重ならない状態で配置され、機能部品は、樹脂カバーの切除部において金属スペーサ及び加熱発泡材を挟んで金属形材に固定されている
ことを特徴とするサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の枠材又は障子の框の室内側を樹脂や木材等の断熱性カバーにより被覆して断熱性を向上させたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の枠材や障子の框の室内側を樹脂や木材等の断熱性カバーにより被覆してなる枠材により形成されるサッシは知られている。そのような断熱性を備えるサッシに対してオペレータハンドル等の機能部品を取り付けるに際して、断熱性カバーの機能部品が取り付けられる部分に裏板を設けて補強してなるサッシは知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−182434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のサッシにおいては、機能部品が取り付けられる部分は裏板で補強されているものの、機能部品は樹脂や木材等の断熱性カバーの表面に取付けられるので、火災により断熱性カバーが溶解・燃焼したり、脱落したりすると機能部品の固定が維持できなくなり、障子のがたつきが生じて延焼を広げてしまう可能性があった。また、機能部品の内部が直接火炎にさらされたり、火災の熱により機能部品の内部に存在する樹脂製の部品等が溶け出すなどして、可燃性のガス等が発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、金属形材と樹脂カバーとから形成される枠体もしくは框に対して、機能部品を強固に固定すること、及び、火災時において機能部品の内部の樹脂部材が溶解して機能部品の外部に流出するなどして、可燃性のガス等が発生することを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサッシは、建物開口部に取り付けられる窓枠、又は、窓枠に開閉可能に装着される障子の框に固定される機能部品を有し、機能部品が固定される窓枠又は框は、金属形材と樹脂カバーとから形成されるとともに、窓枠又は框の機能部品取付け位置の樹脂カバーが切除されており、樹脂カバーの切除部においてスペーサと加熱発泡材が重ならない状態で配置され、機能部品は、樹脂カバーの切除部において金属スペーサ及び加熱発泡材を挟んで金属形材に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
機能部品を取付ける位置の樹脂カバーが切除され、機能部品が金属製のスペーサを介して金属形材に固定されるので、機能部品の固定が安定し、火災時の炎により、機能部品自体が金属形材から落下することを防止できる。また、固定部分には、加熱発泡材が配置されているので、機能部品を構成する樹脂部材が溶解して機能部品の外に流出することや、樹脂部材の溶解による機能部品の分解や落下等を防止でき、また、樹脂部材の溶解による可燃性の気体の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態のサッシの内観図である。
図2】本発明の実施形態のサッシの横断面図である。
図3】本発明の実施形態のサッシの機能部材であるオペレータの取付状態を説明するための下枠部分の縦断面図である。
図4】本発明の実施形態のサッシの機能部材であるオペレータの取付状態を説明するための下枠部分の分解縦断面図である。
図5】本発明の実施形態のサッシの機能部品であるオペレータの取付状態を説明するための下枠部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−サッシ全体の構成−
本発明のサッシを、機能部品として滑り出し障子の開閉を行うためのオペレータを有するサッシを例示して説明する。
本発明の実施形態のサッシは、図1に示されるように、上枠11,下枠12及び右、左縦枠13,14を四周組にしてなる枠体1に、上框21,下框22及び右、左縦框23,24を四周組にしてなる框枠の内周に板ガラス等のパネル25を装着してなる障子2が開閉自在に支持されて構成されている。
下枠12には、障子2を開閉する際に操作するオペレータ6が設けられており、右縦枠13には、障子2の閉鎖状態をロックするためのロック手段9が設けられている。
【0010】
−左右縦枠及び左右縦框の構成−
図2に示されるように、右、左縦枠13,14は、アルミニウム等により押出形成された右、左縦枠本体131,141と、右、左縦枠本体131,141の室内側に装着されてなる合成樹脂等により形成された右、左縦枠樹脂カバー132,142とから構成されている。
右、左縦枠本体131,141は、見込み方向中央よりやや室内側に内周方向に突出する右、左縦内周片131a,141aが形成されており、右、左縦内周片131a,141aの室内側面及び右、左縦内周片131a,141aよりも室内側の内周側面が右、左縦枠樹脂カバー132,142により覆われて形成されている。
【0011】
右、左縦枠樹脂カバー132,142は略L字状に形成されており、その一辺が右、左縦内周片131a,141aの室内側面に、他の一辺が右、左縦枠本体131,141の内周側面を覆うように右、左縦枠本体131,141に取付けられている。右、左縦内周片131a,141aの室内側面を覆う辺の内周端近傍には右、左縦枠本体131,141の内周端部を係合する係合凹部が形成され、係合凹部のさらに内周側に障子2の右、左縦框23,24の室内側面に当接する気密材aが配置されている。
右縦枠13の室内側面には、ロック手段9が固定されており、ロック手段9のロックアーム91が障子2の右縦框23の外周面に設けたロック受23aに係止され、障子2の閉鎖状態を維持している。
【0012】
障子2の右、左縦框23,24は、アルミニウム等により押出形成された右、左縦框本体231,241と、右、左縦框本体231,241の室内側面に装着され、ガラス等のパネル25を支持固定するための押縁として機能する右、左縦框樹脂カバー232,242とから構成されている。そして、右、左縦枠13,14の右、左縦枠樹脂カバー132,142の内周端に配置された気密材aが右、左縦框23,24の右、左縦枠樹脂カバー132,142の室内側面に当接して気密しており、室内側にアルミニウム等の金属材料が露出しない。
【0013】
−下枠及び下框の構成−
下枠12は、アルミニウム等により押出形成された下枠本体121と、下枠本体121の室内側面を覆う合成樹脂製の下枠樹脂カバー122とから構成されている。
下枠本体121は、見込み方向に並ぶ2つの中空部(室外側中空部121a及び室内側中空部121b)を有し、室外側中空部121aが障子2の下框22の外周面に対向するとともに、室外側中空部121aの室内側に室内側中空部121bが内周方向に向けて形成されている。
室内側中空部121bの上面には、さらに内周(上方)に向かって延設される室内壁部121cが形成され、室内側中空部121b及び室内壁部121cの室外側面が下框22の室内側面に対向している。
【0014】
室外側中空部121aの内部には、スチール等からなる補強部材bが配置されており、該補強部材bには火災時等の熱により発泡して膨張する熱膨張材fが貼着されている。また、室内側中空部121bの内周面及び室内壁部121cに亘ってL字状のスチール等からなる補強部材5が配置され、ネジg等により室内側中空部121bの内周面に固定されている。
室内壁部121cの室内側面には合成樹脂等からなる第1の下枠樹脂カバー122aが取付けられ、室内側中空部121bの室内側面には、同じく合成樹脂等からなる第2の下枠樹脂カバー122bが取付けられる。
第1の下枠樹脂カバー122aは、断面略L字状を成しており、その一辺を室内壁部121cの内周端を覆うように形成されているとともに、その下端部において第2の下枠樹脂カバー122bと当接しており、下枠12の室内に露出する面を合成樹脂により形成している。なお、本実施形態においては、下枠樹脂カバー122を二つの部材により分けて形成したが、これらをまとめて一つの下枠樹脂カバーとして形成しても良い。
【0015】
一方、障子2の下框22は、アルミニウム等により押出形成された下框本体221と、下框本体221の室内側に取付けられる合成樹脂製の下框樹脂カバー222とから構成されており、下框樹脂カバー222はパネル25を固定支持するための押縁としても機能する。下框本体221は下框中空部221aと下框中空部221aの室外側下端より下方に延設する室外壁部221bとからなり、下框中空部221aの内部には、スチール等からなる補強部材sが配置されるとともに、該補強部材bには熱により膨張する熱膨張材fが貼着されている。下框樹脂カバー222の室内側面には、後述する開閉機構に連結される障子側アーム223がネジ等により固定されている。
【0016】
下枠12の室外側中空部121aの室外側面上端部と室内側中空部121bの室外側面上端部には気密材a,aが配置されており、それぞれ下框22の室外壁部221bの室内側面と下框樹脂カバー222の室内側面に当接して、下枠12と下框22との間を気密している。そして、下枠12の内周面と室内側中空部121bの室外側面、及び、下框22の外周面と室外壁部221bの室内側面によって気密空間が形成され、該気密空間には障子2を滑り出して開閉するためリンク機構Lが配置されている。
また、気密空間内の室内側中空部121bの室外側面及び室外壁部221bの室内側面には熱により発泡して膨張する熱膨張材fが配置され、火災時の熱により膨張して枠体1と障子2との間に充満することにより、火災時の室内外の連通を防止して、延焼を防いでいる。
【0017】
−機能部品(オペレータ)の取付け−
図2,3に示されるように、下枠12の下枠樹脂カバー122の室内側には、障子2を開閉操作するためのオペレータ6が取付けられている。オペレータ6は、概略矩形の本体部61と、本体部61の上面より斜め上方に突出して回転自在に保持されるハンドル62と、本体部61の内部に配置されて、ハンドル62の回転に基づいて障子2の開閉動作を行う開閉用アーム63とから構成されている。本体部61の内部には、開閉用アーム63のギア部63aが回動自在に支持されており、ハンドル62軸に固定されたウォームギア(図示しない。)と噛み合っている。ハンドル62の回動に伴ってギア部63aが回動し、ギア部63aより延設されたアーム部63bが揺動される。
【0018】
オペレータ6の開閉用アーム63のアーム部63bの先端は下枠12の室内壁部121cを貫通し、ピン等により補助リンクアーム64の一端に回動自在に連結されている。さらに、補助リンクアーム64の他端は、下框22に固定された障子側アーム223にピン等により回動自在に連結されている。
そして、操作者がオペレータ6のハンドル62を回転させると、ハンドル軸に固定されたウォームギア(図示しない。)と開閉用アーム63のギア部63aとの噛み合いにより、開閉用アーム63が図2における矢印A方向に回動される。開閉用アーム63の回動に伴って、補助リンクアーム64を介して障子2が閉鎖位置から開放位置に移動される。
【0019】
図4,5を参考にして、オペレータ6の取付け構造について説明する。
下枠12の第1の下枠樹脂カバー122aのオペレータ6が取付けられる箇所には、オペレータ6の下枠12への当接部分の領域よりも若干狭い領域に亘って切除され切除部122cが形成されている。そのため、下枠樹脂カバー122aの室外側に位置する下枠本体121の室内壁部121cが切除部122cにおいて、室内側に露出している。
室内壁部121cの切除部122cから露出した部分には、左右方向に長い長方形の長孔121dが設けられており、その長孔121dの左右にはオペレータ6を下枠12に固定するためのネジを螺着するネジ孔121f、121fが設けられている。
【0020】
下枠樹脂カバー122aに設けられた切除部122cには、該切除部122cと略同じ、もしくはやや小さい縦横の幅を有し、下枠樹脂カバー122aの厚さと略等しい厚さのスペーサ7が配置される。スペーサ7は、その上方より中央位置に矩形の切欠部7aが形成されているとともに、切欠部7aの左右両側には、オペレータ6を下枠12に固定するためのネジgが貫通する貫通孔7b,7bが設けられている。
スペーサ7の切欠部7aには、中央に左右方向に長い長方形の長孔8aが開けられた熱膨張材(加熱発泡材)8が配置されている。
【0021】
オペレータ6を下枠12に取付けるに際しては、熱膨張材(加熱発泡材)8の長孔8aにオペレータ6の室外側より突出する開閉用アーム63のアーム部63bを挿入して貫通させ、下枠樹脂カバー122aに設けられた切除部122cを覆うようにオペレータ6を配置する。
そして、オペレータ6本体の左右に設けられたネジ保持部65,65からネジg,gを挿入してスペーサ7の貫通孔7b,7bを貫通させて、室内壁部121cの切除部122cのネジ孔、更には、室内壁部121cの室外側に配置された補強部材5のネジ孔に螺合することにより、オペレータ6を下枠12に取り付ける。
オペレータ6は、下枠12のアルミニウム等の押出形材からなる室内壁部121c及び補強部材5に対してネジg,gにより直接固定するので、樹脂製の下枠樹脂カバー122aに対してオペレータ6の操作時に負荷がかかることなく、オペレータ6を下枠12に対して強固に取付けることができる。
【0022】
オペレータ6の下枠12へのネジg,gによる取付け後には、オペレータ6のネジ保持部65,65に対してカバー部材66,66が取付けられる。オペレータ6の取付けにより室内壁部121cの室外側に突出した開閉用アーム63のアーム部63bの先端は、補助リンクアーム64の他端にピン結合され、障子2の開閉リンク機構が形成される。
【0023】
また、下枠樹脂カバー122aに設けられた切除部122cに配置されるスペーサ7は、下枠樹脂カバー122aの厚さと略等しい厚さに形成されているので、オペレータ6を取付けるネジ締めの際に樹脂製の下枠樹脂カバー122aに力が加わることがなく、カバー部材の破損を防ぐことができる。
【0024】
−本発明の実施形態による作用・効果−
以上のように、本発明の実施形態のサッシにおいては、機能部品であるオペレータ6が金属製のスペーサ7を介して、下枠本体121、さらには、下枠本体121を補強する補強部材5に固定されているので、火災時に下枠樹脂カバー122が脱落しても、オペレータ(機能部品)6の固定を維持し、障子2の閉鎖状態を保つことができる。
また、スペーサ7には切欠部7aが形成され、該切欠部7aには熱により発泡して膨張する熱膨張材(加熱発泡材)8が配置されているので、火災時に下枠本体121に設けられた長孔121dを塞いで室内外の連通を防止できる。さらに、発泡して膨張した熱膨張材(加熱発泡材)8は、オペレータ6の取付面側からオペレータ6の内部に充満して、オペレータ6内部を火災の炎や熱から保護するとともに、オペレータ6の内部の樹脂部材が溶解して外部に流出することを防止して、オペレータ6の内部機構を構成する樹脂部材が溶解して可燃性のガス等が発生することを防止できる。
【0025】
なお、本実施形態においては、機能部品として滑り出し窓の障子を開閉するためのオペレータを例示して説明したが、機能部品はオペレータに限られるものではなく、窓の開閉をロックするロック手段やその他の様々な機能部品に採用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 枠体
11 上枠
12 下枠
13 右縦枠
14 左縦枠
2 障子
21 上框
22 下框
23 右縦框
23a ロック受
24 左縦框
25 パネル
5 補強部材
6 オペレータ
61 本体部
62 ハンドル
63 開閉用アーム
63a ギア部
63b アーム部
64 補助リンクアーム
65 ネジ保持部
66 カバー部材
7 スペーサ
7a 切欠部
7b 貫通孔
8 熱膨張材(加熱発泡材)
8a 長孔
9 ロック手段
91 ロックアーム
L リンク機構
a 気密材
b 補強部材
f 熱膨張材
g ネジ
図1
図2
図3
図4
図5