(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極を含む第1基材と、前記第1基材に対向する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材を接着させる環状の封止部と、前記第1基材及び前記第2基材の間に設けられ、光増感色素が担持される多孔質酸化物半導体層と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置され、前記多孔質酸化物半導体層に含浸される電解質とを備える色素増感光電変換セルを有する色素増感光電変換素子を製造する色素増感光電変換素子の製造方法であって、
前記第1基材を含む第1基体、及び、前記第2基材を含む第2基体を準備する基体準備工程と、
前記第1基体及び前記第2基体を、前記封止部を形成する環状の封止材を介して貼り合せる貼合せ工程とを含み、
前記基体準備工程において、前記第1基体及び前記第2基体のうちの一方の基体に前記封止材が固定され、他方の基体が、前記電解質が含浸されている前記多孔質酸化物半導体層を有し、前記他方の基体に前記封止材が固定されていない、色素増感光電変換素子の製造方法。
前記基体準備工程の後であって、前記貼合せ工程の前に、前記第1基体及び前記第2基体を互いに対向させた状態で前記封止材を介して接触させて積層体を準備する積層体準備工程をさらに含み、
前記貼合せ工程において、前記積層体がチャンバの内部に配置された状態で、前記チャンバの内部空間を減圧した後、前記封止材を介して前記第1基体及び前記第2基体を貼り合せるとともに、前記封止材を加熱することにより前記第1基体及び前記第2基体に接着させる、請求項1に記載の色素増感光電変換素子の製造方法。
前記貼合せ工程において、前記封止材を加熱及び加圧することにより、前記第1基体及び前記第2基体に前記封止材を接着させて前記第1基体と前記第2基体との間に前記封止部を形成し、加熱及び加圧は、前記第1基体及び前記第2基体のうち前記封止材が固定されている前記一方の基体における前記他方の基体と反対側の面から熱源を押し付けることによって行われる、請求項2に記載の色素増感光電変換素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感光電変換素子の製造方法は、得られる色素増感光電変換素子の光電変換特性及び耐久性の向上の点、並びに製造効率の点で改善の余地を有していた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換特性及び耐久性を十分に向上させることができる色素増感光電変換素子を効率的に製造できる色素増感光電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、上述した特許文献1に記載の色素増感光電変換素子の製造方法において、導電性基板及び対極のいずれか一方の基材のみに封止材を形成すれば、効率よく色素増感光電変換素子を製造できるものと本発明者らは考えた。しかし、この場合、本発明者らは以下の(1)〜(3)の問題が生じるおそれがあるのではないかと考えた。
(1)多孔質酸化物半導体層側の基材に封止材を形成すると、多孔質酸化物半導体層に不純物が付着し、変換効率が十分ではなくなる。
(2)片側の基材に封止材を固定して、封止材を土手として、封止材の内側に電解質を滴下すると、電解質が封止材と接触したまま、封止部を形成することになり、封止部と、これを接着させる相手側の基材との間に電解質が漏れて入り込んだり、封止材に電解質が取り込まれたりして、封止性能(耐久性)が十分ではなくなる。
(3)但し、単に封止材が固定された基材と反対側の基材に電解質を設けただけでは、土手がないので、電解質が流れ出してしまい、得られる色素増感光電変換素子において電解質量が足りなくなり変換特性が下がったり、封止の際に、封止材と基材との間に、電解質が入ってしまい、耐久性が劣化したりする。このことから、本発明者らは、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、電極を含む第1基材と、前記第1基材に対向する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材を接着させる環状の封止部と、前記第1基材及び前記第2基材の間に設けられ、光増感色素が担持される多孔質酸化物半導体層と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置され、前記多孔質酸化物半導体層に含浸される電解質とを備える色素増感光電変換セルを有する色素増感光電変換素子を製造する色素増感光電変換素子の製造方法であって、前記第1基材を含む第1基体、及び、前記第2基材を含む第2基体を準備する基体準備工程と、前記第1基体及び前記第2基体を、前記封止部を形成する環状の封止材を介して貼り合せる貼合せ工程とを含み、前記基体準備工程において、前記第1基体及び前記第2基体のうちの一方の基体に前記封止材が固定され、他方の基体が、前記電解質が含浸されている前記多孔質酸化物半導体層を有し、前記他方の基体に前記封止材が固定されていない、色素増感光電変換素子の製造方法である。
【0010】
上記製造方法によれば、第1基体及び第2基体のうち封止材が固定されていない他方の基体には封止材が固定されておらず、他方の基体に含まれる多孔質酸化物半導体層において、封止材を固定する際に生じる不純物の付着による汚染が十分に抑制される。このため、光電変換が不純物により阻害されることがなく、その結果、光電変換効率を向上させることができる。また上記製造方法によれば、封止材が固定されている一方の基体と反対側の他方の基体に電解質を設けているので、封止材と電解質とが接触しておらず、貼合せ工程において、封止部を形成する際に、封止材と他方の基体との間に電解質が漏れて入り込んだり、封止材に電解質が取り込まれたりすることが十分に抑制される。その結果、得られる色素増感光電変換素子の耐久性を向上させることができる。さらに、上記製造方法によれば、多孔質酸化物半導体層に電解質が含浸されており、電解質の表面張力により、外側に電解質が流出しにくくなっており、電解質量が足りなくなって光電変換特性が低下したり、封止材と他方の基体との間に電解質が入って得られる色素増感光電変換素子の耐久性が低下したりすることを十分に抑制できる。さらに第1基体及び第2基体の封止材同士を位置合わせすることが不要となるので、貼合せ工程で封止材同士の位置合せが不十分なまま貼合せが行われる場合に比べて、所望の厚さの封止部を形成することが可能となり、封止部と他方の基体との間において、高い接着性を確保することができる。このため、得られる色素増感光電変換素子の耐久性を向上させることができる。また上記製造方法によれば、第1基体及び第2基体のうち一方の基体のみに封止材を固定すればよいので、両方の基体に封止材を固定する場合に比べて、他方の基体に封止材を固定しなくて済む分、第1基体及び第2基体を準備するのに要する時間が短縮される。また貼合せ工程において、第1基体及び第2基体の封止材同士を位置合わせすることが不要となる。従って、色素増感光電変換素子を効率的に製造することができる。
【0011】
上記製造方法は、前記基体準備工程の後であって、前記貼合せ工程の前に、前記第1基体及び前記第2基体を互いに対向させた状態で前記封止材を介して接触させて積層体を準備する積層体準備工程をさらに含み、前記貼合せ工程において、前記積層体がチャンバの内部に配置された状態で、前記チャンバの内部空間を減圧した後、前記封止材を介して前記第1基体及び前記第2基体を貼り合せるとともに、前記封止材を加熱することにより前記第1基体及び前記第2基体に接着させることが好ましい。
【0012】
上記製造方法によれば、第1基体及び第2基体を互いに対向させた状態で接触させて積層体を準備した後、この積層体がチャンバ内で減圧下に置かれる。このとき、積層体は、封止材が第1基体の第1基材に接触するように準備される。このため、封止材が溶融される際に電解質が蒸発しても、電解質は積層体内に閉じ込められ、外部に漏れにくくなっている。また電解質が蒸発しても、その封止材と第1基体との間に電解質の蒸気層が形成されることが十分に抑制される。その結果、封止材と第1基体とを十分に接着させることが可能となる。このため、得られる色素増感光電変換素子100の光電変換特性を向上させることができる。
【0013】
上記貼合せ工程において、前記封止材を加熱及び加圧することにより、前記第1基体及び前記第2基体に前記封止材を接着させて前記第1基体と前記第2基体との間に前記封止部を形成し、加熱及び加圧は、前記第1基体及び前記第2基体のうち前記封止材が固定されている前記一方の基体における前記他方の基体と反対側の面から熱源を押し付けることによって行われることが好ましい。
【0014】
この場合、一方の基体は、光増感色素が担持された多孔質酸化物半導体層を含んでいないため、貼合せ工程において、一方の基体における他方の基体と反対側の面から熱源を押し付けても、その熱源による熱が他方の基体側の多孔質酸化物半導体層に担持された光増感色素に伝わりにくくなる。このため、得られる色素増感光電変換素子の光電変換特性をより向上させることができる。また、封止材が第1基体及び第2基体のうち封止材が固定されている一方の基体における他方の基体と反対側の面から加圧されることで、第2基体と封止材とをより十分に接着させることができるので、得られる色素増感光電変換素子の耐久性をより向上させることもできる。
【0015】
前記基体準備工程においては、前記封止材が固定されている前記一方の基体が可撓性を有することが好ましい。
【0016】
この場合、第1基体と第2基体とを貼り合わせる際に、封止材が固定されている一方の基体を他方の基体の形状に追従させることができる。また一方の基体が可撓性を有することで、その後の貼合せ工程において封止部を形成する際に、封止材が潰れても、一方の基体はその封止材の形状に追従することができる。
【0017】
上記製造方法においては、前記基体準備工程が、前記第1基体及び前記第2基体のうち前記他方の基体を準備する際に、前記多孔質酸化物半導体層に前記電解質を滴下する工程を含み、前記多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの前記電解質の滴下量が0.5〜4.0μLであることが好ましい。
【0018】
この場合、多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの電解質の滴下量が0.5μL未満である場合に比べて、電解質が十分に多孔質酸化物半導体層に含浸され、色素増感光電変換素子の光電変換特性をより向上させることができる。また多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの電解質の滴下量が0.5〜4.0μLである場合、電解質の滴下量が4.0μLを超える場合に比べて、電解質が多孔質酸化物半導体層から溢れ出しにくくなり、第1基体と第2基体とを貼り合せる際に、封止材と第1基体の第1基材又は第2基体の第2基材との間に電解質が入り込むことがより十分に抑制される。このため、貼合せ工程において、封止材と、第1基体および第2基体のうち封止材が固定されていない方の基体との間において、より高い接着性を確保することができる。このため、得られる色素増感光電変換素子の耐久性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光電変換特性及び耐久性を十分に向上させることができる色素増感光電変換素子を効率的に製造できる色素増感光電変換素子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
まず本発明に係る色素増感光電変換素子の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
はじめに、色素増感光電変換素子の製造方法の説明に先立ち、この製造方法により得られる色素増感光電変換素子100について
図1を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る色素増感光電変換素子の製造方法の実施形態により得られる色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、色素増感光電変換素子100は1つの色素増感光電変換セル50を備えており、色素増感光電変換セル50は、電極7を含む第1基材1と、第1基材1に対向する第2基材2とを有している。本実施形態では、第2基材2は対極で構成されている。また第1基材1の電極7の上には多孔質酸化物半導体層3が固定され、多孔質酸化物半導体層3には光増感色素が担持されている。第1基材1と第2基材2とは環状の封止部4を介して互いに接着されている。第1基材1と第2基材2との間には電解質5が配置されている。ここで、電解質5は多孔質酸化物半導体層3に含浸されている。
【0025】
第1基材1は、電極7と、電極7に対して第2基材2と反対側に設けられる透明基板6とを備えている。ここで、電極7は透明導電層からなる。
【0026】
第2基材2は、対極基板8と、対極基板8のうち第1基材1側に設けられて第2基材2の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層9とを備えている。
【0027】
次に、上記第1基材1、第2基材2、多孔質酸化物半導体層3、封止部4、電解質5及び光増感色素について詳細に説明する。
【0028】
(第1基材)
第1基材1は、上述したように、透明導電層からなる電極7と、電極7に対して第2基材2と反対側に設けられる透明基板6とを備えている。
【0029】
透明基板6を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板6の厚さは、色素増感光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜40000μmの範囲にすればよい。
【0030】
電極7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO
2)、及び、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。電極7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。電極7が単層で構成される場合、電極7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。電極7の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0031】
(第2基材)
第2基材2は、上述したように対極基板8と触媒層9とを備えている。
【0032】
対極基板8は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン等の耐食性の金属材料や、ITO、FTO等の導電性酸化物や、炭素、導電性高分子で構成される。対極基板8の厚さは、色素増感光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005mm〜0.1mmとすればよい。
【0033】
触媒層9は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0034】
(多孔質酸化物半導体層)
多孔質酸化物半導体層3は、酸化物半導体粒子で構成されている。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウム(In
3O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タリウム(Ta
2O
5)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ホルミウム(Ho
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)又はこれらの2種以上で構成される。多孔質酸化物半導体層3の厚さは、例えば0.1〜100μmとすればよい。
【0035】
(封止部)
封止部4としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0036】
(電解質)
電解質5は、例えばI
−/I
3−などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI
−/I
3−のほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質5は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0037】
また、電解質5は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0038】
また電解質5には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I
2、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0039】
さらに電解質5としては、上記電解質にSiO
2、TiO
2、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0040】
(光増感色素)
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。中でも、ターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体が好ましい。この場合、色素増感光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。
【0041】
次に、上述した色素増感光電変換素子100の製造方法について
図2〜
図6を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る色素増感光電変換素子の製造方法の一実施形態に用いる第2基体に封止材を固定した状態を示す断面図、
図3は、本発明に係る色素増感光電変換素子の製造方法の一実施形態に用いる第1基体を示す断面図、
図4は、
図2の第2基体に封止材を固定したものと
図3の第1基体とを対向させている状態を示す断面図、
図5は、
図2の第2基体と
図3の第1基体とを封止材を介して積層してなる積層体を示す断面図、
図6は、
図5の積層体において第1基体と第2基体とを封止材を介して貼り合せている状態を示す断面図である。
【0042】
<基体準備工程>
まず
図2に示すように、第2基材2と、第2基材2のうち触媒層9側の表面に設けられた封止材4Aとを有する第2基体20を準備する。そして、第2基体20には、触媒層9側の表面に封止材4Aを固定する。
【0043】
一方、
図3に示すように、第1基材1と、第1基材1上に設けられる多孔質酸化物半導体層3と、第1基材1上に設けられ、多孔質酸化物半導体層3に含浸される電解質5とを有する第1基体10を準備する。なお、本実施形態では、第1基体10には、封止材4を形成する環状の封止材4Aは固定されていない。従って、多孔質酸化物半導体層3は、封止材4Aが固定されていない第1基体10に含まれることになる。
【0044】
<積層体準備工程>
次に、
図4に示すように、第1基体10と、封止材4A付き第2基体20を互いに対向させた後、
図5に示すように、互いに接触させる。このとき、封止材4Aを第1基材1の電極7に接触させるとともに、封止材4Aの内側に多孔質酸化物半導体層3を配置させる。この時点ではまだ封止材4Aは溶融していない状態にある。言い換えると、封止材4Aは第1基材1の電極7に接着されていない状態にある。
【0046】
<貼合せ工程>
次に、積層体50Aを、チャンバ(図示せず)の内部に配置させる。そしてこの状態で、チャンバの内部空間を減圧する。その後、
図6に示すように、熱源としての加熱部材40を第2基体20のうち第1基体10と反対側の面に接触させ、第2基材2を介して封止材4Aを加圧しながら加熱して溶融させる。
【0047】
こうして封止材4Aを第1基材1に接着させて封止部4を形成し、第1基体10及び第2基体20同士を貼り合せる。その後、チャンバの内部空間の減圧操作を停止し、チャンバの内部空間を大気開放させる。
【0048】
以上のようにして1つの色素増感光電変換セル50からなる色素増感光電変換素子100が得られる。
【0049】
上記製造方法によれば、第1基体10及び第2基体20のうち封止材4が固定されていない第1基体10には封止材4Aが固定されておらず、第1基体10に含まれる多孔質酸化物半導体層3において、封止材4Aを固定する際に生じる不純物の付着による汚染が十分に抑制される。例えば、封止材4A自体や、封止材4Aを第1基体10に形成する場合に用いるキャリアフィルムの成分が多孔質酸化物半導体層3に転写されることが十分に抑制される。その結果、後工程の色素吸着が阻害されることがより十分に抑制され、得られる色素増感光電変換素子100の発電効率をより向上させることができる。このため、光電変換が不純物により阻害されることがなく、その結果、光電変換効率を向上させることができる。また上記製造方法によれば、封止材4Aが固定されている第2基体20と反対側の第1基体10に電解質5を設けているので、封止材4Aと電解質5とが接触しておらず、貼合せ工程において、封止部4を形成する際に、封止材4Aと第1基体10との間に電解質5が漏れて入り込んだり、封止材4Aに電解質5が取り込まれたりすることが十分に抑制される。その結果、得られる色素増感光電変換素子100の耐久性を向上させることができる。さらに、上記製造方法によれば、多孔質酸化物半導体層3に電解質5が含浸されており、電解質5の表面張力により、多孔質酸化物半導体層3の外側に電解質5が流出しにくくなっており、電解質量が足りなくなって光電変換特性が低下したり、封止材4Aと第1基体10との間に電解質5が入って、得られる色素増感光電変換素子100の耐久性が低下したりすることを十分に抑制できる。
【0050】
さらに上記製造方法によれば、第1基体10及び第2基体20の封止材4A同士を位置合わせすることが不要となるので、貼合せ工程で封止材4A同士の位置合せが不十分なまま貼合せが行われる場合に比べて、所望の厚さの封止部4を形成することが可能となり、封止部4と第1基体10との間において、高い接着性を確保することができる。このため、得られる色素増感光電変換素子100の耐久性を向上させることができる。また上記製造方法によれば、第1基体10及び第2基体20のうち第2基体20のみに封止材4Aを固定すればよいので、第1基体10及び第2基体20の両方に封止材4Aを含める場合に比べて、第1基体10において第1基材1に封止材4Aを設けなくて済む分、第1基体10及び第2基体20を準備するのに要する時間が短縮される。また積層体50Aを準備する際に、第1基体10及び第2基体20の封止材4A同士を位置合わせすることが不要となる。従って、色素増感光電変換素子100を効率的に製造することができる。
【0051】
また上記製造方法では、第1基体10及び第2基体20を互いに対向させた状態で接触させて積層体50Aを準備した後、この積層体50Aがチャンバ内で減圧下に置かれる。このとき、積層体50Aは、封止材4Aが第1基体10の第1基材1に接触するように準備される。このため、封止材4Aが溶融される際に電解質5が蒸発しても、電解質5は積層体50A内に閉じ込められ、外部に漏れにくくなっている。また電解質5が蒸発しても、その封止材4Aと第1基体10との間に電解質5の蒸気層が形成されることが十分に抑制される。その結果、封止材4Aと第1基体10とを十分に接着させることが可能となる。このため、得られる色素増感光電変換素子100の光電変換特性を向上させることができる。
【0052】
次に、上述した基材準備工程、積層体準備工程、及び貼合せ工程について詳細に説明する。
【0053】
<基体準備工程>
上述したように、まず第1基体10と、封止材4A付きの第2基体20とを準備する。
【0054】
第2基体20は以下のようにして得ることができる。
【0055】
即ちまず対極基板8を準備する。そして、対極基板8の上に触媒層9を形成する。触媒層9の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0056】
第2基体20に対しては環状の封止材4Aを固定する。第2基体20の上に環状の封止材4Aを固定するには、この環状の封止材4Aを第2基体20の上に配置し、環状の封止材4Aを加熱により溶融させて第2基体20に接着させればよい。こうして封止材4A付きの第2基体20が得られる。
【0057】
一方、第1基体10は以下のようにして得ることができる。
【0058】
まず第1基材1を準備する。第1基材1は、透明基板6の上に電極7を形成することによって形成することができる。
【0059】
電極7の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法及びCVD法などが用いられる。
【0060】
次に、第1基材1の上に酸化物半導体層3を形成する。第1基材1の上に多孔質酸化物半導体層3を形成するには以下のようにすればよい。すなわち、第1基材1の電極7上に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、焼成することで多孔質酸化物半導体層3を形成する。
【0061】
多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0062】
多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350℃〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0063】
多孔質酸化物半導体層3の表面に光増感色素を吸着させるためには、多孔質酸化物半導体層3を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その光増感色素を多孔質酸化物半導体層3に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な光増感色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層3に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層3に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させてもよい。
【0064】
多孔質酸化物半導体層3に電解質5を含浸させるためには、電解質5を滴下すればよい。ここで、電解質5の滴下量は特に制限されるものではないが、多孔質酸化物半導体層3の体積1mm
3あたり0.5〜4.0μLであることが好ましい。この場合、多孔質酸化物半導体層3の体積1mm
3あたりの電解質5の滴下量が0.5μL未満である場合に比べて、電解質5が十分に多孔質酸化物半導体層3に含浸されることになり、色素増感光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。また多孔質酸化物半導体層3の体積1mm
3あたりの電解質5の滴下量が0.5〜4.0μLである場合には、電解質5の滴下量が4.0μLを超える場合に比べて、第1基体10において、電解質5が多孔質酸化物半導体層3から溢れ出しにくくなり、積層体50Aを準備する際に、封止材4Aと第1基材1との間に電解質5が入り込むことがより十分に抑制される。なお、多孔質酸化物半導体層3の体積は、内部の空孔を含む体積を言う。
【0065】
多孔質酸化物半導体層3の体積1mm
3あたりの電解質5の滴下量はより好ましくは1.4〜3.0μLであり、特に好ましくは2.3〜2.8μLである。
【0066】
<積層体準備工程>
積層体50Aは大気圧下で準備する。ここで、大気圧とは、0℃に換算した場合に101325Paである圧力を言う。
【0067】
<貼合せ工程>
貼合せ工程においては、積層体50Aが配置されるチャンバの内部の空間は減圧される。この場合、この空間は通常、50Pa以上1013hPa未満の範囲の圧力まで減圧される。ここで、この圧力は50〜800Paとすることが好ましく、300〜800Paとすることがより好ましい。
【0068】
また上記のようにチャンバの内部空間を減圧する場合、第1基体10及び第2基体20のうち、封止材4Aが固定されている第2基体20が可撓性を有することが好ましい。
【0069】
この場合、第1基体10と第2基体20とを貼り合わせる際に、第2基体20を第1基体10の形状に追従させることができる。また第2基体20が可撓性を有することで、その後の貼合せ工程において封止部4を形成する際に、封止材4Aが潰れても、第2基体20はその封止材4Aの形状に追従することができる。
【0070】
また上述したように、第1基体10と第2基体20との貼合せは、封止材4Aを加圧しながら加熱することにより行われる。
【0071】
このとき、封止材4Aの加圧時の圧力は特に制限されるものではないが、通常、1〜50MPaであり、好ましくは2〜30MPaであり、より好ましくは3〜20MPaである。
【0072】
また封止材4Aを溶融させるときの温度は、封止材4Aを構成する材料の融点以上であればよい。封止材4Aを溶融させるときの温度は、(封止材4Aの融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(封止材4Aの融点+200℃)を超えると、封止材4Aが熱によって分解するおそれがある。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態においては、第1基体10には封止材4Aが固定されておらず、第2基体20にのみ封止材4Aが固定されているが、第1基体10にのみ封止材4Aが固定され、第2基体20には封止材4Aが固定されていなくてもよい。但し、この場合、多孔質酸化物半導体層3は、第2基体20に含まれる必要がある。
【0074】
さらに上記実施形態では、積層体50Aが大気圧下で準備され、その後に、積層体50Aが配置されるチャンバの内部空間の減圧が行われているが、積層体50Aは、チャンバの内部において減圧下で準備されてもよい。
【0075】
さらにまた上記実施形態では、第2基材2が対極で構成された第2基体20が用いられているが、
図7に示すように、第2基体20に代えて、絶縁性基板からなる第2基材202を用いた第2基体220が用いられてもよい。ここで、第2基体220には封止材4Aが固定されている。この場合、第1基体210は、第1基材1上に設けられる構造体211を有する。構造体211は、第1基材1のうち電極7上に設けられている。構造体211は、第1基材1側から順に、多孔質酸化物半導体層3、多孔質絶縁層212及び対極214で構成される。また多孔質酸化物半導体層3及び多孔質絶縁層212の内部には電解質5が含浸されている。また第1基体210には封止材4Aが固定されていない。ここで、第2基材202としては、例えばガラス基板又は樹脂フィルムなどを用いることができる。また対極214としては、第2基材2と同様のものを用いることができる。あるいは、対極214は、例えばカーボン等を含む多孔質の単一の層で構成されてもよい。多孔質絶縁層212は、主として、多孔質酸化物半導体層3と対極214との物理的接触を防ぎ、電解質5を内部に含浸させるためのものである。このような多孔質絶縁層212としては、例えば酸化物の焼成体を用いることができる。なお、
図7に示す第1基体210は、1つの構造体211のみを有しているが、複数の構造体211を有していてもよい。また、多孔質絶縁層212は、多孔質酸化物半導体層3と対極214との間に設けられているが、多孔質酸化物半導体層3を囲むように、第1基材1と対極214との間に設けてもよい。この構成でも、多孔質酸化物半導体層3と対極214との物理的接触を防ぐことができる。なお、
図7においては、第2基体220には封止材4Aが固定され、第1基体210には封止材4Aが固定されていないが、第2基体220には封止材4Aが固定されず、第1基体210にのみ封止材4Aが固定されていてもよい。但し、この場合、少なくとも多孔質酸化物半導体層3は、第2基体220に含まれる必要がある。
【0076】
また上記実施形態では、封止材4Aとして、熱可塑性樹脂が用いられているが、封止材4Aとしては、熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂などの樹脂を用いることもできる。この場合、封止材4Aとして熱硬化樹脂が用いられる場合には、貼合せ工程において、封止材4Aを溶融させることなく加熱させることにより封止材が第1基体10及び第2基体20に接着されることになる。また封止材4Aとして、紫外線硬化樹脂が用いられる場合には、貼合せ工程において、封止材4Aを溶融させることなく加熱しながら紫外線を照射することにより封止材が第1基体10及び第2基体20に接着されることになる。
【0077】
また上記実施形態では、色素増感光電変換素子が1つの色素増感光電変換セル50で構成されているが、色素増感光電変換素子は、色素増感光電変換セル50を複数備えていてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
はじめに、6.0cm×6.0cm×0.05mmのチタンからなる基板を対極基板として準備した。そして、対極基板上に、スパッタリング法により、厚さ10nmの白金触媒層を形成し、第2基材としての対極を得た。こうして、第2基材からなる第2基体を得た。
【0080】
次に、アイオノマーであるハイミラン(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製、融点:98℃)からなる6.0cm×6.0cm×50μmのシートの中央に、5.0cm×5.0cm×50μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、第2基体である対極上における環状の部位に配置した。そして、この樹脂シートを150℃で1分間加熱し溶融させることによって環状部位に接着し、対極上における環状部位に第2封止材を固定した。こうして、第2封止材付きの第2基体を得た。
【0081】
一方、8.0cm×8.0cm×8.0mmのFTO基板を電極として準備した。続いて、FTO基板の上に、ドクターブレード法によって酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoixide T/sp)を、その厚さが15μmとなるように塗布した後、このペーストを塗布したFTO基板を、熱風循環タイプのオーブンに入れて500℃で0.5時間焼成し、FTO基板上に厚さ15μmの多孔質酸化物半導体層を形成し、構造体を得た。
【0082】
次に、この構造体を、アセトニトリルとt−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒中に光増感色素であるN719を0.2mM溶かした色素溶液中に一昼夜浸漬して多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。こうして作用極を得た。
【0083】
次いで、作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置し、メトキシアセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を多孔質酸化物半導体層に滴下して含浸させた。このとき、多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの電解質の滴下量は2.40μLとした。こうして第1基体を得た。
【0084】
次に、第1基体と第2封止材付きの第2基体とを互いに対向させ、大気圧下で、第1基体の透明導電層と第2封止材とを重ね合わせて接触させ、積層体を得た。
【0085】
そして、積層体を、グローブボックス内に配置し、グローブボックスの内部空間を減圧した。その後、第2封止材と同じ大きさの真鍮製の枠を加熱し、真鍮製の枠を第2封止材と対極を挟むように対極上に配置し、プレス機を用いて、5MPaで第2封止材を加圧しながら200℃で加熱して溶融させて封止部を形成した。こうして1つの色素増感光電変換セルからなる色素増感光電変換素子を得た。
【0086】
(実施例2)
多孔質酸化物半導体層に電解質を滴下する際、多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの電解質の滴下量を表1に示す通り1.00μLとしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換セルからなる色素増感光電変換素子を得た。
【0087】
(実施例3)
多孔質酸化物半導体層に電解質を滴下する際、多孔質酸化物半導体層の体積1mm
3あたりの電解質の滴下量を表1に示す通り4.00μLとしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換セルからなる色素増感光電変換素子を得た。
【0088】
(実施例4)
グローブボックスの内部に第1基体と第2封止材付きの第2基体とを入れた後、グローブボックスの内部空間を減圧し、減圧下で第1基体と第2封止材付きの第2基体とを互いに対向させ、第2封止材と第1基体とを重ね合わせて接触させて積層体を得たこと以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を得た。
【0089】
(比較例1)
作用極にも、対極に形成した第2封止材と同様の寸法の第1封止材を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を得た。
【0090】
(比較例2)
作用極にも、対極に形成した第2封止材と同様の寸法の第1封止材を形成したこと以外は実施例2と同様にして色素増感光電変換素子を得た。
【0091】
(比較例3)
作用極には、対極に形成した第2封止材と同様の寸法の第1封止材を形成し、対極には第2封止材を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を得た。
【0092】
[特性評価]
(1)光電変換特性
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた色素増感光電変換素子について、初期変換効率(η
0)を測定した。結果を表1に示す。なお、表1には、比較例1を100とした初期光電変換効率η
0の相対値を示した。
【0093】
(2)耐久性
耐久性は、色素増感光電変換素子の光電変換効率の保持率によって評価できる。耐久性は、具体的には以下のようにして評価した。即ちまず実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた色素増感光電変換素子を、その製造直後から85℃の高温環境下で1000時間静置して光電変換効率(η)を測定した。そして、こうして測定された光電変換効率(η)と、上記のようにして測定された初期変換効率(η
0)とに基づいて、光電変換効率の保持率を下記式に基づいて算出した。結果を表1に示す。なお、表1には、比較例1を100とした光電変換効率の保持率の相対値を示した。
光電変換効率の保持率=100×η/η
0
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示す結果より、実施例1〜4の色素増感光電変換素子は、比較例1〜3の色素増感光電変換素子に比べて、光電変換特性及び耐久性の点で優れていることが分かった。よって、本発明の色素増感光電変換素子の製造方法によれば、光電変換特性及び耐久性を十分に向上させることができる色素増感光電変換素子を製造できることが確認された。