(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371206
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】真空掃除機用吸込ヘッド
(51)【国際特許分類】
A47L 9/04 20060101AFI20180730BHJP
A47L 9/02 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
A47L9/04 Z
A47L9/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-244937(P2014-244937)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-106712(P2016-106712A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智
【審査官】
大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−096965(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0196247(US,A1)
【文献】
実開昭48−030952(JP,U)
【文献】
特開2014−128548(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に吸込口が形成された吸込ヘッド本体と、前記吸込ヘッド本体の前後方向への移動に伴って被清掃物上で回転するように前記底部から突出配置されたローラーと、被清掃物を殴打するビーターと、前記ローラーの回転に係脱自在に連動して被清掃物を殴打するように前記ビーターを駆動する駆動力伝達部材と、を備えて構成されている真空掃除機用吸込ヘッドであって、
前記ビーターに備えた係合部が前記駆動力伝達部材に備えた被係合部に対して前記被清掃物の殴打方向に沿って移動可能に係合されるとともに、前記ローラーの回転に連動して前記ローラーとの係合時に前記駆動力伝達部材に蓄積され前記ローラーからの係合離脱時に開放される弾性エネルギーにより前記ビーターが駆動されるように構成され、
前記ローラーは、回転体と、前記回転体の軸心方向に沿って径方向に延出形成された複数のメインリブと、前記回転体の周方向に沿って前記複数のメインリブの間を連結する補強リブを備えていることを特徴とする真空掃除機用吸込ヘッド。
【請求項2】
底部に吸込口が形成された吸込ヘッド本体と、前記吸込ヘッド本体の前後方向への移動に伴って被清掃物上で回転するように前記底部から突出配置されたローラーと、被清掃物を殴打するビーターと、前記ローラーの回転に係脱自在に連動して被清掃物を殴打するように前記ビーターを駆動する駆動力伝達部材と、を備えて構成されている真空掃除機用吸込ヘッドであって、
前記ローラーは、回転体と、前記回転体の軸心方向に沿う姿勢で両端部に亘って径方向に延出形成される複数のメインリブと、前記回転体の周方向に沿って前記複数のメインリブの間を連結する補強リブと、を備え、
駆動力伝達部材は、前記回転体の回転に伴って前記メインリブの径方向の端部との間で係合と離脱を繰り返す係合片を一端に有することで揺動する揺動片と、前記揺動片の揺動に連系して前記ビーターを駆動させる弾性部材でなる連系部材とで構成されていることを特徴とする真空掃除機用吸込ヘッド。
【請求項3】
前記補強リブは、前記回転体の軸心方向に所定間隔を隔てて複数備え、側面視で扇状に形成され、扇形の弧状縁部に径方向外方に向けて凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の真空掃除機用吸込ヘッド。
【請求項4】
前記吸込口は、前記ビーターと前記ローラーの間に位置するように形成され、前記揺動片は、前記吸込口の上部に位置し、前記吸込ヘッドの吸込みの流れを阻害しないように前記係合片以外の部位に切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の真空掃除機用吸込ヘッド。
【請求項5】
前記ビーターは、前記回転体の軸方向と同じ方向に突出する突起を含む係合部を有し、
前記駆動力伝達部材は、前記突起が移動可能に係合される長孔状の係合孔を有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の真空掃除機用吸込ヘッド。
【請求項6】
前記駆動力伝達部材の一方側と前記吸込ヘッド本体内部の上側との間に配置される前記連系部材としての第1連系部材と、
前記駆動力伝達部材の他方側と前記吸込ヘッド本体内部の下側との間に配置される前記連系部材としての第2連系部材とを備えることを特徴とする請求項2記載の真空掃除機用吸込ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空掃除機用吸込ヘッドに関し、詳しくは底部に吸込口が形成された吸込ヘッド本体と、前記吸込ヘッド本体の前後方向への移動に伴って被清掃物上で回転するように前記底部から突出配置されたローラーと、被清掃物を殴打するビーターと、前記ローラーの回転に連動して被清掃物を殴打するように前記ビーターを駆動する駆動力伝達部材と、を備えて構成されている真空掃除機用吸込ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、寝具類を打撃して埃等を叩く叩き機能と、床等の硬所を掃除可能な一般掃除機の機能とを有する真空掃除機の吸入ヘッドが開示されている。
【0003】
図6(a)に示すように、当該吸入ヘッドは、上下部ケース21,22と、掃除機本体と連通される連結部材430と、開口面積が調整可能な空気流入口122と、空気流入口から流入する気流によって回転するタービン30と、タービン30の回転に連動して回転するカム131により上下動する複数の打撃部材40を備えて構成されている。
【0004】
空気流入口の開口面積を流入空気調整用ノブ125で調整することによりタービン30の回転数を調整し、或いはタービン30の回転を停止して打撃部材40の機能を停止することができる。
【0005】
図6(b)に示すように、特許文献2には、吸込具本体の側外方部に回転ローラー12を設け、吸込具本体の底面部には前後に吸込溝13を形成するとともに、中央部には前記ローラー12と連動した回転カム15を構成し、前記吸込溝13に挟まれた中間部を回転ローラー12の回転に同期して回転する回転カム15により上下の振動を与える振動板14として構成した電気掃除機の寝具用吸込具が開示されている。尚、
図6(a),(b)に付された符号は各特許文献に示された図面の符号であり、以下に説明する発明を実施するための形態の欄で用いる符号とは無関係である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−177485号公報
【特許文献1】実開平01−79447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された吸入ヘッドは、タービンの回転で複数の打撃部材が上下動するため、寝具類に十分な打撃を与えるためにはある程度の回転数でタービンを回転させる必要があり、そのために空気流入口の開口面積を大きくすると、下部ケースに形成された清掃物吸込口からの吸塵力が低下する虞があり、清掃物吸込口からの吸塵力を確保するとタービンの回転数が低下し、或いは回転数が不安定になり、複数の打撃部材を上下動させるための十分なトルクが得られないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された寝具用吸込具は、回転カムの回転に合わせて振動板が上下し、寝具用吸込具の左右の横幅方向中央部に位置する振動板の先端部のみで寝具を打撃する構成であったため、十分な打撃力が確保できないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、吸込口からの吸塵力の低下を招くことなく、寝具類に対して十分な打撃力を付与可能な真空掃除機用吸込ヘッドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による真空掃除機用吸込ヘッドの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、底部に吸込口が形成された吸込ヘッド本体と、前記吸込ヘッド本体の前後方向への移動に伴って被清掃物上で回転するように前記底部から突出配置されたローラーと、被清掃物を殴打するビーターと、前記ローラーの回転に係脱自在に連動して被清掃物を殴打するように前記ビーターを駆動する駆動力伝達部材と、を備えて構成されている真空掃除機用吸込ヘッドであって、
前記ビーターに備えた係合部が前記駆動力伝達部材に備えた被係合部に対して前記被清掃物の殴打方向に沿って移動可能に係合されるとともに、前記ローラーの回転に連動して前記ローラーとの係合時に前記駆動力伝達部材に蓄積され前記ローラーからの係合離脱時に開放される弾性エネルギーにより前記ビーターが駆動されるように構成され、前記ローラーは、回転体と、前記回転体の軸心方向に沿って径方向に延出形成された複数のメインリブと、前記回転体の周方向に沿って前記複数のメインリブの間を連結する補強リブを備えている点にある。
【0011】
寝具等の被清掃物の表面に沿って吸込ヘッド本体を前後方向へ移動させると、被清掃物の表面との摩擦によって吸込ヘッド本体の底部から突出配置されたローラーが正方向または逆方向へ回転し、ローラーの回転と連動して係脱する駆動力伝達部材に蓄積される弾性エネルギーによってビーターが駆動されて被清掃物が殴打される。
駆動力伝達部材に備えた被係合部に対して殴打方向に自由移動可能な係合部を備えたビーターは、被清掃物を殴打した際に殴打方向に振動して寝具等の被清掃物の表面が効果的に殴打されるようになる。被清掃物の表面に沿って吸込ヘッド本体が移動するときに、回転体の軸心方向に沿って径方向に延出形成されたメインリブが被清掃物の表面に点ではなく線状に接触するため、ローラーが回転するための十分な摩擦力が生じ、ローラーが回転せずに滑るようなことがない。また、回転体の周方向に隣接するメインリブ同士の中間部位が被清掃物の表面と対向する姿勢では、当該メインリブと被清掃物との間の摩擦力が不十分になり回転力が低下する虞があるが、複数のメインリブの間を連結する補強リブと被清掃物との間の摩擦力によって回転力が補われるので、ローラーの安定的な回転が実現できる。ローラーは被清掃物との摩擦力により回転するため、真空掃除機本体からの吸引力を専ら吸塵のために使用できるので、安定した吸塵力も実現できる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、底部に吸込口が形成された吸込ヘッド本体と、前記吸込ヘッド本体の前後方向への移動に伴って被清掃物上で回転するように前記底部から突出配置されたローラーと、被清掃物を殴打するビーターと、前記ローラーの回転に係脱自在に連動して被清掃物を殴打するように前記ビーターを駆動する駆動力伝達部材と、を備えて構成されている真空掃除機用吸込ヘッドであって、前記ローラーは、回転体と、前記回転体の軸心方向に沿う姿勢で両端部に亘って径方向に延出形成される複数のメインリブと、前記回転体の周方向に沿って前記複数のメインリブの間を連結する補強リブと、を備え、駆動力伝達部材は、前記回転体の回転に伴って前記メインリブの径方向の端部との間で係合と離脱を繰り返す係合片を一端に有することで揺動する揺動片と、前記揺動片の揺動に連系して前記ビーターを駆動させる弾性部材でなる連系部材とで構成されている点にある。
【0013】
回転体の回転に伴って係合と離脱を繰り返す係合片によって揺動片が揺動し、当該揺動に連系する連系部材の弾性力によってビーターが被清掃物上に効果的に打ち付けられる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記補強リブは、前記回転体の軸心方向に所定間隔を隔てて複数備え、側面視で扇状に形成され、扇形の弧状縁部に径方向外方に向けて凸部が形成されている点にある。
【0015】
複数の補強リブにより被清掃物との間に大きな摩擦力が作用するので、ローラーをより一層安定的に回転させることができる。そして、側面視で扇状に形成された補強リブが側面視で扇状に形成されているので、その先端側が容易く被清掃物の表面に接触するようになり、さらに弧状縁部に径方向外方に向けて形成される凸部で被清掃物の表面に対するグリップ力が生じ、さらに大きな回転力が得られるようになる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記吸込口は、前記ビーターと前記ローラーの間に位置するように形成され、前記揺動片は、前記吸込口の上部に位置し、前記吸込ヘッドの吸込みの流れを阻害しないように前記係合片以外の部位に切欠き部が形成されている点にある。
【0017】
ビーターとローラーの間に位置する吸込口から吸引された塵埃は、吸込口の上部に位置する揺動片の切欠き部を通過する吸引用の気流に沿って真空掃除機の本体側に吸塵されるので、圧損が生じることなく円滑に吸塵されるようになる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記ビーターは、前記回転体の軸方向と同じ方向に突出する突起を含む係合部を有し、前記駆動力伝達部材は、前記突起が移動可能に係合される長孔状の係合孔を有する点にある。
【0019】
ビーターが駆動力伝達部材に対して殴打方向に自由移動可能になる。
【0020】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第
二の特徴構成に加えて、前記駆動力伝達部材の一方側と前記吸込ヘッド本体内部の上側との間に配置される前記連系部材としての第1連系部材と、前記駆動力伝達部材の他方側と前記吸込ヘッド本体内部の下側との間に配置される前記連系部材としての第2連系部材とを備える点にある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明によれば、吸込口からの吸塵力の低下を招くことなく、寝具類に対して十分な打撃力を付与可能な真空掃除機用吸込ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)は真空掃除機用吸込ヘッドの斜視図、(b)は同底面図
【
図2】(a)は真空掃除機用吸込ヘッドの分解斜視図、(b)はローラーの斜視図
【
図3】(a)は真空掃除機用吸込ヘッドの要部の部品組立説明図、(b)はビーターと駆動力伝達部材の説明図
【
図4】(a)は真空掃除機用吸込ヘッドの一部切欠き斜視図、(b)は同側断面図
【
図5】(a),(b),(c)はビーターと駆動力伝達部材の動作説明図
【
図6】(a)は従来の吸入ヘッドの説明図、(b)は従来の寝具用吸込具の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明による真空掃除機用吸込ヘッドを図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)には、本発明による真空掃除機用吸込ヘッド(以下、単に「吸込ヘッド」の外観が示されている。吸込ヘッド1は、底部に吸込口4(4a,4b,4c)が形成された吸込ヘッド本体2と、吸込ヘッド本体2の基端側に回
転自在に取り付けられ、真空掃除機本体の吸込みパイプと接続する継手部3とを備えている。
【0024】
吸込ヘッド本体2は上カバー体2Aと下カバー体2Bで構成され、下カバー体2Bには、さらに吸込ヘッド本体2の前後方向への移動に伴って寝具等の被清掃物上で摩擦回転するように、底部から周面の一部が突出するように配置されたメインローラー5と、表面に微小な突起6Aが配列形成され、被清掃物を殴打する矩形形状のビーター6と、メインローラー5の回転に連動して被清掃物を殴打するようにビーター6を上下方向に駆動する駆動力伝達部材7(
図3(a),(b)参照)とを備えて構成されている。上述のメインローラー5が本発明のローラーとなる。
【0025】
下カバー体2Bの先端側には、中央部に配置された矩形形状のビーター6を挟んで左右側部にサブローラー8a,8bが、周面の一部が底部から突出するように配置され、下カバー体2Bの基端側に配置されたメインローラー5との間に3つの吸込口4a,4b,4cが形成されている。
【0026】
詳述すると、
図2(a)に示すように、下カバー体2Bの基端側に左右の幅方向に延びる凹部50が形成されるとともに、先端側の左右端部側に夫々凹部80a,80bが形成されている。メインローラー5は下方から当該凹部50に嵌入されて左右端部で回転自在に支持され、サブローラー8a,8bは下方から当該凹部80a,80bに嵌入されて左右端部で回転自在に支持されている。
【0027】
凹部50及び凹部80a,80bは長手方向と直交する切断面で半円形の湾曲形状に形成され、頂部には矩形形状の吸込口4(4d,4e,4f,4g)が形成されている。
【0028】
凹部80a,80bの中間部にはビーター6が配置されている。ビーター6に形成された左右の立上り部6a,6bが、下カバー体2Bの微小開口から上方に挿入され、立上り部6a,6bに形成された係合突起6c,6dが駆動力伝達部材7の一部を構成する揺動片7Aの係合孔7a,7bと係合するように構成されている。係合突起6c,6dが係合した状態で揺動片7Aが上下に移動可能になるように、係合孔7a,7bは長孔に形成されている。
【0029】
下カバー体2Bと上カバー体2Aとが接合され、下カバー体2Bに形成されたネジ孔10a,10bからビス9a,9bを挿入して上カバー体2Aに締付固定され、さらに下カバー体2Bと上カバー体2Aとで構成される吸塵管2Cに固定部材3aを介して継手部3が接合されている。
【0030】
図2(b)に示すように、メインローラー5は、回転体5Aと、回転体5Aの軸心方向に沿って径方向に延出形成された複数のメインリブ5Bと、回転体5Aの周方向に沿って複数のメインリブ5Bの間を連結する補強リブ5Cを備えている。回転体5Aとメインリブ5Bと補強リブ5Cは樹脂材料を用いて一体に成形されているが、個々の部品が接着等によって接合されていてもよい。
【0031】
補強リブ5Cは側面視で扇状に形成され、回転体5Aの軸心方向に所定間隔を隔てて複数設けられている。そして、扇形の弧状縁部5Dに径方向外方に向けて凸部5Eが形成されている。本実施形態では、回転体5Aの軸心方向視で90度の角度を隔てて4枚のメインリブ5Bが設けられ、回転体5Aの軸心方向に4分割する位置に各メインリブ5Bを連結するように補強リブ5Cが設けられている。尚、サブローラー8a,8bもメインローラー5と同様に、メインリブ及び補強リブが設けられている。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、駆動力伝達部材7は、揺動片7Aと支持部7Bと弾性部材7Cを備えて構成されている。揺動片7Aに形成された凸部7c,7dが支持部7Bに形成された支持孔に嵌入されることにより凸部7c,7dが揺動軸として当該揺動片7Aが揺動可能に支持される。
【0033】
揺動片7Aの基端側両端部に一対の係合部70が形成され、当該係合部70が回転体5Aの回転に伴ってメインリブ5Bとの間で係合と離脱を繰り返すことにより揺動片7Aが揺動駆動される。揺動片7Aの板状部上面に3つの弾性体受座71が形成され、下面に1つの弾性体受座が形成されている。
【0034】
板状部上面の弾性体受座71に3本の弾性部材7Cとしてのコイルばねが配置され、板状部下面の弾性体受座に1本の弾性部材7Cとしてのコイルばねが配置されている。板状部上面のコイルばねの他端は上カバー体2Aに形成された受座で受け止められ、板状部下面のコイルばねの他端は下カバー体2Bに形成された受座73で受け止められている。弾性部材7Cが、揺動片7Aの揺動に連系してビーター6を上下動させる連系部材となる。
【0035】
図4(a),(b)に示すように、ローラー5が回転すると揺動片7Aの基端部に形成された係合部70がメインリブ5Bと係合してローラー5の回転方向に係合部70が押圧され、揺動片7Aが揺動軸7c(
図3(b)参照)周りに揺動することで弾性部材7Cに弾性エネルギーが蓄積される。
【0036】
さらにローラー5が回転すると係合部70がメインリブ5Bから離脱し、その時に弾性部材7Cに蓄積された弾性エネルギーが解放される際に、ビーター6が上下に振動して寝具等の被清掃物の表面が殴打される。ビーター6が効果的に下方に付勢されるように、コイルばねの本数やコイルばねの弾性定数の調整によって、板状部上面の弾性部材7Cの弾性応力が板状部下面の弾性部材7Cの弾性応力より大きく設定されることが好ましい。
【0037】
図5(a)には、吸込ヘッド1が被清掃物の表面で
先端側に移動される初期状態が示されている。メインリブ5B及び/または補強リブ5Cが被清掃物の表面と接触する際の摩擦力によってメインローラー5は反時計方向に回転する。
【0038】
図5(b)に示すように、さらにメインローラー5が回転するとメインリブ5Bと揺動片7Aの係合部70が係合して、係合部70が下方に押圧され、揺動軸心(
図3(b)の符号7c参照)周りに揺動片7Aが揺動する。このとき、揺動片7Aの板状部上面側の3本の弾性部材7Cが圧縮されて弾性エネルギーが蓄積される。
【0039】
図5(c)に示すように、さらにメインローラー5が回転してメインリブ5Bから揺動片7Aの係合部70が離脱すると、弾性部材7Cが伸長して揺動軸心(
図3(b)の符号7c参照)周りに揺動片7Aが逆方向に揺動してビーター6が下方に付勢される。さらに弾性エネルギーが減衰する過程でビーター6が上下に振動して被清掃物の表面が殴打される。
【0040】
吸込ヘッド1が被清掃物の表面で
基端側に移動される場合には、メインローラー5の回転方向が時計回りになり、係合部70が上方に押圧され、揺動軸心(
図3(b)の符号7c参照)周りに揺動片7Aが揺動し、その後に係合部70が離脱すると、揺動片7Aの板状部下面側の弾性部材7Cが伸長して揺動軸心(
図3(b)の符号7c参照)周りに揺動片7Aが揺動する点は同様であり、この場合も弾性エネルギーが減衰する過程でビーター6が上下に振動して被清掃物の表面が殴打される。
【0041】
このような構成によれば、被清掃物の表面に沿って吸込ヘッド本体2が移動するときに、回転体5Aの軸心方向に沿って径方向に延出形成されたメインリブ5Bが被清掃物の表面に点ではなく線状に接触するため、ローラー5が回転するための十分な摩擦力が生じ、ローラー5が回転せずに滑るようなことがない。
【0042】
また、回転体5Aの周方向に隣接するメインリブ5B同士の中間部位が被清掃物の表面と対向する姿勢では、当該メインリブ5Bと被清掃物との間の摩擦力が不十分になり回転力が低下する虞があるが、複数のメインリブ5Bの間を連結する補強リブ5Cと被清掃物との間の摩擦力によって回転力が補われるので、ローラー5の安定的な回転が実現できる。
【0043】
複数の補強リブ5Cにより被清掃物との間に大きな摩擦力が作用するので、ローラー5をより一層安定的に回転させることができ、補強リブ5Cが側面視で扇状に形成されているので、その先端側が容易く被清掃物の表面に接触するようになり、さらに弧状縁部5Dに径方向外方に向けて形成される凸部5Eで被清掃物の表面に対するグリップ力が生じ、さらに大きな回転力が得られるようになる。
【0044】
また、
図3(a)に示すように、ビーター6とローラー5の間に位置するように吸込口4bが形成され、吸込口4bの上部に揺動片7Aが位置し、吸込ヘッド1の吸込みの流れを阻害しないように揺動片7Aに切欠き部7eが形成されている。
【0045】
ビーター6とローラー5の間に位置する吸込口4bから吸引された塵埃は、吸込口4bの上部に位置する揺動片7Aの一対の係合部70の間に形成された切欠き部7eを通過する吸引用の気流に沿って真空掃除機の本体側に吸塵されるので、圧損が生じることなく円滑に吸塵されるようになる。
【0046】
上述した実施形態では、回転体の軸心方向に平行に延出した複数のメインリブを備えたローラーを説明したが、メインリブは回転体の軸心方向に沿うように形成されていればよく、回転体の径方向に巻き付くようにらせん状に形成されていてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、補強リブが回転体の周方向に沿って連続的に複数のメインリブの間を連結するように構成された例を説明したが、メインリブの間を連結する各補強リブが回転体の軸心方向に位置をずらせて配置されていてもよい。
【0048】
上述した実施形態で説明した真空掃除機用吸込ヘッドの各部の具体的な形状、大きさ、材料等は、本発明の作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1:吸込ヘッド
2:吸込ヘッド本体
2A:上カバー体
2B:下カバー体
3:継手部
4,4a,4b,4c,4d,4e:吸込口
5:メインローラー(ローラー)
5A:回転体
5B:メインリブ
5C:補強リブ
5D:扇形の弧状縁部
5E:凸部
6:ビーター
7:駆動力伝達部材
7A:揺動片
7B:支持部
7C:弾性部材
7c,7d:凸部(揺動軸)