(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記したトルクリミッターでは、そのリミットトルク(制限トルク)の設定が小さすぎると、このトルクリミッターにより通常作業においても小さな負荷で動力の伝達が切断される一方、リミットトルク(制限トルク)の設定が大きすぎると、大きな負荷により周辺部品が破壊されるというトレードオフの関係を有しているため、圃場条件や作業条件によっては、適宜、トルクリミッターの制限トルクの設定を、現場である圃場において急遽変更したい場合があるが、あらかじめ設定されたトルクリミッターの制限トルクを変更することができず、臨機応変に対応できないという不具合がある。
【0007】
そこで、本発明は、トルクリミッターの制限トルクを、つまり、トレードオフバランスを、現場である圃場において臨機応変に変更することができる収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
刈り取った圃場の作物の全量を掻込オーガによりフィーダハウス内に掻き込むようにした収穫機であって、
掻込オーガは、回転支軸を介して左右方向の軸線廻りに回転自在に横架し、
回転支軸には、その半径方向に張り出させて鍔状に形成したスプロケット受体を同心円的に取り付けるとともに、スプロケット受体の外周端面は同心円弧面となし、
スプロケット受体には、その外周端面と同心円弧面となした嵌合孔を中央部に有する受動スプロケットを、嵌合孔を介して外嵌するとともに、受動スプロケットとスプロケット受体との間には、回転支軸の半径方向に軸線を向けたシャーピンを跨るように介在させて、
シャーピンには、その中途部に受動スプロケットの回転方向へのせん断力が作用するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明では、受動スプロケットとスプロケット受体とを跨るようにシャーピンを介在させて、シャーピンには、その中途部に受動スプロケットの回転方向へのせん断力が作用するようにしているため、鍔状に形成したスプロケット受体の張り出し幅、つまり、シャーピンのせん断位置とシャーピンのせん断強度を勘案することにより、このトルクリミッターの制限トルクを自由に設定することができる。したがって、適宜、トルクリミッターの制限トルクを設定することで、又は、設定された制限トルクを現場である圃場において変更することで、トルクリミッターの制限トルクを、つまり、トレードオフバランスを、現場である圃場において臨機応変に変更することができる。例えば、ココナッツ等の大型の異物が散在している圃場や、倒伏稲がある圃場等の圃場条件、又は、オペレータの運転技術や作業スピード等の作業条件に幅広く対応させることができる。その結果、オペレータ(ユーザー)一人一人の好みに適応させたトルクリミッターの制限トルクの設定が可能となって、収穫作業能率を向上させることができる。そして、トルクリミッターとしての機能を確保することができて、周辺部品に過大なトルクが作用するのを回避することができるとともに、周辺部品が損傷等されるのを防止することができる。また、スプロケット受体と受動スプロケットとを連結するシャーピンのせん断強度は、トルクリミッターとして機能させるボルトせん断方式のように、連結ボルトのせん断力と、その連結ボルトが締結される力とのバランスを考慮する必要性や煩雑性がない。
【0010】
また、請求項1記載の発明
は、
スプロケット受体の周縁部と、受動スプロケットの嵌合孔の周縁部には、回転支軸の半径方向に軸線を向けたシャーピン嵌入凹条部を跨るように形成するとともに、シャーピン嵌入凹条部は外側方を開口させて形成し、
シャーピン嵌入凹条部内には、外側方からシャーピンを嵌入させて固定したことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、シャーピン嵌入凹条部内には、外側方からシャーピンを嵌入させて固定するようにしているため、シャーピンを簡単に取り付けることができる。つまり、切断されたシャーピンと新規のシャーピンとの付け替え作業を特殊な工具なしに簡単に行うことができる。そのため、設定トルクの変更作業をどこおいても気軽に行うことができて、トルクリミッターのトレードオフバランスを適正に保持させることができる。
【0012】
また、請求項
1記載の発明
は、
シャーピン嵌入凹条部は、回転支軸の周方向に間隔をあけて複数形成し、いずれかのシャーピン嵌入凹条部内に、シャーピンを嵌入させて固定したことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、回転支軸の周方向に間隔をあけて複数形成したシャーピン嵌入凹条部内のいずれかに、シャーピンを嵌入させて固定するようにしているため、シャーピンの増減調節を簡単に行うことができて、トルクリミッターの制限トルクを、現場である圃場において臨機応変に変更することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トルクリミッターの制限トルクを自由に設定することができるため、現場である圃場において臨機応変に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すAは、刈り取った圃場の作物の全量を掻込オーガによりフィーダハウス内に掻き込むようにした収穫機としての普通型コンバイン(以下、単に「コンバイン」と略称する。)である。
【0017】
[コンバイン全体の構成の概略的な説明]
コンバインAは、自走可能な走行機体1の前端部に、刈取部2を昇降自在に取り付けている。
【0018】
走行機体1は、
図1及び
図2に示すように、左右一対の走行部10,10間に機体フレーム11を架設している。そして、機体フレーム11上の左側部には、刈り取られた穀稈の穂先側部を脱穀する脱穀部12と、脱穀された穀粒を選別する選別部13を上下段に配設し、これらの後方に藁屑等を機外である圃場へ排出する排塵口部14を後方へ向けて開口させている。また、機体フレーム11上の右側部には、前部に運転操作を行う運転部15を配設し、その後方に選別部13で選別された穀粒(清粒)を貯留する穀粒貯留部16を配設して、最後部に穀粒貯留部16に貯留された穀粒を機外に搬出する穀粒搬出部17を設けている。運転部15の後部の下方には、動力源となる原動機部としてのエンジン18等を配設している。
【0019】
刈取部2は、前後方向に軸線を向けた四角形筒状のフィーダハウス19と、フィーダハウス19の前端開口部20に連通連設した横長バケット状の穀物ヘッダー21と、穀物ヘッダー21の前下端縁部に配設したバリカン状の刈刃装置3と、穀物ヘッダー21の前左右側部から前方へ延出させて形成した左右一対の分草体22,22と、穀物ヘッダー21の前上方に配設した掻込リール23とを備えている。
【0020】
フィーダハウス19の後端部は、脱穀部12の前部に左右方向の軸線を向けた後述する刈取入力軸65(フィーダハウスコンベヤ軸)を枢支し、フィーダハウス19の下面部と機体フレーム11の前端部との間に昇降用シリンダ24を介設して、昇降用シリンダ24(
図3参照)を伸縮作動させることにより、刈取入力軸65を昇降支点として、刈取部2を昇降可能としている。
【0021】
また、フィーダハウス19内には供給コンベア25を配設し、穀物ヘッダー21内には掻込オーガ26(プラットホームオーガ)を左右方向の軸線廻りに回転可能に軸架している。掻込リール23は、穀物ヘッダー21に基端部が枢支された左右一対のリール支持アーム23a,23aの先端部間に、左右方向の軸線廻りに回転可能に軸架されて、立ち毛の穀稈の穂先部に回転しながら連続的に掻込オーガ26側へ掻込作用するようにしている。上記した各部の作動部は、後述する各連動機構を介してエンジン18に連動連結して、適宜作動するように構成している。
【0022】
このように構成したコンバインAでは、圃場において、刈取部2を所望の地上高(立ち毛の穀稈の刈取位置)となるまで上昇させ、その状態で走行機体1を走行させる。そうすることで、立ち毛の穀稈を分草体22,22により分草して、分草した穀稈の穂先部を掻込リール23により掻き込みながら刈刃装置3により穀稈の中途部から穂先側部を刈り取る。所望の刈取位置で刈り取られた穀稈の穂先側部は、掻込オーガ26により穀物ヘッダー21内に掻込まれるとともに、供給コンベア25によりフィーダハウス19内を通して脱穀部12に供給される。脱穀部12に供給された穀稈の穂先側部は脱穀部12により脱穀処理されるとともに、脱穀部12で脱穀処理された穀粒は選別部13により選別処理される。選別部13で選別処理された穀粒(清粒)は穀粒貯留部16に貯留される。穀粒貯留部16に貯留されている穀粒は、適宜、穀粒搬出部17により機外に搬出される。そして、脱穀部12で穀粒と分離処理された藁屑等は、排塵口部14から機外である圃場へ排出される。
【0023】
[掻込オーガの構成の説明]
掻込オーガ26は、
図3〜
図5に示すように、穀物ヘッダー21の左右側壁21b,21a間に、ベアリング等の軸受47を介して左右方向に軸線を向けた回転支軸27をその軸線廻りに回転自在に横架し、回転支軸27の外周に筒状のオーガ本体28を同心円的に取り付けている。軸受47は、後述する可動側調整板52bを介して穀物ヘッダー21の右側壁21aに取り付けている。
【0024】
オーガ本体28の外周面の左側部には、刈り取った穀稈を右側方へ搬送する螺旋羽根形状の左側搬送片29を突設する一方、オーガ本体28の外周面の右側部には刈り取った穀稈を左側方へ搬送する螺旋羽根形状の右側搬送片30を突設し、左側螺旋搬送片29の搬送終端部と、右側螺旋搬送片30の搬送終端部との間に、刈取穀稈集結空間31をフィーダハウス19の前端開口部20の直前方に位置させて形成している。
【0025】
刈取穀稈集結空間31には、左右一対の直棒状の掻込突片であるフィンガ33を、オーガ本体28の周廻りに一定の間隔をあけて複数対配設している。オーガ本体28内には出没機構32を配設しており、出没機構32にフィンガ33の基端部を連動連結して、フィンガ33がオーガ本体28から間欠的に放射方向(オーガ本体28の半径方向)に向けて出没するようにしている。
【0026】
出没機構32は、オーガ本体28の回動作動と連動して、オーガ本体28の周面上部と周面前部において、オーガ本体28からフィンガ33を突出作動させるとともに、オーガ本体28の周面下部と周面後部において、オーガ本体28内にフィンガ33を没入作動させるようにしている。
【0027】
そして、回動作動するオーガ本体28から突出作動した各フィンガ33は、刈取穀稈集結空間31内に集結する刈取穀稈に交差状に掻込作用するとともに、刈取穀稈を後方へ回動移送して、前端開口部20からフィーダハウス19内に刈取穀稈を掻き込むようにしている。なお、掻込オーガは、右側面図である
図3において、時計回りに回動される。また、フィンガ33がオーガ本体28の周面から突出する突出幅は、左・右側螺旋搬送片29,30がオーガ本体28の周面から突出する突出幅と略同一である。
【0028】
[本実施形態の特徴的な構成の説明]
本実施形態の特徴的な構成について、
図6〜
図9を参照しながら説明する。すなわち、掻込オーガ26は、回転支軸27を介して左右方向の軸線廻りに回転自在に横架し、回転支軸27には、その半径方向に張り出させて鍔状に形成したスプロケット受体34を同心円的に取り付けるとともに、スプロケット受体34の外周端面は同心円弧面となしている。スプロケット受体34には、その外周端面と同心円弧面となした嵌合孔35bを中央部に有する受動スプロケット35を、嵌合孔35bを介して外嵌するとともに、受動スプロケット35とスプロケット受体34との間には、回転支軸27の半径方向に軸線を向けたシャーピン40を跨るように介在させて、シャーピンには、その中途部に受動スプロケットの回転方向へのせん断力が作用するようにして、トルクリミッター42を構成している。
【0029】
そして、トルクリミッター42は、スプロケット受体34の周縁部と、受動スプロケット35の嵌合孔35bの周縁部には、回転支軸27の半径方向に軸線を向けて直状に延伸するシャーピン嵌入凹条部41を跨るように形成するとともに、シャーピン嵌入凹条部41は外側方を開口させて形成している。シャーピン嵌入凹条部41内には、外側方からシャーピン40を嵌入させて固定している。シャーピン嵌入凹条部41は、回転支軸27の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4個)形成し、いずれかのシャーピン嵌入凹条部41内に、シャーピン40を嵌入させて固定している。
【0030】
[本実施形態の特徴的な構成のより具体的な説明]
上記した本実施形態の特徴的な構成について、
図6〜
図9を参照しながらより具体的に説明する。すなわち、回転支軸27の右側端部は、穀物ヘッダー21の右側壁21aから右側外方に突出状に延設させて、延設部27aにスプロケット受体34を介して受動スプロケット35と駆動スプロケット36を同心円的に取り付けている。そして、受動スプロケット35と駆動スプロケット36は、スプロケット受体34に同軸的に取り付けている。
【0031】
スプロケット受体34は、延設部27aに外嵌した円筒状の軸ボス部34aと、軸ボス部34aの内側部からその半径方向に張り出させて円形鍔状に形成したスプロケット受片34bと、スプロケット受片34bよりも小径円板状に軸ボス部34aの中途部に膨出させて段付き凹状に形成した受動スプロケット受部34cと、から形成している。
【0032】
また、受動スプロケット35は、リング円板状に形成して、その外周部に噛部35aを形成する一方、中央部に嵌合孔35bを形成している。嵌合孔35b中には、円筒状のスプロケットボス部43を嵌入して、スプロケットボス部43の外周面に受動スプロケット35を同心円的に取り付けて、スプロケットボス部43と受動スプロケット35を一体的に形成している。スプロケットボス部43は、受動スプロケット35を支持する円筒状のボス部本体43aと、ボス部本体43aの外側端部から受動スプロケット35の外側面に沿って鍔状に張り出させて形成した張出片43bとから形成している。なお、受動スプロケット35とスプロケットボス部43は、一体成形することもできる。
【0033】
そして、受動スプロケット受部34cにスプロケットボス部43を介して受動スプロケット35を外嵌するとともに、スプロケット受片34bの外側面には、受動スプロケット受部34cに外嵌した受動スプロケット35の内側面を重合状態に面接触させるようにしている。
【0034】
受動スプロケット受部34cと張出片43bには、これらに跨るようにシャーピン嵌入凹条部41を形成している。シャーピン嵌入凹条部41は、受動スプロケット受部34cに形成したスプロケット側凹条部41aと、張出片43bに形成した張出片側凹条部41bとを、回転支軸27の半径方向に整合させることで、その半径方向に直状に形成している。シャーピン嵌入凹条部41内には、小径円柱状に形成したシャーピン40を出し入れ自在に収容して、キャップ状に形成したカバー体44によりシャーピン40を外側方から被覆・保持して、トルクリミッター42を構成している。
【0035】
カバー体44は、中央部に延設部27aに外嵌するための外嵌孔45を形成して、受動スプロケット受部34cと張出片43bを被覆する状態で、外嵌孔45を介して延設部27aに着脱自在に外嵌している。
【0036】
46は、リール駆動スプロケット36を支持する駆動スプロケットボス部である。駆動スプロケットボス部46の外周面には、リール駆動スプロケット36を同心円的に取り付けて、駆動スプロケットボス部46とリール駆動スプロケット36を一体的に形成している。なお、駆動スプロケットボス部46は、リール駆動スプロケット36と一体成形することもできる。
【0037】
駆動スプロケットボス部46と軸ボス部34aは、カバー体44の外嵌孔45の周縁部を、延設部27aの軸線方向に挟持して、カバー体44を固定している。47は、延設部27aに形成したキー配置溝、48は、キー配置溝47に基端側部を嵌入状態に配置したキーである。キー48は、軸ボス部34aとカバー体44と駆動スプロケットボス部46にそれぞれ形成した第1〜第3キー係合凹部34d,44a,46aに、先端側部を係合させている。そして、延設部27aに、これらの軸ボス部34a,46とカバー体44を固定することで、リール駆動スプロケット36に入力された回転駆動力が、キー48を介して延設部27aに伝達されるとともに、延設部27aからキー48を介して受動スプロケット35に伝達されるようにしている。49は、延設部27aからスプロケット受体34が抜け落ちるのを防止する抜け止めリング、50は、延設部27aの外側端に螺着して抜け止めリング49を固定する固定ナットである。
【0038】
シャーピン40は、所望のせん断強度が確保できるせん断位置の断面積や材質や本数を適宜採択することで、トルクリミッター42の制限トルクを自由に設定・変更することができる。また、予め、回転支軸27の軸線位置から受動スプロケット受部34cの外周面と張出片43bの内周面との間に形成されるせん断面までの位置、つまり、シャーピン40の中途部に横断状態にせん断力が作用する面までの位置を拡縮設定・変更することで、トルクリミッター42の制限トルクを設定・変更することもできる。また、シャーピン嵌入凹条部41の周方向の幅(嵌入するシャーピン40の太さに適応する幅)や数を増減設定・変更することで、トルクリミッター42の制限トルクを設定・変更することもできる。ここで、トルクリミッター42の制限トルク(リミットトルク)は、シャーピン40の軸線と直交する方向に作用するせん断力と、回転支軸27の中心からそのせん断力が作用する位置までの距離との積で求まるものある。
【0039】
受動スプロケット35には、
図3に示すように、後述する刈取部伝動機構の掻込オーガ伝動部である第9伝動機構126が連動連結されている。すなわち、第9伝動機構126は、後述する刈取カウンタ軸125に設けたオーガ駆動スプロケット140と、オーガ受動スプロケット35との間に、オーガ伝動チェン141を巻回して形成している。142は、オーガ伝動チェン141のテンションを調節するテンション調節部である。そして、刈取カウンタ軸125→オーガ駆動スプロケット140→オーガ伝動チェン141→オーガ受動スプロケット35→シャーピン40→スプロケット受片34b→軸ボス部34a→延設部27a・回転支軸27→オーガ本体28に回転力が伝達される。
【0040】
また、リール駆動スプロケット36には、
図3に示すように、後述する刈取部伝動機構の掻込リール伝動部である第10伝動機構150と第11伝動機構127が連動連結されている。すなわち、第10伝動機構150は、リール駆動スプロケット36と第1リール受動スプロケット151との間に第1リール伝動チェン152を巻回して形成している。第11伝動機構127は、第1リール受動スプロケット151と中継軸156を介して同軸的に取り付けた第2リール駆動スプロケット153と、掻込リール23のリール支軸157に取り付けた第2リール受動スプロケット154との間に、第2リール伝動チェン155を巻回して形成している。
【0041】
そして、オーガ受動スプロケット35→シャーピン40→スプロケット受片34b→軸ボス部34a→延設部27a・回転支軸27→リール駆動スプロケット36→第1リール伝動チェン152→第1リール受動スプロケット151→中継軸156→第2リール駆動スプロケット153→第2リール伝動チェン155→第2リール受動スプロケット154→リール支軸157→掻込リール23に回転力が伝達される。160は、第8伝動機構124を被覆する第8伝動機構カバー、161は、第9伝動機構126を被覆する第9伝動機構カバー、162は、第10伝動機構150を被覆する第10伝動機構カバーである。
【0042】
この際、例えば、オーガ本体28に過大な荷重(負荷)が作用した場合には、スプロケット受片34bと受動スプロケット35が回転支軸27の軸線廻りに相対変位して、両者の間に介在させているシャーピン40にせん断荷重が作用する。そして、その作用するせん断荷重がシャーピン40の許容せん断力を超えていると、そのシャーピン40はせん断されて、スプロケット受片34bと受動スプロケット35との連結が解除される。つまり、トルクリミッター42にその制限トルク(リミットトルク)を超えた負荷が作用すると、トルクリミッター42の伝達力が解除されるように機能する。
【0043】
したがって、トルクリミッター42がその機能を果たして伝達力が解除された場合には、掻込オーガ26及び掻込リール23への回転駆動力の伝達が停止されるため、それらが異物等により損傷等されるのを防止することができる。
【0044】
上記のように構成した掻込オーガ26では、受動スプロケット35とスプロケット受体34とを跨るようにシャーピン40を介在させて、シャーピン40には、その中途部に受動スプロケット35の回転方向へのせん断力が作用するようにしているため、鍔状に形成したスプロケット受体34の張り出し幅、つまり、シャーピン40のせん断位置とシャーピン40のせん断強度を勘案することにより、このトルクリミッター42の制限トルクを自由に設定することができる。
【0045】
したがって、適宜、トルクリミッター42の制限トルクを設定することで、又は、設定された制限トルクを現場である圃場において変更することで、トルクリミッター42の制限トルクを、つまり、トレードオフバランスを、現場である圃場において臨機応変に変更することができる。例えば、ココナッツ等の大型の異物が散在している圃場や、倒伏稲がある圃場等の圃場条件、又は、オペレータの運転技術や作業スピード等の作業条件に幅広く対応させることができる。
【0046】
その結果、オペレータ(ユーザー)一人一人の好みに適応させたトルクリミッター42の制限トルクの設定が可能となって、収穫作業能率を向上させることができる。そして、トルクリミッター42としての機能を確保することができて、周辺部品に過大なトルクが作用するのを回避することができるとともに、周辺部品が損傷等されるのを防止することができる。また、スプロケット受体34と受動スプロケット35とを連結するシャーピン40のせん断強度は、トルクリミッターとして機能させるボルトせん断方式のように、連結ボルトのせん断力と、その連結ボルトが締結される力とのバランスを考慮する必要性や煩雑性がない。
【0047】
そして、シャーピン嵌入凹条部41内には、外側方からシャーピン40を嵌入させてカバー体44により固定するようにしているため、シャーピン40を簡単に取り付けることができる。つまり、切断されたシャーピン40と新規のシャーピン40との付け替え作業を特殊な工具なしに簡単に行うことができる。そのため、設定トルクの変更作業をどこおいても気軽に行うことができて、トルクリミッター42のトレードオフバランスを適正に保持させることができる。
【0048】
また、回転支軸27の周方向に間隔をあけて複数形成したシャーピン嵌入凹条部41内のいずれかに、シャーピン40を嵌入させてカバー体44により固定するようにしているため、シャーピン40の増減調節を簡単に行うことができて、トルクリミッター42の制限トルクを、現場である圃場において臨機応変に変更することができる。
【0049】
図10〜
図12は、トルクリミッター42の変形例を示している。変形例としてのトルクリミッター42は、前記したトルクリミッター42と基本的に同様に構成しているが、次の点で構成が異なっている。すなわち、回転支軸27の延設部27aの外周面には、延設部側スプライン溝27gを形成する一方、スプロケット受体34の内周面には、受体側スプライン溝34eを形成するとともに、駆動スプロケットボス部46の内周面には、ボス部側スプロケット溝46bを形成している。そして、延設部27aの外周面に、各スプライン溝27g,34e,46bを介してスプロケット受体34と駆動スプロケットボス部46をスプライン嵌合して取り付けている。このように構成して、延設部27aの外周面に、スプロケット受体34と駆動スプロケットボス部46を簡単かつ堅実に取り付け可能としている。
【0050】
[掻込オーガの構成の具体的な説明]
次に、掻込オーガ26の構成を
図13〜
図15を参照しながら説明すると、本実施形態の掻込オーガ26は、フィーダハウス19の前端開口部20に近接する回転支軸27の左側端部を、右側端部に設けた後述のユニバーサルジョイント部27dを支点として上方へ回動偏位させることで、刈取穀稈集結空間31(
図6参照)を大きく開放して、刈取穀稈集結空間31内に滞留している作物等を簡単に除去することができるようにしている。
【0051】
具体的に構成を説明すると、掻込オーガ26は、穀物ヘッダー21の右側壁21aに設けた右側オーガ上下調整体52と、左側壁21bに設けた左側オーガ上下調整体53との間に、左右方向に軸線を向けた回転支軸27をその軸線廻りに回転自在に横架している。各オーガ上下調整体52,53は、各側壁21a,21bに固定した固定側調整板52a,53aと、各固定側調整板52a,53aに上下調整具52c,53cを介して上下スライド位置調整自在に取り付けた可動側調整板52b,53bと、を具備している。右側の可動側調整板52bは、軸受47を介して延設部27aに取り付けている。171は、右側壁21aの内面に重合状態に取り付けてオーガ本体28の右側開口端を閉塞する右側巻付防止板である。172は、オーガ本体28の左側開口端を閉塞する左側巻付防止板である。173は、固定側調整板52a,53aに形成した上下スライド位置調整孔、174は、上下スライド位置調整孔173を介して固定側調整板52a,53aに可動側調整板52b,53bを位置調整して連結する位置調整ボルトである。
【0052】
左側のオーガ上下調整体53には、オーガハンガー55を取り付けている。オーガハンガー55は、左側の可動側調整板53bに面接触させた状態にて、前後一対のスライドガイド体57,57を介して上下方向にスライド自在に取り付けて、左側の可動側調整板53bの中央部に形成した四角形の軸昇降用開口部54を閉塞している。オーガハンガー55の下端部には、係止体56の係止受片56aを取り付ける一方、可動側調整板53bの下端部には、係止体56の係止片56bを取り付けて、係止受片56aに係止片56bを係脱自在に係止している。係止体56としては、いわゆるパッチン錠を使用している。オーガハンガー55には、中央部に軸挿通用開口部58を形成して、軸挿通用開口部58を内外側から対向状態に閉塞するように内外側フィンガ調整板59,60を配置している。両フィンガ調整板59,60には、後述するフィンガ調整軸27fの左側端部を挿通し、上下方向に延伸する直状に形成した一対の長孔61,61を形成して、両長孔61,61を介して両フィンガ調整板59,60にフィンガ調整ボルト62aとフィンガ調整ピン62bを挿通している。
【0053】
63は、オーガハンガー55と外側フィンガ調整板60との間に介設したフィンガ調整具である。フィンガ調整具63は、伸縮調整することで、内外側フィンガ調整板59,60をフィンガ調整軸27fの左側端部の軸線廻りに回動調整して、フィンガ調整軸27fに支持されたフィンガ33の突出姿勢を調整可能としている。64は固定ピンであり、固定ピン64は、フィンガ調整軸27fの左側端部と、その外周面に沿わせて外側フィンガ調整板60から外側方へ向けて突設した筒状片60aに、抜き差し自在に貫通している。
【0054】
回転支軸27は、穀物ヘッダー21内に配置した動力取入基軸である固定基軸部27bと、右側壁21aから右側外方へ向けて固定基軸部27bの右側端に延設した延設部27aと、固定基軸部27bの左側端に設けたユニバーサルジョイント部27dと、ユニバーサルジョイント部27dに右側端部27cを連結したフィンガ進退調整機構27eと、から形成している。フィンガ進退調整機構27eには、フィンガ調整軸27fをクランク状に配置して、フィンガ調整軸27fにフィンガ33の基端部を連結して支持させている。そして、固定基軸部27bの軸線廻りにフィンガ調整軸27fが回転されると、フィンガ調整軸27fに基端部が連結されたフィンガ33が、オーガ本体28から突出自在に進退動作されるようにしている。
【0055】
上記のように構成した掻込オーガ26では、筒状片60aから固定ピン64を抜き取り、次に、オーガハンガー55と可動側調整板53bとの係止体56による係止状態を解除して、その後に、オーガハンガー55を上方へ摺動移動させることで、回転支軸27の左側端部を、右側端部に設けたユニバーサルジョイント部27dを支点として、上方へ回動偏位させることができる。つまり、刈取穀稈集結空間31を大きく開放することができて、刈取穀稈集結空間31内に滞留している作物等を簡単に除去することができる。
【0056】
[走行機体の構成の具体的な説明]
機体フレーム11の前端部上には、
図16に示すように、左右一対の刈取り支柱(図示せず)を立設しており、両刈取り支柱には、刈取入力軸65の両端部を回転自在に軸支している。左側の刈取り支柱には、正逆転切換ケース66を取り付けており、正逆転切換ケース66には刈取入力軸65と正逆転伝達軸51を同一軸線上に横架している。左右の刈取り支柱には、刈取入力軸65を介してフィーダハウス19の後端部を回動可能に支持している。なお、左右の刈取り支柱の間に、ビータ軸70を介して刈取り穀稈投入用ビータ71を軸支している。
【0057】
刈取り穀稈投入用ビータ71は、
図1に示すように、供給コンベア25の送り終端側に設けて、刈取り穀稈投入用ビータ71によって脱穀部12の扱口に投入される。脱穀部12の扱室内には扱胴軸75を介して扱胴72を回転可能に軸支している。扱胴72の下方側には、穀粒を漏下させる受網73を張設している。なお、扱胴72の前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根74が半径方向外向きに突設されている。
【0058】
選別部13には、
図1に示すように、受網73の下方に配置された穀粒選別機構77を配設しており、穀粒選別機構77は、グレンパン及びチャフシーブ及びグレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤78と、揺動選別盤78に選別風を供給する唐箕ファン76等を備えている。扱胴72により脱穀されて受網73から漏下した脱穀物は、揺動選別盤78の比重選別作用と唐箕ファン76の風選別作用とにより、穀粒(精粒等の一番物)と、穀粒と藁の混合物(枝梗付き穀粒等の二番物)と、藁屑等に選別されて取出されるように構成している。
【0059】
揺動選別盤78の下方には、穀粒選別機構77としての一番コンベヤ機構79及び二番コンベヤ機構80を備えている。揺動選別盤78及び唐箕ファン76の選別によって、揺動選別盤78から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ機構79及び揚穀コンベヤ81によって穀粒貯留部16に貯留される。穀粒と藁の混合物(二番物)は、二番コンベヤ機構80及び二番還元コンベヤ82等を介して揺動選別盤78の選別始端側に戻され、揺動選別盤78によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口部14から圃場に排出されるようにしている。
【0060】
運転部15には、
図1及び
図2に示すように、フロント操作コラム89と、サイド操作コラム90と、オペレータが着座する運転座席91とを配置している。フロント操作コラム89には、走行機体1の進路を変更する操縦レバー92が配置され、サイド操作コラム90には、走行機体1の移動速度を切換える変速レバー93等が配置されている。また、運転部15の上方側には、サンバイザー支柱94を介して日除け用の屋根体95を取付けている。
【0061】
走行部10は、
図1,
図2及び
図16に示すように、走行フレーム96の前後部に駆動輪97と従動輪98を取り付け、それらの動輪の回りに履帯99を巻回している。左右一対の走行部10,10の駆動輪97,97間には、走行駆動軸101,101を介してミッションケース100を介設し、ミッションケース100には、走行油圧ポンプ及び油圧モータを有する走行変速用の油圧無段変速機102を設けている。
【0062】
[コンバインの伝動構造の説明]
次に、
図16を参照しながらコンバインAの伝動構造を説明する。すなわち、エンジン18に設けた駆動軸110に第1伝動機構111を介して唐箕ファン76を軸支する唐箕ファン支軸112を連動連結している。唐箕ファン支軸112には第2伝動機構113を介して一番コンベア軸114を連動連結し、一番コンベア軸114には第3伝動機構115を介して二番コンベア軸116を連動連結し、二番コンベア軸116には第4伝動機構117を介して揺動選別盤作動軸118を連動連結している。
【0063】
唐箕ファン支軸112には第5伝動機構119を介して脱穀カウンタ軸120を連動連結している。脱穀カウンタ軸120にはギヤケース121を介して扱胴軸75を連動連結している。また、脱穀カウンタ軸120には第6伝動機構122を介してビータ軸70を連動連結している。ビータ軸70には第7伝動機構123を介して正逆転伝達軸51を連動連結している。69はビータ出力スプロケット、83はビータ入力スプロケットである。
【0064】
また、正逆転伝達軸51に正逆転切換ケース66を介して連動連結した刈取入力軸65には、供給コンベア25を連動連結するとともに、第8伝動機構124を介して刈取カウンタ軸125を連動連結している。刈取カウンタ軸125には、第9伝動機構126を介して掻込オーガ26を連動連結し、かつ、第10伝動機構150と第11伝動機構127を介して掻込リール23を連動連結し、かつ、刈刃伝動機構128を介して刈刃装置3の可動側刈刃体3aを連動連結している。
【0065】
エンジン18に設けた駆動軸110には、第12伝動機構129を介して油圧無段変速機102の入力軸130を連動連結している。エンジン18にはファン駆動軸131を介して冷却ファン132を連動連結しており、ファン駆動軸131にはコンベア伝動機構133を介して穀粒貯留部16と穀粒搬出部17にそれぞれ設けた搬出コンベア134,135を連動連結している。