(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記色度ヒストグラム分布において、前記2つの画素の画素積算数を格子単位で比較し、小さい方の画素積算数を特定し、当該画素積算数を積算し、前記検査領域の全画素数に対する、前記積算された積算数の割合である色分布一致指数を演算する請求項1または2の着色評価装置。
前記着色部品は固有情報を含み、当該固有情報を電磁的に消去し、又は読み取ることが可能であり、この固有情報と、前記着色部品に固有の前記分布とが関連づけられている請求項1ないし3いずれかの着色評価装置。
【背景技術】
【0002】
電化製品、自動車等の乗物、住宅・建築製品、電化製品、衣料など、塗装あるいは着色を必要とする商品が多々あり、商品の製造過程で塗装や着色が施され、また、販売過程では外観色により商品が選択されることが多い。
【0003】
例えば、自動車を一例として挙げれば、非特許文献1〜5に記載の発明が提案されているが、フリップフロップ等の対策が未だ十分ではない。また、新型車が登場するたびに、外板色が増え続け、需要者の色に対する要求が多様化している。マイナーチェンジや特別仕様車でも新色が設定されることが少なくない。日本の自動車メーカーが発表する新色は、年に数十色にもなり、色のバリエーションは際限なく広がっており検査が困難になっている。
【0004】
ところで、従来からある着色情報の取得手段として、RGB表色系撮像部がある。RGB表色系は国際照明委員会(CIE)によって提唱されたものであり、実際の分光スペクトルから得られる特定波長の三原色を用いてこれらを加法混色し、求める色について等色を得ようとするものである。しかし、RGB表色系において人の眼に対応する分光感度を表したRGB等色関数には負の部分が生じているところ、加法混色によっては光の引き算をすることはできないので、そのような分光感度の負の値をそのまま扱うことは難しい。そこでRGB表色系撮像部はRGB等色関数に生じる負の部分を変形・修正して近似的に表している。しかし、この近似処理によって人の眼の色域にある色を正確に捉えることができなくなり、画像や映像の色ズレや色つぶれを起こす原因となっていた。一方、RGB等色関数にある負の部分を生じさせないように座標変換した色空間としてCIE XYZ等色関数(以下、XYZ等色関数という)があり、これを用いた色情報の取得手段として、分光測色方法と三刺激値直読方法がある。
【0005】
分光測色方法は、多数個のセンサによって光源から発せられる放射スペクトルを直接測定するか、または、試料の反射スペクトルにおけるそれぞれの波長ごとの反射率を測定し、XYZ等色関数を用いて感度計算することにより、計測精度の高い三刺激値X、Y、Zを得るというものである。一方、三刺激値直読方法は、3種類のフィルタを装着した光センサ(カラーセンサまたは光電色彩計)により、測色値である三刺激値X、Y、Zを直接に読む方法である。
【0006】
そのような着色情報の取得手段がある中、上述のように色情報を取得し分析するための手段が求められているところ、これに関連する先行技術として特許文献1が挙げられる。これは、容易に色ムラ検査を実施可能な色ムラ検査方法、および色ムラ検査方法で用いる検査用画像データ生成装置を提供することを課題とするものである。またその解決手段は、色ムラ検査方法は、プロジェクタ2に色ムラ検査用画像を表示させる検査画像表示工程と、プロジェクタ2のRGB/XYZ変換特性を取得する色空間変換特性取得工程と、色ムラ検査用画像を撮像手段により撮像して、撮像画像データを取得する撮像工程と、プロジェクタ2のRGB/XYZ変換特性に基づいて、撮像画像データの第二の色空間形式をプロジェクタ2の第一の色空間形式に変換した変換画像データを生成する色空間変換工程と、変換画像データをプロジェクタ2により表示させる変換画像表示工程と、色ムラ検査用変換画像に基づいて、色ムラの検査を実施する色ムラ検査工程と、を備えるというものである。また、特許文献2は原稿画像データと、マスク処理済み検査画像データとの重なり率から品質不良か否かを判定する発明がある。
【0007】
着色の評価については、非特許文献1に示す通りの自動車の塗装外観計測の発明が提案されている。塗装外観には色、光沢、平滑性(ゆず肌)、メタリック感、深み感、といった質感と、ぶつ、でこ、へこ、たれ、はじき、といった欠陥があるが、ここでは、欠陥検査と質感計測が提案され、そのうち、質感計測については、すり傷性、色、メタリック感、肉持ち感、深み感であるが、その背景には自動車のカラートレンドの変化や感性品質に対する世の中の関心の高まりなどがある。
【0008】
近年、自動車用上塗り塗膜はホワイトで代表される淡色系に代わって、レッドやブルーなどの濃色系が増加しつつある。濃色系は塗膜表面の汚れや傷が目立ちやすい色であることが経験的に知られており、すり傷性の計測と耐すり傷性向上塗料の開発が必要になってきた。
【0009】
色の測定については、塗膜の光学特性がソリッドとメタリック系で異なることから、色の測定法、測定機も両者で異なる。
【0010】
ソリッド塗膜では色の情報を有している層内拡散反射光分布が等方性であるので、通常の測色計で測定することができる。測色計には分光測色計と測色色差計がある。分光測色計は対象の分光反射率ρ(λ)を測定して、照明光の分光分布P(λ)とスペクトル3刺激値x(λ)、y(λ)、z(λ)から式(2)を使って計算で3刺激値X、Y、Zを求めるものである。
【0011】
測色色差計は3刺激値X、Y、Zを直接測定するもので、その原理は人間が対象(試料)を見て色を知覚する過程と類似している。眼球に相当する積分球は試料からの拡散反射光を集めて受光器に導く役目を持ち、網膜にあるスペクトル3刺激値x(λ)、y(λ)、z(λ)の感度特性を有する3種類の視細胞に相当するものを色フィルタとフォトダイオードを組み合わせた受光器に置き換え、視神経を通じて大脳に伝達された刺激量は受光器により生じた出力に比例し、これが増幅器を経てX、Y、Z値として表示される。
【0012】
測色色差計は前述のように測色原理が人間の眼に似ており、小型でハンディな製品が多く、現場での使用に向いている。しかし、光源による条件等色(メタメリズム)を示す塗膜があるので注意が必要である。2種類の塗膜が自然昼光の下では色が同じに見えても、白熱電球の照明下では違う色に見える場合がある。このように特定の光源下で色が一致しても、光源が変わると等色がずれる現象を光源による条件等色という。条件等色は顔料の種類の違い、すなわち、2種類の塗膜の分光反射率の違いによって起こるものである。したがって、このような塗膜の色を測定する場合は分光測色計を使う必要がある。
【0013】
メタリック系塗膜は、ベース層に光輝材を含むため、その層内拡散反射光分布は異方性を示す。したがって、入射角、受光角が異なると色が違って見える現象、すなわち、幾何学的メタメリズムを示す。このようなメタリック系塗膜の測色には入射角、受光角が変えられる変角分光光度計が使われる。現在、角度条件で分光反射率ρ(λ)を測定して3刺激値X、Y、Zを求めることが提案されている。
【0014】
メタリック感の計測については、メタリック感は塗膜中のアルミニウムフレークが光って見えることによる感覚で、キラキラ感、スパークル感、あるいは光輝感とも言われる。計測法としては顕微光沢計で塗膜を走査して、反射光強度曲線を解析する方法が提案されたが、あまり普及していない。最近、レーザ式メタリック感測定器(ALCOPE)が開発され、徐々に普及しつつある。
【0015】
また、異種材料の組み立て塗装を行う従来工法は、
図27に示す通り、自動車の例を挙げると、部品工場1において、材料が鋼板であるドアを製造し、部品工場2で3バンパーとフェンダーとを製造し、これらを組立工場で組み立てた後、部品ごとに色を調整した塗料を自動車に塗装している。つまり、自動車の塗装の工程は、部品を組立工場に集め、完成品を組み立てた後に、自動車の全体の塗装を行っている。自動車ではバンパー以外は塗装するという流れである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1の発明、特許文献2の発明、非特許文献1の発明、非特許文献2〜5の記載によって、検査員の目視に頼らずに色を客観的に評価することは可能であるが、色情報の取得すなわち撮像手段である撮像部の精度や手法が従来と変わりなく、近年求められる着色の評価精度と手法に課題が残っていた。
【0019】
メタリック感等の色合いについて、従来、人の目で判別しているが、その判別が困難であり、解決が求められる。とりわけ、乗物等の着色のフリップフロップ等に伴う正確な評価は困難であり、こうした場合には、正確な色分布についての解析・評価が必要となる。
【0020】
近年、メタリック塗装等が新しく開発され、アルミニウムだけではなくて、様々な他の材料、例えば、マイカ等、各種材料を混ぜた塗装がある。メーカーが意図した色形態になっていればよいのであるが、塗装が施工される場合には、気温、湿度等の気候条件、下地塗りの出来具合によるばらつき、エアガンがスキャンして塗装する場合のエアガンの動作等、その他の製造条件に左右され、着色についてばらつきがあり、思わぬ事態が起きる可能性がある。フリップフロップと言われている現象で問題になっているのは、下地の材料等が違うと、乗物の外見色が見る角度によって、濃淡や明るさが変わる現象である。同じ位置でドアとフェンダー、ボンネットとフェンダーがある等、違う素材のものを組み合わせに見えるおそれがある。
【0021】
また、色に関する品質管理の方法は様々あるが、現在でも多くの現場でベテラン検査員による限度見本に頼った目視検査が行われている。品質に厳しい業種ではいくつかの問題点がある。問題点1は客観性に欠けることである。色の管理目的が人の目にどのように映るかを判断したい場合、同じく人の目で判断する目視検査はそれなりの精度をもって検査できる。顧客に品質の保証をしたい場面などでは、客観的なデータと言うには乏しい。問題点2は色を再現できない。トレーサビリティを求める風潮が高まる中、目視検査で残せるデータは検査員の官能合否のみであり不十分である。日々蓄積される検査結果を後から見ても分かる形でいつでも取り出せることが重要である。問題点3は人材確保がハードルである。限度見本となるものさえ用意すれば目視検査はそれなりの精度とスピードをもって検査できるが、担当者を育成・雇用するのには時間もお金もかかる。担当者は人間なので不安定要素もある。体調により検査精度が変化するおそれがある。様々な理由からの離職、検査員の個人差やヒューマンエラーもある。また、目視検査では、人件費の問題や品質の安定性を欠くため、製品不良損失や、工場とユーザ間での製品の往復による輸送コストと時間損失がある。
【0022】
また、従来の分光方式による測色計での色管理の弱点としては、1.撮像範囲は狭く(例えば 5mm 程度の円)、色測定については、この範囲の平均XYZ値を測定するため、模様(テクスチャーやメタリック感)については、平均化されるため、分からないのが現状であり、色を正確に撮影できないため、色や質感が見た目とは微妙に違った色に写る、2.数値データだけでは実際に色のイメージが浮かびづらい、3.従来の撮像部で標準となる色サンプルを撮影しても見た目とは微妙に違った色に写る、4.色サンプルそのものも時間の経過と共に褪色が進み元の色と違ってしまう、5.人によって見る色に対する感覚が異なるという課題がある。
【0023】
従来の撮像部はRGBの三角形で囲まれた色域の色データしか検出できないため、色精度が低く色を正確に表示できない。表示される画像の色データもsRGB色域内にて表示され正確な色情報は失われる。従来の撮像部で撮影した画像の色が、実際の色より異なって表示されるのは、sRGB領域内で色を表示しているためである。また、ラメ・パール成分を含む顔料は全反射が加わるので、測色が困難である。従来の分光測色計では測色範囲が非常に狭いため、測る場所によって数値がかなりバラつく。
【0024】
また、照明の明度によっては、色が異なるように見えるが、これも考慮されていなかった。
【0025】
さらに、たとえば、
図27に示す通り、組立工場において、自動車が異種材料から構成される場合には、部品の材料が相違するため、同一色・質感の塗装を確保するのに、各部品の材料が相違するごとに色を調整した塗料で、部品に対して個別に塗装作業を行う必要があるため、塗装作業が大変面倒になるという課題が残る。また、メタリック塗装では、単に色だけでない光輝材によるメタリック感についての調整が困難で、事実上これまで量産ラインでは実現されていない。
【0026】
そこで、本発明は、製品が異種材料から構成される場合には、部品の材料が相違しても、同一色・質感の着色を確保し、着色作業を効率化すること、また、着色分野における忠実な色情報の取得、再現や分析等の要求に応え、また、人の眼に忠実で正確な画像色分布を取得して、製品、人体等のラメやパール感、メタリック感等の質感、凹凸などの微妙な色合いを正確で簡便に検査するとともに、見た目の着色評価装置及び方法を提供することすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題に鑑み本発明は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部と、測定対象物が組立体の部品であり、前記部品が個別に着色され、着色部品について前記撮像部が取得した三つの分光感度を有する画像をCIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換した着色データを取得し演算する演算処理部と、前記測定対象物を照射する照明部と、を備え、前記演算処理部が、前記測定対象物の撮像により得られた着色データのうち、特定された検査領域を設定し、前記測定対象物としての検査物と基準物について、それぞれ、前記検査領域の各画素のXYZ値より正規化されたxy値又はXYZ値そのものを検査領域について演算し、xy色度図のxy座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、xy色度ヒストグラム分布
を作成するか、又は
、XYZ色度図のXYZ座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、XYZ色度ヒストグラム3次元分布を作成し、前記検査物と基準物の2つのxy色度ヒストグラム分布又はXYZ色度ヒストグラム3次元分布を比較し、前記比較に基づいて、色及び質感が近似する前記着色部品の組み合わせを選択することを特徴とする着色評価装置である。
【0028】
前記色度ヒストグラム分布において、前記2つの画素の画素積算数を格子単位で比較し、小さい方の画素積算数を特定し、当該画素積算数を積算し、前記検査領域の全画素数に対する、前記積算された積算数の割合
である色分布一致指数を演算することが好ましい。
【0029】
前記色分布一致指数を示すデータを通信回線を介してコンピュータ間で送受信することが好ましい。
【0030】
前記撮像部を支持部材に取り付けて、生産ライン上を流れる検査物を撮像することが好ましい。
【0031】
格子は平面格子でも立体格子でも良い。
【0032】
2次元の格子に代えて、XYZをすべて演算し3次元の格子とする場合、演算時間は多くなる。また、2つのxy色度ヒストグラムの重なり合った割合は、2次元的な重なりでの指数、また、3次元的な重なりでの指数とする。
【0033】
また、別の態様の発明は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部と、測定対象物が組立体の部品であり、前記部品が個別に着色され、着色部品について前記撮像部が取得した三つの分光感度を有する画像をCIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換した着色データを取得し演算する演算処理部と、測定対象物を照射する照明部と、を備え、前記演算処理部が、前記測定対象物の撮像により得られた着色データのうち、特定された検査領域を設定し、測定対象物としての検査物と基準物について、それぞれ、前記検査領域の各画素のXYZ値をLabに変換し、Lab色度図のLab座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、Lab色度ヒストグラム分布を作成し、前記検査物と基準物の2つのLab色度ヒストグラム分布を比較し、前記比較に基づいて、色及び質感が近似する前記着色部品の組み合わせを選択することを特徴とする着色評価装置である。
【0034】
また、別の態様の発明は、前記色度ヒストグラム分布において、前記2つの画素の画素積算数を格子単位で比較し、小さい方の画素積算数を特定し、当該画素積算数を積算し、前記検査領域の全画素数に対する、前記積算された積算数の割合を演算することにより、前記色分布一致指数を演算することが好ましい。
【0035】
前記色分布一致指数を示すデータを表示装置に表示し、通信回線を介してコンピュータ間で送受信することが好ましい。
【0036】
前記撮像部を支持部材に取り付け、生産ライン上を流れる検査物を撮像することが好ましい。
【0037】
また、別の態様の発明は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部を利用する着色評価方法において、照明下で、測定対象物が組立体の部品であり、前記部品が個別に着色され、着色部品について前記撮像部による撮像により取得した三つの分光感度を有する画像をCIE XYZ表色系における三刺激値XYZに変換した着色データを生成するステップと、前記測定対象物としての検査物と基準物について、前記測定対象物の撮像により得られた着色データのうち、特定された検査領域を設定するステップと、測定対象物として、検査物と基準物について、それぞれ、前記検査領域の各画素のXYZ値より正規化されたxy値を検査領域について演算するステップと、xy色度図のxy座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、xy色度ヒストグラム分布
を作成するか、又は
、XYZ色度図のXYZ座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、XYZ色度ヒストグラム3次元分布を作成し、前記検査物と基準物の2つのxy色度ヒストグラム分布
又はXYZ色度ヒストグラム3次元分布を比較し、前記比較に基づいて、色及び質感が近似する前記着色部品の組み合わせを選択するステップと、を備えたことを特徴とする着色評価方法である。
【0038】
また、別の態様の発明は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部を利用する着色評価方法において、測定対象物が組立体の部品であり、前記部品が個別に着色され、着色部品について、照明下で、前記撮像部による撮像により取得した三つの分光感度を有する画像をCIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換した着色データを生成するステップと、前記測定対象物の撮像により得られた着色データのうち、特定された検査領域を設定するステップと、測定対象物として、検査物と基準物について、それぞれ、前記検査領域の各画素のXYZ値をLabに変換するステップと、Lab色度図のLab座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、Lab色度ヒストグラム分布を作成するステップと、前記検査物と基準物の2つのLab色度ヒストグラム分布を比較し、前記比較に基づいて、色及び質感が近似する前記着色部品の組み合わせを選択するステップと、を備えたことを特徴とする着色評価方法である。
【0039】
撮像部は単数でも複数でも良い。撮像部を固定して撮像しても、移動させて撮像してもよい。撮像部が複数の場合、撮像角度に対応する場所にそれぞれ設置できる。
【0040】
本発明における撮像部は、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))により、すなわち、観測対象物を三つのチャンネルに分けて撮像することが好ましいが、その手段としては、これらの分光感度を得るために設定された光学フィルタまたはダイクロイックミラーもしくはダイクロイックプリズム等のいずれであるかを問わず用いることができる。
【0041】
前記撮像部の分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、CIE XYZ分光特性から負の値を持たない、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりは最小限にするという条件から等価変換したものであって、分光特性S1のカーブは、ピーク波長が582nmであり、半値幅が523〜629nmであり、1/10幅が491〜663nmである。分光特性S2のカーブは、ピーク波長が543nmであり、半値幅が506〜589nmであり、1/10幅が464〜632nmである。分光特性S3のカーブは、ピーク波長が446nmであり、半値幅が423〜478nmであり、1/10幅が409〜508nmである。
【0042】
そこで、
図1に示す通り、同一色・質感の着色が出来ると、組立工場での検査工程がより短縮される。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、測定対象物が異種材料から構成される場合でも、同一色・質感の着色ができるので、着色工程がより短縮される。また、相違する色の材料に関する着色のマッチング機能が優れている。また、着色分野における忠実な色情報の取得、再現や分析等の要求に応え、人の眼に忠実で正確な画像色分布を取得し、製品や人体等のラメやパール感、メタリック感等の質感、凹凸などの微妙な色合いを正確、簡便に検査することができる。演算時間を短縮できる上、応用例も広く、産業上の利用価値は大である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の好適な実施形態1による着色評価装置1について
図1〜
図18を参照して説明する。
【0046】
着色評価装置1は、
図1、
図2に示す通り、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部2と、測定対象物が組立体の部品であり、部品が個別に部品工場1、2で塗装され、塗装部品5について撮像部2が取得した三つの分光感度を有する画像をCIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換した着色データを取得し演算する演算処理部3と、測定対象物である塗装部品5を照射する照明部6と、を備えている。演算処理部3が、塗装部品5の撮像により得られた着色データのうち、特定された検査領域を設定し、測定対象物としての検査物と基準物について、それぞれ、検査領域の各画素のXYZ値より正規化されたxy値を検査領域について演算し、xy色度図のxy座標の検査領域を格子で区画し、各格子に属する前記検査物と基準物の画素数を積算することにより、xy色度ヒストグラム分布を作成し、前記検査物と基準物の2つのxy色度ヒストグラム分布を比較し、前記比較に基づいて、色及び質感が近似する塗装部品5の組み合わせを選択するものである。
【0047】
図1、
図2に示す通り、部品工場1で鋼板のドアを製造し同一色で塗装し、一方、部品工場2で炭素繊維製またはプラスチック製のバンパー、フェンダーを製造し、これらを同一色で、それぞれ、塗装する。また、部品5ごとにその部品には、固有情報、例えば、部品番号、製造工場名、製造日時等が記憶されたICタグが、内蔵または装着等により取り付けられている(S11)。
【0048】
部品工場1、2で、塗装後の部品を、着色評価装置1で色分布一致指数、色差ΔE等の色情報を計測し、コンピュータに記憶させる(S12)。なお、塗装の色分布情報としては、色とメタリック感を示す色分布の情報に加えて、色の分布の広がり情報も記憶しておいてもよい。
【0049】
組立工場に部品を運び組み立てる前に、本社あるいは部品工場で予め色分布一致指数の情報と色差ΔE等に基づいて数値の近いものを組み合わせるマッチングを行い、色情報をICタグに部品番号に関連づけて記憶させ、組み合わせテーブルを作成する(S13)。コンピュータのソフトウェアでマッチングを行ってもよい。一番、最適な部品番号と色データを組み合わせるため、データをシャッフルし、一番合う状態を計算して、部品の組み合わせのテーブルを作成する。これにより、塗装条件の相違いによる色の不一致を避けるとともに、製造効率を高めることができる。
【0050】
組み合わせテーブルのデータはコンピュータとネットワークを利用して、クラウド上にアップロードする(S14)。
【0051】
クラウド上から組み合わせテーブルをダウンロードする(S15)。
【0052】
部品が組立工場に搬入されると、ICタグから固有情報を読み取って塗装部品をラインに流し、テーブルに基づいた最適な部品の組み合わせで自動車を組み立てる(S16)。これにより、自動車が異種材料から構成される場合でも、同一色・質感の着色ができるので、着色工程がより短縮される。また、相違する色の材料に関する着色のマッチング機能が優れている。
【0053】
自動車以外でも、部品を組み立てて製造する製品、例えば、冷蔵庫等の家電製品、住宅、航空機、電車等にも適用が可能である。同じ色調のものを合わせて一体化するようなものであれば、この発明の適用範囲は上記分野に限定されるわけではない。
【0054】
部品工場では、フリップフロップにより角度によって塗装の色の見え方が相違するので、ここでは、撮像部2を手動で移動して、少なくとも3つの相違する角度から撮像する。照明部6があって、撮像部2がその下に設置され、撮像部2が手動でその角度を変えられる。撮像部2により多角度から塗装部品5の塗装色及びその色分布データを測定できる。
【0055】
また、この実施形態では、撮像部2を移動可能に取り付けるガイド部4を備えている。
【0056】
撮像部2の分光感度はルータ条件を満たすものであって、その分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、
図12に示す通り、XYZ等色関数から、負の値を持たず、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりはできるだけ少なくするという条件から等価変換したものである。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は具体的には以下の特性を持つ。
記
ピーク波長 半値幅 1/10幅
S1 582nm 523〜629nm 491〜663nm
S2 543nm 506〜589nm 464〜632nm
S3 446nm 423〜478nm 409〜508nm
【0057】
上記の分光特性S1のピーク波長を580±4nm、分光特性S2のピーク波長を543±3nm、分光特性S3のピーク波長を446±7nmとして取り扱うこともできる。
【0058】
三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は次の数式1を用いて求められるものである。分光特性自体についての詳細は特開2005−257827号公報を参照されたい。
【数1】
【0059】
撮像部2の仕様は、例えば、有効頻度値約500万画素、有効面積9.93mm×8.7mm、画像サイズ3.45μm×3.45μm、ビデオ出力12Bit、撮像部インターフェイスGigE、フレーム数(ピント調整時)3〜7フレーム/sec、シャッタースピード1/15,600sec〜1/15sec、積算時間3秒まで、S/N比60dB以上、レンズマウントFマウント、動作温度0℃〜40℃、動作湿度20%〜80%である。
【0060】
撮像部2は、
図11に示すように、撮影レンズ21と、この撮影レンズ21の後方に配置された三つの光学フィルタ22a、22b、22cと、光学フィルタ22a、22b、22cの後方に配置された撮像素子23(CCD、CMOSなど)と、を備えている。撮像部2の三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、光学フィルタ22a、22b、22cの分光透過率と撮像素子23の分光感度との積により与えられるものである。
図11における光学フィルタ22a、22b、22cと撮像素子23との配列的関係は模式的に示したものにすぎないものである。三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像情報を取得する方式について以下に具体例を挙げるが、本実施形態1ではこれらのうちいずれをも採ることができ、また、その他の方式を採ることもできる。撮像部2は演算処理部24と、表示装置25を備えている。
【0061】
図13(a)に示すものはダイクロイックミラーを用いる方式である。これはダイクロイックミラー22c´により特定の波長の光を反射し、透過した残りの光について、さらに別のダイクロイックミラー22a´により別の特定の波長の光を反射して分光し、撮像素子23a、23b、23cを三つ並列にして読み出す方式である。ここでは、ダイクロイックミラー22a´が光学フィルタ22a、22bに相当し、ダイクロイックミラー22c´が光学フィルタ22cに相当する。撮影レンズ21から入射する光はダイクロイックミラー22c´により分光感度S3に従う光が反射され、残りの光は透過する。ダイクロイックミラー22c´により反射された光を反射鏡26により反射して撮像素子23cにより分光感度S3を得る。一方、ダイクロイックミラー22c´を透過した光は、ダイクロイックミラー22a´において、分光感度S1に従う光が反射され、残りの分光感度S2に従う光は透過する
。ダイクロイックミラー22a´を透過した光を撮像素子23bにより撮像して分光感度S2を得る。ダイクロイックミラー22a´により反射された光を反射鏡29により反射して撮像素子23aにより分光感度S1を得る。ダイクロイックミラーに代えて同様な特性を有するダイクロイックプリズムを用いて三つに分光し、それぞれの光が透過する位置に撮像素子23a、23b、23cを接着することとしてもよい。
【0062】
図13(b)に示すものはフィルタターレット27を用いる方式である。撮影レンズ21からの入射光と同じ方向を回転軸に持つフィルタターレット27に光学フィルタ22a、22b、22cを設けてこれらを機械的に回転させ、順次透過する光について撮像素子23により三つの分光感度S1、S2、S3を得るものである。
【0063】
図13(c)に示すものは光学フィルタ22a、22b、22cを撮像素子23に微視的に貼着する方式である。撮像素子23上における光学フィルタ22a、22b、22cは、ベイヤー配列型に設けられる。この配列は、格子状に分けた撮像素子23上の領域のうち半分に光学フィルタ22bを設け、残りの半分の領域に光学フィルタ22aと光学フィルタ22cとをそれぞれ均等に配置するものである。すなわち、配置量は光学フィルタ22a:光学フィルタ22b:光学フィルタ22c=1:2:1となる。光学フィルタ22a、22b、22cの配列をベイヤー配列以外のものとすることは本実施形態1において特に妨げられない。一つ一つの光学フィルタ22a、22b、22cは非常に微細であるため、印刷により撮像素子23に貼着される。ただし、本発明はこの配列に意味があるのではなく、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))の特性のフィルタを撮像素子に貼着することにある。
【0064】
撮像部2は、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))により取得した画像情報を演算処理装置3に送信し、演算処理装置3でXYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換し、取得した三刺激値X、Y、Zによる画像データを変換処理によって正規化しxyに変換する演算処理を行い、視覚化処理された画像を表示装置7で表示する。
【0065】
演算処理装置3は撮像部2により取得した画像の任意の位置における輝度、色度等を演算し視覚化処理するものである。塗装部品5の斜めから照明を照射し、手動で支持部4を操作して、塗装色の色分布データ同士を比較し、指数化する。
【0066】
支持部4は、
図3〜
図10に示す通り、ヘッド40と、ヘッド40を移動させる複数のビームから構成されるアーム41と、アーム41を回動可能に取り付ける支柱42と、支柱42を固定する架台43と、支柱42の支持を補強する補強材42aと、備えている。
【0067】
ヘッド40は直線ガイド44と、直線ガイド44に連結された円孤部材45とを備え、照明部6がヘッド40の両端部にランプ調整具46により位置や角度調整が可能に固定され、直線ガイド44に撮像部2が移動可能に取り付けられている。撮像部2の撮像角度を調整可能な撮像部角度調整具47が取り付けてある。ヘッド40に撮像部・シフト調整モータ48a及び撮像部・パン調整モータ48bが設けてあり、撮像部2は直線ガイド44に沿ってスライド移動可能である。ヘッド40は、アーム41に対して、ヘッド・チルト調整具49によってチルト可能に取り付けてある。アーム41の下端末には錘41aが固定されている。アーム41は支柱42に対して高さ調整具41bにより連結されている。
【0068】
撮像部2で塗装部品5を1ヶ所で撮像し、撮像部2が移動して、他の別の場所で撮像する。ここでは、例えば、正面、左右45度の3箇所(適宜数の箇所でも良い)で撮影することもできる。
【0069】
測定対象物の塗装部品5に対して、着色評価装置1を設置し、塗装部品5に塗装が適切に施工されているか否かを測定し、塗装の抜き取り検査とする。
【0070】
照明部6の照明源はキセノンランプ(擬似太陽光)を採用する。照明部6はキセノンランプのほかに、フレネルレンズ・アセンブリを備えている。キセノンランプは塗装部品5の斜め上から均一に照らすものとする。キセノンランプ以外にLEDの人工太陽灯でもよい。ロボットアーム等に取り付ける場合には、小型軽量でありながら、色彩評価用光源の条件を満たし、一般的なLEDで起きる色収差の問題も克服し、大変便利である。
【0071】
表示装置7は演算処理装置3と接続され、演算処理装置3で処理された画像信号を受信して、画像を画面に表示するようになっている。演算処理装置3または表示装置7は、適宜、入力手段(図示略)等を備える。入力手段はキーボード、マウス、画像表示装置に設けられるタッチパネル等である。
【0072】
なお、図示は略すが、検査の状況によっては、着色評価装置1に遮光カバーを取り付けてもよい。
【0073】
着色評価装置1の動作について具体例を挙げつつ説明する。着色評価装置1は、
図11に示す通り、撮像部2と、演算処理装置3と、表示装置7とを接続することにより動作する。接続方法は有線・無線を問わず選択できる。撮像部2におけるフローチャートを
図14に、演算処理装置3におけるフローチャートを
図16に、それぞれ示す。
【0074】
撮像部2の電源が入ると、
図14に示す通り、初期化をする(初期化S1)。つぎに、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))により塗装部品5を撮像し(撮像処理S2)、その後、撮像された画像データを撮像素子23により入力し(入力処理S3)、演算処理装置3にて三刺激値X、Y、Zに変換する(変換処理S4)。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は表示装置7に送信される(データ送信S5)。画像が動画である場合には、撮像処理S2からデータ送信S5の一連の処理が連続的に行われる。画像は画像表示装置7に表示される。
【0075】
撮像処理S2では、特定領域について、相違する角度にて撮像部2で塗装部品5を撮像する。撮像箇所は複数個所であり、適宜数を選択できる。ここでは、正面(0度)、左45度、右45度の3方向から測定する。また、パネル測定の場所は、撮像部2の0度の光軸は塗装部品5のボディー面に垂直になる。また、照明は、太陽光と同じく斜め上からの照明であることが特徴となる。
【0076】
XYZ表色系では数値と色の関連がわかりにくいので、XYZ表色系から絶対的な色合いを表現するためのxyY表色系を用い、色度座標の色度値xyは下式より求める。
【数2】
【数3】
【0077】
YはXYZのYをそのまま使う。すべての色は色度値xyによる2次元平面、および明度を示すYで表現できる。YはXYZのYをそのまま使う。xyYからXYZに変換することもできる。Labへの変換は、XYZ値に、Xn,Yn,Znの最大明度白色点のXYZ値より演算できる。
【0078】
撮像処理S2は、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する撮像部2によって塗装部品5を撮像する工程である(
図14参照)。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は上記の数式1に従って与えられるものである。撮影レンズ21と光学フィルタ22a、22b、22cと撮像素子23により撮像されると同時に入力処理S3が連続的に行われる。
【0079】
入力された画像データは分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従った値であるため、撮像部2の演算処理装置3における変換処理S4によって、撮像された画像の画像データを三刺激値X、Y、Zに変換する。この変換は数式1に従って行われる。すなわち、数式1における係数の逆行列を乗じて三刺激値X、Y、Zを得ることとなる。なお、撮像部2からは分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従った値のまま演算処理装置3に送信する(S5)。
【0080】
演算処理装置3に電源が入ると、
図15に示す通り、初期化をする(初期化S110)。表示装置7は撮像部2と接続された状態において、撮像部2から送信された分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を受信する(データ受信S120)。その後、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))から三刺激値X、Y、Zに変換し、色度xy座標ヒストグラムを計算し、色分布一致指数を計算する(S140)。その内容を表示装置7に送信する(表示処理S150)。撮像部2からデータ受信S120に従い、変換処理S130から表示処理S150の一連の処理が連続的に行われる。
【0081】
演算処理S140は、撮像された画像の色分布一致指数を演算し視覚化処理する工程であり、表示装置7に表示するために必要な場合は、色情報をRGB等に変換処理する。
【0082】
前記の表示処理S150は、視覚化処理された色分布一致指数を画像表示装置に表示する工程であり、処理をリターンする。
【0083】
図16のS140のサブフローチャートを説明する。基準物の第1画像を撮像しておき、次に対比すべき検査物の第2画像を撮像し、以下のとおり色分布一致指数を順次計算する。この色分布一致指数により色度の類似性を判定する。
【0084】
撮像した画像ABについて検査したい領域T(
図17(a)参照)に対応する検査領域K(
図17(b)参照)を設定する(ステップS141)。大きさや場所を自由に設定することができる。
【0085】
色度値xyを演算し、色度値xyを求める(S142)。
【0086】
撮像した検査物の画像Aから切り出した領域Kの基準物Qのxy色度ヒストグラム分布を作成する(S143)。このxy色度ヒストグラム分布は、
図17(c)に示す、2つのヒストグラム分布の重なり領域Dに属する画素をカウントした積算数である。
【0087】
図17(c)に示す通り、xy座標の位置での比較対象の色分布を記載したものであり、3次元色分布を2次元色分布に投影したものとなる。検査領域Kを平面格子Gで区画し、その区画のxy値を有する画素のヒストグラム分布を作成する。xy座標を、特定の幅のグリッド(立体マス目)、例えば、xyをそれぞれ1/1000(1000個の線)で切った格子とする。ヒストグラムの端から端までスキャンしてゆき、格子Gに区画した領域ごとに、これに属する画素数を同じxy面でそれぞれスキャンしz方向にカウント数を積算してゆく。また、検査領域Kでxy座標で特定すれば、演算時間が短縮できる。グリッドのマス目を細かくすれば精度は上がるが、演算時間が長くなるので、適宜のマス目とする。なお、ある特定の色だけ細かく見たい場合には、そこのところだけより細かく切って検査できる。
【0088】
S143と同様に、基準物Rの画像Bのxy色度ヒストグラム分布を作成する(S144)。xy色度ヒストグラム分布は、画素の積算数であり、
図17(d)に重なり領域を示す。
【0089】
xy色度値に代えて、XYZ空間のXYZ値、または、正規化する前のXYZ値から下記の数式5により変換したLab空間のLab値を算出し、これを用いてもよい。Lab色空間は補色空間の一種で、明度を意味する次元Lと補色次元のAおよびBを持ち、CIEXYZ色空間の座標を非線形に圧縮したものに基づいている。正規化する前のXYZ値からLabに数式4により変換することで、XYZ色空間上での色分布一致指数に対して、Lab色空間では、明るさ方向も加味した色分布一致指数が得られる。
【0091】
検査領域Kに対応するLab空間における色度ヒストグラム分布の演算の場合、色分布一致指数の演算は、立体になっても平面でも理屈は同様である。まず、XYZ値からLabへ変換を行い、三次元Lab空間にマッピングする。xy色度をL軸、a軸、b軸の3次元空間での分布により行う。検査物Qと基準物RでのLab空間座標でのLab値を、それぞれ、U
1(L,a,b)、U
2(L,a,b)とする。Labの色空間であるとヒストグラム分布は地球儀のような形状になっており、2つのヒストグラム分布が立体的に重なり合っている。空間上検査領域Kに対応するLab3次元空間をボクセルといわれる立体格子で区画し、それぞれの立体格子に所属する画素数をカウントアップしていく。3次元でのU
1(L,a,b)、U
2(L,a,b)の色度ヒストグラム分布において、Lab空間で画素がないところは、カウントせず、お互いのカウントがあるところで、その2つの値を比較して、小さい方のカウントだけ残すような演算を行うことでミニマム分布を求め、カウント数を加算演算する。Lab三次元空間の中で分布の重なっているところのカウント値が残るので、最初に切りとった25000画素分のカウント数と比較演算することによって、三次元での色一致指数の演算を行う。この場合には、L値(明度)の違いも色一致指数に現れることが特徴となる。
【0092】
xy色度の場合には、明るさの情報が失われてしまうため、色情報のみの色分布一致指数を示すが、Lab空間では、画像の明るさが変わると、L値が変化して、色分布一致指数の分布D
1、D
2がLab空間内で位置がずれる、たとえば、xy色度が同じでも、明度が高い照明下ではLが高くなるなど、画像の明るさが違えば分布の位置がシフトする。3次元の場合には同じ物体に対して、明るさを変えて照明を当てると立体分布全体がシフトしたようになり、シフトの程度で明るさの差が評価できるので、色と明るさの両方を評価することができる。たとえば、Lab色度ヒストグラム分布は、暗くなれば下方にシフトし、明るくなれば上方にシフトするなど、画像の明暗を考慮に入れた判定が可能である。普通の照明光が安定していない場所で、ただ単に色を比較したいというケースはニ次元の色分布一致指数は同じ値が出るので十分であるが、色が同じであっても明るさが違うことも検出したい場合には三次元の色分布一致指数を用いる。
【0093】
色分布一致指数を演算し(S145)、リターンとする。この指数は、下式により計算する。xy色度ヒストグラム分布は、画素の積算数であり、
図17(d)に重なり領域D、
図17(e)にミニマム分布を示す。
色分布一致指数=重なり領域Dに属する画素の積算数/検査領域Kの全体の画素数×100(%)
【0094】
図17(d)(e)は
図17(c)をS−S断面で切り取った1つの断面図であり、xy座標で同じライン上で見た場合には重なり合いがある。立体的に描く代わりに、便宜上、平面で描いている。またヒストグラムであるから、微小な階段形状の分布になっている。
図17(d)の積算数H
Aと積算数H
Bはそれぞれ画像A、画像Bに対応する。二つのヒストグラム分布を比較すると、重なり領域Dが存在する。
【0095】
図17(e)に示す通り、H
A(x
1、y
1)を検査物Qのxy色度ヒストグラム分布の積算数、H
B(x
2、y
2)を検査物Rのxy色度ヒストグラム分布の積算数とすると、重なり合った左側領域ではH
A>H
Bで、中央でH
A=H
Bとなり、右側ではH
A<H
Bである。H
A,H
Bのうち、小さい方の積算数(画素頻度)を取ると、左側ではH
A、右側ではH
Bとなり、太線のような階段状のヒストグラム曲線であるミニマム分布が特定できる。これを利用し、重なり領域Dの全体領域に対する割合が演算できる。
【0096】
このミニマム分布で小さな方の積算値を特定する。H
AとH
Bのうち、少ない方の積算数を加算演算すれば、重なり領域Dの積算数が演算でき、全体の画素数に対する割合が特定できる。検査領域Kの全体の画素数は決まっており、検査物Qと基準物Rでは、ともに総画素数は同一値である。この割合の演算は全部の格子Gについて3次元的に積算してもよい。
図17(c)に示す通り、S−Sに沿って検査領域Kを切り、yが所定値の格子列でxが端から端まで変化する場合での画素の積算数の分布を2次元的に積算したものである。
図17(f)が積算結果のxy座標上での2次元マップである。検査領域Kの格子Gに画素の分布がないときは、画素数がゼロであるから、演算から除外する。処理をリターンする。
【0097】
例えば、検査領域Kに属する画素を縦100画素×横100画素=10,000画素とする。同じ検査領域Kで画像を切り取るので、画像Aと画像Bの全体の画素数はともに10,000画素である。xy色度ヒストグラムから、重なり領域の画素数を積算し、積算数が5,000個であった場合、色分布一致指数は50%となる。色分布一致指数が100%を下回るほど色度の相違度が大きくなる。xy値の分布が完全に一致していれば100%となる。これにより、一定以上の数値であると判定された場合に、適合品であると判定することができる。
【0098】
画像について、第一次的に得られる色情報はXYZ等色関数と等価な関数による三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))であるため、RGBにより取得する場合と比べて人の眼の感度に忠実で高精度である。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))の重なり合いは小さく、S/N比も十分にとれ、分光感度の曲線におけるカーブも自然に変化するため、測色における誤差は最低限に留められる。
【0099】
画像の質感をヒストグラム分布で把握できるため、色のテキスチャー(メタリック感、きらきら感、まだら模様、色パターン、ごつごつ感等)の違いを反映することにより、微妙な色合いの違いまで判定できる。
【0100】
例えば、
図18(a)〜(c)に示す通り、メタリック度が小さいものから大きなものまで、3種類を検査した場合の例を説明する。メタリック度の小さなものを基準物1とし、メタリック度の中程度を検査物2とし、メタリック度の大きなものを検査物3とする。まず、1〜3を前記の処理を行った後のxy色度図上での分布を作成すると、
図18(b)のxy色度図に示す通り、ハイライト部分が積算されたデータである。積算数を明暗で示してあり、色の明るいほど積算数は大きい。
図18(c)は基準物と検査物の3次元で積算数を模式的に表したものである。xy軸は色度、z軸は積算数である。基本的には、メタリック感が強いほど、低く広がった山形となり、メタリック感が弱いほど、尖った山形になる。メタリック感の元である光輝材(アルミフレーク)は、照明光が当たると、微小突起等できらめき感がでてくるのであるが、このきらめき感は、物理的には光の回折現象である。基準物1と、検査対象2又は3について、2つのヒストグラム分布を比較することで、重なりの度合いを示す色分布一致指数を演算する。
【0101】
表1に示す通り、比較例はΔEが質感の元となる色を平均値で算出したLabを使用するので、Lab値、ΔEの値が見た目に比べて微小の差異であり、比較例では、メタル感の程度の検査が困難であった。これに対して、本実施形態の色分布一致指数は、検査領域Kの範囲内の積算数をそのまま用いるので、基準物1に対して、検査物2、3がそれぞれ58%、27%となり、数値で明確に、かつ、簡単にメタリック度の識別ができる。
【0103】
ここで、L
*a
*b
*表色系における色差ΔEを求める計算式を下式に示す。色差ΔEは色空間のユークリッド距離により与えられ、その他のより精度の高いΔE2000により計算してもよい。また、グラフに示すものは色差ΔEに限られず、例えば、L
*a
*b
*表色系におけるL
*値、a
*値、b
*値を並列にグラフ化して表示する方法もある。
【数5】
【0104】
なお、ΔEと色一致指数の関係であるが、色差ΔEだけでは、メタリック感の評価ができず、色一致指数だけでは、相対的な比較となるため、両方を評価する方式がより、人の目の評価に近い。
【0105】
一例として、分布一致指数の閾値は、75%、色差ΔEの閾値は、2.5が挙げられ、分布一致指数が75%以上、色差ΔEが2.5以下を合格品とする。
【0106】
図19、
図20は表示装置7での画面上の表示例である(
図15のS150)。
図19に示す通り、一致指数89%、ΔE0.111で閾値とともに表示し、中央領域に閾値内に収まることを示すOKの表示を行うとともに、基準画像と検査画像を並べて表示し、右側領域に分光感度の分布、xy色度分布を表示する。一方、
図20に示す通り、色分布一致指数81%、ΔE5.546で閾値とともに表示し、中央領域に閾値外となることを示すNGの表示を行うとともに、基準画像と検査画像を並べて表示し、右側領域に分光感度の分布、xy色度分布を表示する。RGB表示装置であれば、XYZからRGBに変換した画像を表示する。
【0107】
次の本実施形態2の着色評価装置101を
図21、
図22を参照して説明する。対応する同様な要素については100番台として説明を援用し、主として、相違点を説明する。
【0108】
基準物、検査物の車105を撮像する撮像部102、撮像部102とスイッチ106を介して接続し信号を受信し、色分布一致指数の演算を行う演算処理装置103と、演算処理装置103と接続し指数表示を行う表示装置107とを備えている。
【0109】
図21に示す通り、演算処理装置103は、基準物Rとなる自動車105を撮像することにより取得される刺激値XYZ1を計算する演算部103Aと、検査物となる自動車を撮像することにより取得される刺激値XYZ2を計算する演算部103Bと、演算部103Aと演算部103Bと接続し、車の色分布一致指数を演算する演算部103Cと、演算部103CからのOK信号またはNG信号を表示装置107や外部に送信するものである。なお、スイッチ106は、刺激値XYZ1と刺激値XYZ2を選択的に入力するものである。なお、対象物の車は例示である。
【0110】
図22は2つの画像A、Bから色度ヒストグラム分布の比較による色分布一致指数を演算するフローチャートである。
図24に示す通り、プログラムが起動すると、画像Aから検査領域Kを切り出し特定し、設定する(S201)。次に画像Bから画像Aと同様の検査領域を切り出し特定し、設定する(S202)。画像A,Bより色度値xy又はLab値の演算を行う(S203)。検査領域Kにおいて、検査物Qと基準物Rのxy色度ヒストグラム分布又はLab色度ヒストグラム分布をそれぞれ演算し、作成する(S204)。xy色度ヒストグラム分布又はLab色度ヒストグラム分布のミニマム分布を特定する(S205)。重なり領域Dでのxy色度ヒストグラム分布又はLab色度ヒストグラム分布の積算数を演算する(S206)。なお、Lab色度ヒストグラム分布に代えて、XYZ色度ヒストグラム分布を利用してもよい。つぎに色分布一致指数を演算し(S207)、リターンする。色分布一致指数=(重なり領域Dに属する画素の積算数/検査領域Kの全体の画素数)×100(%)である。重なり領域Dでの積算数はH
AとH
Bのうち、少ない方の積算数を加算演算する。
【0111】
次に本実施形態3の着色評価装置201につき
図23を参照して説明する。対応する同様な要素については200番台として説明を援用し、主として、相違点を説明する。
【0112】
図23に示す通り、色判定対象は塗装部品5の一部の領域であり、撮像部202が塗装部品5の対象領域を撮像する。演算処理装置203は、基準となる刺激値XYZ1を計算する演算部203Aと、判定対象となる刺激値XYZ2を計算する演算部203Bと、演算部203Aと演算部203Bと接続し色分布一致指数を演算する演算部203Cと、演算部203Cからの指数値を着色装置257に送信するものである。指数値に応じて塗装部品5の画面を見ながら、適正な塗装色になっているかどうかを、画面を見て判定し、さらに着色処理を行うものである。なお、スイッチ206は、基準XYZと対象XYZを選択的に入力するものである。主要な処理は概ね実施形態1、2のフローチャートと同様であるので、説明は援用する。
【0113】
次に本実施形態4の着色評価装置301につき
図24、
図25を参照して説明する。対応する同様な要素については300番台として上記説明を援用し、主として、相違点を説明する。
【0114】
ここでは、支持部4はロボットアーム341に置き換えられ、また、モータ(図示略)で撮像部302の角度を自動的に変えられる等の点で、前述実施形態とは相違する。自動車の生産ライン309上を移動する自動車305の観察したい場所に撮像部302を動かして、相違する角度の複数箇所で撮像し、色分布を測定する形態である。適宜、自動車305を停止させ、撮像する。
【0115】
第1実施形態では手動で撮像角度を換えて塗装部品5の塗装を評価の出来る構造部を構成しているが、この第4実施形態では、撮像角度の変更を自動化したものであり、このヘッド340をロボットアーム341の先端につけて、測定をオンライン化したものである。自動車305に対して、照明部306が両サイド斜め上部より照らすように設定し、撮像部302は、モータードライブで自動車305を中心に移動できる。ヘッド340は、円弧形状の躯体を備えており、この躯体に照明部306が固定され、この躯体に沿って撮像部302が円弧形状の軌跡で移動できる構造である。
【0116】
検査のインライン処理では、照明と撮像部を遮光カバーで覆うことが好ましい。前述の実施形態1〜3ではこのような遮光カバーは設けないこともあったが、工場内のインラインの流れの中でロボットアーム341により検査する場合には、照明部306と撮像部302自体を遮光フードで覆うことが好ましい。
【0117】
自動車305のボディーは、大抵は、見る場所が決まっているので、複数角度を決めておく。そして、自動車の生産ライン309にて撮像部302で様々な角度から自動車305の外観を撮像可能である。照明部306は、上側の斜めから自動車305を照射して、下方にダイレクトに反射する光を落とすような照明である。なお、撮像部302は単数で移動させたが、複数台設置し移動させてもよい。複数の撮像部をヘッド340に位置調整可能に固定しておいてもよい。
【0118】
インラインで全数検査するときの場合で、さらに精密に測定する場合には、左右の角度はさらに細かく取ることもできる。撮像部で塗装部品5をスキャンして検査する方式も採用が可能である。
【0119】
インライン化の応用として、製造ラインのロボットアーム等に取り付けることが出来る。製造ラインに組み込めば、全品検査も可能である。ロボットアームの機械制御と合わせることにより広範囲を全品検査することができる。
【0120】
次に本実施形態5の着色評価装置401につき
図26を参照して説明する。対応する同様な要素については400番台として上記説明を援用し、主として、相違点を説明する。着色評価装置401は、概ね実施形態4と同様であり、撮像部402及び人工太陽灯406を生産ライン409の近傍に複数台並べて固定したものであるが、さらに、これらと測定用PC1〜PC3 424を接続して信号を送受信できるようにし、また、ハブ408を介して計測制御用メインPC410と接続し、また、測定用PC1〜PC3 424を直接、または、KVM411を介して表示装置407と接続したものである。計測制御用メインPCは、インラインホストと通信し、車種、色等のデータを送受信できる。撮像部402に代えて、2次元色彩計とすることも可能である。指定した検査範囲内の各ピクセルの色をxy色度図、Lab色度図又はXYZ色度図に実施形態1と同様にマッピングし、その広がりや密集具合をヒストグラム分布として得るので、メタリック感、ラメやパールのキラキラ感も含めて数値化できる。
【0121】
その他の応用例を説明する。基準品・検査品の取得されたAB画像の2枚の画像を重ねあわせ、それぞれの色度ヒストグラム分布を表示装置7に表示したり、それぞれの色度ヒストグラム分布をひとつの色度図上で重ね合わせた色度図が表示でき、その重なり合いの度合いを示す色分布一致指数をパーセンテージで表示できる。これにより、検査品の色度分布の基準品からのズレを数値で確認できる。各領域Kごとに検査結果が数値で表示される。格子Gのグリッド幅の調節が可能である。指数のしきい値を任意で設定可能である。測定結果と撮影した画像は保存が可能である。目視検査では避けられなかった個人差の問題や、客先との判断基準のトラブル等を減らして、色の基準化や安定した色管理を行うことが可能となる。
【0122】
非接触および広範囲での撮影ができるため、フラット照明で複数の角度から測定対象物を撮像することで、フリップフロップの数値化も可能であり、アルミフレークやパール顔料を用いた塗装等、人の目が感じる色、質感に近い評価が可能である。木目パネルなどの不規則な柄のパーツも色合せすることができる。取り込んだ画像A、Bを表示装置7に表示することもできるので(オーバーレイ機能)、簡単に位置合わせができる。検査物は基準物とは、大きさや材質が異なっていても比較ができる。レザーなどの不規則な柄や質感をもつ生地も色合せできる。樹脂パーツの検査、色ムラ・色ズレの検査が可能である。例えば、自動車のコンソールボックスの検査のように凹凸間のある対象物でも測定できる。さらに自動車の(1)バンパーとフェンダーの色ズレ検査、(2)フェンダーとフロントドアの色ズレ検査、(3)フロントドアの色ムラ・フリップフロップの検査も可能である。床材などの不規則な柄や質感をもつ建材、壁紙などの不規則な柄や木目調・大理石風・幾何学模様などの質感も色合せできる。歯科分野での歯の質感を検査できる。
【0123】
色のプロファイルである色、色ムラ、質感をグラフ・数値で検証できる。指定した検査範囲内の色度ヒストグラムのズレを確認でき、ΔEの変化とLab値の各値を示したグラフを表示できる。また、自動車のフロントドアとフェンダー等の異素材の色検査の場合、始点からの終点まで色差(ΔE)を見ることで、異なる素材における発色の違いを検証・検査できる。
【0124】
三刺激値XYZのほか、CMYKやLabの各パラメータのゲイン表示が可能である。撮像部は等色関数と等価な撮像部フィルタを使用しており人の眼が認識できる色域のすべての色データを検出可能である。その検出精度は色差ΔEが1.0以下という高精度の測定が可能である。
【0125】
以上、本実施形態を説明したが、以下の効果がある。
【0126】
従来は定量化することが難しかったメタリック感やラメ・パール顔料のキラメキ感等の質感を人と同じように感じ取り、検査領域Kの範囲内の格子毎の積算数を用いたデータを持つので、メタリック度等の質感を明確に、かつ、簡単に定量化でき、検査物と基準物との比較検査を合理化できる。
【0127】
測定対象物の色の3つのデータを合わせて検査することが可能である。(1)画像による官能比較、(2)色度ヒストグラム分布による客観的かつ視覚的に分かりやすい比較、(3)色度ヒストグラムの色分布一致指数(%)による定量化された数値での比較である。これらの3つのデータを合わせて利用することにより、組織内外で色の共通言語として使うことができ、営業・品管・製造・取引先など、意思の疎通がスムーズになる。本発明による色管理は、従来の問題点を解消し、客観的な色管理基準と、見た目の質感や明るさの違いを定量化でき、従来の目視検査・限度見本検査からの脱却が可能となる。本発明は、従来のシステムにはなかった、正確な色データの数値化だけでなく、画像から実際の色を正確に見ることができるという特色を有する。目視検査では避けられなかった個人差の問題や客先との判別基準の隔たりによるトラブル等を減らすことが可能である。
【0128】
上記3つのデータの他にも目的に応じて1枚の画像から様々なデータを見ることができるので、トラブルシューティングに役立つ。また、画像やデータを保管することで、色データの集積やトレーサビリティの実現等にも貢献でき、また、製品の履歴資料や復元材料として役立てることもできる。
【0129】
色の研究開発に新しい色の開発や、新しい塗料・新しい素材・新しい下地を使った実験などを行う際に定量化された客観的データとともに、忠実な画像データも一緒に保存できるので、色データの集積やトレーサビリティの実現等にも貢献できる。
【0130】
インターネットやクラウドなどの通信技術を利用すれば、世界各地の工場で作られている製品を国内本社のオフィスで統一基準により管理することが可能となり、色管理の時間と経費を節約できる。また、立会い検査工程を本社、クライアント等のPCモニター上で実施可能である。
【0131】
撮像部2で測定対象物を非接触にて撮影することができるので、製品に傷をつける心配がない。実物を見られない状況で実物に近い色に変換された画像を提示して、後々、実物を見た時にギャップを感じるなどというトラブルを避けることができる。色度図上の広範囲での測定が可能であるので、広範囲の色度分布を見ることができ、色のほか、複雑な柄や質感も含めて測定することができる。色の測定範囲が広いため、測る場所によって色のズレが小さく、毎回測定条件を揃えることが可能である。
【0132】
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、前記技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像情報を取得する方式について、本実施形態において挙げた方式は具体例に過ぎないものであって、これらに限られず、その他の方式によっても本発明の技術的思想は実施されるものである。