(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371262
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
A61B 50/30 20160101AFI20180730BHJP
【FI】
A61B50/30
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-159836(P2015-159836)
(22)【出願日】2015年8月13日
(65)【公開番号】特開2017-35403(P2017-35403A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】石田 里佳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌之
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0068941(US,A1)
【文献】
特開2012−176101(JP,A)
【文献】
特開2015−119938(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/013751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 50/30
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物を収納する収納体と、
前記収納体を環状に保持する止め具と、
環状状態の前記収納体を収納する包装袋と、
から成り、
環状状態の前記収納体は、
前記包装袋の厚み方向に圧縮されて前記包装袋内に収納されている圧縮状態と、
前記包装袋から取り出された際に、環状状態の前記収納体の一部が、前記包装袋の厚み方向に伸長する伸長状態と、
を有し、前記圧縮状態では前記収納体に反発力が付与されており、
前記収納体は、ベース部と伸長部とで構成され、前記伸長部に、前記収納体の基端と先端とが配置されている
ことを特徴とする包装体。
【請求項2】
請求項1に記載の包装体において、
前記収納体の両端部は、前記伸長状態において他の部位よりも高い位置に配置されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療用チューブやガイドワイヤ等の長尺物を収納する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテル等の医療用チューブやガイドワイヤ等の長尺物は、環状状態とされて収納袋に収納されていることは、よく知られている。具体的には、長尺物を管状の収納体内部に収納し、前記収納体を環状(渦巻き状)に複数回巻回して止め具で保持し、そして、環状状態となった前記収納体を前記収納袋に収納している。
【0003】
例えば特許文献1には、医療デバイスのバルーン上に設けられたステントを収納し、クリップによって螺旋形状に維持されたキャリアチューブが包装袋に収納されている構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、医療機器を収納する螺旋形状に巻回されたデバイスホルダーが開示されており、デバイスホルダーの末端は、螺旋形状の外側に配置され、デバイスホルダーの中央端は、螺旋形状の内側に配置され、かつ、デバイスホルダーの螺旋形状が形成されている面に対して交差する方向に延びている構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0187002号明細書
【特許文献2】米国特許第8931637号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている構成にあっては、包装袋から取り出したキャリアチューブが平坦な螺旋形状をなしたままであり、このままバット等の保管スペースに載置した場合、キャリアチューブを取り上げるときに保管スペースとキャリアチューブとの間に指がうまく入り込むことができず、取り上げにくいという問題があった。
【0007】
特に医療現場においては、医療用手袋を手に装着して作業を行うことが多く、平坦となっているキャリアチューブを素早く掴むことができないという問題がある。また、場合によっては、キャリアチューブや医療デバイスを取り上げ損ねて床に落下させてしまい、使用不能にしてしまうおそれもある。
【0008】
また、前記特許文献2に開示されている構成にあっては、デバイスホルダーの中央端が、デバイスホルダーの螺旋形状が形成されている面に対して交差する方向に延びていることから、梱包された状態で一定以上の厚みが必要となり、嵩高となるが故に収納スペースが余分に必要となってしまう問題がある。
【0009】
そこで本発明は、包装袋へコンパクトに収納可能であり、かつ、長尺物を収納した収納体を包装袋から取り出してバット等の保管スペースに載置した際には、収納体を保管スペースから容易に取り上げることができる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長尺物を収納する収納体と、前記収納体を環状に保持する止め具と、環状状態の前記収納体を収納する包装袋と、から成り、環状状態の前記収納体は、前記包装袋の厚み方向に圧縮されて前記包装袋内に収納されている圧縮状態と、前記包装袋から取り出された際に、環状状態の前記収納体の一部が、前記包装袋の厚み方向に伸長する伸長状態と、を有することを特徴とする包装体である。
【0011】
かかる構成にあっては、環状状態の前記収納体が、包装袋内に収納されている際に圧縮状態となることで、嵩高になることなく包装袋に収納し易くなる。また、包装袋から前記収納体を取り出した際には伸長状態となって立体的となるため、仮にバット等のような一時的な保管スペースに収納体が置かれた場合にも、医療用手袋を装着した状態で前記収納体を容易に取り上げることができる。
【0012】
また、前記包装体において、前記収納体の両端部は、前記伸長状態において他の部位よりも高い位置に配置されていることが望ましい。
【0013】
かかる構成にあっては、バット等のような一時的な保管スペースに置いた状態で収納体の一方の端部から生理食塩水を入れやすくすることができるため、医療機器等の長尺物の前処理が行いやすい。また、かかる構成にあっては、収納体の他方の端部から長尺物を取り出しやすくすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の包装体は、包装袋へコンパクトに収納可能であり、かつ、長尺物を収納した収納体を包装袋から取り出してバット等の保管スペースに載置した際には、収納体を保管スペースから容易に取り上げることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は、収納体が包装袋に収納されている包装体の平面図であり、(b)は、側面図である。
【
図2】(a)は、フラッシュコネクタ近傍の部分拡大断面図であり、(b)は、ストレーナ近傍の部分拡大断面図であり、(c)は、止め具の断面図である。
【
図3】(a)は、伸長状態の収納体を示す平面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の包装体を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0017】
図1に示すように、包装体10は、長尺物であるガイドワイヤ1を収納する収納体20と、前記収納体20を環状に保持する止め具30と、環状状態の前記収納体20を収納する方形の包装袋40と、から成る。
【0018】
前記収納体20は、
図2(a)に示すように長尺で可撓性のチューブ形状をなし、内部に前記ガイドワイヤ1が収納されている。また、前記収納体20の基端21には、ガイドワイヤ1の基端2が収納される管状のフラッシュコネクタ41が取り付けられている。
【0019】
さらに、
図2(b)に示すように、前記収納体20の先端22には、管状のストレーナ42が取り付けられており、前記ストレーナ42の先端開口43からガイドワイヤ1の先端3が突き出されている。
【0020】
なお、前記収納体20を構成する材料は、従来から使用されているポリエチレンのような樹脂材料が適用でき、また、これに限定されることなく、特に可撓性を有する柔らかい樹脂材料で前記収納体20を形成してもよい。
【0021】
前記止め具30は、
図1,
図2(c)に示すように、直方体形状の本体31を具備し、前記本体31の一方の側面から他方の側面まで貫通する溝部32が複数設けられている。そして、前記複数の溝部32に、それぞれ前記収納体20が嵌め込まれ、全体として前記収納体20が環状状態で保持されている。前記止め具30を形成する材料は、ポリエチレン・ポリ酢酸ビニルのコポリマー、ポリアセタール又はポリカーボネート等の樹脂材料であり、また、これに限定されることなく、他の樹脂材料であってもよい。
【0022】
前記包装袋40は、ヒートシールを可能とするコーティングが施されたポリエチレンや紙から成るシートに、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンから成る透明なフィルムを重ねて、これらの縁部をヒートシール等によって接着することで形成されている。ただし、かかる材料に限定されるものではなく、他の材料によって形成してもよい。
【0023】
ここで、
図1,
図3に示すように、本実施例において前記止め具30は、具体的に基端止め具34、右止め具35、左止め具36、第一中央止め具37、第二中央止め具38、及び第三中央止め具39の計6個で構成されている。
【0024】
また、前記フラッシュコネクタ41や前記ストレーナ42は、ポリプロピレンのような樹脂材料から形成することができる。また、これに限定されることなく、この他の樹脂材料、例えば、ポリエチレンやポリアセタール等の材料から形成してもよい。
【0025】
そして、前記環状状態における収納体20にあっては、フラッシュコネクタ41側から順に、基端止め具34、第一中央止め具37、第二中央止め具38、及び第三中央止め具39に嵌め込まれ、さらに右止め具35、及び左止め具36に嵌め込まれ、次に再度第三中央止め具39、第二中央止め具38、及び第一中央止め具37の順に嵌め込まれ、さらに右止め具35、左止め具36、基端止め具34、第一中央止め具37、第二中央止め具38、及び第三中央止め具39に嵌め込まれている。上述のように、収納体20を小さく巻いて止め具30(34〜39)で保持することにより、収納体20の反発力を付与している。
【0026】
さらに詳述すると、前記収納体20においては、前記右止め具35と前記左止め具36とを両端とする部分によってベース部25が構成され、前記基端止め具34及び前記第一から第三の中央止め具37,38,39の近傍部分によって、ベース部25に対して厚み方向に伸長する伸長部26が構成されている。なお、前記フラッシュコネクタ41及び前記ストレーナ42も、前記伸長部26に含まれるものとする。
【0027】
そして、
図1に示すように、前記収納体20が環状状態で前記包装袋40に収納された状態にあっては、前記収納体20は厚み方向に圧縮されて平坦とされた圧縮状態αとされている。
【0028】
次に、前記収納体20を前記包装袋40から取り出すと、前記収納体20が圧縮された圧縮状態αから解放されて、バット等の保管スペースの床面Fに載置した際には、
図3に示すように、包装袋40の厚みより嵩高となった伸長状態βとなっている。なお、解放時の反発力が弱い場合には、バット等の保管スペースに載置する前に、前記収納体20のベース部25を把持し、前記収納体20の伸長部26を前記収納体20のベース部25に対して伸長させるよう伸ばすことで、伸長状態βとすることもできる。
【0029】
前記伸長状態βにあっては、前記収納体20のベース部25が保管スペースの床面Fに接し、前記伸長部26がベース部25よりも厚み方向に沿って伸長している。すなわち、前記フラッシュコネクタ41及び前記ストレーナ42を含む前記収納体20の基端21及び先端22が、厚み方向に伸長することで床面Fに対して宙に浮いた状態となる。
【0030】
したがって、前記伸長状態βにおける収納体20は、前記伸長部26を指で挟んで取り上げることが可能となる。このため、保管スペースの床面Fに指を触れることなく直接収納体20を把持することができる。また、前記フラッシュコネクタ41及び前記ストレーナ42も他の部位より高い位置に配置され、床面Fに対して宙に浮いた状態とされているため、片手でフラッシュコネクタ41をつかんだ状態でフラッシュコネクタ41から生理食塩水を収納体20内に入れることも容易にできる。あるいは、片手でストレーナ42をつかんだ状態で、ストレーナ42からガイドワイヤ1を取り出すことも容易となっている。
【0031】
なお、収納体20の環状状態は、収納体20の両端が突き合わせられることで一つの環が形成されている状態のみを意味するものではなく、上述のように、湾曲した前記収納体20が幾重にも巻回されて形成された外縁によって全体的に外形が環状となっている状態を含む意味である。
【0032】
なお、本発明かかる長尺物としてはガイドワイヤ1に限定されず、カテーテル等の医療用チューブであっても構わない。また、収納体20の内径、外径、あるいは長さ等は、適宜自由に選択可能である。
【0033】
また、前記止め具30の数は、1個の包装体10に対して6個である必要はなく、その他の個数の止め具30が使用されても勿論よい。すなわち、収納体20が包装袋40に収納された圧縮状態αから、包装袋40から取り出された伸長状態βとなることが可能な構成であれば、止め具30の数、形状、あるいは嵌め込み順序等は、適宜自由に選択可能である。
【0034】
また、収納体20の基端21や先端22は、前記伸長部26に設けられる必要はないが、片手でフラッシュコネクタ41を掴んだ状態でフラッシュコネクタ41から生理食塩水を収納体20内に入れることも容易にできる点等を考慮すれば、伸長部26に配置して伸長状態βにおいて床面Fと非接触の状態を保つことがより望ましい。
【0035】
また、前記止め具30のいずれかは、他の止め具30とは異なる向きで取り付けてもよい。例えば、前記第二中央止め具38は、第一中央止め具37及び第三中央止め具39とは表裏が異ならせて配置されている。
【符号の説明】
【0036】
1 ガイドワイヤ(長尺物)
10 包装体
20 収納体
30 止め具
40 包装袋
α 圧縮状態
β 伸長状態