(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記その他のジオール化合物は、脂肪族ジオール化合物及び芳香族ジオール化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂。
前記リン系安定剤は、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、及びトリエチルホスホノアセテートからなる群より選択された1種以上の化合物を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂。
チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物及びスズ系化合物からなる群より選択された1種以上の重縮合反応触媒を全体樹脂中の1乃至100ppmの含量でさらに含む請求項1に記載のポリエステル樹脂。
前記エステル化反応生成物を重縮合反応させる段階は、150乃至300℃の温度及び600乃至0.01mmHgの減圧条件で1乃至24時間行なわれる請求項6に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
前記重縮合反応に、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、及びスズ系化合物からなる群より選択された1種以上の触媒化合物を追加的に添加する段階をさらに含む請求項6に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に芳香族及び脂肪族ジカルボン酸と適正構造のアルキレングリコールから製造されるポリエステル樹脂は優れた物理的、化学的性質と共に汎用の溶剤に対する溶解性及び柔軟性、幅広い素材に対する接着力、コーティング作業性などを取りそろえ、繊維、フィルム、接着剤など多様な用途に使用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂の製造において、エステル化反応またはエステル交換反応では各原料の反応性によって、重縮合では各原料の気化程度によって、最終ポリエステル樹脂主鎖内に存在する各原料の比率が変わり、アルキレングリコールに代表されるジオール(diol)成分では、1次ジオールより2次または3次ジオールが、2次ジオールより3次ジオールが反応性が落ちるので、ポリエステル主鎖内の残存率が低くなる。これにより、2次または3次アルコールを使用してポリエステル樹脂を合成する場合、反応時間が大きく増えたり反応収率が大きく落ちる問題がある。
【0004】
最近、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはイソソルビド(Isosorbide)などのアルコールを反応物質としてポリエステル樹脂を合成する方法が知られたが、このような方法によれば2次アルコールを用いることによって反応収率を高めるのが容易でなく、合成される樹脂の重合度も大きく向上させにくい問題があった。即ち、耐熱性などの物性を高めるためにイソソルビドなどを使用する場合、重合度が低くなるか反応に参与せず残留する原料が大きく増加し、最終合成されるポリエステル樹脂が低い耐衝撃性または耐久性を有することがあり、外観特性も大きく低下することがある問題があった。
【0005】
一方、エステル化反応またはエステル交換反応では多様な形態の金属または金属酸化物の触媒を用いることができることが知られており、その例としてグリコール溶液に溶解された酸化アンチモンなどを触媒として使用する方法などがある。しかし、アンチモン系化合物を使用すれば製造工程で樹脂紡糸穴を塞ぐ不溶性アンチモン錯体を形成して、樹脂紡糸過程で頻繁な操業停止を招いたり継続的な紡糸穴洗浄工程を稼働しなければならない問題がある。
【0006】
また、最近、プラスチック樹脂に対する環境的圧力及び法的規制が大きく増加している傾向にあり、特に食品包装容器のように飲食物に直接接触するプラスチック樹脂の場合は人体に有害な化合物を含んでいるかが非常に重要になっている。
【0007】
さらには、以前に知られたポリエステル樹脂のうちの一部は高温で押出時に粘度が大いに低くならないため、均一な厚さを有する最終製品への成形が容易でなかったり、大容量または巨大面積の製品を製造することが容易でない問題点を示したりもした。
【0008】
以上のことから、重合反応の効率を高め使用原料の最終製品内残存率を高めることができ、向上した物性及び優れた外観特性を有し、最終製品製造時に優れた成形性を示すポリエステル樹脂が提供できる方法に対する開発が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリエステル樹脂及びその製造方法についてより詳細に説明する。
【0014】
発明の一実施形態によれば、テレフタル酸を含むジカルボン酸成分の残基;及びイソソルビド5乃至60モル%、シクロヘキサンジメタノール10乃至80モル%、及び残量のその他のジオール化合物を含むジオール成分の残基を含み、全体樹脂中に、中心金属原子基準に1乃至100ppmの亜鉛系触媒及び10ppm乃至300ppmのリン系安定剤を含有するポリエステル樹脂を提供することができる。
【0015】
本発明者らはより向上した物性を有するポリエステルの合成に関する研究を行ない、後述する製造方法に示されているように、亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒を使用し、前記エステル化反応の末期に、例えば反応が80%以上行われた時点で反応液にリン系安定剤を添加して前記エステル化反応の結果物を重縮合させれば、高い耐熱性、耐化学性及び耐衝撃性などの物性を示し、優れた外観特性、高透明度及び優れた成形特性を有するポリエステル樹脂が提供されるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0016】
以前に知らされたように、イソソルビド(Isosorbide)は低い反応性を示す2次アルコールであって、これを使用して製造されるポリエステル樹脂は耐熱性などの物性が向上されるが、これを使用する場合、エステル化反応に参与せず残留するイソソルビドが過量発生し、これにより合成結果物である最終ポリエステル樹脂の機械的物性、耐化学性及び外観特性などが大きく低下した。
【0017】
これに反し、前記発明の一実施形態によるポリエステル樹脂は、後述する特定の製造方法によって合成されイソソルビドの含量を多様に調節して含むことができ、特に、相対的に高い含量でイソソルビドを含みながらも、商用製品に適用できる物性を確保し、特に高い透明度を示すことができる。
【0018】
前記ポリエステル樹脂が有する優れた外観特性及び高い透明度は、前記亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒を使用し前記エステル化反応の末期にリン系安定剤を添加することによって、エステル化反応時間が短縮され高温での接触時間が短縮されることによるものと見られる。
【0019】
以前に知られた他のポリエステル樹脂は外観特性または透明度を向上させるために多様な添加剤または染料などを添加して合成するか使用されたが、前記ポリエステル樹脂は追加的な添加剤または染料の使用なしでも商用化可能な程度の外観特性及び透明度を示すことができる。
【0020】
具体的に、前記ポリエステル樹脂は優れた外観特性、例えば3以下、好ましくは1以下のカラーb値を有し得るため、高い透明度を示すことができる。このようなカラーb値はハンター(Hunter)L、a、bによるb数値を意味する。
【0021】
前記ポリエステル樹脂の合成過程では反応に参与しない未反応原料の量が相対的に小さく、高い反応効率及び重合度を示すことができる。これにより、前記ポリエステル樹脂は0.5乃至1.0dl/gの固有粘度を有し得る。
【0022】
本明細書で、‘残基’は特定の化合物が化学反応に参与した時、その化学反応の結果物に含まれ前記特定の化合物に由来した一定の部分または単位を意味する。例えば、前記ジカルボン酸成分の残基またはジオール成分の残基それぞれは、エステル化反応または縮重合反応で形成されるポリエステルにおいてジカルボン酸成分に由来した部分またはジオール成分に由来した部分を意味する。
【0023】
前記‘ジカルボン酸成分’はテレフタル酸などのジカルボン酸、そのアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなど炭素数1乃至4の低級アルキルエステル)及び/またはこれらの酸無水物(acid anhydride)を含む意味として使用され、ジオール成分と反応して、テレフタロイル部分(terephthaloyl moiety)などのジカルボン酸部分(dicarboxylic acidmoiety)を形成することができる。
【0024】
前記ポリエステルの合成に使用されるジカルボン酸成分がテレフタル酸を含むことによって、製造されるポリエステル樹脂の耐熱性、耐化学性または耐候性(例えば、UVによる分子量減少現象または黄変化現象の防止)などの物性が向上できる。
【0025】
前記ジカルボン酸成分はその他のジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分またはこれらの混合物をさらに含むことができる。この時、‘その他のジカルボン酸成分’は前記ジカルボン酸成分の中のテレフタル酸を除いた成分を意味する。
【0026】
前記芳香族ジカルボン酸成分は、炭素数8乃至20、好ましくは炭素数8乃至14の芳香族ジカルボン酸またはこれらの混合物などであり得る。前記芳香族ジカルボン酸の例として、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、2,5−チオフェンジカルボン酸などがあるが、前記芳香族ジカルボン酸の具体的な例がこれに限定されるのではない。
【0027】
前記脂肪族ジカルボン酸成分は、炭素数4乃至20、好ましくは炭素数4乃至12の脂肪族ジカルボン酸成分またはこれらの混合物などであり得る。前記脂肪族ジカルボン酸の例として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸などの線状、枝状または環状脂肪族ジカルボン酸成分などがあるが、前記脂肪族ジカルボン酸の具体的な例がこれに限定されるのではない。
【0028】
一方、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸50乃至100モル%、好ましくは70乃至100モル%;及び芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択された1種以上のジカルボン酸0乃至50モル%、好ましくは0乃至30モル%;を含むことができる。前記ジカルボン酸成分の中のテレフタル酸の含量が過度に少ないか過度に多ければ、ポリエステル樹脂の耐熱性、耐化学性または耐候性などの物性が低下することがある。
【0029】
一方、前記ポリエステルの合成に使用されるジオール成分(diol component)はイソソルビド5乃至60モル%、シクロヘキサンジメタノール10乃至80モル%、及び残量のその他のジオール化合物を含むことができる。
【0030】
前記ジオール成分がイソソルビド(isosorbide、1,4:3,6−dianhydroglucitol)を含むことによって、製造されるポリエステル樹脂の耐熱性が向上するだけでなく、耐化学性、耐薬品性などの物性が向上できる。そして、前記ジオール成分(diol component)でシクロヘキサンジメタノール(例えば、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノール)の含量が増加するほど、製造されるポリエステル樹脂の耐衝撃強度が大きく増加できる。
【0031】
また、前記ジオール成分は前記イソソルビド及びシクロヘキサンジメタノール以外にその他のジオール成分をさらに含むことができる。前記‘その他のジオール成分’は前記イソソルビド及びシクロヘキサンジメタノールを除いたジオール成分を意味し、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオールまたはこれらの混合物であり得る。
【0032】
前記芳香族ジオールは、炭素数8乃至40、好ましくは炭素数8乃至33の芳香族ジオール化合物を含むことができる。このような芳香族ジオール化合物の例としては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのエチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシドが付加されたビスフェノールA誘導体(ポリオキシエチレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはポリオキシプロピレン−(n)−ポリオキシエチレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられるが、芳香族ジオール化合物の具体的な例がこれに限定されるのではない。前記nはポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンユニット(unit)の個数(number)を意味する。
【0033】
前記脂肪族ジオールは炭素数2乃至20、好ましくは炭素数2乃至12の脂肪族ジオール化合物を含むことができる。このような脂肪族ジオール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールなど)、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6−ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、枝状または環状脂肪族ジオール成分が挙げられるが、脂肪族ジオール化合物の具体的な例がこれに限定されるのではない。
【0034】
前述のように、前記ポリエステル樹脂のジオール成分は5乃至60モル%、好ましくは8乃至45モル%のイソソルビドを含むことができる。前記ジオール成分の中のイソソルビドの含量が5モル%未満であれば、製造されるポリエステル樹脂の耐熱性または耐化学性が不充分であることがあり、前述のポリエステル樹脂の溶融粘度特性が示されないことがある。また、前記イソソルビドの含量が50モル%を超過すれば、ポリエステル樹脂または製品が外観特性が低下したり黄変(yellowing)現象が発生することがある。
【0035】
一方、前記ポリエステル樹脂の合成過程ではリン系安定剤を用いることができ、これにより前記ポリエステル樹脂にはリン系安定剤が10ppm乃至300ppm、好ましくは20ppm乃至200ppmを含有することができる。このようなリン系安定剤の具体的な例としては、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスホノアセテートまたはこれらの2以上の混合物が挙げられる。
【0036】
前記ポリエステル樹脂は、全体樹脂中に、中心金属原子基準に1乃至100ppmの亜鉛系触媒を含むことができる。このような亜鉛系触媒の具体的な例としては、亜鉛アセテート、亜鉛アセテートジハイドレート、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛シトレート、グルコン酸亜鉛またはこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
一方、前記ポリエステル樹脂の合成過程の重縮合反応ではチタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物またはこれらの混合物を含む重縮合触媒を使用することができる。これにより、前記ポリエステル樹脂は全体樹脂中に中心金属原子基準に1乃至100ppmの含量の重縮合触媒を含むことができる。
【0038】
前記チタン系化合物の例としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセティックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などを例示することができる。
【0039】
前記ゲルマニウム系化合物の例としては、ゲルマニウムジオキシド(germanium dioxide、GeO
2)、ゲルマニウムテトラクロリド(germanium tetrachloride、GeCl
4)、ゲルマニウムエチレングリコキシド(germanium ethyleneglycoxide)、ゲルマニウムアセテート(germanium acetate)、これらを用いた共重合体、これらの混合物などが挙げられる。好ましくは、ゲルマニウムジオキシドを使用することができ、このようなゲルマニウムジオキシドとしては結晶性または非結晶性の両方とも使用可能であり、グリコール可溶性も使用することができる。
【0040】
発明の他の実施形態によれば、亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒の存在下に、イソソルビド5乃至60モル%、シクロヘキサンジメタノール10乃至80モル%及び残量のその他のジオール化合物を含むジオール成分とテレフタル酸を含むジカルボン酸成分をエステル化反応させる段階;前記エステル化反応が80%以上行なわれた時点にリン系安定剤を添加する段階;及び前記エステル化反応生成物を重縮合反応させる段階を含む、前記ポリエステル樹脂の製造方法を提供することができる。
【0041】
前記ポリエステル樹脂の製造方法によって、亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒を使用し、前記エステル化反応の末期に、例えば反応が80%以上行われた時点で反応液にリン系安定剤を添加し、前記エステル化反応の結果物を重縮合させれば、高い耐熱性、耐化学性及び耐衝撃性などの物性を示し、優れた外観特性、高透明度及び優れた成形特性を有するポリエステル樹脂を提供することができる。
【0042】
前記ポリエステル樹脂の製造方法で、前記亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒を使用し、前記エステル化反応の末期にリン系安定剤を添加することによって、前記エステル化反応は相対的に短時間内に行われ、具体的に600分以内、好ましくは200分乃至300分以内に行われ得る。
【0043】
このようなエステル化反応時間が短くなることによって、高温での接触時間が短縮され、製造されるポリエステル樹脂の色が改善され、反応時間短縮によるエネルギー節減効果側面からも有利である。これにより、前記ポリエステルの製造方法では追加的な添加剤または染料の使用なしでも商用化することができる程度の外観特性及び透明度を有するポリエステル樹脂を提供することができる。
【0044】
具体的に、前記製造方法によって提供されるポリエステル樹脂は優れた外観特性、例えば3以下、好ましくは1以下のカラーb値を有し得るため、高い透明度を示すことができる。このようなカラーb値はハンター(Hunter)L、a、bによるb数値を意味する。
【0045】
また、前記ポリエステル樹脂の製造方法では、前記ジオール成分またはジカルボン酸成分の中の前記エステル化反応に参与しない未反応残量が20%未満であり得る。このような高い反応効率は前記亜鉛系触媒の使用及びリン系安定剤の添加時点によるものと見られる。このように、前記ポリエステル樹脂の製造方法では、反応原料であるジオール成分またはジカルボン酸成分が大部分反応に参与し残留する未反応物質の量が相対的に少なく示され、これにより合成されるポリエステル樹脂が前述の優れた物性を有するため商用製品に容易に適用することができる。
【0046】
前記テレフタル酸を含むジカルボン酸成分、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド及びその他のジオール化合物に関する具体的な内容は前述の通りである。
【0047】
前記エステル化反応では、前記ジカルボン酸成分とジオール成分を反応させることによって一定のオリゴマーを形成することができる。前記ポリエステル樹脂の製造方法では、前記亜鉛系触媒を使用しリン系安定剤の添加時点を特定することによって、適切な物性及び分子量を有するオリゴマーを高い効率で形成することができる。
【0048】
このようなエステル化反応段階は、ジカルボン酸成分及びジオール成分を0乃至10.0kg/cm
2の圧力及び150乃至300℃温度で反応させることによって行うことができる。前記エステル化反応条件は、製造されるポリエステルの具体的な特性、ジカルボン酸成分とグリコールのモル比、または工程条件などによって適切に調節することができる。具体的に、前記エステル化反応条件の好ましい例として、0乃至5.0kg/cm
2、より好ましくは0.1乃至3.0kg/cm
2の圧力;200乃至270℃、より好ましくは240乃至260℃の温度が挙げられる。
【0049】
そして、前記エステル化反応はバッチ(batch)式または連続式で遂行でき、それぞれの原料は別途に投入することができるが、ジオール成分にジカルボン酸成分を混合したスラリー形態に投入することが好ましい。そして、常温で固形分であるイソソルビドなどのジオール成分は水またはエチレングリコールに溶解させた後、テレフタル酸などのジカルボン酸成分に混合してスラリーにすることができる。或いは、60℃以上でイソソルビドが溶融した後、テレフタル酸などのジカルボン酸成分とその他のジオール成分を混合してスラリーにすることができる。また、ジカルボン酸成分、イソソルビド及びエチレングリコールなどの共重合ジオール成分が混合されたスラリーに水を追加的に投入してスラリーの流動性増大を助けることもできる。
【0050】
前記エステル化反応に参与するジカルボン酸成分とジオール成分のモル比は1:1.05乃至1:3.0であり得る。前記ジカルボン酸成分:ジオール成分のモル比が1.05未満であれば、重合反応時に未反応ジカルボン酸成分が残留し樹脂の透明性が低下することがあり、前記モル比が3.0を超過する場合、重合反応速度が低くなったり樹脂の生産性が低下することがある。
【0051】
一方、前記ポリエステル樹脂の製造方法では、前記第1及び第2エステル化の末期、例えば前記エステル化反応それぞれが80%以上行なわれた時点にリン系安定剤を添加することができる。前記エステル化反応が80%以上行なわれた時点はジカルボン酸成分が80%以上反応した時点を意味し、ジカルボン酸成分の末端基であるカルボン酸含量分析を通じて測定することができる。
【0052】
前記リン系安定剤は、合成される樹脂重量対比10ppm乃至300ppm、好ましくは20ppm乃至200ppmの量で使用することができ、このようなリン系安定剤の具体的な例としては前述の通りである。
【0053】
一方、前記エステル化反応は、亜鉛系化合物を含むエステル化反応触媒の存在下に行うことができる。このような触媒は合成されるポリエステル樹脂中に中心金属原子基準に1乃至100ppmで使用することができ、このような亜鉛系触媒の具体的な例としては亜鉛アセテート、亜鉛アセテートジハイドレート、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛シトレート、グルコン酸亜鉛またはこれらの混合物が挙げられる。前記亜鉛系触媒の含量が過度に少なければ、エステル化反応の効率が大きく向上しにくいこともあり、反応に参与しない反応物の量が大きく増えることもある。また、前記亜鉛系触媒の含量が過度に多ければ、製造されるポリエステル樹脂の外観特性が低下することがある。
【0054】
前記エステル化反応生成物を重縮合(poly−condensation)反応させる段階は、前記ジカルボン酸成分及びジオール成分のエステル化反応生成物を150乃至300℃温度及び600乃至0.01mmHgの減圧条件で1乃至24時間反応させる段階を含むことができる。
【0055】
このような重縮合反応は、150乃至300℃、好ましくは200乃至290℃、より好ましくは260乃至280℃の反応温度;及び600乃至0.01mmHg、好ましくは200乃至0.05mmHg、より好ましくは100乃至0.1mmHgの減圧条件;で遂行できる。前記重縮合反応の減圧条件を適用することによって重縮合反応の副産物であるグリコールを系外に除去することができ、これにより前記重縮合反応が400乃至0.01mmHg減圧条件範囲を外れる場合、副産物の除去が不充分であることもある。
【0056】
また、前記重縮合反応が150乃至300℃温度範囲外で起こる場合、縮重合反応が150℃以下で行われれば、重縮合反応の副産物であるグリコールを効果的に系外に除去せず最終反応生成物の固有粘度が低くて製造されるポリエステル樹脂の物性が低下することがあり、300℃以上で反応が行われる場合、製造されるポリエステル樹脂の外観が黄変(yellow)する可能性が高くなる。そして、前記重縮合反応は最終反応生成物の固有粘度が適切な水準に達するまで必要な時間、例えば、平均滞留時間1乃至24時間行われ得る。
【0057】
一方、前記ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、重縮合触媒を追加的に添加する段階をさらに含むことができる。このような重縮合触媒は、前記重縮合反応の開始前にエステル化反応またはエステル交換反応の生成物に添加することができ、前記エステル化反応前にジオール成分及びジカルボン酸成分を含む混合スラリー上に添加することができ、前記エステル化反応段階途中に添加することもできる。
【0058】
前記重縮合触媒としては、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物またはこれらの混合物を使用することができる。前記チタン系化合物及びゲルマニウム系化合物の例は前述の通りである。
【実施例】
【0059】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0060】
<実施例1乃至4:ポリエステル樹脂の製造>
7L容積の反応器に表1の含量で反応物及び亜鉛アセテート(エステル化反応触媒)を添加して混合し、前記混合物を2.0kg/cm
2の圧力及び255℃条件で下記表1のES反応時間行なった(エステル化反応)。
【0061】
そして、このようなエステル化反応が80%以上行なわれる時点からリン酸塩系安定剤(トリエチルホスフェート)150ppmを投入した。
【0062】
前記エステル化反応が完了した後、副産物である水が系外に80乃至99%流出した時、全体反応物の重量に対してゲルマニウム系触媒200ppmを投入(中心元素基準)し、0.5mmHgの真空及び275℃条件で反応を行い(重縮合反応)、目標粘度に到達した時に反応を終了してポリエステル樹脂を得た。
【0063】
<比較例1乃至3:ポリエステル樹脂の製造>
比較例1及び2
下記表2による反応物の組成で使用し、リン系安定剤をエステル化反応初期に添加した点を除いて、実施例と同様な方法でポリエステルを製造した。
【0064】
比較例3
下記表2による反応物の組成で使用し、エステル化反応で亜鉛系触媒を使用しない点を除いて、実施例と同様な方法でポリエステルを製造した。
【0065】
<実験例:実施例及び比較例で得られたポリエステルの物性測定>
前記実施例及び比較例で得られたポリエステル樹脂の物性を下記方法で測定し、その結果を表1及び表2にそれぞれ示した。
【0066】
1.固有粘度(IV)
150℃オルトクロロフェノール(OCP)に0.12%濃度にポリマーを溶解させた後、35℃の恒温槽でウベロード型粘度計を用いて測定した。
【0067】
2.耐熱性(Tg)
ポリエステル樹脂を300℃で5分間アニーリング(Annealing)し、常温に冷却させた後、昇温速度10℃/minで再びスキャン(2nd Scan)時のガラス転移温度(Glass−rubber transition temperature:Tg)を測定した。
【0068】
前記実施例及び比較例の樹脂の組成と実験例の結果を下記表1及び2に記載した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
前記表1及び表2に示されているように、実施例では280分以内の時間にエステル化反応が完了し、モノマーの反応率も85%以上で高い反応性を示した。また、実施例で得られたポリエステル樹脂は3以下のカラーb値を有すると確認された。
【0072】
これに反し、亜鉛系ES反応触媒を使用したが、リン系安定剤をエステル化反応初期に添加してポリエステルを合成した比較例1乃至2ではモノマーの反応率が80%未満であった。
【0073】
また、亜鉛系ES反応触媒及びリン系安定剤を使用しない比較例3の場合、反応時間を大きく増やしてモノマーの反応率を実施例と同等水準に上げることができたが、製造されるポリエステル樹脂の外観特性が大きく低下し樹脂のカラーb値が4に達すると確認された。