特許第6371282号(P6371282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371282好ましくは透明な少なくとも1つのパターンを含む半透明グレージング材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371282
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】好ましくは透明な少なくとも1つのパターンを含む半透明グレージング材
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/28 20060101AFI20180730BHJP
   C04B 41/86 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C03C17/28 A
   C04B41/86 A
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-521050(P2015-521050)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2015-522514(P2015-522514A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】FR2013051663
(87)【国際公開番号】WO2014009667
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】1256768
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】マリー−ビルジニー エーレンスペルジュル
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ギユモ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0091488(US,A1)
【文献】 特表2001−514298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 15/00 − 23/00
B32B 1/00 − 43/00
B05D 1/00 − 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率n1の誘電材料からなり2つの主外面を有する基材を含むグレージング材であって、該主外面のうちの少なくとも一方がテクスチャ化面であるグレージング材であって、
− 該基材の該テクスチャ化面の少なくとも一部が、屈折率n2の誘電材料からなるゾルゲル層で被覆されており、
− 該基材を構成する誘電材料と該ゾルゲル層を構成する誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値が0.020以下である、
ことを特徴とするグレージング材。
【請求項2】
該基材が2つの主外面を有しており、該主外面の少なくとも一方がテクスチャ化面であり、他方が平滑面であることを特徴とする、請求項1に記載のグレージング材。
【請求項3】
該基材の該テクスチャ化面の粗さパラメータRaが少なくとも0.5μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグレージング材。
【請求項4】
前記基材のテクスチャ化面のゾルゲル層を含む部分が透明なデザインを画定していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項5】
前記ゾルゲル層の厚さが、前記基材のテクスチャ化面の山−谷間の高さよりも大きいか又はこれに等しいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項6】
ゾルゲル層で被覆された前記基材のテクスチャ化面の粗さパラメータRaが0.1μm未満であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項7】
前記ゾルゲル層がシリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクスを含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項8】
前記ゾルゲル層が、少なくとも1種の金属酸化物又は少なくとも1種のカルコゲニドの粒子も含むことを特徴とする、請求項6に記載のグレージング材。
【請求項9】
前記シリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクスが少なくとも1種の金属酸化物も含むことを特徴とする、請求項7に記載のグレージング材。
【請求項10】
前記金属酸化物が、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ニオブ、アルミニウム、及びモリブデンから選択された金属を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載のグレージング材。
【請求項11】
前記ゾルゲル層が、シリカ及び酸化ジルコニウムの有機/無機ハイブリッドマトリクスを含み、該マトリクス中に二酸化チタン粒子が分散されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項12】
前記基材のテクスチャ化面のゾルゲル層を含む部分の透過曇り度が5%未満であり、及び/又は明度が93%超であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項13】
前記基材のテクスチャ化面のゾルゲル層を含まない部分の透過曇り度が15%超であり、及び/又は明度が90%未満であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項14】
前記基材がガラス又はガラスセラミック基材であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のグレージング材。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のグレージング材を製造するための方法であって、
− テクスチャ化面を含む屈折率n1の基材を用意すること、
− 屈折率n2の誘電材料からなるゾルゲル層であって、該基材の構成要素の誘電材料と該ゾルゲル層の構成要素の誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値が0.020以下であり、好ましくは0.015以下であるゾルゲル層を選択し、そして該ゾルゲル層を該基材のテクスチャ化面の少なくとも一部分に被着させること、
を特徴とする、グレージング材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは透明な少なくとも1つのデザインを含む、好ましくは半透明なグレージング材、並びにこのような半透明なグレージング材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明によれば、「デザイン」という用語は、基材表面の一部分上に画定された形状を意味する。デザインを画定するこのグレージング材の表面部分は、このデザインの周りのグレージング材の他の表面部分とは異なる反射、吸収、及び/又は透過特性を有している。
【0003】
少なくとも1つの半透明デザインを含む透明グレージング材が現在存在している。このようなグレージング材を得るためにはいくつかの技術が用いられる。これらの技術のうちの1つは、所望のデザインにカットされた拡散性プラスチック膜をグレージング材上に結合するものである。この技術は実施が簡単ではあるものの、耐久性が低い。その理由は、このようなグレージング材の美的外観が極めて急速に、グレージング材の設置場所(UV曝露)に応じてなお一層、拡散性プラスチック膜の黄変タイプ及び/又は剥離タイプの老化に特に起因して品質低下することにある。
【0004】
他の技術は、マスクと、2つの平滑な外面を含むガラス基材とを使用する。
【0005】
これらの技術のうちの1つは、基材表面の一部をテクスチャ化することによってデザインを作製するものである。デザインは、基材の外面のうちの1つにマスクを適用し、続いて、前記マスクを通して前記外面を化学的又は機械的に攻撃する工程によって得られる。しかしながら、平滑ガラスをテクスチャ化することによるデザインの作製は、特にコストの面でいくつかの欠点を有する。良好な透明性を保たなければならない基材表面部分を保護するために使用されるマスクはそれ自体が、基材の化学的又は機械的攻撃の条件に耐える材料から作られていなければならない。耐性に関連するこれらの要件は、高価な材料の使用を必要とする。更に、これらのプロセスは連続する3つの工程に関与し、これらの工程は一連の変形・変質加工の初期に実施しなければならない。具体的に述べるならば、酸攻撃によって所々が半透明な基材を製造することが望まれる場合、基材上に保護体を設けること、酸攻撃を実施すること、そして保護体を取り外すことが先ず必要である。このように、基材を攻撃してこれを半透明にする工程より前にデザインを選択しなければならない。
【0006】
別の技術は、平滑な基材表面のうちの1つに、例えばEmalite(商標)のようなタイプの半透明エナメル層を、例えばマスクを通して、被着させるものである。このような層の被着には、高い温度でのアニールが必要であるという欠点がある。従って、こうして得られたグレージング材は、デザインの適用後に後に一般には熱強化される。このプロセスはこの場合一般に、グレージング材の大きさが定められてから実施されることが必要となる。
【0007】
マスクの使用はデザインの選択を制限する。それというのもマスクはあらゆる種類のデザインの作製を可能にするわけではないからである。例えば、特定のマスクに小さな直径の穴を形成することが不可能な場合がある。結果として、このようなマスクによって小さなサイズのデザインを得ることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を有さない、少なくとも1つのデザインを含む半透明グレージング材、及びこのような半透明グレージング材を製造する方法を開発することである。具体的には、本発明の目的は以下の利点、すなわち、
− 実現しやすく、製造コストが低いこと、
− 他の技術をよっては作製することのできない複雑で多様な形状を有する多数の装飾デザインを作製すること、
− グレージング材を構成する基材の選択に関する融通性が高いこと、
を有する方法を実現することである。
【0009】
本出願人は、これらの要件を満たすデザインを含むことができる半透明グレージング材を製造する新しい方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、屈折率n1の誘電材料からなり2つの主外面を有する基材を含むグレージング材であり、主外面のうちの少なくとも一方がテクスチャ化面であるグレージング材であって、
− 基材のテクスチャ化面の少なくとも一部が、屈折率n2の誘電材料からなるゾルゲル層で被覆されており、
− 基材を構成する当該誘電材料とゾルゲル層を構成する当該誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値が0.020以下である、
ことを特徴とする、2つの主外面を有する基材を含むグレージング材に関する。
【0011】
基材が2つの主外面を有しており、それらのうちの少なくとも一方がテクスチャ化面であり、他方が平滑面であることが好ましい。少なくとも一方がテクスチャ化面である2つの主外面を有する基材を含むグレージング材は、半透明グレージング材である。
【0012】
本発明はまた、このようなグレージング材を製造する方法であって、
− テクスチャ化面を含む屈折率n1の基材を用意すること、
− 屈折率n2の誘電材料からなるゾルゲル層であって、基材を構成する誘電材料とゾルゲル層を構成する誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値が0.020以下であり、好ましくは0.015以下であるゾルゲル層を選択し、そしてそれを基材のテクスチャ化面の少なくとも一部分に被着させること、
を特徴とする、グレージング材の製造方法にも関する。
【0013】
本発明によれば、テクスチャ化面又は粗面は、表面に入射する放射線の波長よりも大きいスケールで表面特性が変化する表面である。このテクスチャの存在は、所与の入射角でこの表面に入射する放射線がこの表面によって複数の方向に反射され及び透過するという効果を有している。このような入射放射線は表面によって拡散様式で透過及び反射される。基材のテクスチャ化面のテクスチャ又は粗さは複数のデザインによって形成される。これらのデザインは、基材のテクスチャ化面の全体的な平面に対して、凹状又は凸状であり、周期的、非周期的、又はランダムである。
【0014】
本発明によるテクスチャ化面又は粗面は、例えば、粗さパラメータRaが少なくとも0.5μmである。これは評価長さ全体にわたるプロフィールの中線から測定された粗さプロフィールRの絶対距離全ての算術平均に相当する。基材のテクスチャ化を定義するために、更に、粗さパラメータRSmを利用してもよい。これは、プロフィールのエレメントの幅の平均値である。パラメータRSmは10μm〜100μmの範囲、より好ましくは10〜65μmの範囲でよい。
【0015】
最低位置の凹部と最高位置の凸部又は山との間で定義される厚さは、山−谷値(peak−to−valley value)として知られている値又は高さに相当する。本発明によれば、ゾルゲル層の厚さは基材のテクスチャ化面の最低凹部から測定される。
【0016】
粗さパラメータは、標準規格NF EN ISP 4287において定義されている。これらの粗さパラメータは種々の方法で、すなわち、
− 例えばStil社のMIM2ベース・ステーションを使用して、カラー広視野顕微鏡法の原理に従って、光学プロフィロメトリーにより、
− 例えばZigo社のNewview機械を使用して、光学干渉分光法により、又は、
− Dektakという名称でVeeco社によって販売されている測定機器を使用して、機械的ポイント・システムにより、
測定することができる。
【0017】
ゾルゲル層を含むテクスチャ化面は上述のように、ゾルゲル層が被着されている基材のテクスチャ化面の一部に相当し、基材の粗さの少なくとも一部を埋めている。
【0018】
テクスチャ化基材と実質的に等しい屈折率を含む本発明によるゾルゲル層を特に使用することで、基材に適用されたゾルゲル層の特性に応じて、とりわけの厚さに応じて、種々異なる効果を得ることが可能になる。
【0019】
1実施形態によれば、本発明の方法は新規のテクスチャ化デザイン、すなわち出発材料として使用されるテクスチャ化基材のものとは異なるテクスチャを有するデザインを得ることを可能にする。本発明の方法はこのように、基材のテクスチャ化面上に被着されるゾルゲル層の厚さ又は屈折率を調節することによって、同じ出発テクスチャ化基材とは異なるテクスチャを生じさせることを可能にする。
【0020】
基材のテクスチャ化面の粗さパラメータ値Ra又は山−谷間の高さに相当する厚さの少なくとも一部分にゾルゲル層を適用することは、テクスチャデザインの粗さ及び任意選択的に形状を改変するのを可能にする。例えば、テクスチャデザインとして角錐を含むテクスチャ化ガラスを使用する場合、ゾルゲル層を適用するとこれらのデザインの形状が改変される事になり、この場合これらのデザインは角錐台形状を有することになる。
【0021】
しかし何よりも、基材のテクスチャ化面のゾルゲル層を含む部分は、特にゾルゲル層が基材のテクスチャを十分に埋める場合に、透明なデザインを形成することができる。本発明によるゾルゲル層を使用すると、テクスチャ化された、ひいては半透明の基材を再び平滑且つ透明にすることが可能である。
【0022】
別の実施形態によれば、ゾルゲル層は着色されていてもよい。従って、こうして得られたグレージング材は、独自の装飾効果をもたらす着色デザインを含むことができる。
【0023】
ゾルゲル層は、所望によりマスクを通して被着することができる。しかし、ゾルゲル層を形成するための架橋前のゾルゲル溶液は酸性又は腐食性ではないので、マスクの成分材料を攻撃することはできない。従って、マスクは酸攻撃が行われる場合よりも低廉な材料で製作してもよい。更に、この作業を実施するための装置も低廉になり、安全性及び環境の面で問題をはらまない。
【0024】
ゾルゲル層はエナメル層とは対照的に、高温熱処理を必要としない。本発明によるグレージング材は熱強化を強いられず、従ってデザイン作製後に所望の大きさに再切断することができる。このように、本発明によるグレージング材にはデザインの形成前又は形成後に次の変形・変質加工、すなわち、切断、付形、成形、熱強化、二重グレージング材の積層、を施すことができる。デザインを形成するための熱処理が必要ないことは、出発基材の選択に関する融通性に貢献する。
【0025】
本出願人は、本発明のグレージング材のデザインの特に有利な透明性は、基材とゾルゲル層との屈折率の一致に起因していること、すなわち、これら2つの構成要素が実質的に同じ屈折率を有するという事実に起因していることを見いだした。
【0026】
屈折率の一致又は屈折率差は、基材を構成する誘電材料とゾルゲル層を構成する誘電材料との、589nmにおける屈折率の差の絶対値に相当する。本発明によれば、テクスチャ化された又は粗い基材とゾルゲル層を構成する材料の屈折率の変動は好ましくは0.020未満、更に好ましくは0.015未満であるべきである。ゾルゲル層が基材のテクスチャ化面の粗さを十分に埋めるとき、そして屈折率差が小さいときに、この事例においてグレージング材を通した極めてクリアな視覚が得られる。
【0027】
しかしながら、このような小さい屈折率の変動はいつも得られるわけではない。例えば標準ガラスの場合、同じタイプのガラスの屈折率は、工場間で1.517と1.523の間の変動があり得る。このおよそ0.006の変動は、優れた透明性を得るための屈折率差の許容範囲を考えた場合に無視できる程度のものではない。
【0028】
本出願人は、特定のゾルゲル層を特に使用すると、所々が半透明でありまた透明であるグレージング材を容易に作製できることを見いだした。本発明のゾルゲル層は、これを構成する種々の前駆体化合物の比率に応じて、特に1.459〜1.700、好ましくは1.502〜1.538の範囲内で変動し得る適合可能な屈折率を有する。
【0029】
本発明の解決手段によって、基材とゾルゲル層との屈折率差が規定値よりも小さいことを保証するように、屈折率を精密に適合させることができる。
【0030】
本発明のゾルゲル層の屈折率を柔軟に定めることによって、基材源又は基材の性質とは無関係に光学性能の面で一定の品質を有する、所々が透明なグレージング材を得ることができる。
【0031】
ゾルゲル層を具体的に選択することによって、以下のことが、すなわち、
− 基材の屈折率と正確に適合させること(これはエナメル層のような他のタイプの材料では不可能である)、
− ガラスの正確な屈折率にその源に応じて正確に適合させること、
− 無機物であるか有機物であるかにかかわらず、基材の性質に応じて適合可能な組成を得ること、
− 着色外観をゾルゲル層に与える成分を容易に添加すること、
− 重量のある機器を必要とすることなしに複雑な形状及び種々の大きさを有する表面にゾルゲル層を被着すること、
− 均質な表面、組成、及び厚さを有する被着物を得ること、
が可能になる。
【0032】
一実施形態によれば、ゾルゲル層は、当該ゾルゲル層で被覆された基材のテクスチャ化面の少なくとも一部を平滑にするのに十分な厚さを有している。この場合、本発明の方法から他の利点が得られる。第一に、製造コスト及び生産融通性が更に低くなる。グレージング材はこの場合、ゾルゲル層を含むテクスチャ化基材の表面に、特に低い曇り度の値によって反映される高い透明性を有するデザインを所々に含む。屈折率の調和ができる限り微細に調節されることにより、透明領域の視覚が極めてクリアになる。
【0033】
平滑面は、表面のむらがこれらの表面のむらによって放射線が偏向されないような表面である。入射放射線はこの場合、鏡面でのように表面によって透過させられるとともに反射される。反射は、所与の入射角でのグレージング材への入射放射線が入射角に等しい反射角でグレージング材によって反射される場合に鏡面反射(正反射)と呼ばれる。同様に、グレージング材の透過は、所与の入射角でのグレージング材への入射放射線が入射角に等しい透過角でグレージング材を透過する場合に鏡面透過(正透過)と呼ばれる。
【0034】
平滑面は、ランダムな表面むらのサイズが表面への入射放射線の波長よりも小さい表面であることが好ましい。平滑面は、算術平均差Raが0.1μm未満、好ましくは0.01μm未満に相当する粗さパラメータか、又は10°未満の勾配を有する表面であることが好ましい。
【0035】
本発明による透明デザインはこのように、グレージング材表面の放射線の反射及び透過が正反射及び正透過である部分に相当する。デザインは、少なくともエレメントの所期用途に有用な波長範囲内で透明であると見なされる。例えばエレメントが建造物又は車両のグレージング材として使用される場合、それは少なくとも可視波長範囲では透明である。
【0036】
本発明の目的上、「屈折率」とは、波長589nmで測定した光学屈折率を意味する。
【0037】
本発明によれば、基材を構成する誘電材料とゾルゲル層を構成する誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値は、好ましさが増大する順に、0.020以下、0.018以下、0.015以下、0.010以下、0.005以下である。
【0038】
一方の主面がテクスチャ化され、他方の主面が任意選択的に平滑である透明基材は、無機又は有機ガラスから、特にポリマー、ガラス、セラミック、又はガラスセラミックから形成された基材から選択することができる。
【0039】
好ましくは、基材のテクスチャ化面は、
− 粗さパラメータRaが少なくとも0.5μm、より好ましくは少なくとも1μm、そして特に1μmと5μmの間、そして好ましくは1〜3μmであり、
− 粗さパラメータRSmが10μmと100μmの間、より好ましくは10μm〜65μm、
である。
【0040】
透明基材の主面のうちの一方をテクスチャ化することは、任意の公知のテクスチャ化法によって、例えば、基材を変形させ得る温度まで予熱された基材の表面をエンボス加工することにより、特に基材上に形成されるべきテクスチャと相補的なテクスチャを表面に有するローラを使用するラミネート加工によって、研磨粒子又は表面を使用した研磨により、特にサンド加工によって、化学処理により、特にガラス又はガラスセラミック基材の場合には酸処理によって、成形により、特に熱可塑性ポリマーからなる基材の場合には射出成形によって、あるいはエッチングによって、なされる。
【0041】
透明基材がポリマーから形成される場合、これは硬質であっても軟質であってもよい。本発明に照らして好適なポリマーの例には、
− ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など、
− ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)など、
− ポリカーボネート、
− ポリウレタン、
− ポリアミド、
− ポリイミド、
− フルオロエステルポリマー、例えばエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、及びフッ素化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)など、
− 光架橋及び/又は光重合樹脂、例えばチオレン、ポリウレタン、ウレタン−アクリレート又はポリエステル−アクリレート樹脂など、及び、
− ポリチオウレタン、
が含まれる。
【0042】
これらのポリマーは一般に、1.3〜1.7の屈折率範囲を有する。
【0043】
軟質ポリマー基材の中からは、熱変形性又は感圧性のプラスチックから形成されたインサート又はシートを挙げることができる。このプラスチックは、好ましくは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーから選択されたポリマーを基礎材料とすることができる。
【0044】
例えば、基材は、圧縮及び/又は加熱によってテクスチャ化された、熱変形性又は感圧性のプラスチック材料から形成されたインサート又はシートに基づく層を含むことができる。
【0045】
好ましくは、基材はガラス又はガラスセラミック基材である。複数の層を備えたエレメントの外側層として直接使用することができるガラス基材の例には、
− 既にテクスチャ化されており、主面のうちの一方にサンド加工又は酸攻撃によって得られたテクスチャを有する、サン−ゴバン・グラス社によって販売されている一連のSatinovo(商標)のガラス基材、
− 主面のうちの一方にラミネーションによって得られたテクスチャを有するサン−ゴバン・グラス社によって販売されている一連のAlbarino(商標)S、P又はG、あるいはMasterglass(商標)のガラス基材、
− サンド加工によってテクスチャ化された高屈折率ガラス基材、例として、例えばSchott社によってSF6(n=1.81)、7SF57(n=1.85)、N−SF66(n=1.92)、及びP−SF68(n=2.00)の呼称で販売されている、フリントガラスなど、
が含まれる。
【0046】
ガラスセラミック基材は、特に加熱用エレメントをカバーし又は受け入れるのを目的とした、特に調理器具のホブ用として用いることを目的とした、ガラスセラミックプレートであってもよい。このような基材は、平滑な主面と粗い主面とを含んでいてよい。粗い主面は一般に加熱用エレメントに結合され、また操作インジケータ又はディスプレイにも結合される。
【0047】
ガラスセラミック基材はその由来において、前駆体ガラスとして知られるガラスであり、その特有の化学組成が、セラミック化として知られる好適な熱処理による制御された結晶化を招来することを可能にする。
【0048】
ガラスセラミック基材のテクスチャ化面にゾルゲル層を適用すると、平滑面を所々に得ることができ、この平滑面は、その平滑面に面する基材の下に場合により配置されるディスプレイの一体化及び可視化(クリアな視覚)を容易にする。
【0049】
基材の厚さは好ましくは10μmと19mmの間であり、誘電材料の選択によって変動する。
【0050】
テクスチャ化されたガラス又はガラスセラミック基材は好ましくは、0.4mmと6mmの間、好ましくは0.7mmと19mmの間、そして好ましくは0.7mmと8mmの間の厚さを有している。
【0051】
テクスチャ化ポリマー基材は好ましくは、0.020mmと2mmの間、好ましくは0.025mmと0.25mmの間の厚さを有している。
【0052】
プラスチック材料から形成されたインサート又はシートに基づく基材は好ましくは、10μmと1mmの間、好ましくは0.3mmと1mmの間の厚さを有している。
【0053】
基材の屈折率は、例えば標準ガラスを使用する場合には、1.51と1.53の間であることができる。
【0054】
ゾルゲル層は好ましくは、ゾルゲル法に従って得られた、シリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクスを含む。
【0055】
ゾルゲル法は、第1段階において、水の存在下で重合反応を引き起こす前駆体を含有する「ゾルゲル溶液」として知られる溶液を調製するものである。このゾルゲル溶液を表面に被着させると、ゾルゲル溶液中の水の存在によって又は周囲湿分と接触することによって、前駆体は加水分解されるようになり縮合して、溶媒を捕捉する網状構造を形成する。これらの重合反応の結果、ますます縮合した種が形成され、これにより、ゾルを形成し、次いでゲルを形成するコロイド粒子がもたらされる。シリカ系前駆体の存在下において数百度程度の温度でこれらのゲルを乾燥及び高密度化することにより、標準ガラスと類似する特性を有するガラスに相当するゾルゲル層が得られる。
【0056】
コロイド溶液又はゲルの形をしたゾルゲル溶液は、その粘度のために、基材のテクスチャ化面上に、この表面のテクスチャに一致した状態で容易に被着することができる。このゾルゲル層は基材の粗さを「埋める」ことになる。具体的には、この層は、こうしてテクスチャ化された基材の表面粗さを取り込む面と、この面と反対側の平らな主外面とを含む。ゾルゲル法によって被着された層はこうして、ゾルゲル層の厚さに従って基材の表面を平面状にする。
【0057】
本発明によれば、ゾルゲル層はシリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクスを含む。このマトリクスは、オルガノシランRnSiX(4-n)である混合前駆体から得られる。これらの分子は同時に、シリカ主鎖に結合されたままの有機官能基を含むシリカ網状構造又はマトリクスをもたらす加水分解性官能基を含んでいる。
【0058】
本発明の1つの実施形態によれば、ゾルゲル層はまた、少なくとも1種の金属酸化物又は少なくとも1種のカルコゲニドの粒子を含む。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、シリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクスはまた、少なくとも1種の金属酸化物を含む。有機官能基及び少なくとも1種の金属酸化物を含むこのようなシリカ系マトリクスは、オルガノシランと、金属酸化物の少なくとも1種の前駆体とを組み合わせて使用して得ることができる。これらの前駆体はその後、オルガノシランとともに、シリカと金属酸化物とからなるハイブリッドマトリクスを形成する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、ゾルゲル層は、少なくとも1種の金属酸化物又は少なくとも1種のカルコゲニドの粒子が分散されているシリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクス及び少なくとも1種の金属酸化物、例えば二酸化チタン粒子が分散されているシリカの有機/無機マトリクスと酸化ジルコニウムなど、を含む。
【0061】
本発明のゾルゲル層の主要化合物は、マトリクスを形成する化合物と、前記マトリクス中に分散された粒子とからなる。従って、ゾルゲル層の主要化合物は、
− マトリクスの有機官能基を含むシリカ、
− マトリクスの金属酸化物、
− マトリクス中に分散された金属酸化物及び/又はカルコゲニド粒子、
であることができる。
【0062】
ゾルゲル層の屈折率を正確に適合させるために、マトリクスに由来する又は粒子の形で分散された金属酸化物の比率が変更される。概して、金属酸化物はシリカよりも屈折率が高い。金属酸化物の比率を増大させることによって、ゾルゲル層の屈折率が高められる。ゾルゲル層の屈折率は、当該金属酸化物の体積比率が閾値未満である場合、1種の金属酸化物の体積分率の関数として線形に増大する。例えば、TiO2粒子を添加する場合、ゾルゲル層の主要化合物の総体積に対するTiO2の体積比率が20%未満であると、ゾルゲル層の屈折率の線形変化が観察される。
【0063】
従って、ゾルゲル層の屈折率を、ゾルゲル層を構成する主要化合物に応じて理論的に割り出すことができ、ひいては、硬化後に所要屈折率を有するゾルゲル層を得るのを可能にするゾルゲル溶液の配合設計を理論的に割り出すことができる。
【0064】
このとおり、本発明の解決手段は特に有利である。例えば、下側の外層として使用することが意図されるガラス基材を受け取ったなら、その屈折率を測定する。次いで、当該基材と屈折率が0.020未満、好ましくは0.015未満で一致するゾルゲル層を硬化後にもたらすゾルゲル溶液を調製する。
【0065】
ゾルゲル層の屈折率は、特に1.459〜1.700、好ましくは1.502〜1.538、より好ましくは1.517〜1.523の広い範囲内で変動することができる。
【0066】
ゾルゲル層の主要化合物は、ゾルゲル層の総質量に対する質量で表して、好ましさが増大する順に、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、100%である。
【0067】
ゾルゲル層は好ましくは、ゾルゲル層を構成する主要化合物の総質量に対する質量で表して、
− 50%〜100%、好ましくは70%〜95%、更に好ましくは85%〜90%の、マトリクスの有機官能基を含むシリカ、及び/又は、
− 0〜10%、好ましくは1%〜5%、更に好ましくは2%〜4%の、マトリクスの金属酸化物、及び/又は、
− 0〜40%、好ましくは1%〜20%、更に好ましくは5%〜15%の、マトリクス中に分散された金属酸化物及び/又はカルコゲニド粒子、
を含む。
【0068】
ゾルゲル層の主要化合物の総体積に対する金属酸化物粒子の体積比率は、好ましさが増大する順に、0%と25%の間、1%と25%の間、2%と8%の間である。
【0069】
ゾルゲル層はゾルゲル溶液を硬化することによって得られ、一般式RnSiX(4-n)の少なくとも1種のオルガノシランの加水分解及び縮合から生じた生成物を含む。上記の式において、
− nは1、2、3に等しく、好ましくはnは1又は2であり、そしてより好ましくはnは1に等しく、
− X基は、同一であっても異なっていてもよく、アルコキシ、アシルオキシ、及びハリド基から選択される加水分解性基、好ましくはアルコキシ基を表し、そして、
− R基は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子を介してケイ素に結合された非加水分解性の有機基(又は有機官能基)を表す。
【0070】
好ましくは、ゾルゲル層はゾルゲル溶液を硬化させることによって得られ、そして、
i) 少なくとも1種のオルガノシラン、及び、
ii) 金属酸化物の少なくとも1種の前駆体、及び/又は、
iii) 少なくとも1種の金属酸化物又は少なくとも1種のカルコゲニドの粒子、
の加水分解及び縮合から生じた生成物を含む。
【0071】
金属酸化物粒子及び/又は金属酸化物の前駆体は、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ニオブ、アルミニウム、及びモリブデンから選択された金属を含む。
【0072】
オルガノシランは、2つ又は3つの、特に3つの加水分解性X基と、1つ又は2つの、特に1つの非加水分解性R基を含む。
【0073】
X基は好ましくは、アルコキシ基−O−R’、特にC1〜C4アルコキシ、アシルオキシ基−O−C(O)R’(この式中のR’はアルキル基、好ましくはC1〜C6のアルキル基であり、好ましくはメチル又はエチルである)、ハリド、例えばCl、Br及びI、並びにこれらの基の組み合わせから選択される。好ましくは、X基はアルコキシ基であり、特にメトキシ又はエトキシである。
【0074】
R基は非加水分解性の炭化水素系基である。所定数の基が本発明に照らして好適である。これらの基の存在及び性質が、本発明の用途と適合可能な厚さを有するゾルゲル層を得るのを可能にする。好ましくは、非加水分解性の有機官能基に相当するR基は少なくとも50g/mol、好ましくは少なくとも100g/molのモル質量を有している。従って、このR基はゾルゲル層の乾燥工程後であっても除去することのできない基であり、そして、
− アルキル基、好ましくは線状又は分枝状のC1〜C10、更に好ましくはC3〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル基、
− アルケニル基、好ましくはC2〜C10アルケニル基、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニル基、
− アルキニル基、例えばアセチレニル及びプロパルギル基、
− アリール基、好ましくはC6〜C10アリール基、例えばフェニル及びナフチル基など、
− アルキルアリール基、
− アリールアルキル基、
− (メタ)アクリル及び(メタ)アクリルオキシプロピル基、
− グリシジル及びグリシジルオキシ基、
から選択することができる。
【0075】
上記の基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール及びアリールアルキル基などは、第一、第二、又は第三アミン(非加水分解性基はこの場合例えばアミノアリール又はアミノアルキル基である)、アミド、アルキルカルボニル、置換型又は非置換型アニリン、アルデヒド、ケトン、カルボキシル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、メルカプト、シアノ、ヒドロキシフェニル、アルキルカルボキシレート、スルホン酸、リン酸、又はメタ(アクリルオキシルオキシ)基、エポキシド環を含む基、例えばグリシジル及びグリシジルオキシなど、並びにアリル及びビニル基から選択された少なくとも1種の基を含んでもよい。
【0076】
特に好ましいオルガノシランは同一の又は異なる、好ましくは同一のX基を含み、加水分解性基、好ましくはC1〜C4アルコキシ基、より好ましくはエトキシ又はメトキシ基を表し、そしてRは非加水分解性基、好ましくはグリシジル又はグリシジルオキシC1〜C20及び好ましくはC1〜C6アルキレン基、例えばグリシジルオキシプロピル基、グリシジルオキシエチル基、グリシジルオキシブチル基、グリシジルオキシペンチル基、グリシジルオキシヘキシル基、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基である。
【0077】
有利には、オルガノシラン化合物は、次の化合物、すなわち、アリルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N’−(2’−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−[(3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロキシイミダゾール、から選択される。
【0078】
上記化合物の中で、好ましい化合物はGLYMOである。
【0079】
シリカ系有機/無機ハイブリッドマトリクス中に分散される金属酸化物及び/又はカルコゲニド粒子は好ましくは、次の群、すなわち、TiO2、ZrO2、ZnO、NbO、SnO2、Al23、MoO3、ZnS、ZnTe、CdS、CdSe、IrO2、WO3、Fe23、FeTiO3、BaTi49、SrTiO3、ZrTiO4、Co34、ビスマス系三元酸化物、MoS2、RuO2、Sb24、Sb25、BaTi49、MgO、CaTiO3、V25、Mn23、CeO2、RuS2、Y23、La23から選択される。
【0080】
好ましくは、粒子は、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ニオブ、アルミニウム、及びモリブデンから選択された金属を含む金属酸化物の粒子である。
【0081】
特に有利な実施形態によれば、金属酸化物はルチル又はアナターゼ形態の酸化チタン(TiO2)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)である。
【0082】
少なくとも1種の金属酸化物又は少なくとも1種のカルコゲニドの粒子は、好ましさが増大する順に、平均直径が1μm以下、60nm以下、50nm以下、20nm以下である。粒子の直径は一般に1nmを上回り、より好ましくは5nmを上回る。
【0083】
カルコゲニド金属酸化物の屈折率は、好ましさが増大する順に、1.49超、1.5超、1.6超、1.7超、1.8超、1.9超、2超、2.1超、2.2超である。
【0084】
使用し得る商業的製品としては、Catalyst & Chemical (CCIC)社によってOptolake 1120Z(商標)(11RU7−A−8)の名称で販売されている、TiO2コロイドに相当する製品が挙げられる。また、Cristal Global社によってS5−300Aの呼称で販売されている、総分散体質量に対して23質量%のTiO2粒子の安定水性分散体であって、TiO2粒子のBET比表面積が約330m2/gであり平均直径が約50nmであるものに相当する製品も挙げることができる。
【0085】
金属酸化物前駆体は、金属元素を含む有機金属化合物から、例えば金属アルコシド及び金属塩などから、選択することができる。
【0086】
金属酸化物前駆体は、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ニオブ、アルミニウム、及びモリブデンから選択された金属を含むことができる。好ましくは、ゾルゲル溶液は少なくとも1種の酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム又は酸化チタン前駆体、好ましくは金属アルコシド又は金属ハロゲン化物を含む。前駆体化合物の例は、次のもの、すなわち、
− Al(OCH33、Al(OC253、Al(OC373、Al(OC493、Al(OC24OC493、AlCl3、AlCl(OH)2
− TiCl4、Ti(OC254、Ti(OC374、Ti(OC494、Ti(2−エチルヘキソキシ)4
− ZrCl4、Zr(OC254、Zr(OC374、ZrOCl2、Zr(2−エチルヘキソキシ)4
である。
【0087】
好ましくは、本発明によるゾルゲル溶液は、ジルコニウムアルコキシドから選択された単独の前駆体化合物、例えばジルコニウムテトラプロポキシド(TPOZ)など、を含む。
【0088】
オルガノシラン(i)、金属酸化物前駆体(ii)、並びに金属酸化物及びカルコゲニド(iii)が、ゾルゲル溶液の主要化合物である。ゾルゲル溶液は、これらの「主要」生成物以外に、添加剤及び溶媒を含む。添加剤は好ましくは、ゾルゲル溶液の総質量に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満である。
【0089】
オルガノシランの比率は、ゾルゲル溶液の総主要成分質量に対する質量で表して、好ましさが増大する順に50%と99%の間、60%と98%の間、70%と95%の間、80%と90%の間である。
【0090】
金属酸化物前駆体の比率は、ゾルゲル溶液の総主要成分質量に対する質量で表して、好ましさが増大する順に0%と10%の間、1%と10%の間、2%と8%の間、4%と7%の間である。
【0091】
金属酸化物及びカルコゲニドの比率は、ゾルゲル溶液の総主要成分質量に対する質量で表して、好ましさが増大する順に0%と40%の間、1%と20%の間、2%と10%の間、4%と9%の間である。
【0092】
ゾルゲル溶液は、主要化合物に加えて、少なくとも1種の溶媒と、任意選択的に少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。
【0093】
溶媒は、水及び有機溶媒から選択される。ゾルゲル溶液は好ましくは、加水分解反応及び縮合反応を可能にするために水を含む。ゾルゲル溶液は、大気圧で好ましくは70℃と140℃の間の沸点を有する少なくとも1種の有機溶媒を含んでもよい。本発明に従って使用し得る有機溶媒としては、アルコール、エステル、ケトン、テトラヒドロピラン、及びこれらの混合物を挙げることができる。アルコールは、好ましくはC1〜C6アルコールから選択され、例えばメタノールなどである。エステルは、好ましくはアセテートから選択され、特にエチルアセテートを挙げることができる。ケトンの中では、メチルエチルケトンを使用することが好ましい。
【0094】
従って、好適な溶媒の中では、水、メタノール、エタノール、プロパノール(n−プロパノール及びイソプロパノール)、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−2−ブタノール、及びブトキシエタノール、そして水/有機溶媒混合物を挙げることができる。
【0095】
溶媒の比率は広い範囲内で変えることができる。これらの比は特に、得ようとする厚さに依存する。具体的には、ゾルゲル溶液の固形分が多ければ多いほど、厚く被着し、ひいては大きい厚さのゾルゲル層を得る可能性が高くなる。
【0096】
ゾルゲル溶液の総質量に対する溶媒の質量比率は、例えば少なくとも10%且つ80%以下に相当することができる。
【0097】
同様に、ゾルゲル溶液の総質量に対する主要化合物の質量比率は、例えば少なくとも20%且つ90%以下に相当する。
【0098】
ゾルゲル溶液の総質量に対する水の質量比率は、例えば10%と40%の間、10%と30%の間、又は15%と25%の間である。
【0099】
ゾルゲル溶液が1種又は2種以上の有機溶媒をも含む場合も、ゾルゲル溶液の総質量に対する有機溶媒の質量比率は、例えば10%と40%の間、10%と30%の間、又は15%と25%の間である。
【0100】
組成物は種々の添加剤、例えば界面活性剤、UV吸収剤、顔料又は染料、加水分解及び/又は縮合触媒、及び硬化触媒など、を含んでもよい。添加剤の総比率は好ましくは、ゾルゲル溶液の総質量に対して5質量%未満に相当する。
【0101】
界面活性剤は湿潤特性を改善し、被覆しようとする表面への組成物の広がりをより良好にする。これらの界面活性剤の中では、非イオン性界面活性剤、例えばエトキシル化又は中性脂肪アルコールなど、例えばフルオロ界面活性剤、を挙げることができる。フルオロ界面活性剤としては、特に3M社によってFC−4430の呼称で販売されている製品を挙げることができる。
【0102】
界面活性剤のゾルゲル溶液の総質量に対する質量比率は、好ましさが増大する順に、0.01%〜5%、0.05%〜3%、0.1%〜2%である。
【0103】
加水分解及び/又は縮合触媒は、酸又は塩基から選択されることが好ましい。
【0104】
酸触媒は有機酸及び鉱酸、並びにそれらの混合物から選択することができる。有機酸は、特にカルボン酸、例えば脂肪族モノカルボン酸、例として酢酸や、ポリカルボン酸、例としてジカルボン酸及びトリカルボン酸、例えばクエン酸などから、及びこれらの混合物から選択することができる。鉱酸の中では、硝酸又は塩酸、及びこれらの混合物を使用することができる。
【0105】
酢酸は、組成物が金属酸化物前駆体を含む場合に、安定剤として作用するという更なる利点を有する。具体的には、酢酸はこれらの前駆体をキレート化し、ひいてはこのタイプの生成物の過度に急速な加水分解を防止する。
【0106】
塩基性触媒は、塩基性アミン、例えばエタノールアミン及びトリエチルアミン、ならびにこれらの混合物から選択することができる。使用する基材又はシランの性質のために酸が禁じられる場合には、特定の塩基が使用される。
【0107】
溶液は、顔料、染料又は真珠光沢物質を含んでいてもよい。この実施形態によれば、ゾルゲル層は着色外観を有することができる。この着色外観を得るための別の実施形態は、コロイド粒子をマトリクス内に導入するために、着色金属酸化物、例えばコバルト、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル又は銅の酸化物粒子、及び前記着色外観をもたらし得る任意の他の遷移金属又は非金属の酸化物粒子を選択するものである。
【0108】
被着は、下記の技術、すなわち、
− ディップコーティング、
− スピン塗布、
− 層流塗布又はメニスカス塗布、
− スプレイ塗布、
− ソークコーティング、
− ロール処理、
− ペイント塗布、
− スクリーン印刷、
− スロット塗布、又は、
− インクジェット塗布、
のうちの1つに従って行うことができる。
【0109】
被着は、好ましくは、空気圧式霧化によるスプレー、スクリーン印刷、又はインクジェット塗布によって実施される。それというのも、これらの技術は特定のマスキング処理なしにデザインを描くのを可能にするので有利であるからである。
【0110】
ゾルゲル層は基材の粗さの少なくとも一部を埋める。透明なデザインを得ることが望まれる場合には、ゾルゲル層の厚さは基材の表面を平らにするのに十分でなければならない。
【0111】
ゾルゲル層の厚さが、
− 基材のテクスチャ化面の粗さパラメータ値Raよりも大きいか、又は、
− 基材のテクスチャ化面の山−谷間の高さにほぼ等しく、好ましくはこれ以上である、
場合に、良好な透明性が得られる。
【0112】
ゾルゲル層の厚さは、所望の効果に応じて選択される。このため、ゾルゲル層は、
− 山−谷間の高さの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%、及び/又は、
− 山−谷間の高さの100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%以下、
に相当する厚さを有していてよい。
【0113】
好ましくは、ゾルゲル層で被覆された基材のテクスチャ化面は、
− 山−谷間の高さが10μm未満、好ましくは5μm未満、更に好ましくは1μm未満であり、
− 粗さパラメータRaが1μm未満、好ましくは0.5μm未満、更に好ましくは0.1μm、特に0.01μmと1μmの間である。
【0114】
ゾルゲル層の厚さは、例えば5nmと100μmの間、好ましくは50nmと50μmの間でよい。この厚さは、ディップ又はスプレーのような技術によって、1回又は2回の適用作業(又はパス)により、単一の層として得ることができる。
【0115】
ゾルゲル膜の乾燥温度は、0〜200℃の範囲、好ましくは100℃〜150℃、そしてより好ましくは120〜170℃の範囲でよい。
【0116】
有利には、本発明のグレージング材は、ゾルゲル層を含む基材のテクスチャ化面の部分に、
− 標準規格STM D 1003に従って測定して、5%未満、好ましくは2.5%未満、より好ましくは1%未満の透過曇り度、
− BYK社のHaze−Gard Plus機械で測定して、93%超、好ましくは95%超、より好ましくは97%超の明度、
を有する。
【0117】
基材又はゾルゲル層の固有の反射特性及び透過特性は、グレージング材の良好な透明性と、色などの他の特性を得ることとの間の期待に応じて選択される。
【0118】
有利には、本発明のグレージング材は、基材のテクスチャ化面のゾルゲル層を含まない部分に、15超の透過曇り度及び/又は90%未満の明度を有する。
【0119】
基材のテクスチャ化面のテクスチャ又は粗さは、全体的な平面に対して凹状又は凸状である複数のデザインによって形成される。好ましくは、デザインの平均高さは1μmと100μmの間である。本発明の目的上、テクスチャ化面上のデザインの平均高さ(Raに相当する)は、接触面の各デザインに対して山と全体的な平面との間で定められる絶対値としての距離yiの算術平均として定義され、
【0120】
【数1】
【0121】
に等しい。
【0122】
基材表面のテクスチャのデザインは、基材の主テクスチャ化面上にランダムに分布することができる。変更実施形態として、基材のテクスチャ化面のテクスチャのデザインは接触面上に周期的に分布していてもよい。これらのデザインは、特に、円錐、角錐、溝、細長いくぼみ、又は波形であることができる。
【0123】
有利には、ゾルゲル層で被覆された基材の平滑な主外面は平らであるか又は曲げられており、好ましくはこれらの主外面は互いに平行である。このことは、層状のエレメントを通過する放射線のための光分散を制限すること、ひいては、層状のエレメントのクリアな視覚を向上させることに貢献する。
【0124】
本発明の1実施形態では、基材は、ガラス、ガラスセラミック、又はポリマーから作製された基材であり、ゾルゲル層は、基材の主テクスチャ化面上に被着される。
【0125】
デザインはいかなる形状を有してもよく、程度の差こそあれ大きくてもよい。デザインは、グレージング材の表面の数cm2〜数m2の部分に相当することができる。
【0126】
最後に、本発明の対象は、前述のグレージング材を車両、建造物、街路設置物又は屋内備品の全て又は一部として使用することである。
【0127】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら単に一例として示した層状エレメントのいくつかの実施形態の以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1】本発明によるグレージング材の概略断面図である。
図2】本発明によるグレージング材を示す概略断面図である。
図3】ゾルゲル層内のTiO2の体積比率の関数として屈折率の変化を示す図である。
図4】ゾルゲル層をゾルゲル法によって被着した透明粗面ガラスSatinovo(商標)のサテン仕上げ基材の走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像である。
図5】曇り度(右側y軸)及び明度(左側y軸)の変化をゾルゲル層の屈折率の関数として示すグラフである。
図6】曇り度(右側y軸)及び明度(左側y軸)の変化をSatinovo(商標)基材とゾルゲル層との屈折率の変動の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図面の明確さを期すために、図面における種々の層の相対的な厚さは厳格には顧慮されていない。
【0130】
図1に示したグレージング材1は、基材2とゾルゲル層4とを含み、これらは、ほぼ同じ屈折率n2、n4を有する透明誘電材料からなっている。これらのエレメントのそれぞれは平滑な主面2A又は4Aを有している。基材のテクスチャ化面は、表面の全体的平面に対して凹状又は凸状である複数のデザインによって形成されている。
【0131】
図2に示したグレージング材1は、基材2の粗さを平滑化するゾルゲル層4を含んでいる。グレージング材1の平滑な外面2A及び4Aは、放射線の正透過、すなわち、放射線の方向を変更せずに放射線が入射又は射出することを可能にする。
【0132】
本発明のグレージング材の製造方法の一例を以下に説明する。本発明によるグレージング材を製造する方法は以下の工程、すなわち、
− 基材の屈折率を測定する工程、及び、
− 基材の構成誘電材料とゾルゲル層の構成誘電材料との589nmにおける屈折率差の絶対値が0.020以下、好ましくは0.015以下であるゾルゲル層を架橋後にもたらすゾルゲル溶液を選択する工程、
を含むことができる。
【0133】
Satinovo(商標)、Albarino(商標)又はMasterglass(商標)などのタイプのテクスチャ化ガラス基材、あるいは例えばポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートのようなタイプの硬質又は軟質ポリマー材料に基づく基材を使用することができる。次いで、基材のテクスチャ化面上にゾルゲル層を被着する。粘性液体又はペースト状態のこの層が、基材表面のテクスチャを取り込む。
【0134】
本発明によるグレージング材は、例えば車両、建造物、街路設置物又は屋内備品、照明用などの、あらゆる周知のグレージング材用途に用いることができる。本発明のグレージング材は、ドア、内壁の仕切り、ガラスのシャワースクリーン、バルコニー、家具、ガラス棚、キッチンアクセサリー及び作業面などとして、最も特に有用である。
【実施例】
【0135】
I.ゾルゲル溶液、及び調節可能な屈折率を有するゾルゲル層の調製
これらの例において作製されたゾルゲル層は、シリカと酸化ジルコニウムの有機/無機ハイブリッドマトリクスを含み、このマトリクス中に二酸化チタン粒子が分散されている。ゾルゲル溶液で使用される主要化合物は、
− 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、
− ジルコニウムプロポキシドの70質量%プロパノール溶液、
− 固形分23質量%の水性分散液中の直径50nm未満の粒子の形態をしたCristal Activ(商標)という名称で販売されているTiO2
である。
【0136】
オルガノシランと、ジルコニウムプロポキシドの溶液と、酢酸と、任意選択な水とを混合することにより、マトリクスの第1前駆体組成物を調製する。構成成分は、強力に攪拌しながら液滴状に混合する。次いで他の化合物、すなわち粒子形態の二酸化チタン、界面活性剤、及び任意選択的なエタノールのような他の希釈溶媒を、この第1組成物に添加する。こうしてゾルゲル溶液を得る。
【0137】
ゾルゲル溶液に添加される二酸化チタンの分散比率次第では、ゾルゲル層のマトリクスが架橋されたときに、これにTiO2粒子をある程度添加する。ゾルゲル層の屈折率は二酸化チタンの体積分率に依存する。こうして、結果として得られるゾルゲル層の屈折率を、0.001程度の高精度に調節しながら1.490と1.670の間で変動させることができる。従って、下側の外層として使用されるあらゆるタイプの標準ガラス基材に対して0.015未満の屈折率の一致を得ることができる。
【0138】
ゾルゲル層の固形分は、1回で被着し得る最大厚に影響を与える。
【0139】
これらの結果を示すために、種々のゾルゲル溶液を調製した。次いでこれらの溶液を支持体上にスプレーすることによって塗布し、20分から数時間の間にわたって150℃又は200℃の温度で架橋させることによって、1.493〜1.670の間で変動する屈折率を有するゾルゲル層を形成した。
【0140】
II.ゾルゲル層の屈折率に対するTiO2の体積比率の影響
下記表は、被験ゾルゲル溶液の組成、そしてまた結果として生じたゾルゲル層の組成を要約する。
【0141】
ゾルゲル溶液に関しては、所与の比率はゾルゲル溶液の総質量に対する質量比率に相当する。
【0142】
【表1】
【0143】
ゾルゲル層に関しては、TiO2の体積比率は、シリカ及び酸化ジルコニウムからなるハイブリッドマトリクスとTiO2粒子とを含む主要成分の総体積に対して規定されている。主要成分の比率は、主要化合物の総質量に対するゾルゲル層の主要化合物の質量比率に相当する。
【0144】
【表2】
【0145】
オルガノシラン及びジルコニウムプロポキシドを加水分解反応及び縮合によって架橋させるのに続いて、ゾルゲル層内にマトリクスを得る。このマトリクスは、以下で「Gly−SiO2」と呼ばれる非加水分解性有機基を含む酸化ケイ素と酸化ジルコニウムとを基剤としており、その中にTiO2粒子が分散されている。これら3種の化合物がゾルゲル層の主要化合物に相当する。
【0146】
二酸化チタンの体積分率は、TiO2の体積比率が20%未満の場合に、ゾルゲル層の屈折率に線形の影響を与える。比率がより高い場合には、屈折率は増大し続けるが、しかし曲線の勾配の減少が見られる。しかし、この曲線が割り出されると、当業者は体積分率20%超のTiO2を含むゾルゲル層の屈折率を概算によって推定することができる。
【0147】
図3は、ゾルゲル層内のTiO2の体積比率の関数として屈折率の変化を示している。比率が20%未満の場合に、屈折率の線形変化がTiO2の比率の関数として観察される。
【0148】
屈折率の精度は、TiO2量における0.1体積%の誤差に対して、7×10-4である。
【0149】
III.SEM観察
走査型電子顕微鏡法によって観察することにより、ゾルゲル層が基材の粗さを厚さにおいて埋めて平らな上面を得るのを可能にすることを確認した。図4の画像は、サン−ゴバン社の透明粗面ガラスSatinovo(商標)からなるサテン仕上げ基材を、その上にゾルゲル層Oをゾルゲル法により被着した状態で示している。本発明のグレージング材は、透明ゾーンと半透明ゾーンとを有する、所々が粗いガラスに相当する。
【0150】
厚さ4mmのこれらの基材は、酸攻撃によって得られた主テクスチャ化面を含む。Satinovo(商標)ガラスのテクスチャ化面の粗さRaに相当する基材のテクスチャデザインの平均高さは1μmと5μmの間である。その屈折率は1.518であり、その山−谷間の高さ(PV)は12μmと17μmの間である。
【0151】
ゾルゲル層で被覆されたSatinovo(商標)基材を切断して示す左側の画像において、テクスチャが接触面の全体的平面に対して凹状又は凸状である複数のデザインによって形成されていることが明らかに見られる。ゾルゲル層の厚さは14.3μmである。
【0152】
右側の画像は同じ基材の上面図を示している。ゾルゲル層はSatinovo(商標)基材の表面全体には被着されていなかった。ゾルゲル層は基材の粗さを平らにするのを可能にする。
【0153】
ゾルゲル層で被覆されたSatinovo(商標)基材の光透過率TLは90.1%、曇り度は1.88%、そして明度は92.5%である。
【0154】
IV.屈折率一致の影響の評価
ゾルゲル層と基材との屈折率一致の影響を測定するために、種々のゾルゲル溶液を調製して、上記の透明粗面ガラスSatinovo(商標)のサテン仕上げ基材上に被着させた。被着したゾルゲル層の乾燥後の厚さは約15μmである。
【0155】
この試験の目的は、グレージング材の光学特性、例えば、
− 標準規格ISO 9050:2003 (光源D65、2°観察者)に従って測定した、可視線範囲の光透過率値TL(パーセント)、
− 下方外層側の層状エレメントへの入射放射線について、標準規格ASTM D 1003に従って曇り度計で測定した、曇り透過率値(曇り度T)(パーセント)、
− BYK社のHaze−Gard曇り度計で測定した明度(パーセント)、
などへの屈折率一致の影響を示すことである。
【0156】
更に、こうして被覆されたグレージング材を通した「視覚の」品質を、5人の観察者がブラインドテストで、すなわち観察者が屈折率などの特性やゾルゲル層と基材との屈折率の一致を知ることなしに、視覚的に評価した。観察者は、ゾルゲル層で被覆された各基材に対して、「−」良くない、「+」良い、「++」優良、「+++」非常に優良、から選択した評価指標を割り当てた。
【0157】
下記表は、被験ゾルゲル溶液の組成、及び結果として生じるゾルゲル層の組成を要約する。
【0158】
得られた結果を下記表に挙げる。
【0159】
【表3】
【0160】
Δnは、Satinovo(商標)基材とゾルゲル層との屈折率の偏差を示している。
【0161】
図5は、曇り度(右側y軸)及び明度(左側y軸)の変化を、ゾルゲル層の屈折率の関数として示すグラフである。垂直方向の黒線はSatinovo(商標)ガラス基材の屈折率を示している。
【0162】
図6は、曇り度(右側y軸)及び明度(左側y軸)の変化を、Satinovo(商標)基材とゾルゲル層との屈折率偏差の関数として示すグラフである。
【0163】
ゾルゲル層が1.500と1.530の間の屈折率を有する場合、このように被覆された基材の曇り度の値は0.5%未満となる。しかし、曇り度の値だけでは、視覚の優秀さを特徴づけるのに十分ではない。このような理由から明度も測定した。示された屈折率範囲内で事実上一定である曇り度の値とは異なって、明度の値はこの範囲内で、基材屈折率、すなわち1.518の付近のゾルゲル層屈折率の値を中心としたピークを示していることが分かる。より具体的には、0.020未満の屈折率差の場合に良好な結果が得られ、0.015未満、又は0.005未満の屈折率差の場合に優れた結果が得られる。
【0164】
結論を述べるならば、屈折率n1の基材と屈折率n2のゾルゲル層との屈折率差の絶対値は、デザインの良好な透明性を得るためには好ましくは0.020未満、より好ましくは0.015未満、そして更に好ましくは0.013未満である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6