(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371293
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】スイッチドリラクタンスの始動回転子位置評価
(51)【国際特許分類】
H02P 25/08 20160101AFI20180730BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
H02P25/08
H02P9/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-539587(P2015-539587)
(86)(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公表番号】特表2015-533073(P2015-533073A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】US2013056093
(87)【国際公開番号】WO2014070288
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】13/664,623
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェス・グルデス
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】アハーメド・ハリール
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・ニノ・バロン
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−218791(JP,A)
【文献】
特開2003−189669(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(110)と固定子(112)とを有するスイッチドリラクタンス(SR)機械(106)の始動回転子(110)位置を評価する方法(130)であって、
前記SR機械(106)の複数の相のそれぞれにおいて相電流(132)を所定の限界値(134)まで駆動させるステップと、
各相に関連付けられている共通バス(114)電圧に対して、前記相電流(132)が前記所定の限界値(134)まで駆動させる間、積分を行うステップと、
前記積分によって得られた積分値に基づいて各相に対する磁束値を判定するステップと、
前記磁束値に基づいて前記始動回転子(110)位置を判定するステップと、
前記磁束値の相対値に基づき、中間磁束値を判定するステップと、
前記中間磁束値に対応する前記相を判定するステップと、
前記中間磁束値と前記対応相とに基づき、前記始動回転子(110)位置を判定するステップとからなることを特徴とする、方法(130)。
【請求項2】
前記始動回転子(110)位置は、様々な中間磁束値および対応相を始動回転子(110)位置に関連付ける、予めプログラムされたルックアップテーブル(138)に基づいて判定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法(130)。
【請求項3】
各相を介する前記相電流(132)は、同時に駆動され、トルク生成を低減させることを特徴とする、請求項1に記載の方法(130)。
【請求項4】
前記SR機械(106)の始動の際に、並びにSR機械(106)が実質的に低い機械(106)速度である際に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法(130)。
【請求項5】
回転子(110)と固定子(112)とを有するスイッチドリラクタンス(SR)機械(106)に対する始動回転子(110)位置評価システムであって、
前記固定子(112)と共通バス(114)間で電気通信を行う変換回路(116)と、
少なくとも前記変換回路(116)と電気通信を行い、SR機械(106)の複数の相のそれぞれにおいて相電流(132)を所定の限界値(134)まで駆動させ、各相と関連して前記共通バス(114)を横切る電圧を積分し、積分値に基づいて各相に対する磁束値を判定し、前記磁束値に基づいて前記回転子(110)の始動位置を判定するコントローラ(128)とを含み、前記コントローラ(128)は更に、前記磁束値の相対値に基づき、中間磁束値を判定し、前記中間磁束値に対応する前記相を判定し、前記中間磁束値と前記対応相とに基づき、前記始動回転子(110)位置を判定することを特徴とする、システム。
【請求項6】
前記コントローラ(128)は、様々な中間磁束値および対応相を始動回転子(110)位置に関連付けるルックアップテーブル(138)を以って予めプログラムされ、前記コントローラ(128)は、前記ルックアップテーブル(138)から前記始動回転子位置を参照するようになっていることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的にスイッチドリラクタンス機械に関し、より具体的には、スイッチドリラクタンス機械の始動回転子位置を判定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電システム、発電機セットなどの電気機械は、通常、エネルギーの形態を他の形態に転換するために用いられ、運転モードにいて電力を回転力や他の機械動力に転換するか、或いは生成モードにおいて回転力や他の機械動力を電力に転換する。電気駆動装置と共に用いられる様々な装置のうち、スイッチドリラクタンス(SR)機械は、ロバスト、高コスト効率、全体的な高効率性という特徴のため、特に興味の的となっている。電気機器を制御する現存のシステムおよび方法は適切な制御を提供しているが、改善の余地はまだある。
【0003】
他の要因の中でも、停止状態で、或いは実質的な低速状態で行われる、SR機械の固定子に対する回転子の始動位置の正確な検出または評価は、SR機械の性能と効率に非常に重要である。一部の制御計画は、機械的に整列したスピードホイールと、機械の起動に際して固定子に対する回転子の始動位置を検出/判定する対応センサとに依存している。しかしながら、前記の制御計画は、誤差の影響を受けやすいことが明らかになり、従って作動中に相当の効率損失を招くことになる。例えば、センサの歪曲やスピードホイールの機械的不整合などのせいでSR機械の機械回転子位置の検出結果に2°の誤差が生じた場合、全負荷で電気駆動アセンブリの効率が0.5%下がることになる。
【0004】
無センサ制御計画も存在しており、SR機械の電気的特性を用いて始動回転子位置を導出または算出する。しかしながら、センサ基盤計画と同様に、これらの電気駆動アセンブリは、欠陥が多く、誤差の影響を受けやすいのである。特に、派生案が基づいている理論モデルは、実際の実験または使用にまで減らした場合、機械性能および効率の側面から見て所望の効果に対する相当のバラツキをよく招くということが明らかとなった。更に、現存の無センサ制御計画の正確度は、関連の電気駆動装置に通常生じる変化、例えば共通バス電圧または直流リンク電圧などに用意に影響を受けてしまうことが知られている。
【0005】
従って、SR機械の回転子の始動位置を評価する制御システムまたは計画であって、SR機械の作動および性能における効率をより高めるものに対するニーズが生じる。更に、より信頼性の高く、より正確で、DCリンク電圧の変化に影響を受けがたく、実現が容易な始動回転子評価手段が必要であり、トルク生成を最小化して機械の望まぬ動作を実質的に最小化する必要もある。本開示のシステムおよび方法は、これらのニーズを1つ以上充足するためのものである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一様態において、回転子と固定子とを有するスイッチドリラクタンス(SR)機械の始動回転子位置を評価する方法を提供する。該方法は、SR機械の複数の相のそれぞれにおいて相電流を所定の限界値まで駆動させるステップと、各相に関連付けられている共通バス電圧に対して
、相電流が所定の限界値まで駆動させる間、積分を行うステップと、
積分によって得られた積分値に基づいて各相に対する磁束値を判定するステップと、前記磁束値に基づいて前記始動回転子位置を判定するステップと
、磁束値の相対値に基づき、中間磁束値を判定するステップと、中間磁束値に対応する相を判定するステップと、中間磁束値と対応相とに基づき、始動回転子位置を判定するステップとからなる。
【0007】
本開示の他の様態において、回転子と固定子とを有するSR機械用の始動回転子位置評価システムを提供する。該始動回転子位置評価システムは、前記固定子と共通バス間で電気通信を行う変換回路と、少なくとも前記変換回路と電気通信を行うコントローラとを含む。該コントローラは、SR機械の複数の相のそれぞれにおいて相電流を所定の限界値まで駆動させ、各相と関連して前記共通バスを横切る電圧を
相電流が所定の限界値まで移動させる間、積分し、
積分によって得られた積分値に基づいて各相に対する磁束値を判定し、前記磁束値に基づいて前記回転子の始動位置を判定
し、磁束値の相対値に基づいて中間磁束値を判定し、中間磁束値に対応する相を判定し、中間磁束値と対応相とに基づいて始動回転子位置を判定する。
【0008】
本開示の他の様態において、電気駆動装置を提供する。該電気駆動装置は、SR機械、変換回路およびコントローラを含む。SR機械は、一次電源と連結され、固定子に近接して回転可能に位置する回転子を含む。変換回路は、固定子および共通バスと電気的に通信ができるようになっている。コントローラは、少なくとも前記変換回路と電気通信を行い、SR機械の複数の相のそれぞれにおいて相電流を所定の限界値まで駆動させ、各相と関連して前記共通バスを横切る電圧を
相電流が所定の限界値まで移動させる間、積分し、
積分によって得られた積分値に基づいて各相に対する磁束値を判定し、前記磁束値に基づいて前記回転子の始動位置を判定
し、磁束値の相対値に基づいて中間磁束値を判定し、中間磁束値に対応する相を判定し、中間磁束値と対応相とに基づいて始動回転子位置を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、電気駆動装置のスイッチドリラクタンス(SR)機械に適用する始動回転子位置評価システムの実施形態の例示を示す概略図である。
【
図2】
図2は、SR機械の始動回転子位置評価方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の方法の通電ステージおよび遮断ステージにおいて、SR機械の各相における相電流を示すグラフィック図である。
【
図4】
図4は、SR発電機の各相と関連する共通バス電圧または直流(DC)リンク電圧を示すグラフィック図である。
【
図5】
図5は、予めプログラムされているか、および/または導出され、磁束値とSR機械の対応相を関係付け、SR機械の始動回転子位置を可変させる磁束ルックアップマップおよび/またはテーブルを示すグラフィック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の実施形態または特徴、添付図面に図示されている実施例を参照としてより詳しく説明を行う。一般的に、同様または類似の部分に対して、対応の参照符号は全図を通して同じものを用いることにしている。
【0011】
図1は、一次電源102と1つ以上の電気負荷104の間で電力を伝送する電気駆動装置100の例示を概略的に図示している。一次電源102は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、天然ガスエンジン、通常移動式ツールや産業機械と共に用いられる機械的エネルギーの回転式電源のうち1つを含んでも良い。一次電源102は、定置式機械と併用しても良く、例えば風車、水力発電ダム、電池、燃料電池、その他の適合なエネルギー源によって実現されても良い。負荷104は、電気駆動装置100により供給される電力を消費および/または採用する1つ以上の装置または部品を含んでも良い。例えば、産業機械または移動式作業車両に対して、負荷104は、機械の作業ツールに用いられる1つ以上のモータ、および/または車両を動かせる1つ以上のトラクションモータを含んでも良い。一次電源102により供給された機械的エネルギーを、電気駆動装置100により電力に変換し、1つ以上の負荷104が用いられるようにする。逆に、負荷104および/または電気駆動装置100により供給された電力を供給して電源102に機械動力を駆動させても良い。
【0012】
図1の特定の実施形態に図示されているように、電気駆動装置100は、スイッチドリラクタンス(SR)機械106などを介して一次電源102と通信しても良い。本分野では既知の事実であるが、SR機械106は固定子112の内部に回転可能に位置する回転子110を含んでも良い。SR機械106の回転子110は、カップリング108、或いは、他の関連実施形態のように、直接クランク軸、歯車列、油圧回路などを介して、電源102の出力端子に連結されていても良い。SR機械106の固定子112の相巻線または相は、変換回路116を介して電気駆動装置100の共通バス114に電気的に連結されていても良い。
【0013】
作動中の生成モードにおいて、SR機械106の回転子110が電源102により固定子112の内部で回転するにつれ、固定子112の内部で誘起された電流は変換回路116に供給される。変換回路116は、電気信号を順に、共通バス114を介して電気負荷104および/または他の装置に配分する適切な直流(DC)電流へ変換しても良い。共通バス114は、陽極線118、並びに陰極線または接地線120を含んでも良く、共通バス114は、それらの線を渡り、電気駆動アセンブリ100の1つ以上電気並列装置の間でバス電圧またはDCリンク電圧の送信を行う。負荷104は、変換回路116により供給されたDC電圧を、電気駆動装置100の関連付けられている1つ以上の装置を作動させる適切な電気信号に変換する回路を含んでも良い。更に、作動中の運転モードにおいて、或いは電気負荷104が電力のシンクとなったとき、SR機械106は、共通バス114から固定子112に提供された電気信号に応じて回転子110の回転を確立することができても良い。
【0014】
図1に図示されているように、変換回路116は、一連のトランジスタ、またはゲートスイッチ122とダイオード124とを含み、SR機械106の1つ以上の相巻線または相を選択的に稼動させても良い。三相SR機械106は、例えば、SR機械106の三相のそれぞれを選択的に稼動または停止させる6つのスイッチ122および6つのダイオード124を有する変換回路116により駆動されても良い。各スイッチ122は、外部または二次電源126が共通バス114の陽極線および陰極線118、120を横切って電力を供給するに際して、ゲート信号を介して稼動または停止され、電流がそれぞれ稼動状態のスイッチ122またはダイオード124を介して流れるように強制しても良い。
【0015】
また
図1において、電気駆動装置100は、固定子112に対するSR機械106の回転子110の始動位置を評価する制御システム126の例示を備えている。
図1に図示されているように、制御システム126は一般的に、変換回路116と、変換回路116のゲートスイッチ122との通信を行う1つ以上のコントローラ128とからなる。より具体的には、コントローラ128はスイッチ122に電気的に連結され、それによってコントローラ128は、スイッチ122を選択的に係合してSR機械106の各相を介して電流を供給し、更に、SR機械106の作動中に、SR機械106の電気的特性や、共通バス114のバス電圧またはDCリンク電圧をモニタすることができる。
【0016】
コントローラ128は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、電子制御モジュール(ECM)、電子制御ユニット(ECU)、制御システム126の機能を電気的に制御できるその他の適合な手段のうち、1つ以上を用いて実現しても良い。コントローラ128は、固定子112に対する回転子110の回転速度および/または位置、並びに電気駆動装置100の作動特性に基づいて電気駆動装置100を操作する所定のアルゴリズム、或いは命令セットに従って作動しても良い。前記のアルゴリズムまたは命令セットは、本分野で一般液に行われるように、コントローラ128にアクセス可能である、および/またはコントローラ128の内部に位置するメモリに記憶されているか、或いは予めプログラムされていても良い。
【0017】
図2によると、固定子112に対する回転子110の始動位置を評価するアルゴリズムまたは方法130の一例は、例えば、SR機械106の起動ステージ中、および/またはSR機械106の作動機械速度が実質的に低速であるときに、コントローラ128により選択的に実行される良い複数のステップからなる。特に、起動ステージ中に、機械速度は0か、0に近似しているか、或いは電流立ち上がり時間に比べ相対的に低速である。例えば、最初のステップ130−1において、コントローラ128は待機状態を維持しながら、SR106の起動を指示する命令信号または他の顕著な変化をモニタする。このとき、コントローラ128は、機械速度、或いは固定子112に対するSR機械106の回転子110の回転速度を追加的にモニタし、機械速度が実質的に停止状態であるかを判定する。
【0018】
機械速度が十分低いと判断された場合、コントローラ128はステップ130−2に進み、始動回転子位置評価プロセスを初期化し、連結したSR機械106の各相に対する通電を開始する。特に、コントローラ128は、変換回路116のスイッチ122を選択的に作動させ、固体子112の各相を介して電流を駆動する。このような方式で、コントローラ128は、
図3に図示されているように、各相を通す相電流132が均一となり、所定の限界値134に達するまで、SR機械106の相を通電し続けても良い。また、コントローラ128は、SR機械106の各相に対する通電ステップ130−2を同時に初期化し、SR機械106による望まぬトルク生成を最小化しても良い。
【0019】
通電ステップ130−2において、コントローラ128は、追加的に、および/または同時に、ステップ130−3において共通バス114に渡ってバス電圧またはDCリンク電圧136を数学的に積分し、相電流132によりSR機械106の各相を介して導入された磁束の量を特徴付けても良い。より具体的には、例えば
図4に図示されているように、コントローラ128は、SR機械106の各相と関連して、相電流132が所定の限界値134に駆動される時間の間、DCリンク電圧136に対して積分を行う。併行通電ステップ130−2において、各相における相電流132が一度所定の限界値134に到達すれば、コントローラ128は、例えば
図3に図示されているように、ステップ130−4にて、固定子112の各相における相電流132を遮断し、または押し下げ、0、或いは実施的に低い機械速度に戻す。
【0020】
ステップ130−3において行った積分の結果に基づいて、コントローラ128は、ステップ130−5に進み、少なくとも中間磁束値を表すSR機械106の相を判定する。更に、コントローラ128は、ステップ130−3の積分値を用いてSR機械106の各相に対応する磁束値を導出しても良い。例えば、その結果として得た磁束値の相対値を比較することで、コントローラ128は、相対的な高磁束値、中間磁束値、低磁束値を表すSR機械106の各相を関連付けても良く、他の適合な分類手段を用いても良い。そのようにして、コントローラ128は、中間磁束値に対応する磁束値を判定し、それに関連付けられている特定の相を探し出して更なる分析に用いることができる。磁束値の他の領域、例えば高磁束値領域や低磁束値領域を同様に採用して良いが、中間磁束値の方が、高い変化率、つまり他の回転子位置に対する磁束の変化解像度を反映しているため、最高の精度を提供する。
【0021】
更にステップ130−6では、コントローラ128は、ステップ130−5で得た、中間磁束値とSR機械106の対応相とに基づいて、固定子112に対する回転子110の始動位置を評価しても良い。具体的には、コントローラ128は、例えば
図5に図示されているルックアップマップおよび/またはテーブル138により予めプログラムされていても良い。該マップおよび/またはテーブルから、コントローラ128は、積分と比較により前もって判定した中間磁束値と関連相とに対応する回転子位置を判定することができる。図示のとおり、ルックアップテーブル138は、採用されたSR機械106の各相に対して可能な磁束値の所定のマッピングを含んでいる。更に、回転子位置に対して各相が表す磁束の周期的性質のため、各相の一部のみ、例えば周期の半分を予めプログラムし、残りの半分はミラーリングや他のプロセスにより導出して、保存データ量を最小化しても良い。同様に、SR機械106の各個別相に対する磁束値を予めプログラムする代わり、単一相、或いはその一部のみを用意し、それからデータの相転移などにより残りの相に対する対応磁束値を導出しても良い。
【0022】
図5の拡張ルックアップテーブル138は、特定相に対する磁束値が回転子位置に応じて如何に変化するかだけではなく、全ての相に対してそれぞれの磁束値が他の磁束値に対して如何に変化するかも示している。例えば略0°〜60°の範囲内の回転子位置に対して、A相は相対的に高い磁束値を、B相は中間磁束値を、C相は相対的に低い磁束値を表している。しかしながら、略240°〜300°の範囲内の回転子位置に対しては、C相が相対的に高い磁束値を、A相が中間磁束値を、B相が相対的に低い磁束値を表す。従って、
図5に図示されている三相機器では、各相は二つの異なる領域における中間磁束値を表し、1つの領域は上り勾配に対応し、もう1つの領域は下り勾配に対応する。故に、回転子位置の360°窓に対して、マップまたはテーブル138は磁束値の区別可能な領域を6つ有し、コントローラ128はそれらを以って相当の精度で始動回転子位置を評価する。始動回転子位置評価が一回終われば、コントローラ128は、起動ルーチンを終了し、関連付けられたSR機械106を較正するために、また、他の機械の作業や作動を制御する絶対基準値として、評価結果を採択する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
一般的に、前述の開示は、スイッチドリラクタンス(SR)機械や、モータおよび/または発電機として採用可能な他の電気機械と関係のある多様な機器において活用可能である。特に、開示されたシステムおよび方法は、当該分野で一般的に用いられている発電機、作業車両、その他の移動式機械や定置式機械などの電気駆動装置に通常採用されるSR機械のような電気機械により効率的な制御を提供するために用いられても良い。
【0024】
より具体的には、本開示は、部品とコントローラのリソースを最少化できるよう、起動ルーチン中に実質的に低い機械速度にてSR機械の回転子の始動位置を評価する方式として、より単純な無センサ方式を提供している。更に、本開示のシステムおよび方法は、評価後にSR機械をより効率的に作動できるように、精度および信頼性がより高い始動回転子位置の評価を可能とする。本開示は更に、SR機械と関連付けられている電気駆動装置のバス電圧における変化に影響を受けがたい方式で、始動回転子(110)位置を検出する手段を提供する。
【0025】
前述において、説明を目的として特定の実施形態のみを提示しているので、当事者は、上記の説明から変更および改良の方案を容易に導き出せると思われる。変更案は全て、請求項の開示の精神と範疇内に属する同等のものとして見なされる。