特許第6371303号(P6371303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371303
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】目標物質のインビトロ磁気共鳴検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/08 20060101AFI20180730BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20180730BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180730BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20180730BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   G01N24/08 510L
   G01N33/543 541A
   G01N33/53 Y
   G01N33/569 B
   G01N24/08 510Q
   G01N24/00 100B
   G01N24/00 530G
   G01N24/08 510D
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-547053(P2015-547053)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-503159(P2016-503159A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2013076569
(87)【国際公開番号】WO2014095645
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】3886/DEL/2012
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】1301992.2
(32)【優先日】2013年2月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテサン,ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】バラシュブラマニアン,アルン
(72)【発明者】
【氏名】アトレッヤ,チャンダン・ラマスワミィ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッジ,ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ムクハージェ,リティカ・アッパル
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/129281(WO,A1)
【文献】 特表2008−542684(JP,A)
【文献】 特表2010−540929(JP,A)
【文献】 特開2013−228280(JP,A)
【文献】 特開2014−095691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/08
G01N 24/00
G01N 33/53
G01N 33/543
G01N 33/569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なっており、
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から目標物質と結合した磁性ナノ粒子を物理的に分離せずに決定されるものであり
NMRデータをシグナル処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundがT2freeと識別され、
前記シグナル処理は、混合物から得られたNMRデータに二重指数関数フィットを適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む、方法。
【請求項2】
生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するための請求項1記載のインビトロ方法であって、
(a)生体試料を含む試験試料を用意するステップと、
(b)目標物質と結合できる結合剤を含む複数の磁性ナノ粒子を用意するステップと、
(c)試験試料と複数の磁性ナノ粒子とを接触させて、磁性ナノ粒子と試験試料とを含有する混合物を得るステップと、
(d)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なっており、
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から目標物質と結合した磁性ナノ粒子を物理的に分離せずに決定されるものであり、
NMRデータをシグナル処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundがT2freeと識別され、
前記シグナル処理は、混合物から得られたNMRデータに二重指数関数フィットを適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む、方法。
【請求項3】
二重指数関数フィットが式(1)
y=A1*exp−(x/τ1)+A2*exp−(x/τ2)+O(式1)
式中:
A1、A2=ゼロ時における成分1及び2の振幅
τ1、τ2=成分1及び2のT2減衰定数
O=オフセット
を使用して適用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合物が、マルチエコースピンエコーパルスシーケンスに付される、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
混合物中の目標物質の量を定量するステップをさらに含む、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
2boundの値が混合物中の目標物質の量に依存し、(a)混合物中の目標物質の量を、T2boundの値と、様々な濃度の目標物質で測定されたT2bound値の標準プロットと比較することによって決定するか、或いは(b)T2boundの値を、公知の量の目標物質を含む参照試料から得られた1以上の標準値と比較する、請求項記載の方法。
【請求項7】
生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得ステップと、
(b)NMRデータから、試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和値(T2bound)を決定するステップと
を含
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和値(T2free)とは異なっており、
NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundがT2freeと識別され、
前記NMRデータの処理は、混合物から得られたNMRデータに二重指数関数フィットを適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む、方法。
【請求項8】
生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和値(T2bound)を決定するステップと
を含
2boundは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和値(T2free)とは異なっており、
NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundがT2freeと識別され、
前記NMRデータの処理は、混合物から得られたNMRデータに二重指数関数フィットを適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む、方法。
【請求項9】
生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得るするステップと、
(b)NMRデータを処理してT2bound及びT2freeに対応する異なるT2値が存在するかどうかを決定するステップと
を含
2boundは、存在していれば目標物質と結合する磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間であり、T2freeは、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間であり、
前記NMRデータの処理は、混合物から得られたNMRデータに二重指数関数フィットを適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の主題は、磁気共鳴を使用する、生体試料中の目標物質、例えば細胞又は病原体のインビトロ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中の臨床関連物質、例えば細胞及び病原体の検出は、診断分野で重要である。多数の伝統的な検出戦略は、光学的技術に基づいている。しかし、このような技術は多くの場合、悪影響、例えば光の散乱、吸収及び自己蛍光などにより影響を受ける。このような影響の最小化には、記録測定前の試料の広範囲にわたる精製が要求され得る。
【0003】
磁性ナノ粒子を用いる検出戦略は、伝統的な検出方法を上回る独特な有利性を提供する。例えば、生体試料は無視できるほどの磁性バックグラウンドを示し、したがって、磁性ナノ粒子の使用は、試料を重要な前処理ステップに供することなく、試料において非常に感度の高い測定を得る機会を提供する。
【0004】
磁性ナノ粒子は、無機の磁性コア及び生理的条件下で粒子を安定化する生体適合性表面コーティングからなる。適切な界面化学を適用することにより、分子特異性をもたらすために、機能的リガンドをナノ粒子に組み込むことができる。
【0005】
磁性ナノ粒子が外部場に配置される場合、各粒子は局所磁場を作り出し、この局所磁場は磁場の不均一性を増加させる。水分子がナノ粒子の近くに拡散した場合に、磁場の不均一性の増加は、水のプロトンのスピンのコヒーレントな歳差運動(coherent precessions)を摂動する効果を有する。結論として、実際の効果は、磁気共鳴シグナルの変化であり、この変化が、縦(T1、スピン−格子)及び横(T2、スピン−スピン)の緩和時間の短縮として測定される。
【0006】
「T2」という用語は、シグナルの減衰を特徴とするスピン−スピン緩和時間定数を指し、次の式で表すことができる。
【0007】
xy(t)=Mxy(0)e-t/T2
式中、Mxyは、無線周波数(RF)パルスによって倒れた磁化ベクトルの縦成分である。
【0008】
磁性ナノ粒子は、以前から、生体標的、例えば細菌及び哺乳類細胞を検出するために使用されてきている。細胞表面バイオマーカーをタグ付けする標的特異的磁性ナノ粒子が使用され、それによって磁気モーメントがもたらされる。緩和速度R2=1/T2の増加は、標的に結合されたナノ粒子の数に直接比例する(及び表面マーカーの量をさらに示す)。R2の変化及び故にT2の変化は、したがって試料溶液中の細胞の存在を検出するために使用できる(Shao et al.,Beilstein J.Nanonotechnol;(2010);1;pages 142−154)。しかし、先行技術に記載された方法は、未結合の磁性ナノ粒子を除去してアッセイの感度を確実に高めることが要求され、未結合の磁性ナノ粒子の除去は通常濾過により達成される。検出がマイクロMRデバイスを用いることによって達成される場合、このデバイスは、反応流路の末端に、未結合磁性ナノ粒子をフィルター除去するための濾過膜を必要とする(Lee et al.,Angew Chem Int Ed Engl;(2009);48;pages5657−5660)。
【0009】
未結合磁性ナノ粒子を結合磁性ナノ粒子から除去する必要性は、多数の問題を引き起こす。例えば、マイクロフルイディクスネットワーク及び濾過膜を用いることは、MR検出デバイスのコストを引き上げる。追加の濾過ステップは、手ごろな価格の試験技術が特に重要となる発展途上国で特に意味を持つ要素である試料調製のコストもまた引き上げることになる。さらに、追加の分離ステップの必要性は、診断試験を実施する技術者を、有害物質に曝露する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/157256号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料を含む試験試料を用意するステップと、
(b)目標物質と結合できる結合剤を含む複数の磁性ナノ粒子を用意するステップと、
(c)試験試料と複数の磁性ナノ粒子とを接触させて、磁性ナノ粒子と試験試料とを含有する混合物を得るステップと、
(d)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から目標物質と結合した磁性ナノ粒子を物理的に分離せずにT2boundを決定する、方法に関する。
【0012】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から目標物質と結合した磁性ナノ粒子を物理的に分離せずにT2boundを決定する、方法をさらに提供する。
【0013】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得るするステップと、
(b)NMRデータから、試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundをT2freeと識別する、方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundをT2freeと識別する、方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得るするステップと、
(b)NMRデータを処理してT2bound及びT2freeに対応する異なるT2値が存在するかどうかを決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、存在していれば目標物質と結合する磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間であり、T2freeが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間である、方法をさらに提供する。
【0016】
生体試料は、哺乳類被験体、好ましくはヒト、例えば疾患又は感染症を有する疑いのある個体から得られた試料であることが好ましい。目標物質は、例えば細胞又は病原体であり得、疾患又は感染症を示す標的を表し得る。
【0017】
本発明は、したがって、目標物質と結合した磁性ナノ粒子を、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から物理的に分離/濾過する必要のない、磁性ナノ粒子を使用する、生体試料中の目標物質、例えば細胞又は病原体を検出する方法に関する。
【0018】
本発明者らは、T2boundの値が、目標物質(例えば細胞、病原体又は細菌)の濃度に依存し、T2boundを決定できれば、目標物質の量(例えば、数又は濃度)を求めることができるという知見を得た。
【0019】
したがって、本発明は、上記の分離ステップを必要とする先行技術の方法を上回る明確な有利性を有する。例えば、このステップの除去は、試料調製の時間及びコストを削減する。このステップの除去は、試験を実施する技術者を他の有害試料に曝露する可能性もまた低下させ得る。さらに、高度に訓練された人的資源の必要性も排除できる。
【0020】
本発明の一実施形態では、目標物質は、細胞及び/又は病原体、例えば細菌細胞である。
【0021】
別の実施形態では、NMRデータをシグナル処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによって、T2boundをT2freeと識別する。シグナル処理は、好ましくは、二重指数関数フィットを混合物から得られたNMRデータに適用して、T2bound及びT2freeの別々の値を得るステップを含む。
【0022】
別の実施形態では混合物は、スピンエコーパルスシーケンス、特にマルチエコースピンエコーパルスシーケンスに付される。
【0023】
さらに別の実施形態では、本発明に従った方法は、試料又は混合物中の目標物質の量を定量するステップをさらに含む。この実施形態の一態様では、T2boundの値は、混合物中の目標物質の量に依存し、目標物質の量は、T2boundの値と、様々な濃度の目標物質で測定されたT2bound値の標準プロットと比較することによって決定される。さらに、又は代替的に、T2boundの値は、混合物中の目標物質の量に依存し、T2boundの値は、公知の量の目標物質を含む参照試料から得られた1以上の標準値と比較される。
【0024】
別の実施形態では、本発明の方法は、マイクロMRデバイスで実施される。
【0025】
別の実施形態では、磁性ナノ粒子は、結合剤に連結した超常磁性粒子を含む。各磁性粒子は、超常磁性酸化鉄(SPIO)を含むコアを含んでよく、この粒子は結合剤に連結される。
【0026】
別の実施形態では、結合剤は、目標物質に特異的な結合部位を含む抗体又は抗体フラグメントである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】細菌標的化磁気ナノコンジュゲートと細菌との間の反応に関するT2緩和時間対時間を示すプロットである。
図2】濾過ステップを用いる、目標物質の検出過程の略図である。
図3】濾過ステップを必要としない本発明の方法を使用する、目標物質の検出過程の略図である。
図4】本発明に採用可能なマイクロ磁気共鳴ユニットの透視分解立体図である。
図5】本発明に採用可能な、試料及びナノ粒子の混合物を分析する方法のフローダイアグラムである。
図6】本発明に採用可能な、マイクロ磁気共鳴システムの略図である。
図7】マイクロ核MRユニットの分析データを扱うインターフェイスユニットの略図である。
図8】マイクロ核MRユニットで作成される分析データを扱うインターフェイスユニットのための例示的環境である。
図9】マイクロ磁気共鳴ユニットで分析データを扱う方法のフローダイアグラムを例示している。
図10】インターフェイスユニットで分析データを処理する方法のフローダイアグラムを例示している。
図11】一実施形態に従ったマイクロ磁気共鳴システムを使用する、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物を分析する方法のフローダイアグラムを例示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料を含む試験試料を用意するステップと、
(b)目標物質と結合できる結合剤を含む複数の磁性ナノ粒子を用意するステップと、
(c)試験試料と複数の磁性ナノ粒子とを接触させて、磁性ナノ粒子と試験試料とを含有する混合物を得るステップと、
(d)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、T2boundが、目標物質と結合した磁性ナノ粒子が、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から物理的に分離されずに決定される方法を提供する。
【0029】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、
2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、T2boundが、目標物質と結合した磁性ナノ粒子が、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子から物理的に分離されずに決定される方法をさらに提供する。
【0030】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得るするステップと、
(b)NMRデータから、試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、
2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundをT2freeと識別する、方法をさらに提供する。
【0031】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を磁気共鳴によって検出するためのインビトロ方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物を用意するステップと、
(b)試料中の目標物質と結合した磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2bound)を決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間(T2free)とは異なり、NMRデータを処理してT2bound及びT2freeの別々の値を得ることによってT2boundをT2freeと識別する、方法をさらに提供する。
【0032】
本発明は、生体試料中の目標物質の存在を検出するための方法であって、
(a)生体試料と複数の磁性ナノ粒子とを含む混合物であって、生体試料中に目標物質が存在する場合に目標物質と結合できる結合剤を磁性ナノ粒子が含んでいる混合物からNMRデータを得るするステップと、
(b)NMRデータを処理してT2bound及びT2freeに対応する異なるT2値が存在するかどうかを決定するステップと
を含んでいて、T2boundが、存在していれば目標物質と結合する磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間であり、T2freeが、目標物質と結合していない磁性ナノ粒子に対応するT2緩和時間である、方法をさらに提供する。
【0033】
磁性ナノ粒子が外部場に配置される場合、各粒子は局所磁場を作り出し、この局所磁場は磁場の不均一性を増加させる。水分子がナノ粒子の近くに拡散した場合に、磁場の不均一性の増加は、水のプロトンのスピンのコヒーレントな歳差運動(coherent precession)を摂動する効果を有する。結論として、実際の効果は、磁気共鳴シグナルの変化であり、この変化が、縦(T1、スピン−格子)及び横(T2、スピン−スピン)の緩和時間の短縮として測定される。
【0034】
本発明者らは、磁性ナノ粒子が、目標物質、例えば細胞に結合された場合、磁性ナノ粒子に関連するT2緩和値が低下することを特定した。より具体的には、本発明者らは、目標物質、例えば細胞型に特異的な結合剤を含む磁性ナノ粒子が、目標物質(例えば標的細胞)の存在下でインキュベートされた場合、2つのT2測定値を得ることが可能であることを実証した。第1のT2値(通常低い方の値)は、物質に結合されないナノ粒子に関連するT2値(本明細書ではT2freeと称される)に対応する。第2のT2値(通常高い方の値)は、物質に結合されたナノ粒子に関連するT2値(本明細書ではT2boundと称される)に対応する。
【0035】
本発明者らは、目標物質(例えば細胞)及び磁性ナノ粒子の混合物中のT2free及びT2boundの値を、目標物質(例えば細胞)に結合されないナノ粒子を物理的に分離することなく、測定可能であることをさらに実証した。これは、混合物からのNMRデータを処理してT2free及びT2bound両方の値を得ることによって達成可能である。処理ステップは、好ましくは、二重指数関数フィットを、混合物から得られたNMRデータに適用するステップを含む。二重指数関数フィットは、2つの異なるT2値が、NMR測定実験に付された混合物中に存在し得るという事実を満たす。
【0036】
2free及びT2boundの値を求めるのに使用できる二重指数関数フィット式の例を、以下の式(1)に示す。
【0037】
y=A1*exp−(x/τ1)+A2*exp−(x/τ2)+O (式1)
式中、
A1、A2=ゼロ時における成分1及び2の振幅
τ1、τ2=成分1及び2のT2減衰定数
O=オフセット。
【0038】
通常、このような非線形フィットは、例えば、レーベンバーグ−マーカート(Levenberg−Marquardt)の非線形最小二乗フィットアルゴリズムを使用する、反復様式で実施される。反復過程は、未知数の推定により開始される。この場合、未知数は、相対振幅A1、A2、緩和時間τ1及びτ2並びにオフセットOである。これらのすべてがアルゴリズムにより決定され、このアルゴリズムは、その反復過程の停止基準を有する。このようなフィットアルゴリズムは、大部分の市販の緩和時間測定機(relaxometers)で標準ルーチンとして利用可能である。
【0039】
2値のNMR決定において、T2値は、試料に対する適切なパルスシーケンスの適用の間に取得されたNMRシグナルを使用して決定することができる。好ましい実施形態では、シーケンスは、マルチエコースピンエコーパルスシーケンスである。
【0040】
適切なシーケンスの例は、カー−パーセル−マイボーム−ギル(Carr−Purcell−Meiboom−Gill)(CPMG)スピンエコーシーケンスである。
【0041】
{RD−900−tau−[(18090−tau−)DE(18090−tau−)asd−tau−]NNS
式中、RDはリサイクルディレイであり、tauはディレイ間隔であり、DEはエコーをサンプリングする前のダミーエコーの数であり、Nは収集される点の数であり、NSはシグナルの平均値算出のためのスキャンの数であり、「asd」は単一データの取得点を示す。
【0042】
パラメーターの例は、RD=6秒;tau=5ミリ秒、DE=0、N=700、NS=8である。ただし、本発明でT2値を決定することができる他のシーケンスを当業者が容易に決定できることは明らかであろう。
【0043】
本発明者らは、T2boundの値が、目標物質(例えば、病原体又は細菌)の濃度に依存するという知見を得た。本発明は、したがって、試料中に存在し得る目標物質の量(例えば、細胞、病原体又は細菌の数又は濃度)を、未結合のナノコンジュゲートを濾過する必要なく、定量するためにさらに使用される。
【0044】
したがって、一実施形態では、T2boundの値は、試験試料/混合物中の目標物質の量に依存し、試験試料中の目標物質の量は、T2boundの値を、様々な濃度の目標物質で測定されたT2bound値の標準プロットと比較することによって決定される。
【0045】
別の実施形態では、T2boundの値は、試料中の目標物質の量に依存し、T2boundの値は、既知の量の目標物質を含む参照試料から得られた1以上の標準値と比較される。
【0046】
本発明で得られる利点は、図2に示す概略ワークフローと図3に示す概略ワークフローとを比較することによって理解することができる。図2は、濾過ステップを用いる目標物質の検出過程の略図である。図3は、濾過ステップが必要条件でない、本発明の方法を使用する目標物質の検出過程の略図である。
【0047】
本出願を通して、T2値の決定について説明する。しかし、T2=1/R2(式中、R2は緩和速度定数である)なので、本発明の方法は、R2を決定することによって実施可能であることは理解されると思われる。したがって、R2値(例えば、R2bound及びR2free)を決定することによる試料中の目標物質の存在及び/又は量の決定は、R2がT2の逆数なので、本発明の技術的範囲に属する。例えば、R2値の決定は、式1においてT2定数を1/R2に置き換えることによってなし得る。したがって、T2値の決定は、対応するR2値の決定であるとみなすこともでき、逆もまた同じであることが言えるので、R2bound及びR2freeの値の検出による目標物質の存在の検出は、本発明の技術的範囲に属する。
【0048】
本発明に用いることができる磁性ナノ粒子は、当技術分野で周知である。ナノ粒子としては、限定するものではないが、磁性ナノ粒子又は超常磁性ナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、MRI及び他のNMR緩和時間測定機を使用して測定可能な隣接分子のスピン−スピン緩和時間を調節する近接センサーとして作用することができる。ナノ粒子は、適切に物理的及び化学的に安定であり、生体適合性及び環境的に安全である。
【0049】
磁性ナノ粒子は、理想的には強力な磁気モーメントを有し、著しいT2変化を誘導する一方で、自発的磁性集合(magnetic aggregation)を避けるような超常磁性挙動を示さなければならない。さらに、ナノ粒子は、水溶液における集合を防止するために適切なコーティングにより被覆されなければならない。適切なコーティングは、通常親水性及び生体適合性である。コーティングは、好ましくは、1種以上の結合剤、例えば抗体、DNA、タンパク質、ペプチド又は小分子を付着させる手段を提供するはずである。
【0050】
磁性ナノ粒子の例としては、架橋酸化鉄(CLIO)ナノ粒子、アミノ化CLIO(アミノ−CLIO)ナノ粒子、マンガンがドープされた酸化鉄磁性ナノ粒子、超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子及び元素鉄のコア/フェライトシェルのナノ粒子が挙げられる。このようなナノ粒子は、上記のように適切に被覆可能である。磁性ナノ粒子及びインビトロの磁気共鳴検出におけるこれらの使用の例は、表題「Magnetic Nanoparticle Biosensors」、Jered B.Haun,Tae−Jong Yoon,Hakho Lee 及びRalph Weissleder著(Wiley Interdisciplinary Reviews刊:Nanomedicine and Nanobiotechnology;Vol.2;Issue3;May/June2010;Pages291−304)の出版物に提供されている。その他の例としては、例えば、表題「Magnetic Resonance for In−Vitro Medical Diagnostics:Superparamagnetic Nanoparticle−Based Magnetic Relaxation Switches」、Vasiliki Demas及びThomas J Lowery著(New Journal of Physics刊:Volume13,Issue2(2011),pp.025005)が提供される。
【0051】
ナノ粒子を目標物質と結合させるために、ナノ粒子は、標識又は目標物質(例えば、細胞、病原体又は細菌)に特異的な結合剤と連結される。結合剤の特性及び構造は、検出される標的の特性に依存する。このような結合剤の例としては、目標物質の標的部分を認識又はこれに結合する抗体;DNA−もしくはRNA−標的に相補的なオリゴヌクレオチド又はDNA配列;例えば標的のタンパク質、細菌、ウイルス、酵母もしくは真菌に結合するDNA−もしくはRNA−アプタマー;例えば標的のタンパク質、細菌、ウイルス、酵母もしくは真菌に結合するタンパク質もしくはペプチド;標的に対する結合の強化を保有すると思われる、及び/又は環境的安定性の改善を保有する非天然アミノ酸を含むペプチド;標的に結合可能な小分子もしくは小分子の組合せが挙げられる。この部分は、共有結合又は非共有結合により、ナノ粒子(例えば、ナノ粒子のシェル)と連結可能である。この部分は、適切な官能基によりナノ粒子と連結可能である。適切な官能基としては、−O−、−S−、−SS−、−NH−、−NHC(O)−、−(O)CNH−、−NHC(O)(CH2nC(O)−、−(O)C(CH2nC(O)NH−、−NHC(O)(CH2nC(O)NH−、−C(O)O−、−OC(O)−、−NHNH−、−C(O)S−、−SC(O)−、−OC(O)(CH2n(O)−、−O(CH2nC(O)O−、−OC(O)(CH2nC(O)−、−C(O)(CH2nC(O)O−、−C(O)(CH2nC(O)−、−NH(CH2nC(O)−、−C(O)(CH2nNH−、−O(CH2nC(O)−、−C(O)(CH2nO−、−S(CH2nC(O)−、−C(O)(CH2nS−、−NH(CH2n−、−(CH2nNH−、−O(CH2n−、−(CH2nO−、−S(CH2n−又は−(CH2nS−、(式中、nはそれぞれ、1〜100(例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99)であってよい)が挙げられる。結合剤とナノ粒子との連結方法は、当技術分野で周知であり、この例は、上述の出版物に提供されている。その他の例としては、例えば米国特許第7829350号が提供される。
【0052】
好ましい実施形態では、結合剤は抗体である。「抗体」という用語は、天然又は部分的もしくは全体的に合成されたかに関わらず、免疫グロブリンを表す。抗体は、モノクローナルであっても、又はポリクローナルであってもよく、当技術分野で周知の技術、例えば、宿主の免疫化及び血清(ポリクローナル)の回収によって;又は連続ハイブリッド細胞系の調製及び分泌タンパク質の回収(モノクローナル)によって、又はヌクレオチド配列もしくはこれらの突然変異型のクローン化及び発現、少なくとも天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列のコード化により調製可能である。「抗体」という用語は、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチド又はタンパク質もまた包含する。抗体抗原結合部位を含む抗体フラグメントとしては、限定するものではないが、Fab、Fab’、Fab’−SH、scFv、Fv、dAb、Fdなどの分子及びダイアボディが挙げられる。
【0053】
目標物質は、試験される生体試料中に存在し得る物質であり、目標物質の存在の知識は、例えば臨床診断への到達に望ましい物質である。目標物質の例としては、細胞(例えば、対象となる特定のバイオマーカーを発現する細胞)、細菌、病原体、ウイルス、寄生生物、酵母又は真菌が挙げられる。
【0054】
本発明により検出可能な細菌の例としては、グラム陽性細菌、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又は枯草菌(Bacillus subtilis);グラム陰性細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);並びに抗酸菌、例えば、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などのマイコバクテリウムの株が挙げられる。
【0055】
本発明により検出可能な病原体の例としては、細菌、真菌、寄生生物、酵母及びウイルスが挙げられる。
【0056】
本発明により検出可能な細胞の例としては、細菌、腫瘍細胞、幹細胞、哺乳類細胞及び他の細胞が挙げられる。
【0057】
磁性ナノ粒子上の結合剤は、対象となる目標物質に特異的に結合可能である。結合剤は、通常目標物質の標的部位に結合するものである。標的部位は、例えば、目標物質を特徴付けるバイオマーカーであり得る。
【0058】
標的部位は、標的タンパク質を含んでよい。本発明の一実施形態に従った標的タンパク質は、目標物質の表面に存在してよい。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、生体試料の表面に本質的に存在しないこともあり、生体試料は、標的タンパク質を表面で利用可能にするように処理されなければならないこともある。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、組織中、細胞表面又は細胞内のいずれかに存在し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、標的部位(例えばタンパク質)は、生体試料中の目標物質の有無についての情報を提供することができる。別の実施形態では、標的タンパク質は、生体試料の状態についての情報を提供することができる。例えば、本明細書に開示の方法を標的タンパク質の検出に使用できる場合、標的タンパク質は、異なる細胞型の比較、異なる発達段階の比較、疾患又は異常の存在の検出、又は疾患又は異常の型の決定を手助けできる。
【0060】
適切な標的タンパク質は、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディ又はアプタマー)、酵素、リガンド、受容体、抗原又はハプテンの1つ以上を含み得る。前述の標的タンパク質の1つ以上は、特定の細胞の特徴であり得、一方、他の標的タンパク質は、特定の疾患又は病態に関連することがある。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法を使用して、検出及び分析可能な、試料中の目標物質(例えば、細胞、細菌又は病原体)に存在する標的タンパク質としては、限定するものではないが、予後兆候マーカー、予測マーカー、ホルモンもしくはホルモン受容体、リンパ球、腫瘍マーカー、細胞周期関連マーカー、神経組織及び腫瘍マーカー又はクラスター分化マーカーを挙げることができる。
【0061】
予後兆候マーカーの適切な例としては、酵素標的、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異的エノラーゼ、プロトンATPアーゼ−2又は酸性ホスファターゼを挙げることができる。予後兆候タンパク質又は遺伝子マーカーの他の例としては、Ki67、サイクリンE、p53、cMetが挙げられる。
【0062】
予測マーカー(薬剤応答)の適切な例としては、タンパク質又は遺伝子標的、例えば、EGFR、Her2、ALKを挙げることができる。
【0063】
ホルモン又はホルモン受容体の適切な例としては、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、gC1q−R/p33補体受容体、IL−2受容体、p75ニューロトロフィン受容体、PTH受容体、甲状腺ホルモン受容体又はインスリン受容体を挙げることができる。
【0064】
リンパ球の適切な例としては、アルファ−1−抗キモトリプシン、アルファ−1−抗トリプシン、B細胞標的、bcl−2、bcl−6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄標的)、BM2(骨髄標的)、ガレクチン−3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球デフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、カッパ軽鎖、カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージ標的、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、形質細胞標的、分泌型白血球プロテアーゼインヒビター、T細胞抗原受容体(JOVI1)、T細胞抗原受容体(JOVI3)、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ又は非クラスター化B細胞標的を挙げることができる。
【0065】
腫瘍マーカーの適切な例としては、アルファ胎児タンパク質、アポリポタンパク質D、BAG−1(RAP46タンパク質)、CA19−9(シアリルルイスa(sialyl lewisa))、CA50(癌腫関連ムチン抗原)、CA125(卵巣癌抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラスタリン(アポリポタンパク質J)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異的抗原、粗大嚢胞性疾患内容液タンパク質(gross cystic disease fluid protein)−15、肝細胞特異的抗原、ヘレグリン、ヒト胃ムチン、ヒト乳脂肪球、MAGE−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ、メランA、メラノーマ標的(HMB45)、メソテリン、メタロチオネイン、小眼球症転写因子(MITF)、Muc−1コア糖タンパク質、Muc−1糖タンパク質、Muc−2糖タンパク質、Muc−5AC糖タンパク質、Muc−6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf−3(横紋筋肉腫標的)、Myf−4(横紋筋肉腫標的)、MyoD1(横紋筋肉腫標的)、ミオグロブリン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞癌腫標的、小腸ムチン抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子−1,マトリックスメタロプロテイナーゼ1の組織インヒビター、マトリックスメタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター、チロシナーゼ、チロシナーゼ−関連タンパク質−1、ビリン又はヴィルブラント因子を挙げることができる。
【0066】
細胞周期関連マーカーの適切な例としては、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子−1、bcl−w、bcl−x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk−活性化キナーゼ)、細胞アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ−3)、CPP32(カスパーゼ−3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N末端)、Fas(CD95)、Fas関連デスドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen−1、IPO−38、Mcl−1、ミニ染色体維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、増殖細胞核抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat1アルファ、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIアルファ、トポイソメラーゼIIIアルファ又はトポイソメラーゼIIを挙げることができる。
【0067】
クラスター分化マーカーの適切な例としては、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79A、CD79B、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166及びTCR−ゼータを挙げることができる。
【0068】
他の適切な標的タンパク質としては、セントロメアタンパク質−F(CENP−F)、ギアンチン(giantin)、インボルクリン、ラミンA&C(XB10)、LAP−70、ムチン、核膜孔複合体タンパク質、p180ラメラ体タンパク質、ran、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2−neu、P53、S100、上皮標的抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA、Ki67、サイトケラチン、PI3K、cMyc又はMAPKが挙げられる。
【0069】
さらに他の適切な標的タンパク質としては、Her2/neu(乳癌及び胃癌で過剰発現される表皮成長因子、モノクローナル抗体による療法が腫瘍成長を遅延させる);EGF−R/erbB(表皮成長因子受容体);ER(一部の乳癌腫瘍の成長に必要なエストロゲン受容体、核に局在し、陽性患者でエストロゲンを制限する療法を決定するためにISHにより検出される);PR(プロゲステロン受容体は、DNAと結合するホルモンである);AR(アンドロゲン受容体は、アンドロゲン依存性腫瘍成長に関与する);β−カテニン(細胞膜から核へ移行するがんの発現遺伝子であり、細胞接着及び潜在遺伝子調節タンパク質としての両方で機能する);ホスホ−β−カテニン:β−カテニンのリン酸化型、(サイトゾルで分解して核へは移行しない);GSK3β(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3βタンパク質、Wnt経路でβ−カテニンをリン酸化して、プロテアソームで急速に分解するために、ホスホ−β−カテニンへとマーキングする);PKCβ(受容体にカップリングされたメディエーターG−タンパク質);NFΚβ(核に移行した際の、炎症のための核内因子カッパBマーカー);VEGF(血管新生に関連する血管内皮成長因子);E−カドヘリン(上皮細胞で発現される細胞と細胞との相互作用分子、この機能は、上皮癌で喪失される);c−met(チロシンキナーゼ受容体)が挙げられる。
【0070】
ある実施形態では、目標物質の標的部位は多糖類抗原である。
【0071】
試験試料は、生体試料を含む、又はこれからなってよい。本発明の一実施形態に従った生体試料は、好ましくは流体である。生体試料は、好ましくは生物被験体から得られた試料、例えば、インビボ又はインビトロで得られた生体組織又は生体液起源の試料である。生体試料の適切な例としては、限定するものではないが、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ液、痰、精液、尿、便、涙、針吸引検体、皮膚の外部切片、呼吸器、腸及び尿生殖路の腫瘍、臓器、細胞培養液又は固体組織切片を挙げることができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、そのままで、すなわち、対象となる目標物質の採取及び/又は単離をせずに分析可能である。代替の実施形態では、試料は、磁性ナノ粒子との混合前に、例えば、分析前の試料の採取によって、又は適切なバッファー又は安定化剤の添加によって、処理されてもよい。
【0072】
生体試料は、それらの物理的状態に関わらず、前述の試料のいずれかを含んでよい。いくつかの実施形態では、生体試料は、本来は試料に天然に混合されない化合物、例えば、保存料、抗凝固剤、バッファー、固定剤、栄養、抗生物質などを含んでもよい。
【0073】
好ましい実施形態では、生体試料は、血液、痰又は任意の体液又は細針吸引検体(FNA)を含む。
【0074】
本発明の方法は、磁気共鳴(MR)デバイスを使用して実施される。磁気共鳴は、MRIスキャナー、NMR分光分析及び/又はNMR緩和時間測定法を使用して検出可能である。これらの技術はすべて、スピン−スピン緩和時間(T2)を測定するために使用されている。臨床用及び実験用MRIスキャナーは、超電導磁石により発生される強力な磁場を用いる。しかし、MRIスキャナーは、高い運用コスト、嵩高な機器サイズ及び大容量の試料の必要性に悩まされる。ベンチトップ緩和時間測定機は、ポイントオブケア診断に関するより魅力的な選択肢を提供した(例えば、Haun et al.,Nanomedicine and Nanobiotechnology;vol.2,issue3,May/June 2010,pages291−304;並びにPerez et al,Nat.Biotechnol.2002,20:pages816−820を参照されたい)。ベンチトップシステムは、より低いNMR周波数(100kHz−50MHz)で動作し、磁場発生用の永久低磁場磁石を装備している。
【0075】
近年、NMR検出システムに基づくチップ(マイクロMRと呼ばれる)が開発され、より少ない試料体積についての、多重診断MR測定が実施されている(例えば、Haun et al.,Nanomedicine and Nanobiotechnology;vol.2,issue3,May/June 2010,pages291−304;Lee et al,Nat.Med.2008,14:pages869−874;Lee et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2009,48:pages5657−5660;並びにLee et al,Angew.Chem.Int.Ed Engl 2009,48:pages5657−5660を参照されたい)。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、マイクロMRデバイスを使用して実施される。マイクロMRデバイスは、好ましくは無線周波数(RF)励起及びNMRシグナル検出の両方のための1以上のマイクロコイル、NMR分光光度計及びマイクロ流体ネットワークを含む。
【0077】
図4は、一実施形態に従った、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物を分析するための、マイクロ核磁気共鳴(MR)ユニットの透視分解立体図の略図である。マイクロ核MRユニット102は、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物を受け取るように構成されている。ナノ粒子は、マイクロ核MRユニット、例えばマイクロ核MRユニット102で磁場に付された場合に磁化される。ナノ粒子の磁気モーメントは、磁力線に沿って並び、磁束を生み出す。各ナノ粒子は、磁気双極子を生み出し、磁気双極子は磁場勾配の形成をもたらす。磁場勾配は磁場の不均一性を発生し、この不均一性は分子における隣接するプロトンの核スピンの歳差運動周波数を変化させる。これは、磁気共鳴画像化又は核磁気共鳴技術により測定可能な、磁気共鳴シグナルの変化をもたらす。測定される磁気共鳴シグナルは、縦又はスピン−格子緩和時間T1及び横スピン−スピン緩和時間T2の短縮としてみなすことができる。ナノ粒子の磁気緩和特性は、粒子の緩和率及びナノ粒子の環境、例えば、ナノ粒子が、細胞/細菌/病原体などの目標物質に結合しているか、していないかに依存し、この環境は横緩和(R2=1/T2)に影響を与え得る。
【0078】
マイクロ核MRユニット102は、磁石104、マイクロMRプローブ106、ケーシング108及びコントロールユニット110を含む。マイクロ核MRユニット102は統合され、混合物の分析を実行するためのポータブルデバイスとして使用することができる。マイクロ核MRユニット102は、小型化NMRシステム要素、例えば、磁石104、マイクロMRプローブ106、ケーシング108及びコントロールユニット110の統合のため、サイズを縮小することができる。磁石104は、永久磁石又はポータブル永久磁石であってよい。一実施形態では、磁石104は、より高い磁場を生み出すための複数の磁石のアセンブリであってよい。磁石104は、マイクロMRプローブ106の周りに配置されてよい。一実施形態では、磁石104は経路112を含むことができ、この経路を介して、マイクロMRプローブ106を、マイクロMRプローブ106の周りに磁石104が位置するように配置することができる。しかし、磁石104は、マイクロMRプローブ106の周り、又はこれに隣接して位置するような任意の他の構成を有することも企図される。マイクロMRプローブ106は、マイクロ流体用導管116の周りにマイクロコイル114が位置することによって製作されてもよい。マイクロコイル114は、マイクロコイル又は多重マイクロコイルの配列、例えばソレノイドコイルであってもよい。例えば、マイクロコイル114は、ポリエチレンチューブの周りに極細銅線を巻き付け、その後ポリマー材料、例えば、ポリジメチルシロキサンに浸漬することによって、製作することができる。マイクロMRプローブ106は小型化形態であってよく、したがって、マイクロMRチップとして提示することができる。マイクロ核MRユニット102は、高安定性永久磁石を、内径20〜500ミクロンの範囲を有するマイクロMRコイルと組合せて含み、NMR検出の感度を、卓上分光計と比較して数桁上昇させる。他の構成を有するマイクロコイルを、マイクロMRプローブ106で使用できることも想定可能である。マイクロ流体用導管116は、容器118をその中に受けるように構成される。少なくとも1種の試料及びナノ粒子を、容器118内に導入することができる。少なくとも1種の試料が、磁性ナノ粒子と混合され、混合物120が、マイクロ流体用導管116内で形成される。マイクロ流体用導管116は、感知工程において、流体試料の操作、磁性ナノ粒子と試料との再現可能な混合、並列感知のための異なるコイルへのアリコートの分配及び所与のマイクロコイルの最も感度の高い領域への試料の収容を含む重要な機能を提供する。
【0079】
磁石104は、マイクロMRプローブ106の周りに磁場を発生させる。目標物質(例えば、細胞)が存在する場合、ナノ粒子とのクラスターが形成される。流体試料中の、例えば標的細胞の存在の検出は、ベースアナライト(すなわち、未反応のナノ粒子)のT2(すなわち、スピン−スピン緩和時間)から、流体試料が(ナノ粒子アナライトの反応が完了後)特定の標的を含有する場合のT2への変化の現象による。基本的に、励起パルス後、その後観察される横方向の磁化は、特徴的な指数関数的「自由誘導減衰」(FID)で減衰する。これは、スピン−スピン緩和及び磁場の不均一性の存在による緩和の組合せを含む。単一励起パルスの後にリフォーカスパルスの束が加えられた場合、「スピンエコー」が得られる。これらのスピンエコーは、R2(スピン−スピン緩和速度)と呼ばれる、非常に遅い指数関数的速度で減衰する。
【0080】
ベースアナライトは基本的に、目標物質(例えば、バイオマーカー分子)と結合する特定の薬剤により活性化されている、非クラスター化ナノ粒子を含む。標的細胞の場合に、これらのナノ粒子は、例えば、細胞の細胞膜で結合部位と結合し、それによって、互いに接近したナノ粒子がクラスター化される。結合されたナノ粒子に対応する緩和時間(T2)は、未結合のナノ粒子に対応する緩和時間(T2)とは異なる。マイクロコイル114は、コントロールユニット110を介して所定の時間励起され、シグナル、例えば、無線周波数(RF)シグナルを発生し、混合物に送信する。その後、混合物は、時間と共に減衰するNMRシグナルを発生する。したがって、結合されたナノ粒子対未結合のナノ粒子に関するこの緩和速度の変化は、上述のような試料及びナノ粒子の混合物中の目標物質(例えば、細胞)の存在を検出するために使用可能である。高緩和率のナノ粒子の使用は、流体試料中の極めて少数の標的細胞の検出を可能にし、検査を非常に感度の高いものにする。混合物中の標的細胞及びアナライトの検出された存在が記録される。上で詳細に記載したように、本発明の方法は、同じ試料中のT2bound及びT2freeの両方を検出するために使用でき、さらに、試料中の目標物質の量を定量するために使用可能である。
【0081】
NMRシグナルは、混合物に関連する分析データを含む。NMRシグナルは、コントロールユニット110により測定される。コントロールユニット110は、コントロールユニット110のすべての構成要素の全動作をコントロールする、マイクロコントローラ122を含む。マイクロコントローラ122は、コントロールユニット110で受信するデータを処理し、データ転送及びユーザーコントロールに関する外部端末と通信する。混合物への送信に必要なRFシグナルは発生装置124(すなわち、RF発生装置)により、マイクロコントローラ122からの命令に基づき発生される。RFシグナルは、その後、トランシーバ126、例えば、RFトランシーバにより送信される。RFシグナルは、トランシーバ126中に存在する電圧コントローラスイッチを使用して変調され、NMRシグナルを測定するためのパルスシーケンスを送信することができる。NMRシグナルは、トランシーバ126で受信され、ヘテロダイン検出のために処理される。ヘテロダイン検出の工程は、低ノイズ増幅器における増幅、その後のミキサーによる可聴周波数への周波数下降変換を伴う。その後、下降変換されたシグナルは、低域フィルター及び増幅器により整えられる。これらの下降変換されたシグナルは、データ取得ユニット128に送られ、デジタル化される。データを帯域フィルターにかけ、(高忠実度、高サンプリング速度のアナログ−デジタル変換機を使用して)NMR周波数で直接サンプリングすることも可能である。データ取得ユニット128は、アナログ−デジタル変換機(ADC)を含む。ADCは、シグナルをデジタル化シグナルにさらに変換し、このようにしてADCから得られたシグナルが記憶される。マイクロコントローラ122は、デジタル化シグナルを処理し、分析データを得、コンピュータデバイスなどの外部端末に転送する。一実施形態では、コントロールユニット110は、集積回路(IC)チップに統合されてもよい。少量の流体試料から、及び磁石104により引き起こされる不均一性によるシグナルの急速な減衰の際に、低レベルのNMRシグナルが存在する場合、NMR測定を支持するためにICチップを構成することもできる。
【0082】
さらに、マイクロ核MRユニット102のケーシング108は、磁石104及びマイクロMRプローブ106を覆い、外部環境への曝露からこれらの構成要素を保護するために使用可能である。
【0083】
図5は、少なくとも1種の試験及びナノ粒子の混合物を、一実施形態に従って分析する方法のフローダイアグラムを例示している。ブロック200で、試験試料及びナノ粒子が容器に導入される。容器は、マイクロ核MRユニットのマイクロMRプローブ内に受け取られる。ブロック202で、少なくとも1種の試験試料及びナノ粒子が、容器で混合される。ブロック204で、マイクロMRプローブに隣接して位置する磁石がその後、容器を保持するマイクロMRプローブの周りに磁場を作り出すために使用される。ブロック206で、ナノ粒子のクラスターが、流体試料中の目標物質(例えば、細胞)との結合により形成される。マイクロコイルが、その後、RFシグナルの発生のためにコントロールユニットを介して励起される。ブロック208で、これらのRFシグナルは混合物に送信される。ブロック210で、次いで、スピン−スピン緩和時間T2bound及びT2free(又は、代替として、対応する緩和速度R2、R2=1/T2)が測定され、混合物中の目標物質(例えば、細胞)の存在が検出される。検出された目標物質(例えば、細胞)の存在が、その後ブロック212で記録され、後に使用される。
【0084】
マイクロ核MRユニットで実施される分析は、本来予備的なものであり、例えば、結核の分析又は細胞スクリーニングを含み得る。分析データは、その他の使用のための場所に記憶され、追加の検査のために取り出される、又は他の試験結果及び/又はデータと組合せる必要があると思われる。図6は、一実施形態に従ったインターフェイスユニットと通信する、マイクロ核MRユニットを含むマイクロ磁気共鳴システムの略図である。得られた分析データは、インターフェイスユニット302により受信される。インターフェイスユニット302は、ネットワーク例えば、有線又は無線のネットワークを通じて、マイクロ核MRユニット102と通信可能である。無線ネットワークとしては、限定するものではないが、Bluetooth(登録商標)無線ネットワーク又はWi−Fi(登録商標)ネットワークが挙げられる。別の例では、分析データは、ユニバーサルシリアルバスを使用して、インターフェイスユニット302に転送可能である。インターフェイスユニット302は、分析データを処理するために構成可能である。NMRシグナルを介して受信された分析データは、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物に対して実施された分析試験に関連する生のデジタル化データであり得る。インターフェイスユニット302は、分析データをインターフェイスユニット302のユーザーに提示するために、分析データを処理する。分析データは、分析データをユーザーにディスプレイするために処理される。ユーザーは、例えば、医療関係者、医師及び様々な応用に関係する分析者であってよい。分析データは、例えば、血中脂質プロファイルの形態でディスプレイされても、又は血液試料中の様々な生体標的もしくは生体分子の存在もしくはレベルのディスプレイであってもよい。分析データは、デジタル値及びグラフの形態でディスプレイ可能である。さらに、分析データは、インターフェイスユニット302により、分析データが他の情報システムに統合可能なように、ユニバーサル形態又は標準形態又は互換性のある形態に処理することができる。
【0085】
処理された分析データは、次いで、データ記憶システム304に転送することができる。インターフェイスユニット302は、ネットワークを通じてデータ記憶システム304と通信する。ネットワークは、有線又は無線ネットワークであってよい。無線ネットワークとしては、限定するものではないが、Wide Area Network(WAN)、Wide Local Area Network(WLAN)、Local Area Network(LAN)、Wireless Metropolitan Area Network(Wireless MAN)及びセルラー又はモバイルネットワークを挙げることができる。データ記憶システム304は、処理された分析データを受信及び記憶する。処理された分析データは、次いで、必要に応じて取り出すことができる。別の例では、処理された分析データは、追加の検査のために別のコンピュータデバイスに転送され、他の医療的診断試験を実施することができる。これは、図7と併せてさらに詳細に説明する。
【0086】
図7は、一実施形態に従った、マイクロ核MRユニットの分析データを扱うインターフェイスユニットを例示している。インターフェイスユニット302は、ユーザーデバイス、例えば、限定するものではないが、モバイルデバイス、Personal Digital Assistant(PDA)及びパーソナルコンピュータで構成されてもよい。一実施形態では、インターフェイスユニット302は、ユーザーデバイスで動作するアプリケーションであってよい。インターフェイスユニット302は、マイクロ核MRユニット102からの分析データを受信するように構成されたデータプロセッサ306を含む。分析データは、異なる被験体(例えば、患者)と関係することができる。分析データは、マイクロ核MRユニット102で、1以上の異なる被験体に関する、少なくとも1種の試験試料及びナノ粒子の混合物に対して実行された分析に応じて作成される。データプロセッサ306は、ユーザーの入力に基づき、マイクロ核MRユニット102で実行された分析をコントロールするように構成することができる。データプロセッサ306は、分析データを処理して、ユーザーインターフェイス308を介して分析データをユーザーにディスプレイするように構成することができる。ユーザーは、例えば、医療関係者、医師又は様々な応用に関係する分析者であってよい。分析データは、例えば、血中脂質プロファイルの形態でディスプレイされても、又は血液試料中の様々な生体標的もしくは生体分子の存在もしくはレベルのディスプレイであってもよい。分析データは、デジタル値及び/又はグラフの形態でディスプレイされてよい。
【0087】
前述のように、分析データは、異なる被験体から受け取ることが可能であり、したがって、分析データと被験体との間の関係が確立される必要があり得る。この目的を達成するために、データプロセッサ306は、処理された分析データを、流体試料が得られた被験体にマッピングする。マッピングは、処理された分析データと被験体との間の関係を定義するために実施される。流体試料がマイクロ核MRユニット102内に受け取られた場合、被験体の情報は、データプロセッサ306によりまず受信され得る。被験体の情報、例えば患者の情報としては、個人的詳細、疾患のタイプ、健康歴及び/又は他の患者の人口統計学的詳細が挙げられる。
【0088】
一実施形態では、インターフェイスユニット302は、対照の情報を受信する。被験体の情報は、ユーザーインターフェイス308を介して、マイクロ核MRユニット102における分析を実行する技術者又は実験室分析者により入力され得る(図4及び6に示す)。ひとたび被験体の情報が受信されると、その後、データプロセッサ306は、被験体の情報を、被験体の少なくとも1種の流体試料と関連する処理された分析データに追加する。被験体の情報は、自動的に、又はユーザーの入力に基づき追加させることができる。処理された分析データ及び追加の被験体の情報は、インターフェイスユニット302のメモリ310に記憶させることができる。別の実施形態では、被験体の情報及び処理された分析データは、別々に記憶させることができる。処理された分析データと被験体の情報との間の関係を示すマッピングテーブルは、提示又は記憶させることができる。一実施形態では、処理された分析データ及び被験体の情報は暗号化可能である。暗号化は、当技術分野で公知の任意の暗号化技術を使用して実行可能である。例としては、処理された分析データ及び被験体の情報の一部が暗号化することができる。
【0089】
コミュニケータ312は、処理された分析データ(例えば、分析データ及び追加された被験体の情報)をデータ記憶システム、例えばデータ記憶システム304にネットワークを通じて通信又は送信するために存在し得る。コミュニケータ312は、データの送信及び受信を実行するための送信機及び受信機を含んでよい。受信機は、分析データをマイクロ核MRユニット102から受信するように構成され得る。しかし、コミュニケータ312が、データの送信及び受信に適切な任意の他の構成を有してもよいことが企図され得る。
【0090】
図8に例示された、例示的環境500を参照すると、インターフェイスユニットは、マイクロ核MRユニットにより作成された分析データを扱うために機能できる。インターフェイスユニット502は、マイクロ核MRユニット506と通信可能に接続されたモバイルデバイス504中に構成され得る。モバイルデバイス504は、PDA、スマートフォン又は任意の他のデバイスであってよい。マイクロ核MRユニット506は、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物を保持する容器を受け取るように構成されたマイクロ流体用導管116の開口部508を含む。マイクロ核MRユニット506は混合物を分析する。ひとたび分析が実施されると、分析データは、モバイルデバイス504中のインターフェイスユニット502に、マイクロ核MRユニット506中のトランシーバ510により通信される。マイクロ核MRユニット506は、様々な外部干渉、例えば無線周波数(RF)の干渉に付されることがあり、したがって、作成された分析データは、誤りを犯しがちである。したがって、干渉シールド512をマイクロ核MRユニット506の周りに配置して、ユニットにおける干渉インシデントを遮蔽することができる。干渉シールド512は、外部から提供された「ファラデーケージ」として作用し、送信及び受信された低出力無線周波数シグナルによる電磁干渉の克服を助けることができる。一実施形態では、干渉シールド512は、マイクロ核MRユニットをその中に囲い込む、被覆用の箱であってよい。例えば、干渉シールド512は、磁石及びマイクロ核MRユニット506のマイクロMRプローブを封入するように構成することができる。干渉シールド512は、金属製シールド、例えば銅シールド、アルミニウムシールド、ミューメタルシールド、パーマロイシールド及びナノ結晶粒構造強磁性金属シールドであってよい。しかし、干渉シールド512が、異なる種類の干渉を遮蔽できる他の公知の材料で構成可能なことが企図されてもよい。例えば、干渉シールド512はまた、マイクロ核MRユニット506中の構成要素が粉塵及び他の異物に曝露されることを容易に回避する。干渉シールド512は、マイクロ核MRユニット506の遮蔽に都合の良い任意の他の構造又は構成を有してよい。一実施形態では、干渉シールド512は、例えば7.5cm×7.5cm×5cm(長さ×幅(Breadth)×幅(Width))のサイズを有する箱形の構成を有してよい。
【0091】
次いで、インターフェイスユニット502は分析データを処理し、処理された分析データを、ユーザーインターフェイス514を介してディスプレイする。インターフェイスユニット502は、処理された分析データを分析データの被験体とマッピングすることもできる。その後、処理された分析データは、データ記憶システム516に転送され記憶させることができる。記憶されたデータは、モバイルデバイス504で受信されたユーザーの入力に基づき、ユーザーにより必要に応じて取り出すことができる。処理された分析データは、データ記憶システム516と通信可能な任意の他のコンピュータデバイスを介してアクセスできる。処理された分析データは、モバイルデバイス504からコンピュータデバイス518に追加の分析のために通信され得る。処理された分析データは、コンピュータデバイス518の記憶ユニット(図示せず)に記憶させることができる。コンピュータデバイス518は、より詳細な分析が実行可能な実験室に位置してもよい。
【0092】
例えば、ユーザーは、位置520で、試験試料及びナノ粒子の少なくとも1種の混合物を分析するために、マイクロ核MRユニット506を使用することができる。混合物は、健康を分析される必要がある被験体から収集することができる。実行される分析に関係する分析データは、ユーザーのモバイルデバイス504に送ることができる。分析データは、モバイルデバイス504及びマイクロ核MRユニット506との間の接続を通じて送信され得る。接続は、Wi−Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)による接続であってよく、したがって、モバイルデバイス504は、マイクロ核MRユニット506に隣接して位置してよい。モバイルデバイス504中のインターフェイスユニット502は、分析データを処理して、処理された分析データをユーザーにディスプレイすることができる。処理された分析データは、提供されたユーザーインターフェイス514を介してディスプレイさせることができる。インターフェイスユニット502は、被験体の情報を処理された分析データに追加し、位置522にあるデータ記憶システム516とリアルタイムで通信する。被験体の情報は、処理された分析データに追加されたメタデータとして機能する。したがって、メタデータとしては、例えば、患者の情報、例えば、限定するものではないが、個人的詳細、疾患のタイプ、健康歴及び他の患者の人口統計学的詳細が挙げられる。処理された分析データは、ネットワーク524、例えばWide Area Network(WAN)、Wide Local Area Network(WLAN)、Local Area Network(LAN)、Wireless Metropolitan Area Network(Wireless MAN)及びセルラー又はモバイルネットワークを通じて転送可能である。処理された分析データは、次いで、インターフェイスユニット502を介して受信されたユーザーの入力に基づき転送され得る。ユーザーの入力は、ユーザーインターフェイス514を介してユーザーにより提出され得る。一実施形態では、インターフェイスユニット502はまた、ユーザーが、データ記憶システム516から処理された分析データを取り出すことを可能にする。
【0093】
インターフェイスユニット502は、処理された分析データを、位置528に存在するコンピュータデバイス526にリアルタイムで送信するように構成されてもよい。データの送信は、モバイルデバイス504を介したユーザーの命令の受信に応じて実行することができる。コンピュータデバイス526は、処理された分析データに関する詳細な分析を実行することができる。一実施形態では、インターフェイスユニット502は、詳細な分析を受信して、位置520でユーザーに提示するように構成される。したがって、インターフェイスユニット502は、処理された分析データを、都合よく位置520から遠隔の位置522へ、ユーザーが容易に転送できるようにする。この方法では、分析データの予備処理が、モバイルデバイス504及びマイクロ核MRユニット506を使用して、ユーザーによりこのフィールドでローカルに実行可能であり、その後、処理された分析データの記憶又は実験室における追加の分析のために遠隔位置に転送可能である。
【0094】
図9は、マイクロ磁気共鳴ユニットで分析データを扱う方法のフローダイアグラムを例示している。分析データは、1以上の異なる被験体に関する、試験試料及びナノ粒子の混合物がマイクロ核MRユニットで分析される場合に作成される。分析データは、マイクロ核MRユニットに通信可能に接続されたインターフェイスユニットに送信可能である。インターフェイスユニットは、分析データをブロック600で受信する。
【0095】
次いで、インターフェイスユニットは、ブロック602で分析データを処理する。分析データは処理されて、ユーザーに提示又はディスプレイ可能である。ユーザーは、例えば、医療関係者、医師又は分析者であってよい。例えば、インターフェイスユニットは、処理された分析データをディスプレイ可能なユーザーデバイスでユーザーインターフェイスを提供することができる。処理された分析データは、ブロック604で、記憶及び取り出しのためにデータ記憶システムと通信可能である。データ記憶システムは、例えば、実験室に遠隔配置されてもよい。記憶された、処理された分析データは、ユーザーデバイスのインターフェイスユニットを介して受信されたユーザーの入力に基づき取り出し可能である。ユーザーの入力は、データ記憶システムに命令として送ることができる。処理された分析データは、混合物の処理された分析データを使用して追加の分析を実行するように構成可能な、任意の他のコンピュータデバイスにより取り出し可能である。
【0096】
図10は、本発明の一実施形態に従ったインターフェイスユニットで、分析データを処理する方法のフローダイアグラムを例示している。マイクロ核MRユニットから受信された分析データは、ブロック700でインターフェイスユニットで処理され、処理された分析データが作成される。処理された分析データは、ブロック702でユーザーに提示又はディスプレイされる。分析データは、リアルタイムで処理可能である。より詳細には、分析データは、マイクロ核MRユニットから受信され、処理はインターフェイスユニットで実行可能であり、ユーザーデバイスを介してユーザーに提示又はディスプレイされる。これにより、少なくとも1種の流体試料の分析が実施された場合、ユーザーが分析結果をリアルタイムで都合よく見ることが可能である。分析データは処理され、分析データを、例えば、血液プロファイル、生体(例えば、血液)試料中の様々な生体標的(例えば、細胞、細菌又は病原体)の有無もしくは量の形態で提示可能にすることができる。
【0097】
処理された分析データは、ブロック704で、分析データに関係する被験体にマッピング可能である。試料は、被験体から得ることができる。マッピングを実行して、処理された分析データと被験体との間の関係を定義できる。少なくとも1種の流体試料がマイクロ核MRユニット内に受信される場合、被験体の情報は、インターフェイスユニットを介して受信可能である。被験体の情報としては、例えば、個人的詳細、疾患のタイプ、健康歴及び他の患者の人口統計学的詳細が挙げることができる。
【0098】
被験体の情報は、インターフェイスユニットを介して受信可能である。例えば、被験体の情報は、マイクロ核MRユニットで分析を実行する技術者又は実験質分析者により、ユーザーデバイスを介して入力可能である。受信された被験体の情報は、被験体の少なくとも試料に関連する処理された分析データに追加可能である。被験体の情報は、自動的に追加させることができる。被験体の情報は、ユーザーの入力に基づいて追加させることができる。別の実施形態では、被験体の情報及び処理された分析データは、別々に記憶可能させることができる。マッピングテーブルは、この場合、提示又は記憶され、処理された分析データと被験体の情報との間の関係を示すことができる。処理された分析データ及び被験体の情報は、暗号化可能である。暗号化は、当技術分野で公知の任意の技術を使用して実行可能である。一実施形態では、処理された分析データ及び被験体の情報の一部が暗号化されることがある。処理された分析データ及び被験体の情報は、その他の使用のためにユーザーデバイスに記憶させることができる。
【0099】
図11は、本発明の一実施形態に従ったマイクロ磁気共鳴システムを使用する、少なくとも1種の流体試料及びナノ粒子の混合物を分析する方法のフローダイアグラムを例示している。マイクロ磁気共鳴システムのマイクロ核磁気共鳴(MR)ユニットは、ブロック800で、少なくとも試料及びナノ粒子の混合物を受け取る。混合物は、マイクロ核MRユニットのマイクロ流体用導管内に受け取り可能な容器で形成される。次いで、混合物は、ブロック802で、マイクロ核MRユニットにより分析され、混合物中の少なくとも1種の目標物質(例えば、細胞)が検出される。
【0100】
混合物に対して実施された分析により作成された分析データは、ブロック804でマイクロ核MRユニットに通信可能に接続されたインターフェイスユニットに通信可能である。インターフェイスユニットは分析データを受信し、その後、ブロック806で分析データを処理する。分析データは処理可能であり、その後、ユーザーに提示又はディスプレイ可能である。ユーザーは、例えば、医療関係者、技術者又は医師であってよい。例えば、インターフェイスユニットは、処理された分析データをディスプレイ可能なユーザーデバイスに、ユーザーインターフェイスを提供することができる。処理された分析データは、ブロック808で、記憶及び取り出しのためにデータ記憶システムと通信可能である。データ記憶システムは、遠隔、例えば実験室に位置してもよい。記憶された、処理された分析データは、ユーザーデバイスのインターフェイスユニットを介して受信されたユーザーの入力に基づいて取り出し可能である。ユーザーの入力は、データ記憶システムに命令として送ることができる。処理された分析データは、データ記憶システムに通信可能に接続された任意の他のコンピュータデバイスにより収集可能である。コンピュータデバイスは、少なくとも1種の試料及びナノ粒子の混合物の詳細な分析を実施するために、処理された分析データを使用して追加の分析を実行するように構成可能である。
【0101】
図9図10及び図11に関して記載された方法は、プロセッサ又は任意の他の処理デバイスを使用して実行可能である。方法ステップは、有形のコンピュータにより読み取り可能な媒体に記憶された、コード化された命令(例えば、コンピュータにより読み取り可能な命令)を使用して実施可能である。有形のコンピュータにより読み取り可能な媒体は、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は任意の他のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体もしくは任意の複数の記憶媒体であってよい。マイクロ核MRユニットで作成された分析データを扱う方法が、図9、10及び11のフローチャートを参照して説明されたが、この方法を実施する他の方法を用いることも可能である。例えば、各方法ステップの実行順序は変更可能であり、及び/又は記載された方法ステップのいくつかは、変更、削除、分割又は組合せが可能である。さらに方法ステップは、マイクロ核MRユニットで作成された分析データを扱うために、連続して、又は同時に実行されてもよい。
【0102】
本発明を、これから下記の限定されない実施例と関連させて記載するものである。
【実施例】
【0103】
材料及び方法:
カルボキシル官能化超常磁性酸化鉄(SPIO)ナノ結晶及びそのコンジュゲーションキットは、Ocean NanoTech LLC、USAから入手した。ウサギポリクローナル抗体は、セレウス菌(Bacillus cereus)から産生させ、セレウス菌は枯草菌(Bacillus subtilis)(ab20556)と交差反応性であり、Abcam、USAから購入した。枯草菌亜種スピジゼニイ(Bacillus subtilis subsp.spizizenii)(B.subtilis)(ATCC#6633)は、HiMedia Laboratories、Mumbai、Indiaから購入し、販売業者のプロとコルに従って維持した。
【0104】
SPIO−バチルス抗体の合成及び特徴付け
枯草菌と反応する抗体を、カルボキシル末端SPIOナノ粒子(サイズ=30nm)と、製造業者のプロトコルに従って連結させた。簡潔には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)のストック溶液を、製造業者の取扱説明書により調製し、最終濃度2mg/mLのEDC及び1mg/mLのNHSを得た。100μLのSPIOを50μLの活性化バッファー中にエッペンドルフ管で取り、50μLのEDC/NHS溶液をそこに加えた。混合物を、室温(RT)で10分間、連続混合しながら反応させた。活性化されたSPIOナノ粒子に、250μLのカップリングバッファーを加え、その後、枯草菌と反応する4μgの抗体を加えた。混合物を、RTで連続混合しながら2時間反応させた。2時間の終わりに、5μLの反応停止バッファーを加えることによって、反応を停止させた。ナノコンジュゲートを、100kDaの分子量カットオフのAmiconフィルターを使用した反応混合物の濾過により、遊離のSPIOナノ粒子から分離し、保存バッファーにより洗浄した(2×1mL)。本研究に使用した最終コンジュゲートのサイズを、動的光散乱(Zetasizer Nano−ZS、Malvern)により測定し、平均流体力学的径が45nmであることが示された。ナノコンジュゲート溶液の鉄濃度が、250μg/mLであることを、Agilent 7500cx Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry(ICP−MS)機器を使用して測定した。
【0105】
細胞培養のための培地の調製
0.4gのDifco(商標)Nutrient Broth(Ref234000、BD)を、250mLの三角フラスコに移し、50mLのDM水に溶解した。得られた溶液を、121℃で15分間、オートクレーブ処理した。培地を含む冷却したフラスコを、その後培養に使用した。
【0106】
枯草菌の培養
枯草菌のストック培養液及び栄養ブロス溶液を、インキュベータに37℃10〜15分間配置した。その後、フラスコを空気層流フードに移した。ストック溶液から、500μLを、ピペットで慎重に50mLの栄養ブロスに移し、滅菌状態で維持した。フラスコをその後、Innova4080インキュベータ−シェーカーセットに、37℃で115rpmで6時間配置した。インキュベーション6時間後の細菌のカウントを、標準的プレートカウント方法により決定し、約108CFU/mLであることが見出された。
【0107】
段階希釈及び試料調製
段階希釈を、6時間の枯草菌培養液に対して実施し、107、105及び103濃度の細菌を得た。
【0108】
64μLの250μg/mLのFeナノコンジュゲート溶液を、1mLの107、105及び103の枯草菌試料それぞれに加え、混合物中最終濃度16μg/mLのFeを得た。T2緩和測定を、混合後すぐに実行した。
【0109】
緩和時間測定機による測定
緩和時間測定を、40℃でBruker mq20 Minispecを0.5Tで使用して実行した。データを規則的な時間間隔、初めの9回の時点は1分ごと、その後次の6回の時点は5分ごと、次の6回の時点は10分ごと、次の3回の時点は15分ごと、最終的に、最後の3回の時点は30分ごとで取得した。T2緩和時間測定に関して、用いたパルスシーケンスは、Carr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)スピンエコーである。
【0110】
CPMGパルスシーケンス:
{RD−900−tau−[(18090−tau−)DE(18090−tau−)asd−tau−]NNS
式中:
RDはリサイクルディレイであり、tauはディレイ間隔であり、DEはエコーをサンプリングする前のダミーエコーの数であり、Nは収集される点の数であり、NSはシグナルの平均値算出のためのスキャンの数であり、「asd」は単一データの取得点を示す。
【0111】
下記のパラメーターを実験に使用した;RD=6秒;tau=5ミリ秒、DE=0、N=700、NS=8。
【0112】
スピンエコーからのデータを、下記の二重指数関数式にフィットさせた:
y=A1*exp−(x/τ1)+A2*exp−(x/τ2)+O
式中:
A1,A2=ゼロ時における成分1及び2の振幅
τ1、τ2=成分1及び2のT2減衰定数
O=オフセット
結果
すべての試料で、ナノコンジュゲートを様々な濃度の枯草菌に加えた後で、二重指数関数的T2が観察された。図1は、SPIO−ナノコンジュゲート及び異なる濃度の細菌の混合物に関する、継時的T2変化を示す。2時間後に得られた長いT2は、完全な試料調製を実行した実験で観察されたT2と同様であった。したがって、長いT2は、細菌の結合したナノコンジュゲートに割り当てられ、短いT2は、溶液中で未結合又は遊離のナノコンジュゲートに割り当てられた。加えて、結合されたナノコンジュゲートの長いT2が、細菌の濃度に依存することがさらに観察された。したがって、試料中の細菌数は、長いT2を使用して、未結合のナノコンジュゲートを濾過するフィルターステップを必要とせずに定量可能である。
図1
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図11