【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、関心のある被検体の一部を加熱する超音波処置装置によって達成され、かかる超音波処置装置は、高密度焦点式超音波照射を生成する超音波照射ユニットであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、超音波照射ユニットと、軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及び超音波供給量をターゲットゾーンに適用するように、超音波照射ユニットを制御する制御ユニットと、を有し、制御ユニットは、ターゲットゾーンの温度情報を入力し、入力した温度情報に基づいて超音波照射ユニットを制御するように適応され、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。
【0009】
この目的は更に、上述の超音波処置装置及び関心のある被検体のターゲットゾーンの温度情報を提供する診断イメージング装置を有し、超音波処置装置の制御ユニットが、診断イメージング装置から温度情報を入力するように適応される、超音波処置システムによって達成される。
【0010】
この目的は更に、関心のある被検体の一部を加熱するための超音波処置の方法であって、高密度焦点式超音波照射を生成するステップであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、ステップと、軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及びターゲットゾーンに超音波供給量を適用するように、超音波照射を制御するステップと、ターゲットゾーンの温度情報を入力するステップと、入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御するステップであって、超音波照射の制御が、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく、ステップと、を含む方法によって達成される。
【0011】
この目的は更に、超音波処置装置をアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、上述の方法に従って超音波処置装置を制御する命令を含むソフトウェアパッケージによって達成される。
【0012】
この目的は更に、超音波処置システムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、上述の方法に従って超音波処置システムを制御する命令を含むソフトウェアパッケージによって達成される。
【0013】
軌道に沿った超音波照射のフォーカスの、加熱が完了している以前の方向に沿った温度又は熱供給量分布に注目することによって、処置の改善された制御が達成される。この以前のソニケーションが現在適用されるものと異なる場合にも、これが組織及び超音波システム挙動の良好なインジケータであることが分かった。制御ユニットは、超音波照射軌道の移動フォーカスに沿った現在加熱が終わらないうちに、どんな超音波供給量が適用されるかを決める。超音波供給量は、例えば音響パワー、超音波周波数及び回転スピードのようなソニケーションパラメータに関連する。
【0014】
超音波供給量の制御は、診断イメージング装置によって提供される温度に基づくことができ、又は、診断イメージング装置によって提供される温度に基づく熱供給量の計算に基づくことができる。両方のアプローチとも信頼できるものであることが分かった。43°Cに加熱するまでのEM(Equivalent Minutes)で規定される熱供給量(EM)は、ターゲットゾーンの組織に対する所望の影響を得るのに十分な時間及び温度の評価に関する。組織アブレーションを評価するための典型的な熱供給量の閾値は、240EMである。異なる方法が、ソニケーションがすでに完了されたビーム経路の以前の位置に関して超音波照射のビーム経路の軌道に沿って到達される温度又は熱供給量を決定するために使用されることができる。
【0015】
簡単な温度駆動されるアプローチは、過去にさかのぼって位置した、すなわち軌道に沿った超音波照射の以前の方向に沿って検出される最大温度の使用を含む。この方法は、時間又は位置に関してソニケーションがどれくらい過去に完了されたかを正確に評価する必要がないので、実現するのが相対的に容易である。この方法は、移動スピードから独立しており、ターゲット輪郭は、相対的にロバストである。好適な実施形態によれば、最大温度のサーチは、超音波照射のビーム経路の位置及び/又は時間的位置の適切なレンジに制限される。最も好適には、最大温度のサーチは、予め規定された静的レンジに制限される。超音波照射の回転ビーム経路を有する装置の場合、位置は、角度位置をさす。このような装置の場合、好適な予め規定されたレンジは、例えば[−10°;0°]又は[−60s;0s]でありえ、0°又は0sは、ビーム経路の現在位置を表す。代替の実施形態において、温度値の動的レンジが処理され、それによって、レンジは、移動スピードの関数として調整される。個別の測定ポイント、すなわち磁気共鳴イメージング装置の場合にはボクセル、の数をしぼることは、イメージングアーチファクトに対するシステム感度を低減し、システムのロバストネスを改善することを可能にする。
【0016】
軌道に沿って最大の温度Tmaxが検出されると、この値は、任意のタイプのフィードバック制御を実施するために使用されることができる。好適には、Tmaxに基づく簡単なバイナリ温度調節アルゴリズムが使用される。このようなアルゴリズムは、軌道に沿って非常に正確な温度制御を達成した。更に好適には、このアルゴリズムは、Tmaxがターゲット温度より低い場合には最小移動スピード、例えば最小回転レートを使用し、逆の場合には、最大移動スピードを使用する。より好適には、このアルゴリズムは、Tmaxがターゲット温度より低い場合には最大ソニケーションパワーを使用し、逆の場合には最小ソニケーションパワーを使用する。
【0017】
本発明は、超音波照射に基づく温熱療法を可能にし、この場合、診断イメージング装置が、温熱療法のガイダンスのために使用される。診断イメージング装置は、処置計画から、処置中の関心のある被検体内の空間的な加熱パターンの制御まで、使用されることができる。好適には、診断イメージング装置は、リアルタイム解析用のデータフローのために使用される。超音波エネルギー、周波数、及びビーム経路方向/移動を含む制御可能な多重ソニケーションパラメータと共に、強力な超音波処置システムが提供される。軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御は、改善された温度制御を可能にする。診断イメージングシステムの向上された空間的及び時間的な正確さが、システム欠陥及び組織不均質性に対するロバストネスを改善する。好適には、制御ユニットは、温度を統制するためにファジー論理に基づくバイナリコントローラを有する。
【0018】
軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御の利点は、制御が、組織パラメータに依存せず、微細なパワー較正又はゲインパラメータのチューニングが必要ないことである。制御は、ビーム経路の意図された方向でのみ取得されるのではない測定温度に基づくので、システムは、超音波照射のビーム経路の不良位置合せにロバストである。
【0019】
軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御の更なる利点は、約1℃である高温の正確さ、+60msである1の動的持続時間の低いコントローラ応答時間、及び約1mmである加熱制御の空間分解能である。前立腺の処置のアプリケーションにおいて、1乃至3cmの半径にわたるボリュームが、40分アブレーションされることができる。
【0020】
ターゲットゾーンは、予め規定された処置パラメータに従って加熱されなければならない組織を含む関心のある被検体の領域に関連する。軌道は、超音波エネルギーが堆積されるべきであるターゲットゾーンに基づいて規定され、超音波処置装置のタイプ及び所望の処置に依存して円軌道又は線形軌道でありうる。
【0021】
超音波照射のビーム経路は、通常、特定の幅を有し、超音波照射に影響される領域を含む。ビーム経路は、例えば最大の超音波パワーが照射される方向である超音波照射の主方向に関連する方向を有する。
【0022】
ターゲットゾーンの温度情報を入力することは、ターゲットゾーンの外側からの温度情報を受け取ることを含み、かかる外側の温度情報は、ターゲットゾーンの温度情報を導き出すために処理されることができることに留意すべきである。処置は、一般に、ターゲットゾーン内の温度の制御を必要とし、制御は、それぞれ異なる組織パラメータが温度の補間を困難にするので、導き出すのが困難である。それでもなお、組織パラメータが知られている場合、ターゲットゾーンの外側の温度に関する知識は、例えばターゲットゾーンの輪郭のようなターゲットゾーンの特定のポイントの温度の十分に信頼できる補間を可能にすることができる。
【0023】
超音波処置装置は、個別に又は別の処置装置と共に、使用されることができる。他の処置装置は、例えば線形加速器装置(LINAC)又は化学療法処置装置でありうる。これらの処置装置は、要求に依存して超音波処置を支援することができる。
【0024】
超音波処置システムにおいて、診断イメージング装置及び超音波処置装置は、好適には、電気的又は電子的インタフェースを通じて接続され、それにより、温度情報が、診断イメージング装置から超音波処置装置へ直接渡されることができる。好適には、情報は、超音波処置装置から診断イメージング装置へも渡される。この情報は、ターゲットゾーンに関して情報を含むことができ、それにより、超音波処置装置は、特にターゲットゾーン内の温度情報を取得することができる。
【0025】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、超音波照射を生成する超音波トランスデューサ、及び超音波照射のビーム経路を移動させるアクチュエータを有する。超音波照射ユニットは、トランスデューサの機械的移動によって、超音波照射のビーム経路を移動させる。以下に詳細に記述されるように、さまざまな異なる種類のトランスデューサの移動が実現されることもできる。トランスデューサの移動の制御は、アクチュエータを使用して容易に実現されることができる。トランスデューサは、制御ユニットによって共通に構成され制御されるトランスデューサ素子のアレイを有することができる。例えば、尿道内トランスデューサは、ライン上に、すなわち1要素の幅を有するアレイに、配置される多重トランスデューサ素子を有することができる。これは、トランスデューサの長さがこの方向において前立腺全体をカバーするのに十分であるので、例えば1セッションによる関心のある被検体の前立腺全体の処置を可能にする。
【0026】
好適な実施形態によれば、超音波トランスデューサは、回転可能なトランスデューサであり、アクチュエータは、回転式アクチュエータである。従って、トランスデューサは、その回転軸を中心とする周囲全体をカバーするのに適する。このような超音波照射ユニットは、小さい寸法を備えることができる。例えば、組織内及び腔内超音波装置は、実施される処置のカバレッジを拡張するために、機械的に回転可能なシステムにしばしば関連付けられる。
【0027】
好適な実施形態によれば、超音波トランスデューサは、軸方向に可動であるトランスデューサであり、アクチュエータは、線形アクチュエータである。トランスデューサは、1軸に沿って、又は平面内ですなわち2軸に沿って、可動でありうる。トランスデューサは、各軸ごとに1つの線形アクチュエータを有し、又は平面移動のための1つのアクチュエータを有することができる。
【0028】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、トランスデューサ素子のアレイをもつ超音波トランスデューサを有し、超音波照射のビーム経路は、トランスデューサ素子の相対的位相を電子的にステアリングすることによって移動可能である。このトランスデューサは、機械的可動部分を必ずしも必要とせず、それは、超音波照射のビーム経路のロケーションの迅速な調整を可能にする。
【0029】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、多重超音波トランスデューサを有し、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、多重超音波トランスデューサを個別に制御するように適応される。多重超音波トランスデューサは、ターゲットゾーンの改善された加熱を可能にする。多重トランスデューサは、ターゲットゾーンの多重領域に超音波エネルギーを同時に集中させるので、均質な加熱が達成されることができる。
【0030】
それでもなお、個別の制御が、ターゲットゾーン全体の処置の信頼できる制御を可能にする。多重超音波トランスデューサを用いることにより、加熱は、短縮された時間で達成されることができる。各トランスデューサは、個別のトランスデューサ素子のアレイを備えることができる。
【0031】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、多重アクチュエータを有し、制御ユニットは、各トランスデューサの軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、多重アクチュエータを個別に制御するように適応される。従って、個別に制御される多重チャネルを有する超音波照射ユニットが提供されることができる。後方フィードバックは、各チャネルごとに超音波照射のビーム経路の方向及び軌道を考えることによって実現されることができる。代替の実施形態において、多重アクチュエータが共通に制御され、又は1つのアクチュエータが、多重トランスデューサを移動させるために提供される。
【0032】
好適な実施形態によれば、制御ユニットは、ターゲットゾーンの輪郭の温度情報を入力するように適応され、制御ユニットは、超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向に対応するターゲットゾーンの輪郭における温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。対応する方法において、入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御するステップは、超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向におけるターゲット輪郭の温度に基づいて、超音波照射を制御することを含む。ターゲットゾーンの輪郭の温度を用いることにより、ほんのわずかの温度値のみが、超音波照射のビーム経路の移動の軌道に沿って供給されればよく、それにより、データの処理が容易にされる。更に、ターゲットゾーンの輪郭から、軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度が、容易に選択されることができる。例えば、超音波照射の以前の方向の最大温度に基づく制御の場合、この温度は、ターゲットゾーンの輪郭の供給された温度値の範囲内で容易に検出されることができる。輪郭は処置の境界を規定するので、ターゲットゾーンの外側の組織の損傷が回避されることができる。
【0033】
好適な実施形態によれば、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び複数の以前の方向の温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。超音波照射のビーム経路のいくつかの過去の方向の温度が、平均又はピークの値に関してビーム経路に沿った制御された最大値を示すものを評価するために、考えられる。
【0034】
好適な実施形態によれば、診断イメージング装置は、磁気共鳴イメージング装置又は超音波イメージング装置である。両方の装置は、処置の間、好適にはリアルタイムに動作されることができ、それにより、ソニケーションのフィードバック制御が適用されることができる。好適には、診断イメージング装置は、3次元診断画像を提供する。特に、回転可能なトランスデューサを有する超音波照射ユニットの場合、1又は複数の2次元診断画像が使用されることもでき、この場合、回転軸は、画像の2つの次元に対して直交する角度を有する。
【0035】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。しかしながら、このような実施形態が、必ずしも本発明の範囲のすべてを示すというわけではなく、本発明の範囲を解釈するために請求項及び本明細書が参照される。