特許第6371314号(P6371314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371314
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】高密度焦点式超音波照射
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20180730BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20180730BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   A61B17/00 700
   A61B8/14
   A61B5/055 390
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-558573(P2015-558573)
(86)(22)【出願日】2014年2月11日
(65)【公表番号】特表2016-508795(P2016-508795A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】IB2014058890
(87)【国際公開番号】WO2014128592
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】61/768,774
(32)【優先日】2013年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ムージュノ シャルル
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−534397(JP,A)
【文献】 特表2012−528656(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0041249(US,A1)
【文献】 Julia K.Enholm,Improved Volumetric MR-HIFU Ablation by Robust Binary Feedback Control,IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,米国,IEEE,2010年 1月,vol. 57, no. 1,p103-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
A61N 7/00 − 7/02
A61B 5/055
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心のある被検体の一部を加熱する超音波処置装置であって、
高密度焦点式超音波照射を生成する超音波照射ユニットであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、超音波照射ユニットと、
前記軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及び前記ターゲットゾーンに超音波供給量を適用するように、前記超音波照射ユニットを制御する制御ユニットと、
を有し、
前記制御ユニットが、前記ターゲットゾーンの温度情報を入力し、入力した温度情報に基づいて前記超音波照射ユニットを制御し、
前記制御ユニットが、前記軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、前記超音波照射ユニットを制御し、
前記制御ユニットは、前記軌道に沿った超音波照射のビーム経路の前記以前の方向に沿って検出される最大温度を使用して、前記超音波照射ユニットを制御する、超音波処置装置。
【請求項2】
前記超音波照射ユニットが、超音波照射を生成する超音波トランスデューサと、超音波照射のビーム経路を移動させるアクチュエータと、を有する、請求項1に記載の超音波処置装置。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサが、回転可能なトランスデューサであり、前記アクチュエータが、回転式アクチュエータである、請求項2に記載の超音波処置装置。
【請求項4】
前記超音波トランスデューサが、軸方向に移動可能なトランスデューサであり、前記アクチュエータが、線形アクチュエータである、請求項2に記載の超音波処置装置。
【請求項5】
前記超音波照射ユニットが、トランスデューサ素子のアレイを有する超音波トランスデューサを有し、超音波照射のビーム経路が、前記トランスデューサ素子の相対的位相を電子的にステアリングすることによって移動可能である、請求項1に記載の超音波処置装置。
【請求項6】
前記超音波照射ユニットが、多重超音波トランスデューサを有し、前記制御ユニットが、各トランスデューサの軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、前記多重超音波トランスデューサを個別に制御する、請求項1に記載の超音波処置装置。
【請求項7】
前記超音波照射ユニットが、多重アクチュエータを有し、前記制御ユニットが、各トランスデューサの軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、前記多重アクチュエータを個別に制御する、請求項6に記載の超音波処置装置。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記ターゲットゾーンの輪郭の温度情報を入力し、前記制御ユニットが、超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向に対応する前記ターゲットゾーンの輪郭における温度に基づいて、前記超音波照射ユニットを制御する、請求項1に記載の超音波処置装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波処置装置と、
関心のある被検体のターゲットゾーンの温度情報を供給する診断イメージング装置と、
を有し、前記超音波処置装置の制御ユニットが、前記診断イメージング装置から温度情報を入力する、超音波処置システム。
【請求項10】
前記診断イメージング装置が、磁気共鳴イメージング装置又は超音波イメージング装置である、請求項9に記載の超音波処置システム。
【請求項11】
関心のある被検体の一部分を加熱する超音波処置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
高密度焦点式超音波照射生成を制御するステップであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、ステップと、
前記軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及び前記ターゲットゾーンに超音波供給量を適用するように、超音波照射を制御するステップと、
前記ターゲットゾーンの温度情報を入力するステップと、
前記入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御するステップであって、前記超音波照射の制御が、前記軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく、ステップと、
コンピュータに実行させる命令を有し、前記入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御する前記ステップが、前記軌道に沿った超音波照射のビーム経路の前記以前の方向に沿って検出される最大温度を使用して、超音波照射を制御することを含む、コンピュータプログラム
【請求項12】
前記入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御する前記ステップが、超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向におけるターゲット輪郭の温度に基づいて、超音波照射を制御することを含む、請求項11に記載のコンピュータプログラム
【請求項13】
超音波処置装置をアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、請求項11又は12に記載のコンピュータプログラムの各ステップに従って前記超音波処置装置を制御する命令を含むソフトウェアパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドされる高密度焦点式超音波(HIFU)治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ガイドされる高密度焦点式超音波(HIFU)治療に関する。超音波処置装置(すなわちHIFU治療モジュール)は、通常は生物であってより一般的には人間である関心のある被検体のターゲットゾーンに超音波照射を向ける。
【0003】
組織内及び腔内超音波照射装置は、多くの場合、機械的に可動なトランスデューサを有し、かかるトランスデューサは、超音波照射のビーム経路の移動を可能にする。例示のアプリケーションは、回転可能な尿道内トランスデューサによる前立腺癌の処置である。従って、トランスデューサは、HIFUエネルギーが堆積されるターゲットゾーン内の位置を制御するように移動可能である。アクチュエータが、トランスデューサを移動させるために提供される。アクチュエータは、トランスデューサを移動させ、すなわち回転させるために制御ユニットによって制御され、それにより、HIFUエネルギー堆積の軌道が生成される。それに応じて、ターゲットゾーン全体が、処置のために必要とされるようにHIFUモジュールによって加熱されることができる。
【0004】
診断イメージングのような磁気共鳴イメージング(MRI)は、治療ではより重要になっている。特に、診断イメージングは、ターゲットゾーンの温度情報を取得してターゲットゾーンの加熱をモニタするために使用される。これは、処置の正確さを増大する。代替として、超音波装置は、この分野においてイメージング装置として使用されることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
診断イメージング装置及び超音波処置装置を有する今日の超音波処置システムにおいて、診断イメージング装置は、超音波照射のビーム経路の方向における温度情報を提供するために使用され、すなわち、診断イメージング装置は、ソニケーション(sonication、超音波処理、超音波破砕)とも呼ばれるHIFU堆積が行われる領域の温度をモニタするように構成される。超音波処置装置の制御ユニットは、測定された温度に基づいて現在ターゲットゾーンにおける活性化を制御するように構成される。加熱は、ソニケーション及びビーム方向の変位を同時に実施することによって達成される。これは、例えば文献"Method for MRI-guided conformal thermal therapy of prostate with planar transurethral ultrasound heating applicators" Rajiv Chopra, Mathieu Burtnyk, Masoom A Haider and Michael J Bronskill, Phys. Med. Biol. 50 (2005) 4957 -4975に提案されている。特に、ターゲット温度とターゲットロケーションのソニケーション方向に沿って測定される温度との間の差に比例する音響パワー及び回転スピードを用いて、組織内及び腔内超音波照射ユニットを使用することが提案される。このフィードバック温度制御は、ターゲット温度がビーム経路に沿った現在ターゲットロケーションにおいて到達されるまで、音響パワーを供給する。しかしながら、各方向に沿ったソニケーションは、超音波ビームの幅のためある程度重複する。更に、超音波ビームがもはや領域をカバーしないときに、熱拡散の効果が、当該領域の更なる加熱を生じさせることがある。特定のビーム経路方向に関する結果として、ビームが前方に移動されると、付加の温度上昇が、このロケーションにおいて行われる。超音波ビームがこのロケーションから十分に離れるように移動されたたときのみ、ロケーションの加熱が終了される。結果として、ターゲット輪郭における最終温度は、予測されない値によってターゲット温度を超える。
【0006】
従って、制御ユニットは、現在HIFU堆積の領域内の現在温度に基づいてどのソニケーションパラメータ(例えば音響パワー、超音波周波数、移動スピード)が適用されるべきかを決める。これは、特に超音波照射のビーム経路の方向に関して、超音波照射ユニットの正確な較正を必要とする。更に、ビーム幅のようなビームパラメータのため、関心のある被検体内のある領域は、必要とされるよりも高い供給量(dose)に曝露されることがある。これは、関心のある被検体の処置のために必要とされる時間を延ばし、ターゲットゾーンの外側の関心のある被検体の領域の不所望の処理をもたらしうる。
【0007】
本発明の目的は、上述の不利益の少なくとも一部を克服する高密度焦点式超音波照射加熱の改善を提供することである。特に、本発明の目的は、高密度焦点式超音波照射加熱に基づく処理を可能にし、容易に実施されることができ、較正目的のための時間をほとんど必要とせず、短時間に実施されることができ、高い正確さを伴って実施されることができ、ターゲット領域の外側の関心のある被検体の領域に損傷を与える低いリスクを含む、超音波処置装置、超音波処置システム、及び超音波処置の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、関心のある被検体の一部を加熱する超音波処置装置によって達成され、かかる超音波処置装置は、高密度焦点式超音波照射を生成する超音波照射ユニットであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、超音波照射ユニットと、軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及び超音波供給量をターゲットゾーンに適用するように、超音波照射ユニットを制御する制御ユニットと、を有し、制御ユニットは、ターゲットゾーンの温度情報を入力し、入力した温度情報に基づいて超音波照射ユニットを制御するように適応され、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。
【0009】
この目的は更に、上述の超音波処置装置及び関心のある被検体のターゲットゾーンの温度情報を提供する診断イメージング装置を有し、超音波処置装置の制御ユニットが、診断イメージング装置から温度情報を入力するように適応される、超音波処置システムによって達成される。
【0010】
この目的は更に、関心のある被検体の一部を加熱するための超音波処置の方法であって、高密度焦点式超音波照射を生成するステップであって、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン内に超音波エネルギーを堆積させるために軌道に沿って移動可能である、ステップと、軌道に沿って超音波照射のビーム経路を移動させ及びターゲットゾーンに超音波供給量を適用するように、超音波照射を制御するステップと、ターゲットゾーンの温度情報を入力するステップと、入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御するステップであって、超音波照射の制御が、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく、ステップと、を含む方法によって達成される。
【0011】
この目的は更に、超音波処置装置をアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、上述の方法に従って超音波処置装置を制御する命令を含むソフトウェアパッケージによって達成される。
【0012】
この目的は更に、超音波処置システムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、上述の方法に従って超音波処置システムを制御する命令を含むソフトウェアパッケージによって達成される。
【0013】
軌道に沿った超音波照射のフォーカスの、加熱が完了している以前の方向に沿った温度又は熱供給量分布に注目することによって、処置の改善された制御が達成される。この以前のソニケーションが現在適用されるものと異なる場合にも、これが組織及び超音波システム挙動の良好なインジケータであることが分かった。制御ユニットは、超音波照射軌道の移動フォーカスに沿った現在加熱が終わらないうちに、どんな超音波供給量が適用されるかを決める。超音波供給量は、例えば音響パワー、超音波周波数及び回転スピードのようなソニケーションパラメータに関連する。
【0014】
超音波供給量の制御は、診断イメージング装置によって提供される温度に基づくことができ、又は、診断イメージング装置によって提供される温度に基づく熱供給量の計算に基づくことができる。両方のアプローチとも信頼できるものであることが分かった。43°Cに加熱するまでのEM(Equivalent Minutes)で規定される熱供給量(EM)は、ターゲットゾーンの組織に対する所望の影響を得るのに十分な時間及び温度の評価に関する。組織アブレーションを評価するための典型的な熱供給量の閾値は、240EMである。異なる方法が、ソニケーションがすでに完了されたビーム経路の以前の位置に関して超音波照射のビーム経路の軌道に沿って到達される温度又は熱供給量を決定するために使用されることができる。
【0015】
簡単な温度駆動されるアプローチは、過去にさかのぼって位置した、すなわち軌道に沿った超音波照射の以前の方向に沿って検出される最大温度の使用を含む。この方法は、時間又は位置に関してソニケーションがどれくらい過去に完了されたかを正確に評価する必要がないので、実現するのが相対的に容易である。この方法は、移動スピードから独立しており、ターゲット輪郭は、相対的にロバストである。好適な実施形態によれば、最大温度のサーチは、超音波照射のビーム経路の位置及び/又は時間的位置の適切なレンジに制限される。最も好適には、最大温度のサーチは、予め規定された静的レンジに制限される。超音波照射の回転ビーム経路を有する装置の場合、位置は、角度位置をさす。このような装置の場合、好適な予め規定されたレンジは、例えば[−10°;0°]又は[−60s;0s]でありえ、0°又は0sは、ビーム経路の現在位置を表す。代替の実施形態において、温度値の動的レンジが処理され、それによって、レンジは、移動スピードの関数として調整される。個別の測定ポイント、すなわち磁気共鳴イメージング装置の場合にはボクセル、の数をしぼることは、イメージングアーチファクトに対するシステム感度を低減し、システムのロバストネスを改善することを可能にする。
【0016】
軌道に沿って最大の温度Tmaxが検出されると、この値は、任意のタイプのフィードバック制御を実施するために使用されることができる。好適には、Tmaxに基づく簡単なバイナリ温度調節アルゴリズムが使用される。このようなアルゴリズムは、軌道に沿って非常に正確な温度制御を達成した。更に好適には、このアルゴリズムは、Tmaxがターゲット温度より低い場合には最小移動スピード、例えば最小回転レートを使用し、逆の場合には、最大移動スピードを使用する。より好適には、このアルゴリズムは、Tmaxがターゲット温度より低い場合には最大ソニケーションパワーを使用し、逆の場合には最小ソニケーションパワーを使用する。
【0017】
本発明は、超音波照射に基づく温熱療法を可能にし、この場合、診断イメージング装置が、温熱療法のガイダンスのために使用される。診断イメージング装置は、処置計画から、処置中の関心のある被検体内の空間的な加熱パターンの制御まで、使用されることができる。好適には、診断イメージング装置は、リアルタイム解析用のデータフローのために使用される。超音波エネルギー、周波数、及びビーム経路方向/移動を含む制御可能な多重ソニケーションパラメータと共に、強力な超音波処置システムが提供される。軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御は、改善された温度制御を可能にする。診断イメージングシステムの向上された空間的及び時間的な正確さが、システム欠陥及び組織不均質性に対するロバストネスを改善する。好適には、制御ユニットは、温度を統制するためにファジー論理に基づくバイナリコントローラを有する。
【0018】
軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御の利点は、制御が、組織パラメータに依存せず、微細なパワー較正又はゲインパラメータのチューニングが必要ないことである。制御は、ビーム経路の意図された方向でのみ取得されるのではない測定温度に基づくので、システムは、超音波照射のビーム経路の不良位置合せにロバストである。
【0019】
軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づく制御の更なる利点は、約1℃である高温の正確さ、+60msである1の動的持続時間の低いコントローラ応答時間、及び約1mmである加熱制御の空間分解能である。前立腺の処置のアプリケーションにおいて、1乃至3cmの半径にわたるボリュームが、40分アブレーションされることができる。
【0020】
ターゲットゾーンは、予め規定された処置パラメータに従って加熱されなければならない組織を含む関心のある被検体の領域に関連する。軌道は、超音波エネルギーが堆積されるべきであるターゲットゾーンに基づいて規定され、超音波処置装置のタイプ及び所望の処置に依存して円軌道又は線形軌道でありうる。
【0021】
超音波照射のビーム経路は、通常、特定の幅を有し、超音波照射に影響される領域を含む。ビーム経路は、例えば最大の超音波パワーが照射される方向である超音波照射の主方向に関連する方向を有する。
【0022】
ターゲットゾーンの温度情報を入力することは、ターゲットゾーンの外側からの温度情報を受け取ることを含み、かかる外側の温度情報は、ターゲットゾーンの温度情報を導き出すために処理されることができることに留意すべきである。処置は、一般に、ターゲットゾーン内の温度の制御を必要とし、制御は、それぞれ異なる組織パラメータが温度の補間を困難にするので、導き出すのが困難である。それでもなお、組織パラメータが知られている場合、ターゲットゾーンの外側の温度に関する知識は、例えばターゲットゾーンの輪郭のようなターゲットゾーンの特定のポイントの温度の十分に信頼できる補間を可能にすることができる。
【0023】
超音波処置装置は、個別に又は別の処置装置と共に、使用されることができる。他の処置装置は、例えば線形加速器装置(LINAC)又は化学療法処置装置でありうる。これらの処置装置は、要求に依存して超音波処置を支援することができる。
【0024】
超音波処置システムにおいて、診断イメージング装置及び超音波処置装置は、好適には、電気的又は電子的インタフェースを通じて接続され、それにより、温度情報が、診断イメージング装置から超音波処置装置へ直接渡されることができる。好適には、情報は、超音波処置装置から診断イメージング装置へも渡される。この情報は、ターゲットゾーンに関して情報を含むことができ、それにより、超音波処置装置は、特にターゲットゾーン内の温度情報を取得することができる。
【0025】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、超音波照射を生成する超音波トランスデューサ、及び超音波照射のビーム経路を移動させるアクチュエータを有する。超音波照射ユニットは、トランスデューサの機械的移動によって、超音波照射のビーム経路を移動させる。以下に詳細に記述されるように、さまざまな異なる種類のトランスデューサの移動が実現されることもできる。トランスデューサの移動の制御は、アクチュエータを使用して容易に実現されることができる。トランスデューサは、制御ユニットによって共通に構成され制御されるトランスデューサ素子のアレイを有することができる。例えば、尿道内トランスデューサは、ライン上に、すなわち1要素の幅を有するアレイに、配置される多重トランスデューサ素子を有することができる。これは、トランスデューサの長さがこの方向において前立腺全体をカバーするのに十分であるので、例えば1セッションによる関心のある被検体の前立腺全体の処置を可能にする。
【0026】
好適な実施形態によれば、超音波トランスデューサは、回転可能なトランスデューサであり、アクチュエータは、回転式アクチュエータである。従って、トランスデューサは、その回転軸を中心とする周囲全体をカバーするのに適する。このような超音波照射ユニットは、小さい寸法を備えることができる。例えば、組織内及び腔内超音波装置は、実施される処置のカバレッジを拡張するために、機械的に回転可能なシステムにしばしば関連付けられる。
【0027】
好適な実施形態によれば、超音波トランスデューサは、軸方向に可動であるトランスデューサであり、アクチュエータは、線形アクチュエータである。トランスデューサは、1軸に沿って、又は平面内ですなわち2軸に沿って、可動でありうる。トランスデューサは、各軸ごとに1つの線形アクチュエータを有し、又は平面移動のための1つのアクチュエータを有することができる。
【0028】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、トランスデューサ素子のアレイをもつ超音波トランスデューサを有し、超音波照射のビーム経路は、トランスデューサ素子の相対的位相を電子的にステアリングすることによって移動可能である。このトランスデューサは、機械的可動部分を必ずしも必要とせず、それは、超音波照射のビーム経路のロケーションの迅速な調整を可能にする。
【0029】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、多重超音波トランスデューサを有し、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、多重超音波トランスデューサを個別に制御するように適応される。多重超音波トランスデューサは、ターゲットゾーンの改善された加熱を可能にする。多重トランスデューサは、ターゲットゾーンの多重領域に超音波エネルギーを同時に集中させるので、均質な加熱が達成されることができる。
【0030】
それでもなお、個別の制御が、ターゲットゾーン全体の処置の信頼できる制御を可能にする。多重超音波トランスデューサを用いることにより、加熱は、短縮された時間で達成されることができる。各トランスデューサは、個別のトランスデューサ素子のアレイを備えることができる。
【0031】
好適な実施形態によれば、超音波照射ユニットは、多重アクチュエータを有し、制御ユニットは、各トランスデューサの軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度に基づいて、多重アクチュエータを個別に制御するように適応される。従って、個別に制御される多重チャネルを有する超音波照射ユニットが提供されることができる。後方フィードバックは、各チャネルごとに超音波照射のビーム経路の方向及び軌道を考えることによって実現されることができる。代替の実施形態において、多重アクチュエータが共通に制御され、又は1つのアクチュエータが、多重トランスデューサを移動させるために提供される。
【0032】
好適な実施形態によれば、制御ユニットは、ターゲットゾーンの輪郭の温度情報を入力するように適応され、制御ユニットは、超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向に対応するターゲットゾーンの輪郭における温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。対応する方法において、入力した温度情報に基づいて超音波照射を制御するステップは、超音波照射のビーム経路の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向におけるターゲット輪郭の温度に基づいて、超音波照射を制御することを含む。ターゲットゾーンの輪郭の温度を用いることにより、ほんのわずかの温度値のみが、超音波照射のビーム経路の移動の軌道に沿って供給されればよく、それにより、データの処理が容易にされる。更に、ターゲットゾーンの輪郭から、軌道に沿った超音波照射の現在方向及び少なくとも1つの以前の方向の温度が、容易に選択されることができる。例えば、超音波照射の以前の方向の最大温度に基づく制御の場合、この温度は、ターゲットゾーンの輪郭の供給された温度値の範囲内で容易に検出されることができる。輪郭は処置の境界を規定するので、ターゲットゾーンの外側の組織の損傷が回避されることができる。
【0033】
好適な実施形態によれば、制御ユニットは、軌道に沿った超音波照射のビーム経路の現在方向及び複数の以前の方向の温度に基づいて、超音波照射ユニットを制御するように適応される。超音波照射のビーム経路のいくつかの過去の方向の温度が、平均又はピークの値に関してビーム経路に沿った制御された最大値を示すものを評価するために、考えられる。
【0034】
好適な実施形態によれば、診断イメージング装置は、磁気共鳴イメージング装置又は超音波イメージング装置である。両方の装置は、処置の間、好適にはリアルタイムに動作されることができ、それにより、ソニケーションのフィードバック制御が適用されることができる。好適には、診断イメージング装置は、3次元診断画像を提供する。特に、回転可能なトランスデューサを有する超音波照射ユニットの場合、1又は複数の2次元診断画像が使用されることもでき、この場合、回転軸は、画像の2つの次元に対して直交する角度を有する。
【0035】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。しかしながら、このような実施形態が、必ずしも本発明の範囲のすべてを示すというわけではなく、本発明の範囲を解釈するために請求項及び本明細書が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】好適な実施形態による超音波処置装置の挙動を示す概略図。
図2】温度測定値を表すボクセルが付加的に示されている、図1に関する好適な実施形態による超音波処置装置の挙動を示す概略図。
図3】ソニケーション終了時の最大温度分布を示す熱マップの組を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1及び図2は、好適な実施形態による超音波処置装置10を示す。本実施形態における超音波処置装置10は、前立腺の熱処置のために使用される尿道内装置である。
【0038】
超音波処置装置10は、HIFUとも呼ばれる高密度焦点式超音波照射を生成する超音波照射ユニット12を有する。超音波照射ユニット12は、超音波照射のビーム経路を生成する超音波トランスデューサ14を有し、トランスデューサ14は、トランスデューサ素子16のアレイを有し、そのうちのただ1つのトランスデューサ素子16が、図1及び図2に示されている。トランスデューサ素子16は、トランスデューサ14の長手軸に沿ってライン上に配置される。超音波トランスデューサ14は、その長手軸に沿って回転可能である。
【0039】
超音波照射のビーム経路は、幅を有し、超音波照射に影響される領域を含む。ビーム経路は、例えば最大超音波パワーが照射される方向である超音波照射の主方向に関連する方向を有する。
【0040】
超音波照射ユニット12は、超音波照射のビーム経路を移動させるアクチュエータを更に有し、それは矢印18によって概略的に示されている。本実施形態におけるアクチュエータ18は、その回転軸に沿ってトランスデューサ14を完全に回転させる回転式アクチュエータである。トランスデューサ14と共に、超音波照射のビーム経路が、関心のある被検体のターゲットゾーン22内に超音波エネルギーを堆積させるために、軌道に沿って可動である。ターゲットゾーン22は、処置の予め規定されたパラメータに従って加熱される組織を含む関心のある被検体の領域に関連する。
【0041】
超音波処置装置10は、アクチュエータ18及びトランスデューサ14を制御することによって超音波照射のビーム経路を移動させるように超音波照射ユニット12を制御する制御ユニット20を有する。特に、制御ユニット20は、アクチュエータ18の回転スピード及びトランスデューサ14のソニケーションパラメータを制御し、ソニケーションパラメータは、超音波照射のエネルギー及び周波数を含む。
【0042】
超音波処置システムは、図においてそのすべてが示されていないが、上述の超音波処置装置12と、関心のある被検体のターゲットゾーン22の温度情報を提供する診断イメージング装置と、を有する。本実施形態における診断イメージング装置は、超音波処置装置10の制御ユニット20へのフィードバックを提供するためにリアルタイム動作が可能な磁気共鳴イメージング(MRI)装置である。
【0043】
診断イメージング装置及び超音波処置装置10は、電子インタフェースを通じて接続され、それにより、温度情報が、診断イメージング装置から制御ユニット20へ直接渡されることができる。本実施形態における温度情報は、超音波照射のビーム経路の現在方向26及び(図1の1つの以前の方向28によって示されるような)以前の方向28をカバーするターゲットゾーン22の輪郭24の温度に関連する。制御ユニット20は、電子インタフェースを通じてこの温度情報を入力するように適応される。
【0044】
制御ユニット20は、超音波照射のビーム経路の現在及び以前の方向26、28に対応するターゲットゾーン22の輪郭24における入力された温度に基づいて、超音波照射ユニット12を制御するように適応される。好適な実施形態において、制御ユニット20を通じた超音波照射ユニット12の制御は、超音波照射のビーム経路がすでに通ったことのある輪郭24の最大温度に基づく。図2に示されるように、この温度は、ターゲットゾーン22の輪郭24の供給された温度値の範囲内で検出される。温度値は、MRI装置のボクセル30に対応する。
【0045】
この実施形態において、制御ユニット20は、超音波照射のビーム経路の、加熱がすでに終了している以前の方向28に沿った(すなわち輪郭24に対応する軌道に沿った)温度に注目することによって制御を実施する。制御ユニット24は、超音波照射軌道の移動するビーム経路に沿った現在加熱が終わらないうちに、どんな超音波供給量が適用されるかを決め、それに応じて超音波照射ユニット12を制御する。超音波供給量は、例えば音響パワー、超音波周波数及び回転スピードのようなソニケーションパラメータに関連する。
【0046】
超音波供給量の制御は、MRI装置によって提供される温度に基づく。この実施形態では、温度駆動されるアプローチが使用される。これは、軌道に沿った超音波照射の以前の方向28の輪郭24の温度値の中から検出される最大温度の使用を含む。軌道に沿った最大温度Tmaxが検出されると、この値は、バイナリ温度調節アルゴリズムによるフィードバック制御を実施するために使用される。このアルゴリズムは、Tmaxがターゲット温度より低い場合は最小回転レートを使用し、逆の場合には最大移動スピードを使用する。このアルゴリズムは、ファジー論理に基づくバイナリコントローラを有する制御ユニット20において実現される。
【0047】
超音波供給量が、制御ユニット20の制御に応じてターゲットゾーン22に適用される間、関心のある被検体の一部が加熱される。特に、ターゲットゾーン22は、ターゲットゾーン22の加熱を達成するために超音波供給量を適用するために加熱される。超音波供給量の適用の効果は、それぞれ50℃及び55℃の等温線に対応するライン32、34によって図1及び図2に示されることができる。超音波供給量を適用するときに、超音波照射ユニット12のトランスデューサ14が回転され、それにより、超音波照射のビーム経路が、ターゲットゾーン22の輪郭24に沿って移動される。この移動は、超音波エネルギーが堆積される軌道に対応し、本実施形態では円軌道である。
【0048】
図3は、好適な実施形態の温度制御の利点を示す熱マップの組を示す。熱マップに見られるように、超音波照射ユニット12の回転軸に沿ったソニケーションの終了時に、均質な最大温度分布が達成される。超音波照射ユニット12の5つのトランスデューサ素子16とアラインされる5つの中心スライスにおいて、赤と黄色に着色されたボクセル30の間の52℃遷移ラインは、1つのボクセル30の平均精度により、最初に計画された前立腺ターゲット輪郭24のロケーションとマッチする。過剰な加熱がターゲットゾーン22の外側に拡散しないように、最初及び最後のスライスは安全マージンを提供する。
【0049】
本発明は、図面及び上述の説明において詳細に図示され記述されているが、このような図示及び記述は、制限するものではなく、説明的又は例示的なものであると考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に非制限的である。開示される実施形態に対する他の変更は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され達成されることができる。請求項において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数静を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項におけるいかなる参照符号も、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0050】
10 超音波処置装置、12 超音波照射ユニット、14 超音波トランスデューサ、16 トランスデューサ素子、18 アクチュエータ、矢印、20 制御ユニット、22 ターゲットゾーン、24 輪郭、26 現在方向、28 以前の方向、30 ボクセル、32 ライン、50℃等温線、34 ライン、55℃等温線。
図1
図2
図3